7/1(木)ワークショップレポート(林)

2021年7月 2日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
いよいよ『海の牙〜黒髪海峡篇』最終回!
3ヶ月の長編、ついに完結します。
最後のレポートをさせていただきます!

二幕「ヘア・ジャック」
その名の通り、カツラ屋の女房オカツの髪の毛をめぐって
シャラは裁判にかけられる。

責められるシャラは呉一郎を挑発し、また呉一郎も反発する。
そうしてどんどん亀裂の入っていく二人。
ついに暴れ出した呉一郎のナイフがシャラの手に当たってしまう。

今週はここからです。
それではいってみましょう!

呉一郎のナイフがシャラの手に。
我に返った呉一郎はシャラにハンカチを差し出すが、
シャラは拒絶する。
そして、その血を名和四郎にすすらせる。

しかし血は止まらず、呉一郎は再びハンカチを差し出す。
シャラはそれをひったくり、タバコを要求する。
タバコに火をつけようとした呉一郎のマッチは、シャラの前髪を燃やしてしまう。

シャラが思わずそれを見るために手にとったのは、
先週でてきた"鏡のない手鏡"。
シャラはそれを覗きながら言うのです。

こうして手鏡の中をくぐりぬけてずんずん前にすすむだけ。
いつか後から抱きつかれるのを待っているのは処女だと言ったわね。
でも今は前からガシッと抱きつくの。
だってあたし、車内で嬲られる百戦錬磨のメギツネだもの。



"嬲られる"
思わずシャラが言ったその言葉にすかさず食らいつく呉一郎。
やはりシャラには被害者意識がある。
もう一度はっきりとシャラの言葉を聞きたい呉一郎は、
嬲られていたのか、戯れていたのか、とシャラを問い詰める。

しかし、その問い詰めもパンマ稼業をしてきたシャラには
苦しく、うまく答えられないものであった。
本当の声があげられないシャラ。
鏡のない手鏡を見つめ、歌い出す。

鏡の前では一人ではない
けれど聞こえる声は一つだけ
隣の部屋の囚(とら)われの女を笑う口は一つ
あたしがこんなに悲しいことはない

『鏡の前では』

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苦しみの声をあげられない。
シャラの本心へ近づきつつあった呉一郎。
しかし、按摩の弟子たちがツメエリの学生たちとなり、立ち上がる。

その時、名和四郎が弓をひく。
そこには、円ができあがる。
名和四郎は弓をひき、思いを言葉にする。

髪の毛を奪ったのは自分であること。
それが日本人の髪を求める、母の望みであったこと。

シャラの気持ちを背負ったかのように、本音を打ち明ける名和四郎。
弓を力のつづく限り引きます。

しかし、学生たちはさらに追い詰めてくる。
学生たちの手には、鏡のない手鏡。
そしてそれはいつの間にか、電車のつり革へとかわっている。
名和四郎はのされてしまう。
シャラは学生たちに囲まれ、電車での光景が蘇る。
"戯れ"に引っ張られていく自分を振り払って、ついに本音を叫ぶ。

シャラ     あの時もあたし、こうしてこうなってあんたの方に手をあげたわね。

あの時、自分は助けの手をあげた。
シャラのその叫びを聞いた呉一郎は、シャラに応える。

呉        はい、そうです。証明します。
           誰か筆記して下さい。


台本には書かれていませんが、唐ゼミの上演では
ここで筆記をかってでたのが、名和四郎。

一幕の終わりでライバルとなった名和四郎が、二人を後押しする。
そこには、呉一郎、シャラ、名和四郎!
ついに、完全な円が完成する。

名和四郎から勇気を得た呉一郎はナイフを持ち、学生たちに立ち向かう。

そして、革命家ダントンの名を持つ手に、ふさわしい男となった呉一郎は叫ぶのであった。

「帰ってこい、ぼくのダントン!」

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ついに『海の牙〜黒髪海峡篇』、完結!
三ヶ月に渡り研究をしてきた作品が一つ終わり、
追い求めてきた"円"が完成しました。
ありがとうございました!

また次の作品へとワークショップは続きます!

7月からワークショップは、日曜日に変更となります。
次回は 7/4(日)19:30〜
新しい作品は『ガラスの少尉』 です!
よろしくお願いします!

6/24(木)ワークショップレポート(林)

2021年6月25日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
「海の牙〜黒髪海峡篇」、今日と来週の二回!

先週は呉一郎が病院にやってきたシャラに電車でのできごとを
尋ねるところまででした。

嬲られていたのか。 戯れていたのか。
呉に向けられたシャラの手は助けを求める手だったのか。

シャラの答えは「いいえ」!

さて、では今週はここからどうなるのか。いってみましょう!


シャラは「いいえ」と答えると、仕事をもらうために病院を去ろうとします。
とその時、按摩、そして弟子たちが現れる。
その手には、鏡の入っていない手鏡がある。

弟子たちは、オカツのバラバラ死体の包みを取り出し、シャラに見せる。
彼らはオカツの盗まれた髪の毛を探しているのだ。
按摩たちは死体の行方を捜していたはずが、
番頭に感化され、髪の毛を追う刑事になっている!

そこへ番頭が現れ、シャラの髪を見るや
おかみさんの髪はこんな具合だったと按摩たちに訴える。
疑いをかけられたシャラは呉に助けを求める、が、

「ここは取調室なんです。」
と、シャラのことを突き飛ばす。
人が変わったように急に敵へとまわる呉一郎にシャラは驚く。
そしていつの間にか、オカツの髪をめぐって裁判が始まっている!
按摩は呉一郎を証人に仕立てあげ、シャラを問い詰める。

そこへ血だらけのカツラ屋の主人が按摩の弟子に連れられ、
オカツを殺したことがわかる。
按摩はそれに対し、
「下手人はこれで割れたか、では上手人の件に入るとしよう。」
(上手人は下手人に対しての造語。)

もはや、オカツを殺した犯人の件はこの一行で終了。。!
按摩たちにとってそれよりも重い罪は、その髪の毛を盗んだこと。
ヘア・ジャック!

按摩はシャラを朝鮮女だと見なし、問い詰めるが
シャラの回答は、"今は朝鮮パンマよ"
昔は違った、朝鮮女にされただけだ、とシャラは訴える。

しかし按摩たちは、ならば朝鮮パンマになるために
その髪の毛を奪ったのではないかと切り返してくる。
どんどん朝鮮女の髪を盗んだ女にしたてあげられていくシャラ。

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(問い詰められるシャラ、その横には名和四郎。)

初めはシャラの言葉に動揺していた呉一郎だったが、
シャラに追い打ちをかけるように、
電車でのできごとを"戯れていた"と言い切る。

その言葉を聞いたシャラは国士舘の制服を着た名和四郎を
戯れていた相手に見立て、呉一郎をひたすら挑発する。

どんどん亀裂が入る呉一郎とシャラ。
按摩はここぞとばかりに呉に尋ねる。


按摩     証人、お前はどんな誤解をした?
呉        誤解はしません。
按摩     誤解はしないだと? この女が嬲られていると思ったと言ったじゃないか。
            いじくり回されて手をあげたと言ったじゃないか。


シャラが嬲られていたと"誤解"してしまったために
色んな人の手を切ったと誘導しようとする。

しかし、シャラに挑発されてしまった呉一郎に、もはやそんな余裕はない!
瀬良皿子は、この女は、 

戯れていたのだ!!

呉一郎、ついにはジャックナイフを取り出し、暴れ出す。
止めに入った按摩の弟子たちと揉み合っているうちに、
そのナイフはシャラの手に当たってしまう。。。


と、ここでワークショップは終了!
とうとう「海の牙〜黒髪海峡篇」もあと一回となりました。
呉一郎とシャラの溝は埋まるのか、"円"はどうなってしまうのか。
按摩たちが持って現れた鏡の入っていない手鏡の謎も気になる。

最後もみなさま、どうぞよろしくお願いします!

6/17(木)ワークショップレポート(林)/中野演出による舞台オーディション情報

2021年6月17日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
さて、『海の牙〜黒髪海峡篇』2幕へ突入!

先週のおさらい。
病院で目が覚めた呉一郎。
シャラの手を追いかけていたところ、シャラが一団の学生に嬲られているのを目撃します。
そのことを按摩が"戯れていた"という風に表現し、
それを聞いた呉一郎は、またベッドに倒れてしまうところまででした。

さて今週はその続きから。

按摩の弟子が、カツラ屋の番頭を連れて来ます。
ここで、按摩の名前が"刑事"に変わっている。
刑事は、風呂敷包みを取り出す。
その中身は、カツラ屋の女将である"オカツ"の首。
(しかし、そのオカツの頭、髪の毛がない!)
刑事は、この殺人事件を調査しているのであった。

番頭は、オカツの髪を探して欲しいと刑事に訴える。
しかし、そもそも死体の紛失届けが出ていない。
そのことを責められた番頭は、オカツの首を持って逃げ出してしまう。
刑事たちは、番頭の後を追う。

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静かになった病室。
そこへシャラシャラコが花束を持って、名和四郎とともに現れる。
と、同じ病室の布団から、北原北明が起き上がる。

誤って矢を射ってしまった名和四郎は、そのことを謝りに来たのだ。
しかし、許す様子のない北明。
シャラは二人の間に入り、赤くただれた北明の背中をなでようとする。
その時、チョゴリの女たちがシャラの後(うしろ)より現れ、
急にシャラは北明の背中に爪を立てる。
またもや自分ではない力が働いたシャラ。
(ここの場面でも唐ゼミが上演した際には、チョゴリの女たちがシャラの手に
自分たちの手を添えて、北明の背中をひっかかせるような形にしたそうです。)

腹を立てた北明は、シャラに約束していた仕事を無しにしてしまう。
しかし、なんとかすると決意し、泣いている名和四郎をなだめる。
その姿はまるで母!

目覚めた呉一郎は、シャラを見つける。
国士舘の制服に身を包んだ名和四郎を見つけた呉一郎は
電車で起きたできごとを思い出し、シャラに真相を問う。

なぶられていたのか、戯れていたのか。

呉     満員電車の中で、あの時、あんたは手をあげたね。
シャラ    ええ。
呉     あいつにつかまれ、ぐいぐいと押しつけられながら、あんたは手をあげたね!
シャラ    ええ。
呉     嬲(なぶ)られ、なぐさみものにされながら、千と一本の手のこちらに手をあげたね。
シャラ    いいえ。
呉     いいえだって?!


...シャラの答えは"いいえ"!
こう答えたシャラ。呉一郎とシャラの関係は一体どうなってしまうのか!

というところで今週のワークショップはここまで。
あと残すところ2回!
どうぞ、よろしくお願いします!



最後に、今日はインフォメーションです。

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代表の中野さんは、8月上旬に公演する劇団外の舞台を演出します。
こちら、明日が〆切の出演者オーディションがあるので、
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6/10(木)ワークショップレポート(林)

2021年6月10日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
今週も『海の牙〜黒髪海峡篇』よろしくお願いします!

今回はまず、
先週かけあしになってしまった一幕ラストをもう一度おさらいしました。

追い詰められたシャラシャラコ。
そのシャラへ呉一郎は、手を伸ばす。
そして"ダントン"が語り始める。
千夜一夜物語を抜け出そう、二人で完璧な円を目指そうと。

その手を取り、瀬良皿子は唄う。

坂を下るすごい手のお方
耳までとどくすごい目の人よ
あたしの心をうばってどこへゆくの
ここには不法が横行しているの?

そこには転落によって男っぷりをあげた呉一郎。
下り坂をいく二人!(冒頭の二人の会話を思い出しますね。

そして、地雷の仕込まれていた"ダントン"は脱出のごとく宙に舞う。
とここで、先週残したままであった、最後のト書き。

名和四郎は、もう一本の火矢を弓につがえて放つ。
笛の音をひびかせてとんでゆく。


この名和四郎の放った矢の意味。
私も最初読んだときは、名和四郎も苦しみを乗り越えるべく、ダントンと同じように
矢を放ち、跳び立つ。というようなざっくりとした捉え方をしてしまっていました。

がしかし、切実な彼自身の立場にたってみると、そうではない。
カツラを被り、チョゴリを着たシャラは"日向"の母。
二人の脱出は名和四郎にとって、自分の女を連れていかれることになるのです。
そこで名和四郎は矢を放ち、飛び立つ二人に待ったをかける。
名和四郎が呉一郎のライバルへとなる瞬間です。

(唐ゼミ☆が上演した際の一幕ラストは、名和四郎が飛んでゆくダントンを射落とし、
名和四郎と睨み合うところまで作ったそうです。)

そして二幕へ向かいます!
二幕 ヘア・ジャック

留置場に収監されている呉一郎。
身元引受人として、按摩が現れる。

シャラと呉一郎は脱出をはかるも、一緒になれず、
呉は飛び立った手のことを思い日々を過ごしていた。
ある日乗った電車で、つり革につかまる手の中に、シャラの手をみつける。

しかしそのシャラが国士舘の制服を着た学生たちに嬲られているのを目にしてしまう。
呉一郎は彼女を救うためナイフを振るい、様々な手を切ったのである。

それを聞いた按摩は、
朝鮮人パンマが戯れていただけだ、と呉一郎に言い聞かせる。
弁解をはかる呉一郎であったが、またベットに倒れてしまうのであった。

と、ここまででワークショップは終了!
とうとう二幕へ突入。
一幕ラストで呉一郎のライバルになった名和四郎が二幕でどうなるのか。
そして、シャラは嬲られていたのか、戯れていたのか。
"ダントン"を失った呉一郎はこの後どうなってしまうのか。

また来週も、よろしくお願いします!

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6/3(木)ワークショップレポート(林)

2021年6月 3日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
『海の牙〜黒髪海峡篇』、いよいよ一幕ラストへ!

先週は、按摩の義手を見破った呉一郎が、大車輪を完成させたところでした。
ではいってみましょう!

呉一郎は鉄の棒と義手でできあがった大車輪をシャラに見せ、
「円はこれでいいのですか?」と聞きますが、シャラの返答は「いいえ」

その大車輪は円じゃない。」

「君は直線しか知らない人です。

君はおそらく自分の心臓を四角に切って定規で心弁の尖をちょん切ることができるが、

勢い余って辺という辺を気が向くままにふやして、

それを円と思いこんでる。君の大車輪はそういう邪道の円だ」


聞き覚えがある。。
中学時代、鉄棒で大車輪をする呉一郎に瀬良皿子が言った言葉と同じ!
それを聞いた呉一郎は打ち明けるのです。
"邪道の円"の話が忘れられず、旋盤工になり、
"完全な円"を求めてきたこと。
ダダダントンタンと耳に響く日々、手まで震えること。

これまでの思いを告げながら、瀬良に近づく呉一郎。
しかし、瀬良は一変、呉一郎を拒絶します。

何故か。
近づいてくる呉一郎が手にしている、軍事将棋のスカーフ、鉄の棒。
チョゴリを着て、カツラをつけた瀬良皿子に
虐げられた女性たちのトラウマがよみがえってくるのです。
拒絶された呉一郎はまだ熱々の棒を掴んでしまう。
それを見たシャラは我に返ります。

その二人の後ろに円が出来上がっている。
名和四郎が黒髪を弦にして、ギリギリと弓を絞っているのです。

今まで「シュリンガーラ・ティリカ」
としか言うことができなかった名和四郎は、
円を描いている時だけ喋ることができる。
名和四郎は、一人海を渡ってきた苦しみを吐き出します。

さらに弓をひき、できあがった円が描くのは、母、父、自分。
彼はさらに語り出します。

名和    お父さん、この弓が円を描いている間、母を陰から出してください。

母を同じ人間として認めてほしいという名和四郎の切実な願い。
しかしその思いも父である梅原北明には通じず。
名和四郎は彼を矢で射ろうとします。
その矢は逃げようとした北明の背中へ。

と、その時、シャラの額にまた石が飛んでくる。
額から流れる血を見ようと手鏡を取り出します。
手鏡を覗き込み後ろへ歩き出すシャラ、あることを発見する。

シャラ   こうしてゆくと昼下がりの坂をもう一度あがってゆけるのよ。
呉        逆にのぼるんですね。


鏡を持って、坂道を後ろへ歩くと、鏡の中の自分は坂をのぼっているようにみえる。
(ワークショップでも手鏡を持ち出し、みんなでやってみました。)


シャラ   呼んでるのよ。
呉        誰が。
シャラ   石をぶつけられたあたしよ。坂の上で石をぶつけられて泣いているのよ。早くきてって。
呉        あんたはここにいるじゃないか。
シャラ   ここにいるあたしはこの鏡の中のあたし。

坂の上で自分を呼んでいたのは、自分だった!
そう気づいたシャラ は鏡に夢中になってしまう。
按摩はそのシャラ をレンタンの上に仰向けにしてしまう。


坂の上にいるシャラ 、坂の下にいるシャラ 。
そこを行き来するシャラの姿は、
呉一郎には千夜一夜の物語を語り続けるシェーラザードに見える。

呉一郎は、シャラを救うために、手鏡を奪い、投げ捨てる!

そして"ダントン"が語り始めるのです。
千夜一夜を語り続ける、シェーラザードよ、
そのループを抜け出そうと。

呉         さあ千夜一夜の一夜先へ完璧な円を描いて飛んでゆこうよ。(手をさしだす)
シャラ     (鏡の破片を手に)千夜二夜?
呉         はい。同心円の彼方に。


そしてダントンをつかむシャラ。
なんと"ダントン"には地雷が仕込まれていた。
"完璧な円"を目指すべく、いざ、脱出!(というか爆発!)

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二人の思いとともに宙を舞うダントン。それを見つめる二人。
そして、最後のト書き。
名和四郎は、もう一本の火矢を弓につがえて放つ。
笛の音をひびかせてとんでゆく。

と、ここでワークショップは終了!
なんとか一幕を読み終えましたが、名和四郎の放った矢の意味は謎のまま。。
来週はこの名和四郎の矢の意味を解いていきます。
そして、二幕へ突入!


5/27(木)ワークショップレポート(林)

2021年5月28日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
5月最後のワークショップ、『海の牙〜黒髪海峡編』いきましょう!

先週はカツラ屋の奥から鍛冶屋が現れ、
登場人物が一気に増えたところでしたね。

鉄の棒が折れ、シャラは梅原北明に、その熱い棒を掴むよう仕向けられる。
困ったシャラはずっと黙っていた呉一郎に助けを求めます。

今週はここから。

呉とシャラの会話を聞いていた按摩は、
シャラが商売敵のパンマであることに気づきます。
あのパンマではないか!!と。
(というのも、呉一郎同様に、チョゴリを着てカツラを被っていたので、
この女が瀬良皿子だということに気づかなかった。)

女がシャラだとわかった按摩は、梅原北明に訴えます。
この女はパンマで、按摩である自分たちの憎っくき商売敵であると。
それを聞いた梅原北明は思いつく、

按摩 VS パンマ

やはり自分は"呼び屋"なのだ! 
とこの思いつきに北明は盛り上がる。

しかも、北明はシャラのことをチュジュドの女だと思っており、
"この女は、海を越えてつかみ合いの武者修行に来たのだ!"
と、ストーリーが勝手に組みあがって、さらに盛り上がる。

そして、ト書き。

激しい音楽の中を鬘が降りてくる。

もはや試合を盛り上げる儀式。
そこへ按摩の弟子たちレンタン、レンタン起こしを持ってくる。
そのレンタンの上へ二本の鉄をかざす。

北明の「火が弱い!」の声に、按摩の弟子たちは
カツラを次々とレンタン起こしの中につっこみ、燃やす。

とそこへ、チョゴリの女たちが現れる。
"日陰"として生きていた女たちは、
自分の髪の毛でつくられたカツラが燃えるのを見て嘆く。
その中には、名和四郎の母もいる。

カツラを燃やし、試合を盛り上げる北明と、
それを見て嘆き訴える母。
二人の間で揺れる名和四郎であったが、
北明が母に手をあげたことで、一変、名和四郎は北明に匕首で斬りかかる。

ところがあやまって、母を刺してしまう。
悲痛な少年の叫びは一つ、
"シュリンガーラ・ティリカ!"


そして、その頃、高温に達した二本の鉄。
按摩 VS パンマが始まる。
じわじわと中央の熱い部分へと手を伸ばしていく双方。
(一応書きます、どちらが熱いところをつかめるかを競っています!)

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これでもか!
と按摩はぐいぐい手を伸ばす。
その手からは煙があがるほど。

しかし、その煙は妙な匂いがする。
それに気づいた呉一郎は、按摩の手首をつかむ。
"ダントン"がまた動き出す。

呉   ぼくにもよく分るんです。
      この手は旋盤をいじくり回した手です。
      肉がそがれたり、つぶされたりした時には必ず、
      アンズをかむような切ない匂いを発するもの。
      ところが何だ、この合成樹脂の匂いは!


といって、按摩の手を名和四郎が持っていた匕首で叩っ切る。
呉一郎は、按摩の手首が義手であることを見破ったのである。

切断された手が、まだ鉄の棒をつかんでいる。
呉はその棒をさしあげて振る。
そして、切られた手首がクルクル回る。

そこでできあがったのは、なんと大車輪!


と、ここでワークショップ終了!
なんとここにきて、あの"大車輪"ができあがるとは。
呉一郎と、瀬良皿子の出会いとなった"大車輪"
このあとの二人は、どうなってしまうのか。

ついに一幕の終盤へと向かいます!
それでは、また来週!

5/20(木)ワークショップレポート(林)

2021年5月21日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
5月だというのに、雨、雨。
梅雨入りしたところもあるだなんて。
明日までに必要な衣類が乾かず、コインランドリーへ駆け込み、
これを書いています。
乾燥機の中をくるくると回っている服が大車輪で回転する呉一郎のようです。
(というのは言い過ぎました。)

とそんな個人的なことはさておき!
今週もいきましょう、『海の牙~黒髪海峡篇』

さて、先週は今までずっと台本上で「女」だった瀬良皿子がついに「シャラ」になりましたね。
そして、ワークショップ終盤のト書きでわかる、オカツの末路。。!!

今週は、番頭がそのオカツの包まれた新聞紙を開けるシーンからです。

番頭は包みを開ける。
その中身は、ほれた女房の生首。

泣くでもなく、わめくでもなく、番頭はその生首に話しかけます。
「オカミさん。手前です。手前がきます。ほら手前ですよ。」
とそこから過去にオカツからもらった手紙に書いてあった
カーマスートラのことなどを語る。

今まで主人の目を盗んでオカツと会うしかなかった番頭は、
やっとオカツと二人きりになれたのです。やっと日常の幸せ。
しかしその相手は、生首。もうオカツはいない。

そこへ呉一郎が頼まれたスカーフを持って戻ってくる。
しかし、カツラを被り、チョゴリを着たシャラを呉は見つけられない。
シャラがいないと思っている呉一郎は、親しげに「パンマのシャラシャラコー!」
と呼んでみたり、歌まで歌う。

シャラは黙って鏡越しに呉を見ていたが、話しかける。
買ってきたスカーフを見せるよう呉に催促するが、呉はなかなか見せない。
いいのがなかったと言ってしぶしぶ見せたそのスカーフは軍事将棋の模様。

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"泣けてくるわあ!" とわめくシャラ。
急にシャラの持っていた手鏡が割れる。
はあ、もういや!といわんばかりにシャラはスカーフも宙に投げる。
鏡が割れ、宙に舞うスカーフ。

音楽!
そして奥のカツラ屋の障子が開くと、鍛冶屋が金床で何かを叩いている。
鍛冶屋といっても、その正体は、あの按摩と弟子たち!
カツラ屋の主人もそこにおり、カツラのぶら下がった背のうを背負わされている。
さらには、梅原北明がいる。
(一気に登場人物が増えてきた!)
"呼び屋"である北明の指導のもと芸を磨く面々。

北明はシャラを見て、その髪の毛からチュジュドの女だと間違える。
それに対し、シャラはカツラであることを証明しようと髪の毛をひっぱるが、
取れない!その髪の毛は女のものになっている!

と、その時、なにかが折れる音。
先ほど鍛冶屋が叩いていた"何か"。それは剣の形をした鉄の棒である。
按摩は弟子たちの見本として、熱々の棒をつかむ。
(というか、渋々つかむ!)

それを見ていたシャラの「どうして万力でつかまないの?」
の一言を拾って、北明は、シャラにその役割をさせようとする。
揚げ足をとるように会話を進められたシャラは、呉に助けを求める。


と、ここでワークショップは終了!!
このあと、呉は一体どうでるのか?!

来週もお楽しみに!




5/13(木)ワークショップレポート 

2021年5月14日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』

今週も『海の牙〜黒髪海峡篇』
どうぞよろしくお願いします!

先週は按摩が嫉妬に暴走し、瀬良皿子の髪の毛を切ってしまうところでした。
呉一郎は虎刈りになってしまった瀬良皿子のためにスカーフを探しに行き、
瀬良皿子はカツラ屋の前にいく。

そして、
今日は梅原北明が連れていた少年、名和四郎の登場からです。

カツラ屋へ来た瀬良の前に、少年が飛び出してくる。
「シュリンガーラ・ティリカ」

少年の第一声。
瀬良皿子はわからず。 「何言ってるの?」

「シュリンガーラ・ティリカ」

少年はこれしかいわない。
カツラが欲しい瀬良皿子になかなかカツラを売ってくれない。

とそこへ、チョゴリ姿の女たちが現れる。
この女たちも髪が刈り取られており、その髪の毛はカツラとして売られているのだ。
少年はその中の一人の女のふところに抱きつく。
それは少年の母だ。

少年は瀬良皿子を振り返る。
母も瀬良皿子を見る。
チョゴリの女たちは礼をする。
つられておじぎをする瀬良。
虎刈りの双方。

ここで、ずっと「女」だった瀬良皿子の名前が「シャラシャラコ」に変わります。
瀬良皿子じゃなくて、シャラ。

この一連のおじぎ、で意思疎通をした(と感じた)途端に音楽!
ワークショップでは、サムルノリを聞きました。

同じ頭をしたシャラを見た女たちは、ここにも自分たちの仲間がいた
と言わんばかりに踊り、そして抱きつく。
カツラ屋に並ぶ自分たちの髪の毛で作られたカツラを見ては
「あれはあたしの。」「あれはあたしの。」と叫ぶ女たち、その勢いにおされ、シャラも続く。

ただ名和四郎だけがシャラの正体を知っているので、
「シュリンガーラ・ティリカ!」
を使って、シャラが母たちとは違う国のものであることを訴えます。

「シュリンガーラ・ティリカ」とは"愛欲"という意味で、
この言葉を使って名和四郎、いろんな表現をしていく。

母は、この名和四郎の由来を長々と語るも、
シャラは、なんとも言えない。だって故郷が違うもの。
母と名和四郎のやりとりを見届けつつも、自分の目的を忘れていないシャラ。
シャラはカツラが必要なのだ。

シャラはカツラが必要な理由として、パンマであることを打ち明ける。
自分たちと同じく苦労人であるに違いないと同情した母は、
シャラにカツラを差し出す。
さらには、チョゴリも来て欲しい、とお願いをする。

母はこう続ける。


母       といいますのは、あたしたちは日かげの身です。
              いつもカゲに巣喰ってこの名和四郎の行く末を見ていなくてはなりません。
              せめて、日かげに入ったら、ああ、あたしと同じかっこうをした
              あたしの生まれ変わりが行くと、涙をのんで見ほれていたいのです。

シャラ     陰に入るんですか?

母          陰に咲く花になるんです、あなたは日向(ひなた)に咲く花。
               でもそれはあたしですよ。

シャラ      姿はね。

母           女は姿です。女はもの腰ですからね。情熱も姿。
              そうしてうしろ姿に雨がふる。
              それは、なるになれないあたしたちの涙だと思ってください。

シャラ     するとあたしの後では、いつも雨が降っているのね。

母          はい、髪を刈られた日かげものの涙が。
              さあ、かぶってください。 着てください!


そしてまた音楽!
シャラはこうして日向へと向かい、チョゴリの女たちは日陰へ。
"私たちは、日陰。"私たちのことは気にしないで。"というチョゴリの女たちの自己主張。

「するとあたしの後では、いつも雨が降っているのね。」を文字通り再現するように
ジョウゴでシャラの背中に水をかける名和四郎。

と、それと入れ替わるように、カツラ屋の亭主がいくつもの血だらけの新聞紙を持って
通りすぎる。それはオカツのバラバラ死体。(なんということだ!!)

亭主はその一つを落として行ってしまった。
そこに番頭がやってきて、落としていった包みをあける。


と、ここでワークショップは終了!
シャラはカツラをかぶり、チョゴリを着て日向へ。
チョゴリの女たちの迫力を舞台上で見るのはきっと楽しいに違いないと、
想像を膨らませたワークショップでした。

一方、あんなにも男たちを翻弄していたオカツがなんと、もういない。。
登場人物すべての今後が気になるところで、また来週へと続きます。

それでは、また来週もよろしくお願いします!

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5/6(木) ワークショップレポート

2021年5月 7日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
みなさまいかがお過ごしですか?
ゴールデンウィークもワークショップ!

前回は「呼び屋」である梅原北明が登場し、
瀬良皿子と呉一郎の会話へと続きました。

今週もこの二人の会話から。
ではいってみましょう!

今までの呉一郎とは違って "ダントン" の力をかりて
瀬良皿子にどんどん迫る呉。
呉を弄ぶように会話を進めていた瀬良も少々おされぎみ。

そして、按摩たちがこんな歌を歌っています。

どこから来たのか 不思議なパンマ
夏がこがした黒い手で 夜毎の闇を研ぎまする
語るも因果なシャラシャラコ


カツラまで踊り出す始末。
この歌を止めようと瀬良は石を投げますが、石が跳ね返ってくる。
この石は瀬良皿子にしか見えない。そして痛い。
カツラ屋の前を通るといつも石を投げられると言っていた瀬良を思い出します。

瀬良もやられっぱなしではいられない。
それまでおされていた瀬良皿子は一変、
呉一郎の手の傷に爪を立てる。
そこでの呉一郎のせりふはこう、

何故だろう。 かくなる虐待を受けているのに
「このヤロー」といえないのは。
おじさあん、アンマのおじさあん。
密かなるもうい一つの気持ちとはこのことなんですかあ?!

傷口に爪を立てられるのは、嫌なことだけれど、
なんだか悪くないような気持ちもある...。
そこで思い出すのは、冒頭のカツラ屋の主人。
(テンカンをおこしてひっくり返っていると、女房のオカツが出てきて、
顔に足をのっけられるシーンがありましたね。)

と、そこに今度は本物の石がバラバラと降ってくる。
これは按摩たちが瀬良皿子に投げた石。
ここからパンマに対する按摩たちの勢いがすごい。

按摩にとってパンマは商売敵。
目をつけた呉一郎を横取りするとは何事!
怒った按摩は裁ちバサミを取り出して、女の髪を切ろうとします。
それを止めようと、呉は手を伸ばします。

するとその伸ばした右手、震えていない。
按摩が揉んでも治らなかった"ダントン"が震えていない。

自分ではなくパンマの手によって復活した"ダントン"を目の当たりにした按摩はショック!
嫉妬でいっぱいになった按摩の勢いはさらに加速。
止めに入ってきた呉一郎の手の傷にハサミを差し、
さらには瀬良皿子の髪の毛をばっさり切ってしまう。

ひどい虎刈り頭になってしまった瀬良。
スカーフを取って来てと呉一郎に頼み、一人になった瀬良は
ツカツカとカツラ屋の前へ。そしてどなる。
カツラをくださあい!

とここで、今日のワークショップは終了!

動きの多いシーンが続きました。
想像以上に按摩の呉一郎に対する思いが強く、暴走している。。
そう考えると、冒頭のシーン
「よろしいですか?」の言い方も変わってきそうです。

来週はあの梅原北明の連れていた少年が登場します。
まだ一言も発していない彼は一体何を話すのか。

ということで、引き続きよろしくお願いします!

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横浜の海の横で「海の牙」

4/29(木)ワークショップレポート(林)

2021年4月29日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
『海の牙〜黒髪海峡篇』今週のワークショップレポートです。
先週は呉一郎の右手、"ダントン"が自らの意思で動き始めたところでした。

それではいってみましょう!

妙な男が坂を上がってくる。
この男こそ今週の新しい登場人物「梅原北明」
そして、その男は少年を連れています。
のちにわかりますが、この少年の名は「名和四郎」


さて、その北明、カツラ屋を訪ねてきた様子。
落ちているカツラをひろいあげ、
連れの少年にこれを落としたのかと聞きますが
少年は喋らない。ーー。ずっと喋らない。

呉一郎がカツラ屋のものであると説明し、
北明と会話を始めます。
呉と北明の会話が進んでいくと、
この「梅原北明」が"呼び屋"であることがわかります。

余談ですが、みなさんはこの"呼び屋"、馴染みがありますか?
私は恥ずかしながら、あまり馴染みがなく、
どういう存在なのかあまりわかっていませんでした。
数年前、中野さんに神彰(じんあきら)の存在を教えてもらい、
その神彰が招聘した「ドン・コサック合唱団」のCDを聴いたのが
"呼び屋"を認識したきっかけです。

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(ドン・コサック合唱団、気になる方は是非聴いてみてください。)



この梅原北明、せりふの中で過去の呼び屋の仕事について語ります。
日劇の再建に一役買っており、
マーカス・ショーにラインダンスを踊らせて、大入りになったことや
マーカス・ショーの中に無名のダニーケイがいたことなど。
とはいうものの、いまやその面影が感じられない風貌。

今は何をしているのかという呉の問いに、
北明は自分の背負っているカツラを見せます。
今は、カツラの呼び屋であると言わんばかりに。
彼は、朝鮮半島の女の髪を切ってカツラを売っているのです。
そして、連れの名和四郎の母の髪の毛も
この背負っているカツラの一つになっていることがわかる。

カツラ屋の主人を見つけた北明は少年とともに、
主人を追い、その場を去ります。
それと入れ替わりに、パンマの瀬良皿子がやってくる。
(ワークショップ初回以来の再会!)

瀬良皿子はずっと自分を待ち続けていた呉一郎をからかう。
瀬良はなかなか本題に入らない呉一郎にしびれを切らせて、

女 草っ!
呉 何ですって?
女 草と言ったんだよ。植物の。おまえ、草民だな!?


この表現、今でいう「草食系」という意味の罵り方。
(唐さんはもうすでに、その表現を使っていたとは。。。!)
超ドストレートに、草っ!

その後、パンマとお客の関係について語る瀬良はこんなことを話します。

どういうことなんでしょ。あたしに呼びだしが来た。
あたしは立ってその人のところに歩いてゆく。
すると向うもどんどん動きだす。あたしは追う。向う遠ざかる。
それであたしはかけ出す。まるでグルグル回り。いい?
こんな円周があるとあなたはお思いになります?!赤の他人よ。
つき合いもないのよ。つまり鉄棒の大車輪でいえば
鉄棒という軸がないのに体が回るようなものじゃないの。

なんと、瀬良皿子自ら大車輪の話を始めるのです。
そこで呉一郎 (目が光ってくる)...。 のカッコ書き。

とうとう瀬良の背後に忍び寄り、髪の毛を触る呉一郎。
再び、ダントンが前のめりに動き出します。

"瀬良さん、よろしいですか?"
ついに初恋の相手へと手を伸ばす呉一郎。
冴えない呉がダントンの力をかりて、一歩踏み出します。

というところで今日はここまで。

"呼び屋"である梅原北明の目的は一体何なのか。
そして喋らない少年。
気になる登場人物も増えた今週のワークショップ。

なにより、瀬良皿子に接近する"ダントン"
この二人の展開もますます気になるところ。

引き続き、よろしくお願いします!




4/22(木)ワークショップレポート(林)

2021年4月23日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
『海の牙 黒髪海峡篇』 
ワークショップ、第3回目となりました!


前回は、按摩と男(呉一郎)との会話を掘り下げていきました。
「大車輪」の最中に目が合った女「瀬良皿子」のことが語られるシーン。
なんとも不思議な描写で興味を惹かれます。


さて、今週は、目が合った瀬良皿子の次なる動きから。
いってみましょう!


そういえばあいつ、変なことしたっけ、と記憶を辿り語る呉一郎。

瀬良皿子は、「その大車輪は円じゃない」と言った後、
その自らの手で、呉一郎の描く「大車輪」を切り刻むような動きをするのです。
まるで「北斗の拳」で登場する技、「南斗水鳥拳」のように...!
(というのはあくまでイメージですが、見たことない方は是非youtubeで検索してみてください。)

そうした手の動きで呉一郎の大車輪をメッタメタに切り刻んだ女。一体何者なのか。。
そんなこんなですっかり目を奪われてしまった呉一郎は鉄棒から落下。

按摩は呉の話を聞きながら、実は彼が瀬良皿子の「手」を"乞ふている"と指摘します。

そしてその後、その「手」の持ち主、瀬良皿子に再会した呉一郎。
按摩に導かれるようにその容姿を思い出すと、彼女が"パンマ"であることがわかります。
按摩にとっては商売敵。
弟子たちも思わず立ち上がって合唱。

と、そこへ冒頭のカツラ屋の三人が登場!
(冒頭のシーンについて触れている中野さんの4/13(火)のnote)

女房のオカツは、番頭との仲がバレないように、
寝ている隙を狙われるのだと主人に話し番頭を責めます。
がしかし、番頭がそのオカツの言動を直に受けてしまい、
オカツからもらった手紙を読み上げたりしてしまう。

オカツがあの手この手で言葉を繰り出して、主人と番頭の争いを収めようとしますが
猪突猛進な二人の男たちにはうまく機能せず、
ついには主人が包丁を持って飛び出してくる始末。

結局、番頭はオカツにその手紙も本から書き写した内容だと言われてしまいます。
やけになった番頭は、故郷から持ってきたものだと店にある長髪のカツラをひったくって出ていこうとします。
主人は逃すまいと包丁で切りかかる。
番頭は長髪のカツラでその包丁を振り払うと、その髪の毛が主人に絡みついてしまう。


番頭と長髪の間にピンと張る黒くて長い髪の毛。
そこでのト書きは 
"それを軸に円を描く二人。"

ここでキーワードの「円」ができあがるのです。

ずっと喧嘩を見守っていた呉一郎でしたが、
急に、できあがった円の中心である髪の毛を右手でつかみます。

呉  よせよ。ダントン。 これは鉄棒じゃないんだ。

ずっと動かなかったダントンが、意思を持って動き始めたのです。
そして呉一郎はつづけます。

呉    これでいくらかみえてくるだろうか。昼下がりの坂が。
       その坂を降りるとき、もしかしたらぼくの心臓は、すりきれた自転車のブレーキのように
       シューシュー音を立てるだろう。

カツラ屋の前で女が語った"昼下がりの坂"。
呉一郎の転落を予感させるこのせりふで、今日のワークショップは終了!

今日のワークショップでは、
呉一郎が大車輪の最中、瀬良皿子の描写をするシーンが続いたり、
女房・オカツが主人と番頭に対し、思いついた言葉をどんどん繰り出していくシーンがありました。


実際声に出して読むときも、その瞬間に思いついて言葉を発するというのを実践。
試しながら繰り返し読んだりして、なんだか稽古のような雰囲気もあったワークショップでした。

さて、
ダントンがついに動き始め、呉一郎はこれからどうなっていくのか。
次週やるところでは、新たな登場人物がやってきます。
呉一郎と瀬良皿子の再会も待ち遠しい!

それではまた次のワークショップも、よろしくお願いします!

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(唐ゼミ☆ 『海の牙 黒髪海峡篇』の舞台写真より)




4/15(木)ワークショップレポート(林)

2021年4月15日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
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↑鉄棒。「大車輪」の話題が出たので、イメージを具体的にするべく
近所の公園に来ました。が、からだが重すぎて逆上がり一回が限界!



今週もやってきました『海の牙 黒髪海峡篇』

さて、前回は女(瀬良皿子)と男(呉一郎)の会話から、
按摩が登場し、"昼下がりの粒々"の話をするところまででした。

まずワークショップの前半は、
前回の男と按摩の会話を少し掘り下げるところからスタート。

"粒々"にまつわるエピソードを話す按摩に対し
厄介な者に関わってしまったと後悔しはじめた男は、
あんた一体なにものなんだ!と聞きます。

台本上では「按摩」と書いてあるので読み進めてしまっていましたが
男(呉一郎)にとってはずっと謎の男がつかまらせてくれ、と言っていたのです。
ここでようやく、"按摩"であることが明らかになります。


そこへ按摩の三人の弟子がやってきます。
「もう帰ってもいいですか?」と聞く弟子に
按摩は"つかまる"のなんたるかを弟子に叩きつけ、そして人形を揉んで実践する弟子たち。
按摩学校の授業の様子が垣間見えるシーン。
(このあたりも『盲導犬』で登場した先生、生徒たちとやりとりが似ている...!)


ようやく男につかまることができた按摩は、
この呉一郎の右手の異変に気づきます。まるで鉛のような右手。

呉一郎は、この右手を「これ」といったり、「ほうらよ」と投げ出したりする。
小刻みに震えるその右手は言うことを聞いてくれない。
おまけに"ダダダントンタン"とリズムを刻み、歌まで歌ってしまう始末。
冒頭の呉一郎とはまるで違う人物!これも右手の仕業。
按摩はこの右手を「ダントン」と名付けます。
(ダントンといえばフランス革命で活躍した革命家「ジョルジュ・ダントン」がいます。)


按摩に右手をあずけながら、呉一郎は中学時代の話を始めます。
それは大車輪をやってみろと言われた時のこと。
(なんの気なしに話は続きますが、大車輪ができてしまう呉一郎、すごい。)
同級生にもてはやされるその大車輪の最中、向かいの校舎で
ある女と目が合う。
そしてその女はこう言う。

「その大車輪は円じゃない。」

「君は直線しか知らない人です。

君はおそらく自分の心臓を四角に切って定規で心弁の尖をちょん切ることができるが、

勢い余って辺という辺を気が向くままにふやして、

それを円と思いこんでる。君の大車輪はそういう邪道の円だ」


この言葉に引っかかった呉一郎は、鉄棒から落っこちてしまいます。
後々わかるのですが、この女こそ「瀬良皿子」。
(出会いは中学校時代!)
呉一郎の大車輪を「邪道な円」という瀬良。
彼女の求める円とは一体どんなものなのか。


もちろん今週のキーワードは"円"。
たしかにここまでの中でも"円"を思わせる「粒々」「まんまる」「大車輪」「丸太」
などがちりばめられています。
同じように、読者に"円"が目につくように表現で書かれている作品として
アラン・ロブ=グリエの『覗くひと』が取り上げられていました。

「邪道の円」とは何なのかも気になりますが
このヒロインの「瀬良皿子」の正体もいまだ謎。
彼女の描写について、一つ前の作品『ベンガルの虎』バングラデッシュ公演
でみた中東の女性像が影響しているのではないかという話にも触れ、
予習の材料が色々出てきたところでワークショップは終了!


次週もよろしくお願いします!








4/9(金)ワークショップレポート(林)

2021年4月 9日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』

4月になり、ワークショップでは『海の牙-黒髪海峡篇』が始まりました。

今月のアシスタントは、林が担当します。

どうぞよろしくお願いします!


この『海の牙-黒髪海峡篇』は1973年に状況劇場で初演された作品で

文芸誌「海」10月号に掲載された戯曲です。


初回ということもあって、まずは登場人物表をながめていきました。

中野さんがnoteで、この作品をやっていた時、ヒロインの名前が「瀬良皿子」だから、

リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』を聞いていた、と書いていましたが

「シェエラザード」は『千夜一夜物語』の語り手であるお姫様の名前で、

そこから着想を得た交響曲がこれにあたります。


ということで少しだけ交響曲をみんなで聴いて、 WSはスタート!


冒頭は、とあるカツラ屋のシーン。

そして按摩の群が通り過ぎる場面ののち、

そのカツラ屋の前、ゴミ箱のかげにうずくまっていた女と男、立ち上がる。

(この女は「瀬良皿子」、男は「呉一郎」)


女は石を投げられて怪我をしており、男が「大丈夫ですか?」

と聞くところからこの二人の会話は始まります。

自分はパンマだからカツラ屋の前を通るといつも石を投げられる、と女は話します。

("パンマ"(娼婦)というのは、パンパンの按摩で、"パンマ"というそうです。)

石を投げられるにも関わらず彼女はその道を通るのですが、

その理由として女は「昼下りの坂」の話を始めます。


男 あんたにはそれが本当に見えるんですか?

女 見えるとも。ぐんと下ってビールびん色の。

  ここをかけ降りてゆきたいといつも思うの。

  愛する人と手に手をとって昼下りの坂をビュンビュン走ってゆきたいの。

  このカツラやの前に立つといつもそう思います。

  どうしてかしら。

  きっと西陽がこのウインドウにさしこんで、

  こんがり黒々のカツラがじとっと焼けて、

  それがあたしの背中にはっついて、

  「瀬良、さあ、かけ降りてごらんよ」とたきつけるから。


愛する人と走る坂は上り坂ではなく、下り坂。

...なにやら今後の二人の展開を予感させるような表現がちらほら。

その後、女はお客を待たせているといってその場を去ります。

会話の最後で男は、前からあなたを知っていると女に告げるのですが、

一体どんな目的で女へ接近したのか。。


そこへ一人の按摩が現れる。

この按摩、異様なずうずうしさがあって、男につかまらせてくれとお願いをします。

あれよあれよと按摩のペースで会話は進み、彼もまた「昼下りの坂」の話をします。

"昼下りの粒々"という言い方をするのですが、これは坂に差し込める西陽のことで、

物の粒子を見たものはみな関係があるものです。」

と続けます。

つまり、私とあなたはもう関係があります。

ということを言っているのです。(これまた強引な距離の縮め方。。!)

このあたりのやりとりは『盲導犬』冒頭の、フーテンと破里夫の会話に似た感じがあります。


この按摩との会話が終わるところで今回のワークショップは終了。

今日の会話までで、この戯曲のテーマがたくさん出ている、と中野さんの気になる一言。


テーマと思われる表現や繰り返されている単語を自分なりに考えて、

今後どう物語と関わってくるのか気にしながら次回もワークショップに臨みたいと思います。


みなさま、次週もよろしくお願いします!

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(唐ゼミ☆の『海の牙-黒髪海峡篇』のDVD。ずいぶん前にもらって観たのですが、またワークショップが終わった時に観たいと思います!)