4/14(水)何でも訊いてくれ!

2021年4月14日 Posted in 中野note
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↑唐さんがシェイクスピアと対談している本はこれです!
冬樹社から出ていた『乞食稼業』

最近、若葉町ウォーフで佐藤信さんと話していたら、
信さんの元生徒である梅山いつきさんが出した
『佐藤信と「運動」の演劇:黒テントとともに歩んだ50年』の巻末を眺めながら、
「この年表が便利なんだよね」とおっしゃっていました。
なるほど。本人というのは意外とご自身の業績について覚えていないもので
自ら育てた研究者に助けられていると言うのです。

そういえば、自分も様々な方からこんな質問が寄せられることがあります。

「唐さんの劇中歌の音源は、何てタイトルのCDに収録されていたっけ?」
「唐さんとシェイクスピアの対談(!?)が載っている本、何だっけ?」
「唐さんが海にいたテレビ番組、アレなんだっけ?」
「〇〇〇〇って感じのせりふがある劇、何だっけ?」

こんな風な質問が、最近は2週間に一度ほどのペースで来る。
今のところ、なんとか100点満点で回答しています。
脳内検索にひと晩くらいかかることもありますが、
周囲の力も借りて、どうにか思い出すことができている。
正直言って、唐さんのすべての戯曲、すべての著作を読んでいるわけでは
ありませんが、それでも何とかなっています。

過去にはこんなこともありました。
ある時、ご自宅にお邪魔して唐さんと話していた時に、
今や活躍中の若手俳優となった息子の佐助君が(確か10代半ば)、
父である唐さんに昔の仕事について質問をした。
すると唐さんは「中野に訊いてくれ」と。
その時は笑って聞いていましたが、自分はできる限り、
唐さんのことをちゃんと覚えていようと思いました。

芸能界には吉田豪さんという人がいて、
対芸能人のプロインタビュアーであるとともに「タレント本のプロ書評家」を
自認していらっしゃる。「本人よりも本人に詳しい」という触れ込みです。
このキャッチは、ひとつの理想ですね。

唐さんについていえば、なんといっても安保由夫さんが知恵袋でした。
安保さんにとって、1970年代以降の唐さんは実体験ですし、
何より、バー「ナジャ 」のマスターであることで、定期的に過去を
呼び戻す作業がなされていたらしく、安保さんの記憶は正確でした。
話した回数、アウトプットの頻度、記憶が衰えないために最も有効な手段です。

もっとも、人は記憶を改竄する動物でもありますから、
自戒を込めて、話を盛り過ぎてしまわないように、私はこのゼミログを書いています。

さあ、今日もこれからワークショップ!

4/13(火)どちらが好きか? 春と秋

2021年4月13日 Posted in 中野note
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↑春。近所の川には5月に備えて鯉のぼりが連なる。
まるでメザシかシシャモのようでもある。


前回のワークショップから早くも一種間が経ち、
明日は第2回目の『海の牙 黒髪海峡篇』です。

これは全く愛すべき台本、冒頭にとにかく力があります。

カツラ屋を舞台に幕開けしたと思ったら、
瞬間、絡みついた髪の毛が解けずに苛立ったカツラ屋の主人が
女房の名を叫びながら癲癇の発作を起こす。
すると、当の女房が登場し、発作を起こす旦那を静めるため
倒れた彼の頭に足をのせる。と、実際に旦那は落ち着きを取り戻す。
問題はここからで、脇にいた番頭は、この夫婦の行為に羨みに満ちた
視線を向ける。どうもこの女房と番頭はアヤシイ。
実際、倒れた旦那を残して、二人は店の奥へと姿を消す。
何やら奥で不倫な行為が行われている気配が漂うと、
やおら、勢いに乗った按摩の群れが舞台袖から列をなして現れ、
「どなたか、つかまらしておくんなさあい!」と叫びながら、去る。

ここまでが2ページとちょっと。
どうですか? この恐るべき情報量とハイテンション!

ところが、ここからは比較的ダラダラとした会話劇に突入します。
ペアを変えながら、それは結構な長さで続く。

・・・要はこの台本、明らかに突貫で書き上げられたのです。

1973年が明けると、2月『四角いジャングルで歌う』、
3〜6月『ベンガルの虎』のバングラデシュ公演と国内公演、
並走して5月櫻社『盲導犬』と6月ラジオドラマ『ギヤマンのオルゴール』の本番、
夏には8月テレビドラマ『追跡-汚れた天使』のお蔵入りと、その処遇への反対運動。
とこんな具合で、とにかく忙しかったわけです。

充分な執筆時間などあろうはずもなく。
が、そんな状況でも9月発売の「文芸誌『海』10月号」には
しっかり『海の牙 黒髪海峡篇』の戯曲が掲載されているわけですから、
唐さんの超絶速技。

必然、30代前半、唐さん絶好調時の勢いに満ちつつも、
どこか暴発しっぱなし、構成的にはどこに向かうのかわからない作品が生まれます。
これが、その頃の秋公演の演目に漂う共通の特徴です。

反対に春公演は、テントのオフシーズン、11〜12月にかけて
よく準備されて書き始められた演目が多い。構成がしっかりしています。
平たく云うと、春公演の演目は、エンディングを決めて書いた感じがする。
一方で、秋公演の演目は、最後にどうなるかわからないけど
とにかく書き始めてしまった感じに満ちている。

私は個人的に、秋公演演目が好きですねえ。
だから、ずっと唐ゼミ☆は『鐵假面』『夜叉綺想』などをやってきました。
こう云った演目に共通するカオスに、物語の筋を通す作業の面白さ。

一方で、お客にウケるのは春公演の演目です。なんと云っても見やすい。
薄々感づいていましたが、この前に『唐版 風の又三郎』をやって、
心からそう思いました。

劇団主催としては、コロナ厳しき折でもありますし、
興業は当てなければなりません。秋公演的な演目はしばらく断念かな、
と思います。でもやっぱり、特に唐さんを好きな人には秋公演演目の
入り組んだ魅力も伝え、共有したい!
そう思いながら、明日のワークショップの準備をしています。

4/12(月)とくめぐみの俳優ワークショップ レポート(菊池)

2021年4月12日 Posted in とくめぐみの俳優ワークショップ
 こんにちは。菊池です。今回の「とくめぐみの俳優ワークショップ」の
レポートは私が担当させて頂きます。

今回のワークショップは初回から数えて5回目!
今月からワークショップの時間が30分延び、2時間の講座となりました。


【今回のメニュー】
①「ウォーミングアップ(簡単なストレッチ・筋トレ)」
②「呼吸の仕方・息の使い方」
③「テキスト(『唐版 風の又三郎』の一部抜粋)を使用しての実践」


【今回のメニューの実践】
①「ウォーミングアップ(簡単なストレッチ・筋トレ)」
まずはいつも通りウォーミングアップとして
学校の体育の授業前にやるようなストレッチを行い、
その後、顔をほぐしたり簡単な筋トレをしたりしました。
ストレッチは緊張を解くという意味でもとても大切なものですし、
無駄な力を抜いて講座を受ける為にも大切なこと。
また、舞台に立つ際には怪我防止にも繋がります!


②「呼吸の仕方・息の使い方」
次に呼吸の仕方・息の使い方を習います。
これは言葉を大きく話す為に必要な基礎的な事。
毎回参加して下さる方は段々と上達していく姿が見られ、
継続の効果が出てきています。
今回初めて参加された方も最初は戸惑っておりましたが、
次第に呼吸法を掴めてきていました!
"言葉を大きく話す為の呼吸法って?"
"どうやったらより良い呼吸法を習得できるんだろう..."
そう思った方!是非次回のワークショップからご参加下さいませ!!


③「テキスト(『唐版 風の又三郎』の一部抜粋)を使用しての実践」
そして最後の30分はいよいよ実践です!
今回は唐ゼミも今年に上演を予定している『唐版 風の又三郎』の
冒頭シーンを使用してどの様に喋ると効果的な科白になるのか、
いわゆる技術的な面を学びました。

今回新しく学んだ事は、
"響きを確認する為に科白を母音で喋ってみる"
"口は横に開くのではなく、喉の奥から開いて縦を意識してみる"
という事でした。
例えば、この作品の冒頭シーンで
教授と先生の掛け合いのシーンがあります。ここの科白では、
生徒1「先生、あすこに誰かが立ってます。」
というのがあります。母音で喋ると、
「えんえい、あうおいあえあああっえあう」
となります。
これをまず練習し、その後元の科白を喋ってみると...
なんと、気持ちよくスラスラと言えるようになるのです!
この他にも、盛り上がっていくシーンでの科白の音程のあり方、
テンションのあり方。相手への科白の渡し方、
受け取り方はどの様に意識するべきか。
そしてそれらによって得られる効果を参加者の皆さんと
実践しながら学んでいきました。


いかがでしたでしょうか。
今回はこれでおしまいです!
今回のワークショップで自分の課題も再確認出来ました。

ご参加下さった皆様、ありがとうございました!
これを読んで気になった方はぜひ次回ご参加下さい!

次回は4/25(日)16時~18時です!


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4/11(日)夢をみるように(林)

2021年4月12日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』
最近、斎藤さんと共にzoomを利用して台本を読んでいます。
後輩の佐々木あかりと菊池くんに交じって勉強中です。

初回はつかこうへいの『飛龍伝』、
先日は秋元松代の『近松心中物語』を読み終えました。


数年前、中野さんが芝居の大学の講義内容で
蜷川幸雄さんの仕事を取り上げていた回があって
『王女メディア』『NINAGAWA マクベス』などの中に
『近松心中物語』もありました。


その時に台本も読んだのですが、なにより講義で観た
『近松心中物語』の映像が印象に残っています。
例えば冒頭、森進一の『それは恋』が流れる中、
人形操演が行われていたと思うと、そこから一瞬で花街に変わり賑わう人々の動き。
物語の終盤、心中をする場面で想像を遥かに上回って降る大量の雪。

でもやっぱり個人的に気になるのは役者さんのせりふと動き。
講義を受けていた時期に同じ秋元松代の作品
『常陸坊海尊』の稽古をしていたこともあって、
役者陣はどうやって動いてるのか、どんな風にせりふを吐いてるのか。

当時、稽古に苦戦する自分にとっては
救いを求めるような感じで観た部分もありましたが、でも純粋に面白かった。
あ、この動き、明日の稽古で使ってみよう。
と試みたりしたこともありました。

今回、斎藤さんたちとのzoom稽古で『近松心中物語』を読み終えた後、
数年ぶりにまた映像を観てみました。
自分で台本を読んだ後に映像を観ると、
ここのせりふこんなにゆっくり喋るのか!
とか、そこでそんなに動き回るのか!、
とやっぱり驚きました。

映像を観ていて思い出したのですが、
お亀を演じる市原悦子さん。

与兵とともに心中しようと蜆川やってきたところのト書き

"堤を、夢をみるようにお亀がくる。"

これをまさに体現して現れた市原さんの立ち居振る舞い。
口をあけて、斜め上を向いて、目がきらきらしていて、
スーッと水の上を歩くようにやってきます。

...これ実際やってみると、かなり不安な気持ちになります。
というのも、『常陸坊海尊』で、同じようなト書きがあって、
真似してみたことがあるので体験済みの不安です。

まず、口を大きくあけたまましばらく歩くだけでも勇気がいる。
しかもスーッと歩くのを表現するとゆっくり歩かなければいけない。
ということは、その時間を使うだけの見ごたえもなくてはならない。

映像だけ見ていると、なんの違和感もなかったのに
やってみると全然できない。。
なにより、こんな不安な気持ちになるなんて。。
と思ったことを今回数年ぶりに『近松〜』の映像を観て思い出しました。


でも今思えば、お亀が「心中」というものに憧れ、
自分も曽根崎心中のお初みたいにヒロインになれる。と思っていて、
それが梅川・忠兵の心中との違いの一つになっている。
そういうことが市原悦子さんのお亀のこの動きや表情で表現できる。

となると、口をあけて、目をキラキラさせることも不安にはならないはず。
台本の中身を勉強しつつ、そんなことを考えた『近松心中物語』でした。
次はどんな発見があるのか、また新しい台本に向かいたいと思います。

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4/10(土)誰かが割りを食っている

2021年4月11日 Posted in 中野note
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↑1981年2月初演、『下谷万年町物語』冒頭の唐さん。
1973年5月の『盲導犬』でも、似たようなことがあったに違いない。

一昨日、唐さんが他劇団の公演である自作の『盲導犬』に
出演していた話をしました。例の、立ち上がってト書きを読む男の話。
状況劇場の『ベンガルの虎 白骨街道魔伝』の本番中でありながら
これに通いすぎてしまったために、自身の劇団員から怒られてしまった
という唐さん。

しかし、一方で気になるのは、
よく考えてみれば、いかに出演する気マンマンの唐さんとはいえ、
すべての公演日程に立ち会うことは出来なかったであろうということです。
果たして、その日は誰がこの役を担ったのか。気になります。

ここから先は私の推測です。
・・・ひょっとして、蜷川さんがやったかもしれない。
当時の蜷川さんはレッキとした俳優ですから、
それは全然おかしなことではありません。
実際には、誰なんだろう?

そして、そんな風にスタンドインがいるとすれば、
さらに想像できるのは、その人が出番を待ち構えているところに
やおら唐さんがやってきて、その出番を奪ったであろうということです。

実際、私が『盲導犬』初演時の本番についてそんな風に想像を
たくましくするのには理由がある。
唐十郎×蜷川幸雄の第三作にあたる『下谷万年町物語』の初演時に、
そんなことが炸裂していたらしいのです。

つまり、冒頭と最後にだけ登場する「大人の文ちゃん」役。
まさに唐さん本人と言って過言でない、
ほとんどモノローグで構成されるこの役柄は、
初演の時にトリプルキャストが組まれていた。

必然、この日のこの回は〇〇さんの出演、という風に決まっていたわけですが、
にも関わらず、唐さんは他の人の担当回に乗り込んでは、
美味しいところをさらうこと、度々だったらしいのです。
(実際の被害者は、小林勝也さんと鵜沢秀行さん)

そのようなわけで、『盲導犬』でも、
必ずやそんなことがあったに違いないと私は考えます。
唐さんが登場すれば、お客さんも大いに盛り上がったでしょうが、
きっと、誰かが割りを食っていたはずです。

4/9(金)ワークショップレポート(林)

2021年4月 9日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『海の牙〜黒髪海峡篇』

4月になり、ワークショップでは『海の牙-黒髪海峡篇』が始まりました。

今月のアシスタントは、林が担当します。

どうぞよろしくお願いします!


この『海の牙-黒髪海峡篇』は1973年に状況劇場で初演された作品で

文芸誌「海」10月号に掲載された戯曲です。


初回ということもあって、まずは登場人物表をながめていきました。

中野さんがnoteで、この作品をやっていた時、ヒロインの名前が「瀬良皿子」だから、

リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』を聞いていた、と書いていましたが

「シェエラザード」は『千夜一夜物語』の語り手であるお姫様の名前で、

そこから着想を得た交響曲がこれにあたります。


ということで少しだけ交響曲をみんなで聴いて、 WSはスタート!


冒頭は、とあるカツラ屋のシーン。

そして按摩の群が通り過ぎる場面ののち、

そのカツラ屋の前、ゴミ箱のかげにうずくまっていた女と男、立ち上がる。

(この女は「瀬良皿子」、男は「呉一郎」)


女は石を投げられて怪我をしており、男が「大丈夫ですか?」

と聞くところからこの二人の会話は始まります。

自分はパンマだからカツラ屋の前を通るといつも石を投げられる、と女は話します。

("パンマ"(娼婦)というのは、パンパンの按摩で、"パンマ"というそうです。)

石を投げられるにも関わらず彼女はその道を通るのですが、

その理由として女は「昼下りの坂」の話を始めます。


男 あんたにはそれが本当に見えるんですか?

女 見えるとも。ぐんと下ってビールびん色の。

  ここをかけ降りてゆきたいといつも思うの。

  愛する人と手に手をとって昼下りの坂をビュンビュン走ってゆきたいの。

  このカツラやの前に立つといつもそう思います。

  どうしてかしら。

  きっと西陽がこのウインドウにさしこんで、

  こんがり黒々のカツラがじとっと焼けて、

  それがあたしの背中にはっついて、

  「瀬良、さあ、かけ降りてごらんよ」とたきつけるから。


愛する人と走る坂は上り坂ではなく、下り坂。

...なにやら今後の二人の展開を予感させるような表現がちらほら。

その後、女はお客を待たせているといってその場を去ります。

会話の最後で男は、前からあなたを知っていると女に告げるのですが、

一体どんな目的で女へ接近したのか。。


そこへ一人の按摩が現れる。

この按摩、異様なずうずうしさがあって、男につかまらせてくれとお願いをします。

あれよあれよと按摩のペースで会話は進み、彼もまた「昼下りの坂」の話をします。

"昼下りの粒々"という言い方をするのですが、これは坂に差し込める西陽のことで、

物の粒子を見たものはみな関係があるものです。」

と続けます。

つまり、私とあなたはもう関係があります。

ということを言っているのです。(これまた強引な距離の縮め方。。!)

このあたりのやりとりは『盲導犬』冒頭の、フーテンと破里夫の会話に似た感じがあります。


この按摩との会話が終わるところで今回のワークショップは終了。

今日の会話までで、この戯曲のテーマがたくさん出ている、と中野さんの気になる一言。


テーマと思われる表現や繰り返されている単語を自分なりに考えて、

今後どう物語と関わってくるのか気にしながら次回もワークショップに臨みたいと思います。


みなさま、次週もよろしくお願いします!

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(唐ゼミ☆の『海の牙-黒髪海峡篇』のDVD。ずいぶん前にもらって観たのですが、またワークショップが終わった時に観たいと思います!)


4/8(木)通いすぎた唐さん

2021年4月 9日 Posted in 中野note
『海の牙-黒髪海峡篇』のワークショップが始まりました。
初回は、作品の前段について、どうしても私の話が長くなってしまうのですが、
大学の講義のような序盤を、皆さん、よく聴いてくれました。

それにしても、この作品を執筆した当時の
唐さんのハードスケジュールを思うと、めまいがします。

1973年。
2月には『四角いジャングルで歌う』リサイタルを後楽園で行い、
3月にバングラデッシュに海外遠征をする。
4月からは国内で『ベンガルの虎 白骨街道魔伝』を公演。
同時に、5月にはアートシアター新宿文化で、
蜷川さんや蓮司さんによる『盲導犬』が走っている。
関西テレビ制作によるドラマ「追跡」シリーズ、
(中村敦夫さんと常田富士男さんが主演の事件記者ドラマ)
唐さんが監督した『汚れた天使』がお蔵入りになったのもこの年の初夏です。

そんな中で、唐さんは『海の牙-黒髪海峡篇』を書いた。
エネルギーがありあまっていた唐さんが、容易に想像できます。

そういえば、先月までワークショップの題材にしていた
『盲導犬』には、唐さんの出演シーンがあります。
正確には、唐さんでなければならない、と指定されているわけではありませんが、
芝居が7割ほどすぎたところ、佳境に差し掛かる直前に、
客席からいきなり立ってト書きをしゃべる男、が登場します。
・・・明らかに、唐さん。

これは、私たち唐十郎ゼミナールが『盲導犬』に取り組んでいた頃に
ご本人から伺ったことなのですが、初演当時、唐さんは新宿文化に
通いすぎて、劇団員に怒られたらしい。

唐さんから聴いた当初は、あまりピンときていなかったのですが、
こうして整理してみると、そりゃそうでしょう、という気がします
だって、『ベンガルの虎 白骨街道魔伝』の公演中ですからね。

ちなみに、ワークショップの途中で、私は
「きっと唐さんのことだから、『ベンガル〜』の終演後にすら、
唐さんはアートシアターに駆けつけたかも知れませんねえ。
同じ新宿で、花園神社の目と鼻の先ですから」
と言ったのですが、あれは、完全に間違いです。

よくよく考えてみたら、
1968年の『由比正雪』以降、唐さんたちは花園神社を離れているわけですから。

しかし、例えばこれは私の想像ですが、上野不忍池で公演した後、
ご自宅は阿佐ヶ谷ですから、ひょっとしたら新宿に寄ったかも知れない??

アートシアターは映画館ですから、ロードショーが終わった後に
仕込みをして、受付をして、芝居が始まっていた。
開演が遅いこと、劇がかなり進行してからあのト書きのシーンがくることを
考えれば、あるいは、それを強行したかも知れない。
(『ベンガルの虎 白骨街道魔伝』も、3幕3時間コースの超大作で
終演は22時頃になったと思いますが・・・)

劇団員に怒られた、という言葉から、
そんなことも当時の唐さんならやりかねないなと思いながら、
『海の牙-黒髪海峡篇』の執筆時を想像しています。

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4/7(水)わが友、オガテツ

2021年4月 6日 Posted in 中野note
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↑初めて、長野市の「ごんどう広場」で公演した時のカーテンコール。
センターにいる小川哲郎支配人はじめ、長野の皆さんのパワーのおかげ!

昨晩、久々に小川哲郎さんから連絡をもらいました。
唐ゼミ☆メンバーが「哲郎さん」「哲郎くん」「オガテツ」と呼んで
慕っている彼は、長野の人です。

出会った時、自らも表現者であり、バンドをやりながら
長野市のステキなライブハウス「ネオンホール」の支配人をしていた
オガテツは、唐ゼミ☆を長野に呼んでくれたのです。

テント公演を誘致するのはほんとうに大変な作業なのですが、
彼は仲間を募り、善光寺のふもと、権藤商店街にある
イトーヨーカドーの駐輪場を確保して、私たちを迎えてくれました。

長野の美しい街並み、素朴で滋味に溢れた皆さんの対応や
食事に恵まれて、公演準備も本番も、これ以上なく幸せな体験でした。
善光寺とともにある日常は、毎日が観光気分で、
水が良いために、滞在期間中に体内の水分がキレイになり、
髪にもツヤが出るのだと女子劇団員はよろこびました。

そのオガテツは、今は拠点を静岡に変えて、
SPAC(静岡舞台芸術センター)のスタッフとして働いています。
そこで、宮城聰さん演出の唐十郎作品、
『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』の稽古にいよいよ入るのだと、
わざわざ連絡をくれたのです。

『おちょこ〜』は私にとって、何度か読んだきりで
あまり詳しくない演目なのですが、あの十貫寺梅軒さんが
タイトルロールを張った芝居です。
現在では国際的に活躍されている宮城さんは、
近作であるSPACNO『二人の女』だけでなく、
「冥風過劇団」時代には、『あれからのジョン・シルバー』を
手掛けられたこともあったそうです。(それを観たかった!)

オガテツがスタッフの一人として支える舞台が
果たしてどんな上演になるのか。頑張れ、オガテツ!
https://festival-shizuoka.jp/program/mary-poppins-with-her-upside-down-umbrella/

4/6(火)あんまに会いたい

2021年4月 6日 Posted in 中野note
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↑写真は、近所で散歩中に発見した看板。
トップシーンで「あんまの群れ」がステージを襲来して度肝を抜く演目、
それが『海の牙-黒髪海峡篇』。

明日から始まるワークショップの準備をしています。
2011年をかけて一年間とり組み続けた演目なので自信があるのですが、
実際に久々に読んでみると、ことばや設定を
かなり忘れてしまっていることに気付きました。

これはマズい。
そこで、せっせと調べ物をし、改めて読み直しています。
すると、なんだか初めて出会うみたいに面白い。

『下谷万年町物語』をやり切った後に、これをやると決めて、
夢野久作の『ドグラ・マグラ』を読んだな、とか。
ヒロインの名前が「瀬良皿子」なので、
リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』をやたら聴いていたな、とか。
もちろん、2011年に取り組んでいた演目ですから、
東日本大震災とその後の対応への記憶が圧倒的に濃いのですが、
10年前の自分と劇団も思い出しながら読んでいます。

さらに、この10年を過ごしながら、
いつも頭や体のどこかには、この劇があったことに気づかされました。
(本気で上演した演目は、どれもそうだと思います)

東京、九州、朝鮮半島、東南アジア、
それぞれの土地をめぐりながら、30代前半の唐さんが考えたこと、
燃えるような義侠心が、この台本には込められているように思います。

秋公演の題材ですから、長大な春公演の演目に比べ、
初演時の公演回数が少なく、どちらかといえば日陰の身のような
境遇にありますが、これは、なかなかどうして、スゴいですよ。

現在も大活躍されている小林薫さんが、
役者として圧倒的に躍進したのも、この演目の「名和四郎」という役を
得たからだと云います。6月までかけてじっくりとやります。
終わったときには、まるで大河ドラマを自分が生き抜いたような
達成感が訪れるはず! 自分も相当たのしみにやります!

4/5(月)まごころ天に通ず

2021年4月 5日 Posted in 中野note
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今日は嬉しいことがありました。
恒例となっている若葉町ウォーフでのトーク配信。
毎月第一月曜日AM8:00から、「テツヤとアツシの朝から呑んじゃってる」
と題して、8:45まで語り明かす。

若葉町ウォーフの運営者の一人にして、
プロデューサー、舞台監督、時に作・演出までをも手掛ける
岡島哲也さんことテツヤとの早朝雑談も、今回で8回目。
https://www.youtube.com/watch?v=UUH-BVYiPTs

そこで、嬉しいニュースを聞かされたのです。

ことの発端は前回、第7回の番組。
かつての横浜国大で、唐十郎教授と私がどんな関係だったのかを
お話ししたのですが、同じ大学つながりという連想で話題は
山崎豊子さん原作のドラマ『白い巨塔』におよび、
田宮二郎版で東貞蔵教授を演じた中村伸郎さんに及んだのです。

私は『白い巨塔』のパロディとして、
中村伸郎さんが東北大学教授を騙るサギ師を演じた伊丹十三監督の
『タンポポ』を何度も観ています。
場面が津川雅彦さんから中村伸郎さんに移る時のあの強引なカメラワーク、
視線の交わし合いが大好きなのです。

そこから、如月小春さんによる評伝やご自身による名エッセイ
『おれのことなら放つといて』(タイトルがいい!)を読み、
三島由紀夫さんとの仕事や、渋谷ジャン・ジャンでのイヨネスコの『授業』、
坂本頼光さんが現在も行っているモノマネの話題でも盛り上がりました。

伸郎さんが、あの小柄な身体で、時に壮大な古典劇のような三島さんの
劇を支えた演劇がどんなだったか、時に別の公演への出演を終えてから渋谷に
駆けつけ、11年間にわたって毎週金曜の夜遅くに開演させ続けた
『授業』がどんな具合であったのか、残念ながら1981年に生まれた自分には
実演に接すること叶わず、ただ『授業』の録音を聴いて舞台姿を想像するのみです。

・・・という話をしていたところ。
なんと前回の放送のことを、中村伸郎さんの御息女で、女優のまり子さんが
気にかけて下さったのだと、テツヤが教えてくれたのです。

これは嬉しかった。
別に会おうというわけでも、これから連絡を取ろうというわけでもないのですが、
私は10代の頃から、そのようにして活字や映像や、とにかくのメディアの向こうに
いた人たちを追いかけているうちに、ご本人や、ご本人の関係者に
お目にかかることができたことが何度もありました。

唐さんにもそうして突撃しましたし、朝倉摂さんや中根公夫さんや
吉井澄雄さん、先日にお話しした栗本先生にもそうやってお話を
伺うことができたのです。

なにか、この人はスゴいぞ!と関心を持っているうちに、
その思いが伝わるというのは、嬉しいものです。

そういうわけで、今日は久々に『授業』を聴きながら寝ることにしましょう。