3/18(火)『ジャガーの眼』本読みWS 第7回 その②
2025年3月18日 Posted in 中野WS『ジャガーの眼』
↑キーアイテムとなる牛乳びん。「明治」「森永」などいろいろメーカーは
ありますが、私なら『少女都市からの呼び声』のヒロイン「雪子」にちなみ
「雪印」にします
「少年(ヤスヒロ)」の登場により「サラマンダ」がただの人形に戻ると、
「しんいち」「夏子」「Dr.弁」の会話が始まります。
「しんいち」から「くるみ」を遠ざけ、やがてくる自分との結婚生活に
「しんいち」を引き戻そうとしている「夏子」。だからこそ、「夏子」は
病院の周りで行われている雛祭りのイベントや小学生たちのブラスバンドに
「しんいち」を導くことで、彼にやがてくる家庭や子育てのよろこびを
想像させようとしたわけです。
ところが、「しんいち」は「夏子」に角膜「ジャガーの眼」の持ち主として生き、
婚約を解消したいと言い出す。当然、ショックを受ける「夏子」でしたが、
一方で、「しんいち」の足もとに転がってきた空の牛乳びんが、
そういった「しんいち」の思いを吸収してしまうという不思議な現象が起きます。
ここに、「リンゴ」と「牛乳びん」の対立が始まります。
正常に歩んできた人生の道を踏み外させようとするものが「リンゴ」です。
それは、角膜の旧の持ち主である「シンジ」と「くるみ」が飾った幸せのリンゴ。
だからこそ、「くるみ」との情動に満ちた人生に「しんいち」を誘います。
一方で「牛乳びん」は、それを飲む子どものイメージにもつながり、
人生を踏み外す冒険心を吸収してしまう役割を果たすアイテムとなるのです。
(このあたり、『少女都市からの呼び声』の影響が強い。ラストシーンで、
「ビー玉」=「雪子」をビンの中に封印する「ビンコ」が「夏子」の原型です)
「リンゴ」を取って「夏子」との人生を放棄するか、「牛乳びん」を選んで
既定路線に戻るか逡巡する「しんいち」に、「Dr.弁」は激しく反応します。
移植手術の権威であり、自らの肉体を以って移植にすべてを賭けてきた
「Dr.弁」とすれば、角膜がもとの持ち主の思念を帯び、「しんいち」の
全人格をある方向へ導く、もっと言えば、支配してしまうような現象は
到底容認できないからです。
そういう意味で、「Dr.弁」は見た目こそ奇抜ですが、「管理」や「常識」の
守護者であると言えます。「くるみ」や、「くるみ」にそそのかされて
それまでの人生計画を狂わせようとしている「しんいち」こそ、アウトロー
であり、角膜「ジャガーの眼」はその元凶です。そんな存在は認めない、
それが「Dr.弁」の信念だからです。
信念に基づき、怒り、「しんいち」に選択を迫る「Dr.弁」。
人を狂わせる臓器=角膜「ジャガーの眼」があるとすれば、それこそ
「しんいち」から取り出して研究の対象とし、学会に発表しなければ
ならないと吠える「Dr.弁」。
「リンゴ」か「牛乳びん」かを迫られ、「しんいち」は「牛乳びん」をとろうと
しますが・・・・
さらに、明日に続きます。
3/17(月)『ジャガーの眼』本読みWS 第7回 その①
2025年3月17日 Posted in 中野WS『ジャガーの眼』
↑オッフェンバックの歌劇《ホフマン物語》には、ホフマンの『砂男』を
もとにした人形「オリンピア」の場面があります。「サラマンダ」の造形の
参考になります
日曜恒例の本読みWSを今日に振り替えさせてもらいました。
月曜開催ですのでご参加の方は少なめでしたが、欠席されたみなさんの
ためにも、力を入れてレポートします。
読んだ箇所は2幕終盤。唐さんの3幕ものの2幕終わりはいつも面白く、
今回も会心の展開を見せます。
まずは、「サラマンダ」が「田口」に迫るところから。
「くるみ」の運ばれてきたベッドとともにもう一台のベッドが部屋に
運ばれてきていました。そこに眠っていたのは、「サラマンダ」。
彼女は、探偵「扉」によって造られた人形です。
浮気調査の尾行時など、「田口」が一人でいて不審がられないよう
生み出された「サラマンダ」は、対象の男女を追ってホテルに身を潜めた
こともありました。そうするうち「サラマンダ」に心が宿った、という設定です。
その実、「サラマンダ」は、造り主である「扉」が「田口」への好意を込め、
託した存在でもあるわけです。
「サラマンダ」は控えめながらも「田口」にそばに置いてくれるよう懇願し、
「田口」はこの願いを拒絶します。追いすがる「サラマンダ」ですが、
動けるのは「田口」の前でだけ、「少年(ヤスヒロ)」が現れると、
ただの人形に戻ってしまいます。
ここまでくると、先週に展開した、くるみ→しんいちへの口説きと、
このサラマンダ→田口のやり取りが同じ構造を成しているのは明白です。
そして、しんいちの心は動き、田口は動かない、という差も際立ちます。
健気な「サラマンダ」のうちひしがれようは悲哀に溢れて、
観る人の心を打ちます。人よりも人形に情感が溢れる、寺山修司さんが
好きな「人形」を扱いながら、そこに唐十郎流のアレンジを加える面白さが
いっぱいです。
続きは、明日。
3/16(日)次回の出演(米澤)
2025年3月17日 Posted in 劇団員note
このあいだ稽古をしました。
5月下旬に本番の予定です。
情報は公開はもう少ししたらです。
なので詳細は次回書こうかなと思います。
劇場での本番に出るのは去年7月のエコー劇場での少女仮面以来です。
間が空いているのでやっぱり不安です。
先日の稽古では、台本の冒頭部分をひとまずやってみました。
これまで何度か作・演出の方と話していて、
作品に対する漠然としたイメージを持っていたのですか
初回の稽古を経て少し地に足がついたかんじです。
作成途中のチラシも見させてもらったり
いろいろ動いています。

3/15(土)ホタルイカの春
2025年3月15日 Posted in 中野note
今朝、息子と一緒に方々に歩き回りました。
散歩がてら買い物をして、まとめて買うと安価なペットボトルの水なんかを
補充しました。その帰り道、開店時間の10時になったので魚屋を覗くと、
今年になって初めて見るホタルイカが置いてありました。
いつもの富山産のものです。
走りのものなのでちょっと高級でしたが、買いました。
この時期になると、唐さんとホタルイカを食べたことが何度もあるのです。
春の味です。
ホタルイカに限らず、自分はよくイカを食べていたので、
唐さんからよく「中野はイカもの好きだ」とも言われました。
イカもの好き。
ニセモノの中のホンモノを追うのが僕らの商売です。
いつも褒めことばだと受けとってきました。
3/14(金)六平さんのお話
2025年3月14日 Posted in 中野note
渡り歩き、東海道線にお世話になりっぱなしでした。
いつも車の運転してばかりなので、こんな風に運転は電車の車掌さんに
任せて本ばかり読み、あちこち歩いていられると贅沢な感じがします。
そしてまた、渡り歩きながら3/13の早朝に放送されたラジオ深夜便を
後追いで聴きました。六平直政さんが出ているよ、と教えてくれたのは
状況劇場、新宿梁山泊に続いて唐ゼミ☆も暖かく見守って下さっている
Yさんで、折に触れて昔の資料などを見せてくれるありがたい方です。
45分に渡る六平さんのお話は、インテリかつ人情味があって、
1970年代後半から1980年代半ばの唐さんや状況劇場の様子も生々しく、
ご自身で言われるようにセンス良く教えてくださって、保存版にしたい
内容です。
(↑3月20日までの限定配信です。)
横浜駅からの帰り道を歩きながら、たのしく聴きました。
面白いお話を聞きながら、電信柱に寄りかかって忘れられた竹ぼうき
を発見しましたが、六平さんの世界に触れながらこういうものが
目に飛び込んでくると、何かステキに感じます。
3/13(木)オープンから一年未満で事件
2025年3月13日 Posted in 中野note
周辺で人の打合せ終わりを待っている必要があって、
それで散歩したのです。テント公演でお世話になっていた頃も
徐々に整備が進んでいましたが、さらに居心地良さそうな空間が
展開していました。
すると、自動販売機の脇に、上の表記を発見。
新宿西口中央公園は1968年に整備たのだ!と初めて知りました。
よくよく調べてみると、1968年4月1日に開園したのだそう。
・・・ということは、唐さんたちがここで例の強行上演をしたのが
1969年1月3日ということなので、開演から初めてのお正月に
大暴れされたのだということになります。
花園神社を出ていくことになったところで、新宿の反対側に
広場が出来たわけですから、あ、ここいけるかも!と思ったのが、
わかるような気もします。運営にとっては迷惑な話ですが。
しかし、新聞沙汰になったので、ひょっとしたら開園間もなくの
この公園が知名度を上げるのに貢献したかも知れません。
もう55年以上も前のことです。
3/13(水)3番目の男〜『ジャガーの眼』第6回本読みより
2025年3月12日 Posted in 中野WS『ジャガーの眼』
↑斑紋付きの角膜「ジャガーの眼」。「しんいち」の前の持ち主「シンジ」
のさらに前に、元々の持ち主がいるらしい。誰なのか?
会話のなかにとても大切な話題が隠れてしました。
それは「くるみ」と「しんいち」のやりとりのなかで、
「くるみ」がはっきりと、「しんいち」を3番目の角膜の持ち主だと
自覚している点です。つまり、亡くなった恋人「シンジ」はこの
斑紋のある角膜「ジャガーの眼」のオリジナルの持ち主である
わけではなく、あくまでも2代目なのだということを、「くるみ」は
長いせりふの各所で言い立てます。
パッと見ていると、これは埋もれがちなモチーフです。
場面としてして、延々と続く二人の応酬は、「くるみ」が「しんいち」を
かき口説くド迫力に溢れていますから、その中でポツポツと
繰り出される角膜そのものの成り立ちは埋もれてしまいがちです。
しかし、ここがクローズアップして全三幕の終結部分につながるので、
ぜひとも押さえておきたいポイントが、ここなのです。
後々、「では、オリジナルは誰なのか?」という謎が
この『ジャガーの眼』の最深部として浮上します。
大切なので、補足でした!
3/11(火)『ジャガーの眼』本読みWS 第6回 その②
2025年3月11日 Posted in 中野WS『ジャガーの眼』
昨日の続きです。
↑セルマー、憧れのメーカーです。小学生のブラスバンドを出してくる。
唐さんによる、生活感のとらえ方の妙だと思います
「幸せのリンゴ」=「くるみ」を選ぼうとした「しんいち」のもとに
「夏子」が甘酒を買って帰ってきます。
すると、「くるみ」の前に戸が立ち塞がり、二人の前から「くるみ」を
隠してしまう(「扉」の仕業か?)。伴い、強気だった「くるみ」も、
意気阻喪して「夏子」の前に踏み出ることをやめてしまいます。
他方、「夏子」は、「しんいち」を誘い出します。
「節句(ひな祭り)のお祝いをしている女の子が可愛かった」
「小学生たちがブラスバンドもしていた」と言って、「しんいち」に
それらを見に行こうと連れ出すのです。
「夏子」の提案は、明らかに自分が将来「しんいち」と築くことに
なる家庭を夢み、訴えています。「くるみ」の存在に気づいている
「夏子」は、「しんいち」を正道に戻そうとするのです。
その迫力に、「くるみ」もまた遠慮を余儀なくされてしまう。
人間関係が交錯する、短いけれどインパクトのあるシーンです。
「しんいち」「夏子」を追って「くるみ」が去ると、
誰もいなくなった舞台に、久々の「田口」「少年(ヤスヒロ)」が
現れます。彼らは「くるみ」を探し、床に落ちたクルミを頼りに
「ヤスヒロ」は「くるみ」を追います。
すると、「田口」の手をつかむ者がいる。
病室にあるベッドのうち、まだ稼働していなかった一台には、
人形「サラマンダ」が横たわっていました。
これから「サラマンダ」と「田口」による恋愛劇が展開します。
次回は、恒例の日曜日でなく、3/17(月)です。 3/10(月)『ジャガーの眼』本読みWS 第6回 その①
2025年3月10日 Posted in 中野WS『ジャガーの眼』
↑20歳前後の頃によく甘酒を手作りしました。良い酒粕を手に入れて、
砂糖は大胆に大量に入れます。生姜を入れるのが好きでした。塩少々
昨晩の『ジャガーの眼』本読みは2幕中盤を読みました。
角膜の取り外し手術を決意した「しんいち」の前に「くるみ」が現れ、
対話のなかで「しんいち」を心変わりさせてしまう場面です。
角膜取り外しを決め、「夏子」に甘酒を買いに行ってもらった「しんいち」
の前に「くるみ」が現れます。髪はほどかれ、藤色のスカートを着て、
前回までの登場とは打って変わった女性らしい姿です。
「しんいち」が角膜の取り外しを宣言すると、「くるみ」は殊勝に
ふるまい、自分は身を退き、もう二度と亡き恋人の角膜を追うことを
しないと言って、「しんいち」が決意した取り外しをやめさせにかかります。
そして、「くるみ」による別れの長せりふ。
台本にして1ページ半に渡って切々と別れを述べたてる「くるみ」に
「しんいち」の心は揺さぶられます。「手術はしない」「その上で、
時々は、夏子がいないところなら会いにきても良い」などと、
不倫めいた提案を「しんいち」は持ち出します。
「くるみ」に同情した「しんいち」の優しさといえばそれまでですが、
そういう「しんいち」の甘さ、優柔不断さに「くるみ」がつけこんで
いるとも言えます。こうなるともう「くるみ」のペースで、彼女は本心を
露わにし、「夏子と別れて自分と暮らせ」「シンジの替わりとしてでなく、
しんいちとして自分はあなたを愛する」などと迫ります。
「しんいち」は最初、「平凡な自分には平凡な夏子が似つかわしい」と
言って「くるみ」の提案を退けますが、「くるみ」に「平凡さを捨てて
冒険せよ!」と駆り立てられ、これに乗ってしまいます。
「くるみ」のせりふの中で、ずっとこの『ジャガーの眼』という劇の
重要モチーフである「リンゴ」が、「くるみ」と「シンジ」が暮らした
幸せの象徴であったことも明らかになります。だから、リンゴの向かう
先に角膜の移植先を占っていたのです。
「くるみ」は「しんいち」に、「このリンゴをつかめ」と迫り
「しんいち」は実際につかもうとする。これは、「夏子」を裏切って
「くるみ」に転ぼうとする動きに他なりません。
・・・という会話劇をメインに昨日は展開しました。
この後に、「夏子」が戻ってくる場面、久々に「田口」「少年(ヤスヒロ)」
が登場したシーンもやりましたので、それは明日。
また、今日ご紹介した「しんいち」と「くるみ」の対話のなかに、
見逃してはならない終幕への伏線がはられていますので、それについても
取り上げます。
3/9(日) 数年ぶりの再演 (齋藤)
2025年3月10日 Posted in 劇団員note
暖かくなってきて、花粉が飛んでいる今日この頃。
みなさんお元気でしょうか?
僕は花粉症で目がかすみ、鼻水が止まらない日々を過ごしています。
さて最近は4年ぶりに新国立劇場に通わせていただいています。
今月末に、こちらの公演の再演があります!
どどん!
そう、『オバケッタ』です!!(詳しくはこちら)
キッズのダンスプログラムである、『オバケッタ』の再演がございます。
ちなみに当時のゼミログにこんな風に書いていました。
今、関わらせていただく公演の半分ぐらいが、ダンス公演だったりするのですが、
ダンス公演の舞台監督として、立ち上げからしっかりと作品に携われた最初の作品だったようにおもいます。
再演を見越して、当時の齋藤はしっかりと資料を作ってくれていたのですが、4年の月日は残酷です。
当時作成した資料、小さい文字が少し読みにくくなっていました(まだ、老眼ではないです)
大分、松本と、ツアーもございます。
子供向け、とはいえ、かなり面白い作品で、
初演の時は、千龝樂でカーテンコールが5回も続いたこともありました。
(カーテンコールを続けるか、やめるかは舞台監督の僕の判断なのですが、
続くことがとても嬉しく、またいつ終わっていいのか、心底怯えていた記憶あります)
癖になる音楽も好評のこちらの作品。
是非とも見にきて欲しいです。
また、8月には、同じく山田うんさん演出のこちらの作品も控えています。
こちらも動画がありました。(これは去年のですが)
しみじみと噛み締めるのは、再演はとても幸せなことなんだな、ということ。
一度だけの上演も多い中、自分が作品の立ち上げにしっかり関わらせていただいた作品が評価を得て、
再演という形でもう一度お客様に届けることができるのは、とても感慨深いです。
携わった作品は、また再演になっても困らないよう、しっかりと資料を残そう。
そして未来の自分は老眼かもしれないので、文字のサイズは大きくしようと心に決めて今日この頃なのでした。
(まだ老眼ではない)齋藤でした。