3/21(月)『下谷万年町物語』本読みWS第7回レポート(中野)

2022年3月21日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『下谷万年町物語』

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↑劇中劇『娼夫の森』開演まで32秒。文ちゃんは瓢箪池まで走り、

帽子を奪われないための儀式を実践する。(写真:伏見行介


いよいよ面白くなってきました。

唐十郎作品には多くの三幕ものがあります。

それらは主に、唐さんが自らの作劇方を確立した1970から90年に

かけて書かれました。共通するのは、いずれも二幕終盤が面白いことです。


一幕は状況説明や人物紹介に大部が割かれる。

三幕は物語に終止符を打つため、伏線の回収にエネルギーが使われます。

その点、真ん中の2幕は奔放です。

物語を拡げるだけ拡げて、終盤の大きな破局になだれ込む。

その勢い、畳み掛け、カタストロフに向けた破竹のスピード。

序破急という言葉がありますが、「破」は観る人を強引に巻き込みます。


今日やったパートは、

サフラン座による軽喜座への合同の申し入れが成功するところから。

洋一が持っていた警視総監の帽子、軽喜座の座長がたまたま国際劇場に

出ていたキティ瓢田を印象深く記憶していたことから、

両者の協力関係がとんとん拍子に成立。

さっそく、劇中劇『娼夫の森』の上演へと物語が進みます。


開演ブザーが鳴る直前、

劇中劇の段取り上、大切な帽子が一旦は軽喜座のメンバーの手に渡るのを

猜疑心の塊となってキティが心配するくだりは、唐さん自身の用心深さが

劇に現れた好例です。


瓢箪池の水につけて帽子が盗まれないようおまじないをかけるべく、

文ちゃんは駆け出します。すると、開演ベルが鳴る。


劇中劇は猪股公章作曲『蛍の列車』で幕を開けます。

これは、CD「状況劇場劇中歌集』に収められていますのでぜひ聴いてください。

蜷川さんの『近松心中物語』に曲を書いていた猪股さんと唐さんの出会いは、

後の状況劇場に更なる名劇中歌を生み出します。


調子良くキティ主演の『娼婦の森』がスタート。

が、この芝居は闖入者によって中断されてしまいます。

本物のお春が乗り込んできたのです。


腕っぷしの強いお春の登場にキティはたじろぎますが、

こと洋一のこととなるとかよわき乙女に変貌するお春をキティは

ここぞとばかりになじります。この二人のやりとりがすごく喜劇的。

相手の弱点を攻め抜くキティのせりふ、それを受けるお春のリアクション、

存分に楽しませてくれます。


と、そこへ帽子を持った文ちゃんが帰ってくる。

聞けば、文ちゃんは白井に会ったといいます。

そして、なぜにキティを「姉さん」と呼んで追いかけていたのか、

ことの真相が語られます。曰く、白井は国際劇場にいた洋一、

キティの同志であり恋人だった"もう一人の洋一"の弟で、

空襲で脚を失くし、一年前に亡くなった兄の代わりに、

ずっとキティを探していたのです。


探し続けてきた恋人・洋一が最近に死んだことを知り、錯乱するキティ。

さらに文ちゃんは、白井に託された二人の思い出の品をさし出します。

それは、キティと洋一が愛用していた注射器。

自らもヒロポン中毒であるお春は、すかさずキティの腕の注射跡を暴き・・・


と、ここまでで昨日はおしまい。

キティの凄惨な過去が明らかになる二幕クライマックスはまた来週!


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