2023年12月 7日 Posted in
中野note
↑写真集「唐組」より『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』舞台写真
この場面で例の前奏曲がかかっていたと思われます
必要があって『ローエングリン』を聴いています。
ワーグナーの『ローエングリン』。
去年、生まれて初めて実演を観ましたが、それはイースター明けの
4月下旬。なぜ語学学校で出会ったロシア人の女の子と一緒でした。
彼女はオペラというものに一度来てみたかったらしいのです。
こっちは貧乏留学生気分で過ごしていましたが、彼女はエルメスの
バッグなんか持っていたりして、お金持ちそうでした。
『ローエングリン』の話。
自分が初めてあの印象的な前奏曲を聴いたのは、
蜷川さんが三島由紀夫作『弱法師』の最後の長せりふに
あの曲をあてていたからでした。主人公の語り始めに合わせて
あの曲がヒタヒタと流れ始め、最後は大きなうねりになって
空襲の業火を語る描写をいやましに高めました。
実にピタリとハマって感心させたれたものです。
ところが、よくよく様々なことを知るようになると、
蜷川さんが近代能楽集を演出する9年前に劇にこの曲を使って
いる人がいたのです。・・・唐さんです。
唐さんは、初めて紅テントを立てて芝居をした時の演目
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の二幕冒頭、
「ここは壮大なワーグナーのローエングリン響く床屋」
というト書きを書いています。あの壮大さをギャグにしているような
でも、床屋の趣味として本気だったような、面白いト書きです。
2023年12月 6日 Posted in
中野note
↑これは1998年の放送。58歳の唐さんです
初めて、ジャン・コクトーの『声』を読みました。
渡邊守章先生の翻訳。先生がご自身で主催されていた演劇プロジェクト
「空中庭園」での上演台本が光文社新訳文庫になり、
絶版ではあるものの古本屋で手に入れました。
懐かしいなあ。空中庭園。
大学生の時に青山に『悲劇 フェードル』を観に行き、
糸巻きを持ったタイトルロールのヒロインと、マオカラーで
キラキラした眼鏡をかけた渡邊先生のロビーでの立ち姿が印象的でした。
話を戻して。
『声』に興味を持ったのは、忙しくても短いから電車の中ですぐに
読めるし、最近、車の中で聴いている一人芸ものに、モノオペラとして
『声』をネタに作られたプーランク『人間の声』やメノッティ『電話』
があるからです。(メノッティは全然内容が違いますが)
で、ハタと思い出しました。
確か、コクトーの『声』が初めて自分にインプットされたのは、
唐さんの語りによるものだと。よくよく記憶を辿ってみると、
それは高校時代に観た深夜放送での、扇田昭彦さんによる
唐さんへのインタビューでした。
この放送の影響で自分は横浜国大を受験することになりましたが、
こうして、細かな場面でも、いまだに思い起こすことがあります。
唐さんが語っていた情報の数々、それ以上に、ものの考え方。
最近は便利なことに、YouTubeにこの動画が上がっています。
27:00過ぎに、唐さんが一人芝居について語るくだり、
ジャン・コクトー『電話』の話題が出てきます。
2023年12月 1日 Posted in
中野note
↑なんてことないベランダからの風景も、寒くて空気が澄んできれいに、
少し寂しくも感じられます
先ほど帰宅したら、住んでいるマンションがさっぱりとしていました。
うちの建物は結構古くて、そのために10月半ばから大規模な外装工事が
入っていました。
初め、みるみるうちに足場が組まれ、外観はネットで覆われました。
建物全体に徹底した養生がなされ、ビニールとテープが全体を包む。
ペンキ塗り直しが飛散しなよう、ほんとうに徹底して覆われたために
窓を開けてもビニールで塞がれて外の空気がいっさい入らない。
そもそも、ベランダ修繕中は窓が開けられない日も続きました。
今年は11月上旬まで暑かったので、この密閉感には難儀しましたが、
一方で、工事のする人たちに行き帰り挨拶するのは、なかなか
良いものでした。住民が窮屈な思いをしているのが分かりきって
いるので、皆さん、それはそれは丁寧に接してくれるのです。
やがて、人見知りの子どもたちも、働き者のおじさんたちに
挨拶できるようになりました。それが今朝、いよいよ終了予定日に
なって足場を解体していたのです。
当たり前ですが、先ほど帰宅した時には、
静かでさっぱりとした、それでいて以前より綺麗になったうちの
マンションに戻っていました。駐輪場から自転車を引き出すのに
一苦労させられていた鉄骨も取り除かれ、しんとして、
清潔な感じがします。
賑やかだった工事道具もなくなり、もうあのおじさんたちに
会うことがないのだと思うと感慨がありました。
そして、自分たちのテント劇場を見守ってくれていた周囲の方々も
いつもこんな感慨だったのかも知れないと思うようになりました。
うるさく、わずらわしく始まった工事が、
こんなふうに懐かしさと虚無感を生むのです。ああ、早く芝居小屋を
つくって、早くこういう感慨を届ける側になりたいと強く思います。
次回作『鐵假面(てっかめん)』は3月末に公演予定です。
詳細は近く発表。『オオカミだ!』こそ上演してきましたが、
やっと芝居屋に戻れるな、と。
準備を進めながら実感が強まってきています。
2023年11月30日 Posted in
中野note
↑初めて利用した羽沢横浜国大駅。新宿まで40分。付近に住んでいる
劇団員の米澤は、この駅が出来て良い思いをしているに違いありません
昨日はスコーンの話題に終始してしまったけれど、
浅草に観に行ったドガドガ+の『セクシー女優事変』は面白かった。
帰国して2月に観に行ったのがシリーズの第1弾で、今回は第2弾。
両方とも好きです。
アダルトビデオから出発した望月監督にしか書けない世界を、
座長の丸山正吾さんを中心に、若手からベテランまでのキャストが
素晴らしく支えています。過酷な性の世界を描くから様々に陰鬱
なのだけれど、最後には軽やかに、かつ不条理に暴走し、
それら過酷を突破していくのが痛快でした。
不幸や、一生消えない傷や、トラウマ、
世の中に溢れかえっているけれど、それで人が不幸せなまま
一生を終えて良いわけがないという、望月さんの信念がおふざけの
中に詰まっています。気分良く浅草から引き上げてきて、
昨晩はスコーンを食べました。
それで今日は、
朝から整体に行き、初めて羽沢横浜国大駅を使って新宿に出て、
阿佐ヶ谷スパイダースの『ジャイアンツ』の千秋楽を観て、
それから上野に移動して文化会館で青木涼子さんの能声楽を聴きました。
何かずっと遊んでいるみたいだけれど、合間にちょっとずつ
働いてもいます。しかし、やっぱりそれ以上に遊んでいて、
最近ハマっているのは一人芸の世界です。
落語とか講談の録音も聴きますが、
モノ・オペラというものがあるらしいと知って、
移動時にイヤホンを付けたり、カーステレオで聴いています。
だいたい、舞台ものは録音だと大勢の演者が入り乱れるので
訳が分かりません。しかもオペラは外国語なので、
一回上演を観たことがあるものでないと録音を聴いても
チンプンカンプン。ところが、登場人物が1人だとかなり
愉しめることが分かってきました。
そういえば、小学生の頃にマルセ太郎さんを観て感激したことも
思い出します。唐さんにも一人芝居が2本あって佐野史郎さんが
演じた『マラカス〜消尽』、金井良信さんが初演した『電子親友』
という台本です。録音が残っていたら愉しいだろうなあ。
それ以上に、いつか上演して旅ができたら、
どんなに素敵だろうと思わずにはいられません。
2023年11月29日 Posted in
中野note
ロンドンでできた日本人の友達が帰国しました。
彼女と知り合ったのは私の滞在が半ばを過ぎた頃でしたが、
それからは本当にたくさんのサポートとアドバイスをもらいました。
恩人の一人です。
彼女は旅行会社に勤務していましたのでこちらが旅の手続きに困ると
いろいろと教えてもらい、名士たちが集まるジェントルマンズクラブにも
連れて行ってもらいました。
その彼女は帰国にあたって、わざわざ私のために、
私がよく通っていたパン屋Gail'sのスコーンとブラウニーを
買ってきてくれたのです。生ものだから急がねばと思い、
都内で急遽落ち合うことにして、ありがたく品物を頂戴しました。
あまり時間がなかったので、
最近気に入りの醤油ラーメンを一緒に食べたりして。
食べものが美味しくないと言われがちなロンドンですが、
自分は、ベーコンをカラカラに焼く調理法は圧倒的にロンドンが
美味しいと思いました。そして、今回プレゼントしてもらったスコーン。
日本にいたときは、パンとクッキーのあいのこみたいで、
いかにも中途半端なシロモノだと思っていたスコーンが、
こんなに美味しいと初めて実感しました。
パンでもない、クッキーでもない、スコーンでしか得られない
満足感と美味しさがあると思うようになりました。
本式では、ナイフで上下に切り分けて、
生クリームやジャムをたっぷり塗って紅茶とともに頂くものです。
でも自分は、手でパカっと行儀悪く割って、そのまま食べても
充分に美味しいと思う。小麦の充実感。
日本のパン屋で買うスコーンは、たいがいこれには勝てないなと
ずっと思っています。
2023年11月28日 Posted in
中野note
↑「季刊同時代演劇」には『鼠小僧次郎吉』と『少女都市』が
収められています
唐十郎作品のうちで、
再演頻度と人気の高いものに『少女都市からの呼び声』があります。
ことこの演目に関して新宿梁山泊の金守珍さんの貢献は絶大で、
かつて状況劇場の若衆公演として新宿ゴールデン街の小さな劇場で
産声を上げたこの作品は、その時にフランケ醜態博士を演じた金さんに
よって何度も何度も上演され、時にはニューヨークでも上演されました。
まさに金さんのライフワーク。
今年だけでも3パターンの上演を金さんは行って、
その粘り強さには頭の下がる思いがします。そうした金さんの展開に
支えられて、ハヤカワの文庫には、『少女仮面』『唐版 風の又三郎』
という代表2作品と並んで、この『少女都市からの呼び声』が
収められたのだと思います。
自分が大学に入ったばかりの時、唐さんは一般教養の授業で
200人からの学部生を相手に、その公演映像を観せていた記憶が
あります。「満州」という要素こそあれ、生まれてこられなかった
妹と兄の織りなすこの物語は普遍的で、お話としての自立度も高く、
初心者にとっても入っていきやすい。
唐さんはきっとそう考えて、あまり自分の芝居に馴染みの無い
学生たちにこれを観せたのだと思います。
一方で、自分は最近、
この『少女都市からの呼び声』のもとになった『少女都市』が
気になるようになりました。唐さんが早稲田小劇場に託した
『少女仮面』の対になる作品として自身の劇団に書いた演目です。
春に比べれば短い秋の公演、
しかも、例の天井桟敷との大立ち回りから唐さんたちが警察に
引っ張られた結果、ただでさえ少ない公演回数をさらに縮小されて
しまったのがこの作品です。
気になるので、来月はこれを研究しようと思います。
せっかくであれば、初めてこの演目が掲載された「季刊同時代演劇」
をもとにやってみようと思います。
2023年11月24日 Posted in
中野note
↑野澤健さんと共演経験もある、新宿梁山泊の渡会久美子さんと一緒に
観ました!
今日は先ほどまでダンスを観ていました。
ちょうど10年前、KAATで上演した『唐版 滝の白糸』に出演してくれた
野澤健さんが、久々に舞台に立つと言って誘ってくれたのです。
去年に自分がロンドンで過ごしていた時、
健さんはfacebookで大病をしたことを投稿していました。
その時はなんと言って良いのか分からずにいましたが、
久々に客席から眺めることのできた健さんは、
以前と同じように自分の表現を果敢に探っていました。
健さんは、もともと横浜国大の学生だった三浦翔くんが紹介してくれた
パフォーマーでした。三浦くん自体もダンスをやっており、
自分が演出した『腰巻お仙 忘却篇』ではドクター袋小路を
演じて私を大笑いさせてくれた良い男でしたが、共演したことのある
健さんを紹介してくれたのでした。
『唐版 滝の白糸』に登場する、小人プロレスラー・アトムが
その時の健さんの役どころでした。世の中のあらゆる大勢に闘いを
挑もうとする闘争心、一転、夕陽に伸びた自分の巨大な影を眺めて
しんみりするリリシズムがアトムの持ち味で、これは健さんに
ピッタリでした。
当時は蜷川さんがシアター・コクーンで同じ演目を上演していて、
同じくアトムを演じていたマメ山田さんが僕らのバージョンを
観にきてくれたのも強烈な思い出です。
マメさんが客席最前列の中央に座ったことから、
健さんは自分のもっとも輝かしいシーンでマメさんとさし向かいに
なることになり、客席後方からその光景を眺めていた自分には、
二人が向き合っている姿に神々しさを感じたものです。
その後、健さんは多くの企画に見出され活躍をしていくことに。
あれだけの個性を持ち、クレバーさを持つ健さんは、
どこまで身体が保つかという闘いを常に生きているはずです。
よく動いていたし、終演後に話したら強気だったし、
また健さんを観られる機会がありそうだと、油断はできないけれど、
やっぱり安心しました。
観る機会だけではなくて、出演も探らないと。
健さん、復活おめでとうございます!
2023年11月23日 Posted in
中野note
↑子ども用の絵本を選んでいるうちに見つけました
ガタロー☆マン作の『おだんごとん』。
子ども用の絵本コーナーで娘に合う品物を探るうち、
これを発見して即座に買いました。当然、私用です。
あの『珍遊記』の漫☆画太郎先生がこんな風に絵本作家としても
活躍されていることを、私は初めて知りました。
いそいそと買って帰り愉しみに周囲を覆うセロファンを外すと
久しぶりの画太郎節が待っていました。
単純で呵責ないストーリー。
お馴染みの画風、お馴染みのキャラクターが行き交い、
得意のオナラやウンコが元気いっぱいに跳ね回っています。
そして何より、この圧倒的な無意味性。
子供達も大喜びで「ヤバイ、ヤバイ」と言いながら一緒に読みました。
見事に構築された作品が好きです。張り巡らされた伏線も好きです。
けれども、最終奥義は、脳髄を直接に鷲掴みにされるような
無意味性が上だと思うのです。なんでスゴいと感じるか
まったく説明できないけれど、やっぱりスゴく感じる。
これが最高です。無意味に勝るものなし!
読むと良い気分になります。オススメです!
2023年11月22日 Posted in
中野note
Nancy CinatraのSugar Town
動画でも簡単に観られます。
→
それにしても、劇中で何度も何度も歌われる
『Sugar Town(邦題:シュガータウンは恋の町)』は面白い。
もともとはナンシー・シナトラが歌った歌詞はこんな具合なのですが、
I got some trouble, but they won't last
I'm gonna lay right down here in the grass
And pretty soon all my troubles will pass
'Cause I'm in shoo-shoo-shoo, shoo-shoo-shoo,
shoo-shoo, shoo-shoo, shoo-shoo Sugar Town
唐さんはこんな風に替え歌しています。
〽誰か私に教えて
かわいいベビーのつくり方
やさしい母さんになりたいの
ここはシュシュシュ シュガータウン
現在は30代で結婚、40歳前後で初産も珍しくありませんが、
当時は20代で結婚し子どもを産む時代、今より早く大人になる
時代だったでしょうし、定年も55歳という世の中です。
(今では考えられん!)
それに、同棲ブームによって、妊娠→中絶が若者世代に
溢れた時代でもありました。それが唐さんとその周辺にとっても
生々しい話題であったことは、初期のアリババや『腰巻お仙』
シリーズを読めばすぐに察せられます。
『Sugar Town』はyoutubeでも簡単に聴けますから、
ウキウキと聴いてもらいたい唐さんオススメのポップスです。
同時に、このメロディに少女のアイロニーを混ぜ込んだ
唐さんのブラックユーモアも、歌詞をあてはめて
愉しんでもらいたいところです。
2023年11月21日 Posted in
中野note
↑唐さんにとっての初めての単行本だった『腰巻お仙(現代思潮社)』
あとがきは当時の唐さんのてらいの無い思いが溢れていて、胸を打ちます
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の台本打ちがやっと終わりました。
これは、かねてからの懸案事項で、ずっと気になっていたものでした。
というのは、唐十郎ゼミナールが最初期に上演した演目について、
私たちは上演台本を作らなかった。あるいは、作ってもデータ管理が
いい加減で、それを失くしてしまっているのです。
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』もそのうちの一つで、
かなり前から心に引っかかっているのですが、
近く『腰巻お仙』シリーズ、すなわち、
『忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』『振袖火事の巻』を
一気に本読みWSの題材にしようと思い立ったので、
これを機に研究し直してみようと考えました。
それで、ここ3週間ほど、
早朝は初掲載の雑誌、単行本、作品集を見比べて読んでいるわけですが、
『映画批評 1967年12月号』に取り組みながら、単行本に掲載するに
際して唐さんが最後の方のシーンを書き足していることに気づきました。
第四幕だけに登場する「看護婦」の出番が終盤に増えている。
これは、稽古の過程で、この役や役を演じた俳優の面白さにより
膨らんだとか、唐さんが役者を慮ったとか、最後の方で別の役の、
例えば「かおる」役にメイクや扮装替えの時間を稼ぐ必要があった、
などの理由が考えられ、いずれにせよ当時の現場感を想像するに
大きなヒントであると感じています。
また、後年は書き換えをほとんどしなくなる唐さんですが、
雑誌から単行本化にあたってずいぶんせりふを書き換えています。
それは、美学的な作業というより整理をした感じで、初々しかった
唐さんが殊勝な感じで初めての単行本に力を入れていた様子も
察せられて、愉しい作業です。単行本に際して唐さんが書かれた
あとがきはあまりにも素直で、ストレートで、胸を打ちます。
機会があったら、ぜひ読んでもらいたい唐さんの文章です。
2023年11月17日 Posted in
中野note
↑日付は2001.12.7でした
昨日、紹介した本の表紙をめくると、唐さんのこんな署名があります。
公演終了後に頂いたもの。開演前に浮き足立ちすぎて
舞台セットのプリセットを忘れたり、終演後に宴会に至る動きが
鈍すぎて唐組の皆さんの手を煩わせたり。
観劇してくださった大久保鷹さんに、
「1・2幕をわざとつまらなく作っておいて、
3幕から面白く見せる作戦だね」と言われたり、
帰り際に際にダメ押しで、
「もっと絶望した方がいいな」と笑いながら言われて
どう受け止めて良いのがその後もずっと考え続ける公演でしたが、
唐さんがいかに私たちに手加減し、気を遣ってくださっていたか、
分かるサインとコメントです。
今日は一日中、動き回ってヘトヘトなので短めです。
あの、初めての唐十郎ゼミナール公演のあとも、
緊張しすぎて同じような感じでした。
2023年11月16日 Posted in
中野note
↑この現代思潮社から出ていた再販版が、私たちの教科書でした
早朝に研究中の『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』が
第3幕に入りました。何とこの芝居は全4幕で構成されており、
そのようなわけで、半分を過ぎたことになります。
第1幕 その人の名は
第2幕 恋づくし
第3幕 喫茶ヴェロニカ
第4幕 月下
という構成です。これが、長いかと思いきや、
各幕がテンポ良く進んで全編で2時間以内に収まるようになっています。
とりわけ第3幕には思い入れがあって、
唐さんが得意とする長せりふの世界がいよいよ始まります。
ギャグとドタバタに溢れ、それまではずっと軽演劇風だったこの芝居が
一転、じっくりとして謎めいた会話劇となり、
主人公・忠太郎の前に立ちはだかる美少年(=腰巻お仙)による
母体論が滔々と展開します。
今から考えれば、内容をよく私たちは、
しかし、だからこそ、せりふを言ううちに身体が熱くなるのを
本能的に感じることができました。まるでブルース・リーのように、
Don't think, feel.を地でいっていたわけです。
それから20年以上経って、同じ言葉に向き合う時、
あの時より遥かに多くの意味が自然と自分に迫ってきます。
けれど、それによって失われたものがあることを、
慎重に思い返すべきだとも思うのです。
稽古中、私たちの下手くそな芝居を観ながら、
この劇が第3幕に差し掛かった時、唐さんが泣いていたのを思い出します。
そうして生まれたのが、ついこの前に唐組で観た『糸女郎』でした。
毎日、少しずつ読み進める台本の探求。
明日は、まさにその長せりふ部分を読み込みます。
2023年11月15日 Posted in
中野note
↑これがハガキの表と裏面です
このゼミログの冒頭で、いつも写真を紹介しています。
初め、文章だけを書いていたら、やっぱりビジュアルがあった方が
良いということになり、最低でも一枚は写真をあげるようにしました。
本読みWSのあと、それが唐ゼミ☆公演で上演した台本であれば
舞台写真をあげます。ここ12年は、広告写真家の伏見行介さんが
撮ってくださったもの。伏見さんと知り合って12年ちょっと経ち、
数万枚の写真が溜まったそうです。
そこで、写真展をやろうという話になりました。
2024年1月末に1週間、四谷のギャラリーで行います。
ハガキのフライヤーを作ったので、これから配っていきます。
期間:2024.1.25(木)〜31(水)
会場:ポートレートギャラリー(新宿区四谷1-7-12日本写真会館5階)
ロンドンにいた去年から準備をしてきました。
付き合い自体は10年以上になる伏見さんと時間をとって話し込んだのは、
実はロンドンと日本をつなげたzoomが初めてでした。
まず、伏見さんに追いかけてもらっているこの12年間、
自分が何を考えながら演目の選定や公演組みを行なってきたのかを
話しました。劇団の歴史は、やはり団員の〇〇が入り、〇〇が辞め、
というトピックが重要な位置を占めます。劇団の根本は人。
その時々にいた団員たちに注目したいという主題が立ち上がってきました。
写真の選定は大方済み、
これから元劇団員たちにも連絡をしていきます。
さらに、モニターで見せるスライドショーづくりをし、
1/28(日)にはちょっとしたイベントもやろうと内容を考えています。
まずは第一報でした。
2023年11月10日 Posted in
中野note


↑3月に初演して面白かったので4月にも上演しました
『腰巻お仙』シリーズについて想いを馳せていると、
これが台本としてはなかなか破天荒だけれど、
実際に上演してみると笑いが多く起こって、
稽古の現場までもがとにかく面白かったことが思い出されます。
正確にいうと、
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の頃は自分たちがまだ青くて、
余裕がなくて、しゃっちょこばってばかりいたので、どうにも
硬かったのですが、30歳に差し掛かる頃から徐々に余裕を覚え、
ふてぶてしさ、図々しさが身につくようになり、
お客さんもよく笑ってくれるようになりました。
なかでも思い出深いのは学生たちとつくった『腰巻お仙 忘却篇』で、
これはもう、稽古のさなかにも膝から崩れ落ちるほど笑いました。
あの時はなにしろ、集まった学生たちがすこぶる優秀だったと
思わずにはいられません。彼らは地面に埋められたり、
人形を使って屋上から飛び降りたフリをしたり、
チケットがわりの石を投げつけられたり、
照明が壊れたという設定で自転車を漕ぎ続けて
共演者に必死のライトを浴びせたり・・・。
とにかく真面目かつ余裕を持って演じてくれました。
ふざけているのではなく、杓子定規すぎもしない。
要するにそれはユーモアに満ちていたということです。
書いていてさらに思い出しましたが。
1メートル以上の高さのある帽子をかぶったり、
リアカーをくくりつけた自転車を転がして坂道を全力で駆け降りたり、
自分の転がすリアカーに轢かれたり、
バリカンで頭に星型のハゲをつくったり。といったこともしました。
自分が本読みWSで『ジョン・シルバー』シリーズを熱心に
取り上げつつも、『腰巻お仙』シリーズを避けていたのは、
これらの現場感がちゃんと伝えられるか心配していたからだと
思い至りました。でも、本読みだって、実際に声に出しさえすれば
あのウキウキ感がやってくるのではないかと思い、やってみたいと
考えるようになりました。おどろおどろしく受け取られがちな
演目ですが、あれこそ世の中を明るく照らす芝居です。
2023年11月 9日 Posted in
中野note
↑映画評論1967年12月号
最近、『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』をデータ化していない
ことに気づきました。あの作品に取り組んだのは大学3年生の時で、
当時はなんと、みんなで買った現代思潮社の単行本をそのまま
台本にして書き込みなどもしていたのです。
そういうわけで、Wordのデータになっていない。
これでは本読みワークショップができません。
何より、気分転換にああいう、リリカルにしてバカバカしい台本を
読めば元気も出ようというもの。そこで、少しずつ読み始めました。
で、ふと気づいたのです。
確かに現代思潮社の旧版は唐さんの初めての単行本ですが、
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』はその前に雑誌に
載っていたはず。そう思って本棚を探したところ、出てきたのが
上記の映画評論でした。
この雑誌では、唐さんが花園神社デビューに際して
「腰巻」という言葉が嫌がられるのではないかと配慮して命名した
別タイトル『月笛お仙』で掲載されています。
何か発見があるかも知れない。そう思いながら少しずつ、
この雑誌版と向き合っています。
2023年11月 8日 Posted in
中野note
降って湧いた仕事に揉まれてヘトヘトなので、今日は短め。
教会とかお寺とか、前を通りかかるとなかなか面白い言葉が書かれて
いることがあって、足を止めることがあります。
これは最近、ルーテル市ヶ谷という素敵な教会兼音楽ホールに
フォーレのレクイエムを聴きに行った時に思わず見入ってしまったもの。
これは書いた人が偉いと思います。
きっと聖書の一説なんでしょうが、その抜き出し方、字の雰囲気。
そういうものが相まって、
神サマがなんだか欲張りな感じがして好感が持てます。
スナック菓子を両手に持って頬張っているような感じ。
だいたい、冒頭の「す」という文字から、
ボケる気満々のコメディアンのような予感が漂っています。
そして「だから」という締め。特に「ら」の曲線の妙。
・・・今日は以上です。
2023年11月 7日 Posted in
中野note
↑現在はひたいの角のようなパーツ無しで頑張っています
先日の日曜、7歳の息子と良い時間を過ごしました。
最近、彼はプラモデルづくりに目覚めたのです。
ちょっと前、最初はファースト・ガンダムを組み立てました。
ガンダムといってもリアルタイプでなくSDの方です。
これは初回でしたからほとんど私が組み立てましたが、
息子はこれを大いに気に入りました。
続いて一昨日。
今度は手を貸さずに息子自身に組み立てさせようと
ニューガンダムのSDを買いにヨドバシに行きました。
今度は子ども用のニッパーも買って、
一人で組み立て始めました。そばにいると口を出したくなるので
こちらはなるべく見ないようにしました。
シールを逆さまに貼った挙句、貼り直そうと剥がしてダメにする。
ニッパーの使い方がまずくて、部品を傷つけてしまう。
左右反対にくっつけてしまう、など、
見ているとこちらもソワソワしてきて、
手を出さずにいることの難しさと闘いました。
結果、彼はなんとか組み立て終えて、
ファーストとニューを並べて眺め、やがてはそれらをぶつけ合い
始めました。脳内戦争です。
さらに、蕎麦屋に出かけようとしたところ二体を持ち出したのです。
蕎麦を食べ終え、ドラッグストアに寄り、スーパーにも寄りました。
その間、ガンダムたちは道路を飛行する。が、途中で気づいたのです。
気に入りのファースト・ガンダムの角がない・・・
それから90分くらい、もときた道や通り過ぎた店内を3往復しました。
が、結局出てきませんでした。そのトボトボとした歩みは
味わい深いものがあって、しょげかえる息子には悪いのですが、
自分には充実した時間のように思われました。
大げさにいうと映画『自転車泥棒』のような、こうして親子で
連れ立って挫折している体験は、変え難く大切だと思うのです。
これはちょっと唐さんの世界だな。そうも思い、
唐さんにこんな体験をしたと報告したくなりました。
新しいのを買ってやろうか?と訊いても、
あのもともとのパーツとは別モノだと言い張り、
購入を受け入れない息子は、なかなか良いセンスだと思います。
量産されている製品なのですが一点もの。これも唐さん的だな。
そう思います。
2023年11月 3日 Posted in
中野note
↑面白かったので、2冊並べて読みました
今日は椎野が唐組に出かけています。
長男が生まれてから、自分たちが揃って芝居を観にいくことは
無くなりました。どちらかが家にいて、子どもの面倒をみます。
大概出かけるのは自分ですが、唐組はやはり特別です。
娘がある大きさになった時から、椎野もひとつの公演につき
1回は立ち会う習慣を復活させました。
で、留守番の間、子どもが自分で遊んだり、
昼寝をしたり、夜になって就寝してしまうと、本を読みます。
今日読んだのはW.フォークナーの『エミリーに薔薇を』。
ここしばらくずっと新潮文庫でしか読めませんでしたが、
昔に福武文庫で出ていた翻訳が中公文庫で復刊されたので、
それも手伝って読みたくなりました。
次に上演する『鐵假面』には、この短編に触れるくだりがある。
『エミリーに薔薇を』、それからゾシマ長老に触れるシーン。
要するに『鐵假面』は、ホステス二人が殺してしまった男の首を
ボストンバッグに詰めて各地を逃げまわる話です。
ですから、彼女たちの荷物から溢れる死臭に引っ掛けて、
エミリーが殺した恋人とゾシマ長老という、死体の匂いが小説世界の
衆目を集める存在をこの芝居で唐さんは引っ張り出しました。
ほんのひと言だけのせりふですが、やっぱり発するからには
読んでおきたいと思って、これまで随分と豊かな世界に出会ってきました。
これも唐さんとずっと付き合ってきたことの効能のひとつです。
試しに唐さんのガイドによって読んだ短・中編をいくつか挙げると、
・モーパッサン『脂肪の塊』
・ホフマン『砂男』
・ゴーゴリ『外套』
・ドストエフスキー『地下生活者の手記』『白夜』
・アンドレ・ブルトン『ナジャ』
・泉鏡花『夜行巡査』
・夏目漱石『夢十夜』
・上田秋成『雨月物語』
なんかがパッと思い浮かびます。
ことに翻訳ものとなると唐さんは、登場人物の自意識が暴走するもの、
事件としては小規模でも個人の内面がひどく痛ましいものが好みです。
そしてそれは、唐さん自身の繊細さの証左でもあります。
『エミリーに薔薇を』、
初めて読んだ2007年より格段に面白く感じました。
自分を捨てた男を殺して、朽ちていく遺体と寝続けた女の話です。
たった20頁に、死んで肖像画になっても威圧的であり続けるエミリーの父、
自分より遥かに身分の低い男に捨てられ、誇りを踏みにじられつつも
同衾をやめられないエミリーの愛、物言わぬ黒人の召使の非人間性などが
いっぱいに詰め込まれています。
この短さ、凝縮度をして、唐さんはよく"珠玉"と言い表します。
自分もそれに倣って、これぞ珠玉と思います。
2023年11月 2日 Posted in
中野note
ここ一週間、さまざまな催しを行ったり観に行っていますので、
写真とともにダイジェストでお届けします。
トップはこの方!
10/28(土)のこと。
やっぱり唐さんに会うと自分の芯からエネルギーが湧き上がるのを
感じる。学生時代から疲れ果ててヨレヨレで会いに行っても、
帰りは余力に気付かされる。今もまったく変わらん!
同じ10/28(土)のお昼はJordi Savallの演奏会を最前列で聴きました。
特に後半は、82歳のマエストロが血管ブチ切れそうになりながら
マラン・マレその他のプログラムをガンガン弾いていて、
ぜんぜん枯れていないことにビビる。
写真は去年の8/17にエジンバラで撮ってもらったもの。
10/31(火)は茅ヶ崎の教会にお邪魔して、中田恵子さんのオルガン演奏を
聴きました。いつものホールとは違い教会だったので、中田さんから
キリスト教の風習や聖書についての説明を受けながら、バッハの小曲集を
聴くことができました。音楽から見える景色がぜんぜん違うし、
レジストレーションや演奏の根拠を識ることができた。特別な体験。
↑オランダ製のオルガンを横に撮影。タイムボカン的な写真で面白い。
アシスタントを務めた下田さんの連携も見事でした。
11/1(水)はカプカプ×新井一座WS。
受講生の皆さんが2チームに分かれ、オリジナルのアイディアを出し合い
WSをリード。夕方からは振り返りとともに改善点が挙げられました。
↑サツマイモを松ぼっくりを持ち込み、秋を全開にした着想が卓抜!
風呂敷を縫い合わせた大風呂敷を使って不思議な世界。
本日11/2(木)は米澤が出演するワンツーワークスを観に下北沢へ。
米澤は現在、リアリズムの演技を習得したいと考えて、自分なりに
学びの場を求め、努力を続けています。
自ら依って立つ姿を見て、もっとやれ!と願います。
↑終演後は会えなかったけれど、仕込みの時に現場が隣り合わせた
岡島哲也さんが記念撮影して送ってくれた。米澤の短髪と笑顔は珍しい。
新鮮だけれど、痩せていることは心配・・・
2023年11月 1日 Posted in
中野note
↑終演後、唐組の皆さんの撮影にちゃっかり混ぜてもらいました
(撮影:平早勉)
先週の土曜日は鬼子母神に唐組を観に行きました。
前の予定から会場時間を過ぎてやっと紅テントに到着し、
そこにいた美仁音さんに「今回の役は何?」と訊いたら、
「美女丸です」と応えました。
美女丸。乳母川美女丸といって『糸女郎』の敵役です。
もちろんこの役は男性の役なので、当意即妙に冗談を飛ばす
彼女をおもしろく思いながらテントに入りました。
劇が始まると、トイレの中でお腹を露わにする美仁音がいて、
やっぱり美女丸ではなくヒロインなのだと理解しました。
この日のヒロイン・湖村蚕(こむら かいこ)は、
天竜川の崩壊により破壊された養蚕・製糸業の悲劇を
丁寧に、丁寧に伝えていました。
特異なキャラクターが多く登場し、
登場人物たちの魅力で笑っているうちに撹乱されてしまいそうに
なるところを、あの部分が、この『糸女郎』とはどんな物語で
あるのかを伝えてくれます。
主人公の大切な役割を果たしている。
この日は唐さんが来ていたので力が入り過ぎているところも
あったけれど、それも含めて、"背負っている者"の演技だと
受け取りました。
一方、初演でヒロイン・デビューした藤井由紀さんは、
久保井さんが演じたチャン(レディ・チャンドラーのこと)の
元愛人を演じて、笑わせてくれました。
特に、悪役アザミノが藤井さんの右脇にはえた剛毛を
掻き分けてサメの刺青を求めるくだりは、エロス過ぎて
エロス以上の何ものかに到達してしまっており、
唐さんくらいに妄想大爆発でエロいと、
もはや世間でいうセクハラを乗り越えてしまうのだなあ
と感心しました。電車のレールを見ても欲情するのですから。
言いたいことは尽きませんが、とにかく、
自分が大学4年の時に唐さんが初演した芝居がどんなだったか、
その物語も、その面白さも、改めて教えてくれた上演でした。
今週末までやっています!
2023年10月28日 Posted in
中野note
開場直前に撮った写真です。右の女性は、オルガン・アドバイザーの
中田恵子さん。
今日はハロウィンにちなんだオルガン・コンサートだったので、
週明けから数日かけてかぶりものを作りました。
シルクハットに鉢植えみたいに作った木をはめて、
カボチャでなく柿の実にハロウィンの顔を描いて被りました。
仕上げを津内口が手伝ってくれた。
上がいい加減な分、胴体には久々にネクタイを絞めまして、
考えてみればこれは、去年にロンドンでジェントルマンズ・クラブに
行って以来です。
とまあ、自分はロビーで来場者プレゼントのチョコレートを
配ったりして賑やかしていましたが、県民ホールの同僚・山下さん
という女性は、メインでこの公演をプロデュースし、
さらに仮装しながら演奏の際の譜めくりやアシスタントをして
獅子奮迅の活躍を見せており、実に大したものだと思いました。
明日は、以前から大好きなヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の
ジョルディ・サヴァールを音楽堂に何人かで聴きに行き、
夜には鬼子母神の紅テントに駆け付けます。
肝心の唐ゼミ☆公演のことをまとめにかかってもいます。
さらに来年のことも考え始めており、さまざまな台本を読み直しても
います。気候がよく、疲れにくいので朝から深夜まで
稼働が楽です。『鐵假面』だけでなく、来年の劇は何が良いか・・・
2023年10月26日 Posted in
中野note
↑少年が鏡を見つめる有名なシーン。パーセルの音楽がかかります
最近、タルコフスキーの本を読みました。
ちくま学芸文庫から復刊された『映像のポエジア』という本です。
読むうちに、久しぶりに映画そのものも観たくなって、
久々に『鏡』を観ました。
ロンドンで叩き売っていたDVDを買っておいたのです。
初めてこの映画を観たのは大学1年生の時、
それから大好きな作品になりましたが、
久々に観直してみて、その良さがますます深まりました。
タルコフスキーの生きた20世紀のソ連について
時間がたった分だけ詳しくなったこともあります。
そこここに挿入されているドキュメント部分の意味が
判るようになった。
そしてそれ以上に、タルコフスキーの幼少期への想いや、
彼のお母さんに女性としての人生があったという当たり前の事柄に、
自分もまた想像が至るようになったことが大きい。
冒頭、吃音の少年を医者が治します。
模糊としていた彼の語りが治療とともに噴き出す。
タルコフスキーは自らの追憶を、
こうして現在形にしてフィルムに定着させたのだということも、
今では判りやすく感じるようになりました。
逆に時間の経過とともに、
カメラワークや演者の動かし方についてこちらの想像が
及ぶようになり、作為が視え過ぎるようになったきらいもありますが、
やはり『鏡』は素晴らしい。
そして何より、劇中に流れる音楽の選曲センスが拓跋です。
ペルゴレージの『スターバト・マーテル』
バッハの『ヨハネ受難曲』
パーセルの『インディアン・クイーン』
どれもこれしかないという曲が、これしかないタイミングで流れます。
特にヘンリー・パーセルの『インディアン・クイーン』は
もともとが歌入りの曲を楽器演奏のみに編曲して流しています。
この音源、手に入れたいと思わずにはいられません。
2023年10月23日 Posted in
中野note
↑よく見てください。昭和59年製の銀色500円硬貨
昨日、湯河原町に行きました。
そこで行われた野外ダンスイベントを観に行くためでしたが、
せっかく海辺の街に来たのだからと、そこでお土産に干物を買いました。
何度か訪れたことのある馴染みの干物屋。
その際に面白かったのは、
会計のお釣りに500円銀貨を渡されたことです。
昭和59年につくられたと刻印してある。珍しい!
500円玉はあれから金貨になり、
最近はそれがさらに二重に色付けされた金貨になって、
街中の自動販売機の中には、新しい500円は使えません、
というものがあって、これに結構イライラさせられます。
そういう時に、先代どころか2代前の銀貨に久々に再会したのです。
この銀貨には思い出があって、
あれは2002年に初めて『ジョン・シルバー』を公演した時のことです。
ぼくらはまだ大学4年生の春、
ようやく唐十郎ゼミナールで芝居を作るペースが定まった頃。
めくら滅法、とりとめもない稽古を延々としては本番に臨んでいました。
その中で、学生演劇といえど料金を取りたい私たちは
500円という入場料を設定しました。それを聞いた唐さんは即座に
「500円銀貨にしよう!」と言ったのです。
当時は、先々代500円玉から先代500円玉への過渡期で、
感覚的にはやや500円銀貨が押されていた時期でした。
そこへ来て、唐さんは観客に「旧の硬貨である銀貨を持ってこい!」
という指令を下したのです。
これはけっこうウケて、受付はちょっとした盛り上がりを見せました。
『ジョン・シルバー』には銀貨1枚!
ぼくらはそうして唐さんの遊び心に触れていたのです。
2023年10月20日 Posted in
中野note
↑1989年に再演された『盲導犬』の当日パンフレット
最近、『盲導犬』を読み直していたところに財津一郎さんが
亡くなった報に接しました。
財津さんといえば、
タケモトピアノの話題がネットニュースに溢れているし、
やはり圧倒的に『てなもんや三度笠』なのだろうけれど、
唐ゼミ☆的には、財津一郎さんは石橋蓮司さんの次に『盲導犬』の
影破里夫を演じた名優として記憶されています。
上演は1989年12月のこと。会場は日生劇場。
ヒロインの銀杏は桃井かおりさん、フーテンは17歳の木村拓哉さん。
なかでも財津さんは、喜劇人の好きな唐さんにとって敬愛の対象
だったのでしょう。上の写真のパンフレットに唐さんが寄せた文章の
大半が、影破里夫と財津一郎さんに割かれていることに
改めて気づきました。
プロデューサーの中根さんからは、
当日は蜷川さんの停滞期だったこともあり、
この『盲導犬』は上手くいかなかった公演だと伺ったことがあります。
それでもやはり、財津さんによる劇中歌や「ファキイル!」という
叫びを聴いてみたかった。そう思わずにはいられません。
2023年10月19日 Posted in
中野note
↑青梅第六中学校正門前。5:55にテツヤPと横浜を車で出発し、
8:00前には到着しました。大自然!
2月に初演した『オオカミだ!』が順調に育っています。
もともと、軽量級で上演できる痛快な作品を作って各地に、
それこそ世界に飛び出していけるように組んだプログラムでしたが、
縁あって、青梅第六中学校が招聘してくださいました。
大きな体育館での公演です。
公演には近隣の保育園生も参加して、
5歳前後と13歳前後という組み合わせの観客を前に
ケッチさんがいつもの笑いを巻き起こしました。
保育園生が起爆剤となって、照れ屋な中学生たちの心を開いていく。
そういう状況が後ろから見ていておもしろく、
来て良かったと心から思いました。
一方で、ものすごく巨大な中学校に
全校生徒が30名弱という光景は、いろいろなことを考えさせるものでした。
少子化に過疎化・・・
ところで、今回の公演は自分の人生で初の学校公演と
意気込んでいたのですが、よくよく思い出してみたら、
私たち唐ゼミ☆には学校公演の経験があったのです。
あれは2004年秋のこと。
大学院の先輩が戸塚高校定時制で先生をされていたことから、
私たちは芸能鑑賞会のネタに呼んでいただき、
いつもの青テントを校庭に立てたのです。
演目は『黒いチューリップ』。3幕3時間の大作です。
よくもまあ辛抱強く付き合ってくれたものだと思いますが、
あの時、客席にいた生徒たちもすでに30代半ば。
引きこもりを題材にした台本ですので思春期のみんなに
シンパシーがあるはずだと上演していましたが、
騒がしく盛り上がったテント内の空気と、
上演後に先生方が作ってくださった炊き出しを思い出しました。
というわけで、今日は2度目の学校公演でした。愉しかった!
2023年10月18日 Posted in
中野note
↑写真の選定中。15年以上で3万点をこえる写真を撮ってもらいました
今日は唐ゼミ☆の拠点Handi Laboに伏見行介さんが来てくれました。
伏見さんは写真家。ご専門は広告写真なのですが、
2010年頃、カメラ専門誌であるCAPAという雑誌に劇団員だった
禿恵を取り上げてくださったところから縁を得て、
以来、ずっと公演のたびに撮影に訪れて下さっている方です。
そのために、このゼミログに登場する舞台写真のほとんどは
伏見さんの手によるもの。私たちの関係も10年を超えたので、
これまで撮り溜めた写真を整理する作業をしました。
いつも奥ゆかしい伏見さんとは食事を一緒にするのも初めてで、
これもなかなか面白いの体験でした。これまでは大人の距離感を
とりながら撮影にあたってくださってきた伏見さんと、
これからは色々と相談しながら公演を迎えさせて頂きたいと
お願いしました。
2023年10月13日 Posted in
中野note
今日は午前の仕事を終えて一度、家に戻りました。
途中、近所で買い物ができるのが嬉しく魚屋に寄ります。
いくつかある魚のうち、ワラサを買いました。
1パックで250円。魚屋さんが立派な包丁で良く切り付けて
柵を刺身にしてくれました。見事な切り口です。
ワラサにはつい反応してしまう。
ワラサはブリの一歩手前の状態です。
関東ではワカシ(ワササゴ)→イナダ→ワラサ→ブリ
関西ではモジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ(ハマチ)
呼び方が違いますが名前が成長度合いによって変化する
いわゆる出世魚です。
このワラサが重要な役割を果たす唐十郎作品があります。
新宿梁山泊の金守珍さんがライフワークにしている
『少女都市からの呼び声』です。
あの話のなかで、現世に一歩を踏み出そうとする雪子
=本来は生まれてくることができなかった少女は、
世間に出たら美味しいものを食べたいと言います。
それに応えて、兄である田口は「今は、ワラサかな?」と言う。
雪子「そのワラサ、食べたいよお」と続きます。
私はこの選択は実に見事だと思います。
これがブリではいけません。
雪子は現世の荒波を恐れる繊細な少女なので、
ブリでは脂がキツすぎる。それに語感も良くありません。
イナダは野暮ったいし、ワカシでは若すぎる。
やはりここは、程よく成長しつつもサッパリとしたワラサです。
最後は「サ」で終わる音も爽やかな少女の感じを出します。
こういう選択はそれこそセンスです。
そして自分は、唐さんの才気をこういうところに見ています。
「今は、ワラサかな?」
兄・田口のせりふを聴くとき、冬に閉ざされた雪子の世界に
ドウッと暖かな風が吹き込んでくる感覚がします。
2023年10月12日 Posted in
中野note
いつものケッチさん、テツヤさん、私に加えて
今回は「黒子」役として新たに よし乃さんが参加してくれました。
右から2番目の女性。
CHAiroiPLINに所属している身体能力抜群の若手俳優です。
今日から『オオカミだ!』3回目の上演に向けて動き出しました。
ありがたいことに、上演して欲しいというオーダーを受けることが
できたのです。前回から1ヶ月ちょっとでの上演ですが、
新しい黒子さんを迎えながら、前回からまた少し工夫。
文筆家でサーカス研究者、プロモーターの大島幹雄さんに
頂いた意見を参考に、ずっと考えてきた改善点を試しながら序盤を
組み立て直します。あとは、会場の特性に合わせた設えを想定。
前回の月岡ゆめさんからよし乃さんに替わったことにより、
黒子さんの造形も変えていきます。これはもう単純に、
それぞれのパフォーマーの特設をいかに演目のなかに
生かせるかという創作のおもしろさです。
稽古場は流山寺事務所の本拠地、space早稲田をお借りしています。
都心での稽古。これもまた気分が一新されてなかなかの贅沢です。
明日も同じ場所で夕方からやります。
2023年10月11日 Posted in
中野note
↑『愛の床屋』のレコードをいつか買わなければならないと思っているの
ですが、高価で手が出ません。でも、いつかは!
1ヶ月に1回、床屋に行きます。
私の髪型は坊主に見えて、坊主ではありません。
坊主は社会性がない、と20代終わりに言われたので、
それからは頭頂部だけやや長めにするようにしました。
そういうわけで床屋が必要なのです。
今行っている床屋にはずっと通っています。
現在の家に引っ越してきてからなので、
すでに9年近く浮気せずに同じところにお世話になっています。
先日に行った時、その床屋の店主がいつもよりサッパリした
髪型をしているので、ふと気になりました。
床屋は自分の頭をどうやって散髪するのか。
こんなことが気になるのは初めてのことでした。
思い切って訊いたところ、なんと自分でカットしていると言います。
後頭部まで器用にやるのですから、改めてプロの技術に唸りました。
以前は床屋の友人同士で火曜日にやっていたそうですが、
お互いにスケジュールを合わせるのが面倒になり
いつしかセルフカットになったそうです。
他人様の髪型を撮影できなかったので写真はないのですが、
"ホリエモンの後頭部"のような感じです。
あれをどうやってセルフでやるのか、ちょっと想像つきません。
ついでに、有名人の髪型について喋りました。
プロの目から見てアッパレなのは河合俊一さん。
現在、ブームになっている男子バレーボール。
いつの間にか協会の会長になっている河合俊一さんの
髪型が数十年に渡り維持されていることは、プロの目から見ても
すごいのだそうです。あの横分け前髪アリの髪型です。
それから、北朝鮮の金正恩さん。
あれは床屋技術的にはかなり至難の技の賜物で、
特にサイドの部分を剃り上げている精度がすごいそうです。
しかも、相手は一国の最高権力者ですから、
チクリなどと刺激を与えてはいけないでしょうし、
まして流血などもっての他に違いありません。
同じ床屋として、会ったことのない金正恩さんの担当には
頭が下がると言っていました。
唐さんの『愛の床屋』はスウィーニー・トッドの日本版で、
床屋の中には一抹の狂気や恐ろしさが含まれているという歌です。
が、お隣の国ではそれとは逆に、今日も命懸けで
カットにあたっている人がいるかもしれないということでした。
床屋、マンセイ。
2023年10月 6日 Posted in
中野note
↑昔の箱入りのではなく、新装版で読んでいます
明日はドリームエナジープロジェクトの発表会です。
略してドリプロ。藤沢を拠点にさまざまな障害を持つ青少年たちに
多様な学びを提供しているNPO法人です。
藤沢の新堀ライブ館という会場で
いつも行ってきたレッスンの発表会をやります。
絵画や書道の展示、音楽やダンス、英会話などの発表。
自分は一緒に演劇づくりをしていたのですが、コロナでは難しい。
そこで最近はスピーチの練習していて、みんなが好きなものを
写真で紹介しながらアピールするというコーナーをつくりました。
みんな喋るのがメキメキ上手くなるし、お互いに日常的に
何にハマっているかわかって面白い。
怪我の功名的なたのしさがあります。
他にも音響係とリハーサルの進行を担当します。
これと緩やかに関係があるんですが、
最近はコツコツとミシェル・フーコーを読んでいます。
時間はかかるし、分厚い本は重いし、翻訳も難しい。
でも、まるで学生のように少しずつノートを取りながら読んでいます。
きっかけは打合せで、寿町のコミュニティセンターを訪ねたときです。
多くの本が収められた本棚にフーコーの代表作『狂気の歴史』と
『言葉と物』があったのです。ピンときました。
かつては日雇い労働者たちの街、
いまは高齢化と福祉の街になった寿町のスタッフが
フーコーと自分たちの日常をつなげて捉えているのを知り、
感心しました。
自分も、今の方が切実に読めるはずだと思いました。
最近は本当に多様な人たちと付き合うようになったからです。
自分の中に自然にある、
普通の人とそうでない人の線引き。自分はまともだという実感。
特に集団行動をするときなど、遅れをとる人に対する苛立ち。
といった、自分の中にある権力的なものと向き合う必要を
私自身は感じます。
『狂気の歴史』を理解できたら、次は『監獄の誕生』を読みます。
ロンドン以来、久々に硬派な読書に取り組んでいます。
2023年10月 3日 Posted in
中野note
↑祝詞を入れた箱の傍らに肉(にくづき)を捧げる様子を示す「名」
「名」とは祈りであると見抜いた白川静先生の言う通り、
名前とは重く、思いのこもったものなのです
今日は一昨日に行った『青頭巾』WSの内容をレポートする予定でしたが、
緊急で別の内容にします。というのも、日ごろ親しくしているある女性の
言動に衝撃を受けたからです。
彼女の名を、Oさんとしておきましょう。
Oさんはジャニーズのファンであり、特に関ジャニを応援しています。
それが、例の記者会見による社名変更、グループ名の消滅に
大きなショックを受けたのです。
昨日の午後に一緒にいたので、それは目の前で起こりました。
私にはどうにも想像できない境地なので、
それがどんなに大事なのか、思い切って彼女に訊いてきました。
すると彼女はこう言うのです。
「中野さんには息子さんがいますね。
これまでずっと呼んできた息子さんの名前を、
今日から変えなさいと決められたようなもんです」
これには驚きました。
只事ではない感じがひしひしと伝わってきます。
そんなバカな!と言いたい気にもなりますが、
それそこ、完璧に主観の世界なのです。
それに、普段は穏やかで大人しい彼女が
こんなに鋭く激しい例えをすること自体、初めてのことでした。
翌日。つまり今日。
Oさんは体調を崩しています。
〇〇〇〇ロスという現象の実例をまざまざと見せつけられるのも
自分には初めての経験です。
アイドルが人々に与える影響力を痛感させられています。
2023年9月29日 Posted in
中野note
↑朝8:00前後にこんな感じで交差点に立ちました
ついにこの日がやってきました。
息子が小学校に入学した4月以来、
いつか来ると思って期待してきた児童通学時の横断歩道警備、
要するに「みどりのおばさん」の担当日がやってきたのです。
「みどりのおばさん」は、初期唐作品にとって重要な登場人物です。
唐さんが幼少期に体験したみどりのおばさんの不気味さ。
おばさんなのに男か女か分からない、という感慨に端を発し、
さまざまな作品にこの役は登場します。
例えば『続ジョン・シルバー』に。(演じたのは大久保鷹さん)
例えば『愛の乞食』に。(演じたのは麿赤児さん)
例えばドラマ『追跡・汚れた天使』に。(演じたのは不破万作さん)
いずれも、幼少期の唐さんの印象により男性が演じています。
その実、戦後のみどりのおばさんには、
戦争で夫や息子を亡くした未亡人や母が積極的に登用されたという
歴史があります。子供時代の唐さんは、みどりのおばさんの中に
見た目に面白さだけでなく、そういったシリアスな悲哀を感じて
魅了されていたともいえます。
ともあれ、今朝の私はよろこんで集合場所に行き、旗を振りました。
次に我が家が担当になる時も、仕事がない限り私がやります。
2023年9月28日 Posted in
中野note
↑横浜に戻り、テツヤさんとの作戦会議
今週はたくさん劇を観ています。
KAATの『アメリカの時計』。
イエローヘルメッツの『夏の夜の夢』。
流山児事務所の『戦場のピクニック』。
アーサー・ミラー、シェイクスピア、F.アラバールと
なかなかの正統派&ハード路線です。
最近は音楽や、ジャンルにとらわれないイベントにも
アンテナを張っているので、こんな風にストレート・プレイばかり
観るのは久しぶりで、また、そのペースからいっても
ロンドンでの生活を思い出しました。
『アメリカの時計』は、恐慌によって共産主義運動に目覚めていく
青年という設定を面白く観ました、アメリカで共産主義といえば
ずいぶん肩身の狭い思いを余儀なくされるわけですが、
映画監督のエリア・カザンや作曲家のハンス・アイスラーに
ついて書かれたものを読んだ記憶が、劇を観ながら甦ってきました。
アーサー・ミラーが1980年代に追憶を込めて書いているところが
他の代表作と一風ちがうユニークさを生んでいました。
『夏の夜の夢』は、シェイクスピア上演を自家薬籠中のものに
している座組の上演、という説得力がありました。
8人のキャスト、テーブルとイスのみのシンプルな道具立てで
2時間に凝縮して魅せるものです。洗練されてステキでしたが、
一方でブラックボックスでなく、もっと明るく開放的な空間での
同じ上演を観てみたいと思いました。暗い空間だと神秘的で
良いのですが、この上演の大らかな笑いが増幅されるように
思います。
『戦場のピクニック』は、『ゲルニカ』や宮澤賢治『飢餓陣営』との
合作になっていました。そのぶん複雑ですし、複雑さを押し切る
強引さが魅力でした。ところどころ、ユルさもまじえて笑いを
呼びます。が、基本的には流山児さんが三作を通じて強烈に
戦争反対を叫んでいました。シンプルです。
もうとにかく反対なんだ!というストレートさがこの上演の
何よりの力です。超真剣です。
観劇後はテツヤと横浜に引き上げながら、
今後の作戦を練ったりしました。
2023年9月27日 Posted in
中野note
↑つい1ヶ月前に発売になったCDです
ついに聴きました!
モーツァルトのオペラ『バスティアンとバスティエンヌ』。
『秘密の花園』唐組改訂版に新たに登場する野口医師。
彼が語る長ぜりふのなかに、このオペラについて語る箇所があります。
うりふたつの女、いちよともろはに引っ掛けて、
このそっくりな名前の男女の恋愛を題材にしたオペラについて
語るのです。
どマイナーな作品です。
いかに天才モーツァルトとはいえ、
なにしろ彼はこれを12歳の時に作曲したのだそうです。
12歳じゃねえ。
メロディラインはともかく、
オーケストレーションの乏しさは否めません。
しかし、まあ、そのぶん単純で聴きやすくもある。
録音自体が珍しく、いつか聴いてみたいと思い続けてきたので
最近に出たのをすかさず買いました。
唐さんはおそらく聴いていないような気もしますが、
そんなことは関係ありません。
おかげで、なにか『秘密の花園』の新機軸を閃きそうです。
2023年9月26日 Posted in
中野note
↑そういえば、タイトルのもとになったバーネットのこの本を
私は読んだことがありません!読まなければ!
もしも『秘密の花園』を上演するとしたら・・・
ここ二日、そういうことを考えています。
今年のお正月、ロンドンから帰ってきて以来、
何本もの唐十郎作品を本読みWSの題材に取り上げました。
『秘密の花園』もそのうちの一本。
台本には1982年の初演版と1998年の唐組改訂版があり、
WSでは初演版をベースに、最後の回では改訂版との比較を行いました。
台本に向き合うとき、私は次の二つの考え方をします。
(1)なにを物語るか
(2)どう物語るか
唐十郎作品上演にとって重要なのは、圧倒的に(1)です。
上演頻度が少ないからです。
唐作品は凄いけれど、まだまだ一部の人のみが知るもの。
これはシェイクスピアやチェーホフや近松と比べての話です。
だから、 (1) なにを物語るか、が圧倒的に重要です。
要するに、みんなが話を知らないから、お話を伝えなければ!
他方、中には、わずかに上演頻度の高い作品があります。
『少女仮面』『唐版 風の又三郎』『ジャガーの眼』などがそれ。
こうなるとやはり、(2)どう物語るか、という勝負になってくる。
まるで『ハムレット』や『桜の園』、『冥土の飛脚』をやるように。
モーツァルトの『フィガロの結婚』やベートーヴェンの5番をやるように。
自分にとって『秘密の花園』はその部類なのです。
どんな作品だって(1)なにを物語るか、がベースになります。
そのことを忘れちゃいけない。
けれど、現在までに多くのパターンがある『秘密の花園』には
(2)どう物語るか、も必要です!
そう思って、ウンウン言いながら考えています。
上演するなら、どんな上演にしようか。
唐十郎の専門家のはしくれとして、他の上演に遅れをとることは
できないな、なんて俗っぽいことも考えながら、ウンウン言っています。
何か、考えつきそうです。
2023年9月23日 Posted in
中野note
9月21日からホームページの不具合で
ゼミログの更新ができなくなっていました。
お陰様で、9月23日に無事復旧しました。
本日は、9月20日に書いた記事を掲載します。
↑2011.11.3に行った唐十郎21世紀リサイタルでの安保さん
今年も安保由夫さんの御命日がやってきました。
安保さんが亡くなったのは2015年のことですから、
あれからもう8年が経ちます。
安保さんは状況劇場出身の俳優で歌手で、
私たち唐ゼミ☆劇団員にとっては、1970年代以降の唐十郎作品に
多大な劇中歌を生みだした作曲家としてとりわけ大きな存在でした。
同時に、安保さんはご自身の店、
新宿のナジャに行けばいつでも往時の唐さんの創作エピソードや
劇の成り立ちを聴くことのできる生き字引であり、
私はしばしば話を聴き、また気骨ある安保さんに
励まされもしてきたのです。
8年前に安保さんが亡くなってからも企画が立つたびにナジャに行き、
安保さんの奥さんのクロさん(みんなそう呼びます)とやり取りして
きました。
今度はこの芝居を上演するので安保さんの歌を歌わせてください。
そうお願いして、薄い水割りを飲ませてもらうのが、私が稽古に入って
いく時のセレモニーでした。
が、今年の9/20が例年の違うのは、さらにそのクロさんが
体調を悪くされ、今月上旬を以ってナジャが閉店することになって
しまったことによります。
恒例だった、安保さんにお花を届ける先さえ無くなってしまいました。
これは、かなりやり場のない思いです。
先日の劇団集合では、最近の中心である津内口と麻子に加えて
椎野も入り、過去の劇中歌から気に入りのもの、可笑しかったものを
思い出してみました。
来月から本読みWSを『青頭巾』で行う予定ですが、
『青頭巾』に出てくる『オイチョカブの歌』は面白さにおいて
傑出しています。『ユニコン物語 台東区篇』の『八房の歌』もまた
イントロで「♪ブンガチャカ ♪ブンガチャカ〜」とやっていると
明るい気持ちになります。
あの、生真面目さと悪ふざけが入り混じっていた安保さんの役者姿も
思い出しつつ、今日はコミックソングを歌って自分の中の安保さんと
自分自身を浮上させようと思います。
↓先月末にみんなでナジャに行きました
2023年9月19日 Posted in
中野note
↑お土産はナショナル・シアターの『フェードラ』
ウィーンのレゾナンツェン音楽祭、BBCプロムス
スリークワイヤーズフェスティバル in グロウスター
の当日プログラムたち!
先日、ロンドンでできた友人に会いました。
彼女、Mさんは日本人で、もう5年以上もロンドンに住んでいる人です。
知り合ったのはまことに単純な理由で、彼女こそ、
私が去年に厄介になっていたダイアンの家に部屋を借りていた、
前の住人だったのです。
ダイアンの家を出た後もMさんは近所に住んでおり、
時どきダイアンの家に遊びにきていました。
それで紹介されて知り合うことができたのです。
長期に渡ってロンドンに住んでいる彼女の英語は素晴らしく、
旅行代理店勤務という職業人としての優秀さも抜きん出ていました。
いつも私が七転八倒しながら旅行の準備をしていると
荷物の大きさに規約があるからこのスーツケースにまとめた方が良い、
などとアドバイスをくれました。
実際のケースまで貸してくれるのです。
飛行機のチェックインをオンラインで済ませる手続きなど、
一緒にやってもらったこともあります。
自分にできたお返しは食事や遊びに案内することくらいでした。
たまたまコンサートや芝居にも興味を持つ人だったので、
私からは、これは凄いぞ!というものを案内して、
多少は役に立つことができたように思います。
しかし、それすらも、
観たものについて語り合う相手ができた私の嬉しさの方が大きく、
まことに大きな恩人でした。
その後、Mさんは弟さんの結婚式があるというので一時帰国し、
なんと羽田に着いた朝に『オオカミだ!』を観に来てくれました。
それから改めて、先日の夜に9ヶ月ぶりに会うことができました。
ロンドンでできた知り合いに日本で会うのは不思議な感じが
しました。今もグリニッジに住む彼女から、あの街が今も
正常機能して変わらずにあるのを聞きました。
(当たり前といえば当たり前ですが)
この9ヶ月間、Mさんは私の勧めた催しを観に各地に行き、
その当日パンフレットを集めてくれていました。
それが冒頭の写真です。観られなかった芝居、行けなかった
音楽祭、それら資料が入っています。
それぞれのページをめくりながらか彼女の冒険譚を聞くのは
愉しく、自分が行かれなかったウィーンやダブリンの話に、
またヨーロッパに行ってみたいと思うようになりました。
次は『オオカミだ!』を持って行きたい!
そういう話もしました。今度は研修生としてではなく、
演じ物を持って英国に行けたらどんなに良いだろうと
思わずにはいられません。ありがとう、Mさん!
2023年9月17日 Posted in
中野note

↑はじめて奮戦中
息子があと1週間で7歳になります。
7年前、私は横浜国大の丘の上にテントをたて、
『腰巻お仙 振袖火事の巻』の通し稽古に臨んでいました。
朝5時頃に産気づいたと連絡があり、昼に息子は生まれました。
あれから7年。
彼が誕生日プレゼントに望んだものは、
「メザスタ」というポケモン系ゲームのタグでした。
それ自体は600円ほどで、さして高額とはいえない品物です。
誕生日当日に私がフリーである保障がない以上、
与えられるうちにセレモニーは済まさねばなりません。
安いな、と内心思いながら買ってあげると、彼はタグを買った
イオンに入っているゲームセンターへと歩を進めました。
そうです。
このタグはゲームを進めるためのとっかかりに過ぎず、
ほんとうの勝負と予算投下はここから始まったのです。
彼はタグに込められたモンスターを駆って勝負し、
新たなタグを手に入れて嬉々としています。
まるでパチンコ玉や麻雀の点棒が自分の手元に集まって
くるのにホクホクするオッサンのようです。
500円、1,000円、1,500円・・・が
あっという間に吸い込まれ、タグに変わりました。
長い闘いになりそうです。
彼はこれから、手元のタグが誘いかける禁断症状との格闘、
我慢を始めなければなりません。酒であれ、色欲であれ、
ギャンブルであれ、時にはチョコレートやアイスクリームにさえ。
人は必ず何かに依存します。要は程度問題です。
彼はあるところで折り合いをつけられるようになるのか、
自分はあまり偉そうなことは言えないな、と思いながら
これからを見守ることにします。
2023年9月15日 Posted in
中野note
左足の踵が痛んでから、もう1ヶ月が経とうとしています。
最初は構わずに走り続けていたら痛みは強くなるばかり。
それで朝は、走るのをやめて歩くことにしました。
時間はかかるけれど仕方ありません。
そうするうちに治らないだろうか、そう思ったのです。
時間が経つうち、痛みは徐々に緩んできました。
しかし、ちょっとした時にやっぱり痛む。
そこで月に一度お世話になっている整体の先生に相談したところ、
靴の中にソールを入れてみては、というアドバイスを受けました。
早速、今日は仕事の合間を縫ってスポーツオーソリティに
行くことにしました。オススメのソールを聞いたところ
勧められたのが上の写真です。
履いて行った一足に入れてもらったところ、良い感触です。
特にクッション性も抜群で、少し背が高くなったようで気持ち良い。
家にあるもう一足にも同じものを入れようと二つ目も買いました。
気に入りのスニーカーは捨てがたいものです。
中敷きや底がすり減っても、これだ!というフィット感が
次に買うものによって得られるとは限らないのです。
だから、ひとつ気に入ればできるだけ同じものを買ってきました。
が、やがて型はチェンジしていくもの。泣く泣く次のバージョンに
乗り換える。そういうことを繰り返してきました。
このソールを変える、というのは案外良い方法かもしれません。
全体を使い続け、中身を入れ替えていけば長持ちして安上がりでもある。
同じことはメガネにも言えて、昨日はレンズも交換しに行きました。
キズがついたレンズを交換しながら、同じフレームをずっと使って
います。イギリスに行く前にスペアをひとつ買ったのですが、
そちらの方はいまだに馴染めず、結局は古い方に手が伸びます。
こういう風にリニューアルしながら使い続ける最高峰は
自分にとって畳の張り替えです。あれは一日仕事であるために手間が
かかりますが、張り替えられたばかりの畳は素晴らしい。
『鐵假面』の主人公はタタミ屋なので、実際の仕事を見るためにも
張り替えを行おうかと思います。今はまだ暑いので、涼しくなったら。
外側からは見えずらくとも、見えない部分に気を配ることは
なかなかどうして、贅沢さに溢れています。
2023年9月14日 Posted in
中野note
↑マンガもさることながら、新潮文庫のこの本が自分のガイドになって
くれました。オススメです!
少女マンガを読んでいます。
萩尾望都作品を文庫で買ってきては、代表作から読んでいます。
別に『オオカミだ!』公演を終えてリラックスしているわけではなく、
来週末に担当している公演に萩尾先生をゲストにお招きしているので
せっかくだからこれを機会にその世界に浸ってみようと思ったのです。
☆神奈川県民ホール主催
青島広志&萩尾望都の「少女マンガ音楽史!」
・・・なるほど、これは自分にとって新しい世界です。
『ポーの一族』も『トーマの心臓』も、
これまでタイトルを知りこそすれ触れてきましたでした。
初心者の私なりに萩尾先生をすごいと思うのは
『半神』と『イグアナの娘』を同じ方が描いている点です。
前者はあまりにも無駄なく研ぎ澄まされています。
後者は、一見すると突飛な設定の中に、
やはり母娘関係が研ぎ澄まされて凝縮しています。
同じ肉親の愛憎を描きながら、
これだけの表れ方のバリエーションがあることに、
萩尾先生の凄みを感じます。
が、正直に告白すると、萩尾作品を読みながらちょっと疲れています。
『ポーの一族』を一気に読んでいるせいかも知れませんが、
劇場で机を並べている女性スタッフが「あ、萩尾先生のマンガだ」
と言って嬉々としてページをめくり始め、しばらく後に
「止まらなくなっちゃう」と言って無理やりに手を仕事に戻す光景を
見たとき、ああ、オレは頑張って読んでいるんだな、
自然に萩尾先生の世界に夢中になってはいないんだな、
という疎外感を覚えざるを得ませんでした。
口惜しかったので、帰りに『ポー詩集』を買いました。
これは対訳が載っているもので、おお、さすがに去年の英国生活を
経た後だと、英語でも多少は読めるようになっている!とやや自信を
回復しました。平易な英語で書かれている。これはポーの才能です。
そんな風に脱線しながらも、『ポーの一族』に帰ります。
主人公たち、エドガーとアランを自然体で自分のものとすることが
できるのか、そういう挑戦を続けています。
2023年9月13日 Posted in
中野note
大島幹雄さんをご存知でしょうか?
私はここ7年、大島さんのファンです。
大島さんはサーカスや大道芸の研究者であり、
また実際のイベントを取り仕切るプロデューサーでもあります。
その探究の深さ、著書のおもしろさ、それでいて現場を切り分ける
処し方の温かさは、あんな風でありたい、と思わせる大人ものに
して本格派の方、という印象です。
この7年と、まことにはっきりした期間であるのには理由があって、
神奈川の財団からの仕事を受けるようになってすぐにお目に
かかった方のひとりが、大島さんだったからです。
少し話を聞いてすぐに興味を持った私は、
伝説の道化師ラザレンコの著した『サーカスと革命』や
康芳夫さんと並んで私が仰ぎ見る「呼び屋」のひとりである神彰さんを
描いた『虚業成れり』を皮切りにして、大島さんの世界に入門して
いきました。
大島さんの本の中で読んだ「サーカスの熊の仕込み方」
についての一節は、現在社会では許されない残酷さに満ちていますが、
人類が行き着いた芸能のあり方として、自分の好きなエピソードです。
いったいどれだけの人に、私は大島さんから学んだ挿話をしたことか。
大島さんの本を読むと、人に喋りたくなる。
そういう魅力に満ちた本を書き、同時にプロモーターとして、
あの伝説の「段ボール箱に一万円札を蹴り込む」を経験されている
ところが大島さんの凄みです。チケット発券システムが行き届き、
果てはQRコードチケットの導入によって忘れ去られた世界の
たのしさが、大島さんのキャリアにはあります。
前段が長くなりましたが、そのように敬愛する大島幹雄さんが
『オオカミだ!』を観にきてくださり、文章を書いてくださいました。
所帯の大きな演劇公演とは違い、ケッチさんのような
フィジカル・コメディやソロパフォーマンスには、演し物を育てていく
という文化があることに改めて気付かされます。
ほんとうは演劇公演だって育てたいけど、どんなに面白くとも
100回、1,000回と公演できる作品はごく一部です。
そういう意味でも、自分は留学をしているのだなと思います。
そして留学をしたからには、その力を自分のメインの演劇づくりに
活かしてもうひとつ上の芝居づくりをしようと考えています。
2023年9月12日 Posted in
中野note
↑さよなら、ナジャ!
最近は『オオカミだ!』の現場レポートをしてきましたが、
同時進行で行っていたことがありました。それをいくつか。
上の写真は、安保由夫さん・クロさんのお店
新宿二丁目のナジャが閉店すると聞いて駆けつけたものです。
よく一緒に来ていた禿恵もいます。
安保さんが亡くなってからもクロさんお一人で続けて来られましたが、
クロさんが体調を悪くされたということで、クローズすることになった
そうです。寂しいです。
沢山のことを聞き、劇中歌を教わり、励まされてきました。
改めて、お二人に感謝します。
9/6(水)のカプカプWSです。
これから月に一回ペースで行っていきます。
この日が初回だったので受講生の皆さんも緊張していましたが、
それぞれに専門領域を持った面白いメンバーが集まり、
私は主催者としてうれしいです。
9/9(土)に水戸で行われた室井先生を偲ぶ会です。
基本的には、中学・高校時代を水戸で過ごした室井先生の同窓会的
意味合いの強い会でした。
が、横浜都市文化ラボの受講生だった戸田真くんが、
横浜の会に参加できなかったからと駆けつけてくれました。
戸田くんは大学生になってすぐ、2012年度に受講した熊倉聡敬先生の
講座に衝撃を受けたという話をしてくれました。
「いちごメディテーション」というお題の一回でした。
私や椎野も運営スタッフとして面白く参加した講座でしたが、
大学一年生だった戸田くんにはとりわけ忘れられない講座だったそうです。
時に若者は、運営が思うよりもずっと大きく影響を受けます。
教えてくれた戸田くんに感謝しました。室井先生はいつもそういう
機会をつくろうとしてきたのです。喜んでいるはずです。
それから、翌9/10(日)の巨大バッタ修復&展示に備えて
ミーティングもしました。自分が『オオカミだ!』千秋楽につき
安達俊信くん・小松重之くんのコンビが名代をしてくれました。
結果、水戸の皆さんを二人がサポートするかたちで良い1日を過ごした
そうです。触覚は立ち上がりきらなかったので、次回に繰り越し!
こんなこともやりながら、『オオカミだ!』を終えることが
できました。欲張りな10日間でしたが、精一杯やりました。
それぞれに場所で一緒に走ってくれたみなさんに感謝!
2023年9月 8日 Posted in
中野note
↑ロビーのバナーの前で!
自分が横浜に戻る前に皆さんに希望して記念撮影してもらいました
『オオカミだ!』2日目。
今日はザ・スズナリ公演を組む前から決まっていた
県民ホールの催しがあって、『オオカミだ!』の本番には立ち会えません。
けれど、1日目から少しだけ改良したいところがあったし、
できるだけ座組のメンバーと一緒にいたいこともあり、
集合の16:00から17:30までは下北沢にいました。
着いてみると、今朝からの大雨の影響で、
大事な紙芝居の経師(パネルに印刷物を貼ったもの)が浮いていて、
ザ・スズナリの洗礼を浴びました。
数少ない道具はどれひとつとっても欠けてはならず、
その中でも井上リエさんによる紙芝居は私たちの生命線です。
それだけに皆でヤキモキしましたが、
楽屋の小部屋で除湿をガンガンにかけて許容範囲まで
立ち直らせました。というトラブルに見舞われながらも、
稽古をして、それから皆さんに本番を託して横浜に戻りました。
ずいぶん寂しいものだな、と思いましたが、
これから『オオカミだ!』がうまく育って方々に出かけるように
なれば、経費節約のために自分不在の方が良い局面が必ず来ます。
だから自分がいない状況もまた、『オオカミだ!』の特性と
思うようにしました。
中心にテツヤさんとケッチさんとユメさんと私の4人。
それに、受付のエミさんと鈴木さんがいて、スズナリの
野田支配人とチカさんが手厚く後方支援してくれます。
加えて、照明はチエさんとツバサさんのサポート、
井上リエさんの描いたビジュアル、平井隆史さんの音響協力。
チラシのデザインと写真撮影をしてくれる金子さん。
そんな風に広げて考えても、やっと10名強の座組です。
ですから、助け合って舞台を支えています。
開演時間の19:00になればウクレレを弾くケッチさんを想像し、
19:45を回れば三男ブタのレンガの家との対決に入った頃だと思いました。
県民ホールで立ち会っていた公演を終えてケータイに電源を入れると、
観てくれた人たちからのメッセージが入っていました。
子どもたちがたくさん入り、客席はかなり盛り上がったそうです。
ありがたいこと!
明日は朝9:00に集合して11:00から3回目の本番。
それを終えたら自分は水戸に向かいますが、
『オオカミだ!』は14:00からも本番があります。
ああ、どこでもドアがあれば!
2023年9月 7日 Posted in
中野note
今日は『オオカミだ!』初日でした。
本番に集中するために朝から別件を捌き、13:00に劇場入り。
最終リハーサルをして、演技について最後の改善点を詰め、
小道具の細部もさらにブラッシュアップ。
その後、下北沢の街に出てチラシ撒きもしました。
今回は5回公演ですが、集客に関して
空いている日と混んでいるに恐るべきムラがあり、
少しでもお客さんの少ない日を埋めようと躍起になっています。
近所には子供たちの集まる広場やスイミングスクールもあり、
そこに出入りするお父さん・お母さん・子どもたちにチラシを
渡して受け取ってもらいました。
そこからの本番です。19:00開演。
始まると舞台はもうケッチさんの領分で、
この舞台は自分もたのしみながら観ることができます。
その場でのお客さんとの交流や、インスピレーションに
賭けることの多いケッチさんに、驚きながら観る。
それに、今回の黒子アシスタント役であるユメさんとの
コンビネーションが急上昇し、普段は爽やかで美しい彼女は
面白い動きをたくさんして、ケッチさんと息が合うのです。
これは実に相性で、4日前に初対面したばかりとは思えぬほどの
嬉しい成果です。前回の舞台では冗長だったところを引き締めて
1時間ぴったりで公演を終えました。
今日のお客さんは少なかったけれど、そういう状態であれば
そういう客席なりのケッチさんの渡り合い方を見ました。
舞台が終わった時、
本番中にオオカミに使われまくった観客の皆さんが
よろこんで帰っていくのがよくわかりました。
今回の『オオカミだ!』は前回の本多劇場公演とは違い、
集客に苦戦してきました。同じ下北沢で、
あまりにも短いインターバルでの再演が良くなかったとか、
キッズプログラムなのにちょうど夏休みが終わったばかりの
タイミングとか、いろいろと原因を考えています。
けれど、さまざまな場所への巡回を目指すこの公演を、
私たちはチャンスと見ればどうしても仕掛けたかったのです。
結果、5回の公演の客席は、極端にムラができています。
すごくお客さんの少ない日と集まっている日の差は人数に4倍も
差がある。だから、座組の全員で最後まで宣伝です。
それからザ・スズナリの支配人さんも大いに協力してくださり、
まるで劇場の主催事業のように力を入れて下さっている
ありがたさが身に沁みます。
そういうわけで、劇場の方にも参加してもらって初日乾杯をしました。
明日9/8(木)も19:00開演。明日は同じ平日でも子どもたちを含めた
お客さんがたくさん来る予定です。台風が心配です。
↓開演前のステージ
2023年9月 6日 Posted in
中野note
↑劇場前!
今日は朝にカプカプひかりが丘に行き、
今年度の「カプカプ×新井一座によるファシリテーター育成WS」を
スタートさせました。
今年度は2年度目でもありますし、
岡山・鳥取から駆けつけたメンバーもいてトップから
スムーズに始まりました。昨年度もそうでしたが、
このWSには新井英夫さんを慕って特別な思い入れを持つ
参加者が多くいて、しかも皆さん腕に覚えのある豪華メンバー。
ここで始まったネットワークが将来への強力な布石になりそうな
ところも愉しいところです。
その後、午後には下北沢に行き、
初めてのザ・スズナリ入りを果たしました。
午前中からテツヤP率いるスタッフ陣が仕込みを終えてくれて、
シンプルなステージが完成して照明を合わせているところでした。
↓客席の様子
それから場当たりをして、
その中で、今回の座組の新人であるユメさんの動きの工夫も
重ねました。何しろ、彼女はまだ稽古を始めて4日目なのです。
段取りを覚え終わり、これから「黒子」という役に工夫を凝らす
余地がいっぱいある。自然に周りも欲が出てきて、粘りました。
夕方まで場当たりをして、
それから小道具をブラッシュアップしようと買い物に
行こうとしましたが、突然の夕立で身動き取れず。
このゼミログを書き始めたのは、その買い物までの待ち時間です。
↓ロビーで作業。小道具を工夫
30分ほどして雨の勢いが落ちると買い出しに行き、
総力戦で道具に手を入れて、手を入れた道具を扱う箇所を再度、
念入りに稽古して劇場入り初日は終了。
最後に片付けをして、客席をつくることもできました。
明日は昼に集合し、ゲネプロをして初日を迎えます。
↓ステージ奥からの眺め
2023年9月 5日 Posted in
中野note
↑稽古の休憩時間にケッチさんと積もる話をします。
ケッチさんは今年もエジンバラに行かれたそうです。
ああ、頭がグルグルします。
やることが多くて、そのどれもに粘りたくて、沸騰する感じです。
9/3(日)に『オオカミだ!』の稽古を始めました。
久々にケッチさんとの再会し、本編の内容を思い出しながら、
2月の公演に自分たちがした工夫に気づいたり、
今回用に拡大するところ、割愛してコンパクトにするところなど
洗い出してブラッシュアップしています。
合い間にするケッチさんの海外戦略の話など面白く、
そのうちイギリスに斬り込もう!などと話し合っています。
前は遥か彼方の土地で想像すらできなかったけれど、
去年を経てヨーロッパが身近になり、話に付いていかれるように
なりました。効能です。
今回の黒子役の月岡ゆめさんは、
自分が2020年度に桐朋芸術短期大学に非常勤で教えに行っていた時の
生徒でもあります。3年経ってこんなかたちで再会するとは
思いませんでしたが、同時に20人ほどの学生を相手にしていた
あの時には無かった会話があって、これも面白く過ごしています。
彼女にはパフォーマーとして華やかさがあるので、
少ない稽古期間の中でもまた違った、かなり主体的な黒子をつくろうと
示し合わせています。
あとは、早朝の散歩中にレギュラーガソリンの値段が195円まで
上がったことに衝撃を受けました。
さらに、これはかなり今更なのですが、
唐さんが『続ジョン・シルバー』の台本のト書きに書き付けていた
歌『I'll be〜』の正体を突き止めました。
これだったんだ!
ROY ORBISON
"THERE'LL BE NO TEARDROPS TONIGHT"
こういうことが一つあると、それだけでもう、
もう一度『続ジョン・シルバー』をやらなければならないような気が
してきます。
気ばかりがはやっています。
カプカプひかりが丘でのWSや県民ホールのオルガン公演、
水戸の巨大バッタなど、いろいろな本番が同時にある今週末です。
台風は大丈夫か!?
2023年9月 1日 Posted in
中野note
↑歯医者で授けられた強力マウスウォッシュ。殺菌だけでなく
傷の治りも早くする効果があるらしい!
9月になりました。
少し気温も落ちて過ごしやすくなってきています。
ハンディラボの工房スペースは冷房がありませんから、
少し稽古をするとドロドロに汗をかきます。
たまりかねて休憩を取り、事務所スペースに逃げ込んで涼をとります。
ずっと炎天下で闘うスポーツ選手や道路工事など野外で仕事をしている
人たちが偉く見えます。私たちも、9月にテントや野外公演を行うようで
あれば押して稽古をして、むしろ暑さに慣れる体づくりをしなければ
なりませんが、今回はそうではないので、素直に逃げ込んで休憩を多めに
とり、水やお茶をガブガブ飲んでいます。
暑かった8月を通じて、今年は歯の痛みに悩まされました。
いちばん痛かったので前半で、これは今まで未経験のズーンとしたもの。
左下の奥歯近辺から痛みが走ると左半身全体に痛みが貫通して
10分やそこら身動きが取れなくなる感じでした。
それでいて、かかりつけの歯医者でも、紹介されて行った
セカンドオピニオンでも、虫歯ではないと言われてかえって困りました。
どうしたものかと頭を抱えながら、しかし、よく寝るようにしたことも
あってか、お盆前には劇的に改善していきました。
セカンドオピニオンでしてもらった高さ調整が効いたのか、
痛みが徐々に引いて、数日経つとウソのように痛くなくなったのです。
これには喜んで、かぶりつき系のトンカツなんか勇んで食べました。
ところが、また8月最後の1週間に差し掛かった頃から痛くなり始め、
やっぱりダメかと思っていたら、今度は歯茎が腫れて、左頬がゴリゴリと
膨らみ始めたのです。ああ、これは歯茎にバイキンが入ったな、と
思いました。この感覚は、2016年の正月にオヤシラズ4本を手術して
抜いてもらった時によく覚えていたのです。
手術して1週間ほど経ち、傷口にバイキンが入って腫れた、
あの時と同じなのです、おそらく、痛い、痛いと歯磨き過剰、
いじくり回しているうちに傷つけたのかもしれません。
で、膨らんだ後の方が見た目には影響ありましたが、
原因がはっきりしたのでずいぶん心が楽になり、
そこから数日経つうちに腫れも半ばほど引いた状態で、
今日はかねて予約してあった近所の歯医者に行きました。
状況を説明すると、なるほど腫れているということで
麻酔を打たれて膿を吸い出され、抗生物質を
もらいました。今は治療のおかげで瞬間的に痛いけど、
これで加速度的に改善するはずです。
しかし、いつも思うのは、医者だって整体だって、
大抵コンディションが底をついている時には行かれないという
ことです。なんとか対応するために予約を入れると、
少し良くなったタイミングでやっと通院ということになる。
今回もそうでした。
抗生物質、5日前に欲しかったな・・・
うがい薬も良いのを手に入れたので、しこたまやります。
2023年8月31日 Posted in
中野note
↑机と本棚に囲まれても、実際には見た目よりスペースがあり、
激しく動き回れます。
今日もハンディラボで稽古していました。
津内口と林麻子のふたりを相手に『鐵假面』1幕から抜粋して立ち稽古。
今回の上演にふさわしい演技スタイルを探るのが目的ですが、
どうしたらせりふと動きを御して役者が自由に振る舞うことができるか、
それでいてせりふが求める世界を余すことなく表現することができるか、
演じてもらい、話をし、また演じてもらい、の繰り返しです。
特に今日は事務スペース全面を使うことができたので、
冷房のなかで稽古しました。ここ最近のようにドロドロにならずに済み、
工夫の凝らしかたも冷静です。
稽古を進めるうち、ヒロインのスイ子がわざと淫蕩ぶってみせる
せりふに行き当たりました。
「あなた、乱行はどうしてお嫌い」などというせりふを言うのです。
最初、津内口はこれをドスを効かせて言いました。
けれど、こういうせりふは悪ぶることなく、かえって穏やかに
言った方が効くものです。その後、相手役の童貞青年・タタミ屋は
自分がいかにセクシャルなものを嫌悪しているか語るわけですが、
こういう突飛でエロいせりふは、静かに言った方がその魅力が出て
相手役の拒絶感も引き出せようというものです。
・・・と、このシーンを稽古しながら、かつて学生時代、
大久保鷹さんに教わったことを思い出しました。
あれは20歳の頃の大学3年時。
立ち上がりたての唐十郎ゼミナールで
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』を上演した時、
本番を観にきた鷹さんは僕らにせりふ術を授けてくれたのです。
主人公の忠太郎が床屋の見習いを始めた場面でした。
床屋のおやじは忠太郎をいじめるべく、彼を「おい!」と
呼び出しておいて「用があったら呼ぶね」と言うのです。
これを、同級生だった石井君はドスを効かせるようにに演じました。
いかにも強面です。ところがこれを観た鷹さんは、こういうせりふは
ニコニコと、さらにクネクネと、相手を撫でまわすような優しさで
言うべしと例を示したのです。
参考にすると、奇妙ないやらしさ、悪意が出来しました。
そして、翌日の本番ではてきめんにこのせりふがウケた。
効果は絶大でした。相手の痛ぶりかたにこのような陰湿な
やり方があることを私は知り、今日はそれを津内口に伝えました。
彼女の人間としての抽出しも、これでひとつ増えたことでしょう。
2023年8月30日 Posted in
中野note
↑言葉の心配はないよ!小さな子でもいいよ!というメッセージを
ザ・スズナリの野田支配人がアレンジしてくれた。ありがたいぜ!
昨日、昼間にハンディラボで立ち稽古を行ったところ、
ドロドロになりました。まるでサウナのなかで稽古しているかのように
うだるのです。半野外想定の稽古なので、演技は大時代的なスタイルです。
ゆえに、声を張り上げる。
ゆえに、声を張り上げるだけで汗がふきだす。
大間違いだったのはTシャツの替えを持って行き忘れたことで、
稽古後、夕方からの予定に同席した人たちは、
さぞ私が臭かったことと思います。あいすみません。
『鐵假面』稽古はそのように熱を帯びて、
自分たちが伸び伸びと大熱演できるか、その方法を探っています。
他方、9/7(木)-10(日)に迫った『オオカミだ!』公演の稽古も
週末に迫っています。前回の公演をブラッシュアップする方針をたて
各シーンにどんな工夫を加えるかを考えています。
一昨日には、テツヤPにお願いをしてザ・スズナリを下見させて
もらいました。2月の公演を観てくださった支配人の野田さんと
スタッフの方が、一日中働いた後にも関わらず温かく迎えて下さり、
舞台の設営についてお話しすることができました。
おかげで不安が払拭され、より舞台が観えてきました。
野田支配人は今回もまた、劇場近くの交番の向かいにある壁面を
ジャックして、私たちの公演のポスターで埋め尽くしてくれました。
英語のキャプションだって付いています。
そう。テツヤPとケッチさん、私の3人はいずれ海外に行こうと
考えて『オオカミだ!』をつくったのです。
背中を押されました。終わったあとはテツヤPと二人で横浜に
引き上げ、深夜のもんじゃ焼き屋で作戦を練る。
そういう日々を送っています。
2023年8月29日 Posted in
中野note
↑実際の上演を想像しながら立ち稽古
立ち稽古したら会場について構想する会議
↑その間にみんなマンガのなかの記述をしらみつぶしに探す
残すところあと1週間になった唐ゼミ☆夏稽古を追い込んでいます。
新たな上演形式をハード&ソフトの両面から探るために立ち稽古。
立ち稽古をし、役者と観客のパワーをより開放するために
劇場をどう建てるか話をし、また立ち稽古に戻る。
そんな感じです。
合い間には調べ物をします。
『鐵假面』という芝居には、唐さんが小さい頃にみた紙芝居
『少年王者』が大きな影響を与えています。
ヒロインの名前が「スイ子」というところにも、それが表れている。
けれど、劇の中で『少年王者』のスイ子について
語られるせりふが原作のどこにあるのか、いまいち判然としない。
それはこんなせりふです。
昔からスイ子さんは健忘症だった。
少年王者に助けられた時だってあんたはいつも気絶していた
じゃありませんか。果たして気絶したのか、
気絶した振りをしていたのかは分りませんが、
お父さんにお前、それは夢だよと言われると、
そうかもしれないなどとすぐに大事なことを忘れてしまう。
と、主人公の青年はこんなことを喋りますが、
これがどこにあるのか気になって仕方ない。
そこで、稽古や作業の合い間に何人かでよってたかって探しました。
要するに、みんなでマンガをガーっと読む。
・・・マンガ喫茶みたいですが、激しい立ち稽古、
神妙なミーティングだけでなく、これも私たちの公演準備です。
そんなこともやってます!
2023年8月25日 Posted in
中野note
↑『オオカミだ!』と巨大バッタ。9月前半の取り合わせ
気づけば『オオカミだ!』公演まで2週間に迫っています。
公演情報はコチラ→
https://yorunohate.net/the-big-bad-wolf/
唐ゼミ☆夏稽古もたけなわですが、『オオカミだ!』稽古の準備もしないと。
2月の本多劇場に引き続き、
今回の公演会場であるザ・スズナリもまた演劇界の重要拠点です。
普段はテントや野外を中心に活動している自分への、
これは、プロデューサ・テツヤからの大いなるプレゼントです。
燃える!
どういう風な稽古・本番にしようか。
方針は見えています。その方針が各シーンにどう宿るのか、
ここから1週間で計画を立て、直前の稽古に入ります。
どうやってこのショーを作ったのかを一から思い出す必要もある!
去年ロンドンにいて、イギリス民話である『3びきのこぶた』を
どう体感しながら台本づくりをしたのか。
作品と自分の原動力をともに振り返るところから始めます。
これは、一人でこっそりハンディラボか、
あるいは、風呂屋ででも考えようかと思っています。
風呂屋。いいなあ。
他方、『オオカミだ!』公演を行う9/7-10の週末はイベント尽くし。
9/9(土)は水戸芸術館に再び巨大バッタを膨らませにいきます。
これは展示をするというよりも、修復の意味合いが強い1日です。
が、あのバルーンはデカすぎて、そんな作業も結局は展示になってしまう。
屋外での作業にならざるを得ないので、
せめて、猛暑が少しは秋の気配に変わっていてくれるといいなあ。
そうそう。ボランティアスタッフを募集しています。
巨大バッタに触ってみたい人はぜひ来てください。
たのしく膨らませ方を伝えます
募集ページ
2023年8月24日 Posted in
中野note
↑新宿中央公園で公演していた2020年秋。
公園近くのドラッグストアでこの歯ブラシセットを発見しました。
以来、気に入ってずっと買っています。ロンドンにも持って行きました
・・・まったくよくわかりません。
あんなに痛かったものがどうして克服できたのか。
痛みとは歯の痛みのことです。
まず春先から、奥歯が異様にしみるようになりました。
歯が痛いなあという兆候はロンドン滞在時からあったのですが、
帰国後には冷水どころか真水を飲んでもしみるようになったのです。
だいたい、技術が粗雑なロンドンの歯医者なぞにかかったら
かえって歯をガタガタにされると渡英前に留学経験者から脅されていた
自分は、とにかく歯磨きに必死でした。
日本に戻ってきて事なきを得たと安心していたら、
むしろ帰国後に大きく痛むようになった。
歯医者さんに相談したら「虫歯はなし」
「シュミテクトで磨いてください」とアドバイスされ、
通常の歯磨き後にシュミテクトもやるという
二段構えでしばらく過ごしました。
これは大変に煩わしく、サボったり、けれども痛いから真面目に
2度磨きをしたりの数ヶ月。
ところが、7月末から、噛むたびに異様な痛みが走るようになりました。
左の奥歯が痛く、痛すぎて下が痛いのか上が痛いのかわからないほど痛く、
なんだか顎まで痛く、時によると左手の指先まで痛みが貫通するのです。
これに耐えかねて歯医者に行くと「やはり虫歯じゃありません」と
言われ、「そんなに痛いなら」と紹介状を書いてもらった
セカンドオピニオンでも「問題なし」と言われました。
ところが、お盆手前にこのセカンドオピニオンに行った翌日から
劇的な改善をみせたのです。あれから十日あまり、痛みはすっかり
去り、しみるのすら去って現在に至ります。
理由がぜんぜんわからない。
何かのストレスで寝ながらギュウと奥歯を噛みしめていたのかも
知れないな、と思うのですが、それすら寝ているからよくわかりません。
ともかくも痛みは去り、シュミテクト併用の二度磨きからも解放され、
スッキリ爽やか、安堵感とともに日々を過ごしています。
前触れもなく痛むと、酷ければ10分くらい動きが止まった日々、
激痛とともに夜中に飛び起き、ロキソニンに手を伸ばさざるを
得なかったあの日々。あれはいったい何だっただろうか。
2023年8月23日 Posted in
中野note
↑先週末まで、齋藤は日生劇場で行われた『せかいいちのねこ』公演に
関わっていましたから、家族で観に行きました
8月に入って以来、連日ハンディラボに集まってゴリゴリと作業を
進めています。折からの驟雨にやられてびしょ濡れで来たり、
倉庫内が暑さに事務スペースの冷房を特に効かせて、
日々、集まっています。
いつもはLINEでやりとりしている内容を直に共有したり、
公演準備に際して書類を作る必要があればすぐに複数人で
対応できることも、今回組んだ集中稽古の効能といえます。
昨日は、いつもの津内口、林麻子、ちろに加え、
丸山雄也、井手晋之助、齋藤亮介もやってきました。
それぞれ直前にあった本番を終えたり、逆に準備中の出演に
備えながら、こちらにも目を配っての参加です。
最近は、3月公演の寒さの中でもお客さんが集中して観られるよう
舞台の進行をスピーディにする道を探っています。
これまで4〜5人で工夫箇所を探ってきましたが、
人数が増えるとさらに複眼になり、もうひと超えコンパクトにできる、
あるいは、伏線として重要な細部が改めて見つかったりします。
人数が多い時には、ちょっと遊びもやりたいと思います。
この前は突然にウナギを食べに行きました。
あんな大技でなくて良いので、どこかで食事などできたら良いと
考えています。あるいは、昼の休憩などに近所のうどん屋に行くのも
愉しいものです。
年が明けたら即、公演体制は佳境に入り余裕が無くなります。
だからこそ準備、だからこそ遊び、そう思っています。
2023年8月22日 Posted in
中野note
↑これが「すじ鉾」。この決然としたロゴにも好感を持ちます
・・・さすがに混乱してきました。
目下、週のうち4日はハンディラボで『鐵假面』を準備しています。
土曜になれば翌日の本読みWSに備え、日曜夜は『夜叉綺想』の世界。
『鐵假面』では、姉の情夫を殺して全国を逃げまわる姉妹の
ボストンバッグから、殺された男の頭部が腐臭を上げます。
その腐臭が道しるべとなって、ステキな「森」に行けるという物語。
他方、『夜叉綺想』は、馬の死骸から取り出した内臓が出てきます。
馬のモツ料理が豪勢に振る舞われ、モツを貪り食うパーティーの
果てにロボトミー手術の罪業が問われる。そういう仕立てです。
・・・この2作品を行ったり来たりしているうち、
お互いのクセの強さが私を揺さぶり、混乱してきます。
稽古中に話が混ざるのです。『鐵假面』をやりながら
「ええと、モツが・・・」とか考えている自分に気付き、
ハッとしたりします。
ところで、すじ鉾。
私は神奈川の仕事でよく県西部にも行きます。
昨日は湯河原町。そのついでに、最近に小田原の友だちから教わった
「すじ鉾」というのを買いました。
小田原の名物といえば「かま鉾」ですが、
「すじ鉾」は「かま鉾」にならない魚の骨や皮や・・、
要するに魚のホルモンを砕いて練ってつくったものなのです。
舌触りはかま鉾のように滑らかではありませんが、
独特の歯応えがあり、味にも力強さがあって、栄養価は高く、
値段が安い。教わって食べ、私はこれが好きになりました。
稽古の合い間には「最近『すじ鉾」というのを紹介された。
これがなかなかオツで・・・」というような話をしますから、
みんなにも買って帰りました。
『鐵假面』や『夜叉綺想』はまさに「すじ鉾」の魅力です。
地元ではこれしか食べない!というファンもいるそうです。
この呪縛力。わかるなあ。
2023年8月18日 Posted in
中野note
↑『青島広志&萩尾望都の少女マンガ音楽史!』のチラシ
神奈川県民ホールで働き始めて8ヶ月が過ぎようとしていますが、
今日は、来月に控えているこの公演について紹介します。
自分は担当なので当然、数ヶ月前からこの両巨匠とのやり取りを
行っていますが、いまだに不思議な感じがします。
青島先生はずっとテレビでお見かけし、
雑誌の連載なども読んできましたが、直に接しているとあのままの
口調、早口で少女マンガやワンちゃんへの愛情を滔々と披露し、
こちらを楽しませて尽きるところがありません。
また、こちらを気配りながらお茶やお菓子を勧めてくださる手つき
など、まさに積年の、堂に入ったる妙技といえます。
萩尾先生とはいまだ面識なく、
出版社の方を介してのみやり取りをしていますが、
9/23にはいよいよご本人がやってくるのだ!という、
まるで大きな山がこちらに向かってゆっくりと近づいてくるような
迫力を覚えます。
やはり、どうしてこのお二人とご縁を得たのか、
我ながら不思議な感じがしますが、夜遅くに青島先生のご自宅を
お訪ねして打ち合わせをしながら、ひょんなことから唐十郎門下で
あることを打ち明けると、青島先生がかつて、若い時分に
黒テントの音楽を担当しかけたことがあると教えてくれました。
そこでこちらは、最近の佐藤信さんに接している話などをして・・・
そんな具合に、他流試合に臨む日々です。
膨大にあるお二人の作品のすべてを網羅することはさすがに
できませんが、せっかくにお迎えするのだからちょっとずつ齧りながら
日々を過ごしています。
詳細ページ→
https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/aoshima2023
2023年8月17日 Posted in
中野note
↑これがロンドンでの高級朝食。これだけで2,500円くらいしてしまうが
さすがに美味かった!
近ごろはベーコンエッグばかり食べています。
自分があまりにいそいそと食べているので、
それを眺めていた息子のさねよしまでもが、
ベーコンエッグ、ベーコンエッグと連呼するようになりました。
ベーコンエッグの作り方は簡単です。
極弱火で時間をかけてベーコンに加熱し、水分と油分を出す。
その上に卵を落とし入れて蓋をし、さらにじくじくと火を入れます。
自分の場合はベーコンの塩分のみで食べるので、
塩も胡椒も振りません。
大事なのは白身に火を通し切る一方で黄身を液状に仕上げることで、
温かくとろりとした黄身はそのままベーコンにまぶして食べる
ソースになります。
毎日のように食べることができる、侮れないご馳走です。
ベーコンは家から2キロほどのところにある肉屋で切ってもらい、
卵は八百屋にある秋田県産の濃厚なやつです。
朝の散歩のついでにこれらを買えたら、数日楽しめます。
自分の中のベーコンエッグがこんなにも眩しくなったのは、
イギリス生活のおかげです。
どこで食べても美味しくないか、美味しいけれどひどく高価か、
そのどちらかだったイギリスにあって、ひときわ輝いていたメニューが
このベーコンエッグでした。
特にカティーサークという最寄り駅すぐそばにあった
Bill'sというカフェのイングリッシュ・ブレックファーストで
供されるベーコンエッグは格別でした。
そうだ!あの時のように紅茶も入れてみよう。
今、これを書きながらそう思い立ちました。
今日はちょっと郷愁です。
↓こんな本も読んでしまう!
2023年8月16日 Posted in
中野note
"この国の空は私たちをきらっているのね・・・"
二人がキューバに侵入してひとこと目のせりふがこれ。
こういうところはやはり素晴らしい
やっと手に入れたマンガ『性病部隊』。
ひと言でいうと期待外れでした。
小池一夫先生(当時は"一雄"だったよう)らしく、極めて言葉が強い。
"私たちは諜報員(エージェント)でも兵士(ソルジャー)でもない・・
意志をもたない人間爆弾・・・"
"人類が開発した兵器の中でも一ばん汚ならしい性病爆弾なんだわ・・"
といった具合。
いつもの小池節に、やっぱりいいなあなどと惚れ惚れしますが、
しかし、この物語はどうかと思いました。
なにしろ、件の男女。
性病部隊に課せられた使命はものの数ページでたちどころに成功、
あっという間にキューバ全土の6割が彼らの持ち込んだ新型梅毒に
感染します。アメリカの作戦はただちにハマってしまう。
その上で、物語の主眼はその後の性病部隊に転じます。
彼らはすでに用済みとなり、
むしろ証拠隠滅を図るアメリカによって消されにかかる。
だいたいが、この二人に知らされていた自身への理解、
すなわち抗体ゆえに特殊梅毒を持っていても自分たちは大丈夫、
という情報自体が真っ赤な嘘だったと知らされ、
長くとも一年の命であることを知らされる。
他方、自分たちが貶めたキューバからは、
抗体保持者として、言わば生きた特効薬と目され、
これまた命を狙われるハメになる。
前門の虎、後門の狼の様相でアメリカとキューバに挟まれ、
しかも1年間の期限付きという条件下で、この男女はせめて
精一杯を生ききり、まるでアダムとイヴ、イザナギとイザナミの
ように孤高のひと組としてお互いを求め合う、という状況が
描かれるのです。
で、自分はこれらをひどくつまらないと思いました。
なぜかと言えば、それは単に、追い詰められた男女の心理に
過ぎないからです。それ自体は、一緒に殺人を犯したとか、
無人島で生きることになったとか、要するに一対が孤高である
心情と結局は同じになってしまうわけで、なにも『性病部隊』
という特殊設定を持ち出さずともできることなのです。
さらに言えば、特攻を命ぜられたあらゆる人間兵器には、
押し並べてこの心情や物語が当て嵌まってしまうのです。
自分はそれよりも、この性病部隊がいかに奇想天外な、
あるいは逆に、いかにも俗っぽい色仕掛けでキューバ人たちを
虜にし、業病を蔓延させるか。
そういうプロセスを描いて欲しかったと願わずにいられません。
発想の突飛さはさすが小池先生ですが、
先生はあろうことか、けっこう凡庸な正義感に駆られてしまった
のではないか。そのように思い、落胆とともに長年求めたはずの
一冊が、今は目の前にあります。
ここにお宝は無かったわけですが、
好奇心が満たされ、スッキリした思いはあります。
が、タイトルに妄想を膨らませていただけの方が良かったかも。
そういう思いで、ここ数日います。嗚呼、トゥループパリダよ!
2023年8月15日 Posted in
中野note
↑やっと手に入れた『性病部隊』。この怪しげな書影を見よ!
今日はマンガの話です。
大学生になった頃、小池一夫にハマりました。
小池先生の代表作である『子連れ狼』『首斬り朝』を
大学1年の時に読んだのがきっかけでした。
これら二つの何度も読むと、他の小池作品にも自然と手が伸びました。
『御用牙』『クライング フリーマン』『餓男 アイウエオボーイ』など。
『子連れ狼』の続編が出ると、勇んで買い求めました。
小池一夫先生ご自身には一度だけお目にかかったことがあります。
『御用牙』が紀伊國屋サザンシアターで舞台化された初日のこと。
かねて知り合いだったプロデューサーさんからこの企画について
聞かされた私は大興奮し、主席で当日パンフレットへの寄稿を懇願して
書かせてもらったのです。
結果、同じく小池一夫ファンである劇団員の齋藤と初日を観に伺い、
ホワイトのマオカラーにギラギラの貴金属、全身からオーラを
ほとばしらせた小池先生にお目にかかりました。
少しだけ言葉を交わすこともでき、齋藤と二人で興奮したものです。
まさしく僥倖でした。
そんな小池作品のなかでずっと気になってきた作品があります。
それが、タイトルに書いた『性病部隊』。
こう漢字で書いて『トゥループパリダ』と読ませます。
物語は奇想天外。
キューバ危機に対抗するため、アメリカが最強の兵器を開発します。
それは、選りすぐりの男女ひとりずつに、最高の容姿・声・フェロモンを
備えさせ、さらに新型の梅毒を搭載してキューバに送り込む、
というものです。
彼らがキューバに侵入して後、あっという間に国民の6割が
新型梅毒に感染し、フィデル・カストロ率いる国民たちは大混乱に陥る。
というストーリーです。
・・・どうです? 気になるでしょう?
物語を聞きつけて以来、これまで10年以上も気になっていた作品です。
ですが、なぜか古本屋サイトでは見かけませんでした。
それがようやく、ヤフオクで手頃な値段で見つかったのです。
・・・実際の読後感は、また明日!
2023年8月11日 Posted in
中野note
↑稽古中の景色
今日も丸山雄也くんがハンディラボにやってきました。
いつもの津内口・林麻子・ちろに彼を加えて、
前回はうまくいかなかった『オイディプス王』を稽古しました。
敬愛する高橋睦郎修辞を傍に置き、新しい山形治江訳でもう一度
読んでみたのです。結果、成功しました。皆、体が反応しやすく
ビビットに喋っていくことができた。
前回を経て、もともと野外劇用に書かれた距離感とか様式感、
そういうものに慣れたというのを差し引いても、
現在の私たちには大変に優れた翻訳だということがわかり。
サクサク読みながら皆で語り合いました。
途中、こんなものもあるよ、とパゾリーニの映画を紹介しました。
今回の夏稽古では、こういう時間にゆとりを持っています。
いつもの稽古だと喋って終わりの事例とか、いっぱいありますが、
今回はyoutubeを開いたり、画像を検索したり、そうやって
味わう時間があるのが贅沢なことです。
マリア・カラス主演『メディア』とか『アポロンの地獄』の
さわりを観ることで、自分がずいぶん前にこれらの映画を観た時より
凄みがわかるようになっていることにも気がつきました。
こういうのも嬉しい時間です。
以下、ちょっとしたメモです。
・劇の序盤、テイレシアスはほとんどの真相を喋ってしまっている
・面白い役は、コリントスからの使者と羊飼い。狂言の役どころみたいな
たのしさ。コメディにもなり得るから、そういう上演があっても良い
・自分の思うクライマックスをつくることができそうだった。悲劇に
見舞われるところでなく、意志を貫くところであって欲しい。
総じて、自分の人間観だと思います。40歳を過ぎて、
くだらないこと、意志を持つこと、このふたつが自分には輝いています。
オイディプス!
↓この本を読みました
2023年8月10日 Posted in
中野note
↑終了後に記念撮影。左から戸松貴博さん、清水宏さん、私です
今日は初めて荏原中延に行きました。
この街の商店街にあるブックカフェ「隣町珈琲」は
スタンダップコメディアンの清水宏さんのホームグラウンドの
ひとつであり、ここで清水さんがずっと行っている
「スタンダップコメディ大学」のアフタートークに呼んで頂いたのです。
テーマは「三谷幸喜VS唐十郎」。
唐十郎ファミリーの一員として清水さんがステージに
呼び込んでくださり、ふたりで語り合ってきました。
唐さんとの出会いがどんなだったか。
世間では乱暴だったり、謎めいていたりする唐さんのなかに
どんな繊細さがあって、謎で片付けずに読み解いていけば
どんな条理を発見することができるのか、
自分が接してきた唐さんのパーソナリティを紹介しながら
お話ししました。
そして、さまざまな角度から唐さんを読み解いていくなかで、
その作業をしてなお残る謎の中に面白さの真骨頂があることを
伝えました。
一方、清水さんが1984年に上演された状況劇場の
『あるタップダンサーの物語』を観て、そのなかで活躍した
四谷シモンさんに痺れた話を初めて聴きました。
2017年に出会って以来、清水さんとはハードな仕事をして
ずいぶん濃密に付き合ってきたつもりでしたが、
唐十郎という存在については初めて語り合うことができました。
ありがたい機会でした。
隣町珈琲はとても気持ちの良い知的な空間で、
清水さんの一連のシリーズにももっと立ち会いたいと思いました。
2023年8月 8日 Posted in
中野note
↑上の方に4輪
下の方に2輪↓
昨晩の『夜叉綺想』本読み第6回は素晴らしい読み応えでした。
2幕が特に優れたこの台本のなかで、これぞ!という箇所に
差し掛かったのです。私の予定のせいで月曜に振り替えたので、
参加できなかった人には申し訳なくなるくらいでした。
その後も興奮して深夜まで過ごすことに。
で、今朝早く起きて、さあレポート書くぞ!
と意気込んだのですが、『夜叉綺想』の後味を上回るライブの興奮が
押し寄せたので、今日もレポートは明日に回します。
何しろ、現在の自分は横浜の家でひとり暮らし。
名古屋の実家に送り込んだ家族、特に息子の宿題である
朝顔への水やりと咲いた花の数を数える作業を肩代わりする日々です。
毎日。今朝は、ハイ1輪ね。今日も、1輪・・・
そういう感じでここ5日間来ましたが、なんと!
今日は一気に6輪も咲きました。こうなるともう興奮して、
これは息子さねよしの朝顔でなく、オレのものだと言いたい!
朝からボルテージがマックス、スーパーハイテンションに。
そういうわけで、「狂い咲き」といえば、唐十郎門下として
今日は『少女仮面』に出てくるこのせりふを反芻しましょう。
春日野
あたし、今、廊下に血をこぼしちゃったの......
まるで季節はずれのひな祭りね、ここ五年、もうなくなってたのに、
あの水のみ男にシャツをひっちゃぶかれたら、
狂い咲きのように始まったのよ。
ああ、そこいらの男の子と死ぬの生きるのってジタバタしたいなあ。
2023年8月 7日 Posted in
中野note
↑これを小一時間でやってしまいました
今日は先ほどまで本読みワークショップをしました。
『夜叉綺想』第6回です。いつもは日曜の夜が恒例なのですが、
昨日は県民ホールの公演に立ち会ったので、今週だけは月曜日に
したのです。そんな中でも参加して頂き、皆さんには感謝!
が、レポートは明日に回して、今日は表題のことを書きます。
オレの夏休み。
目下、家族(椎野、息子、娘)は私の実家の名古屋にいます。
従って、私は一人暮らし。昨日は20:30に帰宅しました。
これは私にしては珍しく早く、かといってWS開始時間の
19:30には間に合わなかったために、家に一人で呆然としました。
が、その後に、猛然とよろこびが湧き上がってきたのです。
それから、好きなものを簡単に料理し、食べました。
YouTubeで『Three Kingdom 三国志』を観ながら。
それから、最近に人に勧められた、ホテルニューグランドの初代料理長
サリー・ワイルの本を読みました。しかも、買っておいたアイスクリーム
パルムの箱を一本ずつやりながら。
気づけば、6本一気にいってしまいました。
しかも、さらに気づけば、風呂にも入らず歯も磨かずに寝落ちして
冷房と電気を付けっぱなしで朝4:00になっていました。
人によっては疲労が溜まりそうと言われるかも知れませんが、
それが、最近稀に見るほど爽快な目覚めでした。
おかげで今日は仕事がはかどる。
ああ、たまにはこういうことをしなければならないのだと思いました。
まことにくだらない過ごし方ですが、これがたまらなく良いのです。
思えば、去年のロンドン暮らしはしんどかった。
ダイアンは面白い人ですが、やれ風呂には早く入れ、
入浴後の水滴は拭き取れ、ドアノブは静かに閉めろ、
電気を付けっぱなしで寝るなど人手なしの所業!
という具合でした。
今日のこの快調さを実感する時、人間たまにはこういうことを
してみるもんだと思いました。家族はあと3日後に帰ってきます。
もう一回くらいだらしなく過ごそうと思います。
2023年8月 5日 Posted in
中野note
夏稽古3日目が終了し、呆然としています。
というのも、今週の水曜、そして今日と試しに唐十郎作品ではなく、
『オイディプス王』をやってみたのですが、これがどうにも不発だった。
理由をいくつか考えてみたのですが、
・最近の過密スケジュールゆえに自分がこの劇に耐える力が無いのか?
・みんなも、もっと繰り返し読んで慣れてくれば面白くなるのか?
・憧れの高橋睦郎修辞バージョンの時代がかった物言いが難しい
これが美しさなのか、単に大時代的なだけなのか、どうしたらいい?
・この劇はそもそも、クライマックスが分散しすぎている
①己の正体を知るところ。②目をつぶして再登場するところ。
③ほうほうの体で尚、自分を国外追放を申し出て王者の責任を果たそう
とするところ。
→ソフォクレスの執筆経緯から考えて自分は③を取りたいけれど、
それが狙うようにはいかなかった
という具合でした。
どうしようかな。この試みには劇団「平泳ぎ本店」の丸山雄也くんが
参加してくれたので、次回に彼が参加する日に、違う翻訳で
『オイディプス』をやろうか、悩んでいます。
また、麻子の弾き語りの練習は上手くいき、手応えを感じています。
乗るとぐっと歌が上手くなるし、何より見た目におもしろい。
そういう能力をどう劇に使おうか考えています。
最後に、これは劇団とは関係ないことですが。
今、うちの家族(椎野、息子のさねよし、娘のりんこ)は
実家に帰っています。私の実家の名古屋にいる。
そこで、さねよしの夏休みの宿題のひとつである朝顔への
水やりと、咲いた花の数を数えるのを私が肩代わりしています。
思い起こせば去年。
大家さんであったダイアンは滞在途中から徐々に植物への水やりを
私の仕事としてスライドさせていきました。巨大なジョウロに2杯。
暑い盛りともなれば倍の4杯。庭中にかけて回っていたのを
思い出しました。さねよしは「お父さんは水やりできるのか?」
などとナメたことを言っていましたが、イギリス仕込みの水やりで
毎日、写メ送っています。
昨今の小学生が育てる朝顔の鉢は、私らの頃よりだいぶ進化したことに
気付かされもしました。が、風情はイマイチです。
これはただの懐かしさへの感傷なのか。どうなのか。
オイディプスのことがあるので、
朝顔の鉢までもが、新しさと古さの長短や"美"についての問いを、
自分に迫ってきます。
2023年8月 3日 Posted in
中野note
↑一緒に大和のベトナム料理屋「タンハー」に行った時の写真です
左から津内口、タンハーのママ、珠麗さん、私です
演出家・劇作家・翻訳家の薛珠麗さんが亡くなりました。
7/30のことです。それから二日後の8/1に津内口がSNSでの発表に気づき、
今日がお通夜だということで、先ほど二人でお別れに行きました。
珠麗さんと知り合ったのは、ここ4年ほどのことです。
津内口が珠麗さんのワークショップに参加したのをきっかけに
紹介してもらいました。
私は高校3年の終わりから5年ほど、
ずっとベニサンピットでのTPT公演を追いかけていたので、
過去に観た公演の中で気に入った劇のパンフレットを引っ張り出し、
珠麗さんに見せたりもしました。
私が特に痺れたのは1999年12月から2000年1月にかけて上演された
ディヴィット・ルヴォー演出の『令嬢ジュリー』で、あれには5回
通いました。TPTの創作の秘密を話してもらう貴重な存在でした。
また、珠麗さんと会うようになったのは、
ちょうどラウンドシアターに来日していた『WEST SIDE STORY』
を観に行った後であり、日本側の演出としていた珠麗さんに、
あの劇場や座組を取り仕切る苦労について聞いたりもしました。
そうして珠麗さんと知り合うようになってから、
実は、神奈川ならではの劇を作れないかという話もして、
珠麗さんの出自を活かした、珠麗さんにしかできない劇を
一緒に構想してもらっていた矢先の発病でした。
それからは、容態が良くなるたびに会って話をしてきました。
最後に会ったのは自分がロンドンから戻った後で
「書きたい気持ちと、書くと自分の全てが燃え尽きてしまう気がする」
と言っていたのが、今も自分に突き刺さっています。
無念の死であったと思います。
もっともっとやりたいことが溢れて仕方ない様子が自分に
焼きついています。最後に珠麗さんのお顔を拝見して失礼しました。
明日もハンディラボに集まって稽古です。
2023年8月 2日 Posted in
中野note
もう約1か月後に迫っている!
『オオカミだ!-「3びきのこぶた」に出てくるオレの話』を
ザ・スズナリで再演します!!
で、
ステージナタリーさんでケッチさんのコメントが紹介されました!
スタッフ入れて4〜5人で上演できる舞台なので、
今後は旅にも出かけたい。そのための幸先の良い再演です。
前回の本多劇場と同じように、ザ・スズナリの舞台でも
多くの唐十郎作品が上演されてきました。
そういう意味でも燃えています。
と、燃えながら夏稽古に向かう日々。
本日は2日目。林麻子がピアノ弾き語りするところから実験を
開始しました。毎週土曜日に劇中歌ワークショップをやっている
ことからもわかるように、彼女はピアノが弾けます。
この特技をいつか舞台で使いたいので、その実験です。
これはかなり面白かったのですが、写真を撮り忘れました。
次回8/4(金)の稽古でもさらに追究するつもりなので、
今度は忘れずに撮影します。
森進一、森昌子、ASKA、桜井和寿、尾崎豊、泰葉、
槇原敬之、サンボマスター、萩原健一などの歌唱を皆で見ながら、
実験を繰り返しました。
こういうことは普段やったことが無かったのでおもしろく、
今後に生きるのかどうかよくわからないところが、
いかにも今回の夏稽古の趣旨に合っています。
今回の稽古は利便性ではない。
どこへ行くのかわからないけれど根本的。
そういう稽古なのです。
それから、春先に研究した高橋睦郎修辞の『オイディプス王』を
読みました。難しいことばを理解しながら朗唱する練習です。
序盤の3分の1を読んで、オイディプスの前に2番手として現れる
テイレシアスがその後の展開をすべてしゃべってしまったことに
愕然としました。ほんとうに、ぜんぶ喋っちゃってる。
でも、初演時の観客には問題無かったでしょう。
全員が知るエピソードだったに違いないのですから、
ストーリーを知った上でどう振る舞い、転落するかが面白いのです。
これも写真を撮ってない。明後日に撮ります。
あと、休憩時間にはお菓子を食べます。これは完全にケッチさんの
影響です。ケッチさんとの稽古では合間に煎餅を食べながら、
お喋りが2時間に及んだこともありました。
その果てにそろそろやろうか、となる。
相撲の立ち合いのように息が合うと稽古。そんな具合でした。
唐ゼミ☆はもっと実直にやっています。
2023年8月 1日 Posted in
中野note
↑今日の写真はヘタすぎた。ほんとうはもっと躍動感アリ!
今日からハンディラボに集まって話し合いや稽古をすることにしました。
ここから1ヶ月で20日。100時間やろうという企画です。
本番は以前に書いた通り2024年3月目標に切り替えましたが、
せっかくとってあったスケジュールを維持し、劇団員や座友で
過ごします。
今日は、津内口・林麻子・ちろに丸山雄也君も加わり、
みんなでギリシャの古代劇場の話をしたり、唐さんの『恋と蒲団』の
稽古をして、青春の下ネタが満載のこの台本を愉しみました。
過去に2度上演したこの劇のやり方にはある程度の自信を
持っていますが、今となっては詰めが甘かったと感じる箇所があり、
今回の稽古を通じて改善策も模索しました。
短時間でも、せりふの掛け合いだけでなく
立ち回りのアクション、唐さんにしか書けない独特の濡れ場もあり、
満載の演目です。いずれパッと上演できるようにしたい芝居。
明日は高橋睦郎さんの『オイディプス王』や
林麻子の弾き語りを追究してみたいと考えています。
ハンディラボは相変わらず居心地が良くて、
少人数で稽古をして、みんなを車で各駅まで送りながら帰るのも
創作の時間です。久々に劇団の良さを満喫しています!
2023年7月28日 Posted in
中野note

↑これがチラシ!隣町珈琲という、清水さんがずっと発表の場に
してきた会場に自分も乗り込みます
今日は夕方に小田原に行きました。
たまたま今日は、パンデミック以来ストップしていた
真鶴町の貴船祭が復活する日であり、その影響が渋滞に及ぶのに
ビビった自分は、珍しく電車で行くことにしました。
ですから、帰りの電車の中でこれを書いています。
真鶴町で思い出すのは、5年前にスタンダップコメディアンの
清水宏さんとつくった「真鶴ばなし」です。
激烈で真剣な清水さんの人間性と作品創作に伴走して
我ながら熱い夏でしたが、それだけに手応えがあり、
神奈川県域でイベントを仕掛ける事業を始めたばかりの自分にとって
その後の指針となった企画でした。
町の人に生々しく食い込むことは大変だけれども、実り多い!
以来、清水さんとの共同作業はいくつもあって、
その度に大冒険をしましたが、常によく話し、よく語り合う
ヒリヒリする創作であり続けました。
そんな清水さんが、ご自身の主催するスタンダップコメディの会に
自分をゲストとして呼んでくれます。
題材が「三谷幸喜vs唐十郎」ということで、
8/10(木)19:00から荏原中延の隣町珈琲で繰り広げられる
清水さんの話芸の後に、自分も加わってアフタートークします。
詳しくはこちら
三谷さんと唐さんを並べて語られるのを聞くこと自体
初めてなので、清水さんが繰り広げる世界をよく聴き、
よく受け取って、インプロで切り返せたらいいなと思います。
果たして清水さんの切り口は?
それに自分は上手く切り返せるだろうか?
出たとこ勝負でいきます!
2023年7月27日 Posted in
中野note
↑8/1(土)の湖上祭(花火大会)に備え、町は臨戦体制でした
今日は打ち合わせで、朝から相模湖へ。
湖畔に行くと、天気も良く絶景。
しかし、よく聞けばこの湖、法律上は河川なんだそうで、
運用が厳しいらしい。
自分が赴くということは、何かイベントやろう、
というのが基本なのですが、こちらを駆り立てる素晴らしい景観と、
河川は厳しいというネガディブな情報を同時に得て帰ってきました。
圏央道が便利で、横浜から1時間ちょっと。
おかげで、今日は早朝から夏休みっぽい雰囲気になり、
その後も方々に出歩きましたが、暑さも前向きに捉えられました。
そうそう。相模湖交流センターの喫茶店にも寄って、
名物のダムカレーを食べたり、よく見ると、
ダムを模したカレー部分に煮干しが浮いており、
これが見事に湖を泳ぐ魚を表現している。
この芸の細かさにニヤニヤしてしまいました。
おかげでのどかな一日となり、心も穏やかです。
投稿も短め!
↓ダムカレー。確かにカレーが堰き止められています。そそりたつスイカ!
2023年7月26日 Posted in
中野note
↑自分が芯を変えながら使ってきたフリクション・ボールペン。
色はスカブルー。唐さんのブルーブラックを意識しつつ、
明るい気持ちになるようにこの色。目立って読みやすいのも良い
オンラインでの会議や打ち合わせが広まった2020年以降、
時には車の中からzoomをするようになりました。
例えば、昨日。
相手の事務所に12:00に行かなければならないのに、
会議は10:30から始まる。会議を終えてから相手先に向かったら
間に合わないので、自然と先に目的地の近くに行っておいて、
車の中からzoomに入室します。
便利といえば便利なのですが、難点もある。車の中は暑いのです。
エンジンかけてエアコンをつけっぱなしにすることもできますが、
あまりにも不経済。そこで、車を停められる日陰を見つけて、
直射日光は避け、車のドアを開けっぱなしにして参加。
車の中でワーワーやっているのが周囲に聞こえない環境
というのはなかなかないのですが、街の一角にそういうところを
めざとく見つけました。
で、1時間半。
暑いは暑いが、なんとかウエットティッシュも駆使して会議を終えた。
で、パッとみると、フロントガラスの下のスペースに
積み重ねた書類に異変が起きている!
私が津内口と作りかけて、赤を入れた書類が
フリクションボールペンで書いたために熱で消滅している!
あのボールペン、こすれば消えるということは、
要は摩擦熱で消えるということで、
せっかく手直し部分を丁寧に指摘したのに見えなくなってしまった。
悲嘆に暮れて思い出そうとしましたが、細かく書いたぶん、
徒労感が押し寄せる。落ち込んでエンジンをかけると、
おお! 今度はエアコンの風が当たってみるみる色が、文字が
復活しました。冷たくすると、また文字が浮かび上がるらしいのです。
助かりました。
が、よくよく考えたら、フリクションボールは気をつけなければならない。
消えた文字が浮かび上がる危険性があるということは、
書きつけた内容によって、これはこれで油断ができないということです。
2023年7月21日 Posted in
中野note

↑三曹の詩だけでなく『出師の表』も収録されたお得本です
先日、Amazon UK プライムを騙る者によって不正な引き落としを
発見しました。対策として、直ちにクレジットカードを凍結し、
新たな番号によるカードをつくることにしました。
それで、銀行に行きました。事情を説明して再発行の手続き。
その合い間に、本屋にも行きました。
銀行が横浜駅西口にあったので、地下街の有隣堂に。
今日の収穫は『曹操・曹丕・曹植の詩文選』です。
カエサルの『ガリア戦記』。
マルクス・アウレリウスの『自省録』。
二つの好きな本に並んで今回の詩集に共通するのは、
著者たちがいずれも激しく現世的な現場でそれらを書いたことです。
だから自分はこれらに痺れます。
私は毎日、朝に目を通した文章やせりふを
昼間に街中や劇場をウロウロしながら読んでいます。
人や風景に接する中に、本を読む作業もあるように思います。
今日は打ち合わせをし、書類をつくり、いくつもの連絡をし、
みなとみらいホールで中田恵子さんのオルガンを聴き、
下北沢で清水宏さんの主催するカルト宗教をテーマにした
スタンダップコメディを観ました。
帰りの電車が混んでいたので、立って曹操の詩を詠みます。
小さな声でブツブツ。武蔵小杉を過ぎたら席に座れたので、
このゼミログを書きます。
書き終わる前に横浜駅に着いてしまったので、
ホームのベンチでこれを書ききります。
帰宅してしまうと食べ物に手が伸び、食べ終わると眠くなるからです。
自分にとって悪くない日常です。
曹操の詩を詠むと、それが良い日常にも思えてきます。
2023年7月20日 Posted in
中野note
9/7(木)-910(日)に『オオカミだ!』をやります。
会場はザ・スズナリで再演できることになりました。
https://yorunohate.net/the-big-bad-wolf/
プロデューサーの岡島哲也さん(テツヤ)は長く演劇界で
活躍してきた人です。9月に予定していた唐ゼミ☆公演が
流れたことで落ち込んでいた私を、新たな公演を組むことで
励ましてくれました。
ケッチさんもたまたま予定が空いていて、
それで実現することができた!
ちょっと予定が空いたから、短期集中でガッと公演する!
このスピード感は第一にテツヤさんの剛腕です。
加えて、そもそも『オオカミだ!』自体をキャスト・スタッフ含め
5人でできるよう軽くつくることを心がけたからです。
おもしろくて、料金が高くなくて、フットワーク軽く
いろいろなところに出かけられる公演にしたい。
それが企画スタートからの私たちの目標でした。
今回、ケッチさんの共演者として新たに加わってくれたのは
月岡ゆめさんで、彼女は私が2020年に桐朋学園芸術短期大学に
教えに行っていた時、クラスの中にいた一人でした。
その後、ダンサーとして活躍してきたそうです。
久々の再会に、どんな大人、パフォーマーになっているのだろうと
期待しています。
2023年7月19日 Posted in
中野note

↑これも「味の素」製品でした
最近、関内駅のそばに新たなラーメン屋を発見しました。
「水嶋」という店で、無化調を謳っています。
「無化学調味料」ということで、これは要するに化学調味料を
使っていないという宣伝文句です。
食べてみると、なるほど味がやさしい。
が、一方でメニューに目をやると「昭和のラーメン」という
ものがあって、これはどういうものかと店員さんに訊きました。
すると、「『昭和のラーメン』には化学調味料を入れます」
との回答。あまりにサッパリそれを言うので面白くなり、
後日、劇団員の津内口を誘い、自分は「昭和の〜』を頼んで
食べはじめに二つを飲み比べました。
化学調味料はなるほど、ズキリとパンチが出て後味が残ります。
要は、ずっと食べてきた中華料理のあと口。
これが化学調味料、つまり「味の素」だ!
と、ここまではっきり違いのわかるお店のシステムに
感心しました。
ところで、この「味の素」。
バブル期からグルメブームを牽引した漫画『美味しんぼ』では
徹底的に敵視されてきました。あれは、舌をビリビリさせて
ずっと日本人の味覚をバカにしてきた。と、そんな論調。
けれどもよくよく考えてみたら、
スポーツ選手やパフォーマーなんかが飲むサプリメント
「アミノバイタル」も会社「味の素」の製品なんですね。
調味料としての「味の素」と「アミノバイタル」。
両方ともアミノ酸を扱っていて、でも、そのイメージは
ずいぶん違う。自分も疲れて、アミノバイタルを
すがるように飲んだりします。
目下、取り組んでいる『鐵假面』には「味の素」社の
社員たちが大活躍します。
中には「『味の素』は泥でできている!」なんていう、
いかにも都市伝説的な、ちょっと酷すぎるせりふもあって、
本当の「味の素」社には申し訳ないですが、笑わせます。
でも、アミノバイタルの印象を思うと、ちょっとイメージが
違いますね。かたちを変えて、やはりアミノ酸を操る
「味の素」社にゾッコンなんだと思わずにはいられません。
ラーメンは次は無化調を食べるだろうけれど、
やっぱり、「味の素」には形を変えてお世話になっています。
2023年7月18日 Posted in
中野note
↑美しい葉書や便箋を期待したら、中からデカデカとチャールズ3世王!
ダイアンとは、去年の3〜12月までロンドンで下宿させてもらった
大家さんのことです。彼女は一人暮らしなのですが、
天文台ので有名なグリニッジの高台に居を構え、
そのうちの空き室を日本人に貸してきたと言います。
渡英したばかりの頃はホテル暮らしだった私は、
ネットでこの家を知り、下宿を申し出ました。
そして、これまで暮らしたことのないファンシーな生活が
始まったのです。彼女の家は外画に溢れており、
それは見事なコーディネートがなされていました。
自分の日本での生活はそういう美に囲まれた雰囲気に縁遠く、
「あ、これはオレの一生のうちでもっとも美しい生活環境だ」
と確信したものです。あと何年、人生が続くか分かりませんが、
このことだけは決定だと確信しています。
そして、去る7月3日はダイアンの誕生日でした。
だから6月下旬に私はバースデーカードを送りました。
小田原での仕事中に郵便局に行って投函。
その返事が、今日、返ってきました。
封筒を開けると、デカデカとチャールズ3世王の姿が!
美に囲まれた暮らしの中で、かなりユーモラスだったダイアンを
思い出しました。私たちは、国境を超えてお互いのギャグセンスを
競い合う会話を朝食時にしました。
話が盛り上がると、簡単に語学学校の遅刻を覚悟したものです。
それから、私たちはよくお互いにメッセージを送り合いました。
私は家賃を入れた封筒に時々にちなんだ御礼を書き、
彼女は、私が買い物に出ると、その代金を包んだ封筒に
メッセージやイラストを描いてくれました。
彼女の字は、あまりにクネクネしていて、一緒に暮らした時から
読みずらかった。だから私はよくこう彼女に伝えたものです。
Your characters are too beautiful to read!
今回も彼女の文字は変わらずに美しすぎ、
読み解くのに数日かかりそうです。
2023年7月14日 Posted in
中野note
↑お馴染みのアテナ像の前で!
『夜叉綺想』にヘラという神様が出てきます。
ギリシャ語風に表現するとへーラーという女神で、
あのゼウスの妻にして、多情なゼウスにヤキモチを焼き続けたこと
でも知られています。
ヘラ、と聞いて、ああ、あの女神ね、と思えるのは、
すべて幼い頃に観た『聖闘士星矢』のおかげです。
少年ジャンプで連載していたそれを、自分はアニメで観ていました。
漫画だとずいぶん先の話をしている、と驚きながら読んだのは
小学校低学年から観はじめたアニメが、ずっと後半になってからです。
その影響で、プラネタリウムも観に行くようになりました。
名古屋で唐さんがテントをたてていたのは若宮大通公園なのですが、
自分はそこからすぐ近くにある科学館に行き、
プラネタリウムを何度も観ました。
星そのものより、星同士を結んで星座をつくり、
その星座にまつわるエピソードを想像する。
そういう物語の力に魅せられたのです。
おかげで、
唐さんの台本にへラが出てきても対応できるようになりました。
ギリシャ悲劇も置いてけぼりせずに読めるようになった。
三島由紀夫さんが憧れたギリシャの青空も、
高橋睦郎さんのギリシャ愛も、自分は理解できます。
最近、息子のサネヨシは『聖闘士星矢』に興味を持ち、
自分の12星座である天秤座(ライブラ)を背負った青年が
漫画の中でどんな闘いを繰り広げるかを知りたがります。
夜な夜な話して聞かせるので、
自分が子どもの頃に魅了されて思いもまた、蘇ってきます。
2023年7月13日 Posted in
中野note
たいへん申し訳なく、無念なご連絡です。
先日に自分のFacebookにも書いたのですが、
年賀状を発送した時から9月に公演すると発表していた
『鐵假面』公演を、2024年3月に繰り延べて行うことにしました。
原因は、
目標においていた公演会場について上手くまとまらなかったことです。
それに、延期先の3月の方がバリッと役者が揃うということも
大きな理由です。
今回の公演は、唐ゼミ☆が持っている既存の青テントや
2014-2015年に行った野外公演の資材を活用し、
新たな野外公演を組めないかという実験も行おうと考えてきました。
3月だとまだ寒いであろうということも加味して
このプランも、新たに構想し直そうと計画しています。
前回、浅草で『唐版 風の又三郎』公演があってから
今度の10月で2年が経とうとしています。
去年に行ったロンドンでの研修により何がどう変わったか、
その成果も発揮する劇団公演にしようと思っています。
『鐵假面』公演に期待して待ってくださっている皆さんには
ほんとうに申し訳ありませんが、さらに半年間、時間をください。
当初の計画では、
9月下旬の公演に向けて8月が稽古最盛期の予定でした。
それもまた繰り延べになってしまったわけですが、
せっかくなので何人かのメンバーでこの期間を利用して
ハンディラボに集まり、夏の集中創作をしようと思い立ちました。
思えば、ここ5年ほどの稽古は、無駄がなさすぎたように感じます。
公演を控えて最短距離を進む準備でなく、一回、自分たちの
立ち場を、やり方を、時にはそれぞれが何を武器として生きて
表現しようとしているのかを見つめ直し、新たに公演のためのパワー
にできるかを模索しようと思っています。
これから始まる8月の稽古や試行錯誤の様子、
何より、2024年3月公演の日程と場所についてまとまり次第、
続報していきます。どうぞよろしくお願いします。
2023年7月11日 Posted in
中野note
↑ちょうど去年の今日はシェイクスピアの故郷
ストラトフォード・アポン・エイボンにいたようだ。
が、この頃にはすでに罠にかかっていたのだ!
本来ならば『夜叉綺想』本読み2回目の続きをレポートしたいところ
でしたが、昨日、思わず興奮させられる事があったので、
こちらを先に書きます。
6月はわが社の決算期です。
私と椎野でやっている小さな会社はセンターフィールドカンパニー
といい、これは「中野」の「中(センター)」と「野(フィールド)」
を合わせた名前です。
私たちの一年は6月に始まって5月に終わり、
クレジットカードの支払い記録が揃う7月が決算期。
そこで、二人で過去のレシートや支払い書を前に作業を始めました。
去年といえば、私がイギリスに居たので、
椎野にとってはちんぷんかんぷんの店の名前が支払い記録に並んで
います。そこで私が、自分が何を買ったのかを思い出しながら
Excelシートに記入する作業にかかりました。
これは面白い体験でした。
買い物の記録を通じて、自分が去年のいつ、どこで、何を食べ、
何を見聞きしたのか、思いを馳せることになりました。
歯医者に行くことができない、だから奮発して高級歯磨き粉を買った。
大家さんのダイアンのお遣いでトイレットペーパーを大量買いした。
日本にいるのと同じようにCDばかり買っていた。
定期的に一風堂で豚骨ラーメンを食べるが、
それにしても、日本に比べ値段が高すぎる!
といった具合です。
地道な作業ですが、それなりに愉しみました。
その中でオヤ!という支払いを発見したのです。
よく利用していた英国Amazonのプライムの払いが、
帰国後も続いていました。それは月額1,300〜1,500円ほどで、
日本に帰ってきた2023年1月以降も、今に至るまで続いています。
なんとか英国Amazonに掛け合って、とにかく未来の払いを
ストップしなければなりません。
できれば、一切利用していない日本に帰ってきてからの支払い分を
返してもらいたい。そう思いました。
それにしても、自分は自覚症状無しに向こうのプライムにも入っていた。
まあ、便利だったからいいや。そういう感慨でした。
こういう時、頼りになるのは英国でご近所だった日本人女子です。
彼女は長年にわたりロンドンで働いており、その経験豊富さ、
秀でた語学力でいつも自分を助けてくれました。
そこで、早速に彼女とzoomをつなぎ、
一緒にAmazon UKのカスタマーセンターに電話したのです。
いくつかの照会の後、
私はプライムに入っていなかった事がわかりました。
私の自覚症状の無さは決して間違いでは無かったのです。。
よくよく調べてみれば、私は2022.5以来、月々1,300〜1,500円ずつ、
謂れのない金額を支払わされてきたことが判りました。
とりあえず明日、クレジットカード会社に電話して
これ以上の被害を食い止めなければなりません。
前にケータイ電話料金を帰国後も引き落とされ、
返金を要求して勝ち取ったと書きましたが、
英国生活における罠はまだまだ終わっていなかったのです。
手強いぜ、イギリス!
2023年7月 7日 Posted in
中野note
↑研修の終わりに仕上げの会議を行った時のギャビン
今日の朝は久々にカプカプひかりヶ丘に行きました。
私の会社、センターフィールドカンパニーが行う
体奏家の新井英夫さん率いる一座とカプカプメンバーを講師にした、
福祉分野で活躍したいアーティスト向けWSの受講生募集が
佳境なのです。月末にはメンバーを決定して来月から始まる
WSについて、アイスコーヒーを飲みながらゆったり話しました。
励滋さんに会うのも久しぶりなので、近況報告もして。
それから、県庁に寄りつつ県民ホールに行って地道な仕事をして、
夕方から都内に出かけました。
紀尾井ホールで川口成彦くんとバロックの弦楽アンサンブルによる
演奏会があったのです。楽曲のメジャーさよりも川口くんの
やりたいことを盛り盛りにしたプログラムのために集客に苦労した
そうですが、集まった聴衆はいずれも猛者揃い。
1800年頃に造られたフォルテピアノをしげしげと眺めて写真を
撮ったり、暗めの超弱音でスペインのまどろみを表現する川口くんに、
全員に息をひそめて喰らいついていく意気と一体感がありました。
とりわけ、5人編成のピリオド弦楽器チーム
La Musica Collanaとのコンビネーションは最高でした。
お互いの演奏と呼吸を洞察し合い、この先に来るべき音楽を
予感し合う見事な対話とセンスは、一聴して長年の友情による感じが
しましたが、果たせるかな、終演後に聴いたところでは
大学時代からのお付き合いということで、川口くんも
良いご学友に恵まれたものだと感心しました。
そして、現在。
24:00過ぎに帰ってきたうちの駐車場の車の中でこれを書いています。
なぜかといえば、今日は2022年に私の所属先だったロンドンの劇場
The AlbnayのCEO・芸術監督、Mr.ギャビン・バロウの就任20周年の
お祝いだからです。
この後にパーティーが始まると、私のお世話係だったミミが
教えてくれたので、ビデオ電話でコングラッチュレイションズを
伝えるべく、待機しています。
家の中では、ご近所さんの手前、私がうるさくしすぎるので
こうして車中にいますが、なんだか蚊がいるっぽい。
痒さに耐えながら、日付を跨ぎつつ出番を待っています。

2023年7月 6日 Posted in
中野note
↑昔は新横浜のラーメン博物館や伊勢佐木モールに出店していたこともある
京都公演をしていた時には四条河原町のお店によく行きました
今日は早起きをして京都に行きました。日帰り出張です。
主目的は、今年度から京都に移転した文化庁を訪ねることでしたが、
おかげで、いろいろな用事をすることができました。
まず、新幹線の中で溜まっていたデスクワークを放出しました。
もうすぐ締め切りになる助成金の資料作りとか、
夏にやろうと思っている集中的な唐ゼミ☆稽古についての準備や連絡、
ずっと取り組んでいるドリームエナジープロジェクトの
ワークショップ内容について考える。県民ホールの仕事で、
ここが滞っている、あそこがまだ着手していない。
そういうことを見つめ直して整理し、やっつける2時間でした。
まあ、かなり地道です。
その後、立派な建物になりセキュリティも厳しい文化庁に着いて
打合せをし、その後は、唐ゼミ☆の齋藤もスタッフで加わっている
劇団地点の経営するカフェ&デリカ「タッパウェイ」に行ったり、
室井先生の家に行って、絵里さんとお話ししたりできました。
この前の追悼の会はタイムコントロール的にグダグダになってしまい、
慌てて片付けたために京都行きに荷物に紛れ込んでしまった私の本、
『教室を路地に』と『巨大バッタの軌跡』も回収できました。
室井先生の追悼の会の京都編は明後日7/8(土)に行われますが、
自分はそれには参加せず、同日にパシフィコ横浜で行われる
椿昇さんの講演会に行く予定です。
そうそう。
室井先生が横浜国立大学に長く勤務したことで叙勲したので、
そのために送られてきた勲章なども見せてもらいました。
生で見たのは初めての経験で、これもなかなか興味深いものでした。
帰りの新幹線の中でも油断せずにせっせと働いて、
夜10時には帰ってきました。暑かったのでさすがにくたびれましたが
だいぶいろいろいろな用事を済ませることができた。
うちへのお土産は新福菜館のラーメンセット。
子どもたちは醤油ラーメン大好きで、普段の食事の時は一口食べる度に
走り回りますが、醤油ラーメンだけは集中して食べます。
そこで、名店と誉れ高いお店のラーメンがお土産です。
少し寄り道もありましたが、いかにもスタンダード日帰り出張という
1日でした。こんな風にサラリーマンっぽい体験も、
たまにできると新鮮です。
2023年6月30日 Posted in
中野note
↑写真だけ見てもとりわけ怪しい『夜叉綺想』のワンシーン。
2014年初夏の唐ゼミ☆公演。撮影は伏見行介さん。
気づけば6月が終わってしまいますが、最終の1週間は特にハードでした。
室井先生の会が終わるとすぐに、翌日は相模湖交流センターに行き、
若手ピアニストコンサートを聴きながら、さらにその場で
さっきまで演奏されていた音楽のハイレゾ録音を聴きながら
語り合う、という珍しいイベントに立ち会いました。
週明けには県民ホールの仕事で小田原と横浜で撮影を行い、
街中で行う屋外撮影だったので、いつも天候との闘いで、
雨が降るのを心配したり、晴れだとしてもやたらと酷暑だったり。
ままならないものでしたが、各所を歩き回ってロケを終えました。
それから、同時並行的にフランス人のオルガニストをお迎えして
リハーサルを重ね、今日6/30が本番でした。
その間にも、唐ゼミ☆WSでは『二都物語』が終演し、
これは今までに行った未上演の台本の中で、特に発見に満ちた
体験でした。参加者の皆さんのおかげで、将来に『二都物語』を
上演するとしたら、どういう姿が理想的かはっきり見えました。
そして、主人公のリーランの特殊性も。
蒸し暑さに絡みつかれるような6月末をなんとか終えて、
明後日から始まる『夜叉綺想』本読みの準備を進めています。
この作品は名作系であるよりもトンデモ系で、
それだけにコアな魅力に溢れており、実際に上演した2013年初夏の
思い出もたくさんあり、記憶と思い入れの濃い作品です。
タイトルに「綺想」とあるだけあって、それこそ奇想天外な
魅力に溢れています。冒頭から始まったら、まずは青年主人公による
3ページの長せりふ!
これを少しずつ割って読んでもらうか、
ひとりの参加者に通読してもらうか、そんなことを思案するのも楽しい。
都こんぶ、という昔なつかしいお菓子がキーアイテムになるので、
明日に買いに行ってみようと思います。
ともかくも『夜叉綺想』!
ちょっと怖くて、唐さんの仕掛けた突飛な設定の数々が
脳内に絡みつく台本です。参加はこちらから!
http://karazemi.com/perform/cat67/post-18.html
2023年6月29日 Posted in
中野note
↑特にクライマックスの畳み掛けがすごい。
自分で読むスピードを決められる「小説」にも関わらず、
唖然としているうちに終わってしまう、その後に、
必死さと哀しさと可笑しさが同時に押し寄せる。そういう読後感です
先日の室井先生の会の終わりに、許光俊先生とお話しすることができました。
許先生こそは、その著作が出たら一も二もなく購入する書き手の一人で、
要するに自分は先生の文章の大ファンです。
去年の8月に出版されたザッハー・マゾッホの
『毛皮を着たヴィーナス(古典新訳文庫)』など、
自分は日本に帰るのを待ちきれず、何冊かアマゾン・ジャパンから
取り寄せた本と一緒にロンドンに届けてもらい、旅行しながら
読みました。主人公たちが各地を旅する内容なので、
ちょうど良いと思ったのです。
大学生の頃に種村季弘訳で読んだ時には難しく感じたあの小説が、
男と女の切実で普遍的な、けれども端から見ればコミカルな営みで
あるのを発見して、大笑いしながら読みました。
それでいて、再び主人公二人の立場に立ってみれば、
彼らの恋愛はお互いに対して実に必死の営みで、
傷つきながらも自分の全てを賭けた男女が臨みあっていました。
そういう真剣さが哀しくもあり、
人間というのはまさにこうしたものだと納得させられる翻訳でした。
許先生の文章は柔らかく、時にふざけたようなユーモアに溢れていて
読みやすい。さらに、いつも選び抜かれた感覚と言葉で、
対象に対してぴったりくる端的な言葉や事例が充てられています。
何より、余裕のある物腰の下に隠れた、度外れな真剣さ、本気、
そういうものを感じさせながら素知らぬ風を装うところに、
先生の品格を感じます。
許先生は自ら悪評を好んで選ぶような
ところもありますが、自分にとっては、ほんとうの品の良さとは
ああしたものだと感じます。
まあ、許先生自体はそんなことを言われたら嫌がるでしょうが。
そういうわけで、先生がいくつも書いたクラシック音楽の本、
例え入門書の類であっても、新たな本が出る度に全て買って
読んできました。紹介された内容でなく、許先生の言葉が
読みたいからです。
一番優れていると思うのは『クラシックを聴け』で、
これは先生が若い頃に、時間芸術と調和について書き尽くして
しまった本だと受け取っています。
好きなのは『オレのクラシック』で、
そこには少しだけ、唐さんや室井先生のことも出てくる。
許先生が横浜国立大学で教えていた三年半に何を感じていたかも
わかる、自分には特別に面白い本です。
許先生ご本人に久しぶりに会ったことで、また一から先生の
文章に触れたくなり、ここ数日、ずっと読み返しています。
まったく、こんな文章が書けたらと思わずにはいられない内容です。
近年だと、『モーストリークラシック』という雑誌に書かれた
バッハの『ロ短調ミサ曲』に関するものが特に素晴らしく、
ああしたものもまとめて本にならないだろうか。
そう希望しています。
2023年6月28日 Posted in
中野note

↑一緒に出かけた時の写真
ダイアンの誕生日が迫っています。
彼女の誕生日は7/3。この1ヶ月、ずっと気になっていました。
そろそろカードを送らなければならないな、とか、
かといって早く着き過ぎたり、遅れて届くのもカッコ悪いな、とか。
ダイアンは、いつも自分に届く贈り物やカードを
戦利品のように陳列していました。
彼女の気に入りのリビングには暖炉型の暖房があり、
その上にそれらを並べるのです。
母の日(3月下旬)、誕生日、クリスマスとそんな具合でした。
大量のカードを並べておいてソファに寝そべり、
テレビを観ていたダイアンを思い出します。
あと1週間というところまで迫ったので、
仕事で行っていた小田原での合間に買って持っていた
カードに記入をして、やっと郵便局に持って行きました。
実は、海外にハガキを送るというのは初めての経験でした。
大昔、それこそ高校時代に手紙を出したことはあったけれど
それだけの昔のことですから全くやり方を覚えておらず、
ネットで記入方法を検索して書き込み、窓口に持って行きました。
その切手代にびっくりしました。
なんと70円なのです。安い。安すぎる。
日本国内が63円で、ロンドンが70円とは!
これまでの自分の不明を恥じています。
そうと知ってりゃ、さっさとたくさんのハガキを出したのに。
これからは、もっと送ろうと思いました。
こんなにライトなものだなんて。
それにしても、去年の誕生日には一緒にムンク展と
インド料理屋に行ったダイアンは、
果たして元気にしているのでしょうか。
2023年6月27日 Posted in
中野note
延べ3時間のつもりだったのに、結局4時間超えで喋ってしまいました。
土曜に行った室井先生の追悼の会のことです。
唐ゼミ☆的にも歴代になんなんとするメンバーが集いました。
(以下、敬称略でいきます!)
ごく初期に、演劇志望でもなんでもないにも関わらず、
バッタから流れで一緒に芝居をつくった小松重之や橋本幸紀。
彼らのおかげで初めての『ジョン・シルバー』や
『動物園が消える日』があり、いまや世界的なアーティストに
なって室井先生を大喜びさせた猪股あきも、劇団員というのとは
違うけれど、『動物園〜』を支えてくれた一人でした。
前田裕己は劇をやめているにも関わらず以前より
キャラ立ちの良いビジュアルになっていて笑ってしまいました。
同じく堀内大助もキャラ立ちを増しています。
彼はもともとマジシャン志望で、現在はプロになっているので
あえて狙ってあのいかがわしさを出しているのでしょう。
安達俊信はよく会うので、お互いによくやっているなという感じ。
さらによく会う重村大介が久々に音響操作をやっていると、
過去にやったいくつものイベントが去来しました。
杉山雄樹と関緑のふたりが金沢から可愛らしい子どもたちを
連れてきてくれたことには、再会した瞬間から感激してしまいました。
二人はなにか、すごく大人になった感じがしました。
ことに、現役の米澤剛志と杉山雄樹が飲み会で隣り合わせていたのは
不思議な感慨を覚えました。彼らはなんというか、
初めからせりふをしゃべる感覚に特別に恵まれており、
普段の独特な雰囲気にも共通するところがあるように思うのです。
ずっと音響として自分を支えてくれて高次琴乃は
クールな感じの女性に変貌していました。
彼女がわずかに出演してくれた『恋と蒲団』や
『蛇姫様』のヤンキーを思い出すと、隔世の感がありました。
あとは、椎野がいて禿がいて津内口がいました。
齋藤は仕事により現場にはいられませんでしたが、
祭壇を作って米澤に託していってくれました。
皆とずいぶんバカなことをしてきたものだと思わずには
いられませんが、現在に七転八倒している事柄も、未来から見れば
やっぱり同じような振り返るに決まっています。
それにしても、あの中華料理屋での宴会。
ホントにコロナがあったのかというほどの狂騒、騒ぎっぷりでした。
ああ、これがやりたくて、これをしなければ、
みんなで室井さんの死を乗り越えられないと思って、
自分たちは2ヶ月でこのイベントをつくったのだと確信しました。
8年ぶりに行ってみたらかなり美味しくなっていた
杯一食堂のスタッフの皆さんに、特に爽やかで優しい店長さんに、
感謝!
↓今回のためにつくった祭壇
2023年6月23日 Posted in
中野note

明日はいよいよ室井先生の横浜追悼会です。
最後の最後で、映像作家の小山祥平くんが頑張ってくれています。
資料の編集は大変な作業ですが、追い込みをかける彼を待ちながら
チェックを繰り返しています。
そして、気分が学部生時代のようになってしまった結果、
ついに唐さん関係の本を読み始めてしまいました。
『駈ける男の横顔-大庭みな子対談集(中央公論新社1984.6刊 )』です。
これは実は、ずいぶん前に買って読まずにきた本です。
何人もの著名な人たちが男女関係をテーマに平岩さんに
インタビューを受ける中で、唐さんもその一角を占めています。
冒頭で『佐川君からの手紙』に触れていますから、
1980年代半ばの初出です。前々から読もう読もうと思いながら
流されてきたものを、小山くんの作業を待ちながら
やっと通読することになりました。
唐さんとの対談部分はわずか20ページですが、侮れない本でした。
『佐川君からの手紙』以上に、これは『秘密の花園』の
創作の秘密が明かされているという点で、第一級の資料です。
そこには、
唐さんの従兄弟の名が「アキヨシ」であること(主人公そのまま!)
アキヨシさんは夫と子どものいるキャバレーの女に入れあげたこと
(子どもがいることの他は、そのまま!)
肉体関係は無いのに貢いでいたこと(そのまま!)
が明かされていました。
また、実在のアキヨシさんは、
当の子どもの子守りさえしたそうなのです。
そして、多くの親戚が彼を止めとうとしが頑として
彼女との関係を貫いたこと。それでいて、2年が経った頃に
アキヨシさんにも気持ちの変化が生じ、
芝居と同じように関西への転勤を申し出たところ、
その女性からは「あ、そう」のひと言で片付けられてしまったことが
つづられていました。(劇とは正反対!)
唐さんはそこから、
あの、トイレに行って首を吊ってしまうヒロイン・いちよを、
実際とは反対の男女関係の成り行きを構想したらしいのです。
面白いのは、本物のアキヨシさんが子守りまでしていたことで、
ここに「ねんねこ男」「いちよの夫・大貫」の要素が含まれているのを
特に面白く読みました。
嗚呼、学びの時間よ!
小山くん、もう一息だ。ガンバレ!
2023年6月22日 Posted in
中野note
6/24(土)の追悼の会に備え、準備が佳境です。
・・・と、気づけば毎日のように書いています。
やれやれ、こんなことになったのは本人が葬式を拒んだせいで、
まったく子供じみた、しようがない先生だ!と思いながら、
しかし、イベントである以上、どうしてもある程度の完成度や
盛り上がりを目指しさずにはおれません。
そんな活動の一環で、今日は久々に
馬車道ほど近くにある中華料理屋「杯一食堂」にやってきました。
今回のイベントは室井先生の好みを踏まえ、
気に入りの講演会場であった日本丸訓練センターが選ばれました。
とすれば、会が終わった後は当然、
やはり先生の好きだった中華「杯一食堂」になるわけです。
この中華料理屋は安くて、
メニューが豊富かつ美味しくて、実に先生好みの店です。
庶民的に美味く、洗練されすぎていてはいない。
美味い餃子とか美味い唐揚げがあるのが良い。
そういう感じです。
ここで、土曜日の夕方から、
追悼文集や今回の会のために尽力したメンバーを労うべく、
集まった人たちの中から特に希望のあった人たちも含めて
宴会を張ろうという計画です。
前に一度立ち寄って予約をしましたが、
店長さんがわざわざ確認の電話をくれたので、
スタートメニューのオーダーがてら、今日は乗り込んで食事しました。
久々に食べる麻婆春雨と干し豆腐のあえものが自分の変わらぬ
好みでしたが、細部に味付けや盛り付けが改善されていて、
自分が最後に来てから(確か)8年間の変化を強く感じました。
嬉しかったのは、店長さんが私たちの事を
しっかりと覚えていてくださった事です。
予約しに行った段階で「・・・あの大学の」と
年若い店長さんに切り出された時は驚きました。
それだけ室井先生がヘビーユーザーだったとも言えますが、
すごい記憶力です。
・・・と、このように一つ一つ、
コツコツと念入りに準備を進めています。
ああ、他に何か漏れがなければ良いが・・・
2023年6月21日 Posted in
中野note
↑唐十郎流のおもしろ発言が飛び出し、みんな笑っています。
そういう瞬間を撮影してもらったものです(撮影:平早勉さん)
室井先生の追悼の会の準備をしながら、こんな写真が出てきました。
2009年7月に三田の建築会館の中庭で行われたイベントです。
あの広場に私たちは青テントを張って、その中で『恋と蒲団』を
上演しました。田山花袋の私小説『蒲団』に唐さんがインスパイア
された、愛すべき短編です。
1976年に初演された時には、
一言もせりふを発しない聾者のヒロイン役を日本舞踊家の
女性が演じたために、途中に踊りのシーンも挿入され、
1時間半ほどのステージが渋谷にあったジャンジャンで
繰り広げられたのだそうです。
私たちのバージョンではストレートに演じて、
上演時間は40分ほど。それでいて、独自の世界観と
見応えによる量感のある良い上演ができたと自負していました。
休憩を挟んでシンポジウム、
劇場建築に関わっている建築家さんたち、
唐さんや室井さんと一緒に「劇空間の理想」というテーマで
語り合いました。
この頃、30歳に手が届きそうになった自分は、
やっと人前に出てしゃべることに慣れ始め、
徐々にテキトーになっていったように思います。
あんまりしゃっちょこばらず、相手の話を聞いて
反応できるようになってきました。
このすぐ後には開国博Y150を控え、
秋には『下谷万年町物語』をやろうと緊張して過ごしていました。
大仕事を前に、ちょっと軽めで、けれども意味深長な
『恋と蒲団』をやって、私たちはだんだん軽妙さに
開眼していったように思います。
同じ年の10月に、北仲スクールも始まろうとしていました。
2023年6月20日 Posted in
中野note
↑まだ新しく売っていた!
今週末土曜に行う室井先生追悼の会に向けて準備が佳境です。
例えば、大学院を卒業したばかりの映像作家・小山祥平くんは、
当日に投射する画像・映像資料を作っています。
その素材提供で相談しやすいのは、元唐ゼミ☆の禿さん。
唐ゼミ☆の齊藤や米澤は飾り付けのための祭壇を作り、
津内口は先生の写真や当日に配布する紙資料をせっせと作る。
椎野は飾り付けのためのお花を注文・・・
そういう具合です。
明後日には当日配布する追悼文集も届きます。
これには各執筆者に加えて、突貫で編集作業にあたった
学部の先輩・椋本さん、院の先輩・本永さん、
名古屋大学の秋葉先生の力が結集しています。
自分はといえば、
会の中で登壇してもらって、対話形式でエピソードを
披露してもらいたい人たちに電話をかけまくりました。
先生も先輩も後輩も、講師で来てくださっていた
クリエーターの皆さんもいます。
中には、依頼の電話がすでに長電話化してしまい、
本編も収集つかなくなってしまう予感がするほどに
話し込んでしまった人たちもいました。
ちゃんと時間に収めなければ!
他方、もちろん日々の仕事もしているわけで、
今日は昼過ぎに都内に行ったので、息抜きに本屋に寄りました。
すると、冒頭に挙げた本が新刊で売っている。
即座に買いました。
思えば、入学時に室井先生が最初に買うことを勧めた本は、
厳密には自著ではないこの『写真の哲学のために』でした。
ここで先生は長すぎる解説を書いており、
当時は難解に感じたこの文章が、今の自分にははるかに平易に
なったのを感じます。
もちろん、難しい本を読み慣れたこともあるでしょう。
けれども、自分の生活実感の中にあるモダンとポストモダンを
選り分けて考えられるようになったことが、
易しく感じられる理由です。
いずれにせよ、室井先生が新たな時代、
人類の新たな局面にワクワクしていることが伝わってくる文章です。
これが書かれた今から25年前、現在の自分と同い年くらいだった
先生の内面を推し量る愉しみもあります。
2022年に第7刷が出たばかりとあります。
息ながく版を重ねていることも、嬉しい発見です。
2023年6月16日 Posted in
中野note
↑これがラーメン大至の醤油ラーメンだ!
しばらく会わなかった人に会うと、
イギリス行ってたんだって? うらやましいなあ、と言われます。
去年の研修は、それは素晴らしい体験であったに違いありません。
40代すぎおっさんになってあんな大学生みたいな暮らしが
よく許されたものです。まことにありがたいことだと思わずに
いられません。
が、一方で傷も深くあって、
子どもたちが病気になっても一切の手出しができない状態とか、
明らかに劇団員たちと疎遠になっていく感じとかは、
あんまり気持ちの良いものではありませんでした。
かてて加えて、イギリスならではの見聞きできるものに
全力投球し過ぎたために、食生活ははなはだ貧しいものにならざるを
得ませんでした。物価が高いので1日1食半を旨とし、
晩御飯はフライドチキンやパンで済ませました。
それだって500円ちょっとは確実にかかり、乏しい懐を痛めました。
時にラーメンが食べたくなって
ロンドンでもブームの豚骨ラーメン屋に行くと、
それは日本円にして一杯2,000円以上もしました。
サービス料だってしっかり1割とられるのです。
こうなると、美味しさとは別の意味でスープが残せなくなり、
ラーメンが本来備えていたはずの気楽さが全く無くなってしまいました。
確かに美味しいけれど、どこか苦いのです。
また、醤油ラーメンは壊滅的でした。
醤油を放り込んだお湯にダマになった麺が沈んでいる。
そういう感じなのです。これは二度ほど失敗して、
以後はオーダーするのを一切やめました。
反動で、日本に帰ってきてから以前より醤油ラーメンをよく
食べるようになりました。特に好んでいるのが、湯島にある
ラーメン大至という店です。ここは東京ラーメンの究極を追求しており、
普通のラーメンを普通ではないレベルでつくるという意味において
突出しています。
感動的なのはナルトで、これまでノスタルジーこそあれ
決して美味しいと思ったことのなかったあのナルトが
(業者の皆さん、ごめんなさい)、ここのだけは美味いのです。
ロンドンにいた時にネットで発見し、
帰国してから劇団員と行ってみて気に入ったこの店に、
すでに4回行きました。個性に圧倒される体験も大切ですが、
研ぎ澄まされた普通の中に凄みを感じるという体験も、また感動的です。
ここのナルトには、東京ラーメンの必需品に込めたお店の人の
意地と気高さが宿っています。
2023年6月15日 Posted in
中野note
↑目下、これをゴロゴロしながら読んでいます
ずっと四方田犬彦さんの本を読んできました。
『叙事詩の権能』という、ともすれば時代錯誤に
巨大な物語を四方田さんが語ったものが
特に好んで何度も手に取る本です。
加えて、軽く書いたエッセイも好きです。
『けだものと私』『黄犬本』『赤犬本』なんかを
笑い転げながら読み、『月島物語』の影響から初めてレバカツを食べ、
その美味しさに開眼したりもしてきました。
聞くところによれば、四方田さんはご自分ですっぽんすら
料理できるらしい。恐るべき腕前です。
最近は『人、中年に至る』の続編『いまだ人生を語らず』が
出ていることに気づき、早速に書店で求めました。
四方田さんがフリーハンドで書いたエッセイは読みやすく、
調べ物をしながら書いた情報量よりも、かえって地下水脈の
ような知を感じさせて、味わいがあります。
日々これを読み、数日後には惜しみながら読了してしまう
だろうことが読み始めてすぐに予測できる書き出しです。
先ほどあげた『人、中年に至る』と『先生とわたし』は
特にそんな風にして毎日を愉しみに読んできました。
ところで、四方田さんは我が師・唐十郎にはなかなか
辛い点をつけています。自家撞着に陥っている、という
批判の文章を読んだことがあります。
一方で、寺山修司には評価を与えています。
それ自体は残念なことですが、噂では、
『佐川君からの手紙』の取材のとき、唐さんがサンテ刑務所を
訪ねるために骨を折ったのが四方田さんだと聞いたことがあります。
だとすれば、四方田さんが唐さんを支持しないのも頷けます。
なにせ、唐さんはそういった裏の根回しをふいにして、
佐川一政さんに会わずに帰国してしまったのですから。
これは、あくまで私が人から聞いた話であり、
真偽のほどは確かではありません。
それに、四方田さんほどの人が作品や作家を評する時に
私情をまじえるとも思えません。
が、ひょっとして、万分の一でも
唐さんに実際的な迷惑をこうむったことが氏の唐十郎評価に
影響しているとしたら、それはそれで大いに人間味のある話だと、
私はかえって共感を覚えます。
まあ、私自身は唐さんからそれほどの被害に遭うどころか、
ひたすら大きな滋養を得てきましたし、
時に唐さんに振り回されたとしても面白がってお付き合いしてきました。
惚れた弱みというやつかも知れませんが。
2023年6月14日 Posted in
中野note
↑少年マガジンで連載していた『カメレオン』という漫画にも
「宮下ヒロエ」というアイドルが登場し、受験を話題にしていました
1998年度のことです
広末涼子さんが話題になっています。
スターシェフと不倫したことで無期限の謹慎に入ったらしい。
ベストマザー賞を受賞すると良き母の座からかえって転落する。
何人かの先人も振り返りながら、そんなこともニュースになっています。
広末涼子さんと私とは学年が同じで、必然、
高校三年生の時に彼女の大学受験が大いに話題になりました。
早稲田大学の受験を宣言した彼女は、確か自己推薦枠で見事に合格を
勝ち取りました。
同級の受験生たちの中には、
「推薦枠などとは卑怯だ」「どうせ退学するに決まっている」
という不満や、「彼女の学力は早大のレベルに満たないはず!」
などという妬みや悔し紛れともとれる感情が巻き起こっていたと
記憶しています。
私などは当時から、人気者だった彼女が早稲田を目標に掲げただけで
当の私立大学の声望が自然と高まるのだから、
他の誰にも真似のできない彼女の貢献に大学側が「合格」という
かたちで応じるのは当然と思っていました。
これが国公立であれば問題ですが、
私立なんだから目くじらを立てることもないでしょうに。
印象深かったのは、自分がなんとか受験を終えて
横浜国立大学に引っかかり、目標だった唐さんの研究室を初めて
訪ねた時のことです。
当時の唐十郎研究室はガランとしたものでしたが、
冷蔵庫の上に置かれたファックス付き電話に一枚の
用紙が届いていました。
見れば、そのファックス用紙は
広末涼子さんの所属事務所から送られてきたもので、
「この4月から早稲田大学に入学しましたので宜しく」
という内容のメッセージが書かれていました。
あの時、なぜ唐十郎研究室の電話番号を広末さんの事務所が
突き止めたのかはどうにも謎ですが、確かに届いていました。
当時の唐さんは何らか広末さんと交流があったのかも知れませんが、
それにしても、何故あんなものがわざわざ研究室に届いていたのか、
謎です。誰かが送った偽物の可能性もありますが・・・
広末さんが話題になると、初期の唐十郎研究室に届いていた
あのファックスを思い出します。
2023年6月13日 Posted in
中野note
↑傾斜の上に青テントを建てたのが4年前。今は平らになっていた!
久々に日本丸に行きました。
ここの会議室で6/24(土)に室井先生の追悼会をやるので、
津内口と二人で下見に来たのです。
少しは飾り物も考えているので、机などの備品を測ったり、
プロジェクターとPCの相性を試したり、
させてもらいました。
2012-2015年に勤めていた横浜都市文化ラボ時代に、
ここでよく講座を行ったものです。
吉岡洋先生や熊倉聡敬先生の講義は、
とりわけ印象に残っています。
そして、2019年には、
同じ公園の中の駐車場にあたるスペースをお借りして、
唐ゼミ☆の青テント公演も行いました。
『ジョン・シルバー』シリーズ3部作を一気に上演するという
企画でした。この芝居だけはどうしても海沿い、水辺でやりたくて
相談したところ、事務局の方々にずいぶん良くして頂きました。
観光用の水陸両用車両スカイダッグが水中に降りるスロープが
テントのすぐ後ろに来るように設置して、この上ない景観のもとで
7時間に渡る初期唐十郎の海賊ものを実現できたのです。
最終日の強風はなかなかの難敵でしたが、
それでも、みんなで歌った『ジョン・シルバーの歌』の高揚を
体がよく覚えています。
2023年6月 9日 Posted in
中野note
↑有名な鈴廣や籠生のほかにも蒲鉾ブランドがいっぱい。
今回買ったのは「山一」というお店
昨日と今日の二日間は小田原で過ごしました。
神奈川県民ホールの仕事で、まだ新しい三の丸ホールを中心に
ある企画が進行中のため、街の皆さんに挨拶まわりをしたのです。
車で小田原に行くには二つの方法があり、
横浜新道から西湘バイパスへと繋ぐ道、
東名に乗って小田原厚木道路を往く道がありますが、
大磯から海沿いを走ることのできる西湘バイパス方面の
朝はたいがい激混みです。
そこで小田原厚木道路を進むことになるが、
なかなかどうしてこの道も素敵です。
制限時速70キロという高速道路にしては低めの
スピード設定に加え、この道は覆面の警察車両が常に
回遊しているのだと、神奈川の仕事を開始したばかりの頃に
小田原の知り合いに教わりました。
だから、感覚的には極めて低速で直線的な道を進むが、
まず、途中にある平塚がなぜ「平塚」という名前なのかがよくわかります。
本当に、まあ平らなのです。
そして、二宮を超えて風祭トンネルを抜けた先に広がる
小田原の景色はいつも素晴らしいと思います。
一気に視界が開けて、JRや小田急の線路が結集する線路を中心に
右は緑濃い山が広がり、左手に海が見え、何より空が広い。
小田原に行く時はいつも朝の渋滞を恐れて早朝に行き、
小田原東のインターでうどんを食べるのがずっと日課になりました。
昨日も今朝もこの調子です。
コロナやイギリスを挟んだので久しぶりの感がありますが、
こうして日常的に各地に行っていると、ああ、神奈川の仕事をしている、
そういう気分と高揚感が高まってきます。
2023年6月 8日 Posted in
中野note
気づけばすでに3週間を切っているので、
室井先生追悼の会への準備について、尻に火がついてきました。
空間をどうつくるかは齋藤を呼び出して相談に乗ってもらい、
進行を考えて、出席してもらえる人の中からエピソードを披露して
もらえそうな人たちに電話をかけまくっています。
どうも、参加を申し込んできた卒業生の中には、
「何か喋らされるのではないか・・・」と恐れて申し込みを
躊躇した人もいると聞きましたが、さすがに私も大人です。
そんな無理強いはしませんから、安心して下さい。
というわけで、事前の丁寧な申し入れを行なっています。
ケータイ電話番号を知らない人にも、
facebookのメッセンジャー通話でかけられるから便利です。
あの、着信する時の♩ドロロロロロロ、ドロロロロロロ
という音はなんだか気持ちが悪いですが。
電話で話す人の中には、当然ながらかなり久しぶりの人が多く、
隔世の感に打たれまくっています。
あとは、腕利きのK山くんに頼んで煽り映像を作ってもらいます。
彼には、こちらがストーリーを組むのが遅くなりすぎて、
負担をかけすぎないようにしなければと思っています。
あと16日後。
申し込みにはまだ10名強の余裕があり、フォームはこちらです。
2023年6月 7日 Posted in
中野note
↑前は中公文庫ビブリオでお手軽に買えました。
今は中古のみだけど・・・
なにかむずむずと調子が悪い。
特段、熱を出したり風邪をひいたりというのでは無いのですが、
舌の付け根がなんだか痛い。
これは、22歳の時に『動物園が消える日』金沢公演を
終えた後にかかった急性扁桃炎以来の症状です。
あの頃は体力も、ペース配分の知恵もなかったし、
すぐに次の予定もなかったので公演後は緊張感がなくなり、
芝居を終えるたびにガクッときてしまっていました。
そのなかでも金沢公演のあとはビッグウェーブで、
初めて舌の付け根を痛いと感じました。
あの時以来、舌の付け根は喘息と並んで自分の体の「弱い部分」
となり、危険を察知するセンサーの役割を果たしてくれるように
なった、とも言えます。(前向きに言って元気を出そう!)
致命傷ではないがちょっと調子が出ないな。
現在はそういう感じです。
こういう時に思い出すのは、皆さんも好きな
エルネスト・チェ・ゲバラのこの言葉。
「打撃は絶え間なく与えなければならない」。
これは有名な『ゲバラ日記』でなく、
それよりは読む人の少ない『ゲリラ戦争』という本の一説です。
自分はこれを、こう捉えています。
「調子の悪い時は悪い時なりに、
ほんの小さな軽石を投げるくらいでも良いから打撃を続けよ、
そうでなければ、敵が安心してしまう。安心は相手の回復を
増長を生み出してしまう。そうなれば不利だ」と。
まあ、自分の場合は創作や生活上の目標があるのみで、
「敵」というほど大げさなもんではありませんが。
それにゲバラに対して私が捧げている敬意は
偉大な革命家としてよりも、喘息持ちなのにゲリラ戦の過酷を
やってのけた人、という意味合いが圧倒的に強い。
というわけで、今日は軽めの小石としてのゼミログでした。
2023年6月 6日 Posted in
中野note
↑立体駐車場での演奏会のリハーサル。曲目は惑星組曲だったらしい
イギリスのピーター・フィッシャーからメッセージが来ました。
それによると、彼の参加するフィルハーモニア管弦楽団は、
今年もペッカムというガラの悪い地域の立体駐車場での
コンサートを行ったらしい。
去年、さまざまなライブを観ましたが、
あの場所は特に気に入りの会場のひとつでした。
何せクラシックのコンサートを、屋根こそあれ半野外の、
国鉄を往き来する電車の軋みが響き渡る場所で行うのです。
日本では考えられませんが、
英国トップクラスのオケであるフィルハーモニアは嬉々として
この場所でコンサートを行っていました。
自分はひとつも見逃すまいと、去年ここで行われたすべての
ライブを聴きました。
スクリャービンの『神聖な詩』
グレツキの交響曲3番
ラフマニノフのピアノ協奏曲2番
が、それぞれメイン、という具合でした。
当時、ピーターは「来年もあるかどうか分からない」
と言っていましたが、今年も同じように実施されて、
曲目はホルストの惑星組曲だったらしい。
空に近いあの場所で、遊び心のあるナイスな選曲だと思いました。
今年に入って、仕事や友人がらみ以外の演奏会に行くことは絶えて
ありませんが、フィルハーモニア管弦楽団がそのうちに来日したら
必ず駆けつけようと思っています。
ピーター、ツアーメンバーに入ってくれると良いけれど。
2023年6月 2日 Posted in
中野note

↑唐さんが持っていた創土社の全集。インパクト大の装丁!
昨日の夜、ホフマンについてお話しする機会がありました。
ドイツ文学における後期ロマン派の作家として活躍した、
あのE.T.A.ホフマンのことです。
自分は本当の専門家では無いのですが、
集まっている人間の中ではよく読んでいる方だったので、
10分でホフマンについて説明して欲しい、
というオーダーに応えることにしました。
18世紀の後半に起こったロマン派のムーヴメントについて、
ナポレオンやベートーヴェンや絵画の印象派や
もちろん、ドイツ文学史上の先輩であるゲーテやシラーを紹介しつつ、
ちょっと変わり者の後輩としてのホフマンを紹介しました。
私がホフマンをよく読んでいたのは20代半ばのひどく暇だった頃です。
あの頃、バルザックやドストエフスキーとともに、よく読みました。
そして、その背後には、確実に唐さんの影響がありました。
大学に入ったばかりの頃に緊張しながら唐さんの研究室を
訪ねると、そこにはまだ、後にできる小さな木組みの
ステージや暗幕はなく。タイル床とじゅうたん敷きの
スペースが半々になっていました。
壁一面の本棚に本はなく、ただそこにぽつんと、
創土社のホフマン全集のみが置かれてありました。
きっと唐さんが、室井先生にリクエストして
慣れない研究費の活用で古本屋から買ったのかも知れません。
大学1年の頃の自分に、ホフマンは未知の作家でした。
ただその装丁のサイケデリックなことと、
唐さんが好きなのだから必修課題であることだけが
インプットされました。
後から考えたら、2000年春、
唐組がホフマンの『黄金の壺』『砂男』に想を得た
『夜壺』を初演した背景には、あの全集が一役買っていたのだと
思います。あの全集は当時から貴重品で、自分は文庫本や
国書刊行会のものを掛け合わせて一作一作を読んでいきました。
皆さんの前でホフマンを語ることができたのも
そういうわけで、唐さんのおかげなのです。
2023年6月 1日 Posted in
中野note
↑私の想像する唐さんの過去車。こんな風だったのだろうか?
今日のお昼は仕事を一旦置き、車の点検に行きました。
自分がまだロンドンにいた頃、12月半ばに納車されたホンダ フリードが
半年点検を迎えたのです。
つい先日、釘3本によりパンクしたタイヤを交換してもらった
ばかりだったので、今日はオフィスにいた担当の店員さんに
慰められました。劇団をやり、劇場に出入りしていると、
どうしても釘との遭遇率は高くなる。
自分ではそんな風に自らを納得させています。。
劇団をやっていると、20代の頃は自家用車を持つことなど
思いもしませんでした。しかし、神奈川県や財団の仕事で県内を
行き来するようになり、日産ラフェスタから自分のキャリアが
スタートしました。まだ小さな子どもが病気になった時など、
車があるのが本当にありがたく感じられます。
駐車場、保険、車検、修理、固定資産税、まれに違反の罰金・・・
多分に漏れず維持費はかかるけれど、助かっています。
2代目のフリードはどこまで走ってくれるだろうかと案じながら
すでに14,000km走行。これはなかなかの数字だと言われました。
よくメンテナンスしていきます。
点検の待ち時間に唐さんと車のことを考えてみると、
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』・・・海辺をひとっ走りの車
『続ジョン・シルバー』・・・小春の愛車ムスタング
『吸血姫』・・・人力車と救急車
『虹屋敷』・・・岸信介が乗りつけたキャデラック
『赤い靴』・・・少女の誘拐に使われたハイラックスサーフ
などが連想されます。きっとまだまだあるでしょう。
唐さんご自身は大学に来る時、辻孝彦さんの運転する
ブルーのBMWに乗ってやってきました。
私が知り合う前の唐さんは、ピンク色の車に乗っていたとも聞きます。
ちょっと想像がつきませんが、いかにもファンシーな唐さんらしい。
自分は車にこれ以上の贅沢を望みませんが、どうか長生きして欲しい。
初めて乗ったラフェスタのことも思い出しつつ、そういう気持ちを
現在のフリードに託しています。
2023年5月30日 Posted in
中野note
↑掲載写真は、1997年10月に初講義を終えた唐十郎教授と室井先生です
今日は昨日に引き続き本読みWSのレポートをする予定でしたが、
嬉しいことがあったので、予定を変更します。
今日、5/30付の読売新聞夕刊に、3月に亡くなった室井先生と唐さんに
関する記事が出ました。関東版のみの掲載らしいのですが、
取材を受けた私としては、勇んで夕刊を開きました。
書いてくださったのは山内則史記者です。
山内さんと言えば、ずっと前から紅テントでお目にかかり、
唐さんを特集した映像DVD『演劇曼荼羅 唐十郎の世界』や
新聞連載小説『朝顔男』を世に送り出した方でもあります。
唐十郎という存在に対して室井先生がした仕事は、
演劇界的な営みとしては評価するのが難しい営みでした。
室井先生は美術や文学や映画や、もちろん舞台の批評だってして
いましたが、こと唐さんに関する限り、同じ演目であっても
観られるだけ紅テント公演を追いかけていたからです。
そんな観劇体験をしようとする人はあまりいませんし、
それはもはや「観劇」では無かったようにも思います。
山内さんがあらわした通り、
生命体として唐十郎を追いかけている。
そういう感じでした。
ともあれ、そういった捉えどころのない室井先生の探究を
巧みに書き表してくださったことは、自分にとっても嬉しく
山内さんに感謝するばかりです。
皆さんもぜひ読んでみてください。
ちなみに、同じ紙面には野田マップに出る唐さんの息子さん、
大鶴佐助も特集されていて、なんだか痛快です。
2023年5月26日 Posted in
中野note
↑高橋睦郎の修辞では「女怪」と表されるスフィンクスと私
上演する以外に年に3本は重点的に台本を研究したいと思っています。
去年はロンドンで孤独だったのでずいぶん時間があり
3本どころではなく、『腰巻おぼろ 妖鯨篇』や『下町ホフマン』も
含めて6本研究することができました。
研究とは、パソコンで書かれていることを丸写ししながら
読むことです。ひと言ひと言に気をつけながら洞察し
同時に台本をデータ化して使いやすくします。
『鐵假面』稽古が本格化する前に研究しているのは
『オイディプス王』です。最近出たギリシャ悲劇の本を読んで
いっぺんやってみようと思ったのです。
翻訳にはこだわりがあり、高橋睦郎さんが修辞したものが相手です。
これは蜷川幸雄さんが築地本願寺で上演した時に作られた台本ですが、
単行本に収めたものがかつて売っていました。
私はそれを、大学受験の前の晩に新宿紀伊國屋で買ったのです。
ずっとお店の棚にあって汚れていたけれど、紛れもなく新刊本でした。
よく読んでみると、特におもしろいと感じたのは「使者」役です。
オイディプス王が自らの出自や運命を自覚し始めたあたりで
登場する使者は、王に父親たる隣国の王が亡くなったことを知らせます。
そして、まだまだ警戒心を解かないオイディプスを慰めようとして
かえって真実を明るみに出してしまう。
真実を伝えたらご褒美ください、というようなおねだりぜりふも
あって、相当なお調子者です。そして結果的に地雷を踏んでしまう。
この様子はゾクゾクします。空気の読めないマヌケな男が
自覚なく周囲を地獄に叩き落とす。
このやらかしっぷりに自分は好感を持ちました。
『オイディプス王』でどの役をやりたいか、
どの役が面白いかと問われたら、私は「使者」と答えます。
↓大学受験の時に買った小沢書店の高橋睦郎修辞『オイディプス王』
2023年5月25日 Posted in
中野note
↑空気を入れて水をかけると、穴が空いているところがブクブクいいます
ブクブクいうということは穴が空いているということです
ここ数日、暑い。
暑い時は車の窓を開けて移動します。
すると「カチッ、カチッ」という音が聞こえたような、気がしました。
が、面倒なので、気にしないようにしておきました。
それが先週木曜日のこと。
それから、日曜に藤沢に餅つきに行き、
昨日などは川崎→横須賀→大和と渡り歩きましたが、
なんだか運転しながら自分が車体が左に傾いているような気がしても、
きっと道路の傾斜だろうと思っていました。
いや、思い込むようにしたのかも知れません。
それが、今日の昼に移動しようとした際、タイヤが明らかにブヨブヨする。
足でグイグイ押してみて、こりゃいかんと観念しました。
お店に行って見てもらったら、釘が3本刺さっていました。
どこで3本も!と思いましたが、
即座にタイヤ交換。交換してもらったら速いもので、
1時間ちょっとでパンクしたタイヤ一本だけ取り替えてもらいました。
不都合な真実と向き合うのは大変で、今回も逃避を続けてしまいましたが、
大事に至らなくてホッとしています。それにしても、どこで3本も刺さったのだろう。
怖ろしいことですが、これは避けようがありません。
お金もかかったけれど、事故ったり、何かが決定的に滞ったりするよりはマシ。
と自分を慰めました。やれやれ。
2023年5月24日 Posted in
中野note
この前の日曜日、
本読みワークショップの前に藤沢に行きました。
ずっと参加しているドリームエナジープロジェクトの餅つき大会が
藤沢市の弁慶農園というところで行われたのです。
子どもたちも連れて行きましたが、
餅つき自体は自分の方が興奮し、ついたくさん食べました。
自分なりにソースを用意しようと、生まれて初めて、
ずんだ餡をつくった達成感も、餅へのタガを外させました。
子どもたちは餅には淡白でしたが、
同じ農園にいた山羊と馬には興奮していました。
自分は山羊は初めてで、ずいぶん神秘的な表情だと魅入られました。
『もののけ姫』のシシ神さまに通じる表情です。
角もたいそう立派でした。
が、内面は暴れん坊で、これまで幾人もの人にタックルを見舞ってきたそうです。
こんな知恵者のように面差しで、実は乱暴者だなんて。
感動とともに、今日は短め。
2023年5月23日 Posted in
中野note
まだまだ助走段階ですが、『鐵假面』の台本読みをしています。
唐ゼミ☆ではこの演目を2007年にも上演していますが、
当時を知っているのはすでに椎野と齋藤のみ。
台本の下地となる情報を伝えながら、まずは知識を入れる段階。
それを経て、台本を読める段階に進もうと、
地道な本読みをオンラインで行っています。
『少年王者』がどんな紙芝居か。
『ジロリンタン』がどんなラジオ番組だったか。
紙芝居屋とは。せんべいソースとは。『子連れ狼』とは。
そんな話をクリアして、知らないことが無くなったゾ!
という段階になれば、せりふの端々に振り回されず、
大掴みに登場人物が何を言おうとしているかが見えてきます。
2007年にこの芝居を上演した時、
自分には生活は人生に対する体験が足りませんでした。
だから、約50年前に大阪千日前で起こった火事の衝撃とか、
被害に遭った人たち、その家族たちのその後など、
いまに比べてまったく想像が及んでいなかったのだと
改めてこの台本を読みながら痛感しています。
彼らの人生が沁みるように伝わって、
そこから、唐さん一流の喜劇的な飛躍がある。
泣き笑いというか、笑いがなければやっていられないのが昂じて、
大哄笑の世界が現れる。そういう舞台を夢見ています。
津内口や林麻子、ちろ、椎野らの劇団員に加えて、
昨日は『唐版 風の又三郎』に出てくれた井手晋之介君も来てくれました。
たった一度かかわった唐十郎作品に惹かれての参加がうれしい。
この面白さを共有して、さらに体現できる人たちを
もっともっと世の中にはびこらせたいと思っています。
2023年5月19日 Posted in
中野note
↑関西テレビのたもとにトラック野外劇場をつくった時の写真です
2014年9月に上演した『木馬の鼻』より
現在、新大阪のホテルにいます。
今日は神戸に出張して、明日の朝の帰りを楽にするために
終電で移動してホテルに入りました。
ずいぶん以前は漫画喫茶に泊まったりして大阪の夜を過ごしたこともあり、
自分も大人になったものだと思います。
とはいえ、格安のビジネスホテルですが。
初めて唐ゼミ☆が大阪に来たのは、
まだ学生時代に上演していた『鉛の心臓』を持って、
天王寺のアベノロクソドンタという劇場に呼んでもらったのが始まりでした。
劇場経営者にして劇団KIO主宰の中立公平さんが呼んでくれた。
2003年のことでした。
それから、近畿大学が唐さんのフェスティバルを開いてくれたのが2005年。
一軒家で合宿しながら近大に通い、雪の中で『少女都市からの呼び声』を
上演しました。まだ3月だったから寒かった。
それからは、同じ関西である京都での公演が増えて
大阪にはもっぱら芝居を観に来るようになっていきました。
唐さんが近畿大学の学生たちと上演する劇も観たし、
特には唐組の春公演を一番早く観るために大阪に来ました。
『行商人ネモ』をよく覚えています。
維新派や犯罪友の会の劇も駆けつけて観ました。
2014年に上演したトラック版の『木馬の鼻』が、今のところ大阪で
上演した僕らの最後の芝居です。あの時は扇町公園で三日間やりましたが、
最後の日に台風と激突して、それでも、観客が13人集まってくれたので
強引に上演しました。翌日に踏み荒らした公園を整備したのは
大変でしたが、唐ゼミ☆のキャリアの中で面白い上演でした。
あれから10年が経とうとしているので、何かやりたい気持ちに駆られます。
青テントは設置と解体にコストがかかり過ぎるの、何か身軽な公演を持って。
明日の8:00には新幹線に乗り、横浜に帰ります。
2023年5月18日 Posted in
中野note
↑画面ごしに撮影した痰壺。コインがまさに壺に投げ入れられようとするところ
昨日に書いた映画『RIO BRAVO(リオ・ブラボー)』のDVDが届きました。
ワークショップの常連メンバーFさんの証言によれば、
この映画の中に唐さんの『二都物語』に影響を与えた場面があるらしいのです。
勇んで観始めると、そのシーンはさっそくやってきました。
早撃ちの名人ながら失恋ののちにアル中になっているディーン・マーチンが
悪党にからかわれる場面。酒場で無一文ながら物欲しそうな視線を向ける
ディーン・マーチンに対し、悪役はコインを取り出し、それを柱のたもとに
設えられた壺の中に投げ込みます。
ディーン・マーチンが酒欲しさに仕方なくコインを取ろうとすると、
保安官役のジョン・ウェインがそんな情けないことをするなと壺を
蹴飛ばす。ここまで一切のせりふ無し、のなかなか見事な場面です。
これ。正直に言うと、今回のことが無ければ、
ほんの少しの時間で過ぎていくこの場面の壺が他ならぬ痰壺であることに
自分は気づかなかったと思います。
と言うのも、自分は実働しているリアル痰壺を見たことがないのです。
調べてみれば、2005年まで痰壺は法律でも容認されていたそうなのですが
自分が物心ついた1980年代の後半には、すでにその役割を終え、
本来は衛生環境を守るための痰壺がむしろ不衛生なものと見做される
に至っていたのではないかと推察します。
ですから、痰壺そのものに馴染みが無かった。
映画の冒頭シーンはほんの一瞬です。
Fさんの指摘のおかげで、自分は『二都物語』だけでなく、
ハワード・ホークス監督の『リオ・ブラボー』そのものもまた、
よく理解することができました。
それにしても、この一瞬の場面を覚えていて自らの芝居に盛り込み、
本来の映画以上にドギツいシーンに仕立てる唐さんは、
やはり剽窃の名人です。さまざまなディティールに鋭く反応し、
それを自分流にアレンジ仕切って見せる。唐さんの見事な手腕です。
2023年5月17日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『二都物語』 Posted in
中野note
↑早く届け!と心待ち
いつも本読みワークショップに参加してくださっているFさんから
目下、研究している『二都物語』について情報が寄せられました。
この劇中、
有名な場面のひとつにリーランが100円をせがむシーンがあります。
彼女はすれ違う人たちに常に100円をくれるようお願いして回る。
が、これが単なる物乞いと違うのは、リーランが自らに課した過酷な
条件によります。
彼女は、お客に対して痰壺に100円を投げ込むよう頼む。
痰壺という極めて不衛生、普通だったら嫌がるものから硬貨を
拾い上げてみせると約束することで、まるで自分を見世物に
してみせる。これがリーランが自ら設定したアイディアです。
なかなか残酷で、忌まわしい仕掛けです。やはり印象的。
ワークショップでこのシーンを読んでいる時、
Fさんから、このシーンはある映画の影響だと指摘がありました。
その場では俳優ロバート・ミッチャムの出演作だという話になりましたが、
翌日にわざわざ訂正の連絡を頂きました。
どうやら正解は、ハワード・ホークス監督、
ディーン・マーチン主演の『RIO BRAVO』ということです。
1959年の映画。唐さんは西部劇が大好きなのでこれは当たりでしょうし、
ネットで調べたところ、確かに冒頭にそういうシーンがあるらしい。
唐さんは若き日にこれを観て『二都物語』に援用したに違いありません。
ずいぶん前の映画なので、格安DVDを注文しました。
ネット・レンタルも良いけれど、将来、何人かで観る可能性がある。
そこで買って持っておくことにしました。
明日には届くそうです。届いたらさっそく観てみるつもり。
Fさん、ありがとうございます!
2023年5月16日 Posted in
中野note

唐ゼミ☆、ハンディラボで集合しています
ハンディラボに集まって夏の稽古日程について話し合ったり、
zoomで台本を読んでいます。
タイトルが『鐵假面』ですから、必然的に最も重要な道具は鉄仮面です。
その造形をどうするか。本読みを通じて
どうすれば効果的になるかを探っていきます。
去年、イギリスにいた時にはずいぶん鎧兜を見ました。
そういう中で参考になるものを見せたりもします。
ヨーロッパで流布していた鎧を眺めていると、
剣や槍や矢で刺されないように隙間を塞ごうと必死です。
しかし、隙間を塞ぐほどに重量は増し、可動域は減り、
これでホントに身動きが出来たのだろうかという仕上がりです。
人間の必死は、それを俯瞰で見るとコミカルに見えます。
ひとつの芝居を巡って延々と考え、話している風景も似たようなものか。
時には、2021年に『唐版 風の又三郎』に出てくれたメンバーと再会し、
旧交を温めたりもしています。
ワダ・タワー、佐藤昼寝、赤松怜音、渡辺景日、鷲見武。
みんなゴッツくなっています。
体格ではなく、存在というか、肝が太くなった感じがしました。
あれから一年半経つ間に、多くの出演を重ねたそうです。
自ら企画を手がける立場になったり、逆に所属団体がピンチになったり、
舞台以外の声優の仕事に盛んに挑んでいるという話も聞きました。
それぞれのチャレンジ、時には修羅場を潜り抜けてきた事が
伝わってきました。
自分はイギリスにいて、時間が飛んでいるような感じです。
行動が連続していないので断絶した感じ。
あの11ヶ月がどういう風に自分の行いに影響してくるのか。
公演準備が進むと見えてくるはずです。
劇団員の齋藤は私たちの集合場所であるハンディラボを活用して
仕事をしていたそうです。他の団体の舞台監督を受けてやっていた。
重点的に掃除をしたらしく、倉庫の中の空気がキレイになった感じが
しました。具体的に動いていると、皆の変化が見えてきます。
2023年5月15日 Posted in
中野note
↑パーカーの万年筆。元日本人たちはこの偽物を路上販売することで
生活しているという設定です。万年筆への憧れ。一定世代以上、年齢が上の
人たちは持っていると聞きます
本来は毎週日曜日に行う本読みWSですが、
昨晩は特殊な予定アリだったために振り替えて本日に行いました。
月曜にも関わらず多くの方が参加してくださり、ありがたい。
今回、『二都物語』2回目はついにヒロインのリーランが登場しました。
彼女は働き先のレストランでお客に100円をせびり、クビになったのです。
それで職安に返されてきた。ところが課長が率いる職安の部下たちには
彼女に仕事を紹介した記憶がありません。
強かな彼女は嘘を言ってこの職安に連行されたのです。
それからは100円を巡る問答。彼女がなぜ100円をもらうことに固執するのか。
それは次に起こることへの伏線です。
リーランはお母さんのお腹にいる時に朝鮮海峡をわたり、
日本にやってきました。そういう出自もせりふから明らかになります。
一方、課長率いる噂の職安連中もまた、朝鮮半島から日本に渡ってきた。
ただし、ここが重要なのですが、彼らはあくまで日本人です。
正確に言うと元日本人。
戦前戦中に日本から大陸にわたり、戦後も内地に帰らなかった人々。
それが彼らの正体です。あるいは、帰れなかったのかも知れません。
いずれにせよ、今では自分たちの戸籍が日本にあるのかわからない。
しかし、彼らは日本に帰ってきた。
そして、日本で働いて生きようにも戸籍がないので仕事が見つからない。
だから噂の職安を開いたり、夜はつぶれた工場からかっぱらってきた
万年筆を行商します。同情を引いて粗悪品をお客に捕ませる商売です。
(ここの描写がおもしろい)
昨日やったシーンの終わりでは、本物の職業安定所の役人が
刑事を連れて課長たちのニセ職安を摘発しにやってきますが、
実はその刑事もまたニセモノであり、ニセモノ勢が勝ってしまいます。
大切なのは、ニセモノ勢=元日本人だということです。
同じ「海峡を渡ってきた者」にしても、リーランは朝鮮にルーツを持つ者。
課長たちは日本で生まれ育ちながら大陸に渡り、戦後もそこで暮らした者。
同じ戸籍が無いにしても、この部分が違うことは先ほども書いた通りです。
『二都物語』というと、どうしても「朝鮮半島から日本に渡ってきた人たち」
の迫力で押されてしまって、彼らの差異は二の次な印象を受けます。
私たちのWSでは、両者の違いに丁寧に注目しながらこの先を読み進めます。
次回はリーランの過去が語られます。悲劇的な記憶に触れつつ、
その分、美しい主題歌も立ち上がる。愉しみに参加してください。
2023年5月12日 Posted in
中野note
↑高校1年生(手前)と3年生の大豪院邪鬼(奥)では、こんなに
身体のデカさが違う(『魁!男塾』より)
話を盛りすぎること、大歓迎です。
自分だって同じ話をするたびに自然と話を盛ってしまう。
そういう性質の強い方だと自覚しています。
GWこの方、さまざまな本を読みましたが、
シュリーマンの超有名著作『古代への情熱』を初めて読み、
これを大いに愉しみました。
シュリーマンが自ら築き上げたストーリーをざっくり振り返ると、
次のようなあらましです。
幼い頃に読んだホメロスを人生の聖典とし、
商才、語学の天才を生かして一代で財を成す。
しかし、それは彼自身にとって副次的なもの、
築き上げた富を投じて遺跡調査に乗り出し、
傍の良妻に支えられて見事に伝説の宮殿を発見する。
事実は小説より奇なり、と言いたいところですが、
彼のレポート自体が書かれたものであって、必然、自らの人生が
より劇的に、自説が有利になるよう、それは盛りに盛られて
ここまでに膨れ上がった。
そういう感じがすることに好感を持ちました。
事実より、自分がこうであったらと願う誇大妄想、
こんな風にしちゃえという改ざんにこそ、より人間味があるからです。
唐さんで言えば、同じバングラデシュ行を唐さん自身が書いたものと、
状況劇場の劇団員だった山口猛さんの書いた記録との隔たりにこそ、
この二人の真骨頂があります。
『ギルガメシュ叙事詩』なんかを読むと、
古代の王は800年くらい平気で生きています。
しかし、それが一概に嘘かというとそうでもない気がします。
往時の時間感覚からすれば、1週間は悠久の時かもしれないからです。
同じ伝でいけば、ガルシア=マルケスの『族長の秋』など、
現代においてもそういう時間感覚を活かすことに成功していて
喝采します。この物語の中で独裁者は数百年を生きており
だからこそその独裁の強烈さが読者に伝わってくるのです。
そういえば、ずいぶん以前に見た深夜番組の中で
伝説の400勝投手、金田正一は「ワシの球は180キロは出ていた」
と豪語していました。「ありえない数字だ!」と芸人が詰めよると
金田さんは平然と「心の180キロだ!」と言ってのけました。
さすが金田さんは冷静さも持ち合わせている。
ホンモノを感じさせます。
子どもの頃に読んだ『魁!男塾』の大豪院邪鬼もそう。
登場した時に身長3メートルを超えて描かれた彼は、
後に、ひ弱な一年生たちの畏れによって実物より遥かに巨大に
見えていたのだと語られます。これもまた一つのリアリズム。
絵画に印象派があることからも分かるように、
人間を信ずる限りこれらはすべて真実に他なりません。
2023年5月11日 Posted in
中野note
↑青梅駅構内には駅にちなんだ映画の看板
真ん中は唐さんの好きなあの名作
ゴールデンウィークの最終日に青梅に行きました。
目的は映画を観るためです。シネマネコという、
可愛らしい木造の映画館が目的地でした。
が、映画以上に、青梅駅周辺を歩きながら思い出したことがあります。
それは、唐さんがかつて上演した『紙芝居の絵の町で』という芝居
でした。初演は2006年。唐さんが一日、都内を歩いてネタを探し、
使い捨てコンタクトレンズをヒントに書いた、紙芝居作家たちの
物語でした。
あの中に、当時は丸山厚人さんの演じた
「群青疾風(ぐんじょうはやて)」という看板描きの青年が出てくる。
カッとしがちだけど腕が立つ看板絵師の彼の仕事場こそ、
この青梅駅周辺でした。
確かにあの街には、古き佳き映画の看板絵がそこここにあって、
青梅を訪れた人の関心を誘う名物になっていました。
唐さんが好きな『鉄道員』の看板もあって、
自分は唐組での『紙芝居の絵の町で』だけでなく、
『ジョン・シルバー』の冒頭に映画『鉄道員』の
テーマミュージックを使ったことも思い出しました。
唐さんのおじさんは満州から引きあげてきた後に
国鉄田町駅の助役となり、そういった連想からも
唐さんは『鉄道員』が好きなのです。
ということまでも思い出しながら街を巡りました。
2006年春公演の台本を書くための取材は
きっと2005年10〜11月頃だったはずです。
その時、唐さんもまた同じ青梅の街を巡り、
あの、長大で流麗な群青疾風の長ぜりふが描写したせりふを
構想したはずです。そういう唐さんの姿を想像しながら
青梅を歩いていると、すばしこい唐さんの、あの歩行の
緩急が見えるようで、雨の青梅がずいぶん愉しいものになりました。
遠かったけれど、またひとつ唐さんの足跡を追うことができました。
2023年5月10日 Posted in
中野note
林麻子と丸山正吾、この二人と観に行きました!
唐組『透明人間』の花園神社初日を観ました。
良かった。だから、あれからずっと『透明人間』とは
どんな劇だったのか考え続けています。
今までの上演も良かった。
タイトルを変えて上演された『水中花』も『調教師』も含め、
何度も再演されてきた『透明人間』はいつも傑作だったけれど、
今回は特に、ただ面白さに流されるだけでなく、
この劇を真正面から読み解いてみたい、
そういう風に誘いかけてくる上演でした。
この劇は、戦中の中国と1990年初演当時の日本にいる、
二人の「モモ」という名の女性を軸に展開します。
一人は太平洋戦中を生きたモモ。
もう一人は、バブル期のさなかに日本にやってきたモモ。
両方とも、モモは中国に生まれた女性です。
"女性"と書いたのには理由があって、
特に太平洋戦争下のモモは、犬の名前でもあるからです。
唐組が2003年に初演した『泥人魚』のヒロイン・やすみは
「ヒトか魚かわからぬ女」でしたが、戦下のモモは
「ヒトか犬かわからぬ女」として書かれています。
ここがこの芝居の唐さんらしい不思議さであり、面白さです。
1989年に当時10代の木村拓哉さんをフーテンに配して再演された
『盲導犬』の痕跡が、ここに感じられます。
あの劇は、ヒロイン・銀杏が犬になぞらえられる物語だからです。
ともあれ、どちらのモモにも共通するのは、
彼女らがアジアに進出する日本によって組み敷かれた存在であること。
過去には軍事的な力により。1990年当初は経済力により。
ただし、その中には真実の情愛が宿ることもあるわけで、
「辻(つじ)」という男は父子二代で彼女らを利用し、
同時に心底愛しもする。
今回、過去に連なる「モモ」を大鶴美仁音さんが演じ、
現在のモモである「モモ似」に藤井由紀さんが扮しました。
この配役が素晴らしい。
まず、美仁音の優れたところは「犬」を濃厚に体現したことです。
隠喩としての「犬」でなく、「犬」そのものとして舞台にいた。
辻の父親との種を超えた愛を表現する佇まいに驚きました。
そして、藤井さんはリアリズム。中国から日本に
出稼ぎにやってきた水商売の女の哀しさと強かさを演じ切ります。
その上で、今回の上演が優れていたのは、
タイトルが『透明人間』であることを存分に考えさせてくれたことです。
二人のモモだけなら、この芝居は唐さん自身が一度は改題したように
『水中花』でも良い。また、この劇の元になった小説のタイトル
『調教師』でも良い。けれど、この芝居はあくまで
『透明人間』として書かれたのです。
どうしてなのか。そのヒントを
この劇にとって第三の女性である「白川先生」が与えてくれます。
欲求不満の分裂症である彼女には「透明人間」が見える。
悪意や情愛という相反する情念に私たちをけし掛ける透明人間。
2幕エピローグ前の暗転時に彼女が黒板消しを投げるのは、
その寸前に起きたカタストロフの元凶を、彼女が突き止めようと
しているからに他なりません。
典型的な保健所員=小役人を自覚する主人公・田口、
腸が長いだけのつまらない日本人であることを嘆く田口が
二幕の後半になって突然に「経済」を口にする時も
やはり「透明人間」がカギになります。
(思えば、序盤に合田が田口をからかって言う、労働とは何か?
というせりふが終盤でグッと生きる仕掛けになっている)
経済や軍事を推進する人間、同時に情愛に満ちている人間。
人間の得体の知れなさ、乱反射する人間の欲望を突き動かす
存在「透明人間」を唐さんは描いている。そう実感しました。
唐さんにとって、バブル経済を生きる人々、
人々を駆り立てる欲望は得体が知れなかった。
日本を戦争に駆り立てた衝動もまた得体が知れない。
その正体を見極めようと、唐さんは『透明人間』を書いた。
『透明人間』の輪郭を見極めるには白墨の粉が必要だ、
そう思って、黒板消しを白川先生に託した。
もちろん白川先生は、幼少期の唐さんにとって
「すべてを識る者」だった女教師・滝沢先生の面影があります。
・・・と、これが今現在の私の『透明人間』です。
明日になれば、さらに深化した『透明人間』に気づくかも知れない。
もう一度観れば、もう一つ『透明人間』に接近できるかも知れない。
そんな風に観劇後も頭の一部を侵されることこそ、
唐十郎作品の醍醐味です。この優れた劇の正体に向かって
自分もエイヤッと黒板消しを投げたい。
そういう衝動に自分を突き動かしてくる。
これぞ傑作の効能と言えましょう。
2023年5月 5日 Posted in
中野note
端午の節句です。
用事があって近所を歩き回り、それから都内にも出ましたが、
道々目にする和菓子屋にお客が殺到していました。
柏餅。皆さんがあれを食べようと躍起になっているのを見て、
"日本"は私たちの中にまだ生きているな、と思います。
私は今日は混んでいるので行きません。
来客用に和菓子を用意していく中で、今年はすでに二度、
柏餅を食べました。殊に味噌あんが好きなのですが、
そのようなわけで満ち足りています。
今年に三度目があるにしても、明日以降でいいや。
他方、唐十郎研究において今日はより重要な意味をはらんだ日です。
今年に入ってから『秘密の花園』について本読みWSをやりましたが、
あの芝居に出てくる数々の小道具の中で、突出して重要なのが
菖蒲の葉です。1幕には、端午の節句の銭湯で子どもたちが
我先にと立派な菖蒲の葉を奪い合う描写も出てきます。
下町を体感的に知り尽くした唐さんの景色です。
これまでは漫然としてきましたが、
ああして台本に取り組むと、俄然、実際の銭湯が
気になり始めました。果たして、あの大きなお風呂に
満々と菖蒲の葉が浮いているのかどうか。
そこで、実際に行ってきました。
お馴染みのカフェ・バー・タケウチにも用があったので、
まずは吉原に行き、それから『秘密の花園』の舞台、
日暮里の周辺へ。外国人観光客の多い谷中に朝日湯という
銭湯があって、電話したら、ちゃんと菖蒲の葉を浮かべている
ということでした。
果たして、実際に菖蒲の葉はありました。
もちろん、唐さんが書いたほどの量はありませんでしたが。
銭湯の中ゆえにスマホで写真を撮ることはできないものの、
しっかりと目に焼き付けました。こうして、またひとつ
せりふの中身に説得力が持たせられると思います。
役者にアドバイスする時にも、実感が伝えられようというものです。
2023年5月 5日 Posted in
中野note
↑これが見て良し、触って良しのヘラ絞り製タンブラー
最近、何を見てしまうといって、ヘラ絞りの動画を見てしまいます。
その作業の行程、ヘラによって滑らかに湾曲していく金属板の波。
仕上がりの厚みの恐ろしく均一なこと。そして、その手早さの妙。
とにかく魅入られてしまって。
蕎麦屋に入って蕎麦が出てくるまでの間とか、
電車を待つ間、打合せの合い間にも、気になって熟練の職人仕事を
収録した動画を見てしまいます。
そこへきて、
先日に恐竜ショーをやっていたヒカリエに行った時、
8階で神奈川県の特産品をやっているのに気がつきました。
こちらはここ5年間、特に神奈川をウロウロするのを仕事にして
きましたので、これは見逃せないと中に入りました。
そこで見つけた、憧れのヘラ絞りによるタンブラー。
川崎市高津区にある相和シボリ工業という会社の製品とのことですが、
これがめっぽう美しい。いや、美しいというレベルを超えて
艶かしい。普通だったらツルツルにする絞りの跡をわざと
残したデザインが、絶妙な触り心地を生んでいます。
買いました。
といっても自分のためではなく、近く外国から来る人に
地元の名産品をプレゼントしたいと思っていたので、
この上ない逸品だと思ったのです。
そして家に持ち帰ると、
取り出せる梱包のために中身を外に出してはしげしげと見てしまう。
手に取りながらまたまた動画も見てしまう。
お渡しするまでの間、ずっとこれが続きそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=tn6vkuj5oLM
2023年5月 1日 Posted in
中野note

↑想像していたよりデブちんで可愛らしい体格! アンキロサウルス
本来であれば、今日は昨晩のワークショップのレポートをする日です。
が、昨日のお昼に観に行ったショーに大興奮したので、
その話題を先に紹介します。『愛の乞食』最終回は明日にしましょう。
もともと、東横線に乗りながら『恐竜ライブ ディノサファリ』の
中吊り広告を発見しました。何がソソると言って、
"動くトゲトゲ戦車"鎧竜アンキロサウルス初登場!と銘打ってあります。
そして、当のアンキロサウルスの姿がシークレットになっていました。
アンキロサウルス・・・
私は恐竜に興味がありませんでした。
多くの子どもたちが恐竜を好きらしいのですが、
小さい頃から全く興味がない。
ところが、息子の真義(さねよし)は恐竜が好きなのです。
そして、好きになりたての頃、数ある恐竜フィギュアの中から
彼が選んだのが、今回のショーのスペシャルとして紹介されている
アンキロサウルスでした。
初めて恐竜フィギュアを買ってやろうとした時、
もっと売れ線のティラノサウルスやトリケラトプスでなく、
アンキロサウルスを選んだ息子をどうかと思いました。
トゲトゲしているし、格好もずんぐりしてシャープではない。
けれども、初めて観に行ったこの恐竜ショーでは、
アンキロサウルスは実に見事にエースとして登場し、
気は優しくて力持ち、という振る舞いを見事に体現しました。
尻尾の先に付いている妙な膨らみは、
実は敵に対しハンマーの役割を果たし、大変な威力なのだそうです。
感心!
ショー全体としても、シンプルな空間で魅せながら、
恐竜たちの造形と動きが実にシャープに再現され、
躍動する姿にはとにかく見応えがありました。
私の人生で、初めて恐竜に興味を覚えました。
来年もまた新種を加えて新しい展開があるらしい。
あの恐竜の造形。あの動きの面白さ。気になる。

2023年4月28日 Posted in
中野note
↑5〜9月はこの単行本に集中!
今度の日曜日、『愛の乞食』本読みが完結します。
「愛の乞食』が終わったら、5月からは『二都物語』に取り組みます。
『二都物語』こそは、唐さんにとってエポックな、
伝説的な演目です。その初演を観た人は誰れもが冒頭シーンに
度肝を抜かれたと言い、大久保鷹や李麗仙がすごかったという。
一方で、じゃ、どんな話だったのかというと、
よく思い出せない人がほとんど全員という謎めいた演目でもあります。
話を思い出せなくったって、すごいものはすごい。
いや、話を思い出せないのにすごいからこそ、ホントにすごい!
とも云えます。
前にも書いたことがありますが、
『二都物語』こそは、私が唐さんに上演を止められた二演目の
うちの一つです。もう一つは、韓国で『泥人魚』をやろうとして
断られました。
『二都物語』については、「あれは李(麗仙)のものだよ」
というのが理由ですが、著作権とか、筆を動かしたのは自分とか
そういうものを超えてインスパイアされた作品という仁義が
そう言わせたのでしょう。『泥人魚』の場合も、
「あれは唐組のものだ」と。
秋に『鐵假面』を上演します。
当然、『二都物語』が終わったら上演に合わせて『鐵假面』を
題材にオンラインWSをします。
大ヒット作というだけでなく、『鐵假面』の前段という側面からも
『二都物語』を読みます。一冊の単行本に収まった二本の理想上演が
皆さんの脳内で立ち上がります。
2023年4月27日 Posted in
中野note
ミミがブッシュ・シアターのエクゼクティブ・ダイレクターに!
今日はロンドンから嬉しいニュースが届きました。
去年、The Albanyでいつも自分をサポートしてくれた
ボスで相棒のミミが、Bush Theatre という高名な実験劇場の
エクゼクティブ・ダイレクターに就任することが決まったそうです。
https://www.bushtheatre.co.uk/bushgreen/introducing-our-new-executive-director-mimi-findlay/
これはもう、掛け値なしの快挙であり、カッコ良いことです。
ミミはナショナル・シアターで長いこと働いていたそうです。
いわば古典と現代劇の保守本流です。
それからThe Albanyで地域の多様性を表現に変える
コミュニティワークに取り組みました。
そして、ブッシュ・シアター。
ここは私も観にいきました。
さほど大きくはありませんが、ロンドンでは実験的な演劇をすることで
有名な劇場です。私はここで、3人の黒人青年がフットサルをやりながら
演じる会話劇を観ました。機敏な劇場、そういう感じがしました。
ミミのこのキャリアの積み方は相当にカッコ良い。
演劇の基礎を働きながら学んで地域貢献に従事し、
そのあとは実験的な劇場を取り仕切るようになるわけです。
実に軽やかで、"人間"に根差したステップアップをしています。
30代後半の小柄な黒人女性であるミミは明らかに優秀です。
そんな彼女が、当たり前のように劇の本流と地域貢献を併せ持つ
存在として頭角を表そうとしているのに、思わず喝采してしまいます。
すごいぞ、ミミ!!!
また、今日はドガドガプラスを観に行くことができました。
コロナの影響で何度も中止の憂き目に遭ったことも知っていましたし、
望月さんに並々ならぬ想いがこちらにも伝播する内容でした。
実際、今回から始まったシリーズは問題の多いAV新法に触発されたもので、
アダルトビデオ黎明期の真っ只中を生きた望月六郎のキャリアが
縦横に活きた完全新作でした。そういう業界の実態を詳らかにされる
だけで、大きな価値と愉しみがあります。
加えて、独特のリズムを持った面白いキャストが揃っています。
特に始まってから1時間半はストーリー展開よりも個々のエピソードの
応酬で、ひたすら個人技で見せていく軽快な無意味さを心地よく
味わいました。後半30分は思弁的になって難しくもありますが、
これはあくまで第一作であり、さらにシリーズが続くことを
予感させて終わります。見知った役者、初めて見る役者、
それぞれに楽しく、久々に観られて本当に良かったと思わせる内容でした。
2023年4月25日 Posted in
中野note
↑あなたはジャギさんです!
『愛の乞食』に登場するミドリのおばさんこと元海賊の尼蔵(あまぞう)。
芝居に登場する3人組海賊の兄貴分である彼はなかなか魅力的な悪党です。
彼の名前、尼蔵は明らかに尼港事件の「尼」から取られたネーミングです。
初演時には麿赤兒(当時:赤児)さんが演じて、冒頭に公衆便所で、
小便器に向かって吐いている後ろ姿だけで、それはもう相当な
気持ち悪さだったと聞きます。これは実際に舞台を見たという人の証言。
当時の状況劇場は評判の劇団とはいえ、本格的に観客が押し寄せた
1972年『二都物語』からだそうなので、なかなかレアな体験といえます。
劇の中で、尼蔵とシルバーは敵対する存在です。
不良兵士たちのリーダーである尼蔵と、
兵士たちの不品行を取り締まる立場の憲兵シルバー。
同じ日本軍兵士でありながら、その中に悪人と善人がいる。
この構図を踏まえないと、この芝居はよく分かりません。
なんだか誰も彼もが悪党に見えてしまうと、話についていけなくなる。
ここを押さえれば、実はシルバーは海賊ではないことがわかります。
彼は、尼蔵たちによって濡れ衣を着せられ、海賊であるとの
風評をたてられた被害者なのです。
他人のせいにして悪さをする男といえば、
私の世代の男性にとっては、冒頭に挙げた彼のことを思い出します。
『北斗の拳』に登場する北斗四兄弟の中で、
ラオウ、トキに次ぐ3番目の男としてジャギは登場します。
主人公ケンシロウは末弟。末弟が後継者となったことで起こる
兄弟間の闘争が、第一部後半の主題でした。
3人の兄たちの中で最初に登場するジャギは
兄弟の中で抜きん出て弱く、また卑劣な男です。
かつてケンシロウに試合で敗れたことを恨みに持った彼は、
ケンシロウのトレードマークである7つの傷をわざと胸につくり、
各地で悪行三昧をします。
そして決め台詞「おれの名をいってみろ」と被害者たちに迫り、
「ケンシロウ=悪」というレッテルを各地で拡めるのです。
まさに尼蔵のようではありませんか。
原作者の武論尊先生が唐さんの『愛の乞食』を観ていたかどうかは
わかりません。が、私は『愛の乞食』を読みながら、
「ア、アニメで見たジャギみたい」といつもこの愛すべき悪党を
思い出すのです。
2023年4月21日 Posted in
中野note
↑『煉夢術』と小説版『ガラスの使徒』。それぞれ単行本になっています
今日は、昨日書いた演奏会の本番でした。
オルガン・プロムナード・コンサートというのはいつも
昼間のランチタイムに行っているから、今回のも12:10開演。
私のようなテント者、芝居者にはなかなか不慣れな時間だと
思いながら本番にあたりました。
400回記念ということで豪華メンバーによる出演でした。
なにしろ、4人のうちの3人が日本オルガニスト協会の会長経験者
(1人は現役の方)であり、一人は若手のホープである県民ホールの
アドバイザーなので、これで入場料500円とは大盤振る舞いでした。
曲の違いもさることながら演奏家によって鳴り方が違うものだと
聴き比べながら舞台裏で過ごすことができたことが贅沢でした。
ところで、昨日はオルガンと唐さんの関わりについて、
『煉夢術-白夜の修辞学或は難破船の舵をどうするか-』を紹介しました。
が、もう一本、大事な作品があるのを忘れていました。
それは、2005年に封切られた映画『ガラスの使徒(つかい)』です。
唐さんがシナリオと主演を行い、金守珍さんが監督した作品です。
あの映画では、巨大な望遠鏡を作るための"レンズ"が重要な役割を
果たします。唐さんはレンズ職人に扮し、主人公サイドの
経済的ピンチを救うために、とびきりのレンズを研磨します。
しかし、そのレンズ磨きには特殊な砂が必要でした。
その砂は、今はダムの底に沈んだ小学校の校庭にだけあり、
ヒロインはそれを取りに行きます。そして、小学校の校舎に、
同じく水底に沈んだオルガンを発見する。水中でオルガンを弾くと、
一音一音が大きな気泡となり、遥か上方の湖面を目指して
踊るように舞い上がっていく、というシーンが描かれます。
いわば、主人公たちが絶体絶命の危機を乗り越えるための
反撃の狼煙を歌い上げるのが、湖底のオルガンの役割でした。
面白いことに、この水底のオルガンのイメージは、
65年に書かれた『煉夢術』にすでに現れています。
あの劇にも、海底からオルガンの音が
空気の塊となって浮上していく、というせりふがある。
20代の頃に得た着想が40年を経ても揺るがない。
唐さんの自らのアイディアに対するこだわりを、オルガンが登場する
二つの作品を通じて味わうことができます。
2023年4月20日 Posted in
中野note
↑4/21(金)オルガン・プロムナード・コンサート
400回記念スペシャルのチラシ。
今日はこの公演の準備をして過ごしました。
今年に入って勤め始めた神奈川県民ホールの小ホールには
ドイツ製のオルガンがあって、このコンサートは月に約1回弱の
ペースで行われます。この習慣は開館した1975年以来、
48年に渡って続けられてきたもので、それが明日で400回。
この定例シリーズ以外にもオルガンに関わる公演はいくつもあって
かなり驚異のペースといえます。他面、オルガンを持つということは
日常的に演奏家に弾いてもらってコンディションを維持しなければ
ならない。巨大ですが繊細な楽器でもあるようです。
そして、せっかく弾いてもらうならばお客さんにも聴いてもらいたい。
という思いが重なって400回。明日は特に豪華で、通常は1人の演奏家に
よるコンサートなのですが、4人の演奏家が揃い踏みします。
そのようなわけで、急速にオルガンに親しんでいます。
急に身近になったオルガンのある日常です。
思えば、去年たまたまイギリスにいたことはかなり役に立っています。
かなり多くのバリエーションの教会を見て、コラールにも参加したので
期せずしてキリスト教と結びついたオルガンの姿に
たくさん接してきました。
唐十郎作品の中でオルガンが登場する演目といえば、
『煉夢術-白夜の修辞学或は難破船の舵をどうするか-』です。
時計修繕を仕事にする青年が彷徨い込んだ街には高い塔があり、
そこからオルガンの音が鳴り響いている。そして実は
オルガンが聴こえる時に、この街では誰かが死んでいく、
という設定です。・・・かなり暗い。
唐さんが書いた3本目の台本です。
唐ゼミ☆では2005年初夏にこれに取り組みましたが、
その陰鬱なところ、思弁的なせりふがあまり会話にならず
モノローグ気味に展開するところに、かなり若書きの印象を受けました。
劇作を始めたばかりの唐さんが役者を得て彼らを活かすための
書き方を開発し、喜劇的に弾けまでの習作という感じです。
あと、唐さんだけでなく1960年代の日本の青年たちの、
ヨーロッパに対する強烈な憧れを感じる劇でもあります。
オルガンに少しずつ詳しくなり、響きを身近に感じ始めた今だったら、
だいぶ違った風に上演できるようにも思います。
角川の文庫にもなっているので、ちょっと読み返してみよう。
2023年4月19日 Posted in
中野note

↑軍歌活用ランキングNo. 1はこの場面でしょう
『唐版 風の又三郎』唐ゼミ☆2021年公演より(写真:伏見行介)
軍歌を愛好しているというと、戦後民主主義社会では波紋を呼びます。
が、唐十郎作品の中にも軍歌は登場します。
一番見事に軍歌が使われた例は『唐版 風の又三郎』で活躍した
『荒鷲の歌』です。あの、帝国探偵社の面々がふんどし姿で跳び回り、
♪ぶんぶん荒鷲、ぶんと跳ぶぞ〜と歌い上げる場面は、
誰がどうやっても盛り上がり、爆笑に包まれる鉄板シーンです。
いま読んでいる『愛の乞食』にも軍歌は登場します。
『独立守備隊の歌』『満鉄の歌』など、一瞬にして満州の空気を
充満させる効果が絶大です。
私が聞いたところでは、初期の紅テントにおいて、
芝居がはねた後の車座の宴会では、どんぶりを箸で
チンチン叩きながら、たびたび軍歌が歌われたそうです。
いわば座興の盛り上げソング。
初めてこれを聞いた時は驚きました。
初期状況劇場といえば進歩的な人たちの集まりであったはず。
どちらかといえば反体制的、左翼的な傾向が強い面々にあって、
彼らが軍歌を歌い上げている光景は想像し難い。
けれど、澁澤龍彦さんなども軍歌で盛り上がるクチらしいのです。
こうした事実を面白いと思います。
歌に込められた思想信条は別にして、小さい頃から高揚した歌に
身体が勝手に反応してしまう。そういうこともまた、
歌が持つ強い側面だということです。
小さい頃に観ていたアニメソングみたいなものか、とも想像します。
刷り込みが効いているので、『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』や
『北斗の拳』の主題歌に、思わず体が反応してしまう。
自分はそういう世代です。気づけば全て少年ジャンプ系。
2023年4月18日 Posted in
中野note

↑唐ゼミ☆2010年公演より。右が重村大介この時も兵2は彼のもの
(写真は伏見行介)
日曜に読んだ『愛の乞食』二幕一場について、
私たち唐ゼミ☆劇団員が素通りできないエピソードがあります。
それは、今は唐組で頑張っている元団員の重村大介について。
彼が横浜国大に入学してきた時、周囲は一様に驚きました。
よく「オレって人とは違うんだよね」とか、「いや、オレこそが」などと
自意識過剰な青年世代は個性的であることを競う合う風潮があります。
が、重村こそはダントツの、飛び抜けて変わり者でした。
あの喋り方、オドオドとして、その実けっこう自信満々な物腰。
4年間の浪人生活を終えて大学生となった彼は、
当時、皆に「ヨン様」と呼ばれていました。
そして、彼が大学の講座で『愛の乞食』により初舞台を踏んだ時、
それを観た学生たちは度肝を抜かれました。
・・・とにかく、何を言っているのかよくわからない。
決して唐さんのせりふが難解だからではなく、
重村のあの喋り方によって、日本語がまったく聞き取れない。
彼は顔を真っ赤にして目をつぶり、大音声で叫び続けました。
初めて登場したのはガードマンの役、長ぜりふは散々でしたが
しかし、一人二役を兼ねて2回目に登場した時、奇跡が起きました。
「兵2」です。兵2が登場するのは兵1に次いで二番目。
兵1がしたやり取り、言ったせりふを兵2もそっくり繰り返してやる、
そういう仕掛けのシーンで、重村は爆発しました。
どんな筋立て、やり取りかはあらかじめ兵1がやってくれているので、
観客は事前に何が行われるかを知ることができました。
その上で兵2に扮した重村は、他の誰にも真似できない行き方を突き進む。
例えば、「キャラメルはありません」という何でもないせりふ。
重村にかかると「ぎゃらべりばせん!」という叫びに変化しました。
重村がひとこと発する度に、狭い研究室に詰め込まれた30人が湧き、
部屋が揺れました。思えば、あの時の演出は唐さんの跡を継いで
大学に来てくださった久保井さん。
・・・あの頃に比べると、重村のせりふはずいぶん分かりやすくなりました。
少し寂しいような気もしますが、あの時は同じやり取りを繰り返す
兵2だからこそ威力を持ったのです。
『透明人間』での素晴らしいせりふ回しに期待しましょう。
2023年4月14日 Posted in
中野note
↑坂本小学校跡地の角から撮ったパノラマ写真。右手が言問通り
先日、台東区に行ったので、恐る恐る入谷坂本町に寄りました。
渡英前に2週にわたって大掃除に加わって以来、約15ヶ月ぶりです。
唐さんの卒業した坂本小学校は一面平らなコンクリートになっていました。
もともと校庭だった場所はフェンスで囲われ、
ずっとそうであったようにサッカーのクラブ活動が継続されていました。
が、他はガランとして、変わり果てた平らな土地が広がっていました。
ロンドンから、facebookでの投稿を見ていましたから、
小学校が解体されるプロセスも知っていたつもりですが、
やはり感覚的にはあまりに一足飛びで、愕然としました。
立体的にあったものが、こうまでさっぱりしてしまった。
坂本小学校をはじめ周辺の小学校は、
1923年に起きた関東大震災後に建てられた建物がいくつもあります。
そのために頑強につくられていて、当時の日本の勢いを反映し、
さまざまな意匠も凝らされていました。
太平洋戦争中は福島に疎開していた唐さんは
戦後に下谷万年町に戻り、この場所にあった坂本小に通いました。
相当に内気な少年だったらしいのですが、それが、担任の滝沢先生に
朗読をするよう命じられ、これをうまくやってのけて褒められたところから、
芸能開眼したとのことでした。
当時、滝沢先生は校舎に住んでいたそうです。
それが戦後の混乱期の日常なことなのか、宿直的なことなのか
分かりませんが、夕方、校舎の窓から下校する子どもたちを見送る
滝沢先生を、唐さんはよく憶えているそうです。
それに影響されて、自分もまた坂本小学校を訪ねると、
滝沢先生はどのあたりにいたのだろうか、と想像を膨らませたものです。
ああ、あの校庭と校舎を使って『黄金バット〜幻想教師出現〜』を
上演する機会は永遠に失われてしまったのだと実感しました。
これまでの間に、もっとやっておくべきことがあったのではないかと、
後悔が募ります。
2023年4月13日 Posted in
中野note
↑東京湾入り口にある観音崎はひっきりなしにタンカーが往きます
今日は三浦半島に行きました。
いろいろな場所がありますが、これまでに一番気に入って、
折に触れて訪ねてきたのは横須賀美術館のある観音崎という場所です。
まだ横浜に来て数年の大学生時代、
アルバイトしていたコンビニの店長は、私をいろんな場所に車で
連れ出してくれました。時には深夜のアルバイトを終えて
朝6:00から遊びに行き、朝食を食べさせてもらったこともあります。
その度に、神奈川にはこんな場所があるんだと教わりました。
観音崎もそのひとつで、だから、横浜に来てから2年ほどで、
私はあの場所に親しむようになりました。
2007年3月に初めて『続ジョン・シルバー』に挑んだ時、
「海の見える喫茶店ヴェロニカ」というト書きに悩みました。
あの公演は新宿梁山泊のアトリエ芝居砦・満天星が会場でしたから、
東中野の地下空間にどうやって海を持ち込むかを思案しました。
結果、観音崎に行って映像を撮りました。
そして、深夜に横浜国大のサークル棟にまっさらなパネルを
一面に立て込み、撮影した海岸線から海の映像をプロジェクションしながら
描いたのです。劇団員総出でやった、楽しい作業でした。
喫茶店ヴェロニカはまるでお風呂屋さんのタイル画のように、
海の絵がすべての壁面に描かれたカフェになりました。
芝居が始まる前、会場時間中はそこに撮影した映像を重ねると、
不思議な風合いが出て面白い効果を得られました。
観に来てくれた状況劇場出身の田村泰二郎さんが
「アンゲロプロスの映画みたいだったね」と言ってくれました。
自分にとって望外の賞賛でした。
だから自分の中で、
三浦半島はまっすぐに『ジョン・シルバー』シリーズに繋がっています。
2023年4月12日 Posted in
中野note
↑砂といえば、去年の初夏はThe Albanyで "Sun and Sea" という
インスタレーションオペラを招聘した。砂の仕込みが大変だった
昨日からしきりと、周囲が黄砂のことを話題にし始めました。
「明日、明後日はひどいことになるらしいよ」とか、
「外に洗濯物は干せないね」とか。
今朝、ベイブリッジを渡ったら「風速14メートル」という表示が出ていて、
この大風に乗せられて、砂は西から東へ、遥かゴビ砂漠から日本へ
やってくるのだと実感しました。
目下、本読みWSで取り組んでいる『愛の乞食』には、
愛すべきキャラクター、チェ・チェ・チェ・オケラの
「〽万里の長城から小便すれば、ゴビの砂漠に虹が立つ」
という気楽な鼻歌があって、これを思い出したりもしました。
しかし、車がザラザラになったりして、特に九州や西日本の人たちにとっては
気が気ではないでしょう。
黄砂は日本だけかといえばそうでもなく、去年に暮らしたロンドンで、
大家さんのダイアンから、春にやってくる砂について聞いたのを思い出しました。
ダイアンの家は頑強で分厚いレンガづくりで、そのために冬は暖かく、
夏でも涼しさをキープしています。そのために気温が40度に迫った
異常気象の盛夏ですら、冷房なしで過ごすことができました。
窓は二重窓。
その二重窓に、春になると砂がつく。
キレイ好きなダイアンは毎週水曜にやってくるハウスキーパーの
ロミオに頼んでいつも窓を外から拭いてもらっていました。
その砂はどこから来るかといえば、北アフリカのモロッコからやってくる
のだと聞きました。日本では西から東に吹く風が、イギリスには、
南東から北西の吹くのだと妙に感心したりして。
It's quite romantic that the sand is brought all the way from Morocco!
と伝えたらダイアンは笑っていました。
エリアス・カネッティのモロッコはロマンティック、
チェ・チェ・チェ・オケラのゴビ砂漠は愛嬌いっぱい。
二つの砂は自分にとってそんな感じです。
2023年4月12日 Posted in
中野note
↑残念ながら、こっちの方が断然良かったです!
ずいぶん前に江戸川乱歩版『鐡假面』を入手したと書きました
なにせ昭和20代の本で陽灼けしていたが、読む分には何も問題もなく、
むしろすべての漢字に振り仮名がふってあるから読みやすい。
児童用の本につき文字も大きめでした。
しかし、何かが読みにくい。
ボアゴベの原作は、最後まで苦味ばしった大人の魅力がつきまといます。
虚無感と言ってもいい。悪政を敷く大臣を倒すべく青年たちを率いた
主人公モーリスが投獄され、残された恋人、仲間たちが数十年に渡って
彼を救い出そうと試みるも、ついにその願いは叶わず、
やがて歳をとり死んでゆく話です。
獄中でモーリスがかぶせられたのが鉄仮面であり、
モーリスを中心とした若者たちの夢も希望も、時間さえも、
息苦しい鉄仮面が無惨に覆い尽くしてしまうところに味わいがあったわけです。
ところが、乱歩版は違う。
全てがミステリー。全てが冒険譚。要するに怪人二十面相のノリなのです。
時代がかった口調で、それ自体は慣れてくれば読みにくくはないのですが、
全体にB級感、軽薄さが漂う。
驚いたのは大きなプロットを丸ごと無視しているところで、
時のフランス王の双子が秘密裏に幽閉されており、彼が国王と瓜二つの
顔を見られてはいけないために鉄仮面を被せられている、という設定が
丸ごと無し。主人公モーリスを救い出そうとした一党が、この王の双子を
助け出してしまうという運命の皮肉が思い切りパスされていました。
その代わり、なんだか怪しげなドクロ顔の男が登場したり、
別の姿に化けていたあの男は実は・・・、と言った具合に、
明智小五郎がいつ登場してもおかしくない言い回しばかり。
最終的に、あの原作が持つ無常感、そこからくる抒情性はどこへやら、
いきなりとってつけたようなハッピーエンドで、
主人公モーリスは仲間たちの思惑とはぜんぜん別のところで
勝手に脱獄を成功させ、老体ではあるけれど、
悪徳大臣を倒す他国の抵抗勢力に将として加わっている、
という具合に結ばれます。どうも白々しい。
特に最後の方の展開はグダグダで、取ってつけた感が半端ない。
なんだかんだと時間をかけて読んできて、ラスト数ページの結びに
思わず「・・・そりゃないぜ」と呟いてしいました。
唐さんが幼少期にこれを読んだことは間違い無いでしょうが、
読後の感触としては原作にかなり劣ります。
少なくとも私にとっては。
・・・というわけで、同じ児童文学化されたものだったら、
冒頭に写真を上げた、さとうまきこさんのバージョンが格調高く、
明らかに原作の持ち味を生かしています。
口直しに読んでみようと久々に引っ張り出しました。
唐さんが何を読んでいたかがわかったというのは収穫でしたが、
乱歩版は内容的には問題あり。まあ、こういうこともあります。
2023年4月 7日 Posted in
中野note
↑ヤング・ガン『愛の乞食』公演チラシに掲載されていた広告欄が気になる!
昨日、紹介した唐組ヤング・ガン公演『愛の乞食』のチラシを
しげしげと眺めていると、さらなる発見がありました。
唐さんの書籍の広告が並んでいるなかに、
「唐十郎からあなたへ・・・」の意味深な文字。
さらに「4つの感動をもう一度!」という具合に、
唐組が初期に上演した作品についてビデオ販売が行われています。
『ジャガーの眼』(110分)
『電子城』(120分)
『セルロイドの乳首』(125分)
『透明人間』(95分)
・・・知らなかった。
自分は恥ずかしながら、このような映像が市販されていたことを
知りませんでした。昨日に紹介した年表から考えると、1989-90年に
公演した4本を収録して販売したということになります。
この情報を得て納得がいったのですが、
だから、9年前からYouTubeに上げられている唐組版『ジャガーの眼』は
おそらくこのビデオを違法にアップしたものだということです。
それも分かってきました。
この4本だと、やっぱり観たいのが『透明人間』初年ですね。
パッとネットの中古市場を見たところ見当たりませんが、
これは今後、いつも頭に置いて探したいもののひとつ。
Kさんが送ってくださったチラシの効能がここにもありました。
という報告です。再度、感謝!!
2023年4月 6日 Posted in
中野note
これは凄いぞ!
先日、3/28(火)の投稿「誰か教えて!〜ヤングガン公演」に対し、
貴重な、あまりにも貴重な第一級の資料とお手紙が寄せられました。
送ってくださったのは、おそらく長年の唐十郎ファンであり、
私たち劇団唐ゼミ☆の常連でもあるKさん。
中には、私が気になっていたヤング・ガン公演『愛の乞食』のチラシが
入っており、Kさん自らが丁寧に整理してくださった手書き年表も
付いていました。
整理すると、下町唐座〜劇団唐組の黎明期は次の公演があったようです。
下町唐座
1988年春 『さすらいのジェニー』
1988年秋 『少女都市からの呼び声』
劇団唐組
1989年春 『電子城 背中だけの騎士』
1989年秋 『ジャガーの眼』
1990年春 『セルロイドの乳首』
1990年秋 『透明人間』
1991年春 『電子城Ⅱ フェロモンの呪縛』
1991年秋 『電子城Ⅱ フェロモンの呪縛(再演)』+ヤング・元公演『愛の乞食』
1992年春 『ビンローの封印』
という具合です。
Kさんの説明で、かなり基本的なこともわかりました。
例えば、唐さんのWikipediaで作品リストを見てみると、
それが初演のみの記述であることがわかります。
下町唐座の『少女都市からの呼び声』再演。
唐組での『ジャガーの眼』再演と『電子城Ⅱ』の春秋連続公演。
もちろん、ヤング・ガン『愛の乞食』はウィキ情報からは抜け落ちています。
このあたりの流れがよく分かったのは大きな収穫です。
これら再演物の多さは過渡期にあった唐さんの試行錯誤を
如実に想像させ、90年代半ばのカンテン堂シリーズや
2003年の『泥人魚』演劇賞総ナメ=唐組スタイルの完成の重みを
より深く、熱く感じさせます。
一方、私の仮説は崩れました。
作品内容から言って、ヤング・ガン公演『愛の乞食』→『透明人間』執筆の
流れを想像していましたが、事実はその順番に反していました。
一方、Kさんからは、1987年に李麗仙さん演出の秘演会で『愛の乞食』が
取り上げられたという情報も寄せられました。状況劇場末期のことです。
これらをどう考えたら良いのか、本読みワークショップを進めながら
同時に思案していきます。
Kさん、ありがとうございます!
2023年4月 5日 Posted in
中野note
↑「カプカプひかりが丘×新井一座 人材育成講座」実施中
先週末、2022年度末〜2023年度頭にかけて、
これまで準備してきたイベントを二つ実施しました。今日はその報告です。
一つは、「カプカプひかりが丘×新井一座 人材育成講座」です。
実施は3/30(木)。横浜市旭区の福祉事業所カプカプひかりが丘と
体奏家の新井英夫さんを中心とした一座が集まって行うワークショップの手法を
学ぶ受講生たちが集まり、一日を過ごしました。
受講生たちは皆、腕に覚えのある人がたくさんいて、
そのことも豪華な集まりなのですが、それぞれが新井一座に影響を受けた
アイディアを試すなど、主体性の強い回となりました。
終了後は車座になって2時間半くらい語り明かしましたが話は尽きず
きっと2023年度も続けていこう!と言い合って別れました。
ロンドンにいた2022年6月頃に持ち上がった企画でしたが、
カプカプの日常、新井一座の手腕、受講生してくれた皆さんとの関係が
スタートしたこと、どれをとっても絶大な実りを自分にもたらしてくれました。
あと二年は継続して、受講生の皆さんがきっちり活躍し始め、
他の福祉施設でもこういった活動が行われる端緒まで持っていきたい。
明確な結果を目指して逆算しながら事を進めていくつもりです。
ワークショップやって良かった!ではなく、実際に各地で受講生が
福祉×舞台芸術の力で、出会った人たちの日常を変えていく状況が
続いていくことが目標です。続く!
二つ目は、4/1(土)にKAAT1階のアトリウムと県民ホール前庭で開催した
「クラウンパレード 2023 in KANAGAWA」。
これはクラウン(=道化師)たちの表現の盛んなウクライナのパフォーマーを
支援するために日本のクラウンたちが有志で集まって開催したもので、
1月末に相談が持ちかけられて以来、突貫で進めてきたものでした。
元プロモーターでサーカスや興行師に関する優れた著作の多い
大島幹雄さんの仕切りで17組ものメンバーが集まりましたが、
熟練の技術とアイディア満載の芸が披露されるのを愉しみました。
特に晴天に恵まれて行った県民ホール前庭でのライブは、
会場がイベント用の一等地であることを教えてくれた機会ともなりました。
今後に向けて協働していくパフォーマーとの出会い、新たな会場の発見
という意味でも多くを得た一日でした。
以上2つ。充実!!
2023年4月 4日 Posted in
中野note
↑初演でチェ・チェ・チェ・オケラを演じたのは唐さん本人です
一昨日のワークショップで参加者の一人からとても良いアイディアを聞きました。
これまでに何度も『愛の乞食』を読んだり、一度は上演もしましたが、
「チェ・チェ・チェ・オケラ」というおもしろいキャラクターの由来が
なんなのか分からずにきました。
ところが、参加者のKさんが「チェ・ゲバラではないですか?」
とコメントをくれたのです。1970年初演という時代的にも、
これはかなり説得力があります。「チェ」といえば誰よりも「ゲバラ」。
「ゲバラ」と「オケラ」という語感も似ていますから、これはまず
間違い無いでしょう。
言われてみれば何で今まで気づかなかったんだろう?
とも思いますが、これがみんなで話し合いながら台本を読み進める
ワークショップの効能です。Kさん、ありがとうございます。
最近ではあまりそういう表現をしなくなっているように思いますが、
「オケラ」とは、財布の中が空っぽ、持っているお金が無いことです。
10代の頃にアニメで見たりマンガで読んでいた『美味しんぼ』
という漫画の主人公・山岡士郎は、いつも給料日前になると
「給料日前、オケラ・・・・」と言って同僚をはじめとした周囲に
おごってもらったりしていました。
バブル期の一部上場企業(新聞社)の社員にして見事なその日暮らし
だと今にして思いますが、それ以外に会話の中で「オケラ・・・」という
せりふを聞いたことはありません。自分も言ったことがない。
しかし、なかなか愉快な、味わい深い日本語です。
『愛の乞食』後半になると、チェ・チェ・チェ・オケラが狂言回しの役割を
コミカルに務めます。演者がおもしろく喋る、私の好きなシーンです。
2023年4月 1日 Posted in
中野note
↑明日、KAATの1階と県民ホールの広場でこういう催しをします
エイプリルフールにウクライナの芸人さんたちを支援しようという取り組みです
今日は3/31。年度末に伴うさまざまなことがありました。
まず、事務所内の引っ越し。私はKAAT&県民ホール館長の秘書もやって
いますが、今まで館長室だったところを引っ越すことになりました。
それで膨大な本を片付け始めたのですが、これが大量。そして重い。
午後に始めて4時間、ひとりで四苦八苦しましたが、
途中から津内口や小野寺が手伝いに来てくれてスピードとパワーが
著しくアップし、その3時間後には終了することができました。
まだやり残したことは多いけれど、格好はつきました。
また、自分にとって関わりの深い人たちが退職しました。
KAATの小沼知子さんは、2013年にやった『唐版 滝の白糸』を
担当してくれたプロデューサーです。
あの時、かなり無作法だった自分の教育係、という感じで
あらゆる相談に細やかに乗ってくれ、仕事の合間に個人的な話もよくして
大変に助けられました。それ以来、ずっと友情を感じてきました。
来年度からは別の劇場で活躍するそうですから、担当公演に注目していきます。
もう一人は、佐藤泰紀さん。
佐藤さんは、立ち上がったばかりの共生共創事業のシステムを整えて
くれた人でした。2018年度にこの事業を立ち上げた時、スタッフは3人でした。
ボロボロになりながらたどり着いた年度末シンポジウムの聴衆は、
確か、会場のキャパシティが300人に対し20人くらいでした。
全てがボロボロ。
そこへ、STスポット館長だった佐藤さんが現れて、
事業を支えるシステムをつくってくれました。
初めは数人でやっているのに過ぎなかったグループは、
共生共創課になり、財団内のバリアフリー対応や教育事業を吸収して
社会連携ポータル課となり、課長さんのいる8人とチームになりました。
自分はロンドンから帰ってきてから、今の自分は県民ホールの事業を
メインにしていますが、ここまできちんとした編成になったのは、
明らかに佐藤さんの確かな仕事のおかげでした。
今後、また別の職場に移って活躍するそうです。
狭い業界ですから、また会おう!と言って別れました。
小沼さんと佐藤さん、自分にとって大きな存在でした。
また、年度末ということで唐ゼミ☆で申請していた助成金の結果が発表になり、
採択の内定をもらうことができました。ホッとすると同時に、
『鐡假面』をやらなければ!という切迫した思いが込み上げてきます。
今回、第一報は『オオカミだ!』プロデューサーのテツヤさんから
もたらされました。会議をしていたらテツヤさんからLINEが届いて、
唐ゼミ☆が助成を獲得できたことを知りました。きっとテツヤさんも、
別にプロデュースしている団体の結果を見ていたのでしょう。
以前は、こういうニュースを持ち込んでくれるのは、
ネットサーフィンの鬼である室井先生でした。
ああ、先生はいないのだな、と実感したり、新たに私たちを応援してくれる
テツヤさんがありがたいな、と思ったり。
人の不在を胸にせまる中にも、確かに新たな関係性があることを実感する
感慨深い一日でした。
明日は、冒頭のポスターにあるように、クラウンたちが大集結して
芸を披露するクラウンパレードを行います。
サーカスの興行師にして研究者でもある大島幹雄さんから持ち込まれた
企画です。大島さんの著作の大ファンを自分としては、きっちり運営を
支えようと意気込んでいます。
2023年3月30日 Posted in
中野note
↑手製のアンパンマン号とおもちゃセット。これが1歳児の心をわしずかみ
年度末なのでさまざまなイベントの仕上げをしています。
ロンドンにいた時から準備してきた「カプカプひかりが丘×新井英夫一座」の
ワークショップもそのひとつ。
本当は3/1で終わるはずだったけど、
12月に予定していた回が延期になり、3月末が最終回になりました。
おかげで、春のひかりが丘団地を味わうことができた。
初めは5回のつもりが、準備のためのオンライン会議や
中止になった回をササマユウコさんがフォローしてくれた回を含めると
10回くらい集まった感じです。
すでに福祉×アートの現場で活躍している人、
これから活躍したい人、ジャンルや職分、世代もバラバラの人たちが
集まって、良い集まりでした。元締めをやったおかげで色々な知り合いが
一気に増え、視野が急激に拡がりました。
中には乳児連れで参加してくれた人もいて、
写真はアンパンマン号を椎野が作って持たせてました。
椎野は年度末の事務処理があって現場に来ることができませんでしたが、
赤ちゃんが何を与えれば喜ぶか、遠隔操作でもたちどころに当てることに
驚きました。
お母さんのワークショップ参加をサポートしようと思って自分が
子どもの相手をしようとすると泣かれましたが、
参加者のみなさんがずっと子どもの相手をするのが上手くて、参りました。
最終回だったので終わった後の話し合いは2時間半におよび、
みんなが別れを惜しみながら帰っていきました。
助成金が取れたらまたやる! そういう締めをしました。
車で人を送った後は良い気分になり、
CDを買ってから帰ろうと横浜ビブレに行きました。
妙に閑散としている店内を不思議に思いながらエスカレーターを上がると
タワーレコードにお客が一人もおらず、21:00閉店だったことを初めて
知りました。(以前、地下一階にあった時は22時だった)
閉店時間に着いた私が諦めようとすると、
「買うものが決まっているなら」と店員さんが待ってくれました。
時短のために狙っていたものを一緒に探し、見つけると、
締めるのを待たせておいたレジ打ちをしてくれ、
「ひょっとしたら止まってしまっているかもしれないから」
と、その人がエスカレーターまで送ってくれました。
こうした"個人の裁量"的な部分は、現在では絶えてないことです。
(ロンドンではたくさんあったな)
こうしたことをネットで書くと、むしろ「我も我も」とワガママ客が
訪れる可能性を生み、店をあげて「やはり閉店時間きっかりに終わりましょう」
などとかえってルール徹底するような世の中でもあります。
このブログは社会に対して大した影響力が無いだろうから書きました。
やっぱり人間的な対応を受けて、希望を持ったからです。
明日は職場の掃除。良い年度末です。
2023年3月29日 Posted in
中野note
夜の散歩中。
『鐡假面』探究のために公衆トイレを求めてウロウロしながら、
初めて池上本門寺に行きました。
階段を登ると立ちはだかる仁王像の乳首の造形に感心。
さらに歩くと約400年前に建てられた五重塔があり、
若者たちが連れ立って写真撮影をしていました。
そのたもとには、彼の力道山の墓を案内する看板あり。
この場所にお墓があるとはとんと知りませんでした。
去年亡くなったアントニオ猪木さんも、
きっと何度もここに足を運んだんだろうな、
と思いつつ、うねうねと続く墓地の隙間の道を下って帰途につきました。
公衆トイレは無かったけれど夜桜の花見を一人でしました。
自分は花鳥風月に疎く、今の時期だからといって花見をしようとは
思わないのですが、結果的にはベストな場所に躍り出てしまった。
なかなか良い夜の徘徊でした。柄になく雅やかな気分です。
今日は短め!
2023年3月28日 Posted in
中野note
↑見よ。70年代、唐さんのヤングガンぶりを!
唐組の春公演の仮チラシを手に入れました。演目は『透明人間』。
『透明人間』こそは『秘密の花園』と並ぶ唐組の当たり狂言です。
いやむしろ、本多劇場の柿落とし公演として書かれた『秘密の花園』より、
そもそもが唐組初演の『透明人間』こそ、ザ・唐組の演目と言える!
聞くところによれば、
『透明人間』は1990年に初演された後、90年代半ば過ぎに
現在の座長代行である久保井研さんによって再発見されたそうです。
久保井さんは夏に行う内輪向けの新人発表のために『透明人間』を
取り上げ、これが好評を博す。結果、水戸芸術館で(テントでなく劇場内)、
1998年2月に二日間のみの上演につながり、2001年秋に
新宿西口に『水中花』というタイトルでの上演・・・・・という具合に
再演を重ねていったそうです。
私が観たのは大学3年時に上演されたこの『水中花』からで、
初見で、なるほどこれは傑作だと痺れました。
その後、シアターコクーンで南河内万歳一座の内藤裕敬さんが
演出した『調教師』も含め、その再演を見逃さずに過ごしてきています。
さて、「ヤングガン公演」の話題です。
目下、唐ゼミ☆本読みWSで取り組んでいる『愛の乞食』こそ、
唐組の初期に「ヤングガン(=若い銃)公演」と銘打たれ、
劇団に集まった若手を登用して取り上げられた演目でした。
私の想像では、このヤングガン公演『愛の乞食』の後に
『透明人間』は書かれ、だからこそこの二作品は大変に似ています。
どう似ているかはまた今度お話ししますが、
自分にとってどうもはっきりしないのは、
ヤングガン公演および初期唐組の活動全般です。
下町唐座を経て、唐組が発足する。
『電子城』があるか思えば、YouTubeに上がっている『ジャガーの眼』を
大久保鷹さんも出演して上演した形跡があるし、ヤングガン公演もある。
このあたり、自分はどうも整理しきれていません。
せっかくなので1990年前後の唐組の活動について整理したいと考えてみます。
久保井さんにお願いして飲み屋でご教示願うのが良いかもしれませんが、
案外、関わってきた本人も憶えていないかも知れません。
ヤングガン公演を観たという人がいたら、誰か教えてください!
2023年3月24日 Posted in
中野note
↑外装、照明が洗練された現代の駄菓子屋「ヴィルトゥ・サトウ」
横浜の片倉町、TSUTAYAやとんぱた亭の近くにあります
最近、駄菓子屋に行きました。
人生で最後に駄菓子屋に行ったのはいつかは思い出せませんが、
中学生の時以来だと思います。
ここは、『オオカミだ!』公演を一緒につくった
プロデューサー・テツヤの奥さんがやっているお店で、
横浜市の片倉町にある駄菓子屋です。
名前は「Virtu Sato(ヴィルトゥ・サトウ)」と駄菓子屋らしからぬ
カッコよさですが、コンペイトウ10円からの買い物が出来ました。
確かに駄菓子屋です。
自分が「駄菓子屋」を発見したのは、
あれは小学校二年の時だったと記憶しています。
一年生の遠足の時、自分はまだ駄菓子屋を知りませんでした。
だから、上限200円と設定されたおやつ代を二品で使ってしまった
のです。ところが、友人に連れられて駄菓子屋を始めて訪ねた時、
"革命"が起きました。何しろ、200円もあれば延々と買い物が
できるのです。ヨーグルトとか、五円チョコとか、
カゴに山盛り選んで買えるようになりました。
メンコも買った覚えがあります。
「ヴィルトゥ・サトウ」では、娘は10円のコンペイトウを二つ買い、
息子は60円のシャボン玉製造機を買いました。
4月に小学生になる息子はすでに世の中の道理を理解し始めており、
これまで知っていた100円均一を凌ぐリーズナブルな買い物に
甚く感動していました。自分が駄菓子屋を発見した時と同じ、
「オレの持ち金でしこたま買い物ができる!」というあの喜びです。
韓国やベトナムに行った時、これだけ食べてこの安さ!
と感動した感覚まで思い出しました。ロンドンは高すぎましたが。
一個10円のコンペイトウの商売の中で、
原材料費、製造料金、輸送料金、ヴィルトゥ・サトウの利益が
どう含まれるのかは謎ですが、ともかくも駄菓子屋は目の前に
建っています。行くべし!
『オオカミだ!』のTシャツとポストカードも売っていて、
このひと月ちょっとで何点か売れたそうです。
2023年3月23日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野note
昨日から本読みワークショップが新たな演目に入りました。
『愛の乞食』です。もともと1970年に初演された本作ですが、
いくつもの掲載誌がありますので、内容に入る前に、
今日はざっとそれらを紹介しましょう。
1970年2月 文芸総合誌「海」1970年3月号に掲載

1971年11月 中央公論社より単行本『煉夢術』に掲載

1975年7月 角川文庫より『戯曲 吸血姫』に掲載

1979年6月 『唐十郎全作品集 第二巻(冬樹社)』に掲載

という具合です。
この台本に関して、私は版の違いによる比較検討はまだしていません。
ワークショップは全作品集版をもとに行なっていきますが、
やはり気になるのは初演より約半年前に掲載された文芸誌「海」版です。
上演を通じた現場の事情により、唐さんが台本を書き換えることは
ままあり、だからこそ着想のままに書いた原典版への興味はつきません。
この中でオススメなのは角川文庫版です。
手に取りやすく、『吸血姫』『愛の乞食』というゴールデンペアが
一冊になっています。安く見かけたら、買い!です。
ちなみに、上演記録では、この作品を状況劇場が初演した際
タイトルは『ジョンシルバー 愛の乞食篇』と銘打ってあります。
確かに「ジョン・シルバー」が大きなモチーフになっていますし、
『ジョン・シルバー』『続ジョン・シルバー』と続いてきた流れに
属する作品です。
が、内容的に第三部にあたるかといえばそうでもありません。
『愛の乞食』は独立した意味合いの強い劇ですが
おそらく、唐さんは興行成績を強く意識して公演の際に
そう名付けたものと考えられます。
その辺りは本読みを進めるうちにわかってきます。
内容はまた明日!
2023年3月21日 Posted in
中野note
↑ずっと前に、NHKで関鉄之助を川谷拓三さんが演じた番組を見たこと
あって、それがずっと印象に残っている
今回の水戸行きはなかなかタイトな日程でしたが、
それでも、バッタ以外にも水戸を楽しみました。
まずは、水戸芸術館に入っているレストラン「チャイナテラス」。
以前はフレンチレストランだったと記憶していますが、
それが今は中華料理に。でも、単なるアートセンター付属の
食べ物屋さんに終わらず、かなり豪華なレストランであるという
特性は変わっていませんでした。リッチに昼食を食べたり。
夜は、水戸芸術館の学芸員さんに教わった「中華料理 北京」。
水戸の夜の繁華街である大工町の中にありましたが、
これがなかなかの店でした。個性的なおじさんが厨房、
ホールをすべて一人でこなしており、その手際の良さ、
喋りの面白さ、私たちが食事している間にやってくる常連さんの
個性派ぶりに唸りました。
↓中華料理・北京の外観
アンコウやウナギも美味しい水戸からすれば
セオリー無視の昼夜ともチャイニーズでしたが、これが美味しかった。
帰り際、北京のおじさんには系列別店舗も薦められ、
9月に来られたら行ってみたいと思いました。商売上手!
あと、最終日の早朝に回天神社まで走ってみました。
那珂川を望む場所にある神社で、ここには、幕末の水戸を生きた
人々が眠っています。
安政の大獄のリーダーだった関鉄之助。
幕末の青年藩士たちの精神的支柱であった藤田東湖。
その息子で、天狗党の乱のリーダーの一人だった藤田小四郎。
誰より、水戸天狗党の人たちのお墓がずらりと並び、
その墓跡の姿形の同じこと、並び方の整然としたことから
往時の政争に敗れた面々への処刑の凄惨さが実感できました。
時代は違いますが、水戸黄門で有名な「格さんのお墓」があって、
何かホッとさせられました。千波湖や偕楽園など、
他にも久々に行ってみたい場所はありますが、それはまたいずれ。
↓いつも常磐道で利用していた守谷のSAも様変わりして新しく!
2023年3月20日 Posted in
中野note
↑初期唐ゼミ☆メンバーを含め、バッタを通じて多くの人と知り合って
きました。今回もまた新たな人たちに支えられました
3/19-20と水戸に行ってきました。
水戸芸術館で巨大バッタのバルーンを設置するためです。
バッタ自体が表に出るのは2014年以来9年ぶり。
作品を収蔵している水戸芸術館での設営は・・・、
今回は久しぶりのテストということで、
スタッフ募集以外は広報もせず、あれが今も設置できるかどうか実験し、
各機械が正常に稼働し、摩耗や汚れの修復可能性について調べるために
巨大バッタを出したのです。
土曜の深夜に水戸に付き、日曜の朝から作業スタート。
10名を超えるボランティアの皆さんと、プロの業者さん、
水戸芸術館のスタッフ、室井先生とバッタをつくった椿昇さんと
協力して、昼過ぎにはバッタを膨らませることができました。
唐ゼミ☆メンバーの齋藤がいれば、バッタに空気を送り込むための
扇風機(ブロアー)の付け方や、安全性や姿勢のカッコよさを
確保するためのロープワークがスムーズにいったはずです。
今回は自分だけで行ったので少し思い出すのに時間がかかりましたが、
それでも、確かに膨らみました。
初期の頃より明らかに張りが弱くブヨブヨしていますし、
ところどころ汚れのひどい箇所もあり、そういう部分を今後どうしたら
良いか、調査しながらの設置でした。
内部に入って、積年溜まったゴミを掃除機を持ち込んで掃除しました。
養生テープや砂利、草など、ずっと前にバッタに入ったきり
一緒に収蔵庫の中に入っていたものが吐き出されました。
水戸芸術館では、秋に本格的な展示をしようと計画しているそうです。
今回とったデータがひとつひとつ検討され、もっと立派に展示できるべく
学芸員の皆さん動いてくださるそうです。
何より、今回、久々にバッタを出すことで、
設置のためのノウハウが参加した人たちにシェアされたのが大きい。
あれは小学生でも理解できるすごく単純な仕組みで動いていますが、
とにかく作業に人数が必要なために頻繁に出すわけにはいきません。
出さなければ、みんなやり方を忘れてしまいます。
それが、伝授されたことを喜んでいます。
学生時代に一緒だったメンバー、過去に水戸に来た時に知り合った
人たちとの再会がたくさんありました。
以前は一軒家のレジデンスでみんなで雑魚寝していましたが、
今回はキレイなホテルに泊めてもらい、豪華な朝食付き。
月日が経ったことに感動もしました。
水戸への移動自体も、一人で自家用車を駆ってスイスイ。
秋の本格展示は、唐ゼミ☆の動きや神奈川県民ホールの仕事次第ですが
もちろんできる限り駆けつけたいと思っています。
2023年3月18日 Posted in
中野note
先ほどから雨が降り始めました。
予報によると明日、土曜日いっぱい雨だそうで、
そのために3/18(土)に水戸で取り組むはずだった巨大バッタの
テストが日曜日からになりました。
本来は夜のうちに水戸にいるはずが、家に帰ってきました。
そして、帰ってきた格好のままで、床にバタンと寝てしまった。
本当にバタンキューな感じで、さっき起きて笑ってしまいました。
現在、3:33。数時間遅れで、ゼミログを書き始めました。
今年に入ってから、実はこんなことが数回ありました。
正確に言うと、昨日はなんだか倒れ込んでしまっただけなのですが、
これまでは、いつも次のものをかじった結果、バタンキューでした。
チョコレートのラミーです。
ラムレーズン、つまり少しアルコールが入った冬季限定のお菓子です。
今はもう春の兆しを受けて店頭から消えてしまいましたが、
ちょっと前まではスーパーには潤沢にこれがあって、
椎野が好きでよく買い込んできました。
で、私は帰宅後にこれをかじる。
すると、どうにも良い気分になりました。
良い気分になって、いつもは帰ってからしてきたこともできずに
そのまま床でグダグダと寝てしまうのです。
要するに、私は酔っ払っていました。
お酒を飲む人には笑われるでしょうが、体質的に酒の飲めない
私にはこのラミーが「適量」だったのです。
フワフワして何もしたくないし、何もできない。
意識が鈍くなるのがちょうど良く、そのまま寝てしまう・・・。
ああ、酔っ払いの人はこんな感覚で過ごしているのだ。
この冬は何回かそう思いながら気持ち良く過ごしました。
そういう感覚にハマって数回、かなりだらしなく寝ました。
もちろん、私の中の酔っ払いの筆頭には唐さんがいるわけで、
大好きな「いいちこ」を飲んで、「バタンキュー!」と言っていた
唐さんはこんな感覚だったのかも知れないと、追体験してきました。
昨晩はラミーは無かったので、単なるバタンキューです。
さらに思い出すと、私が子どもの頃、
深夜まで働いて帰ってきた父が、居間にワイシャツのまま
転がっていたことがありました。
数時間前の自分はまさしくそういう感じだったので、
そんなことまで思い出しました。
これから始まる一日は雨が降り続けて、気温も低いままだそうです。
でも、これを超えたら、春に向けて季節がぐっと変わるはずです。
水戸のバッタが日曜になったので、明日はひとつイベントに参加します。
6歳になった息子は、保育園の卒園式を迎えます。
2023年3月16日 Posted in
中野note
↑小山祥平くんとポスター前で記念撮影しました
新国立劇場に『ホフマン物語』を観に行ったら、小山くんに会いました。
小山くんとは、彼が大学一年生の時からの知り合いです。
一見、無表情に見えるがなかなかの熱血漢で、
いろいろなものに好奇心旺盛に飛び込む。
往々にして若手はみな女子の方がアグレッシブですが、
小山くんは今時の男子にしては珍しいタイプです。
望月六郎監督の指導する講座で映画を撮ったし、
他のさまざまなイベントにもフットワーク軽く参加してくる。
新宿中央公園で『唐版 風の又三郎』を公演した時には
航空兵のひとりとして出演してくれ、ずいぶん助けられました。
ほとんど初舞台のようなものでしたが、
特訓の稽古を行っているうちに、メキメキとせりふも伸びました。
全体の稽古とは別に、航空兵練習の日を設けたのをよく覚えています。
小山くんは少しボンヤリした風貌が不敵で、それでいて熱演します。
自分から見た彼の人柄もそんなふうで、大人しそうだと侮っていたら、
全裸で何人もの青年たちが全力疾走する映画を撮ったり、
その後には『死神 ドクター・テケレツ』という作品を監督して、
活躍しています。
新国立劇場のトイレでばったりあった時も、
一般に敷居の高いオペラを小山くんが観に来ていることに
驚きました。若者向けの割引を利用してたびたび観るらしく、
なかなかにアンテナを張っています。
しかも今回の『ホフマン物語』では、彼が興味を持つ
「人口美人」「自動人形」のオリンピアが原作『砂男』により
登場するために、それで注目して来場したのだと言っていて、
納得しました。
同じような主題では『長谷雄草紙(はせをぞうし)』という
日本の古典があり、これも、ある男が女性の死体から美しい部分を
繋ぎ合わせた「人口美人」に対する話だよ、と伝えました。
実はこれ、唐さんからの受け売りです。
『下町ホフマン』や『夜壺』からもわかるように、
唐さんもホフマン好き。今度会ったら、そのことも伝えたいものです。
↓唐さんから教わって買った『長谷雄草紙』の絵巻が入った本
2023年3月15日 Posted in
中野note
↑目黒区民センター公園には変わった公衆トイレがあった
三月は忙しない。
助成金申請や神奈川県民ホールでの仕事、
観に行きたい劇やオペラやイベント、
週末の水戸バッタの準備などありますが、
深夜に公園めぐりをしています。
秋にやろうとしている『鐡假面』の舞台は公園。
公園にある公衆トイレに夜な夜なホームレスたちが集まり、
ファッションショーを繰り広げている、という設定です。
劇の後半ではそれが見世物小屋に変わります。
公園を管理する役所の公園課長が夜な夜な見世物小屋を
開いている、という突飛な設定です。
唐ゼミ☆が初めて『鐡假面』に取り組んだ2007年、
自分はまだ26歳で、その時点で交流することのできた社会人は
ごくごく限られた人たちでした。
それが、あれから15年が経ち、何人もの県庁や市役所、
区役所とやりとりする機会を持つことになりました。
さまざまなタイプに接してきましたが、
やはりオフィスでの静かな働き、堅実な実直さはどの人も
共通しています。だからこそ、あの中の誰かが夜な夜な
公園の公衆トイレを見世物小屋に改造してショーをしていたら。
具体的に考えるほど面白い。
以前よりはるかに具体的に想像して笑えるようになりました。
各地に出かけながら、気になる公園を覗きます。
ファッションショーや見世物小屋になるにふさわしい景色、
公衆トイレはないものか。
そんな取材が息抜きにもなっています。
2023年3月13日 Posted in
中野note
↑あまりの堂々ぶりに目を疑い、そのあとで勇気が出た
土曜と日曜は鎌倉に行きました。
鎌倉といっても大船駅から歩いたところにある鎌倉芸術館です。
ここで、県民ホールが主催するオペラ『ヘンゼルとグレーテル』の
子ども用ハイライト版が上演されたのです。
そこで帰り道にあっぱれな看板を見ました。
決然とした迷いの無いロゴです。
宝飾品、メガネ、補聴器、時計などを扱うお店だそうです。
創業は1946年。この創業年にも力強さを感じます。
パンデミックが起きて数ヶ月があった頃、
ニュースでコロナビールが倒産したと聞いて愕然としました。
まったく関係ないことが誰にもわかっていながらアウトなのです。
その中で、このお店はよく自らを貫き、生き抜いたものです。
信号待ちをしながらこの堂々たる看板を見て、喝采しました。
そういえば、前回に同じ鎌倉芸術館に来たのは2019年に
安藤洋子さんのシニア向けワークショップでのことでした。
あの時、多くの鎌倉市民の皆さんとの出会いがあり、
皆さんの参加は今も続いています。
当時、ワークショップ会場の下見と打合せを終えたあと、
大船駅に向かう間の道にあった焼肉屋で昼ごはんを食べた記憶があり、
今回、久々にその前を通りました。
まだ営業している!
コロナが流行してから焼肉やお鍋の店は大変だったはずです。
けれども生き残っている。お互いよく生き延びたものだと、
こちらにも嬉しくなりました。
2023年3月10日 Posted in
中野note
↑奥から手前に乗り換えています。親亀の上に子亀みたいに。
子どもの頃、多くの親たちに忌み嫌われた『おぼっちゃまくん』
という漫画がありました。私はアニメから親しみ、
後にコロコロコミックを買って読むようにもなりました。
あの中で繰り広げられる下品なやり取りが大好きでした。
最近になって自分が子どもを持ったことで、
例えばおぼっちゃまくんと彼の父の間に繰り広げられる
コミュニケーションが、かなりリアリズムであることも
分かってきました。
あの漫画の輝きと説得力はいやますばかりです。
さらにおぼっちゃまくんは、自分に別の影響を与えました。
何せ、同じ服ばかり買ってしまうのです。
ご存知のようにおぼっちゃまくんは同じ服を際限なく持っていて、
いつも着替えて清潔を保ちながら、
見た目は一向に変わらないという生活を送っています。
自分もまた同様で、気に入りの服や持ち物が
モデルチェンジせずに売っている間は同じものを買ってしまう。
だから、見た目にはずっと同じ服を着ているわけで、
人によっては内心、不衛生なヤツだ!と思っているかもしれません。
でも、ちゃんと着替えて同じ格好をしています。
スティーブン・ジョブズではなく、おぼっちゃまくんの影響です。
実は今、パソコンを更新しています。
コロナ禍の始まりの頃、娘が当時使っていたラップトップに
ヨーグルトドリンクをたっぷりかけて破壊しました。
それがきっかけで定額給付金で新調。
以来、ずっと使ってきたものがバグり始めたので、
かねて買ってあった新品に乗り換えつつあります。
一緒に海外研修を乗り切った相棒でもありました。
新しい方を買ったのは2022年1月。
渡英直前です。昔、室井先生がサバティカルでヨーロッパに
行った時、パソコンを盗まれて大騒ぎしていたのを思い出した自分は、
恐怖に駆られてスペアを買っていきました。
幸い盗難も紛失もありませんでしたが、
ここにきてようやく新品の稼働となりました。
もちろんおぼっちゃまくんのように外見は全く同じものです。
最近、このパソコンを見た人に
「中野くん、向こうで男の人に誘われなかった?」と訊かれました。
このピンク色は、そっち系がオッケーのサインらしいのです。
オッケーではありませんが、気に入り色なので引き続き使います。
2023年3月 9日 Posted in
中野note
2007年の展示より。ちょうど『鐡假面』に初めて挑んでいた頃だ!
来週末、3/17(金)に久々に水戸に行きます。
目的は、水戸芸術館に収蔵されているバッタのバルーンを
久々に膨らませるため。実施自体は3/18(土)-19(日)です。
昨日はそのための打ち合わせがオンラインで行われました。
水戸の学芸員さんたちと、椿さんと、4人での話し合い。
室井先生の代理を引き受けたものの、
東京都千代田区で最後に膨らませてからもう10年近く経つし、
どういう作業行程だったかあまりよく覚えていなかったのですが、
話すうちにまざまざと思い出しました。
水戸芸術館の収蔵庫の様子。
クレートと呼ばれる車輪付きの巨大な箱にバッタ生地が
収められている様子。ブロアーと呼ばれる扇風機が予備も含めて5台。
アンカーを打つためのペグやロープ。カラーコーンとバー。
それらを収蔵庫から出し、噴水の前の庭に持ってくるまでの道筋。
仮設電源からコードを引っ張ってバッタのお腹の部分に持ってきた時の
あのバッタの干物状態。そこでロープワークをして・・・
話しているうちに、
水戸でバッタを膨らませながら絡んだ
パフォーマーのユキンコアキラさんや
ドラッグクイーンの恰好で野点(のだて)をするきむらとしろうじんじんさん
のことも思い出しました。
久々に思い出したのでネットサーフィンし、
現在も活躍されていることを知って嬉しくなりました。今もやってる!
ただし、先ほど書いたロープワークだけはずっと劇団員に任せきりで
きたので、あとで齋藤に連絡してどんな結び方をしたか聞きます。
来週末ではありますが、今のところ天気予報は晴れ。
ボランティアスタッフも集まり、なんだか女性が多いようです。
これまでもそうでしたが、女子は積極的。男子も集まれ!
最後に水戸に行ってからずいぶんと時間が経ち、
一人で車を運転して深夜に水戸入りすることになった。
そんなことにも感慨があります。
2023年3月 7日 Posted in
中野note
↑ハレノワに、神戸、三重、神奈川から劇場で働くメンバーが集まりました。
今日は『秘密の花園』レポートその②、と思っていたのですが、
精も根も尽き果てて頭が動きません。
そこで、この二日間にあったことを書きます。
昨日から岡山市に行ってきました。人生初の岡山です。
目的は9月にオープンする新劇場ハレノワを見るためで、
単に施設見学するだけでなく、三重や神戸から集まった
劇場界の仲間や先輩と会合を持ちました。
噂には活躍を聞いていたけれど初対面の人。
オンラインでやりとりしてきたけれど、直接に話すのは初めての人。
何人もが、それぞれの土地で熱心に活動していることを知り、
話し合いが盛り上がりました。
自分はロンドンやイギリスで体験したことを報告して、
将来は移動型公共劇場をやりたいという目標を語りました。
月曜の夜に岡山入りして飲み会。
それが終わると深夜徘徊がてらランニングをして、
目ぼしいラーメン屋に飛び込んだところ、これが大当たりでした。
少し並びましたが、自分の後ろにいた地元の二人が街や飲食店について
説明してくれて、人にも恵まれました。
↑醤油ラーメンの名店 中華そば山冨士
深夜にホテルに帰り、マグカル助成に応募するための企画書を書き、
少し寝て、早朝からはロンドン体験のプレゼン準備をしました。
紹介したい写真を整理していると、イギリスで世話になった多くの人が
思い出されて、彼らがどうしているだろうかと気になったり、
まだ何も成し遂げていない現状に苛立ったりもしましたが、
あの国で生活して体感が甦ってきました。
朝食後に市内を走りましたが、
想像していたよりかなり大都会で、喫茶店が多くあり、
面白い屋号や看板をたくさん発見しました。
見つけた大衆演劇の劇場も、時間があったら入ってみたかった。
文化施設もいくつか見て回り、
ホテルでシャワーを浴びて改めて出かけると、
噂に聞いていた福祉事業所「ありがとうファーム」を訪ねることもできました。
高級な牛肉の切り落としを使ったカレーはかなり美味く、
店にいた人たちにこの施設の取り組みについて説明を受けることもできました。
なんと!、メインスタッフの方が自分がKAATで働き始めた頃に
ベトナムから招聘したヌーボーシルク『AO SHOW』を観に来てくれていたと聞き
感激しました。
↑右から「ありがとうファーム」の馬場さん、深谷さん、一番左が元同僚で
今は神戸に移った熊井さん
飛び込みで行ったりにも関わらず、
手厚く相手をしてくれたファームの皆さんに感謝が尽きません。
主目的の新劇場ハレノワは、開館直前の狂騒が伝わってきました。
4時間以上たっぷり、熱心に話して、冒頭の集合写真を撮って別れました。
現在は岡山地区限定の高級きびだんごを買って、新幹線の中です。
疲れたけれど、良い疲れです。本読みながら帰ります。
劇団員の林麻子は以前に水害に遭った真備町の出身で、
彼女がどこから上京し、あの時は心を痛めながらどのように帰省したのか
想像できるようになりました。前に劇団員だった土岐くんも岡山出身です。
今度会ったら、彼らと岡山について熱く語り合うつもります。
2023年3月 3日 Posted in
中野note
↑終演後に齋藤を囲んで。右側は大学院の先輩にして、
かつて戸塚高校定時制に唐ゼミ☆公演を読んでくれた木村剛先生
昨日は清水に行ってきました。駅前にある劇場マリナート。
これは2013年以来、実に10 年ぶりのことです。前回は、唐さんの娘さんの
ミニオンが出演する『美しきものの伝説』を見ました。
桐山知也さん演出の、ズラリと棺桶が並んでドキリとさせられる舞台でした。
あの時は、椎野や禿と一緒でした。
今回は、劇団員の齋藤亮介が舞台監督を務める
話題のダンスカンパニー・ケダゴロの公演を観に行きました。
『ビコーズカズコーズ』という作品です。
福田和子さんを題材にした75分のダンスでした。
殺人を犯すも警察に捕まらず、美容整形をして各地を逃げ回った女性。
時効寸前で逮捕された彼女がインスピレーションのもとになっていました。
逃げ回ろうにも、結局は「逃げられない」。
作品の中でカズコーズ(8人いるから複数形)を追いかけるのは
アイザック・ニュートンとアインシュタインで、彼らの論理から地球人は決して
「逃げられない」。新型コロナウィルスからも決して「逃げられない」というのが、
全編を読み解くキーワードでした。
要するに私たち人類は皆、福田和子なのです(タイトルそのまま笑)。
なかなか痛快な断言です。そういえば唐さんもかつて、
「世界はすべて台東区なのだ!」と高らかに断言したことがあります。
・・・実は、あまりにギリギリで会場に着きすぎて、
タイトルの意味、福田和子さんが題材になっていると知ったのは終演後で、
それでだいぶ得心がいきましたが、本当にサラの状態で見ながらも、単純に
「よくここまでダンサーの体をいじめるもんだ」
「よくこのようなセットと音楽の組み合わせを思いつくもんだ」
「よくこういった特徴ある演者を集めたもんだ」
という感心で75分間を観て、さらに終演後の客席でパンフレットを読んで
自分がいま観たものが何かを大いに納得したという鑑賞体験でした。
終演後に会った齋藤からは、ツアーを全うできた清々しさを感じました。
唐ゼミ☆もまた荷物軽めの公演を組んで、旅をしたいものです。
行きは鈍行の東海道線。
思ったより早く上演が終わったので、帰りもまた2時間半ほどの鈍行で
帰ってくることができました。交通費も安く、車中で読書して過ごす
小旅行の経験も良くて、イギリスで各地に旅した感覚を思い出しました。
行き帰りで読み切った本は、団鬼六の『真剣師 小池重明』です。
これがまた破格の面白さだった。なんだか、『ビコーズカズコーズ』とも
重なる世界を持っているような気がする。
時間が無くて漁港や海鮮丼とは無縁だったけど、充実の清水行きでした。
2023年3月 2日 Posted in
中野note
↑工房カプカプの前で。亡くなったミオさんを偲ぶ河童様像の前で
昨日は横浜市旭区にあるカプカプ光ヶ丘でのワークショップでした。
私の会社、センターフィールドカンパニー合同会社が主催して行っている
福祉×舞台芸術の担い手養成講座です。
カプカプ光ヶ丘で長年にわたりワークショップを継続してきた
新井英夫さん率いる一座と、カプカプ光ヶ丘に通所するメンバーが講師になり、
これから福祉×舞台芸術の取り組みを各地で実践していこうとしている
受講生を鍛え上げるために行ってきました。
カプカプ光ヶ丘の鈴木励滋さんから「こんなのやりたいんだけど・・・」
と相談を受けたのはロンドン滞在中でしたが、椎野や津内口が活躍し、
自分の不在中でも助成金をとって道をつけてくれました。
集まった受講生たちは、業界のレジェンドである新井さんの奥義を
見ようと集まってきた、これまた腕に覚えのある面々、これからの業界を
背負って立つだろう有望なルーキーたちです。
神奈川県でこういった仕事を始めて以来、
自分はまだ5年ちょっとなので、かえって主催者の自分が、
各地で行われてきた皆さんの活躍を知る機会にもなっています。
休憩時間にはそんな話を聞いたりして充実しています。
またこの事業は、カプカプーズ、
つまりカプカプで働いている障害を持つメンバーを講師としてお迎え
しているのも大きなポイントです。
些少ですが、講師料をお支払いしています。
人にものを教えて対価を得る、
少ない金額しか出せなくて心苦しくもありますが、
それが地震とよろこびになるのだと言われて、嬉しくなりました。
昨日は、このワークショップ以外には仕事を入れず、
それだけを考えて過ごしました。いつも複数の場所を移動しながら
働いているので、これも実に嬉しいことです。
新井さん一座とカプカプーズによる巧みなワークショップを見守り、
メモをとりつつ、ジャージ姿でストレッチしながら一日を過ごしました。
流れている時間そのものが、普段の自分を取り巻くものとは
ものすごく違っています。
新井さんは、温泉に浸かりにきたようなものだと言っていました
できれば、まだ助成金をとって継続していきたい事業です。
今年度最後の回は、3/30に開催されます。
2023年3月 1日 Posted in
中野note
↑どことなく高貴な感じのする、CD店の店員(おそらくオーナー)さんでした
面白い作曲家を発見しました。
ギリシャの作曲家ニコラス・スカルコッタス。
誰だ? と思うでしょう。私もそう思っていました。
ロンドン研修中にとあるCD屋に入ったところ、
そこのおじさんが思いのほか良い人でした。
品揃えも良かったのですが、さりとて特に欲しいものがない。
一方、店員さんが親しげに話しかけてくる。聞けば、ギリシャ人だというのです。
憧れのギリシャ。一度は行ってみたいアテネ。
研修先の劇場でもイオシフィーナとい美しい名前のギリシャ人スタッフと
知り合って興奮しましたが、この時も胸がときめきました。
せっかくなので「ギリシャ人作曲家でオススメはありますか?」
と質問しました。すると店員さんは、「ギリシャのクラシック作曲家で
もっとも偉大なのはニコラス・スカルコッタスである」と教えてくれたのです。
そのお店はナクソス・レーベルのCDがとても充実していました。
ナクソスといえば、ありとあらゆる作曲家のマイナー曲を網羅していることで
お馴染みのレーベルです。値段も安い。ギリシャ人に勧められると
"ナクソス"というレーベル名までもが好もしく感じられました。
まあ、このレーベルは香港に本社があるらしいですが。
ともあれ、一番良さ気なものを買いました。
が、正直に言って買うものがなくて購入したCDなので、
さして期待せず、約半年間も開封せずに来たのです。
昨日、それを何の気なしに開け、車の中で聞き始めたところ、
アタリでした。ブレヒトと組んだことで有名なクルト・ヴァイルに似て、
リズミカルでコミカルで、ちょっと諧謔味を持ちつつ、スイスイと聴けるのです。
改めて良い作曲家を教わったのだと実感しました。
ギリシャ人のおじさんよ、ありがとう。
ニコラス・スカルコッタス、なんだか名前の響きも
ガイコツやシャレコウベが踊っているような感じで面白い。
初期の唐さんは人体模型人形を愛し、お友達でした。
『煉夢術』には人体模型人形も出てくる。そんな妄想も働きます。
スカルコッタス、別の曲も聴いてみようと思います。
2023年2月28日 Posted in
中野note

↑ネット上の写真によれば、こういう箱入り、カラー挿絵多めのものが
届くようです。期待!
今年の公演目標は『鐡假面』。
2007年以来、二度目にやるからには完全無欠の『鐡假面』をつくろう。
そういう意気込みなのですが、実務的な公演会場おさえや予定組みをしつつ、
もう一つしなければならないことがあります。
それは、江戸川乱歩の『鉄仮面』を読むこと。
数々の不思議な短編や、怪人二十面相シリーズで有名な乱歩ですが、
その仕事には海外作品の翻案も含まれています。
「翻案」であって「翻訳」でないのは、けっこう書き変えてある、らしい。
『鉄仮面』もその仕事のひとつであり、
おそらく唐さんは少年期にこれに親しみ、乱歩版の読書体験をベースに
唐版『鐡假面』を生み出した、らしい。
らしい、らしい、と書いたのは、自分はまだ読んでいないからです。
これまでずっと探していたのですが、見当たらなかった。
それで、文庫になっているボアゴベの翻訳、つまり大人向けの長いものとか、
それをさらに少年少女に読みやすくしたものとかに目を通して、
2007年は劇をつくりました。
が、肝心なのは、やっぱり唐さんが何に影響を受けたか、です。
乱歩の作品はたくさん出版されています。
有名なポプラ社のものなど、人気作家ですから手に入りやすい。
私が小学校の頃には図書室にずらりとシリーズが並んでいました。
けれども、翻案物に関しては新しく出版し直すのが難しいらしいのです。
きっと著作権が複雑に入り組んでいるからでしょう。
オリジナル作品とは違って、出版努力の割に売れなさそうでもある。
そのようなわけで、ずっと引っかかっていたのですが、
ネットの古本屋で探したら昭和35年に出版されたものが高くない値段で
出ていたので注文しました。63年前の本です。
どんなコンティションでくるのだろう?
中には戦前に出版されたものも並んでいましたから、
これで最新の方なのです。
いずれ届く乱歩版を読めば、ここ15年抱き続けてきた負い目が解消されます。
もちろん、何か発見があることを第一に期待しつつ、本が届くのを待っています。
公演を組むということは社会的な活動ですから、
場所を決めるのも、出演者に交渉するのも、それぞれの人たちの事情があります。
一喜一憂あって、ラッキー!と思うこともあれば上手くいかない時もある。
そんな中にあって、よし!乱歩版を読むぞ!という行動は自分次第でできるので
息抜きになります。それでいて、劇に向かっている感じがする。
何か発見があったら、それこそ有頂天です。
唐さんが読み、見たであろうものを追う。
文章だけでなく挿絵が多そうなので、そこにすごいヒントがあるかも知れません。
2023年2月24日 Posted in
中野note
帰国後、今年から県民ホールに勤めるようになり、
音楽事業も担当するようになりました。
中でも、小ホールにあるパイプオルガンを活用したオルガンコンサートの
担当から、自分の音楽プロデューサーへの道が始まっています。
もちろん、メイン担当がいて、私はサブですが。
オルガンコンサートは毎月恒例で行われ、
大規模な特別会もあるので、たくさんの曲を聴くことができます。
今日も本番があって、働きながら愉しみ、また勉強にもなりましたが、
ここ一月半でいちばん感激したのは、バッハのBWV.540を初めて生で
聴けたことです。
これは、唐さんが大好きな映画『Phaedra(邦題:死んでもいい 1962年)』の
エンディングでかかった曲です。
継母フェードラ(メリナ・メルクーリ)との許されぬ恋を父親に咎められた
青年アレキシス(アンソニー・パーキンス)が、映画の終わり、
海外沿いを車でかっ飛ばし、車ごと投身自殺を図る。
その時、車中で彼が流したのがこのバッハのオルガン曲でした。
曲に合わせ、アンソニー・パーキンスは独白し、歌いもする。
元がギリシャ悲劇ですから、普通の映画ではあり得ないシーンですが、
これが不思議とハマる。
車、オルガン、長せりふのスピード感が一体になって、
唐さんが痺れたもの頷けます。亡き根津甚八さんのブログによれば、
当時の状況劇場劇団員はこぞってこの映画を観たそうです。
唐ゼミ☆も上演した『続ジョン・シルバー』では、
このオルガン曲と長せりふを真似たト書き指示があり、
唐ゼミ☆で初めてこの作品に取り組んだ2006年に、
私は聴けるだけのCDでこのBWV.540を聴きました。
だから思い入れがあります。
映画でかかった演奏スピードはあまりに速く、
CDや実演とはだいぶ違いますが、それでも初めて生で演奏される熱演を
客席後方で聴いて痺れました。役得です。
2023年2月23日 Posted in
中野note

↑真ん中が三上宥起夫さん、向かって右が嶋田勇介さん。
今日は久々に綾瀬市に行ってきました。
綾瀬シニア劇団のメンバーを対象に、とりふね舞踏舎の
三上宥起夫さんがワークショップをしてくださるというので、
久々に現場を覗きに行かせてもらいました。
ロンドンに行く前に会って以来、1年数ヶ月ぶりの再会でしたが、
皆さん、ありがたいことに自分のことを憶えていてくれて、
元気そうな様子を確認できました。
また一緒にワークショップを受けて、特にマッサージのコーナーが
気持ち良すぎて、寝てしまったりして。
今日の会場は公民館だったのですが、
合い間に綾瀬市オーエンス文化会館も訪ねて、
ずっとお世話になってきた副館長さんとも話しました。
地域の人たちにすごく頼られて、
通り過ぎる多くの人たちが次々に挨拶して行く様子も以前と同じ。
何より嬉しく、面白かった再会は、
三上さんのアシスタントとして来ていた嶋田勇介さんに会えたことでした。
嶋田さんは、自分がほんとうに駆け出しの頃、
まだ横浜国立大学で唐十郎ゼミナールの発表公演をやっていた時から、
とりふね舞踏舎の新人ダンサーとしてチラシ折り込みに来てくれたり、
北仲スクール時代にはバンカートのスタッフとしていつも丁寧に
接してくれた人でした。これを期に、
またちょくちょく会う関係になりそうです。
初めてお話しすることのできた三上さんとは、
もと演劇実験室天井桟敷のメンバーでしたから、
1969年に起きた渋谷での状況劇場の乱闘がどんなだったか、
結局は誰が原因をつくったのか、というかなりニッチな話題で
盛り上がりました。
そういうお話ができる相手を得て、久々にボルテージが上がりました。
やっぱり一番のイタズラ者は、愛すべき四谷シモンさんということで、
一致を見ました。
2023年2月20日 Posted in
中野note
↑バラシは90分足らずで終わった。何もない本多劇場の舞台で
『オオカミだ!』3日間の公演を終えました。
特に土日の11:00開演は不思議な感じがしました。
何しろ、終演して外に出てもまだ13:00くらいなのです。
私たちが観てもらいたい子どもたち、彼らは午後にお昼寝をします。
だから設定した開演時間でしたが、自分たちがひと仕事を終えてから
周辺の劇場がやっとマチネの幕を開ける光景は不思議な感じがしました。
日曜のバラシだって14:00には終わり、
二日間とも昼間から飲みに行き、夕方からは少し別の仕事もできました。
「作・演出」とクレジットされた公演でしたが、
創作に関わった4人のうち、パントマイム的に一番遅れを
とっていたのは自分でした。だから、よってたかって色々なことを
教えてもらったような創作でした。
いつもとあまりにも勝手が違って、
短い稽古期間の中で毎日、内容が変化し、
毎日、台本を書き換えて印刷し続けました。
稽古は午後の8時間。
テツヤさんとケッチさんはその後によく呑んだし、
飲み会の中の会話にも創作のヒントが溢れていたので、
帰宅後はまったく頭が動かず、翌朝の5時からが
作・演出プランを練り直す時間。
朝早く始めても気づけばお昼くらいになっており、
遅刻しそうになりながら稽古場に出かけていく日々でした。
ずいぶん長い時間を過ごしたようですが、稽古スタートは2/7。
3週間前にはまだ何も象を結んでいなかったのが信じられません。
うまくいく時はうまくいくもんだ。
そう自分に言い聞かせていました。
ひょっとして『3びきのこぶた』を知らない子のために
ストーリーを紹介するものとして紙芝居を使いましたが、
唐さんの紙芝居好きと、椎野が地区センターで借り出しては
演じる紙芝居に、うちの子どもたちが異様に食いついていたのが
ヒントになりました。
台本のおおもとはすべてロンドンでつくったので、
当時の生活も一緒に甦って来ます。
バラシを終えた後、少しの時間、
空っぽの劇場客席に座って唐さんのことを考えました。
1982年11月。唐さんは真新しい本多劇場を洪水で埋め、
ボートを泳がせたのです。いつかあの場所に『秘密の花園』を
還してみたいと思いました。
今までは少し斜に構えて見ていた下北沢がなぜ芝居の街であるかも、
その温かさも、体感することのできた公演でした。
お互いがお互いの公演を支え合って、これからデビューしようという
若手を戦力に変えながら、同時に教育機関としても機能している街。
みんなが居付き、愛し、活躍してからも還ってくる理由がわかりました。
敏腕プロデューサー・テツヤからのオーダーで、
荷物も人も軽くつくりました。それでいて、内容が豊かで、
子どもたちに人間の凄さや可能性を伝える公演を目指しました。
これから旅する公演となって、多くの地域、観客との出会いを
求めて行きます。外国へも持って行きたい。
夢でなく、具体的なプランとして狙っています。
座組と劇場、観客の皆さん、ありがとうございました。
この公演には必ず次があるので、また会いましょう!
2023年2月17日 Posted in
中野note

↑初日開場を前に、創作に関わった7人で記念撮影しました
現在、初日を終えて少し食事し、東横線で横浜に引き上げています。
稽古期間は短かったけれど、ようやく初日に辿り着きました。
パントマイムの公演をつくるのは初めてで、
ケッチさんとSATOCOさんとテツヤさんが
自分を指南しつづけてくれたような公演準備でした。
稽古はじめから3日間が特に混乱の極み。
でも、ケッチさんの創作がテクニックの羅列に終わらず、
リアリズムを基調としていることがわかるにつれ、
自分にもやりようがあることを悟りました。
唐さんの台本だって、
今ここにないものを演者の力で舞台上に現出させることに妙味があります。
ことばと所作の違いはありますが、踏まなければならない手続きに
似たものを感じました。
一方で、揺るがせにしてはならない台本があるのと違い、
現場の判断ですべてを更新していくオリジナル創作は、
リスクと希望が一緒に噴出していて、
自分の責任を痛感しながら日々を過ごしました。
初日の感触を確かめながら、
あそこはカットして、ここには小道具を足して、効果をこう加えて・・・
などと楽屋で相談するのも愉しい。
お互いに、一国一城の主が寄り集まって公演しているので、
公演の全体にそれぞれが思いを馳せ、お客さんのことを慮るチームです。
複眼チェックなので穴も少なく、目一杯サービスします。
これからいろんな場所で公演していくのが希望です。
そのために荷物も人も少数精鋭でつくってあります。
明日も、ところどころ工夫して臨みます。
午前9時集合、11時開演!
2023年2月16日 Posted in
中野note
↑これが記念撮影用のバナー。ロビーに置いてある。
『オオカミだ!』公演準備。
今日は明かり合わせを終えて、初めて劇場での通し稽古をしました。
明日には最終リハーサルをして、初日を迎えます。
いろんなところに持って行きたい。
言葉なしのショーなので世界にも持って行きたい。
そう考えて出演者2名、スタッフ2名の最小チームでやってきました。
音響も照明も舞台監督もプロデューサーもやるテツヤさんには
たいそうな負担ですが、私もロビーでお客さんの記念撮影などして
最後までお客さんへのサービスを全うしたいです。
そのためのグッズも届きました。
記念撮影用のバナーや、販売用のTシャツやポストカードなどです。
井上リエさんのおかげで、この公演のビジュアルは大したものに
なりました。それを活かしたデザイナー・金子さんの手腕でも
あります。
気楽に笑いながら観られる1時間のショーです。
人間が身体で表現する芸の凄さも味わってもらえるようにしました。
考えてみれば、ずっとロンドンの部屋で
この公演について考えていました。パントマイムを観た自体が少なく、
どんな風につくるのだろうと?マークいっぱいの頭で知恵を絞って
きました。ボツになったアイディアもたくさんあり、事前にずいぶん
準備をしましたが、結局はこの10日でエイヤッとつくった感が
あります。
けれども、この公演の原動力のすべては、ロンドンで暮らした
ダイアンの家にあったと思います。
毎日、23:00頃に帰っては、ドアについた四つの鍵を閉めました。
締め忘れると翌朝には必ずダイアンに注意され、ロンドンの治安の
悪さをこんこんと説かれました。
そういう体験を通じて、私は『3びきのこぶた』の真髄を理解しました。
ケッチさんの愛嬌と面白さによって、オオカミはずいぶん愛くるしい。
けれども、危険なオオカミからいかに逃れるかがキモなのです。
今日、たまたまロンドンから電話を受けました。
聞けば、自分の後にダイアンの家に入居した人からで、
ついでに久しぶりにダイアンの声を聞きました。
日本に帰って以来、自分がロンドンにいたことを夢のように
現実感なく感じてきましたが、今日は紛れもなく自分があの街で
レンガづくりの家の小さな部屋でずっと寝起きしていたことを
実感しました。
ここ1ヶ月半、日本の良さを満喫しながら過ごしてきましたが、
今日は少しだけロンドン暮らしを懐かしみながら、
明日の仕上げ稽古プランを練っています。
2023年2月15日 Posted in
中野note
↑肝心なところが反射してしまっていますが、
こうして人生初の絵画購入が成りました。我ながら大人の買い物
昨日、23:30頃に帰宅すると、すでに家族は寝ていました。
が、テーブルに書き置き。「なにかあるかもね」と息子の字で
書いてありました。
振り返ると、恐竜のフィギュアが逆さ吊りになっている。
風呂に入れば、なぜか風船が壁伝いに逆さ吊りになっている。
彼なりに私の誕生日を祝ってくれたようでした。大笑いしました。
今日の現場入りは13:00。
テツヤさん率いるスタッフ陣は朝から本多劇場に入って仕込みを
していましたが、昼過ぎに行けば良い日程でした。
そこで、朝は県民ホールの会議に出て、
それからケッチさんを黄金町近くのホテルに迎えに行き、
一緒に下北沢を目指しました。
国際性と場数において百戦錬磨のケッチさんの発する言葉は
さまざまな教えに満ちており、稽古以外ではめっぽう面白く
おしゃべりします。
例えば「子どもはバカな大人に物を教えるのが大好き」。
なるほど、これは至言だと思いました。
公演を見にきてもらえばわかりますが、そうした言葉通りに
ケッチさんは動き、子どもの力を引き出すのです。
午後に現場入りしてからは、明かり合わせをし、
かたやケッチさんとは決め切れていなかった場面を
確信が持てるまでに煮詰めて、場当たりに備えました。
夕方から始まった場当たりは時間切れで最後までいくことは
できなかったけれど、どこをどう改善し、残りの作業をどう
潰せば公演が完成するのか、道筋が立ちました。
それからテツヤさんと食事をし、明日に必要なものを
車に積み込んで別れ、そうして帰宅したところです。
今年は、娘と自分の誕生日に絵を買いました。
『オオカミだ!』のイラストを担当してくれた井上リエさんから
一点、購入させてもらったのです。人生で初めて絵を買いました。
ロンドンのダイアンの家で暮らして、絵のある生活は良いものだと
知りました。うちには大暴れする子どもたちがいて、あんな完成度
には程遠いけれど、ともあれ、少し雰囲気が潤っています。
段取りの整理や音響をブラッシュアップしながら、明日に備えます。
2023年2月14日 Posted in
中野note
↑下北沢の街には『オオカミだ!』のポスターがいっぱい
協力してくれた皆さんに感謝
今日は誕生日でした。
つい3日前に娘の誕生日だったのでケーキも買いませんでしたし、
この年で誕生日がどうということもないのですが、
厄年が終わってホッとしました。
41歳の大半を過ごしたイギリス生活は物価が高くて
栄養価がかなり低く、丸ごと厄だったような気もしますが、
人殺しにも泥棒にも会うことが無かったのは幸いだと思います。
そんな風にして42歳になりました。
今日は初めて本多劇場の舞台に立って、稽古をしました。
休憩時間にはブラームスの弦楽六重奏をかけたりして、
こけら落とし公演がどうだったのかを夢想しました。
『秘密の花園』にドキドキしながら、何人もの出演者とスタッフが
あの楽屋や舞台裏をウロウロしていたはずです。
もちろん、その中には42歳の唐さんもいたわけです。
私の方はといえば、すでに馴染んだ4人で稽古をして、
本番の舞台での見え方など、チェックと工夫を繰り返しました。
いつも2月半ばは年度末で忙しく、悲惨なスケジュールな中を
ケーキをホール食いする荒くれた誕生日が多かったのですが、
今年は年始に帰国したばかりで請け負っている仕事が少なく、
何年かぶりに心に余裕のある一日でした。
追い込んでつくるいつもの公演とは違い、
今回の『オオカミだ!』が平和に楽しむキッズプログラムであることも
影響していると思います。
あと3日で本番初日。まだ根本から練り直している場面もあり、
台本に沿ってつくるいつもの創作とは違ったスリルを味わっています。
チケットは完売。ありがたいことです。
2023年2月11日 Posted in
中野note
↑ケッチさんとの稽古。新たに加わる衣裳や小道具を使いこなしながら、
新しいパフォーマンスを完成させていきます。
ちょっと前に書いたイギリスのケータイ問題、あれが解決しました。
幸せなことに完勝である。改めて契約解除の手続きがなされ、
余分に引き落とされていた1月末〜2月末の利用料金が
返金されることになりました。やれやれ。
助けてくれたのは、イギリスで知り合った友人・マイさんでした。
彼女は5年以上の英国滞在経験があり、ご近所さんでもありました。
旅行の時、帰国の手続きの時、渡英中もずいぶんお世話になり、
こうして帰国後も助けてくれました。
zoomをつなぎながら一緒に問い合わせ方法を見つけ出してくれて、
キャリアであるVodafoneとのチャットに付き合ってくれました。
日本でもイギリスでも、今のケータイ業界はチャットで問題を解決するのが
主流らしい。まずは契約を止め、それから返金を願い出ました。
それぞれに「あなたはそういう手続きをしていませんよ」と言われましたが、
「店に行ってお願いしたら、"手続き完了!"と言われたんたんだよ。
ホラ、これがその親切で、実は何もしてれていなかった店員さんとの
記念写真だ!」と写真データまで送ったら、すべてこちらの申し出を
飲んでくれました。
解決後はつい幸せな気持ちになってしまったが、
考えてみたらこれは当たり前のこと。
2時間くらいかかってしまったし、引き落としのレシートが届いてからの
モヤモヤを考えれば、完全に余計な手間を取られてしまいました。
が、これぞ英国流、ああ、自分は紛れもなく1年近くをロンドンで暮らしたのだ
という実感が湧いた。何より、マイさんのありがたさが改めて身にしみた。
足を向けて寝られない存在である。
彼女が一時帰国する時には、全力で御礼したいと思っています。
そういう小さな(それにしては面倒だったが)ストレスを解決しながら、
『オオカミだ!』の稽古は進んでいます。稽古4日目にして大型の流れ、
作品の構造を作り出すに至っていますが、日々、昼過ぎから夜までの稽古、
さらに深夜・早朝の作戦練り直しに迫られて、自分を全開にしている感じ。
そんな中、プロデューサーのテツヤによると、チケットが売り切れたそうです。
初日1週間前にして稽古場で喜び合いましたが、これは「予約がいっぱいに
なった」という状態で、支払いと発券手続きをしない人がいれば、
また空席が出てしまう状態だそうです。希望しても見られない人たちのために、
予約の人には、きちんと発券もして目撃してもらいたい。
心からお願いします!
2023年2月10日 Posted in
中野note
↑遡ること前回の日曜日。ドリームエナジープロジェクトが出演する公演に、
即興ダンスの応援に行ってきた。
現在、『オオカミだ!』公演の稽古3日目が終了したところです。
やってみて、今、ものすごく苦しい。
一応、書いてきた台本通りにはすでに流れを組んだのですが、
なにかこう、ケッチさんとSATACOさんの肉体から、
稽古場からでしか生み出すことの出来なさそうな、
とても大切なものが決定的に出そうで、まだかたちになっていない。
いわゆる産みの苦しみというやつなんですが、それを味わっています。
フィジカルシアター、パントマイム、サイレントコメディ・・・
呼び名は色々あれど、自分にとって初めての経験だし、
稽古初日に、ケッチさんと会うのがやっと2回目という状況の中で、
残る稽古場での稽古はあと三日間のみ。
異常にヒリヒリしています。眠れん!
こうしてゼミログを書いている間にも、
アイディアが湧いては中断してメモを取り、それが実現可能か、
どれほど面白いものになるか、考えながらゼミログ文章を書いています。
同時に、明日は雪が降るのだろうか。そうすると、やはり車は危ない。
稽古場にどんな風に行こうか。などと、垂れ流しの思考が身をもたげたりします。
それどころか、こういう時に限って過剰な雑念が溢れ出てくる。
今回のショーでは「紙芝居」が重要な役割を果たすのですが、
それは唐さんの影響からかも知れないな、と思います。
唐十郎作品には『黄金バット〜幻想教師出現〜』や『紙芝居の絵の町で』
という台本もあり、唐さんが幼少期に興奮した紙芝居の影響が如実です。
時代を下って、確か『ちびまる子ちゃん』にも紙芝居屋の描写が出てくる。
いずれも、学校帰りの小学生たちを狙って、飴やたこせんを売って
紙芝居を見せるという、あの商売が描かれます。
さすがに自分が子どもの時には、あの紙芝居屋さんはいなくて、
大学生になってから行ったラーメン博物館で遭遇するのみだったのですが、
保育園の先生がやってくれたし、今、息子と娘も、地区センターで借りてくる
紙芝居を椎野が家でやってあげると、かなり楽しんで聞いています。
・・・と書きながら、うん、やはり紙芝居だ!などとアイディアをまとめています。
稽古中の現在の私の頭の中はこんな感じ。
そうだ!
リラックスした時に考えがまとまる、とも聞きますので、違うことも考えます。
先日の日曜日は、久々にドリームエナジープロジェクトの皆さんのサポートを
しました。杉田劇場で行われる公演に、ドリプロが出演者のひと組として出演、
即興ダンスを披露したので、短い舞台稽古から立ち会いました。
だから、冒頭の写真は終演後に上手くいってホッとしている時のもの。
おお!良いアイディア出てきた! 明日の稽古、いけるかも知れん!!!
一気に作品がまとまるかも! ・・・という具合に、千々に乱れた考えを
やっとまとめながら、現在も準備しています。
2023年2月 8日 Posted in
中野note
↑井上リエさんが宣伝用に作ってくれたビジュアル
今日は『オオカミだ!』公演のための稽古2日目。
音楽や効果音をラップトップで動きに当てながら稽古しています。
ケッチさんの技の応酬を間近で見て、大変にぜいたくな思いです。
それ以上に、稽古の合い間の話し合いから聞くことのできる
エピソードが面白い。技を活かすためにケッチさんが過ごしてきた思考
アイディアを面白く聞いています。
そう。ステージ上では言葉なしなのに、稽古が止まるとやたら喋っています。
技自体はすでに誰かが生み出したり、
他の人だって自分のものにしているわけです。
けれど実際には、エスカレーター=が〜まるちょば として多くの人の心に
刻み付けられている。それはなぜなのか。そういう話を聞かせてもらえる
わけです。
稽古場には、舞台上でケッチさんをサポートするSATOCOさん
というマイム・アーティストもいて、彼女の話もたくさん聞けます。
カナダに行ってパントマイムを志した話だとか、
が〜まるちょば が始めた道場で学んだ話、
最近はあるキッカケを境に手話を学び始め、
現在では英語よりも手話の方が上手いのだそうです。
手話のできるマイム・アーティスト。
パフォーマンスの上で、何気なく二人が掛け合う姿を見ていると
実に見事で、その呼吸に長年の付き合いを感じます。
これも自分にとって、以前には無かった経験です。
ところで、来週末の三日間、一日に一回ずつ行う公演のうち、
すでに2/19(日)11:00の回は完売しています。
残すところ、2/17(金)19:00と2/18(土)のみ。
土曜日の回も徐々に埋まりつつあります。
2023年2月 7日 Posted in
中野note
↑テツヤPが写真を撮ってくれました。
今日は『オオカミだ!』公演の稽古はじめでした。
通常の演劇づくりとは異なり、稽古期間は1週間。
その後に現場入りしてから3日で初日を迎える弾丸企画です。
主演のケッチさん、黒子として参加してくれるSATOCOさん、
テツヤP、私の4人で稽古場である若葉町ウォーフに集まり、
7時間ほど稽古しました。その後も話は続く。
考えてみたら、こんなに稽古のみの一日を過ごしたのはほんとうに
久しぶりでした。いつも別の仕事から仕事へ渡り歩きながら稽古も
してきましたので、朝に二、三の用事は捌きましたが、それ以外はずっと稽古のこと。
時には休憩時間を長くとっておしゃべりして、ぜいたくな時間でした。
ケッチさんに会うのは、去年の5月末にブライトンで会って以来、二度目でした。
今日は全体の進行を確認しつつ、主にケッチさんの技の数々を把握するところ
から始めました。百戦錬磨のケッチさんのこと、技の引き出しが豊富で、
パントマイムの何たるかという基礎も一緒に教わりました。
用意してあった進行台本を最後まで読み進めましが、
実地に検証する中で、シーンのつながりを整えつつも新たな技を思いつくなど、
私たちが実際に上演するものへの視界が一気に開けて、
今晩から明日にかけては宿題が山積です。
とにかく、「あ、パントマイムの公演ってこうやってつくるんだ!」と
発見に満ちた1日でした。
短期決戦なので、集中して自分が持っているすべてを出し尽くそう。
現在のケッチさんの芸における挑戦に伴走していこう。
そう思って稽古後の今も作業を続けています。
「写真を撮る時は目を開くこと!」とケッチさんに教わりました。
そういうわけで、記念撮影の写真まで力がみなぎっています。
明日も早朝から準備をして、昼からの稽古に臨みます。
2023年2月 3日 Posted in
中野note
↑私が撮り忘れたので、重村大介が写真を送ってくれました。今日も頑張れ!
昨晩は下北沢で『赤い靴』を観てきました。
女性二人による少女誘拐事件に端を発して、彼らに犯行用の車両、
ハイラックスサーフを売ってしまった青年が取り憑かれたように
その事件の真相に迫る話です。
舞台にスクリーンが登場したり、奥行きなしでも演じられるようになっているのは、
この演目が渋谷の映画館ユーロスペースで初演されたためです。
林海象監督の『海ほおずき』に主演した唐さんは、その上映と並演するために
この『赤い靴』を書きました。1996年のこと。
新人公演と銘打った出演陣の中には、ずっと応援してきたメンバーもいるし、
新たに加わった人たちもいて、 多士済々でした。。
全体に、みんながいきなり主役級を張って肩に力が入っていたけれど、
それも誰もが通る道で、観ていて気持ち良い。
唐さんの役柄を演じるのは、
共感や感情移入といったリアリズムを持ちつつ、それをズラすのがコツだと思う。
与えられたせりふや役柄によってそのバランスは異なり、空間によっても
適切なバランスは変わる。
テントよりも劇場でやる方が、ちょっとリアリズム寄りに寄せてみよう、とか、
今の自分だったらそんな風に組み立てるけれど、それには経験も必要です。
皆さんには、こうした実演の上手くいった部分を頼りに、
偉大な先輩方の表面的な喋り方、演じ方の真似に終わらず、
自分の素直な生活感覚で役をとらえて、そこから唐さん流にジャンプする術を
やはり自分流で見つけていって欲しいと思いました。
昨晩より今日、今日より明日が良くなっていくだろうから、もう一回観たい、
そう思わせる舞台です。
一方で、舞台を観終わって帰りながら、
これまで接してきた様々な上演を思い出しました。
私は初演には間に合わなかったけれど、大学に入って唐さんに入門してから、
山中湖乞食城での新人発表や赤レンガ倉庫での公演、中央線沿線の小劇場、
唐組アトリエ......、さまざまな上演を観て来ました。
だから、それぞれの舞台で活躍して来た歴代のキャストが自分を駆け抜けました。
また、2009-2011年に室井先生を中心に運営された馬車道の北仲スクールでも
学生たちが久保井研さん演出によりこの演目を演じていて、その記憶も蘇りました。
その時、主人公の一人「韋駄天あやめ」を演じていた元学生のSさんが
昨日の回を観に来ていて、帰りに井の頭線の中で思い出話と近況を交換しながら
彼女が衣裳のワンピースを着ていた物腰、1幕の終わりで「カーレン!」と言った声を
まざまざと思い出しました。
あの時のメンバーはみんな社会に出て活躍しているそうです。
そうそう。室井先生によれば、
唐さんが横浜国立大学の教授になるかどうか逡巡していた際、
その回答をもらったのは、初演の舞台上でのことだったそうです。
まだ40代だった室井先生が舞台を観にいった時、
唐さんはそれまでとは違った演じ方をしてみせて、舞台上から回答をした。
それを受け取った室井さんが終演後に唐さんに応答することで、
教授就任が決まったのだそうです。
(ということは、室井さんが唐さんのメッセージをキャッチしなければ、
自分は唐さんのもとで学べなかった)
昨晩、主人公の灰田瞬一がスクリーンを切り裂いた場面を思い出しながら、
そんな風に翌日、今この瞬間も鑑賞しつづけています。
昨日、熱演してくれた皆さんに感謝。
2023年2月 2日 Posted in
中野note

↑ホンダの店舗から見たミツ沢の景色。横浜国大に入ってから20年以上
この場所に親しんできたが、こんな風に眺めるのは初めて!
今朝は劇場の仕事を少しして、それから横浜市民ギャラリーに行きました。
唐ゼミ☆を横浜国大で活動し始めた時からずっと見守ってもらい、
時には川崎市市民ミュージアムでの公演をプロデュースしてもらった
仲野泰生さんが、展覧会に参加しているからです。
仲野さんの作品は、近年に行き来してきたメキシコ文化と
お住まいのある川崎の遺跡、縄文文化が融合していて、
端正なものでした。ちょっと怖いようなリアリズムもあって
まことに二枚目! 一方で、自分は仲野さんが展開してきた
小型のエロ本シリーズが好きなので、あれもまたやってほしいと
伝えました。
それから、劇団員のちろさんに会いました。
ほんとうに久しぶり。彼女にはイギリス留学経験があり、
自分は渡英準備の中でさんざん世話になりました。
だから御礼を伝え、不在の間の出来事や、これからのことを
話し合いました。ロンドンで買ったお土産をやっと渡すことも
できました。
実はまだ、林麻子と米澤と佐々木あかりには会えていません。
彼らにも会って、早くお土産を渡したいと思いつつ、
後手後手で1ヶ月。早く公演場所の算段をつけて、
具体にどうしよう?っている相談をする状況を整えたいと
思います。お土産、ずっと車に乗っています。
それから、車の1ヶ月点検を受けに来ました。
今、その待ち時間にこれを書いています。
横浜国大近くのホンダ三ツ沢店が担当店舗です。
自分が不在の間、椎野は自転車でここまで行き来し、
今乗っている車を用立ててくれました。
大学時代から慣れ親しんだミツ沢上町の交差点ですが、
店舗の中から見るとまた違った風景です。
帰国してからの1ヶ月で、走行距離は3,500kmを超えています。
ハードワークは仕方ないとして、大事に乗っていきたいと思います。
それに車の販売店の、このホスピタリティの良さよ!
今日はこれから車を家に戻し、下北沢に唐組を観に行くつもりです。
重村や山本十三、立派になった美仁音の活躍に期待!
どうだったかは明日に書きます。
2023年2月 1日 Posted in
中野note
↑中の様子は変わっていたが、木馬マチュピチュも健在だし、やっぱり
良い空間だと思った。なんだかインスピレーション!
今日は朝からドタバタしました。
朝から映像作家の飯塚聡さんを迎えに行き、それからカプカプ光ヶ丘へ。
今日はカプカプ×新井一座のワークショップを開催したのです。
福祉×舞台芸術の分野で活躍したいメンバーが受講生で、
業界のレジェンドたちのノウハウを実地に学び、
今後の普及につなげたいと思ってやってきました。
ご本人が発表していますが、WSを主導してきた新井英夫さんは
去年にALSという筋肉が衰えていく病気を発症されました。
類まれなる新井さんのノウハウを次の担い手に伝え、
実践できるようになってもらいたい。時間との闘いです。
午前の部が始まりそうなところで、神奈川県民ホールに移動して
会議に参加しました。音楽学者の沼野雄司先生に会いましたが、
会議終わりに室井先生や渡邊未帆ちゃんの話ができました。
案外、共通の知り合いがいるものです。
北仲スクール時代に三人で働いた時のことを思い出しました。
それから財団スタッフの何人かと喋って、またカプカプに戻りました。
午後の部の終盤に混ぜてもらうためです。
何をやっても笑われることがない空間なので、
思い切って動いたり吠えてみたりしました。爽快でした。
相手の動きを感じ取って自分なりにアレンジして返すと、
相手はそれを踏まえて次の動きに移る。このつながり、
連鎖にアンテナを立てます。私たちの間に発生するやり取りを実感しました。
それから振り返りの会をして、体験を経た後で新井さんたちのノウハウに
ついて質疑応答しました。新井さんのノートを見せてもらって痺れました。
精緻に計画し、現場で即興的に取捨選択する。
その後で何がウケ、何がウケなかったを検証していました。
伊達にインプロをやっていない。周到さと直感が高度に結びついていました。
すごい!
それから、再び飯塚さんを日吉の家に送って、
今日は吉原文化研究のセミナー「燈虹塾」に参加しました。
本当は会場の西徳寺に行きたかったけれど、開始時間に間に合わないので
オンラインでの参加。そのために、日吉から近いハンディラボに一年ちょっとぶりに
帰ってきました。久しぶりだ! ハンディラボ!!!
ずっと維持して来たので、なんだか感激しました。
ここから、また再び地道な創作をしたい。そういう思いを新たにしました。
2023年1月26日 Posted in
中野note
↑1ヶ月前にはブレイクゆかりのフェルパムに彼の行きつけを訪ね、
ランチを食べていた。自分でも信じがたい・・・
今朝は早起きをしました。
何しろ、午前4時半からのオンライン会議に参加したのです。
ザ・ブレイク・ソサエティの会合。
英国時間の19:30開始が、日本時間の翌日4:30開始でした。
ロンドンで発見した会員制教会コンサートに参加するために
ホームページづてに連絡をとったのが縁で入会したこの会合。
1年に一度の年次総会が行われたのです。
私にとって初めての参加が年次総会となりましたが、
これはなかなか興味深い体験でした。
まず、開会前はいかにも神秘的な、そうプラネタリウムにでもかかりそうな
音楽が鳴っていて、ブレイクの版画がスライドショーされている。
定時になり開会すると出席者のうちの何人かが顔を出すわけですが、
皆、一様におしゃれな部屋からのオンライン参加か、背景画像に
やはりブレイクの版画を使ったりしている。
年次総会なので決算報告などもありましたが、
総じて、参加者の一人であるオーストラリアの方が、彼の国での
ブレイク需要を発表したのを面白く聴きました。
英語は、あまり衰えを感じません。
というか、都営期間中の最後だってトップスピードで話されると
よく振り切られていたので、もともとが低空飛行だ、という意味で
違和感がないのです。わかることはわかる。わからんことはわからん。
ともあれ、こんな風にロンドンでの体験の後の愉しみに繋がるのは嬉しい。
いつか、唐さんの『吸血姫』の劇中歌について説明する日が来るかも知れません。
半世紀ちょっとまえの極東に、こんな影響がありましたよ、と。
参加人数はそう多くなく、20数名というところでした。
それだけに秘密の集まり感があって、それがスパイスになっていました。
題材が秘密めいていますし、スタイルが秘儀っぽい。
次回もよろこんで参加します。
2023年1月25日 Posted in
中野note
↑移動後の新店舗。張記小籠包は遠藤啄郎さん気に入りの店だった
久々に横浜中華街に行った。
ひどい寒さの割りに、お客さんが戻ってきている感じがする。
1年ぶりだったせいもあり、ただ歩いているだけコロナが流行ってから
今までのことを丸ごと思い出した。
2020年の春先。
緊急事態宣言により全てのお店が閉まった時のこと。
その軒先で、50枚で3,500円するマスクを売る露店が幾つもあったこと。
それらがあっという間に値下がりして、店の人たちに悲壮感がつのっていたこと。
中華街といえば、山下公園側の大通りに面した"張記小籠包"という店に
通ってきた。ここは横浜ボートシアターの遠藤啄郎さんから教わった店で、
ボートの公演終了後に連れてきてもらってから通うようになった。
自分の酸辣湯麺好きはここから始まって、
それから何軒も食べたけれど、ちょっと替わりが見つからない。
寒いロンドンにいた時も、ああ、あそこの酸辣湯麺を食べることが
できたら、と何度か思った。
SOHOのチャイナタウンは値段が高くて気軽に行ける場所では
なかったし、街場の中華料理屋にはいつも違和感ばかり覚えて、
会計後に後悔してばかりだった。
さて、"張記小籠包"。
久々に!と思ってお店の前まで行ったら、
別の、中華料理屋でもなんでもない居酒屋になっていて愕然とした。
繁盛店だったからお店の人の健康に何かあったのかと
悲嘆に暮れたが、ネットで調べてみると「移転」とあり、
なるほど、中華街の真ん中らへんに懐かしい看板を発見した。
店に入ると懐かしい店員さん。
久しぶり!という話になり、しばらく来なかった理由を伝えたり、
引越しの理由を聞いたりした。賃貸契約の更新時期を区切りに
移動したらしい。
いつもの!と頼んだら大盛りで持ってきてくれた。
酸辣湯麺を食べながら、遠藤さんに「僕が初めてこれを食べたのは
1970年代のパリ」と言われたのを思い出した。
ヨーロッパが身近になったので、以前よりその情景が想像できる。
遠藤さんは2020年2月上旬に亡くなったから、
ギリギリのタイミングでコロナを経験しなかった。
いつも陽性の雰囲気を持つ人だったから、コロナによる
様々な制約を知らずに逝ったことが、遠藤さんらしいと思う。
以前よりアクセスがスムーズでなくなった分
頻度は減るだろうけれど、また通おう!
2023年1月24日 Posted in
中野note

↑典型的に愚兄賢弟の三男。なるほどかしこそうです
今日は月曜日です。
いつもならば日曜に行ったワークショップのレポートをする日。
けれど、心折れました。
すべての仕事を終えて帰宅したのが24:15。
そこから食事してレポート執筆にかかりましたが、
ようやくあらかた書いたところでシステムエラーが起こり、
完全に消えてしまいました。
ほとんど、9割がた完成していたというのに・・・
ですから、レポートは明日に回します。
今日は短くて楽しい話題をやりましょう。
井上リエさんからオオカミとこぶたのイラストが届きました。
『オオカミだ!』のパントマイム・ショーの中に出てくる
紙芝居をデザインし、宣伝ビジュアルも作ってくれているリエさんが
新たにイラストをプレゼントしてくれたのです。
チラシに載っているオオカミだけでなく、こぶたもいます。