7/27(月)『ガラスの少尉』本読みWS 第5回

昨日は『ガラスの少尉』の最終回でした。
ガラス工場の女工「ミノミ」→バリ島の抗日ゲリラ少女「ガランス」と
エメロン・シャンプーのCMガイ「男」→日本軍「少尉」
の追いかけ合いが終焉しました。

面白いのは、彼らがお互いを追いかけうという劇全体の
パターンが発展して、めいめいが命を与え合う点です。

「少尉」は風防ガラスの破片を地面に擦り付けて摩擦熱を生じさせ、
ガラスの少女「ガランス」に体温を与えます。
その後、「少尉」はガラス化させられて粉々に砕けますが、
その破片の山に「ガランス」はリストカットにして血を与えることで、
「少尉」の命をつなぐのです。

そうして、これは日本の中年男とバリの少女の物語であることが
ハッキリしてきました。

かつて、日本軍兵士としてバリを占領した「少尉」。
初演の1973年当時は、人件費の安い工場を東南アジア諸国に
つくってお金儲けをする企業人としての「男」。

かつて、抗日ゲリラとして日本軍兵士たちを恐怖に陥れた
バリの少女「ガランス」。
いまは、コカコーラ社のインドネシア支部で搾取されながら、反旗を翻して
投石をして社屋を襲った少年少女たちの中の「少女」。

二つの時代を股にかけ、反目と惹かれ合いが物語を生み出しました。
そして、このストーリー全体が、バリに向かうジェット旅客機が
墜落するなかで夢見られた記憶、という点が、さまざまある唐十郎作品の
なかで突出してこの作品がユニークなところです。

まるで、カクテルを作るときのシェーカーに入れられて
シャッフルされてしまうようなカオスが、先ほどあげた二項対立を
飲み込んでゆくことろにこの劇の醍醐味がありました。

もともとがラジオドラマですから、圧倒的に主人公のモノローグに
寄りすぎて、対話で盛り上がるお芝居としては物足りないところも
ありますが、徹底して不思議な物語を描いたという点で、
純文学的な要素が強いともいえます。

『盲導犬』『ガラスの少尉』『ベンガルの虎』という具合に、
1973年の作品に注目しています。この圧倒的アジア。
次週から、本丸『ベンガルの虎』に入ります。

10月の唐ゼミ⭐︎公演をおもしろくするリーディングWSです。
8/2(日)19:30が初回です!