新国立劇場日替わり公演 『黒いチューリップ/盲導犬』
【あらすじ】
騒音鳴り響くパチンコ屋に、売れない声帯模写芸人エコーがやってきた。
彼は仕事先で拾ったお金を返すために、ここへやってきたのだ。
落とし主を探すうち、エコーは店内のパチンコ台の中でも一際異彩を放つ台、その台の「黒いチュ−リップ」に恋してしまう。
エコーが思わずチューリップに口づけする時、その台が外れ、後ろから一人の女が現れる。
それこそ、落とし主のケイコであった。ケイコにとってそのお金は、姉ノブコを出所させるための大事なお金だった。
かつて、花屋の春太(はるた)と恋仲だったノブコは、春太のために「黒いチューリップ」を作ろうとしていた。
それも完成に近づいた時、春太は他の女と浮気、それを目撃したノブコは刃傷沙汰の事件を起こし刑務所に入ってしまう。
それ以降ノブコは、刑務所から出ようとしない、言わば「引きこもり」になってしまったのだ。
ケイコは春太に姉の出所を手助けするように頼むが、春太には既に別の婚約者が。
さらに春太は、ノブコがやっとの思いで作った黒いチューリップの球根をわざと枯らしてしまう。
姉に代わり春太に襲いかかるケイコ。
が、出所してきたノブコ自身の説得によって止められ、ケイコは警察につれて行かれてしまう。
そして数日後、相も変わらずパチンコ屋の黒いチューリップを見つめているエコーの元に釈放されたケイコが現れ、
エコーと口づけをかわすのであった。
【あらすじ】
自身の盲導犬とはぐれてしまった影破里夫(えい-はりお)は、新宿のコインロッカーに犬を探しにやってきた。
犬の名はファキイル。盲導犬らしからぬ"不服従"の犬であるファキイルは、破里夫を置いてどこかへ行ってしまったのだ。
破里夫はそこで一人の女、奥尻銀杏(おくしり-いちょう)に出会う。
銀杏は三年前、今は亡き夫によってロッカーの330(ミサオ)番に、
かつての恋人との思い出を封印された女だった。
毎日毎日、服従するように百円入れるためにコインロッカーに通う銀杏。
そんな銀杏の前に、偶然かつての恋人タダハルが通りかかる。
彼は銀杏への思いを断ち切り、厳しい盲導犬学校の生徒として新たな人生を送っていた。
銀杏は亡き夫からの服従から逃れるためにタダハルをけしかけ、タダハルに自分を襲わせる。
その時、盲導犬学校の先生の姿を借りた、夫の亡霊が現れる。
亡き夫は銀杏を再び服従せんとする為に現れたのだ。盲導犬の胴輪をつけられ、再び服従させられてしまう銀杏。破里夫はそんな銀杏を助けようと、バーナーで胴輪を切ろうとするが、
再び現れた先生とその生徒によってリンチを受け、倒されてしまう。
タダハルへの思いを完全に諦め、夫に屈した銀杏は、タダハルとの思い出を捨てるためついにコインロッカーを開ける・・。
その瞬間、ロッカーからファキイルが飛び出し、銀杏ののど元を噛み切っていく。
ファキイルによって解放された銀杏は、歓喜に満ちた声でファキイルを呼び続け、
ロッカーの前に倒れていくのであった・・・。