9/28(水)極寒、リバーサイドの野外劇

2022年9月28日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑野外劇のカーテンコール。普段は加害者の側に回る私だが、
やっと終わったと拍手しながらかなり嬉しかった

昨日は午前中からAlbanyに行った。
再来月のパーティーに備えて、シニアたちは二班に分かれて
準備している。美術製作がしたい人たちは、飾り付けの造花を作る。
アーティストによるお手本を参考に量産していく。

もう片方のチームは、出し物の合唱の練習をしている。
『ブルーベリーヒル』『スカボローフェア』
『ワンダフルワールド』に加え、みんなで作詞して先生が曲を
振ったもう一曲をやる。昨日は3つの既存曲の練習。
パート分けしてハモるのだが、自分は高い方に配属されている。

『スカボローフェア』を歌いながら夏に二度行ったエジンバラを
思い出した。電車の窓から見えたスコットランドの海沿いの景色。
夏だけど寒そうだったあの風景が、サイモン&ガーファンクルの
描いた世界だと思う。

『ワンダフルワールド』の2番を歌っていると、自分の子どもが
生まれて2歳くらいまでを思い出す。
それなりに長く生きて来たので、歌詞が沁みるようになった。

その後はデスクワークをして、夜に野外劇を観に行った。
テムズ川沿いのベニューで、ナショナルシアターのバックアップによる
新作劇の発表があった。

18世紀、産業革命前夜に発見された不思議な牡蠣をめぐる
エピソードに、現在のジャーナリストが北極の様子を
ライブストリーミングする話が絡む、というトリッキーな物語だった。
要するに、気候変動と環境破壊を意識して創作されたストーリーだ。

俳優のレベルが高く、スタッフワークも緊密で唸ったが、
野外に必要なワイルドさには乏しかった。
明らかに膨大なコストがかかっている。

舞台は貧乏臭くてはいけないが、
あまりにテクノロジーを駆使しすぎると、
もはや劇場の中でやれば良いのではないかということになる。
そういうステージだった。

それから、昨晩は寒すぎた。
気温は10度だったのである。もっとマックスの厚着で
行けば良かったと後悔しながら観劇し、1時間50分を震えながら観た。
直前に近所のベトナム料理屋で熱々のフォーを食べたのが幸いして、
風邪をひくことはなさそうだ。一方で、隣の席に座ったおじさんは、
なぜかハーフパンツに半袖Tシャツにも関わらず余裕そうだった。

英国ではこういう人をよく見かける。
極寒なのに半袖短パン、バーの屋外席でギンギンに冷えた
ビールジョッキをあおっていたりする。

多様性という言葉を実感する。彼らは同じ人間に違いないが、
同じ人間には思えない。体感温度にも、かなり個人差があるらしい。

役者は役によって露出度高めだったり、
ずっと倒れている役の人もいて心配になってしまった。
かつて、極寒の中で自分が公演してきた様々な作品を思い出した。

9/27(火)Croydonの教会から

2022年9月27日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑ガラの悪い街ながら壮麗な教会がある。コンサート直前の風景。

イギリス国教会の様式


Croydonという街に初めてやってきた。

といってもロンドン市内、Albanyから徒歩と電車を合わせて

南に小一時間行ったところにある街。


ああ、また一つワイルドな場所に来た。

スリや盗難に遭わないように。ケンカにも巻き込まれないように。

けれども、見るべきものは見たいのでジロジロと周囲を睨め回しながら

歩いてしまう。


目的は9月頭に都心で聴いた合唱集団The Sixteenの公演。

彼らほどの実力者であれば、同じプログラムでも何度も

聴きたくなる。むしろ、違う会場の建築を観て、

そのアコースティックをいかに彼らのものにするのか、

愉しみは膨らむ。それにしても、なかなかの土地柄・・・


こういう新たな土地、しかも経済力や治安が良くなさそうな場所を

訪れるのにも慣れてきた。パウンドランド(英国の100円均一)や

Icelandという量販店スーパーを発見したら、その土地の平均所得は

推して知るべし、ということも分かってきた。


自然に、財布やケータイを仕舞う場所を組み替える。

後ろポケットに入れていようものなら、

ヒョイとつままれてしまうこともあるからだ。



先週末、日曜日は面白かった。

ピーター・フィッシャーの出演するフィルハーモニア管弦楽団が

マーラー1番を演奏するので、この曲が最も好きだというダイアンを

連れて行った。指揮者のサントゥ・マティウス・ロウヴァリは美音で、

精妙な優雅な音楽をやる。


主題の変遷がよくわかり、綺麗な演奏だった。

これがロンドン交響楽団ならもっと躁鬱の激しくなるけれど、

彼らの演奏は温かみがあって、高齢のダイアンを招くに

もってこいだった。


ピーターがお友達割引を駆使して、特等席を格安で用意してくれた。

私たちが座った席の周りには彼の他のお友達もいて、

終演後はその中のご夫妻のご自宅に伺った。


我ながらちゃっかりしたものだが、

ダイアンは持ち前の社交性を発揮し、サウスバンク・センターと

ナショナル・シアターから徒歩5分のところにあるその家を

「ステキな部屋だ!」絶賛しながら、私と一緒にお呼ばれした。


帰り際になって、その家のご主人に、

「昔、日本人の演出家が演出した舞台を観たことがある」

と言われた。アラン・リックマンが出ていた、とも。


ということは、蜷川さんが演出し、清水邦夫さんが書いた

『タンゴ・冬の終わりに』の英語版『Tango at the end of Winter』

に違いなかった。


1991年。プロデューサーの中根公夫さんは勝負をかけた。

それまで、十八番である『王女メディア』『NINAGAWAマクベス』

に向けられた海外での評価は高かったけれど、いずれも各地で

短期に公演したイベント的な公演だった。


その点、『Tango〜』は座組を海外でつくり「興行」を目指した。

日本の演劇人が挑んだ大ジャンプだった。

会場は、ウエストエンドの中心にあるピカデリー・シアター。


結果的には、勝ったとは言えない公演だった。


初日直前にチケット販売を行っていた会社が倒産して

売れていた入場料が全く入って来なくなった。

(それでも中根さんは、わずか当日券が売れる収入や助成金を

駆使し、赤字と闘いながら予定していた公演を全うした)


演目も、西洋のリアリズム演劇の延長にある戯曲をなぜ持ってきたのか

と言われたらしい。期待された"日本"の要素は、確かに弱かった。


けれど、観劇したその人は、面白かったので二度観に行ったそうだ。

これには嬉しくなった。

帰国したら、中根さんに伝えに行きたい。

9/26(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第8回レポート(中野)

2022年9月26日 Posted in ワークショップ
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↑三幕で再登場した菊地を演じる安達くん。
『ジョン・シルバー』に思い入れのある私たちは、オウムものせました

昨日は『黒いチューリップ』本読みWSでした。
三幕半ば、ケイコが復活するまでの過程に取り組みました。

ここは歌舞伎でいうとダレ場です。
物語の本筋に戻るまで、お客さんがリラックスして楽しめる
にぎやかしの場面。惹き込まれるような展開、ではなく
バラエティに溢れる賑やかなシーンの連続。

毒を飲んで意識を失っているケイコ。
その解毒に協力した景品買いの婆あ・サキは、
見返りにエコーの体を求める。結果、エコーは襲われることに。

初演のサキを大門伍朗さんが演じたことからも分かるように
かなり笑いの要素が強いシーン。強いていえば、老いて尚
盛んなおばあちゃんの力強さ描く場面でもあります。

残されたサワヤカがケイコの解毒にあたっていると、
菊地が登場する。そして、毒を飲んで意識を失ったケイコの
代わりに姉ノブコに会って来たと告げます。

菊地に対する10万円の返却も済んだノブコは、
陽の光を恐れながらも出所し、鉢がどうなったかを気にして
こちらに向かっている。これが菊地による最も重要な情報でした。

さらに面白いのは、菊地がコンドルタクシーを退めたこと。
今や彼は、陥没した車両を救うために負った怪我が原因で松葉杖を
必要とする体となり、「シルバー」という会社で働いていると言う。

松葉杖とシルバーといえばご存じ「ジョン・シルバー」。
つまり、ノブコという奇矯な乗客に感化され、思い入れすぎた菊地は
今はタクシー業界のアウトローとなって彷徨っているというわけです。
シルバーという会社は、彼が妄想しているだけの架空の会社なのでは
ないか。そういう読み方もできる。
菊地こそ、俳優なら誰もが演じてみたいオイシイ役です。

彼が去ると、エコーが再登場。
彼は、少しだけサキに襲われたものの、神聖なるパチンコ屋の正義を
司るクギ師・天魔によって救われました。
エコーを襲ったサキや婆あたちは叱られ、大人しくなります。

エコーは元の目的であるケイコのもとへ駆けつけ、解毒を続ける。

と、そこへ今度は刑事の泡小路が乗り込んでくる。
これまで強面だった彼の様子は一変し、オカマとして本性もあらわに、
一本指のパチプロ・田山への想いを打ち明けます。
エコーも仕方なく相手をするうち、エスカレートする二人の悪ふざけ。

・・・という場面までやりました。

面白いのは、他の作品に比べればかなり平和に感じるこの物語の中でも、
脇を固める登場人物たちがそれぞれに異様なこだわりを持ち、
それが魅力になっていることです。

菊地・・・車両とタクシー業、お客
天魔とグリコ・・・パチンコ店と釘打ち
サワヤカ・・・数学塾
泡小路・・・パチプロ・田山

という具合に、彼らの一途さはそれぞれの対象に向かって暴走します。
そして、その王者たる存在が最後に登場する姉ノブコなのです。

次回はケイコの復活から。あと2回で大団円です!

9/25(日)フランスに来ています(齋藤)

2022年9月26日 Posted in 劇団員note

前回、佐渡島に来ていることをゼミログで書かせてもらいましたが、
今は、以前からお付き合いがある、劇団地点の海外公演に帯同でフランスに来ています。

と言っても、土曜日の夜18時に横浜を出発して、
成田→ドバイ→パリ(空港)→ エブルーと移動。
約30時間の移動を経て、今、無事にホテルに到着したところです。

前回のゼミログの時もそうだったのですが、ちょうど移動やら到着のタイミングで記事を書いているので、
全く有意義な情報がないままのゼミログになってしまうのが残念なところ。
前回の記事を読むと、明らかに書くことなくて、かりんとうでお茶を濁していますね・・・。



ちなみに佐渡島では、えげつない豪雨に見舞われたり、
異常な刺身の安さに興奮を覚えたり、と楽しい思い出になりました。
個人的には、唐さんの舞台セットに使えそうな、昭和レトロなおうちがたくさんあり、
興奮して写真撮りまくっていました。(住人に、大きな声で挨拶しながら。。)

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(ステージはこんな感じでした。奥は海。控えめに言っても最高!!)


ということで、今回は書くことないから、フランスから佐渡のことでお茶を濁しております。
フランスとポーランドの思い出は、またどこかで。
頑張ってきます!!

齋藤

9/24(土)劇中歌WSレポート

2022年9月24日


過去のゼミログに、「夜叉綺想」の360度舞台セット写真が載っているので、こちらに載せておきます!
< 夜叉綺想のゼミログ>



さて、「夜叉綺想」4回目です。

今日から二幕へ突入しました!


謝肉祭、と牛乃が言っていたのは、

博士の功績を讃えるパーティーだったのです。


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<パーティーに潜入した牛乃>


これまで一幕ほとんど喋らなかった謎の男、野口博士、喋りまくる!

というのも、スピーチをするという場面から二幕が始まるからである。


レオナルド・ダ・ヴィンチがチェーザレ・ボルジアのために仕事を

したことを引用しながらスピーチは進む。

その仕事の一つに、大脳前頭部の細胞のデッサンがあると博士は話す。

それに付随した実験で、犬の前頭部を執刀し、「お手」をしてみると、この犬は、お手をすることなく水にかぶりついたというのだ。

つまり、この手術により、犬は「待つ」ことができなくなったのだ。


これに習って、野口博士は人間でこの手術をしたのである。


ダヴィンチが当時タブーとされていた脳の解剖にまで踏み込んでいった話

などが織り交ぜられ、せりふがズラーっと続きました。


その間、嫁のケイコはというと、博士がスピーチをしているのを

いいことに、インターンの男をたぶらかしている。

博士はこれが視界の隅に入って集中できない。


一幕で登場したマニキュアの紳士は、場を進行するため

博士にスピーチを催促しつつ、ケイコが目に入らないように気を使う。


今日のWSでは、博士と紳士を中心に何度かせりふを繰り返していただきました。

気を遣っているようで、結果的に博士を煽ってしまう紳士。


さて、そして、人間でのこの手術に踏み込んだ博士は

自分の功績として、アルコール漬けにされた5ミリ立方の細胞を

皆の前に掲げるのであった。


そこで博士と紳士のこのせりふのやりとり。


博士:あれはいつの年だったか...

紳士:昭和三十五年の七月十日でした。


この日付、一幕にも出てきました。

牛乃の日記に書かれていたのと同じ日付がこれです。


と、ここまでで今日は終了!

次回はいよいよ、牛乃と博士が対面します。

仮面を被り、マントを翻してやってくる彼女の登場が楽しみです。


というわけで、10月も「夜叉綺想」を取り上げます!

詳細はこちら!!

9/23(金)店には決して近づけるな

2022年9月23日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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Albanyに通うこと8か月が経とうとしている。

しかし、まだまだ知らないことは多い。

通い慣れた企画ですら、知らない計画が進行中ということもある。

これが日本語でのやりとりならば、注意して聴いていなくても

会話が自然と耳に入ってくる。「何それ?」と会話に割り込み、

情報を得ることができる。しかし、やはり英語は難しい。


そんな状態ではあるが、先日、

シニアたちを連れて都心に出かけると聞いた。

尋ねれば、数ヶ月に一度そういう外出をしているらしい。

連れて行ってよと頼んだら、ウェルカムと言われた。


結果、昨日は学校をサボって都心に出た。

朝10時にヴィクトリア&アルバートミュージアムに集合。

英国の黄金時代を築いた女王と旦那さんが世界から収集した品々を

展示した施設だ。南はアフリカ、東は中国まで、"帝国"という言葉を

強く実感させる展示品の数々。


10時に行ってみるとスタッフが集まっていた。

シニアたちはタクシーでやってくる。

今現在タクシーがどこにいるかはケータイでモニタリングできる。

それを眺めながら、導線を確認する。


このスロープを使おう、とか。

荷物置き場はここで、学芸員に話を聞く場所はここ。

最後に集合して軽食を取る場所はここ、という具合だ。

運営にあたるエンテレキー・アーツの面々は、サンドイッチや

スナック、フルーツを持参している。まことに余念がない。


今日の目当ては、常設展ではなく、

アフリカ・ファッションをテーマにした特別展だ。

コンテンポラリーにアフリカ色を反映したモードを展示していて、

華やかだった。その上で、常設展のアフリカ部門も見てね、

というコンセプトなのだが、今回は時間を限っているために、

シニアたちはひたすら特別展のみを見る。


果たして、タクシーから降り立ったシニアたちは輝いていた。

ルイシャム地区は移民の街。アフリカやカリブからやってきた婦人たち

なので、アフリカ・ファッションを地でいっているのだ。


展示場では一つ一つを食い入るように眺め、記念撮影をしてゆく。

とにかくじっくりと見て、キャーキャー盛り上がっている。

こういう性質の展覧会だから、おそらくファッションを学んでいる

学生たちが大勢来ていて、彼らもなかなかの洒落者揃いだったけど、

恰好も振る舞いも、うちの組は度外れに派手で周囲を圧倒していた。


ツアー開始前のスタッフ会議でお互いに確認しあったのは、

彼らをミュージアムショップに絶対に近づけてはならない、

ということだった。それだけで2時間過ぎてしまう。

そういうわけでショップには目もくれさせず、目的地まで案内した。


一通り終わった後は軽食を取り、迎えに来たタクシーにみんなで

乗り込み、にこやかに帰っていた。なかなかの遠足である。

9/22(木)鷹野さんに会う

2022年9月22日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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昨日は日本からやってきた鷹野梨恵子さんにグローブ座で会った。

優れた女優である鷹野さんは、
今やGMBH(ゲーエムベーハー)https://www.gmbh0802.com/という集団を
立ち上げ、運営もしている。

ちょっと前にプロデュースしたイエローヘルメッツの『ヴェニスの商人』
を終えたばかりだが、疲労も感じさせずイギリスにやってきて、
シェイクスピア関係の場所を巡り歩いたらしい。

グローブ座のガイドツアーと『ヘンリー8世』を一緒に観た。

鷹野さんを初めて認識したのは彼女がまだ無名塾に在籍していた頃、
当時、よく唐ゼミ☆に出演してくれていた虎玉大介くんが
他の芝居に出るというので観に行ったら、そこに鷹野さんも出演していた。

物語の設定は昭和初期。戦争に向かっていく日本を生きた
若い芸術家たちを描いた話だったと思う。
あだっぽい踊り子役を彼女は演じていた。

持ち前の身体能力を活かしてピョンピョンと跳ねるように
舞台に現れたのが、とても目を惹いた。

それから、他の男の役者たちとせりふを応酬した後、
「あたし、ヌードはしないわよ」と言ったのをよく憶えている。
言葉のインパクトもさることながら、その見栄の切り方、
表情はせりふを凌ぐ押し出しの強さだった。

いかにも勝ち気そうな感じがしたけれど、
3年程前に再会した普段の鷹野さんはおっとりした感じで、
そのギャップに驚いた。しかし、やはり強い。

無名塾に入る前、ドイツでコンテンポラリーダンスを学ぶために
一年間留学した経験もあるという。
そんな風に国際経験もあり、踊り込んでいるから体力も違う。

渡英の翌日にはストラトフォード・アポン・エイボンに行き、
さらに翌日にはロンドン塔を巡りグローブ座に来て、二本の劇の合間に
ガイドツアーにも参加していた。

自分はといえば、渡英翌日はビザのカードを郵便局に取りに行った後は
頭痛がひどい上に買い物の仕方もよくわからなくて、ビクビクしながら
ホテルで寝ていた。実感として三日間は動けなかった。

それに比べると、イギリスでスイスイとでフル稼働し、
1週間くらいで日本に戻っていく鷹野さんは強靭だ。
研修を終えて日本に帰り、再訪したとしても自分には真似できないと思う。

シェイクスピアについての全てにキラキラした視線を送っていて、
この歴史上もっとも有名なイギリス人に、どれだけ彼女が
突き動かされているかが分かった。

それにしても、『ヘンリー8世』こそは渡英以来観てきた
シェイクスピアの中で、一番の自分のお気に入りである。

エリザベス1世の誕生シーンで締め括られるあの劇を、
プラチナムジュビリーの時に観、お葬式の周辺で観たことになる。
出生の場面では場内から大きな拍手が送られた。

幕開け直後だった6月よりも出演者が好き放題に演じていた。
細部に遊びがあって、熱演する場面の燃焼も激しく、両者のメリハリが
効いていた。バカな下ネタの数々を大胆に繰り出す中に、
それぞれの役柄の悲哀を滲ませていた。

2回目だし、作品をよく知っている鷹野さんにも教わり、
どこをカットし、何を足しているのかもよく分かる。
自立した台本としては、他に優れたものはいくつもある。
ここまで押し上げたのは現場の力だとつくづく思う。
やっぱり昨日も面白かった。

↓エリザベス1世(左)を黒人の女優が演じる。技ありのアイディア
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9/21(水)安保さんが亡くなった日

2022年9月21日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑2011年のリサイタルより。ステージ上でいつも張り詰める唐さんも、
安保さんが横にいれば安心の表情


昨日、9/20は安保由夫さんが亡くなった日だった。
改めて思い出してみれば、2015年のこと。
もう七年も経ってしまったのかと驚く。

ほんとうに、ちょっと前まで安保さんの肉声を聞いていた
ような気がするけれども、あの時はまだ、今度6歳になる長男が
生まれる前だったから、確かに七年だ。

安保さんが亡くなった日、セレモニーはやらないと聞いたけれど、
居ても立っても居られなくて、高円寺駅南の火葬場に押しかけた。
唐組や梁山泊のメンバーはもちろん、状況劇場で同級生的な
仲間だった十貫寺梅軒さんや小林薫さんも来ていた。
式はないけれど、それに匹敵する人の輪がそこにあって、
僕らも末席に加えてもらった。

あれから、『あれからのジョン・シルバー』や『唐版 風の又三郎』を
二度ずつやった。その度に安保さんを思い出してきた。

ああ、生きていてくれたらなあ、と思う。
紅テント在籍中、卒業後も安保さんが手がけた歌で、
まだまだ知られていない劇中歌があると思う。

『音版唐組(CDで復刻し『状況劇場劇中歌集』)』に
収められたのはいずれもそれぞれの演目中、メインに歌われた唄。
けれど、ちょっとしたコミックソングや、役者たちが群れなして
歌うような記録に残りづらい劇中歌の中にも、安保さんの傑作はある。

ちょうど、劇団員たちとオンラインで『ベンガルの虎』を研究している。
10月後半から唐ゼミ☆WSも同じ演目を読むことにした。

あの中でヒロインが歌う『雑巾の唄』はもちろん良い。
でも、女性劇団員たちが唐行きさんに扮して合唱する
『鬼と閻魔』も傑作だ。

本当に、唐さんを追いかける自分たちにとって、
安保さんが逝ってしまった喪失感は大きい。
もっともっと色んな話と歌を聴きたかった。

安保さんがいた新宿のナジャに行くと、
酒が得意でない自分のために、安保さんは薄い水割りと
食べる物を作ってくれた。長芋を輪切りにしてバター醤油で炒めたもの、
日本らしくもちもちの麺でつくった特性のナポリタン・・・

今こそああいうものが食べたい。
安保さんはちょっとしたものを仕立てる料理上手でもあった。

9/20(火)まるでお正月のように

2022年9月20日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑チェーン店ではないこのコンビニ。ここは開いているはずだと思ったが


昨日はエリザベス女王の葬儀だった。
朝から日本とのZoom会議をしたが、その後は予定が無くなった。
語学学校も研修先も劇場もどこも閉まっている。
本来はケンブリッジまでコンサートを聴きに行く予定だったが、
それも1週間前には中止の連絡が来ていた。

日用品の買い物があったから、家を出て近所を歩いた。
道すがら、あの店は閉まっている、この店も閉まっている、
しかし、やっている店もある。2割程度の稼働だった。

メジャーなスーパーは全部閉まっている。
チェーン店も大概閉まっている。
ロンドンには日本のコンビニにあたる24時間営業の店は稀で、
そのかわり雑貨屋みたいなものは無数にある。
これらもほとんど休みだった。

小さい頃のお正月を思い出した。
当時は昭和の終わりで、現在のように元旦から、
あるいは二日から店が開いているということもなかった。
三が日という言葉が生きていた。
おせち料理やお餅は、それら店舗が閉まっても食事が絶えないための
保存食だった。

小学校に入った頃からコンビニができ、
それに引きずられるようにスーパーも開き始めた。

だから学校に上がる前の、あの静だったお正月を思い出した。
予定から予定を渡り歩いている時の方が、熱心に音楽を聴こうとするし、
本だって読もうとする。今日は早朝のミーティングで燃焼してしまって
なんだか能率の悪い日になってしまった。

洗濯はした。
ロンドンは寒く、もう半袖や薄手のジャケットに活躍の機会はない。
コンパクトに畳んで、近く、日本に送るための準備を始めている。
届くのに数ヶ月かかる安い船便で送る予定。

残り三ヶ月半。100日ちょっとだ。

9/19(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第7回レポート(中野)

2022年9月19日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑鉢にはノブコ(Nobuko)の頭文字であるNの文字!
咲いてすぐ散る花の仕掛けは、当時劇団にいた安達くんが開発し、
仕掛けを実験しては盛り上がった記憶があります。


昨日は『黒いチューリップ』本読みの第7回。
2幕の終わりから、3幕冒頭をやりました。

前回に引き続き問題になっているのは、
姉ノブコが獄中からケイコに送ってきた球根入りの鉢です。
エコーがこれに触れたところ、成長は加速し、
もう少しで花開きそうなつぼみまで急激に変化していたことが判明。
これを、花にとって心地よくもとあった鉢に戻し、
いま少し見守れば見事開花、という寸前まで来ます。

途中、エコーを伝説のパチプロと思い込む泡小路の邪魔も入りますが、
彼のエコーへの一途な想いは簡単に黙殺されるギャグも挿入される。

球根が鉢に還ると俄然、身を乗り出してくるのが春太です。
彼は花屋のプロとして、黒いチューリップの生育に
病みついた者として、花弁の色が黒へと向かっていることを確認。
さらに、それが暗闇の中だけでなく、立派に世間(陽の当たる世界)
でも生きていかれるかどうかをテストします。

それこそ、この芝居の全ての場面に底流として流れる善福寺川の
川の水を注射器で含ませることで、黒い花を試そうとする。

このシーンの春太とケイコの問答は、
黒いチューリップと姉ノブコの存在と特質を重ねて見事に展開します。
同じ花を相手にしてそれぞれのせりふを言いながら、
ノブコを想うケイコ、ノブコそっちのけで花に執着する春太を
鮮やかに描き出す。

結局、ノブコの花はシャバの水には耐えられず、
その花びらを散らします。そして、花を試す春太の強行な姿勢を
恨んだケイコは、かねて練習していた毒入りキッスを
春太に食らわせようとする。

が、その時、練習中に誤って虫歯の穴に入ってしまっていた
毒薬が口の中に踊り出し、ケイコはこれを飲んでしまう。
春太は口から吐き出された一粒、自分を襲おうとした丸薬を
すぐにの農薬と見抜きます。

ケイコの遺した書き置きにより、
エコーはケイコの解毒のための景品買いの婆あサキを
訪ねる運命に直面します。これが2幕の終わり。

ここまで、ずっとタクシー運転手の菊地も刑事の泡小路も
舞台におり、しかも、80〜100人からなる警察学校の生徒たちが
それぞれに抱えたチューリップの鉢、すべての花弁が散る
というト書きは、唐さんが現場に託した挑戦状といえる
ト書きが炸裂します。

変わって3幕。
おっかなびっくりパチンコ店「黒いチューリップ」の裏手を
訪ねたエコーとサワヤカ(エコーが加勢として呼んだ)は、
サキをボスに頂く婆あの群れと対決します。

『ロミオとジュリエット(小田島訳)』をパロディしながら
このシーンは展開し、エコーはサキに課されたロミオの
せりふを見事に言ってのけ、解毒の薬の調達まで、一歩前進。

・・・というところまでやって昨日は終わりました。
いつも3幕ものでは、2幕の終わりが緊迫し、時に血を見るなど
苛烈なシーンが唐作品の持ち味ですが、この芝居は特別です。

基本的には非常にシリアスなのですが、
設定の中にはかなり間抜けというか、バカバカしく、
どこまでいってものどかななのです。

心に波風を立てず、ショッキングな要素を控え目にして、
安心して見られるのがこの演目の魅力。それを象徴するシーンの
連続です。その中に、球根の仕込まれた鉢をテストする場面では
唐さんらしく「引きこもり」の心情を描写しています。

次週は、サキがエコーの体を狙って襲い掛かるところから。
ケイコが復活するまで、物語の本質からは脱線し、
縦横に展開する唐さんのお笑い路線を楽しめる場面が連続します。