4/25(月)『下谷万年町物語』本読みWS最終回レポート(中野)

2022年4月25日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『吸血姫』
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2010年秋、唐ゼミ☆『下谷万年町物語』のカーテンコール(撮影:伏見行介)

昨日は『下谷万年町物語』WSの最終回でした。
2月以来、三ヶ月間をかけて行ってきた第12回目の本読みです。

前回、サフラン座のデビューである軽喜座との合同講演
『娼婦の森 改訂版』初日を待たずに、洋一とお瓢の心は離れてしまった。
これですべては終わりという決定的な離反だったにも関わらず、
文ちゃんのとりなしが、お瓢に最後の希望を与えます。

文ちゃんは、まるで両親のケンカに心を痛める子どものように、
洋一が別れて向かった瓢箪池で、いかにお瓢を思う行動を取ったかを話す。
そして、サフラン座の初回公演が上手く予想や、さらに、
第二回目公演の構想までも、語って聴かせます。

お瓢はこれに勇気づけられ、感心します。
これまで、主演女優のお瓢、演出家の洋一を前に、
二人の応援団にとどまっていた文ちゃんは、ここにきて、
劇作家の才能の片鱗を見せ始めます。主演・演出・作。
こうしてサフラン座の3人の役割が決定。

この部分の会話は飛躍が多くて少しわかりにくいのですが、
『下谷万年町物語』全体の肝となる部分です。
作者である唐さんは、明らかに文ちゃんというキャラクターに自分を
投影しています。文ちゃんにかけるお瓢の言葉を通して、
劇作家というものの大変さや、その大変さに立ち向かう矜持を示します。
重要な場面ですので、かなりの時間を費やし、はっきりと意味が
汲み取れるまで繰り返し読みました。

なけなしの希望を得たお瓢が、二人羽織をして、文ちゃんの元六本指の
手を利用し、再び洋一を演じようとするところは、面白さと無理すじの
哀しさが入り混じる。と、そこへ、オカマ軍団が帰ってきます。
お瓢と文ちゃんの二人羽織、お市の対決がいよいよ昂まったところに、
座長が飛び込んできて、洋一が瓢箪池で殺されたことを告げます。

そして、すべてが終わる。

現場の事情としては、ここから池へのセットチェンジこそ
この演目に取り組む座組みにとっての試練ともいうべき場面転換です。

あとは洋一の死を前にしたお瓢の錯乱、警官によるお瓢の連行が
矢継ぎ早に進み、取り残された文ちゃんのモノローグによって、
この物語は閉じられます。唐さんですから、最後には希望がある。

それがどれほどの希望かというのは、これはもう、上演でやるしかない。

30代前半の疾風怒濤期を経た唐さんが、後半の試行錯誤を経て
40歳に突入した時に書いたこの作は、新たな境地を切り開くための
一里塚でした。ここから『秘密の花園』『ジャガーの眼』
『ビニールの城』へと唐さんは進んでいきます。

2009年と2010年、唐ゼミ☆は二ヵ年にわたってこの演目に取り組みました。
当然ですが、現在ならばさらに上手くはずだし、試すべきアイディアもある。
けれど、これは相当に上演が大変な劇でもあります。

今は、実際に6月にある新宿梁山泊の上演をたのしみにしましょう。
http://s-ryozanpaku.com/

次週以降、取り上げる演目は『蛇姫様 わが心の奈蛇』です。
実はこの演目は、『下谷万年町物語』より長い。
よって次の三か月コースです。終わる頃には7月末。夏です。

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