5/6(木) ワークショップレポート

2021年5月 7日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
みなさまいかがお過ごしですか?
ゴールデンウィークもワークショップ!

前回は「呼び屋」である梅原北明が登場し、
瀬良皿子と呉一郎の会話へと続きました。

今週もこの二人の会話から。
ではいってみましょう!

今までの呉一郎とは違って "ダントン" の力をかりて
瀬良皿子にどんどん迫る呉。
呉を弄ぶように会話を進めていた瀬良も少々おされぎみ。

そして、按摩たちがこんな歌を歌っています。

どこから来たのか 不思議なパンマ
夏がこがした黒い手で 夜毎の闇を研ぎまする
語るも因果なシャラシャラコ


カツラまで踊り出す始末。
この歌を止めようと瀬良は石を投げますが、石が跳ね返ってくる。
この石は瀬良皿子にしか見えない。そして痛い。
カツラ屋の前を通るといつも石を投げられると言っていた瀬良を思い出します。

瀬良もやられっぱなしではいられない。
それまでおされていた瀬良皿子は一変、
呉一郎の手の傷に爪を立てる。
そこでの呉一郎のせりふはこう、

何故だろう。 かくなる虐待を受けているのに
「このヤロー」といえないのは。
おじさあん、アンマのおじさあん。
密かなるもうい一つの気持ちとはこのことなんですかあ?!

傷口に爪を立てられるのは、嫌なことだけれど、
なんだか悪くないような気持ちもある...。
そこで思い出すのは、冒頭のカツラ屋の主人。
(テンカンをおこしてひっくり返っていると、女房のオカツが出てきて、
顔に足をのっけられるシーンがありましたね。)

と、そこに今度は本物の石がバラバラと降ってくる。
これは按摩たちが瀬良皿子に投げた石。
ここからパンマに対する按摩たちの勢いがすごい。

按摩にとってパンマは商売敵。
目をつけた呉一郎を横取りするとは何事!
怒った按摩は裁ちバサミを取り出して、女の髪を切ろうとします。
それを止めようと、呉は手を伸ばします。

するとその伸ばした右手、震えていない。
按摩が揉んでも治らなかった"ダントン"が震えていない。

自分ではなくパンマの手によって復活した"ダントン"を目の当たりにした按摩はショック!
嫉妬でいっぱいになった按摩の勢いはさらに加速。
止めに入ってきた呉一郎の手の傷にハサミを差し、
さらには瀬良皿子の髪の毛をばっさり切ってしまう。

ひどい虎刈り頭になってしまった瀬良。
スカーフを取って来てと呉一郎に頼み、一人になった瀬良は
ツカツカとカツラ屋の前へ。そしてどなる。
カツラをくださあい!

とここで、今日のワークショップは終了!

動きの多いシーンが続きました。
想像以上に按摩の呉一郎に対する思いが強く、暴走している。。
そう考えると、冒頭のシーン
「よろしいですか?」の言い方も変わってきそうです。

来週はあの梅原北明の連れていた少年が登場します。
まだ一言も発していない彼は一体何を話すのか。

ということで、引き続きよろしくお願いします!

海の牙.jpg

横浜の海の横で「海の牙」

4/29(木)ワークショップレポート(林)

2021年4月29日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
『海の牙〜黒髪海峡篇』今週のワークショップレポートです。
先週は呉一郎の右手、"ダントン"が自らの意思で動き始めたところでした。

それではいってみましょう!

妙な男が坂を上がってくる。
この男こそ今週の新しい登場人物「梅原北明」
そして、その男は少年を連れています。
のちにわかりますが、この少年の名は「名和四郎」


さて、その北明、カツラ屋を訪ねてきた様子。
落ちているカツラをひろいあげ、
連れの少年にこれを落としたのかと聞きますが
少年は喋らない。ーー。ずっと喋らない。

呉一郎がカツラ屋のものであると説明し、
北明と会話を始めます。
呉と北明の会話が進んでいくと、
この「梅原北明」が"呼び屋"であることがわかります。

余談ですが、みなさんはこの"呼び屋"、馴染みがありますか?
私は恥ずかしながら、あまり馴染みがなく、
どういう存在なのかあまりわかっていませんでした。
数年前、中野さんに神彰(じんあきら)の存在を教えてもらい、
その神彰が招聘した「ドン・コサック合唱団」のCDを聴いたのが
"呼び屋"を認識したきっかけです。

ドン.jpg
(ドン・コサック合唱団、気になる方は是非聴いてみてください。)



この梅原北明、せりふの中で過去の呼び屋の仕事について語ります。
日劇の再建に一役買っており、
マーカス・ショーにラインダンスを踊らせて、大入りになったことや
マーカス・ショーの中に無名のダニーケイがいたことなど。
とはいうものの、いまやその面影が感じられない風貌。

今は何をしているのかという呉の問いに、
北明は自分の背負っているカツラを見せます。
今は、カツラの呼び屋であると言わんばかりに。
彼は、朝鮮半島の女の髪を切ってカツラを売っているのです。
そして、連れの名和四郎の母の髪の毛も
この背負っているカツラの一つになっていることがわかる。

カツラ屋の主人を見つけた北明は少年とともに、
主人を追い、その場を去ります。
それと入れ替わりに、パンマの瀬良皿子がやってくる。
(ワークショップ初回以来の再会!)

瀬良皿子はずっと自分を待ち続けていた呉一郎をからかう。
瀬良はなかなか本題に入らない呉一郎にしびれを切らせて、

女 草っ!
呉 何ですって?
女 草と言ったんだよ。植物の。おまえ、草民だな!?


この表現、今でいう「草食系」という意味の罵り方。
(唐さんはもうすでに、その表現を使っていたとは。。。!)
超ドストレートに、草っ!

その後、パンマとお客の関係について語る瀬良はこんなことを話します。

どういうことなんでしょ。あたしに呼びだしが来た。
あたしは立ってその人のところに歩いてゆく。
すると向うもどんどん動きだす。あたしは追う。向う遠ざかる。
それであたしはかけ出す。まるでグルグル回り。いい?
こんな円周があるとあなたはお思いになります?!赤の他人よ。
つき合いもないのよ。つまり鉄棒の大車輪でいえば
鉄棒という軸がないのに体が回るようなものじゃないの。

なんと、瀬良皿子自ら大車輪の話を始めるのです。
そこで呉一郎 (目が光ってくる)...。 のカッコ書き。

とうとう瀬良の背後に忍び寄り、髪の毛を触る呉一郎。
再び、ダントンが前のめりに動き出します。

"瀬良さん、よろしいですか?"
ついに初恋の相手へと手を伸ばす呉一郎。
冴えない呉がダントンの力をかりて、一歩踏み出します。

というところで今日はここまで。

"呼び屋"である梅原北明の目的は一体何なのか。
そして喋らない少年。
気になる登場人物も増えた今週のワークショップ。

なにより、瀬良皿子に接近する"ダントン"
この二人の展開もますます気になるところ。

引き続き、よろしくお願いします!




4/22(木)ワークショップレポート(林)

2021年4月23日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
『海の牙 黒髪海峡篇』 
ワークショップ、第3回目となりました!


前回は、按摩と男(呉一郎)との会話を掘り下げていきました。
「大車輪」の最中に目が合った女「瀬良皿子」のことが語られるシーン。
なんとも不思議な描写で興味を惹かれます。


さて、今週は、目が合った瀬良皿子の次なる動きから。
いってみましょう!


そういえばあいつ、変なことしたっけ、と記憶を辿り語る呉一郎。

瀬良皿子は、「その大車輪は円じゃない」と言った後、
その自らの手で、呉一郎の描く「大車輪」を切り刻むような動きをするのです。
まるで「北斗の拳」で登場する技、「南斗水鳥拳」のように...!
(というのはあくまでイメージですが、見たことない方は是非youtubeで検索してみてください。)

そうした手の動きで呉一郎の大車輪をメッタメタに切り刻んだ女。一体何者なのか。。
そんなこんなですっかり目を奪われてしまった呉一郎は鉄棒から落下。

按摩は呉の話を聞きながら、実は彼が瀬良皿子の「手」を"乞ふている"と指摘します。

そしてその後、その「手」の持ち主、瀬良皿子に再会した呉一郎。
按摩に導かれるようにその容姿を思い出すと、彼女が"パンマ"であることがわかります。
按摩にとっては商売敵。
弟子たちも思わず立ち上がって合唱。

と、そこへ冒頭のカツラ屋の三人が登場!
(冒頭のシーンについて触れている中野さんの4/13(火)のnote)

女房のオカツは、番頭との仲がバレないように、
寝ている隙を狙われるのだと主人に話し番頭を責めます。
がしかし、番頭がそのオカツの言動を直に受けてしまい、
オカツからもらった手紙を読み上げたりしてしまう。

オカツがあの手この手で言葉を繰り出して、主人と番頭の争いを収めようとしますが
猪突猛進な二人の男たちにはうまく機能せず、
ついには主人が包丁を持って飛び出してくる始末。

結局、番頭はオカツにその手紙も本から書き写した内容だと言われてしまいます。
やけになった番頭は、故郷から持ってきたものだと店にある長髪のカツラをひったくって出ていこうとします。
主人は逃すまいと包丁で切りかかる。
番頭は長髪のカツラでその包丁を振り払うと、その髪の毛が主人に絡みついてしまう。


番頭と長髪の間にピンと張る黒くて長い髪の毛。
そこでのト書きは 
"それを軸に円を描く二人。"

ここでキーワードの「円」ができあがるのです。

ずっと喧嘩を見守っていた呉一郎でしたが、
急に、できあがった円の中心である髪の毛を右手でつかみます。

呉  よせよ。ダントン。 これは鉄棒じゃないんだ。

ずっと動かなかったダントンが、意思を持って動き始めたのです。
そして呉一郎はつづけます。

呉    これでいくらかみえてくるだろうか。昼下がりの坂が。
       その坂を降りるとき、もしかしたらぼくの心臓は、すりきれた自転車のブレーキのように
       シューシュー音を立てるだろう。

カツラ屋の前で女が語った"昼下がりの坂"。
呉一郎の転落を予感させるこのせりふで、今日のワークショップは終了!

今日のワークショップでは、
呉一郎が大車輪の最中、瀬良皿子の描写をするシーンが続いたり、
女房・オカツが主人と番頭に対し、思いついた言葉をどんどん繰り出していくシーンがありました。


実際声に出して読むときも、その瞬間に思いついて言葉を発するというのを実践。
試しながら繰り返し読んだりして、なんだか稽古のような雰囲気もあったワークショップでした。

さて、
ダントンがついに動き始め、呉一郎はこれからどうなっていくのか。
次週やるところでは、新たな登場人物がやってきます。
呉一郎と瀬良皿子の再会も待ち遠しい!

それではまた次のワークショップも、よろしくお願いします!

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(唐ゼミ☆ 『海の牙 黒髪海峡篇』の舞台写真より)




4/15(木)ワークショップレポート(林)

2021年4月15日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
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↑鉄棒。「大車輪」の話題が出たので、イメージを具体的にするべく
近所の公園に来ました。が、からだが重すぎて逆上がり一回が限界!



今週もやってきました『海の牙 黒髪海峡篇』

さて、前回は女(瀬良皿子)と男(呉一郎)の会話から、
按摩が登場し、"昼下がりの粒々"の話をするところまででした。

まずワークショップの前半は、
前回の男と按摩の会話を少し掘り下げるところからスタート。

"粒々"にまつわるエピソードを話す按摩に対し
厄介な者に関わってしまったと後悔しはじめた男は、
あんた一体なにものなんだ!と聞きます。

台本上では「按摩」と書いてあるので読み進めてしまっていましたが
男(呉一郎)にとってはずっと謎の男がつかまらせてくれ、と言っていたのです。
ここでようやく、"按摩"であることが明らかになります。


そこへ按摩の三人の弟子がやってきます。
「もう帰ってもいいですか?」と聞く弟子に
按摩は"つかまる"のなんたるかを弟子に叩きつけ、そして人形を揉んで実践する弟子たち。
按摩学校の授業の様子が垣間見えるシーン。
(このあたりも『盲導犬』で登場した先生、生徒たちとやりとりが似ている...!)


ようやく男につかまることができた按摩は、
この呉一郎の右手の異変に気づきます。まるで鉛のような右手。

呉一郎は、この右手を「これ」といったり、「ほうらよ」と投げ出したりする。
小刻みに震えるその右手は言うことを聞いてくれない。
おまけに"ダダダントンタン"とリズムを刻み、歌まで歌ってしまう始末。
冒頭の呉一郎とはまるで違う人物!これも右手の仕業。
按摩はこの右手を「ダントン」と名付けます。
(ダントンといえばフランス革命で活躍した革命家「ジョルジュ・ダントン」がいます。)


按摩に右手をあずけながら、呉一郎は中学時代の話を始めます。
それは大車輪をやってみろと言われた時のこと。
(なんの気なしに話は続きますが、大車輪ができてしまう呉一郎、すごい。)
同級生にもてはやされるその大車輪の最中、向かいの校舎で
ある女と目が合う。
そしてその女はこう言う。

「その大車輪は円じゃない。」

「君は直線しか知らない人です。

君はおそらく自分の心臓を四角に切って定規で心弁の尖をちょん切ることができるが、

勢い余って辺という辺を気が向くままにふやして、

それを円と思いこんでる。君の大車輪はそういう邪道の円だ」


この言葉に引っかかった呉一郎は、鉄棒から落っこちてしまいます。
後々わかるのですが、この女こそ「瀬良皿子」。
(出会いは中学校時代!)
呉一郎の大車輪を「邪道な円」という瀬良。
彼女の求める円とは一体どんなものなのか。


もちろん今週のキーワードは"円"。
たしかにここまでの中でも"円"を思わせる「粒々」「まんまる」「大車輪」「丸太」
などがちりばめられています。
同じように、読者に"円"が目につくように表現で書かれている作品として
アラン・ロブ=グリエの『覗くひと』が取り上げられていました。

「邪道の円」とは何なのかも気になりますが
このヒロインの「瀬良皿子」の正体もいまだ謎。
彼女の描写について、一つ前の作品『ベンガルの虎』バングラデッシュ公演
でみた中東の女性像が影響しているのではないかという話にも触れ、
予習の材料が色々出てきたところでワークショップは終了!


次週もよろしくお願いします!








4/9(金)ワークショップレポート(林)

2021年4月 9日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』

4月になり、ワークショップでは『海の牙-黒髪海峡篇』が始まりました。

今月のアシスタントは、林が担当します。

どうぞよろしくお願いします!


この『海の牙-黒髪海峡篇』は1973年に状況劇場で初演された作品で

文芸誌「海」10月号に掲載された戯曲です。


初回ということもあって、まずは登場人物表をながめていきました。

中野さんがnoteで、この作品をやっていた時、ヒロインの名前が「瀬良皿子」だから、

リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』を聞いていた、と書いていましたが

「シェエラザード」は『千夜一夜物語』の語り手であるお姫様の名前で、

そこから着想を得た交響曲がこれにあたります。


ということで少しだけ交響曲をみんなで聴いて、 WSはスタート!


冒頭は、とあるカツラ屋のシーン。

そして按摩の群が通り過ぎる場面ののち、

そのカツラ屋の前、ゴミ箱のかげにうずくまっていた女と男、立ち上がる。

(この女は「瀬良皿子」、男は「呉一郎」)


女は石を投げられて怪我をしており、男が「大丈夫ですか?」

と聞くところからこの二人の会話は始まります。

自分はパンマだからカツラ屋の前を通るといつも石を投げられる、と女は話します。

("パンマ"(娼婦)というのは、パンパンの按摩で、"パンマ"というそうです。)

石を投げられるにも関わらず彼女はその道を通るのですが、

その理由として女は「昼下りの坂」の話を始めます。


男 あんたにはそれが本当に見えるんですか?

女 見えるとも。ぐんと下ってビールびん色の。

  ここをかけ降りてゆきたいといつも思うの。

  愛する人と手に手をとって昼下りの坂をビュンビュン走ってゆきたいの。

  このカツラやの前に立つといつもそう思います。

  どうしてかしら。

  きっと西陽がこのウインドウにさしこんで、

  こんがり黒々のカツラがじとっと焼けて、

  それがあたしの背中にはっついて、

  「瀬良、さあ、かけ降りてごらんよ」とたきつけるから。


愛する人と走る坂は上り坂ではなく、下り坂。

...なにやら今後の二人の展開を予感させるような表現がちらほら。

その後、女はお客を待たせているといってその場を去ります。

会話の最後で男は、前からあなたを知っていると女に告げるのですが、

一体どんな目的で女へ接近したのか。。


そこへ一人の按摩が現れる。

この按摩、異様なずうずうしさがあって、男につかまらせてくれとお願いをします。

あれよあれよと按摩のペースで会話は進み、彼もまた「昼下りの坂」の話をします。

"昼下りの粒々"という言い方をするのですが、これは坂に差し込める西陽のことで、

物の粒子を見たものはみな関係があるものです。」

と続けます。

つまり、私とあなたはもう関係があります。

ということを言っているのです。(これまた強引な距離の縮め方。。!)

このあたりのやりとりは『盲導犬』冒頭の、フーテンと破里夫の会話に似た感じがあります。


この按摩との会話が終わるところで今回のワークショップは終了。

今日の会話までで、この戯曲のテーマがたくさん出ている、と中野さんの気になる一言。


テーマと思われる表現や繰り返されている単語を自分なりに考えて、

今後どう物語と関わってくるのか気にしながら次回もワークショップに臨みたいと思います。


みなさま、次週もよろしくお願いします!

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(唐ゼミ☆の『海の牙-黒髪海峡篇』のDVD。ずいぶん前にもらって観たのですが、またワークショップが終わった時に観たいと思います!)