2024年10月12日 Posted in
中野note
今日は盛りだくさんでした。
朝から息子の運動会があり、実家から私の母と姉もやってきて
家族で観戦しました。といっても、私は娘とともにあちこちを
さまよいました。補助輪付きの自転車を乗り回すようになったために
彼女の移動スピードは格段に上がり、ランニングにちょうど良い
ことが分かりました。
家族で昼食をとった後、私は都内に向かいました。
目黒不動尊の近くにある蟠龍寺(ばんりゅうじ)の本堂で、
『少女仮面』の時に谷洋介さんと小島ことりさんにタップダンスを
仕込んでくださった米澤一平さんが行う定例の即興ライブが
あったのです。それほど広くはないながらも、水底に雌伏する
とぐろを巻いた龍の描かれた天井絵を戴く本堂にて、
ミュージシャン2人+ダンサー3人+一平さんの6人による
豪華インプロが行われました。
特にゲストであるダンサーさんたちが三様に蟠龍から霊感を受ける
様子を面白く見ました。それぞれの感受性と関係性が見えてくると
即興は訳のわからない動作でなく、そこに通う条理が見えてきます。
そういうものが生まれやすい場であることが成功のポイントだと
思いました。力、あったなあ。
それからお茶の水に移動し、ディスクユニオンにも少し寄りつつ
紅テントに辿り着きました。『動物園が消える日』。細部の魅力まで
丹念に突き詰められた、大好きな上演でした。良い芝居だと
改めて感じ入りました。それ以上に、この台本は初演の時から
新人育成用の群像劇であるパワーをいかんなく発揮し、
若手の皆さんも含めて一人一人が輝いていました。
そして何より、丹念につくられた紅テントの芝居が日常的に
上演されていることに幸せを感じました。春公演はお祭り騒ぎ
でしたが、夏を超えて、いつもの唐組が還ってきました。
この「いつもの」という点について、当たり前に紅テントが
あるのは生半のことではないと感じ入りました。
自然と感謝が湧きます。
2024年10月11日 Posted in
中野note
↑日本劇団協議会の媒体 JOIN 109号です
今日は湯河原まで行ってきました。
行きは2時間という大渋滞で、横浜新道の出口付近ですでにノロノロ
運転というかつてない混みようでした。たまりかねて抜け道を
使ったために、原因は突き止められず。
湯河原そのものは充実の愉しさでした。
まず、みかん製品が美味かった。
他にも、堀口捨己さんの建築に接して興味を持ったので、
これからは他の建物にも注目していくことにします。
さて、冒頭に写真を載せた日本劇団協議会の団体誌「JOIN」に
ロンドンでの研修について寄稿しました。
半年に一度出版されるもので、一般の書店ではなかなか手に入らない
ものとも思いますが、見かけたら読んでください。
見開き2ページの分量です。
これを書いていたのは5〜6月頃だったはずですが、
今ではほとんどその記憶が曖昧です。今年は唐さんのことがあり、
文章の依頼が多いので、いつも心のどこかに〆切があり、
何とか書き終えると、はい、次を!という生活です。
が、しばしロンドンのことを思い出し、
レゲエやフォークソングを聴いています。
2024年10月 8日 Posted in
中野note
↑ギャラリーの入り口で
今日から急に冷えました。
日曜日まで30度近くいってTシャツで過ごしていましたが、
今日は車の中の温度計を見ると17℃ということで驚きました。
一日のうちでいちばん気温が高い14:00台のことでした。
現在はお茶の水に唐組の紅テントがあり、赤坂に新宿梁山泊の
紫テントが立ち、という状況ですから、急に冷え込むと現場がさぞ
大変だろうと心配になります。
もっとも、今年3月末に私たちの『鐡假面』を見舞ったあの寒さ。
最高気温がやっと10℃を超える程度だったという、
あれは何だったのかといまだに思います。
どこかにテント劇場が立っているかと思うと、こんな風に
ハッと気になって、身につまされ、心配になります。
いつも、誰より唐さんががそういう感じで、特に朝起きて風の強い
日は電話を「大丈夫か?」と下さったものです。
さて、今日は有明のギャラリーに行ってきました。
お台場とか、有明とか、あまり行きつけない地域に車で行き、
平日ですから閑散として、大型車両が行き交い、小雨まで降ってきた
ものですから上記のように余計に寒さが際立ちました。
目的は、8月に神奈川県民ホールにお迎えしたマンガ家
水野英子先生の個展を観るためで、これは見応えがありました。
画業70年だそうですが、内容においても、技術においても、
水野先生が男女の別を超えて時代を画する存在であったことが
立ちどころにわかる展覧会で、とにかく感嘆しきりでした。
一点一点のコマに捧げられた画が、それぞれに独立した作品としての
強度を持っており、星が描かれた背景、ドレスのドレープ一本が
圧倒的情熱に充ちていました。10/14(祝月)まで開催中です。
水野英子個展「薔薇の舞踏会」
2024.9.28(土)〜10/14(祝月)12:00-18:00
ART SPACE SKY GALLERY
入場無料
2024年10月 4日 Posted in
中野note
↑唐さんが読んだのは、改訂版であるこちらの翻訳かも
昨日、『若きウェルテルの悩み』の話を書いて思い出したのは
唐さんが横浜国大を退官するときに行ったスピーチです。
講座の最後、唐教授は木馬に乗って登場、
壇上でスピーチ、『少女仮面』の劇中歌『時はゆくゆく』を歌い
窓から去る、という趣向でした。
そのスピーチで、唐さんはこんな話をしました。
「授業を終え、校舎を後にしようとして振り返ると、
3階の窓辺に夕陽を浴びた中野くん、椎野ちゃん、禿ちゃんの
影が見えます。あれこそ、現代の若きウェルテルなんだと思いました!
さようなら、横浜国大。さようなら、7年半!」
と言ってい生バンドによる伴奏は開始されました。
続く歌も見事だったのですが、気になったことが。
・・・僕らがいた唐十郎研究室は5階なのです。
唐さんは明らかに百も承知で「3階」と言っていました。
おそらく、語呂が良いから。
世の中にはついて良い嘘、ついた方が良い嘘のあることを知りました。
私が23歳の時のことです。
2024年10月 3日 Posted in
中野note
↑これまで流布してきた多くの翻訳はゲーテによる改訂版をもとにして
いるそうです。これはオリジナルを翻訳したとのこと
無骨で荒削りな原型か、洗練された改訂か。
自分はどちらかといえば前者が好きで、しかも改訂の過程で作者が
何を考えたのか、オリジナルはどこが上手くいっていないと思ったのか、
そういう思考の痕跡に思いを巡らせるのは尚好きです。
その上で、上演するのだったら原型を選ぶのを基本としています。
原型=アーキタイプにはそれだけの面白さがあります。
『少女都市』『少女都市からの呼び声』を併せて研究したいと
考えるのも、そんな好みが底流にあるからです。
今年の初めに出版された光文社新訳文庫の『若きウェルテルの悩み』
は、そのような荒削りな力に満ちて、青春期に起こる空回りの極北を
見せてくれました。主人公ウェルテルの暴発ぶりは痛快なほどで、
被害者感がゼロなところが魅力でした。
勝手に惚れて勝手に死ぬ。ウェルテルのパワーは嵐を思わせます。
繊細で青白い青年でなく、すっかりのぼせ上がって大ナタを
振り回す感じがとても良いのです。
唐さんは『若きウェルテルの悩み』も好きだし、
あほロマンチックな青春を愛するところがあります。
ローリング・ストーンかつ、どうにも止まらない勢い。
訳者の酒寄進一さんが、またひとつ良い仕事をされています。
2024年9月28日 Posted in
中野note
今日は、2017年から関わるようになったドリプロの公演本番でした。
と言っても、ここ数回がそうであったように創作に関わることは
ありませんでした。現在、県民ホールが主催する『ローエングリン』
という公演に関わっていることもあり、参加できなかったのです。
その分、お客さんとしてたのしめました。
純粋お客さんであったのは、2017年に初めて公演を観た時と、
それから、ロンドンから帰ってすぐのタイミングと、
3回目だと思います。
久々にみんなに会うためにリハーサル会場を覗くと、
メンバーもお母さんたちもこれ以上ないくらいに歓待してくれて
感激しました。
舞台本番を、自分が関わっていないからこそ気楽に愉しみました。
みんな堂々としていて、即興でする脱線に行け行け!と応援しながら
観ました。最後の歌と踊りはなし崩しにステージ上に行って、
やっぱりこうなってしまうところにドリプロのおもしろさを
満喫しました。今日も自由の風が吹いていた!
ありがとう、みんな!
2024年9月27日 Posted in
中野note
↑さりげなく貼ってありました
私の父の姉、つまりおばさんは美空ひばりが大好きで、
名古屋でひばりさんのコンサートがある時にはよく行っていたそうです。
うらやましい。もしも自分がもっと早く生まれていたら、
あの伝説的な歌唱力を録音やテレビでなく、生で聴いてみたかった。
ほんとうにそう思います。
ところで、伊勢佐木モール近くによく行く韓国食材屋があります。
その名も「マンナ食堂」。ここのチャンジャは他の店のと全然
ちがって、夜遅くに家に帰ってもおかずがなく、さりとて
外食をする気にならない時に買って帰ると、数日、ぜいたくな
食事ができます。他に、海苔や参鶏湯なんかも買います。
今日はその軒先に気になるポスターを見つけました。
ディナーショー46,000円というのは、そのジャンルでは突出して
高いとは言えませんが、出演者に驚きました。
娘のチュウニさんの方が大きく写っていますが、
韓国の美空ひばりと言われる李美子さんも来るらしい。
気になります。
向こうにすれば、美空ひばりが日本の李美子だ!と言われるかも
知れませんが、あの低音域の響きと、そこから高音域に抜ける
歌い方は、ひばりさんを彷彿とさせます。
ちょっと手がでないかな、と思いながら、一期一会という言葉が
自分を駆り立てます。12/8(日)は本読みWSだから確実に無理として、
これは12/9(月)のスケジュールが仕事で埋まらなかった場合、
悩むぞ!
2024年9月26日 Posted in
中野note
日々、ヤフオク→唐十郎の検索を怠りません。
特にこれまでに見たことのない雑誌が出たときには色めきだちます。
一方で先日は、唐さんの学生時代の公演記録が出品されていましたが、
あまりに高額で手が出ず、口惜しい思いをしました。
ところで、最近は上記の文庫本が出品されているのを発見して
期待しました。こんなの初めて。きっと田中小実昌さんと唐さんが
対談したのだろうと思って注文しました。
ところが、届いてみれば、
これはそれぞれの著名人と歴史上の人物とが空想対談したのを
集めた本であり、唐さんの単著『乞食稼業』に収録されている
シェイクスピアとの対談の再掲載だったのです。
一字一句同じかどうかチェックするほどの気力も起きず、
それでも、唐十郎の名が出てくる一冊として本棚に収まりました。
発見の歓びもあれば、こういうこともあります。
不都合でも、新たに事実がはっきりするのは前進です。
こうして、このネタでまたひとつブログが書けたわけですし。
2024年9月25日 Posted in
中野note
↑『腰巻お仙 振袖火事の巻』より堕胎児たち扮する明智小五郎の
シーン。寂しさと恨みでいっぱいの場面でした。子どもが生まれるときに
こんな芝居をしていたのです。唐さん自身も、ちょうど義丹さん誕生の後、
1968年後半にこれを書いたはずです。「女性」「母」「少女」について、
唐さんと一緒に考えている感覚でした
今日は息子の誕生日でした。
8年前の早朝に産気づいたという連絡がありました。
椎野は私の実家である名古屋で彼を産んだので、あの時、
自分は横浜でひとり暮らし状態で、禿(恵)さんを主演にした
『腰巻お仙 振袖火事の巻』の通し稽古を予定している日でした。
だから、名古屋に駆けつけることはできませんでした。
朝5時くらいにいよいよだと母親から電話があり、
気が動転して、横浜駅西口のドンキホーテまで何か買い物に行こうと
走ったのを覚えています。それでも、どうにも落ち着かず、
早朝に齋藤に電話して迷惑をかけたことも。
大好きな漫画『子連れ狼』では、将軍がお正月のお祝いの席で
大名たちに餅を配るシーンがあり、それの影響で、当時の座組の
みんなに、馴染みの和菓子屋さんで名物のあんこ入りのお餅を買って
差し入れました。とにかく空回っていました。
椎野が13時間格闘して息子は生まれました。
午後に通し稽古をして、それから修正作業をした後に名古屋に
向かい、それからまたすぐに横浜に戻って新宿中央公園に入る日に
備えました。
あの時は、室井先生のおかげで横浜国大で稽古させてもらっていた
最後の方だと思います。それから、息子がうちに来て、唐ゼミ☆の
拠点をハンディラボに移して、維持費もバカにならないけれど、
みんなの協力でなんとか芝居にしがみついてきたな、と思います。
大きくなった息子を眺めつつ、来年の演目について考えています。
2024年9月24日 Posted in
中野note
子どもたちに自転車を買いました。
息子の8歳の誕生日のプレゼントです。
彼の自転車デビューが遅くなったのは、妹のためです。
妹はとても暴れん坊なので、兄の自転車を羨ましがって暴れる、
奪いだすことは目に見えていました。それで、下の子の成長を待った
のです。娘も5歳になり、自転車デビューするに充分な歳になりました。
これから練習です。
自分が初めて自転車を乗りこなせるようになった時の記憶が自分には
ありますが、思い出しつつ教えるつもりです。
難しければ、さまざまなところでやっている自転車教室に入れる
つもりです。
唐さんは、よく自転車に乗っていましたし、自転車が活躍する
台本をいくつも書きました。『ユニコン物語 台東区篇』と
『秘密の花園』はその双璧です。
自転車にユニコンの角を付けてユニコーンだと言い切る。
森のかじかの49段式、というアレです。
他にも、この前に私たちが上演した『鐵假面』の紙芝居屋、
『腰巻お仙 振袖火事の巻』のうどん屋なんかも自転車屋台です。
そうそう。私が初めて観た紅テントの芝居『眠り草』でも
活躍していました。
『腰巻お仙 忘却篇』では、人力の照明機材にもなったと聞きます。
最近は車ばかり運転してきましたが、
唐十郎の愛する自転車の世界に、これから子どもたちと再入門します。
2024年9月21日 Posted in
中野note
↑初対面の時のピーター。コンウェイホール、かつてカール・マルクスが
講演会もした劇場で彼のアンサンブルがユニークな演奏会をしたのを
当日券飛び込みで聴いて、面白かったので話し掛けました
ロンドンの友人ピーター・フィッシャーが年明けに来日します。
フィルハーモニア管弦楽団の日本ツアーのメンバーになったらしいのです。
これはいい。あの時に受けた恩の一端を返す機会となりそうです。
一方、どこでコンサートを聴こうかなと考えています。
ロンドンにいた時には、いつもピーター割引価格で1,500円も
かからずに良い席に座って聴いてきました。
しかし、日本ツアーでは安くても20,000円程度はします。
やっぱり、みんなで飛行機に乗ってやってきて、一流楽団だけに
良いホテルに泊まるわけですから、値段も跳ね上がる。
みなとみらいホールでの公演がなぜか火曜日のお昼で、
しかしも翌日は東京で夜の公演なので、行くならここかなと
思っています。コンサートが終わった後に、
どこかに連れ出すことができるでしょうし。
メインプログラムがシベリウス5番の日と、
別の『中国の不思議な役人』の日という具合に、2回聴けたら
言うことありません。イギリスの文化支援が年々縮小されていく
なかでいつまで演奏できるだろうか、とピーターは言っていましたが
こうして立派にツアーが組まれて久々に会えるのですから、
ありがたいことです。
2024年9月20日 Posted in
中野note
↑CD『1999年サマーの安保ちゃん』
今日は安保由夫さんの命日です。
いつもは、できるだけ今日に、でなければその前日に新宿2丁目の
ナジャにお花を届けていたのに。今年からはそのナジャも無いなんて。
車の中でこのCDをかけて移動しました。
また、安保さんのつくった劇中歌の入った芝居を演らないと!
今日は短めに。合掌。
最後にナジャに行った時に頂いたコースター
2024年9月19日 Posted in
中野note
今日は仕事を終えて夜に時間ができたので、
思い立ってオペラシティに行きました。目的は『マクベス』です。
といっても芝居ではなく、オペラ版の『マクベス』をコンサート形式で
上演するので勇んで行ったのです。この演目の初見でした。
マエストロ・チョン・ミュンフンの指揮のもと、
歌手も東京フィルハーモニーの演奏も演出も素晴らしかった。
必要最小限の道具立てで、スピーディに展開するドラマが最大限に
浮き彫りになるよう、道具の出し入れも照明も衣裳も計算され尽くして
いました。上演としては申し分ありません。
他方、自分はヴェルディの作曲に不満を感じました。
マクベス夫婦が王位を奪った後に張る宴会の軽妙さと、
マクベスがバンクォーの亡霊に苛まれるコントラスト、
特に前者の明るさはさすがだと思いましたし、マクダフとの最後の
決戦、あの「女の腹から生まれていないゾ」と言い張るところの
バカバカしさに当てている曲がとても良かったのですが、
終盤の見せ場である、マクベス婦人の狂乱とマクベスのモノローグの
扱いは、はっきり言って失敗ではないかと思いました。
ヴェルディは稀代のヒットメーカーであり、言うまでもなく
巨匠なのですが、肝心なところで原作の活かし方に不足が
あるように受け止めました、それにしても、上演は素晴らしかった。
作品の不足を補ってあまりある、生きている人間が試行錯誤している
活力を味わいました。
2024年9月13日 Posted in
中野note
↑確かに水が冷たそう。そして、劇場に向いていそうな内装
『宝塚歌劇110年史』というど迫力の本を見る機会があって、
そこにはもちろん、この歌劇団のはじまりも書かれています。
まず、1911年5月に「宝塚新温泉」という浴場がつくられてヒットした
こと。これを受けて翌1912年7月に大浴場に隣接した2階建洋館建築
「パラダイス」を建てたこと。しかし、この「パラダイス」の中央部に
つくった室内プールは上手くいかなかったようで、それは、男女共泳を
禁じたことと、水を温める設備がなかったことが原因と書いてある。
そこで、この室内プールの脱衣所を舞台に、プール部分を客席にして
余興を始めたのが「宝塚唱歌隊」であり、歌劇団の礎である、とも。
・・・そう。
『少女仮面』で春日野八千代が語るせりふとはだいぶ違います。
唐さんのせりふでは、風呂に蓋をしてステージに見立てたのが
宝塚歌劇の始まりとなっていますが、だいぶ事実に反するようで。
情報がゴッチャになっていますが、自分にとっては、
唐さんがなぜプールを風呂にしたかったのか、なぜ蓋をして
そこをステージにしたかったのか、という部分の方が大切です。
こういうところに、唐さんの「こうであって欲しい!」という
願望があるからです。
2024年9月12日 Posted in
中野note
今日は県民ホール企画の稽古でしたが、
テーブルを囲んでお昼ご飯を食べながら
海外経験豊富なメンバーとお喋りしました。
やはりクラシック音楽畑には、海外で勉強と
仕事をしてきた人がたくさんいます。
イタリアに6年、イタリアに5年、
ドイツに2年、イスラエルに10年といった具合。
自分のイギリスに1年などというのは
吹けば飛ぶような将棋の駒ですが、食事の話になり、
晩ご飯をフライドチキン、ピーナッツ、プリングルス、
キットカット、生ハム、チーズで回していた
あの頃を思い出しました。
特にキットカットは食べると頭痛がするように
なってしまったため、ある時期にやめてからは
その後は一度も食べていません。そろそろ、
抹茶味であればいけるかな、とも思いますが。
一風堂が2,000円を超え、赤いきつねが700円するあの頃。
うなぎのぶつ切りを煮て冷やし、
煮こごりとともに食べるジェリード・イールは、
また食べたいと思っています。
2024年9月11日 Posted in
中野note
今度の日曜日から『少女都市』本読みを始めますが、
自分なりに活字化されたものが欲しい方は古本で角川文庫の
『少女仮面』が比較的手に入りやすいです。
これは1973年11月30日初版。何度も再版を重ねています。
他方、私が台本づくりに際して用いたのは、
『季刊同時代演劇 創刊号』です。こちらは1970年2月10日発行。
やはり初めて活字化されたもので読みたいというのがいつもの
基本スタンスですので、これと角川文庫を照らし合わせ、違いを
見つけられたら儲け物です。
もしも違いがあったなら、そこには実上演に関わる現場の事情、
それを書き換えた唐さんの思考があるはずです。
そうものの有無を見極めるのも、本読みのたのしみです。
2024年9月10日 Posted in
中野note
↑唐さんの大学生時代。こういう時代の集大成として『煉夢術』を
捉えています
昨日のネモ船長の話を経て、
今日は一昨日に行った『煉夢術』本読みの最終回レポートです。
主人公の青年が岐路に立たされています。
番号をもらってバスに乗れば、すなわち制度に飲まれた人間となります。
それを拒む青年。これまでの登場人物たちがよってたかって青年を
説得にかかり、なんとかバスに乗せようとします。
塔のある町に着いたばかりの頃に出会った老人、
バスの車掌となった町の男など、青年にバスに乗るよう促す。
特に町の男はどっぷりと体制側に組み込まれており、
後述する妻の状況と合わせて、悲哀に満ちています。
(唐さんの父への思いか?)
なんといってもいちばん哀れを誘うのは町の女=母親で、
青年がオルガンを弾いたことにより命を落としたと思われた彼女は、
実は一命をとりとめ、しかし、目の光を失っていたことがわかります。
彼女に迫られると、さすがに青年も弱い。
が、結局、青年は母親をも退けます。
この辺りは実に非情で、ハードボイルドです。
後に唐さんが書くことになる『さすらいの唄』にも似て、
肉親を斬って捨てるような思い切り見せます。
こうした別離を経て、青年は町を出、新たな歩みを決意します。
この辺りはスタンダードな青春譚です。
が、よく読むと、やたらと歩を進める際の膝が震えていたり、
「またこの町に帰ってくる」というせりふがあったり。
後ろ髪を引かれまくり、これから歩む道にビビりまくっているのが
魅力です。こういう箇所が、唐さんのチャーミングなところです。
こうして『煉夢術』は終幕します。
青春期の習作、まだまだ後の唐さんらしいポリフォニー、喜劇性、
ダイナミズムには遠い作品ですが、参加者の中にはこのナイーブさを
気に入ってくださった方もいました。
二十歳すぎの唐さんの足掻きを再確認し、原点に触れようとした
今回の目標は達成されました。すべての作品は、紛れもなくここから
こういうセンスから生まれてきたのです。
来週から、1969年に書かれた『少女都市』を読みます。
『少女都市からの呼び声』に対してあまり顧みられることのない
『少女都市』を改めて考え直そうと、皆さんと読んでいきます。
2024年9月 7日 Posted in
中野note
↑娘のリクエストによりプッチンプリンを買い、プッチン機能を活用
するのも人生で初めての経験でした。あまりにブルブルで驚く
本日、椎野が埼玉の実家に帰省したため、自分が子守りをしました。
とはいえ、やるべきことはあるので、資料を求めるために、
椎野を送りがてら子どもたちと池袋のジュンク堂に行き、
そこでしか売っていない本を買いました。
子どもたちは子どもたちで、『藤子不二雄大全集』や『おしりたんてい』
を購入。その後、湯島にあるラーメン屋に行って3人で食事し、
県民ホールで少し荷積み、日本大通りでやっているベトナム・フェスタ
を覗いて、象の鼻テラスの行われた友人・チャンさんの講演会を
聴きました。この間、子どもたちはひたすらマンガを読んでいます。
チャンさんの語りのトーンは明るいのですが、
彼女は、お父様がベトナム戦争に敗れた旧政府の軍人であったことから
難民として日本にやってきて、暮らしてきた方です。
ベトナムを出る時の体験、その後の日本での暮らしについての
レクチャーは自分に、初めて生々しく「難民」という存在の実際を
教えてくれました。ベトナムからヌーボーシルクの団体を招聘した
時に通訳をお願いして以来、チャンさんとは7年間のお付き合いが
ありますが、こうして、改めて彼女の半生を伺ったのは初めてであり
自分にとってかなり強烈な体験でした。
その後は、買い物をしながら帰宅し、夕食を作って、子どもたちと
アニメを観ながら過ごしました。もう寝よう、と言われながら今日の
このゼミログを書いています。少し寝て、夜中に仕事をするのが
目標です。目覚ましの時間は24:00にセット。
2024年9月 6日 Posted in
中野note
↑なつかしい『海の牙 黒神海峡篇』。第一幕はかつら屋という設定でした
昨日に紹介した『アニオー姫』が終わりました。
約400年前に軽々とベトナムに渡り、現地の言葉を操り、
しかも王族の娘と国際結婚してしまう主人公は、現在を生きる
自分より遥かに軽快だと思わざるを得ません。
一方で、物語の中で後半の舞台になった長崎に限らず、
九州という土地は私の育った名古屋より、いま暮らしている関東より、
遥かにアジアをビビットに感じられる土地なのだろうと思わずに
いられません。思えば、唐十郎作品の中で、1973年秋に初演
された『海の牙 黒神海峡篇』はそういう世界観を謳った台本でした。
唐ゼミ☆では2011年に上演して、けっこう上手くつくることが
できたと自信を持っている作品ですが、九州・朝鮮半島・沖縄を
行き来する円環運動と鉄棒技の大車輪の重なるという、壮大にして
強引なせりふ・物語の展開がおもしろい劇です。
あれもまた九州人の国際性を実感できるお話しです。
思えば、自分はまだ福岡と佐賀にしか行ったことがなく、
いずれはもっと、南下してみたいものだと思わずにいられません。
何か、上手く仕事を作ることができないものか!
2024年9月 5日 Posted in
中野note
今日からこの公演に関わっています。
タイトルは『アニオー姫』
約400年前にあった実話がもとになっており、
日本の商人とベトナムのお姫様が国際結婚した史実を
オペラにした物語だそうです。
明日は、お昼に去年に上演したオペラの映像上映会があり、
夜に音楽朗読劇版が上演されるので、お手伝いをしています。
2017-2018年頃に特にベトナム企画をたくさん経験したので、
よく大和市のレストラン・タンハーに通いました。
思えば、ロンドンでアジア系の麺類が食べたくなった時に
お世話になったのが、The Albanyの周りに2軒あったベトナム
料理屋さんでした。ロンドンではお金が無くて食べ物に不自由
しましたが、たまに、何か公演を観て、夜遅くにフォーが
食べられると、日本での暮らしを思い出して嬉しくなったものです。
↓ロンドンでよく食べていたフォー!
土日は日本大通りでベトナム・フェスタがあるので、
子どもたちを連れて行ってみようと思います。
知り合いのチャンさんが、象の鼻テラスで講演会もするそうで、
お話も聞きに行くつもりです。
2024年9月 4日 Posted in
中野note
↑なかなかの装丁です。男の色気がほとばしっています
本屋に寄ったら、『安藤昇』という文庫が新刊で出ていました。
著者は木下英治さん。ピンと来てパラパラめくってみたら、
693ページに唐さんが出てきた。有名な『任侠外伝玄界灘』について。
プロデューサーの富沢さんと言うのは、朝倉摂さんの旦那さんのこと。
たった数ページだけれど、例の実弾発射事件がどのように起こったのか
知らなかったことが書かれていました。これだけで、買います。
発砲時の取材はスポニチの一社だけにあえて絞ったとか、
ボートで漕ぎ出してから安藤昇さんと唐さん、それぞれが
何発打ったとか、やたらと克明に書かれていて、笑ってしまいます。
唐さんが少しでも出てくるものは手元に置いておきます。
雑誌など、次から次へと出てきて際限がないけれど・・・
2024年9月 3日 Posted in
中野note
↑ミミは今ではブッシュ・シアターのエグゼクティブ・ティレクター
として活躍中
ロンドンでお世話になりっぱなしだったミミから久々に連絡が来ました。
なんだろう? と思って WhatsApp を開くと、台風のことをやたらと
心配しています。確かに今回の10号はひどかったし、今も影響が
続いているけれど、自分の周りだけは大丈夫だと伝えました。
ともかくも、ひどく心配しています。
彼女はすごく細やかな神経の持ち主で、そのことにずいぶん
助けられましたが、地震や台風ばかりが起こる日本がミミからは
どう見えているのだろうと考えました。
ロンドンで過ごしたダイアンの家には、来客用のお皿が
棚に立てかけてあり、ショーウィンドウのように飾ってありました。
が、あのような置き方は地震の多い日本ではあり得ません。
日本には築何百年の建物はごくわずかの例外を除いてほとんどなく、
ロンドンには数百年越しに使われている建物がゴロゴロあるが
渡英当初は驚かれてなりませんでした。地震が無い国というのは
こういうものかと実感しました。
そのかわり、私たちには無常感というものが身についていて、
『方丈記』なんかを生み出し、読み継いできているわけです。
ミミは、大学時代に学んだ舞踏に憧れて、パートナーと一緒に
日本に来てみたいと言っています。
そのうち、仕事でお招きすることができれば良いのだけれど。
2024年9月 2日 Posted in
中野note
↑こういう文庫本があって、多くの著名人が無名時代について書いた
短編を収めたアンソロジーです。唐さんも「試行錯誤のぐにゃぐにゃ」
というタイトルで、駆け出しの頃のアルバイト生活について触れており
『煉夢術』の参考になります
昨日は『煉夢術』2部中盤を読みました。
前回で面白かった受付人と偏執狂の会話による復習から始め、
物語の主人公である地図売り(時計修繕)の青年と受付人との会話
に進みました。
昨日に読んだ箇所から、2部の設定であるバス停が、
1部で男が探検した塔のある街の入り口にある十字路だということが
わかりました。正確にいうと入り口を出たところ。
この、街から一歩出た、街の外にあるところ、というのは
青年にとって重要な設定です。
偏執狂と受付人の会話が終わると、今度は青年と受付人との
やり取りが始まり、受付人は青年が街に忘れたトランクを示します。
中に時計修理の道具が入っていた、アレです。
しかし、塔の内部でオルガンを弾き、それが母殺しにもつながって
しまった青年は、そのトラウマから、このトランクは自分の
ものでないと言い張ります。
受付人がトランクを開けると、中から青年そっくりの人形が現れ、
ギターを弾き、歌を歌い、青年の罪の意識を苛みます。
罪に囚われ、この街に囚われる者として、青年をバスに乗せて
裁きの場に送り込もうと受付人が企んできたことも露わになります。
が、青年は逆襲に出ます。
自分に瓜二つの人形の登場に慄きつつも、受付人の主張を退け、
自らの母殺しによる罪の意識にも開き直り、これを突っぱねます。
こうして、彼が自立への道のきっかけを掴むところで、
昨日は終わりました。
唐さんにとっては、この塔のある街は、
自らを育み、父母のいる上野・万年町界隈のメタファーです。
愛着と束縛感がないまぜになる街からの脱出を図ったものに
違いありません。
とはいっても、何度も書きますが、
自立した唐さんが住んだ先は吉祥寺の近辺です。
冷めた目で見れば吉祥寺と上野の距離に過ぎないわけですが、
そこに異世界に来たような隔たり、望郷、エクソダス的な大脱出を
見出す大袈裟さが作家的才能といえます。
私たちは、時に大袈裟だなあと笑い、
時に真剣さに心打たれながら読んでいます。
来週で最終回。『煉夢術』を終えたら、『少女都市』へと進みます。
2024年8月31日 Posted in
中野note
↑今日はあまりにバタバタしていたので、下見の時に撮影した写真です
でも、講座中もこのくらい絶景でした
今日は、昨日もお伝えしたレクチャーでした。
配信とか、台風の気配とか、さまざま難題はありましたが
なんとか本番にたどりつき、実際の講座中は自分も一緒にお話しを
伺いました。
テーマであるサルヴァトーレ・シャリーノというのは
一聴して変な作曲家で、ヴァイオリンとかフルートとかの演奏で
あるにも関わらず、他ではありえないような音を出します。
また、人の声を使った作品にしても、
せりふや歌というよりも、感嘆符やオノマトペ的な発声ばかり
であるという不思議な素材の使い方をします。
それでいて、ミステリアスなのは、
抽象的な感じはせず、それらがかなり具象的なところが
変わっています。そんな、ノイズに似た音の連続にも関わらず
人物とか、風景とか、不思議に想像しやすい。
その理由を、昨日は指揮者の杉山洋一さんと沼野雄司先生から
聴くことができました。
シャリーノの中の古典性、シャリーノの中のリアリズム、
そういったものを伺って、うんうんと納得しました。
本番の音楽を、自分はもっと味わえるように整ったと思います。
唐さんの作品を、自分は同じように読んでいるな、とも思います。
押し出しが突飛だから、いきなり観聴きするとくらくらしますが、
心を捉えるものには、ちゃんと底の方で、奥の方で響き合うものが
あるのだということです。
翻って、明日の『煉夢術』のことを考えています。
久々に、アンドレ・ブルトンの『ナジャ』も読んでみたくなります。
2024年8月29日 Posted in
中野note
ピエトロ・マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』が好きです。
2022年にロンドンに滞在して30本以上観たオペラの中で、
突出して良かったのがこの演目でした。
それはもうよくできていたので2回観に行きました。
最近、マスカーニ本人が指揮したCDの存在を知り、移動の時などに
聴いています。1938年と1940年のもの2通りあり、どちらも録音は
良くありませんが、すごくメリハリの効いた大胆な演奏です。
この作品は間奏曲が有名です。
これだけ名曲演奏会のプログラムに選出されることの多い曲です。
この間奏曲を、8歳にしてマスカーニのアシスタントになった
ジュゼッペ・パタネさんが演奏した録音があります。
これは本当にすごいと思う。異常にゆっくりしていて雄大、
他の演奏とあまりに違うので、初めて聴いた時は驚き、
以来、自分にとってこの曲のベスト盤になりました。
最後に大切なのは、大野和士さんが2007年にフェニーチェ歌劇場の
ニューイヤーコンサートを指揮した時の記録DVDです。
やはり間奏曲が演奏されています。大野さんはパタネさんに
師事しているので、いわばマスカーニの孫弟子ともいえます。
連綿と続くもの、変わってゆくもの、
3つの演奏に時代の変遷を聴く思いがします。
2024年8月28日 Posted in
中野note
↑真ん中の女の子が深雪、右上に夜泣丸。とすると、雪子はけっこう
和のテイストかもしれません。
昨日の続きです。
今日も昨晩にご紹介した『オテナの塔』から目が離せず。
ヒロインの名前は「深雪(みゆき)」といって
『少女都市』の雪子は明らかにここからきています。
他に驚いたのは、主人公の父親が「夜泣丸(よなきまる)」の
異名をとる義賊であることです。唐さんの『秘密の花園』に出てくる
「夕泣丸」と「夜泣丸」の関係はかなり難解で、自分が今も
読み解けていないと思っている題材の一つですが、そのネタもとが
図らずもここにあったわけです。「夜泣丸」。
という具合に、『新諸国物語』は唐さんの大きな源泉であったようです。
早く満州系の調べ物を脱して、豪華本を読まなければ!
2024年8月27日 Posted in
中野note
↑こういう可愛らしい本です
今日は上機嫌です。
というのも、なかなか優れた資料を手に入れたからです。
先日にご紹介した『新諸国物語』の豪華本に続き、
今度はの「なかよし三月号」の付録『新諸国物語 オテナの塔』を
ヤフオクで見つけて競り落としました。
「三月号」とあるのみで、それが昭和何年の3月だかは謎です。
始まって1行目で、唐さんがせりふに描き続けてきた「オテナの塔」
の「オテナ」とは何かが判明しました。
唐さんに付き合い、「オテナ」と何度も耳にし、口にしながら、
それが何なのか、よく考えてみたら調べていませんでした。
なんだか分かった気になっていて、疑問にも思わなかったのです。
1行目にこうあります。
「オテナとは、えぞ(むかしの北海道)のことばで、
酋長(しゅうちょう)という、いみです」
つまり、アイヌのことばだということです。
つまり、「オテナの塔」は「酋長の秘宝を隠した塔」という意味
だったのです。
この本には、まだ発見があったのですが、それは、また明日。
2024年8月26日 Posted in
中野note
↑2019年の唐ゼミ☆公演『ジョン・シルバー』2幕より。
重村大介くんの演じた小男の長せりふは、『煉夢術』の偏執狂のせりふ
をそのまま援用したものです。唐さんが気に入っていたのだと思います
昨日、皆さんと読んだ箇所は第1部8場と9場、第2部の序盤でした。
このように『煉夢術』は2部構成になっており、1部は9つの場で
分かれているのに、2部はワンシーンのみという不思議な構成です。
これは私の推量なのですが、
唐さんはまず1部を書き、それからしばらく経って
2部を書いたのではないかと睨んでいます。構成だけでなく
それほどにテイストが異なる。それだけでなく、
1部は1部のみで完結している印象も受けます。
とまあ、色々な感慨がありますが、
まずは第1部の8場と9場をあたってみましょう。
地図を引き裂いて東京の裏側、闇の世界、夜の世界、
時の止まった夢の世界にやってきた青年は、屠殺人に導かれて
彼を惹きつけてやまなかったオルガンのもとにやたどり着きます。
誰がそのオルガンを弾いているのか? 答えは、自分自身でした。
要するに、この物語は自分探しであったわけです。
と同時に、彼は、街を管理する屠殺人たちの罠によって母親を
殺してしまいます。オルガンが鳴る時には誰かが姿を消すというのが
この街のルールです。今回はその対象が母親だった。
彼は期せずして自らの母を殺します。
自分の源に帰りたいという帰巣本能と、外に飛び出していきたいと
いう青年の冒険心を同時を表すシーンといえます。はっきり言ってこの
母殺しには、唐さんが兄貴と慕った寺山修司さんの影響も濃厚です。
一方、自らが罠にかけられたことに気づいた青年は、屠殺人に怒り、
ずっとこの街に居座り続けることを宣言します。
すると、屠殺人たちは戸惑う。このへんは唐さんのユニークさを表す
シーンで、主人公自身はかなり真剣なのですが、読者としては笑えます。
なにせ、オレは自立しないぞ!と謳うわけですから。
このへんの開き直りは唐さんの個性だと思います。
実際、これから上野・台東区をネタにしてどれだけ作品を生んだか。
後の唐さんの業績を知る私たちにとっては、納得の宣言です。
攻めの引きこもり、そういう感じがします。
9場で、青年は夜明けとともに昼の世界、日常に戻りますが
そこでも夢の世界の話ばかりしている、という設定で、
完全に夢遊病者化しています。塔のある街を巡る物語はこれで
完結しているようにも思えますが、先に進み、2部へと続きます。
2部に入ると1部の神妙さや暗さは鳴りをひそめ、一気に喜劇的な
やり取りが展開します。夜の街から昼の街へと帰るためのバス停で、
停留所の受付人とお客の一人である偏執狂がひたすら揉める、
しかもかなりくだらなく揉める、という軽演劇な展開を見せます。
偏執狂は、父親から受け継いだリヤカーと一緒にバスに乗ると
言って聞かず、受付人は当然これを静止して問答に発展します。
このやりとりが珍妙で面白い。
しかも、いつもはやってくるはずのバスは全然やってきません。
こういうシチュエーションの中でナンセンスな対話が延々くりひろげ
られます。よく見れば、1部の青年も、2部の偏執狂も、
過去の思い出にどっぷり浸かっているという共通項もあり、
いかにも唐さんだなあと思わせます。
ただ表れ方は明らかに違って、先ほど書いたように2部のやり取りは
かなり喜劇的で、何より登場人物と舞台が活き活きしています。
ようやく芝居味が出てきたなという印象です。
劇作家としての技量が明らかに上がっている。1部と2部の間に、
唐さんに何があったのかを想像しながら来週も読みます。
次回は、9/1(日)。
2024年8月24日 Posted in
中野note
今日も都内に出ました。目的地はサントリーホール。
芥川也寸志賞の選考コンサートを聴くためです。
目当ては、選考のための演奏を指揮する杉山洋一さん。
神奈川県民ホールでは10月5-6日に、イタリア人作曲家のS.シャリーノ
による『ローエングリン』という作品を公演します。その指揮をして
頂くご縁で、自分は杉山さんの世界に親しむようになりました。
杉山さんご自身が作曲家でもあるので、和楽器を使用した
作曲作品を聴いたり、他の現代作曲家の曲を指揮されたものを
ずっと聴いてきました。特に作曲作品は面白く、聴いてるとボンヤリ
してきて、ずっと浸っていることがあります。
1月には、名古屋フィルハーモニーとの共演されるのを名古屋まで
聴きに行きもしました。もはやちょっとした追っかけです。
杉山さんに接していると、自分が20代の終わりに初めて感心した
クラシックの演奏会を指揮したフィンランドの作曲家・指揮者の
エサ=ペッカ・サロネンさんを思い出します。
ご自身が作曲家であることで、同時代の作曲家たちの意志を
くみ取って鮮やかに伝導していく存在。そういう感じがするのです。
2022年にロンドンで過ごしたことで、自分は現代音楽についての
見方が変わりました。オルガン曲やオラトリオのように古風なもの
まで続々と新作が生まれているのを目の当たりにして、自由な感じを
覚えたのです。それがずっと演奏され続けるものかは問題でなく、
新作が生まれること自体が活力の証です。
サッチャーやヒラリー・クリントンが登場するオラトリオを
爆笑しながら聴いて、新作はウキウキしたものだと痛感しました。
同時にそれは、自分の保守性を反省する機会にもなりました。
さらに、そういうムーヴメントがあることで、
古典化した作品の演奏や上演もまた、パワーを帯びるのです。
今はJRの中です。家に帰ったら久々に、唐さんが自分たちのために
書いてくださった『木馬の鼻』の台本をめくってみようと思います。
2024年8月23日 Posted in
中野note
唐さんについての文章を書いています。
どう世に出るのかよくわからないのですが、勧めてくれる方がいて
朝と夜に書いています。
今日の午前中は、10年前に禿恵の紹介で行き始めて以来、
ずっとお世話になっている整体に行き、午後は観劇を2本しました。
1本目は、ずっと唐ゼミ☆を支えてくれている役者・
丸山正吾さんの出演する舞台で、六行会ホールでの公演でした。
タイトルは『Missing ドラゴンズ・バックへの歩調』です。
イーター(人喰いゾンビ)に侵食されていく世界で、残された人類が
家族や友人との情を育む話でした。丸山さんはゾンビの代表として
活躍していました。普段、あまり感激しないタイプの舞台なので、
移動の電車の中は当日パンフレットを熟読して異文化交流しています。
夜の2本目は、齊藤亮介が熱心に取り組んでいるケダゴロの
『代が君・ベロベロ・ケルベロス』をシアタートラムで観ました。
代表の下島さんは遊び心に充ちていて、舞台を通して色々なことを
教えてくれます。
前回に観た『ビコーズカズコーズ』では林あさ美さんの
『ジパング』という歌が印象的でしたが、今回は中島みゆきさんの
『時代』でした。・・・『時代』。昨晩の鴨リンピックでも唱和されて
不思議な感慨に打たれました。
そういえば、唐さんと三枝健起さんが共同作業の第一作である
ドラマ『安寿子の靴』をつくる時、居酒屋に流れる『時代』に
聴き惚れて、主題歌を中島みゆきさんにお願いすることになった
そうです。そうして、NHKドラマの際は
作詞:唐十郎 作曲・歌:中島みゆき
という流れができていったのだから、面白いものです。
二晩つづけて聴いた『時代』をイヤホンで聴きながら電車の中で
これを書き、横浜に帰っています。
2024年8月22日 Posted in
中野note
今日は夕方から新宿に出かけました。
南河内万歳一座のプリマである鴨鈴女さんが主催する「鴨リンピック」に
立ち会うためです。そう。観るというより「立ち会う」という感覚です。
この、4年に一度、夏季オリンピックイヤーに鴨さんが続けてきた
祭典の大切さと味わいが、自分はよくわかるようになりました。
8年前か、12年前か、同じく名作『青木さん家の奥さん』を以前にも
観たことがあったのですが、それよりもずっと味わい深く、
尊ささえ孕んでいるように今の自分には感じられました。
コメディとして上演されているものにこんな言い方は変かも
しれませんが、自分には、終演後の舞台全体がまさしく爽やかな
汗をかいて、清々しい空気に充ちているように感じられました。
やれるだけやりきったものの余韻。快い余韻がありました。
久々に赤松由美さんを観て、彼女がひたむきに突進しながら、
共演者の皆さんの起爆剤になっているのも頼もしく思いました。
彼女が唐組に入った年、私も大学に入学して唐さんに出会ったのです。
同級生的な感慨がどうしてもあります。
良い気持ちで、各駅停車の副都心線〜東横線に乗って帰ってきました。
明日から東京で4回。大阪で5回。
鴨さんたちの先の読めない激闘が続きます。
がんばれ、鴨リンピック!
2024年8月21日 Posted in
中野note
↑力の入った装丁の豪華本を手に入れました。タイトル文字に魅了される!
このところ、7歳の息子はとにかく「最強」という言葉に痺れています。
日夜、質問攻めにあいます。それというのも、私が子供の頃に親しんだ
『聖闘士星矢』がどんな物語であるのかを彼に説明したためです。
以来、ポケモンのミュウツーと獅子座のアイオリアが闘った場合に
どちらが勝つのかをしつこく訊いてくるのです。
アイオリアの必殺技、ライトニングプラズマは1秒間に1億発の
パンチを繰り出すのですから、私がポケモンに詳しくないとはいえ、
そりゃケタが違ってどんなヤツでもかなわないだろうと教えたの
ですが、息子は納得せず、どんなポケモンなら聖闘士をノックアウト
できるのか、日夜知恵をひねっています。
こうして、私と息子の幼少期(一方は現役ですが)が闘う毎日です。
さて、同じく幼少期の唐さんの心をとらえて離さなかったのが
『新諸国物語』です。ラジオドラマに始まり、ドラマや映画へと
派生したこのシリーズと自分は向き合ってこなかったことに
ハタと気づきました。なんとなしに唐さんの歌う『オテナの塔』
を聴いてわかった気になってきたことに気づいたのです。
そこで、よく調べてみることにしました。
まだ、馬賊・小日向白朗に関する本を制覇するのに時間がかかり
そうなのですが、間に挟むのも一興かも知れません。
日本国内に心ときめかす怪異があるという筋立てのようで、
いくつもの作品が収められている分厚い本です。
唐十郎の源泉のひとつに、また一つ迫ってゆきます。
2024年8月20日 Posted in
中野note
↑配られた当日パンフレット
今日は朝から家族4人で出かけました。
行き先は横須賀芸術劇場。この劇場で毎年行われている
「子どものための劇場裏側探検ツアー」に参加するためです。
このツアーは90分になんなんとする熱の入ったプログラムで、
子どもたちに劇場のバックヤードを案内しながら、
音響・照明・舞台部をくまなく体験させるという充実ぶりでした。
今回は、その最後の方に上演される朗読劇の台本を書いたので、
たのしみに伺いました。ちょうど良いメルヘンチックな家のセットが
あるので、それを活かした短編を書いてほしいというオーダーで、
その制約がある分、発想しやすい仕事でした。
あとは、オペラに力を入れてきたこの劇場の特性をはじめ、
劇場で働く多様な人たちをできるだけ紹介できる内容にしました。
演者・スタッフの皆様が台本を補って余りある上演で、
頭の下がる催しでした。向かいの商用施設での買い物や食事、
軍艦を眺めるところまで、お昼過ぎまででしたが、
満喫して帰ってきました。さすが横須賀、フードコートには
外国人が多くてロンドンを思い出しました。
2024年8月17日 Posted in
中野note
↑昨日、入手できたものです。細部の完成度がすごい
今日は、県民ホールで担当している青島広志先生と水野英子先生による
講座本番の日でした。昨日が台風だったので予定されていた準備ができず、
早朝から同僚とバタバタと会場を整え、受付には大量の物販その他を
並べ、リハーサルが進むのと並行して水野先生をお迎えに行き、
という慌ただしい一日でした。
本番は、機材トラブルも多かったけれど、なんとか終わることができて
終演後のロビーで水野先生が長年のファンの皆さんに囲まれているのを
見ていると、皆さんの尊敬が伝わってきて、「生きる支え」という
言葉が大袈裟でなく支えられてきた方々、突き詰めた創作がそのような
役割を果たしてきた水野先生との関係の厚さを体感できました。
まさに、水野英子という作家は革新者だということが、
事前にマンガを読み、さらにお話を聴いて実感させられる会でした。
10代半ばから仕事をして、いまや画業70周年だそうです。
今後は、来月末から始まる個展があるそうですから、
これを必ず見に行きたいと思っています。あの、試行錯誤され
計算された画の凄みを体感できる結晶のような展覧会になるようです。
昨日、特別に物販されたマンガを買いました。
子育て中に長期連載ができず、短編を世に送る中でご自身が良いと
思うものを集めた小品集とのことです。そのことを知ると、
それぞれがまた違った輝きを帯びるように思います。
たくさんお話しできて、燃焼した一日でした。
2024年8月16日 Posted in
中野note
↑これをよく聴いています
明日、水野英子先生をお迎えして講座が行われます。
水野先生とは去年の夏に電話をしてお話し、決然とした物言いに
さすが女手塚と異名をとる女傑だと感じ入りました。
オファーをかけたのは3月頃で、ちょうど読売新聞の連載で
水野先生が半生を語った記事が毎日載っていた時期です。
門外漢として、先生の世界に入ってゆくのに、あの記事には大いに
助けられ、また貴重な資料ともなりました。
読売新聞を販売店まで買いに行き、毎日ハサミでチョキチョキと
切るのは、唐さんの『朝顔男』が連載されて以来だと感じ入ったり
もしました。
水野先生は10代半ばから活躍を始めたので、すでに画業70周年が
迫っています。初期の手塚治虫影響化のもの、続く大きな瞳の
少女たちを経て、80年代に迫ると、ドレスのドレープも星も、
圧倒的な画力を持つ繊細な線の連なりに惚れ惚れします。
しかし、若い頃はマンガ業と並行して、ガレージで
ドラムセットを叩き、モダンバレエに挑戦し、アフロな髪型に
してジーンズを履きこなす女性でもありました。
先日に少しだけご自宅をお訪ねしてお話ししましたが、
本格的な会話をするのは明日が初めてです。
そして、こういった機会はなかなか無いでしょうから、
どうしても最後になってしまうだろうとも思います。
明日の話題はワーグナーを中心としたオペラ作品ですが、
水野先生を通じて、自分はスコット・ウォーカーを聴くように
なりました。車の中でずっと聴いていると、水野先生の作品を
貫く透明感も見えてきます。
2024年8月15日 Posted in
中野note
↑8/17(土)15:00開演です。きっと台風一過。当日券出ます
今日はお盆の最終日でした。今日まで道がすいていて運転がしやすい。
方や、関東地方は台風の準備に追われています。
イベントの中止や延期がどんどん発表されています。
こういう事前準備の発表はずいぶん早くなりました。
現在は劇場やホールでの公演をやっていても主催者が
多くの責任を取らなければならない世の中になってきています。
催しがあることで観客は会場を目指す。そのことによって事故を
誘発する危険性がある、というような。
テント演劇をやっているとなおさら、身につまされます。
2012年に足柄で行ったテント公演の『木馬の鼻』は中止にし、
2014年に行ったトラック演劇での『木馬の鼻』は決行しました。
お客が一人でも来るならやる、というかつての意気込みや美学は、
今や違ったものになってきています。
あと、自分は神奈川県民ホールで明後日に行う公演の担当を
しているので、明日の動きが封じられることを予見し、
今日のうちに多くの準備を行いました。
音楽家の青島広志先生とマンガ家の水野英子先生の共演による
音楽&歌唱付き対談です。担当になったことで、この半年
ほどは水野先生の作品にずいぶん触れてきましたが、1980年代に
創作された『ルートヴィヒ2世』は一番の気に入りです。
物語も良く、絵を一枚切り取っただけでも見ごたえがあります。
一方で、青島先生と水野先生は毒舌だからなあ。
世間の台風対策とは違い、かなり反時代的なトークになりそうです。
2024年8月14日 Posted in
中野note
↑先日、『少女都市』はどうしたら読むことができるのか?と問い合わせ
を受けました。この角川文庫に収録されています
7月30日に始めた『少女都市』研究ですが、
先週末に台本の打ち込みを終わり、その後、誤字脱字チェックも
今朝を以って終わることができました。
学生時代以来、久々に、じっくりと読んでみて、
改訂作『少女都市からの呼び声』とは違った魅力がわかってきました。
『少女都市からの呼び声』は完成度の作品です。
病室に始まり病室に終わって、主人公・田口の幻の妹・雪子がいわば
夢の世界にいる。その雪子が田口と入れ替わりに現世に現れることに
成功するも、程なくして挫折し、また元の世界に封じられていくという
明確な構造を持った劇です。あちらとこちらが明確に書かれている
ために、たいへんにわかりやすい。
一方、オリジナルの『少女都市』は明晰さでは劣るものの、
満州や大陸的なものが噴き出すような勢いに満ちています。
特に終盤などはかなりカオスなのですが、荒削りな魅力がある。
台本を製本し、さらに探求してみようと思います。
現在、毎週日曜のオンラインWSは『煉夢術』を扱っていますが、
これが終わったら『少女都市』を始め、次に『少女都市からの呼び声』
に進むことにしました。それらが終わったら、かつて一度やったことの
ある『吸血姫』をもう一度やるのも面白いかもしれません。
しばらく、唐さんが仕掛けた「少女もの」を追いかけています。
2024年8月13日 Posted in
中野note
↑当時は定価200円とのことです
2日前、ヤフオクに出ていた出物を競り落としました。
競り落としたといっても、入札したのは私だけ。
新劇1969年11月号、創刊以来200号記念でもあったものとのことです。
お目当てはもちろん、活字化初掲載の『少女仮面』。
これが世に出回った最初でした。
実は、半年ほど前にはこの雑誌の存在に気づいてはいました。
しかし、手に入れることができなかったのです。
当時の古本市場では、雑誌「新劇」の他の号、約5年分も含めた
50冊強で2万円という価格がついていました。
どうしても手が届かない金額でないだけに悩みましたが、
他の号がうちに押し寄せた場合、貴重なものだけに処分できないし、
かといって全部を抱えるほど私の家は広くないし、という具合に
決心がつかなかったのです。結果、その時は桜木町の青少年センター
にある演劇資料室の同号をコピーさせてもらうことで凌ぎました。
『少女仮面』の稽古中に出てきた言い回しへの疑問を2箇所、
この新劇掲載版に解決してもらいました。
『鐵假面』や『蛇姫様 わが心の奈蛇』のように大きな違いはなくとも、
この進撃のほかは全部誤植している、という箇所を発見できたのです。
そのようなわけで、今回の一冊ポッキリ安価での入手は、
これからも『少女仮面』をやりなさいよ、という天からのエールとして
受け取っておきます。本棚の良い位置を燦然と占めています。
2024年8月 9日 Posted in
中野note
↑これを読みました
『少女仮面』公演が終わって以来のぜんそくはなかなかしぶとく、
どうも咳が治りません。そこで、今日はお医者さんに行ってより強めの
薬を出してもらいました。あとは、できる限り大人しくしていることが
大切なので、仕事も家でし、前から約束していた観劇のほかは出かけ
ないようにしました。
すると、必然的に本が読めます。
昨日、小日向白朗の関連書を探しに行ったところ、
どうも近隣本屋にはなく、これはネットで注文することにしました。
一方、「慶安太平記」のタイトルを戴く上記の本を手に入れました。
慶安太平記とは、慶安の変、要するに徳川家光没後の由比正雪に
よるクーデター失敗事件を描いたもので、講談の連続もので有名です。
唐さんが1968年に上演した『由比正雪』が気になる私は、
これまで断片的にではありますが、神田松之丞さんや立川談志さんの
CDを聴いてきました。加えて、全体を本で読みたいと思ってきたの
ですが、かなり以前の古本になってしまい手に入れるのが難しいのです。
だから、この『真・慶安太平記』というのが並んでいるのを
知って小躍りしました。『少女都市』は1969年。『由比正雪』は1968年。
お隣さんみたいなものだから、小日向白朗の本を待つのにちょうどいい、
そう思ったのです。
今日、一日かけて読みました。家で、喫茶店で、病院の待合室で。
そして大いに空振りました。この『真・慶安太平記』は由比正雪の
正体について新説を打ち出すのが妙味で、スタンダード由比正雪の
素性や物語はまったく描かれていないのです。
それにしても、由比正雪がいつ出てくるんだろう?
いつ出てくるんだろう?と思いながらページをめくり続けました。
そう思わせながら300ページ強読ませてしまうのだから、
大した筆力、読みやすく出来ているレイアウト(改行や文字の大きさ)
に感心しました。関係なかったけど、関係ない時間は贅沢なものです。
新たな薬で、咳もおさまってきました。
2024年8月 9日 Posted in
中野note
↑甘粕正彦さんとは違い、戦後も生きて活躍した小日向白朗さん
毎朝、『少女都市』を読んでいると、これがひどく報われなかった
作品だということがわかります。
一つには、例の状況劇場vs天井桟敷のケンカ騒ぎによって、
ただでさえ少なかった公演回数がさらに縮小してしまったこと。
当時の観客はスキャランダラスな事件に熱狂するばかりで
劇の中身など吹き飛んでしまっただろうことは簡単に想像がつきます。
それに、『少女仮面』の向こうを張って書かれ過ぎています。
例えば、3部構成の真ん中は『少女仮面』の腹話術劇ならぬ
人形劇が展開するのですが、これが『少女仮面』ほどには上手く
いっておらず、なんだかカオスなパペットショーといった具合。
『少女仮面』で登場した甘粕大尉を意識して、『少女都市』には
馬賊王と言われた小日向白朗の名前が何度も登場しますが、
これも、そこまで効果をあげているかといえばいくつも
クエスチョンが浮かんでしまいます。
(唐さんは「朗」の字を「郎」と改めて書いている)
でも、これらはあくまでも現段階での感じなので、
何か活路はないかと、さらに読み深めています。
早朝に『少女都市』を読んだ後、昼間の自分の頭の中は
くだんの小日向白朗や満州でいっぱいです。
お盆周辺、日本全体が「戦争」を考えるこの時期に取り組む課題
としても適切なように思います。「満州」「馬賊」「建国大学」・・・
本を読み、ドキュメントを見ていると戦前と戦後が地続きである
という当たり前のこともわかってきます。
2024年8月 8日 Posted in
中野note
昨日発売の「悲劇喜劇」9月号に書きました。
唐さんについての特集のうち2ページです。
7月末に読み始めた『少女都市』は3幕に差し掛かり、あと3日ほどで
一周目を読み終えます。『少女仮面』を終えたからわかることが沢山
あります。来年のテント公演の演目、どうしよう?
2024年8月 6日 Posted in
中野note
↑彼らを持ち運ぶときは顔にタオルや手ぬぐいをかけるべし。
丸山雄也くんが腹話術を習った先生を通じて、こうした作法も学びました
本来なら、今日は昨日の『煉夢術』レポートの続編の予定でしたが、
それは明日に繰り延べます。現在、23:31分。先週はじめの片付け以来
ハンディラボにやってきたところ、さまざまな思いが去来したからです。
今、1日の仕事を終えてここにいるのは、齋藤と津内口が
唐組からお借りした2体の腹話術人形をケアしてくれたからです。
「お返しする準備が整いましたよ」といういう連絡をくれたので、
一旦、自宅に持って帰ろうと、上の写真の2体を取りに来たわけです。
左はイトくんといいます。右はタカシくんといいます。
これは、お借りする時に唐組の久保井さんと藤井さん、福原さんに
教わりました。タカシくんはみんなに愛されて、『少女仮面』の
出演を重ねてきたベテランです。イトくんは、唐組の『ビニールの城』
で活躍してきた気鋭です。
はじめて2体を見た時、イトくんのビジュアルが気に入りました。
しかし、可動性の高いタカシくんにはやはりそれだけの実力があり、
唐組事務所で悩んだ自分は、2体お借りして良いかお願いをしました。
唐組の皆様は、それを快く受けてくださいました。
2体を眺めながら、どちらにも愛着が湧き、私たちの『少女仮面』には
2体とも出演してもらおうということになりました。タカシくんを
操る丸山雄也くんをイトくんに似せ、イトくんを操る赤松怜音さんを
タカシくんに似せました。4人で鏡合わせ。私たちの『少女仮面』には
もうひと組、鏡合わせの2人がいて、それは老婆と少女・貝です。
「鏡」がキーアイテムである『ジョン・シルバー』は唐ゼミ☆の原点であり、
その続編たる『続ジョン・シルバー』こそ『少女仮面』の原型である
というのが私の考えです。風呂・山の絵・水道とくれば、唐さんの頭の
中は「銭湯」でいっぱいに違いない。だから、唐ゼミ☆の『少女仮面』
には「鏡」が登場します。自分の工夫というより、この芝居は
潜在的に「鏡」を望んでいる。そう思うからです。
イトくんとタカシくんが来てくれたのは、唐組のご厚情による偶然です。
自分はあまり運命論者ではありませんが、懸命に考えていると、
巡り合わせが自分を運んでくれるような感覚に陥る時があります。
イトくんとタカシくんによって鏡合わせが補完された時にそれを
感じましたし、山手事情社の谷洋介さんが座組に加わった時にも
同じ感覚を覚えました。長身であることを除けば、谷さんの
ビジュアルはまさしく「甘粕大尉」だからです。
私たちの『少女仮面』では、春日野が最後に『時はゆくゆく』を
歌います。原点主義の私としては、思いつきながら怖れや抵抗が
ありました。
正直に言えば今も、「これで良いのだろうか」
「唐さんは許してくださるだろうか」という自問自答があります。
「あたしは、何でもないんだ!」という従来の締めのせりふのなかに
逆説的な希望を語る行き方があるのではないか、という問いを現在も
問い続ける日々です。
しかし、どう考えても、この主題歌は春日野八千代を騙る女にこそ
ふさわしいと自分には思われるのです。。
そう思ってサトウユウスケさんに発注したところ、素晴らしいアレンジ
がきました。このプランはユウスケさんの伴奏によって支えられたのです。
加えて、詩人の新井高子さんの依頼で椎野が雑誌「ミて!」に執筆した
文章も自分を動かしました。あの中には、私たちが『ジョン・シルバー』
を初めて上演した時のご褒美として唐さんが、『時はゆくゆく』を
歌ってくださったエピソードがあります。
歌うべきか・歌わざるべきか悩んでいるときに
あれを読み、これは歌うべきだと思うに至ったのです。
正直に言って、私は自分たちの『少女仮面』が上手くいったと
思っています。数限りなく上演されてきた台本ですから、
唐ゼミ☆が公演して邪道ではいけないし、かといって過去の踏襲する
安全パイも良くないと思ってきました。
それなりにプレッシャーもありましたが、いつも通り
「唐さんは何を考えただろう?」と思案し続けるうちに、
自然とあの上演に行きついたのです。
結果的に、自然体でやることができました。
それは、自分のアイディアがどうこういうよりも、
上記のようにたくさんの偶然に支えられ、座組内外の人々に補完されてきた
結果でもあります。ありがたいことだと思います。
これから上演する時には、終盤部分に施したい工夫や課題もすでにあります。
その時に、またイトくんとタカシくんの力も借りて上演したいと思います。
しばしのお別れですが、再会を期して。
唐組の皆様だけでなく、二人にも感謝します。ありがとう。
2024年8月 3日 Posted in
中野note
↑カーテンコールは撮影OKだった
今日は昼夜でクラシック・バレエに関する公演を観ました。
お昼は、新国立劇場にて "BALLET The New Classic" を、
夜は、職場である神奈川県民ホールで横浜バレエフェスティバルの
前夜祭を。縁遠かった自分が自然にバレエを観ている。
関わっている方々に知り合いもできてきている。
これは英国での研修を終えて以来、 県民ホールで働き始めたことの
効能のひとつです。初めは、場違いなだあ、なんて思っていたけれど、
ある時、同じ劇場で働くバレエ通の大先輩に「バレエファンは
足の甲を見るんですよ」と教わって、それからは少し親近感を
感じました。確かに、足の甲がすごい人はすごい。
オルガンを身近に感じるようになったのも県民ホールの効能で
この1年半でずいぶんいろんな作曲家と曲を知り、何より
各地のホールや教会にあるパイプオルガンを聴いてきました。
これには、その前の1年、ロンドンで過ごしたことも
聴いていて、そこここの教会に行って演奏やミサに接した
おかげで親しんできたという前段もありました。
明日から始まるオンラインWSのお題『煉夢術』に接していると
20代前半の唐さんが抱いたヨーロッパへの憧れを強烈に感じます。
そしてそれは、唐さん特有のものではなくて、当時の若者全般が
持つ知的関心だったように思います。ベルイマンの映画とか、
回顧展があったらたっぷり時間をとって映画館に通ってみたいと、
『煉夢術』を読みながら自分も学生時代的なことを夢想します。
2024年8月 2日 Posted in
中野note
↑1回に2発、朝晩吸入します!
『少女仮面』公演以来、咳がでます。
そんなに激しくはないけれど、静かな場でムセると目立つので
早く病院に行ってクスリをもらいたいと思いながら
今日まで来てしまったのを、ようやく病院に行ってきました。
考えてみれば、目下研究中の『少女都市』に出てくる
フランケ醜態博士もぜんそく持ちで、そのために満州行軍からの
離脱を余儀なくされたことを心の傷として持ってます。
身体に障害を持って戦後を生き延びながら、
仲間たちと死にきれなかったことを悔いる。
そして、同じく身体障害を持つヒロインの雪子に安らぎを覚える。
自分にとってフランケというキャラクターには、純朴なものとか、
仲間たちへの想い、コンプレックスを持つ者のシンパシーを感じます。
もちろん、押し出しは不気味だったり、コミカルですが。
クスリをもらったので、数日で咳もおさまるはずです。
咳がおさまったら、なるべく薬は使わないようにして。
20代の頃は公演が終わるごとにひどい発作を起こして
自分にはどうしても埃っぽい劇場や芝居が向いていないのではないか
と考えたこともありました。
今では付き合い方を覚えて軽度で抑えながら、
そろそろ休めという身体からのサインを感じながら、
すぐにまた劇がやりたいと思っています。
ああ、愛すべきフランケ。
2024年8月 1日 Posted in
中野note
↑正面から撮るとどうしても光の反射が入るので、斜め撮り
『下谷万年町物語』カーテンコールの写真を家に飾りました。
『少女仮面』片付けの際に、今年の初めに四ツ谷で行った写真展の
パネルも一緒に整理しましたが、60枚以上あるうちのこれだけは
取り出して、飾ろうと思ったのです。
うちはまだまだ子どもたちが暴れ回っていますが、
それでも、以前に比べれば話がわかるようになってきました。
それに、椎野が復帰する前はいかにも昔の思い出という感じが
したと思いますが、今では、これからもやろうという余裕が
出てきました。
これからもやろう!という気持ちで、
写真家の伏見行介さんが贅沢につくってくださったパネルを
朝晩、眺めています。
2024年7月31日 Posted in
中野note
↑1971年に中央公論社から出版された箱入り単行本です。
執筆から時間が経ってからの出版に、唐さんがこの台本を大切にして
いたことが伺えます
『少女仮面』公演のためにここ2週間お休みしていましたが、
今度の日曜日から、恒例のオンラインWSを再開します。
新たなお題は『煉夢術』。唐さんが24-25歳の時に書いた台本で
冬樹社の作品集に3本目の作品として載っています。
それまでの2本は短編だったのですが、かなり分量が増え、
初めは劇団に誰も書く人がいないから、という理由で始めた劇作も
馴染み、野心的に書こうとした青年・唐十郎を感じることができます。
一方で、1967年に紅テントを発明する前の唐さんの、
本来持っている内向性がいかんなく発揮された作品で、
青年期独特の暗さと共に全体が進行するなかで、
唐さんの原点を見極めていきたいと考えています。
一見、抽象的な設定の中に具体性を発見するとぐっと読みやすく、
内容が身近なものになるでしょう。そういう読みをするつもりです。
・唐さんが描く「塔」とは何なのか
・唐さんはなぜ地図売りを描き、そこに何を託したのか
・唐さんの描くオルガンの響き
こういったところを読み解きながら、初期唐十郎のスタティックな
世界を味わいましょう。暑苦しい夏には、静謐な台本を!
2024年7月30日 Posted in
中野note
『少女仮面』片付けから一夜明け、次の目標を定めました。
とりあえず、『少女都市』を研究します。
改作『少女都市からの呼び声』の影に隠れて上演されることのない
『少女都市』ですが、早稲田小劇場のために書かれた『少女仮面』に
対抗して唐さんが自らの状況劇場のために書いた作品ですから、
自分の体に『少女仮面』が入っている今こそ、読み時だと思うのです。
文庫本や単行本、いろいろなバージョンがありますが、ここはやはり
『季刊 同時代演劇』創刊号に掲載された初出版と向き合います。
3週間ほどで読み込むのが目標です。
いずれ本読みWSで、『少女都市』と『少女都市からの呼び声』の
読み比べをしてみたい。狙っていきます。
2024年7月29日 Posted in
中野note
↑昨晩の打ち上げの様子。こんな風な呑み会は唐ゼミ☆としては珍しい
公演終了から一夜明け。
今日は午後からハンディラボに集まって積み下ろしと片付けを行い
ました。今回の舞台装置は特に荷軽く済むことを意識してデザイン
されているので、あっという間にトラックは空になり、道具の収納や
衣裳・小道具のケアに進みます。
昔懐かしい二層式の洗濯機をフル稼働させて、
黒、白、カラーに分けて衣装を洗濯しました。
新たに購入した衣類が多いので色落ちによって他の衣裳が染まるのを
避けるためですが、それもこれも再演を目指してのことです。
洗えないような衣裳は滅菌剤を振りかけてよく干し、
靴もケアしました。『少女仮面』は革靴・ブーツの類でいっぱい、
暑いのは私たちの体には堪えますが、他方、殺菌作用としては
絶大な感じがします。脱水後の衣類もあっという間に乾きました。
差し入れで頂いたお酒やお菓子を皆で分け、ハンディラボをよく
掃除して今回の公演も一区切りです。あとは、これから経理処理や
報告書づくりに向かいます。これには数週間かかるので気長にやります。
座組のみなさま、おつかれさまでした。
↓たくさんの靴にお世話になりました
2024年7月28日 Posted in
中野note
今日も10:00に横浜を出て、渋谷の氷屋さんでドライアイスを買いつつ、
11:00に劇場入りしました。30分で片付けとセッティングをして、
11:30から稽古。最終日になっても、少しずつ修正します。
今日も酷暑かつ大勢のお客さんに来ていただけたので、
あらかじめ通知をして開場を10分早めさせてもらいました。
13:20に客席が開き(冷房強め)、14:03に開演。
最後まで客席お一番後ろで観ました。
目の前で起きる役者たちの本番を経た工夫やお客さんへの対し方が
面白かったし、今後に向けた目標を見出したくて観ました。
最後まで観て、いくつか次回の上演に向けて期するものがあります。
15:45に終演してロビーでお客さんとお話ししながら、
劇場内はすでに解体作業に入り、自分は音響機材を返しに行ったりも
しながら19:00にはエコー劇場をあとにしました。
空間とそれを支えるスタッフの皆さん、ほんとうにありがたい方たち
でした。私たちの劇に相応しい(広すぎない)客席を持ちつつ、
あれだけ舞台空間が高さも含めて豊かな空間はなかなか無いと
思います。それにスクエアな空間だと人の気で埋まっていない気がして
演者は不安になるものですが、エコーさんはそういう余分がない分
ステージ上にいて居心地が良いのです。去年末に劇場巡りをして
ここが発見できて、それは本当に幸せなことでした。
19:00から駅前に移動して打ち上げをしました。
劇場の方に教わった「でですけ」というお店です。
恵比寿という街ににも愛着が湧きます。これまではガーデンプレイスや
写真美術館、つまり南口の街だと思っていましたが、反対の北口には
これだけ繁華街があって馴染みが良いことを初めて知りました。
昼間の駐車場代は高いけれど良い街です。
最初は21:00までと思っていたけれど、みんなで22:00近くまで
飲み食いしながら語り合って、来年はどうしようかも語り合って、
散会しました。明日は午後からハンディラボで片付けです。
テント公演とは違い、みんなと別れを惜しむ余裕があることも、
すごくありがたいことと感じています。
頭の中が劇中歌でいっぱいです。
次のことも考えつつ、でも、片付けと荷返しが終わるまでは
『少女仮面』と座組のみんな、『少女仮面』にまつわる唐さんの
余韻を感じていようと思います。
2024年7月27日 Posted in
中野note
↑カーテンコールの様子
今日は2回公演でした。これは何年ぶりか。
何しろいつものテント公演では1日1回公演が当たり前なので、
世間の演劇人が当たり前にこなしている2回公演に戸惑いを覚えながらの
上演でした。体力的にどう、というのもさることながら、
1回目が終わった後に2回目に向けて仕掛けや段取りを整える、
こういうことに漏れがないかどうかという心配がありました。
10:00前に横浜を出発して氷屋さんに寄りながら、
11:00より劇場入りしました。掃除や舞台復旧をして、
少し稽古、歌練習をしながら、あまりの酷暑に開場待ちのお客さんが
熱中症になってしまわないよう、急遽、連絡を回して開場時間を
10分早めました。これは、明日の千秋楽も同じ対応をとるつもりです。
午後1時過ぎは暑すぎて・・・
結果、13:20に開場し、14:00開演。
15:45に終演してさらに稽古し、夜の公演に備えます。
この間、舞台セットの水まわりに漏水があって復旧に時間が
かかりました。開場ギリギリまで作業にかかりましたが、
なんとか間に合わせて開場〜開演。
18:30の回は客席に余裕があったことと演者も2回目で、
リラックスした公演でした。よく笑いが起きて、良いものでした。
終演後は21:00過ぎに流れ解散。
韓国食材屋に寄り、参鶏湯を買って帰りました。
明日は千秋楽。次に公演する時への目標もたてています。
2024年7月27日 Posted in
中野note
↑本番前の楽屋はこんな感じ
今日はみんな15:30に集合しました。
エコー劇場には、開演前3時間前から入館できるルールがあり、
これは劇場側にとっても利用者にとってもとても良いものだと感じました。
若葉町WHARFでの最終稽古以来、ぶっ続けで動き続けてきたので、
夜公演のみの2日目に昼過ぎまでの休息を与えられたことは、
体力の回復や身辺を整理する意味でも、とてもありがたい時間でした。
その間、私は数日ぶりに県民ホールに行って仕事し、
昼は所沢に行きました。照明の山崎佳子さんの所属する会社が
所沢にあり、照明機材の追加をご相談する中で、自分でお訪ねする
ことになったのです。とても洗練されたオフィスに感心しました。
特に行きはかなり渋滞しましたは、帰りに渋谷の氷屋さんで
ドライアイスも調達し、15:45には自分もエコー劇場に入りました。
皆が掃除やセッティングを終えてくれていたので、
16:10から稽古、16:30から劇中歌シーンの練習をして本番に
備えていきます。初日の入場時は、この劇場の構造に慣れておらず
お客様にご迷惑をおかけしてしまったので、できる限りの対策も
とって、開場がスムーズにいくよう工夫もしました。
18:00開場とともに席が埋まっていき、今日は満席でした。
自分は最後列で観ましたが、初日より緊張がほぐれて滑らかになり
笑いもよく起きて、嬉しい本番でした。終演後は少しお客さんと
おしゃべりして、明日への修正点を伝え、21:00過ぎに流れ解散して
いきました。明日のお昼も満席ですが、なぜか夜は半分ちょっと
というところです。ここから申し込んでくださる方がたくさんいると
良いのですが・・・
2024年7月25日 Posted in
中野note
↑本番直前に調整中。肝心のゲネプロ・本番の写真は後日!
今日は私たちの『少女仮面』初日でした。
朝10:00に集まり、それぞれに準備しながら13:00のゲネプロを
目指します。私はいつもの氷屋へ。
お風呂の湯気用のドライアイスを買って戻り、
皆の掃除やセッティングを終えると、ゲネプロ体制へ。
この頃には、当日受付を手伝ってくださる助っ人の皆さんも
集まり始め、受付も作り始めました。
13:00-14:45にゲネプロをしてそれから修正作業。
スタッフに変更点を伝えたら齋藤が場内をつくり、
俳優たちとは楽屋で演技の直しを行いました。
16:45から劇中歌の確認をして、17:30から受付開始。
18:00に開場して、少し押した18:32に開演。
20:45に終演し、お客さんの送り出し、初日でしたから
多くの方に祝福された初日を過ごすことができました。
皆と少し話をして、21:45頃に劇場を後にして横浜に
戻ってきました。
客席最後列で観ていて、静かで集中度の高い公演でした。
緊張のために会話がゆっくりな部分もあったけれど、
ユーモラスな部分で笑ってもらえたし、それぞれの語りや
場面転換は慣れのために速まり、当初予定していた上演時間は
101分から99分に縮まっています。
一方で、エコー劇場の構造上、
階段のみの2階が劇場入り口、ロビースペースの小ささによって
早く集まってくださるお客さんに一度外に出て並んで頂く対応を
取らざるを得ず、いつもの地上一階、待ち合いスペースが潤沢にある
テント公演との違った入場に難しさを感じつつ、工夫を重ねています。
明日は夕方から劇場入りして、2日目に備えます。
2024年7月24日 Posted in
中野note
今日はエコー劇場で過ごす2日目。
昨日の残り作業を片付けて、午後から場当たりをしました。
一番大変なのは照明の山崎佳子さんで、初めて参加して頂き
苦労をかけていますが、その人柄に惹かれて役者たちが合わせを
厭わずにやっているのを見て、お願いして本当に良かったと
感じています。
ずっと唐さんと私たちの劇団を好きでいてくださっていた方なので、
粘り強く一緒にやり遂げたい思いが強く、
1幕ものなのではやく済むことを期待していましたが、
結局、13:30から始めて終わったのは21:00過ぎ。
公演作りにおいては、やはりやさしい創作は無いものだと
痛感しました。現在も横浜に戻って明日に向けての作戦会議を
しています。
一方で、早くもこの劇場で過ごすルーティンが生まれ、
恵比寿というこれまで馴染みのなかった土地にも愛着が
湧いてきました。
仕掛けのためにドライアイスを買いに行った渋谷の氷屋さんも
おもしろく、これから日曜まで毎日通う旨を挨拶しました。
こうして馴染んでいます。
これを書いている今も課題山積ですが、明日までに何とかして
初日にこぎつけます。
2024年7月23日 Posted in
中野note
↑風呂と火山
本日、10:00より恵比寿・エコー劇場に入りました。
外は酷暑ですが劇場の中は涼しく、音響・照明・美術の増員さんと
ともにキビキビと搬入から始め、『少女仮面』空間をつくりました。
エコー劇場はさすが劇団付きの空間として、
舞台・客席だけでなく楽屋やロビーに至るまで、
30年以上ここで公演してきた方々の工夫が詰まっており、
生きている劇場という感じがします。
150人の客席で、これだけ自由度のある舞台構造で、
天井も高くて、それでいて無駄に隅々に人間味がある空間というのは
なかなか珍しいのではないのでしょうか。
場面転換ありの劇には不向きかも知れませんが、
『少女仮面』の空間にここを選んで本当に良かったと思っています。
現場で初めて完成したヴェスビアス火山の絵とお風呂のセットを
並べると、実にしっくりきました。ああ、20代の唐さんの頭の中は
お母さんの実家である銭湯によって出来ていたのだなあ、と
みんなで納得しました。
こうして、これまで齋藤を中心に腐心してきたスタッフワークが
結集するのは感動的です。音響の平井さんはすでに欠かせない方
ですが、初めての美術家・中根聡子さん、照明家・山崎佳子さんを
力づよく感じます。岡島哲也さんがユーティリティ的にみんなを
支え、元劇団員のワダ タワーさんと重村大介さんも応援に来てくれて
います。手練の舞台人であるエコー劇場の皆さんも温かで、
12時間を劇場で過ごすうちにすっかり馴染んで帰ってきました。
明日もまた10:00から。場当たりを行い、
エコー劇場での『少女仮面』がはじまります!
2024年7月22日 Posted in
中野note
↑今日は作業に没頭しすぎて撮影を忘れたので、昨日の通し稽古より
今日はまず、昼過ぎに劇団員のみでハンディラボに集まりました。
大道具や小道具の残り作業を刈り取っていきます。
津内口は、昨晩は徹夜で当日パンフレットの仕上げをしてくれました。
彼女の誕生日を祝って、皆でケーキを食べたりして。
こんな真夏に公演をすることは野外劇を仕立てて東北ツアーを
した時以来なので、珍しいお祝いでした。
16:00になると他の出演者も集まり、汗をかきながら作業の仕上げと
片付け。19:30には運送業者さんが来て、1時間弱で積み込みを
終えました。
自分は別働で、当日パンフレットを印刷したり、
都内に出て音響の平井さんの倉庫に機材を積みに行きました。
酷暑と雷雨と、最後は大雨の一日でした。
けれども、首都高に乗って横浜に戻ると、都内であれだけ降っていた
ゲリラ豪雨はなりを潜め、地面が乾いています。
明日から毎日、恵比寿で過ごします。
あっという間の6日間になりそうです。
そうだ。開場寺、終演後に劇場内にかける音楽を編集しないと!
2024年7月21日 Posted in
中野note
↑メイクもバッチリしています
6日間お世話になった若葉町WHARFでの稽古が終わりました。
今朝は10:00前には集まってそれぞれに衣裳・メイクをフルに装着し、
音響の平井さん、照明の山崎さん、岡島哲也さんも結集して
11:10から通し稽古。水道や風呂の水、天井からふる工事の砂ぼこりなど
できるだけの仕掛けも行い、この1幕ものを進行させました。
私たちの『少女仮面』はカーテンコールまで含め、
休憩なし101分であるという上演時間に落ち着きました。
歴代のこの作品の上演の中では少し長めと思いますが、
唐ゼミ☆版として工夫を重ねた結果です。
13:00前に通しを終え、休憩時間も挟みながら16:00まで修正稽古、
その後は稽古用のセットをバラし、トラックを寄せて積み込みを行い、
お世話になった若葉町WHARFのスタジオを掃除して退出、
ホームであるハンディラボに帰りました。
明日の積み込みに備えつつ、全ての荷物を整えました。
ちょっと信じ難いですが、すでに1週間後には全ての公演を終えている
時間です。世間で流行っているコロナに足元をすくわれないように
しながら、火曜の劇場入り、木曜の初日と、ゴールを目指して
じりじりと全員で押し上げていきます。
2024年7月20日 Posted in
中野note
↑ラスト数ページでなだれを打って登場する人たちが準備不足や
粗雑にならぬよう、丁寧に稽古しています
今日は明日の最終通し稽古に備え、コツコツ手直しを行いました。
演技の細かなところ、立ち位置の調整、道具の出し入れの簡略化、
こういった細部を詰めることで、全体の底上げを図りました。
そもそものせりふ術の向上や、役柄の見直しも行います。
もっとお客さんに共感してもらえるように情けないヤツにしよう
情けないヤツにするには、ここのせりふの言い方をこう変えよう、
あ、ここにも工夫の余地がある、といった具合です。
こういう修正を一日かけてできるのは、まことに贅沢なことです。
来週の今頃は土曜の2回公演を終えてヘトヘトになっているだろう。
そんなことを考えると不思議な感じがします。
いつもはテント劇場を建てるところからなので、
急にくる本番に戸惑うところもありますが、
ここで詰めきっておかないとと思ってやっています。
どこかに取りこぼしはないか。
どこかに工夫の余地はないか。
どこかに根本的なやり口はないか。
合い間も『少女仮面』の話題一色になっています。
2024年7月19日 Posted in
中野note
今日も通し稽古でした。
今日から音響の平井さんが合流し、全体に効果音が入り始めました。
自分の音響はお役御免で、劇を見ることに集中し始めています。
こうなると、立ち位置によって見えずらいところはないか、
移動しながらチェックし、座席によって演者の挙動が伝わないことが
無いようより厳格に調整が可能です。
演技にせよ、セットや衣裳にせよ、ディティールを詰める
ところもあれば、大局的に観て、キャラクターを刷新するような
アイディアも出てきます。ここまできたからこそ、
根本と向かい合い、全体を見つめ直すことが人によっては必要です。
といった修正を、明日に時間をかけてやる予定です。
明日、直して、明後日に最終の通し稽古をして、
という具合に若葉町WHARFでの追い込み稽古が収斂していきます。
上演時間は100分強の見込みです。
2024年7月18日 Posted in
中野note
↑セットや衣裳も揃ってきている
週末までに3回の通し稽古をする予定です。
今日はそのうちの1回をやりました。
序盤にもたついたところもありましたが、
1場のボーイ主任のスパルタと粘着質ぶりがよく効き、
それがコミカルになる流れができてきました。
2場の腹話術師の残酷ショーには、別れた女を未練たらしく思う
要素がもうひと伸び必要で、しかし、人形の下剋上はかなり
うまくいきました。
3場の中間部は今回の上演の大きな課題で、これをいかに条理として
まとめ上げるかをずっと考えてきましたが、ある心理的なルートを
発見して、それが自然な流れの中に実現しつつあります。
感じた違和感を素直に問題視し、解決策を講じて明日に臨むのが
目標です。全編にわたる力の配分は、この通し稽古の中でしか
育まれませんから、明日にはさらに決まってくるはずです。
真剣ななかに余裕があり、余裕が笑いに結びつく、
顔つきがシリアスすぎて、かえってふざけているのかどうか
読みずらい。そんな上演を目指しています。もうひと超えも
ふた超えも! また明日も通し稽古です!
2024年7月17日 Posted in
中野note
↑人の心に届き、響くように
今日から本格的に若葉町WHARFでの集中稽古です。
今まで練ってきた改善点を全体に行き渡らせ、劇を土台から
パワーアップさせる5日間の始まりです。
この1週間で考えてきたアイディア、
『少女仮面』についての根本的な読みを役者たちと実際のものに
しながら、しっくりくるポイントを探ります。
ハマると「あ、これだな!」と皆で腑に落ちていく。
今日は全編にわたってさまざまな箇所を工夫しました。
明日はそれをこなれさせ、全体の通しの中で検証していきます。
最後には思い切り力を振り絞り、リミッターを外して
120%の燃焼で観る人の心を掴まなければならない
必然、負荷がかかる。
なので、喉を潰してしまわないように加減しながら
よく体を温め、一瞬で全力を出し、翌日までの回復量も計算して
日々を過ごします。まずは、明日にどんな結果を出せるか。
勝負の日々、細部を成形して全体のプロポーションを磨き、
正しいと思える流れの中に魂を込める毎日です。
2024年7月16日 Posted in
中野note
↑工房の片付け中の米澤。最近はハキハキとよくしゃべるようになった
今日はハンディラボでの作業を打ち上げ、
明日から週末までの集中的な稽古のために若葉町ウォーフに乗り込む
日でした。私は朝からトラックを借りて調布まで中道具の借り出しに行き、
皆は舞台の床の紋様を完成させ、『少女仮面』の重要な道具である
お風呂の着色などをしました。
床に凝るということは通常のテント公演だとあまりないことですが、
今回はタップダンスもあり、階段状の客席で上からご覧になる
お客さんもたくさんいらっしゃいますので、そういうことにも
凝っています。
この1週間というもの、最後に行った通し稽古を思い出しつつ、
『少女仮面』の各パートがどんなものかをもう一度考え直して
きました。曖昧に、何となく過ごしてしまっているシーンが
あるのではないか。そういう自問自答のなかで、何ヶ所か
新たな展開、あるべき劇の姿が見えてきました。
明日から早急に内容を更新しつつ、皆が『少女仮面』という
道具立てを縦横に使いこなせるよう、稽古を重ねていきます。
合間に佐藤信さんとおしゃべりするのも、若葉町の醍醐味です。
今日も「あの劇はおもしろいでしょう」と『少女仮面』演出の
先輩である信さんはおっしゃっていました。
本質を捉えた、新しい、私たちの『少女仮面』を探っていきます。
2024年7月13日 Posted in
中野note
↑Wikipediaより
今日も作業は進行中です。
喫茶店の柱や、床を構成するペンキ塗りをみんなで協力して行いました。
その間、稽古も行いました。
総計88ページの『少女仮面』において、
そのうち11ページは2場に当てられています。
「腹話術師」役はそれををほとんど一人でこなします。
正確には、人形もいますから、一人と一体で。
これまでの稽古では、滞りなく行っていたものの、
ずっと不足を感じていました。演者の丸山雄也くんの不足でなく、
全体の構成的に、自分にはこの場に対する理解が足りないように
思えてきたのです。
この、人形と人間の立場が入れ替わるという仕掛けを持った場は、
果たしてどこからどこまでがフィクションで、ノンフィクションか
という区分けに、モゾモゾとした違和感を感じてきました。
そこで、今日はこの部分について整理を行いながら細部を
理解し直しました。唐さんは1967年に出版した『特権的肉体論』で
「グラン・ギニョール」という言葉を書いています。
とすれば、この場を、19世紀末から20世紀初頭にかけて
フランスで流行った残酷人形劇を意識しながら、
自分流にアレンジしたことは間違いありません。
昨日はこの唐版グラン・ギニョールをだいぶ整理できました。
日々の稽古にあくせくし過ぎず、少し引いた目で全体を眺めて
部分を工夫する。そしてまた全体を見る。こういう作業ができると
かなり劇全体が底上げします。贅沢な時間です。
2024年7月12日 Posted in
中野note
いますでに、帰りの新幹線のなかです。
昨晩23:12に着いて翌日19:08に発つということは20時間の富山滞在で
あったということです。その間、いくつかの文化施設に行き、
運転もよくしつつ、かなり富山を満喫しました。
まず、昨晩は26:00までやっている店で食事しました。
白エビ、ウニ、ホタテの焼いたのを醤油をつけずに食べてくれと
店主に言われ、隣にいたおじさんが色々とツマミをご馳走して
くれました。
早朝から起き出し、周辺を歩いてまわりました。
例のオーバードホールのそばに行くと、記憶が蘇りました。
そして朝食。泊まったホテルに恵まれ、なかなか豪華でした。
そこで、ます寿司、ほたるいか沖漬け、焼き鯖。
その後、あらかじめ通達されたスケジュールによれば
昼食抜きとされていましたが、思ったよりも移動に
時間がかからないことがわかり、訪ねた先でアジフライを
ご馳走になりました。
・・・というなわけで、
振り返ってみればなかなかの豪遊な出張でした。
帰り道、なんとかお土産をと思いましたが、食傷気味のせいか
富山ものにはまったく食指が動かず、大好きな「雷鳥の里」を発見。
これは長野のものだけれど、
かつて何度も行った長野公演の際は、スーパーで小さいのを
買って常食するほど私はこれが好きなのです。
名物よりも美味いもの、というわけで劇団へのお土産は雷鳥の里です。
富山、良いところでした。
2024年7月11日 Posted in
中野note
↑開演時に鈴を鳴らし、終演時にスピーチしたエレン・スチュワートさん
率直にそこにいる、という感じに強い印象を受けました
今日はなかなかの強行軍でした。
早朝から車で都内に行き、その後、相模原市の橋本に行きました。
お昼過ぎにハンディラボに移動して衣裳や小道具の確認をしながら
みんなと話をし、夕方に鶴見に移動して、それからは電車。
東京駅に移動してビルの隙間のベンチでオンライン会議をやり、
その後に北陸新幹線に乗って富山に向かっています。
富山か・・・。
富山市は一度だけ行ったことがあり、あれは2006年に
ラ・ママ実験劇場が来日、『トロイアの女』を上演した時です。
私たちは何人かで連れ立って高速バスに乗り、
夜の公演を観たら即座に夜行バスで帰るという弾丸ツアーを
敢行しました。
劇場の中を立って移動しながら観風変わりな上演でした。
外国人の筋骨隆々とした役者たちが、いかにも古代ギリシャ人の
装いで目と鼻の先を通りながら芝居を繰り広げることは驚きであり
また、コミカルなことでもありました。
演出はルーマニア人のアンドレイ・シェルバンで、
19歳でピーター・ブルックに入門したというレジェンドです。
みんなで観に行こうかどうしようか迷っていたところ、
唐さんに、「シェルバンさんは知り合いだよ」と背中を押された
のを思い出します。
ことに感動したのは終演後に夜行バスの時間まで街をぶらぶら
していた時に、さっきまで古代の戦争を演じていた役者たちが
ラママのゴッドマザーであるエレン・スチュアートに連れられ
吉野家の牛丼を食べているのを発見した時でした。
あの時ほど吉野屋が輝いて見えたことはなかったし、
世界的なカンパニーの面々がちっとも飾らず、
地に足をつけて語らいながら食事しているのに感激しました。
あの、エレンが牛丼を頬張る時の表情は素晴らしかった。
あと1時間ほどで、富山駅に着きます!
2024年7月10日 Posted in
中野note
今日も作業日でした。
劇団員のみハンディラボに集まり、工房スペースで道具作りが進みます。
自分はといえば、各所に案内状やリリースを送り、当日パンフレットの
文章を練りました。
作業としては、『少女仮面』の舞台である喫茶〈肉体〉に飾られた
ヴェスビオ火山の絵のデザインのチェックをしたり、風呂の仕掛けの
問題点を齋藤や椎野とともに解決したり、緩やかにコツコツと前進した
1日でした。
昼食に出たり、スーパーに寄って買い物をしたりもできました。
来週の集中稽古までに、音響プランを練り直し、稽古の改良箇所も
整理していきます。集中的な詰めの作業が始まってしまうと
たった五日で『少女仮面』が決まってしまいます。
いつもならテントたてという段階があって、
ここでも頭を整理することができましたが、
今回は間髪入れずに劇場入りから本番が押し寄せる感じです。
世の中の劇団の大半がこのスリルを生きているのだと実感します。
あと2週間で本番です。
2024年7月 9日 Posted in
中野note
今週の月曜日から、本拠地のハンディハウスに入り、
美術・小道具・衣裳の製作作業に入っています。
この1週間をここで確保するため、
6月上旬から7月頭までに前倒して稽古を進めてきましたが、
『少女仮面』の短さに助けられ、エンディングまできちんとつくり、
カーテンコールも目算がたっています。
同じ作業をしていても、皆が劇やそれぞれの役柄の進行をよく
心得ているので、工夫するにしても方針を共有しやすく、
『少女仮面』を中心にした相談が各所でなされます。
例えばそれは、防空頭巾の柄や、ボーイが歌って踊る際に
左手に持つトレーの上ものを考える際に、皆の理解が的確な
工夫に結びついていくということです。
自分はといえば、
昨日は皆が作業を終えた帰りに駅まで車で送ったのですが、
そのまま新宿に向かいました。
劇中にハープシコードのレコードを流す場面があるので、
LPを買いに行ったのです。LPは大きいので、ネットで買うと
やたら送料がかかるし、どだい、ネットで流通する商品は
おおかたが貴重なプレミアものであるわけです。
直接に中古屋に行って、狙い通り480円で買えました。
交通費はかかったけれど、気分転換になるし、新宿方面に
帰る演者を送りながら話すのも楽しい。
具体物が揃ってくると、いよいよ劇場入りが近いのだという
実感が湧いてきます。その前に、来週は若葉町ウォーフでの
集中稽古をします。
2024年7月 6日 Posted in
中野note
↑3月の『鐵假面』ゲネプロより。あの時は寒かった・・・
読売新聞に今年3月に公演した『鐵假面』が紹介されました。
全体に唐さんについての特集記事で、6月に新宿梁山泊が公演した
『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』、唐組が春公演で上演した
『泥人魚』と並ぶ振り返りです。
もうすぐ読者限定になってしまうとのことですので、
今のうちに読んでください。
ところで、3月末はあんなに寒かったのに、今日は暑さの上に
都内に出たらゲリラ豪雨、まだ7月なのに、これから8月はどれだけ
酷暑なんだろうとおののいています。
たった3ヶ月しか経っていないのに、機構の移ろいが凄まじすぎる。
しかし、昨日はカミナリ、稲光りを見て『鐵假面』初日を
まざまざと思い出しました。
2024年7月 5日 Posted in
中野note
↑最後の3ページでやっと登場の少女たち
昨日の稽古休みを挟みながら、今日も全編を通しました。
各シーンを構成する中で、ここのせりふを、ト書きを
こう活かそう、とセットしてきた工夫が一昨日より機能して、
そこにめいめいの個性が発揮されてきています。
一方で、すでにして慣れが出て、細部の目が立たなくなった
ところもあり、そういう箇所を課題として話をしました。
けれども、最も重要なのは、全編を通して
唐さんの筆が全体に仕掛けているテーマを発見することです。
また、お互いのシーンの関連を、演者同士が実感として理解し、
今後にそれを自らドライブしようとするのを促すことです。
全体に、『少女仮面』のコンパクトさに助けられて、
皆でそれぞれの場面について語り合うような余裕があります。
3幕3時間だと追い込まれてカオスなまま直前になってしまう。
けれど、『少女仮面』は恵まれています。
嬉しかったので、みんなでカーテンコールの段取りも早々に
決めました。結果、本編&カーテンコールで100分弱という全体が、
ほぼ定まりつつあります。
今日でお世話になってきた急な坂スタジオを退出して、
来週からは本拠地ハンディラボでの作業、
再来週に行う若葉町ウォーフでの集中稽古へとつないでいきます。
2024年7月 4日 Posted in
中野note
↑とにかくオシャレで洗練された人です。あんなに美しい環境で自分が
生活することは二度とないでしょう、という暮らしでした
久々にイギリスで過ごしている夢を見て飛び起きました。
驚くべきことに、ちゃんと英語を喋っていました。
不思議です。英語を喋れるようになっていた実感は一度として
なかったのに。どうやってコミュニケーションをとっていたのか
実感が湧きませんでしたが、パーティらしきところでなんとか
笑い合っていました。
こんな夢を見たのには明確な理由があって、昨日7/3がダイアンの
誕生日だったからです。ダイアンというのは、部屋を借りていた
大家さんのこと。2年前、彼女の誕生日にはムンク展を見に行き、
彼女の友だちが営業している老舗のパブ、インド料理屋に連れて行って
もらいました。
私が起きたのが午前6時なので、英国は前日の22時。
ということは、今もダイアンはバースデーの最中なのです。
きっと大好きなシャンパンを飲んでいるはずです。
1週間ほど前に、バースデーカードを送っておきました。
多くの人々から寄せられたカードを暖炉の上に並べて
酒を飲むのが彼女の特徴です。きっとその中に私のもあるはずです。
高齢ですから、遠くないうちにまた会いたいものだと思いました。
次に英国に行ったら、ヨークシャーの荒野に行ってみないと。
『少女仮面』はこれからも続けていきたいので、嵐が丘のもとに
なった土地を訪れて、さらに磨きをかけたいと思います。
明日の通し稽古に向けてさらに作戦を練ります。
短い芝居ですが、込めたいことは山ほどあります。
2024年7月 3日 Posted in
中野note
↑丸山雄也くんの喜ばしい復帰でした。人形のタカシくんは唐組から
お借りしました。いくつもの『少女仮面』、『ビニールの城』にも出演
してきたベテランです
初めて全編を通しました。
なぜなら、2場のほとんどを一人で演ずる丸山雄也くんが
久々の稽古参加だったからです。
彼は日曜日まで別の舞台に出演していて、
前回の稽古は、公演本番の合間に行っていたのでした。
まずは疲れを抜いてから事にあたって欲しいと、
徐々にアクセルを入れる予定だったのです。
が、1場から2場に入ったら、なんとなく止めるのが
不粋な雰囲気になり、皆で面白がりながらいているうちに
「開眼」の場の最後までいってしまいました。
少し、腹話術師と人形の下克上が起こるところに不具合はあった
けれど、彼の雄也くんのおかげで途切れることなく3場にバトンが
つながり、初めて、私たちの『少女仮面』が姿を現しました。
これまで、20種類ほどの上演を観てきたように思います。
けれど、初めて『少女仮面』を観たような感覚におそわれました。
自分たちで上演するということは、観流のとはぜんぜん違う
体験なのだということがよくわかりました。
最後の方が未完成なので、明日の稽古休みを経て、
明後日に詰めて、2度目の全編通しに向かいます。
2024年7月 2日 Posted in
中野note
↑手前で繰り広げられるせりふの応酬。後ろに控えて耳をそばだてている
彼らの面白さが、実際に上演を目指すとよく分かってきます
今日は初めて3場を通しました。
なんとか最後までいき、手直しし、それからもう一度。
まだつながっていないところ、不具合もありますが、
これで、みんながせりふや段取りを憶えるという苦労から
解放されていくのを見るのは快いものです。
こうして一通り最後までいけば、あとは考えること、
工夫すること、やってみることの繰り返しとなります。
それぞれの登場人物が役者ひとりひとりのことになって
親近感が湧き、合い間にする話も面白くなります。
明日は、1場と3場をやってみるつもりです。
こうして、だんだん全体のなかで部分を見つめるようになるのも
愉しい作業です。今も、音響の細部を整えたりして、
少し良くなる。その少しを溜めて、全体を変えてゆきます。
2024年6月30日 Posted in
中野note
今日は稽古休みにつき、衣裳を探して浅草・アメ横をめぐりました。
やはり、この地域には芸能関係者がたくさんいて、それなりの需要が
常にあるのでしょう。
店員さんの対応も手慣れたもので、資料やコンセプトを伝えると、
スタイリスト的な役割を的確に果たしてくれます。
1930年代にローレンス・オリヴィエが主演した映画『嵐が丘』
の画像を一緒に観ながら、考えてくれました。
下谷万年町は言うまでもなく、喫茶「丘」、不忍池など、
唐さんゆかりの地で溢れています。
浅草に長らくお世話になった私たちにとっても横羽線〜首都高は
通い慣れた道。
頼りになる台東区に支えられて、たくさんの成果を得て
横浜に戻りました。
2024年6月28日 Posted in
中野note
現在のように、シーンを汲み上げていく立ち稽古の時。
『唐版 風の又三郎』まで、稽古場には先に俳優が来ていて、
自分も加わる稽古は3時間くらい。私が去った後にも俳優たちが
復習をして、トータルで5〜6時間という感じでした。
『鐡假面』は久々だったので、ぜんぶ稽古場にいるようにしました。
すると、今度は俳優同士の稽古時間が失われて緊密さが失われ、
これではかえって良くないと思い、ひと足さきに帰るようにしました。
今回の場合も、私は先に帰ります。
特に現在のように3場に差し掛かると、ずっと出番のある椎野が
稽古場に残った方が良いので、それで、先に帰るわけです。
今日は大雨だったので自転車は使えず、歩いて帰りました。
帰りに保育園に寄り、娘をピックアップして、
息子が小学校から帰ってくる前に家に滑り込みます。
少し遅いなと思っていたら、大雨を心配してキッズクラブの先生が
何人かをまとめて送ってくださっていました。頭の下がることです。
俳優同士の稽古を終えた椎野が帰ってくると、
そこからまた自分は仕事を再開します。
という具合に、私たちの『少女仮面』は成り立っています。
2024年6月27日 Posted in
中野note
今日は少人数での稽古でした。
対象になるシーンに関わる出演者が少ないからです。
ちょうど難しいところに来ていますから、時に間を置いて考えたり、
とっかかりを掴んだところだけでも繰り返して消化したり、
人数が少ないだけ落ち着いて稽古できました。
春日野八千代が貝に、自らも人間であること、
老いや衰えを告白して、それでも自分を慕ってくれているかを
確認する場面です。言葉が直接的でないところを一つ一つ消化して、
自然な所作やせりふに消化して思いが出るよう工夫しています。
これまで20本を超える『少女仮面』を観てきましたが、
皆さん、この難しさと対峙してきたのだと思うと、
改めて頭が下がります。雰囲気で処理することは一切するまいと
決めています。唐さんが何をどう考え、感じていたかを知り
体現することに私たちの劇団の醍醐味はあるからです。
昨日に感じた難しさを、今日すでに克服する糸口を掴んだように
思います。3場は難しい。難しい面白さです。
観る人には易しく感じられるよう、ウンウン言いながら稽古しています。
2024年6月26日 Posted in
中野note
↑セットも入り組むために、狭いアクティングエリアを活かし切る
必要もあり、工夫、工夫です。何人かでかかる箇所は協力が必要!
やはり3場の序盤は難しい。ちょっと夢に見そうなくらいです。
1場終盤の春日野と貝のめぐりあいを経て、3場は舞台の稽古に入る
わけですが、最初こそ舞台『嵐が丘』を題材にした練習が上手く
いったものの、それは喫茶肉体にいるパフォーマーの非力から
すぐに行き詰まりを見せます。
土台、喫茶店の外では工事が始まって、あっという間に、
大スター・春日野八千代の舞台稽古はお粗末なものになり、
弱気になった春日野が新人である貝に身の上相談をする様相を
呈します。と、書くのは簡単なのですが、やるのは難しい。
というわけで、これを整理しながら日付が変わっていくそうです。
2024年6月25日 Posted in
中野note
春日野八千代さんというのは、それはそれは大スターであったようです。
白薔薇のプリンス、というニックネームは伊達ではありません。
私たちは現在にあってYouTubeをタダで見ることができますが、
その中には春日野八千代さんが踊りを披露しておられる動画があって、
1992年時点で70代半ばであった春日野さんがかくしゃくとして
踊っている姿を見ることができます。
スラリとして、背筋の伸び方といい、
やはり往年のスターがスターである所以を感じさせます。
現在において、とりわけ私のように唐十郎を追いかける者にとって
「春日野八千代」という存在はとりもなおさず『少女仮面』の
主人公を指すわけですが、本来、これは違うことを
私たちは忘れてはなりません。
唐さんの作品はあくまでパロディであり、
初演時には本家あっての偽物ヒロインだったわけです。
自分は、その感覚をどうにか追いかけたくて、
現在だったら誰に例えられるだろうと考え込んだりします。
・・・天海祐希さんかな、と思いつきました。
ちょうど宝塚の男役だし、美しいし、皆さんから寄せられる
敬意も似ているのではないかと思います。
現在、天海さんは56歳だそうです。『少女仮面』が初演された
1969年当時にオリジナルの春日野さんは54歳でした。
いよいよ例えとしてちょうど良いように思えてきます。
例えば、「天海祐希」という主人公が出てくる新進作家の台本が
あったなら。そう考えてみると、『少女仮面』の設定ににぐっと
実感が湧いてきそうです。
2024年6月22日 Posted in
中野note
今日で1場について大方の段取りをつけました。
まだまだ役者が自分のものにしていくための入り口の段階ですが、
これまで頭の中にあったものをみんなに渡して、少しスッキリすること
ができました。
2場もある程度、先に進行してあるので来週には3場に進みます。
早く最後まで段取りを伝えきり、曖昧なところは具体的な所作や
せりふの言い方に変えて解決をしたいものだと思います。
音楽も、これまでにストックしてきたものを適切に配し、
劇の構造を露わにするよう仕掛けて行きます。
その中で、足りない曲があれば、見つけなさなければなりません。
衣裳についての創作や捜索も進めています。
ひとりひとり定まるとホッとして演技に集中できるようになるので
これも早めに対処していっています。
少ない登場人物、全体の分量なので、
落ち着いて話をしながら稽古を進めています。
2024年6月21日 Posted in
中野note
「伊東塾」というイベントにお呼ばれしてきました。
劇場建築のコンサルタントやホールの指定管理、その他、
劇場に関する様々な事業を展開するTheatre Workshop代表の
伊東正示さんが行っている連続講座です。
講座の中で、私たち唐ゼミ☆も参加した2009年7月のイベントが
紹介されました。「劇空間を再考せよ」というタイトルを掲げ、
三田の建築会館中庭で行った催しです。
私たちはそこで、簡易の青テントをたてて『恋と蒲団』
という唐さんの短編戯曲を上演し、そのまま、当の唐さんを
メインのゲストにしたシンポジウムを行ったのです。
伊東さんの司会、一緒に、室井先生や、新宿梁山泊の美術を
手掛ける建築家の大塚聡さんも登壇し、たのしくおしゃべりしました。
映像を見ながら、あれから15年経ったこと、
今だったら『恋と蒲団』をもっと上手く活かした上演ができると
当時を振り返りながら思いました。
唐さんがテーマにした「匂い」を現在ならもっと上手く嗅ぎ取り
表現に変えられるようになっていると思います。
もういっぺん、あれをやるチャンスはないものか。
今日も同じように「劇空間」について話しながら、
そういう欲が湧いてきました。
忘れかけていた当時のポスターに再会して、記念撮影もしました。
呼んでくださったみなさんに感謝!
2024年6月20日 Posted in
中野note
↑かつてスーパファミコン版もやった記憶があり、もはや古典作品化
している。モーツァルトやシェイクスピアみたい
秋に『ドラクエⅢ』のリメイクが発売になるらしい。
ゲームから遠ざかって20年近くになるが、これは聞き捨てなりません。
自分がロールプレイングゲームをやり始めたのは小学校2年生の
頃でした。それこそ『ドラクエⅢ』。
うちは土日しかファミコンをすることが許されていなかったので、
特に日曜日は早起きをしました。口うるさい親が起きる前、
5時台には起床して小音で挑んでいた覚えがあります。
あの単純な戦闘画面の向こうに、壮大な闘いを造像していました。
音楽も好きで、CDを買ってそれだけ聞いたりもしました。
高校時代に演劇を始めた時、唐さんの『電子城』に出会いました。
ドラクエをモチーフにした台本ということで、親しみを覚えて
手に取りましたが、すぐに弾き飛ばされました。
2004年秋には『カーテン』と改題して『電子城Ⅱ』が上演され、
この頃になるとなんとかついてゆくことができるようになっていました。
唐組初期を賑わせた『電子城』という芝居は、
ドラクエをつくった堀井雄二さんが状況劇場のファンで、
雑誌「ユリイカ」の対談がもとになって着想されたのだそうです。
モンスターを倒すとゴールド(ドラクエ世界のお金)になる。
その経済原理とは何なのか。バブルに浮かれる世相を背景に
唐さんはそんな風に考えたのです。
どうしようかな。『少女仮面』を精いっぱい乗り切って、
秋は久しぶりに少しだけゲーマーに戻ってみようかな。
とも考えています。息子に何か言える感じじゃなくなるリスクも
ありますが。どうしよう?
2024年6月19日 Posted in
中野note
↑豪華キャストによる完売公演ですから、パンフレットを買って帰り、
「こんな公演だったよ」と稽古場で話しました。演者の魅力も
素晴らしいですが、やはりテーマになっている森進一さんが半世紀を
超えてスターであり続けていることの凄みを感じます
何を隠そう、唐さんの書く悪口が好きです。
コンプライアンス全盛の世の中で、いよいよこういった言葉が
慎まれるべき時代ではありますが、罵り言葉にもやはりセンスがあり、
優劣があると自分は思います。
月曜日、新宿梁山泊による大人気公演
『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』を観劇して、
突き刺さる言葉がありました。
「下関の片田舎では、まだ土葬のところが残っています」
・・・実にさりげなくこの言葉が吐かれるのですが、
なんだかジワジワくるせりふで、思わず帰宅後に単行本を引っ張り
出して正確なことばを調べてしまいました。
もちろん、初演された1976年に日本国内はすべて火葬です。
山口県の人、下関の方には申し訳ないと思いつつ、
やっぱりいまだにクスリときて、思い出し笑いしてしまいます。
幼少期、唐さんは台東区民でした。
山の手の文京区民にはコンプレックスを感じ、
墨田区民には優越意識を持つ、その墨田区民は足立区民を、
足立区民は埼玉・千葉県人を・・・という具合に、
心情的な連鎖は続いていくわけです。
あんまり良いことではないですが、これも人間の業。
わかっちゃいるけどやめられない。
こういうものも土壌にして唐さんの世界は成り立っています。
2024年6月15日 Posted in
中野note
↑佐藤信演出、結城座の公演は1981年1だったようです
今日は全体の稽古は休みでしたが、
谷洋介さんが夕方に稽古場にやってきてタップの練習に明け暮れました。
また、倉品淳子さんと繋い口がその後に合流し、名高き劇中歌
『時はゆくゆく』を繰り返し繰り返し歌いながら、少しずつ解釈と
動きを盛り込んでゆく作業をしました。
こういうことは反復練習が必要ですし、
タップも、大声で歌って初めてほんとうの練習になる劇中歌も、
どうしても稽古場を必要とします。
全体の稽古が休みの日にこういうことに時間をかけて、
リラックスして取り組むことができるのはなかなか幸せなことです。
これは1ヶ月単位で借りることのできた稽古場、
急な坂スタジオの効能です。歩いて麓から登ってくるのは大変ですが、
それだけの効果があります。
一方、7月中旬、劇場入り前の直前には若葉町ウォーフで
仕上げを行います。昨日はそのための打合せに行きました。
ウォーフで佐藤信さんと話していると、現在の芝居づくりに様々な
ヒントを得ることがあります。まして信さんは『少女仮面』経験者。
1981年に信さんがあやつり人形の結城座で演出した舞台は、
初演の早稲田小劇場と並ぶ成功上演だったと、唐さんから伺った
ことがありました。
昨日も、これまでの自分の創作に抜けていた大事な視点に気づきました。
こういうヒントがありますので、やはりウォーフには単なる空間を超えて
信さんという人格を帯びているというスペシャリティがあります。
佐藤信さんが初めて唐さんに会ったのは、信さんが10歳、
唐さんが中学2年の頃、お互いに児童劇団員としての初対面だった
そうです。成長して紅と黒のテントを背負うようになったふたり。
その関係の効能に助けられています。
2024年6月14日 Posted in
中野note
↑短い芝居なので、あっという間に1場の終わりです
キャスト合流がこれからで、代役を立てながらでもありますので
油断はできませんが
昨日に受けたタップダンス指導を経て、
今日からメインの稽古の前後にタップ練習の音が響くようになりました。
カタカタカタカタカタ。
これはもう反復練習なので、時には音響をリピートして踊ってもらい、
周囲もその練習をニヤニヤしながら眺めたりします。
そう。要するに芝居の中身がリンクするわけです。
なにせ、この『少女仮面』の設定は喫茶店。
そこに就職したボーイふたりが、コーヒー入りのカップを乗せたお盆を
歌って踊りながら運ばされる、有無を言わさずそれを強要されている
という状況だからです。
谷洋介さんと小島ことりさんという二人の俳優が同じ目に
遭っています。『少女仮面』に出ることが決まり、キャスティング
されてみたら、有無を言わさず、経験も関係なく、タップ練習に突入。
稽古場にストイックな雰囲気が漂い始めました。
メインの練習では、1場の終わりを稽古しました。
少女・貝と老婆がボーイ主任に煙たがられながらも喫茶店に居座り、
その甲斐あって、春日野八千代に遭遇するシーンです。
主任と貝の会話劇、せりふのやり取りにより交わされる闘いを
細かく成立させながら、途中で登場する水道飲みの男がどう
それまでの言葉に関連するのかも追いかけていきます。
椎野が7年ぶりに稽古場にいて、ト書きに指定された搭乗を
実現するために歩く練習をしてもいます。
そういう稽古場です。
2024年6月13日 Posted in
中野note
『少女仮面』にはいくつか芸能の技術を必要する台本です。。
ひとつは腹話術、ひとつはタップダンス。他にも宝塚的だったり、
明らかに能を意識したシーンもあります。
幼少期に浅草で馴染んだのか、唐さんはタップダンスが好きで、
80年代には『あるタップダンサーの物語』という芝居まで書いています。
これを見たある人は、今は新宿梁山泊の主宰になった金守珍さんが
ヤカンの上でタップを踊って見事だったと教えてくれました。
ヤカンの上でタップ・・・
ほんとうにそんなことができるのか?
しかし、金さんならやってしまいそうな気がします。
肝心の唐ゼミ☆の話に戻します。
そういうわけで、今日はタップダンサーの米澤一平さんをお迎えし、
ボーイを演じる小島ことりさんと谷洋介さんが初めての
タップダンスに挑戦しました。
基礎からみっちり仕込まれて5時間。
一平さんの説明はとてもとても明快でわかりやすく、
まだ板につかないなりに振付まで仕込んでもらいました。
登場シーンのちょっとしたステップまで含めて、抜かりありません。
これから延々1ヶ月ちょっと、
二人は稽古の合間にこれに没頭するはずです。
もう一人、今は『鋼の錬金術師』に出演している丸山雄也くんは
その裏でコツコツと腹話術を学んでいます。これまで見てきた
幾多の『少女仮面』が同じ苦労を経たものであると実感して
まことに頭が下がる午後でした。米澤一平さんに感謝!
2024年6月12日 Posted in
中野note
↑終演後に写真を撮ってもらいました。
荒谷清水さん(左)と重村大介くん(右)という新旧の魚主です
先週末は、唐組『泥人魚』の東京公演千秋楽でした。
この週末が私たち唐ゼミ☆メンバーにとって重要だったのは、
元劇団員の重村大介くんが最後の4日間に限り重要な役柄を
務めたからです。
『泥人魚』には終盤に畳み掛けるように登場する大物ふたりがいて、
いずれもが主人公たちの故郷からやってくる漁業関係者という
設定です。一人目は船長の魚魚(うおにし)、二人目、最後に
登場するのは眼(ガン)さん。
それまで眼(ガン)さんを演じていた南河内万歳一座の内藤裕敬さん
が劇団公演により離脱したので、もともと魚西を務めていた
荒谷清水さんが眼(ガン)さんに、清水さんが抜けた魚魚の役を
重村くんが戴きました。
初めてこの計画を聞いたときには、天を仰ぎました。
魚魚といえば、かつて辻孝彦さんが初演で演じた大役です。
それを、重村が演じる。劇団メンバーは一様に緊張し、
そして、必ず立ち会わなければと思ったのです。
結果的にちゃんと務めていて安心しました。
もっと余裕を持てれば良いには違いありませんが、
ちゃんとせりふを置いて、なんとか成立させようと必死である
ことが伝わってきました。ああ、大きな声を出すときに目を
つぶらずに言えれば良いのに。そうも思いましたが、
気弱なアル中という設定にも助けられて、なかなか良い味を
出していました。良かった。そして、やれやれです。
2024年6月11日 Posted in
中野note
今日から立ち稽古でした。
桜木町と日の出町の近く、急な坂スタジオで初めて稽古し始めました。
滑り出しは、老婆と貝の冒頭シーン。
次に、ボーイたち、水道飲みの男らが登場する場面。
腹話術師役の丸山雄也くんが現在は舞台『鋼の錬金術師』出演中なので
腹話術師の場面は飛ばして進行します。
他にも、別の劇に出演していたメンバーもいるので、
本読みのフォローを入れ、場合によっては補習の時間も設けながら、
休みを使って入れていきます。唐さんの劇はここを怠ると、
ちんぷんかんぷんのまま強引にせりふを言わせることになって、
俳優に負担をかけてしまいます。やはり事前の理解が大切です。
また、事前の準備といえば、音楽をたくさん用意して立ち稽古に
臨んでいます。劇でどんな音楽を使うのかは、全体に大変大きな
ウェイトを占めます。『少女仮面』にはもともと、唐さんが指定した
メリー・ホプキンの『悲しき天使』が絶大に良い味を出しており、
これがこの劇のクオリティ保証に大きく貢献しています。
ただ一方、この曲がかなりインパクトがあり、かつ何度も劇中に
かかるために、さまざまな上演の印象が画一的になることも
事実です。唐さんの選曲力を借りながらも、これをどこまで
バリエーションさせられるかというのが、現場の腕の見せどころです。
そういうわけで、日曜は久々に大量にCDを買い込んで音楽三昧
しました。ちょうど渋谷のタワーレコードに行ったところ、
好きなジャンルが丸ごとクリアランスで売っているのを発見して
狂喜しました。最近はネットで音源を買うことが増えましたが、
初期にしていたように、CDの中に未知の曲との出会いを求めるのも
楽しいものです。そこで揃えた粒揃いの曲をストックしながら、
稽古場で展開するシーンやせりふに宛てていきます。
まずは順調に滑り出しています。
2024年6月 8日 Posted in
中野note
↑早津さん自身は風の商人・伝説の樫村少尉・宮沢先生を演じました!
今日は『少女仮面』のチケット発売日でした。
午前10時よりたくさんの方にご連絡をいただき、
応援の会話とともに受付をしました。今回はいつものテントと違い、
劇場での公演です。(恵比寿のエコー劇場)
ですから、テントと違い、"満員"がはっきりとある。
テントだと集客状況に合わせての拡張ができ融通無碍なのですが
(もちろん限度はありますが)、劇場ではそうもいきませんので、
正確を期してお迎えしたいと思っています。
上演時間は90分前後の想定で、休憩はありません。
『少女仮面』は唐十郎作品の中でも屈指の凝縮度を誇る劇ですから
コンパクトで見やすく、内容充実でおもしろい公演を目指して
企画しました。体調的にテントはハードルが高く、それでいて
唐作品がどんなものか興味のある人に観ていただけたら冥利です。
さて、特に午前中はチケット発売開始に対応しながら、
午後から新潟にやってきました。唐ゼミ☆の恩人の一人である
新潟の早津博美さんが、有志の皆さんを集めて『唐版 風の又三郎』を
上演したからです。
信濃川沿いにある劇場りゅーとぴあの庭園にテント劇場を設え、
公演する企画です。同じプロジェクトは三年前にも行われ、
その時の演目『少女仮面』を自分は観ることができませんでした。
当時、メンバーだった禿恵に代理で行ってもらったところ、
たいそう感激して帰ってきた。それで、今回はなんとしてもと思い
繰り出しました。
20〜73歳のキャスト、経験問わないメンバー19人による上演でした。
公演を支えるスタッフも多く、早津さんの絶大な人徳を感じます。
一年もの時間をかけて稽古を積み上げてきたそうですが、
それだけの内容でした。俳優のからだとせりふを前面に押し出して
台本の中身を重んじ、セットも最小限で済むよう工夫されていました。
出演する人が活躍できるよう、時には危険な仕掛けが丁寧に除かれており、
それでいて物語を伝える。唐十郎作品への愛着と、芝居やテント演劇を通じて
多くの人と繋がっていこうという早津さんの信念を体現した3時間でした。
単に良い芝居をつくれば良い、というのではなくて、
早津さんには、この新潟で、こういう人たちと出会い、芝居をつくって
みたい、という信念があるのです。実際に新たな出会いもあったそうです。
初めは、やはりいつもの仲間が中心になるかも知れないけれど、
そのうちに、ひとりふたり、新たな出会いがあってそれを膨らませてゆく、
そういう志と展望を強く感じました。
終演後の交流会で、出演された皆さんと劇についてお話しするのも
たのしかった。何か一緒にできたら。自分も役に立てたら。
それから、もう一度、自分もまた『唐版 風の又三郎』をやってみたい。
そう思わずにはいられない夜でした。
明日の午後には、横浜に戻ります。
2024年6月 7日 Posted in
中野note
明日は10:00から『少女仮面』のチケット発売を開始します。
今回も早割をやりまして、6/23(日)までに申し込んで頂くと
割引料金で買うことができます。早めの申し込みを宜しくお願いします!
劇団唐ゼミ☆第32回公演
『少女仮面』
作:唐十郎 演出:中野敦之
http://karazemi.com/perform/cat24/20247.html
【日程】
7月
25日(木)18:30
26日(金)18:30
27日(土)14:00/18:30
28日(日)14:00
【会場】
恵比寿・エコー劇場
JR恵比寿駅西口 徒歩5分
東京メトロ日比谷線恵比寿駅 1、2番出口 徒歩5分
【料金】
早割4,000円(事前振込)
※6/23までの限定販売!
当日精算4,500円
当日5,000円
子ども1,000円(当日精算)
※中学生まで
※受付開始は開演1時間前、開場は開演の30分前。
※ 全席自由。チケットに記載されている番号順でのご入場となります。
(チケット番号は開場時間を過ぎると無効です)
※ 未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
【出演】
椎野裕美子、津内口淑香、米澤剛志
赤松玲音、かくたなみ、小島ことり、谷洋介、丸山雄也、三木香
倉品淳子、丸山正吾
【チケット予約】
<6月8日(土)10時開始>
チケット予約ページ
https://ticket.corich.jp/apply/318116/
劇団唐ゼミ☆
080-7602-9727(10時〜18時)
※ご予約は前日の18時まで。
《早割チケットのお求め方法》
「早割チケット」は「事前振込」のみの販売になります。
下記ご購入方法および注意事項を必ずご確認の上、ご購入ください。
1,ご観劇日時が決まりましたら、お電話、お申し込みフォームのいずれかでご予約ください。
2,お申し込み完了後3日以内を目安に、チケット代金を所定の口座にお振込ください。
<お振込先>
ゆうちょ銀行
〇ニ八(ゼロ二ハチ)支店
普通 7420793
(記号10210ー74207931)
※振込み名義はご予約者様と同じお名前でお願いします。
※恐れ入りますが振込手数料はお客様のご負担となります。
※ご入金後のキャンセル・未観劇によるご返金はできませんのでご了承ください。
※観劇日時のご変更は、可能な限り対応させていただきます。ただし、ご予約日前日までに限ります。
2024年6月 6日 Posted in
中野note
↑私たちが2019年にも上演した『続ジョン・シルバー』は『少女仮面』の
前年に書かれており、喫茶店・ボーイ主任・少女といった設定が見事に
重なっていることも、今回の上演に活かしたいところです
今日で本読みを終えました。
終盤の約30ページを3時間半かけて読みました。
昨日も書いたように、第三場の中間部は難所で、
今までに観てきた多くの『少女仮面』上演を、
自分が何となくやり過ごして観劇してきたことに気付かされました。
そして、こういう箇所と甘く入らずに向き合い、完全に得心するまで
読み切るところに自分たちで上演する意味があります。
よく向き合って、手応えを得ました。
考えてみれば「今までに観てきた多くの『少女仮面』」という
思案の仕方自体が新鮮です。もう何パターン観たのか忘れてしまうほど
観てきました。そういう台本は初めてです。
『少女仮面』のエンディングは台本そのままにすると
かなりアイロニカルな終幕を迎えますが、それを、
唐さんの意志を汲み取りながらどう描くかというところにも
上演の肝があります。今日はずっと考えてきたアイディアを
皆に聞いてもらって、なぜそうなるのかを説明しつつ反応を
探りました。皆がどう感じるかの向こうに、観客の反応もあります。
劇中歌の伴奏づくりや、タップダンスを稽古するための準備も
進んでいます。来週から、桜木町近くの急な坂スタジオに場所を
移して、立ち稽古をはじめます。
2024年6月 5日 Posted in
中野note
『少女仮面』の本読み中。
今日は二日目で、あと一回行ったら来週から立ち稽古に進む。
そのために目下、三場と睨み合っている。
『少女仮面』は難解で知られる唐さんにしては、
もっともとっつきやすく、そのためか上演頻度の高い作品です。
他にも、上演時間の短さや座組を小さく収められるのも
人気の原因と思われますが、やっぱりわかりやすい。
けれども、三場の中盤以降はかなり難しく感じます。
特に少女と春日野八千代が二人きりになってからは、
春日野の心情吐白がどうのようにして起こり、
ウソのヴェールを一枚一枚ぬいでいく過程を克明に捉えて描きたい。
そう思ってやっています。
この部分を知ったかぶりして飛ばしてしまっては上演の意味なく、
自分が初めて全てを解き明かすのだ、という目標を掲げて
臨んでいます。それには、わからなさに素直に、厳しくあることです。
ちょっとでも不自然だと思ったら、足を止めてその不自然さと
向き合い、せりふの切り方や受け答えに間違いはないか、
一人のせりふの間にも、物言わぬ駆け引きがあるのではないかと思案し、
とにかく受け応えが無理せず自然体になる方法を探ります。
そのために、牛歩の歩みを以って細部に向き合うことが肝心。
明日は後半25ページのために4時間を費やそうと考えています。
2024年6月 4日 Posted in
中野note
↑講談社文庫より『満州裏史』
6月に入り、唐ゼミ☆の拠点であるハンディラボでの集合を開始しました。
昨日は本読み、今日は美術の打ち合わせの作業。
チラシ作りも進み、全体を押し上げています。
その合い間に、甘粕正彦大尉についての評伝を読んでいます。
これがなかなか読ませる。60年安保、昭和の妖怪として有名な
岸信介元首相と甘粕大尉が立ち回った戦前・戦中の満州の様子を
知るについて、唐さんが多くの作品で"憧れと冒険の地"として
彼の地を描いた理由がわかってきました。
もちろん、『少女仮面』に出てくる甘粕大尉と実在の人物には
多くの違いがありますが、それにしても、何を真似ようと
していたのかがよくわかり、参考になります。
車の中で聴く音楽も劇中の使用曲や劇中歌の伴奏となり、
こうして、徐々に日常が『少女仮面』に染め上げられつつあります。
2024年6月 1日 Posted in
中野note
県民ホールの部屋の隅に積み上げてあった箱を開いたら、
ロンドンに行く前に見つけた雑誌のコピーがありました。
そのページだけを印刷したために、これがどんな雑誌の何年何月号だか
すぐにはわかりませんが、調べてみたら「演劇ぶっく1993年6月号」で、
唐さんが『桃太郎の母』を初演していた頃のようです。
唐さんはこの中で50の質問に答えるQ&Aをしていて、
久々に読んでいるうちにいくつか愉しいものがありました。
Q5:健康のためになにかしていますか
つまんないテレビドラマを見ながらボーッとしていること
Q22:小さいころになりたかったもの
医者
Q23:得意だった科目
物理
Q41:実体験を書いたことは
新聞の三面記事を応用することはあるけど、実体験はありません。
全部ウソです。
Q44:書くのが好きなシーンは?
場違いな独白
Q45:アドリブをどう思うか?
座長しか許しません。
・・・などなど。
いいなあ。唐さんは生きているなあ。
しかし「全部ウソです」って!
自分はむしろ、唐さんは唐さんにとってホントのことばっかり
書いてきたと思っています。
2024年5月31日 Posted in
中野note
↑『少女仮面』3場のヒントがここに。つげさんもまた、
唐さんに影響を与えたひとりです
今日はひとつ原稿の締め切りがあって、
午前中のうちにこれを提出することができました。
ここ2ヶ月くらい、どうしようかといつも案じていた作業だったので、
ずいぶん心持ちがすっきりしました。
オーダーを受けたのは1月で、
瞬間に箱書きは考えてメモしてあったのですが、
ひたひたと締め切りが迫りながら、まずは『鐵假面』が終わってから
と考えてあっという間に4月。
それからは『少女仮面』の準備を急いでやって、
5月に入った時にはいよいよ締め切りの月だと覚悟を決めました。
あんまり追い込まれるのも嫌だし、
『少女仮面』の本読みがスタートするまでに心を軽くして
おきたかったので、GWに入った瞬間着手して書き始めましたが、
そこからまた、唐さんの訃報に接して吹き飛んでしまいました。
それで、ギリギリの提出になったのです。提出してみれば、
イベントの台本を書くのは愉しい作業ですし充実しました。
内容は、親しくしている劇場のバックステージツアーの台本
です。夏休みに公開。上手く気に入ってもらえて、
何年もご愛顧いただくことを願ってメール送信しました。
5月末と同時にひとつ重荷をおろして、いっそう『少女仮面』への
視界が開けました。明日は、ホームページでの情報公開です。
『少女仮面』『少女仮面』しょうじょかめん・・・・
2024年5月30日 Posted in
中野note
↑別冊新評『鈴木忠志の世界』
最近、演劇界の先輩に連れられて夜にとんかつ屋に行きました。
横浜の関内周辺はとんかつ激戦区で、そのなかでも人気のお店です。
先輩は美味い美味いと言ってとんかつを食べ、私にご馳走してくれ、
勢いづいてお弁当をふたつ注文してくれました。
私の家族に、ということなのだそうです。
が、この時点で夜8時。帰宅は22時頃の予定です。
ということは、すでに家族は夕食を終えているわけで、
この二つの豪華お弁当は翌朝に持ち越されました。
朝からとんかつ弁当!
このことで思い出すのは、鈴木忠志さんのことです。
私は鈴木さんとお話ししたことはありませんが、
本や関連資料だけなら学生時代からうんと読んできました。
そのなかで印象深かったのは、
新評社の『鈴木忠志の世界』のなかで、当時のプリマだった
白石佳代子さんが鈴木忠志さんに寄せた文章の中に
「忠さんは朝から牛肉やとんかつをぺろりと食べる人」
という一文があったことです。
こういった人格をもとにして、ボーイ主任は書かれているわけです。
かくいう自分も、朝からとんかつは平気でイケるクチです。。
2024年5月29日 Posted in
中野note
↑このなんでもない道路には、思い出がいっぱい
今日、用事があって唐組の事務所に伺いました。
コロナ以来、自分が1年海外に行っていたこともあって
久々にお邪魔しましたが、ネットに記された住所を頼りに到着して
驚きました。下井草・・・・
そう。唐組は2004年以来、唐十郎アトリエを拠点にしていましたが、
2021年にここに引っ越したのです。そしてそれは、1999年、
私が大学入学寺に初めて伺った唐組事務所とまったく同じ建物、
同じ部屋でした。
久々に訪問して、初めて事務所での飲み会にお呼ばれした緊張や、
午後3時から10時頃まで続く長い長い宴会が終わった時の安堵感。
2002年に、私たちの『ジョン・シルバー』の配役を決するために、
この事務所に皆でお邪魔してオーディションをしたことまで
記憶が蘇ってきました。
上の写真の道路に寝そべり、酔っ払った唐さんにプロレス技を
かけられたこともあります。西武新宿線・JR・東横・相鉄。
乗り継いで帰った日々を思い出します。
2024年5月28日 Posted in
中野note
↑今よりも地味だった池袋西口公園
いまだ5月末なので"初夏"というには早いけれど、
気候的には夏はもう目前、という日々を過ごしています。
何しろ、毎日が暑くて暑くて。
今日はあらし。台風1号の影響らしいのですが、
夕方に都内まで行き、帰りの首都高速は法定速度で
ゆっくりゆっくり帰ってきました。
初夏のあらしで思い出すのは、
初めて『鐵假面』を上演した2007年のことです。
あの時、7月に池袋西口公園に青テントを張った私たちを
同じように初夏の台風が襲いました。
確か公演2日目か3日目のお昼に再接近したあらしでしたが、
幸いにも直撃は避け、私たちは胸を撫で下ろしたのです。
が、開演時間よりはるかに早い16:00頃に唐さんはやってきました。
長靴を履いて、"中野、大丈夫か?"と言いながら駅から近づいてきた
唐さんは、明らかに台風のほとぼりがさめて残念そうでした。
あの日は公演を観にくる日ではなかったのに、
唐さんは台風との闘いはこうしてするのだと、
まだ駆け出しだった私たちに示したくて乗り込んできたのです。
せっかく来たのだからと喫茶店にいき、
それからもちろん、芝居を観ていかれました。
あの、ウキウキと近づいてきた唐さん、
私は台風をやり過ごしてゆるんだ頭のネジを巻き直したものです。
2024年5月24日 Posted in
中野note
↑こういう銭湯の風景のなかにヒントがあります
今朝は東京駅近くの喫茶店で美術打ち合わせをしました。
舞台美術家の中根聡子さんと仕事させていただくのは初めてですが、
とてもありがたいアイディアをいただいています。
前回に行った初回の打ち合わせを受けて作ってもらったデザインを
間に置いてお話ししながら、『少女仮面』もまた、初期の唐さんの
作品らしく、『ジョン・シルバー』の残響のなかにあることが
見えてきました。
『ジョン・シルバー』の世界とは、お風呂屋さんの世界です。
唐さんのお母さんの実家は台東区でお風呂屋さんを
三軒経営していたといいます。当時の家庭には家風呂が
ありませんから、お風呂屋はインフラです。
当時のお風呂屋さんは、現在と比べてはるかに地域の名士で
あったと想像します。きっと唐さんのお母さんは、
ちょっとしたお嬢様だったかもしれません。
水道、山の絵画、お風呂。
とくれば、あとは欲しいものが一つありますので、
中根さんにそれをお願いしました。
私たちが追いかけてきた60年代唐十郎を、目の前の美術にも
託すべく工夫を重ねてします!
2024年5月23日 Posted in
中野note
↑そろそろ二人の男性キャストにタップシューズも買わなければ!
今日は『少女仮面』公演本読みの2回目でした。
劇団メンバーに加えて、赤松怜音さん、三木香さん、
唐ゼミ☆初参加の小島ことりさん、倉品淳子さんも入って
1場・2場・3場の途中まで読むことができました。
この役をやるんだ、と決まっている人が参加していると
それだけ本腰を入れて立ち稽古に備えてもらうつもりで
内容を渡していくことになり、力が入ります。
読みながら、考える材料を受け取ってもらう感じです。
多くの上演でドSなだけだった「ボーイ主任」の弱点を発見したり、
彼の指に結ばれた包帯の謎を解こうと思います。
また、今日は3場にも進みましたが、
子守唄からボーイたちがタップを踏みながら歌う『あの人にあったら』
という流れがいかに喜劇的であるかも実践したい。
今までに幾多の上演を観て因果関係がよく分からなかったところが
実に自然につながっていく上演を目指しています。
初演の演出家である鈴木忠志さんに想を得て書かれたところは
実際に鈴木さんを知る人の話を聴いて納得したりしています。
愉しい稽古です。あっという間に4時間が過ぎます。
2024年5月22日 Posted in
中野note
↑このさりげない書影にも、大上段でなく軽く読める魅力が表れています
唐さんが書く平易な文章に打たれることがあります。
現在は『少女仮面』に本腰入れて取り組みはじめてまだ数日なので
別の物語は読みにくくなっています。小説などを読むより、
頭の中を『少女仮面』に支配されたいからです。
そういう時にも、エッセイなどは簡単に読めて愉しめます。
現在は、『風の毒舌』を文庫で読んでいます。
通常は、少し肩に力の入った難解な文章を書かれることの多い
唐さんが、ここでは、実に読みやすいコラム風の短文を書かれています。
一節一節も短い。文庫にして2ページずつとか、そんな按配で、
疲れていてもサッと読んで頭の中に入ってきます。
あの唐さんが、こういう平易な文を書かれるととりわけ新鮮です。
他にも、初めて出した単行本『腰巻お仙』のあとがき。
それから、エージー出版から出した『水の廊下』。
あれは文章というよりインタビューですが、
内容もかなり大事ですし、スタイルが読みやすくて秀逸です。
『風に毒舌』と並んで、ぜひお勧めします。
2024年5月20日 Posted in
中野note
↑仮チラシのカラー版です!
今日は『少女仮面』の本読み初日でした。
なんだか興奮してしまって、本読み後にさまざまな案件が生じたけれど、
どれにも臆せず立ち向かうことができました。
唐さんが亡くなってかなりしょぼくれていましたが、
また躁状態が始まって、ガツガツと生きていくことができそうです。
これまで上演してきた多くの唐十郎作品に比べて、
シンプルに研ぎ澄まされたせりふとト書きが押収します。
無駄やくだらなさも好きですが、こんな風に結晶のような芝居に
対してはそのまま身を任せるに限ります。
これまでにあった幾多の上演を思い出しながら、
オレはこうやる、というのを蓄積させてきました。
唐さんの意図だけでなく、唐さんの無意識にも活かした上演をして
決定版をつくるつもりです。
力が入るあまり、昨日の本読みWSレポートは明日にします!
2024年5月17日 Posted in
中野note
できる限り唐さんに関するものを集めてきましたが、
もちろん全てを持っているわけではありません。
特に状況劇場のポスターの類などは貴重品です。。
一点、結婚した時にお祝いで『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』
沖縄公演のポスターを頂いたので、それだけは大事に持っています。
そんななか、今日、お世話になっているご近所さんに、
所持していなかった逸品を頂きました。
『四角いジャングルで唄う』のLP。
自分の家にレコードを再生する機器はないし、
2021年にライナーノートを書かせてもらって復刊したCDがあるので
内容自体はパソコンやケータイにだって入っているのだけど、
これは嬉しい。やっぱりレコードにはモノとしてのオーラがあります。
さっそく、本棚に飾ることにしました。
大事に保管して、いつか針を落とすことを目標にします。
2024年5月15日 Posted in
中野note
↑このなかで唐さんが楽しく唄っています
『少女仮面』の劇中歌について考えています。
その中でどうも謎めいているのは、
喫茶《肉体》のボーイたちがタップダンスしながら歌う
『あの人にあったら』。
〽あの人にあったら、
そっと云ってほしいの
〝乙女の花が枯れたって
月経帯に千代紙はったって
女が一人うたってたって〟
でも、あのひとはもう来ない、
きっと来やしないのよ
だって、あたしゃ皆既日蝕〽
適齢期の女性にとってかなりキツい歌です。
閉経したのに好きな男に振り向いて欲しくて、
千代紙を貼って生理に見立てるなんて。
なかなか淋しい歌なのです。
問題はふたつあり。
①なぜか楽しげなメロディがついて嬉々として歌う例が多い
②初老の女性をオーナーに頂く店の店員たちがなぜこんな歌を
①はひとえに『四角いジャングルで唄う』で唐さんが
ものすごく楽しげに歌ったことに原因があると思います。
作者が歌うやり方を思わず正当と思い込みがちですが
しかしあれは、あくまでリサイタルですからね。
②の答えは稽古を通じて解決します。
実はもう、こうではないか、というアイディアを思いつきましたが、
稽古しながら検証するつもりです。
という具合に、唐さんが亡くなったショックで
止まっていた時間を動かそうと思います!
2024年5月14日 Posted in
中野note
唐さんの告別式が終わりました。
お通夜は雨が降りどおしでしたが、今日は爽やかに晴れました。
実に多くの人たちが集まりました。
普段はそれぞれの美学を持ってものをつくり続けている人ばかり、
時には凌ぎを削ることもありますが、誰もが唐さんを好きで、
その影響力や吸引力に惹かれて集まったのです。
唐さんを中心にできた大きな輪でした。
普段は絶対に冠婚葬祭には参加しないと宣言してきた方までもが
出席されているのには胸がつまりましたが、それもまた、
唐十郎という存在の大きさです。
2012年5月に倒れられるまでに唐さんの生活圏にいて、
親しく接していた皆さんにも久々に再会できました。
10年以上が経ってもすぐにお互いがそれとわかって、
嬉しく挨拶することができました。
それぞれのタイミングで散会となりました。
『ジョン・シルバーの唄』がかかった出棺後、火葬後・・・
仕事に向かう人、連れ立って飲みに行く人、さまざまでしたが、
自分は椎野と横浜に帰って子どもたちと合流し、
お世話になった喪服をクリーニングに出したり、食事や掃除をして、
特に写真立てを飾る棚をキレイにして、明日に備えました。
整理はつきませんが、多くの人と接した際に、
自分の知らなかった唐さんのエピソードがあちこちで
噴出したのが面白く、これからの目標を感じます。
これまでへの感謝と、唐十郎に関わることを一つでも多くかき集め、
芝居でも表現したいという衝動が湧き上がってきます。
2024年5月13日 Posted in
中野note
↑2011.11.4に行った「21世紀リサイタル」冒頭の唐十郎の肉態!
今日は唐さんのお通夜でした。
こうなると、さすがに唐十郎の強靭な生命力を信じてきた自分も、
まもなくその肉体とのお別れが迫っているのを実感せざるを得ません。
人間のバカバカしさと美しさを惜しげもなく見せつけて、
私を沸かせ、憧れさせてきた唐さんのからだ。
と、同時に、行き帰りの駅のホームでも、
唐さんがかつて熱弁振るっていた教えを思い出します。
曰く。
電車を待つ時は線路ぎわに立ってはならない。
そして、いつなんどきおかしな奴に背中を押されても
線路に落とされることがないよう、両足をひろげて踏ん張って
立っていなければならない。
用心深く細心な唐さん。それでいて、酔って電車に乗り、
大事なお弁当箱を置き去りにしていたのを思い出します。
今日は特に、両足をひろげて踏ん張って立ちます。
2024年5月12日 Posted in
中野note
↑映画化された『暗い日曜日』
1日を終えて都内から戻ろうとしたのが22:00手前。
そこから横浜まで帰るのに通常は40分ほどというところです。
ところが、先ほどまで混みに混み、羽田空港周辺の
数キロを進むのに1時間以上かかりました。
痛ましい事故が連続した結果でした。
こんな日もある、と覚悟を決めてからは、
これはもうどうしようもないと腹を括って音楽を聴き始めました。
昨日出たばかりの Jordi Savall の The Four Seasons。
誰もが知る曲を巨匠が初めて録音する意味をまざまざと
感じさせられました。
それから『暗い日曜日』。
『少女仮面』のなかに指定のある曲のひとつですが、
聴いたのはオリジナルのDamiaが歌うものではなく、
この曲をテーマに作られた映画のサウンドトラックでした。
目当ては『暗い日曜日』の様々なアレンジを発見することでしたが、
期せずして、2004年秋に唐組が上演した『眠オルゴール』の
エンディングで響いていた曲が流れ始めて懐かしくなりました。
初日、台風に襲われた西新宿の原っぱで、唐さんが開演あいさつに
立って「眠れ、オルゴール!」と叫んだのをと思い出しました。
あまりの気迫に周りはみんな震えました。
が、あとからよく考えてみると、あの芝居は人を眠らせるオルゴールが
主題であって、肝心のオルゴールが眠っちゃいけないよな、と思った
ものです。あまりの本気が後から可笑しみを帯びてくる、
「唐さんておもしろいなあ」と周囲と言い合ったものです。
2024年5月10日 Posted in
中野note
これは確か、2004年にペーター・ゲスナーさんが代表を務める
うづめ劇場が『夜壺(唐組が2000年春に初演)』を上演した時の
写真です。公演終了後の宴会の風景。ヒロインの歌う劇中歌
『アンクレットの唄』が素晴らしくて、2回観に行ったを憶えています。
室井先生もいます。
唐さんが亡くなってから1週間が経とうとしています。
この間、いろいろな人がいろいろな投稿を行っていて、
それぞれに出会ってきた唐さん、それぞれの人が体験してきた
世界があるものだと感じ入っています。
SNSの世界がありがたく感じられます。
自分が写っているもの、貴重な資料はこっそりダウンロードさせて
もらい、今後に活かしていきます。たくさんの新聞を読みながら、
唐さんの大きさを実感する日々。新しく分かったことも沢山あります。
貴重な資料、情報です。
2024年5月 9日 Posted in
中野note
↑このなかに『化粧論』アリ!
昨日に投稿した、ふたつの唐さんのエッセイについての探索依頼。
さっそくに情報が寄せられました。
『化粧論』が『日本列島南下運動の黙示録』に掲載されているとのこと。
唐十郎といえば新宿花園神社での紅テント興行ですが。
初期においてこの会場での活動期間は長くありません。
1967年に『月笛お仙=(腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇)』で
初めての紅テント公演を行い、その後は『アリババ』『由比正雪』を
上演しますが、すぐに新宿という街全体の風紀取り締まりの
機運が高まり、花園さんでの公演ができなくなってしまう。
その結果起きたのが、『腰巻お仙 振袖火事の巻』を機動隊に
囲まれながら強行上演する、いわゆる新宿西口中央公園事件です。
そして、『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』を持って沖縄まで旅し、
今度は北上しながら『腰巻お仙 振袖火事の巻』を公演しながら
東京に戻る巡業へとつながっていきます。
それらの様子を収めたエッセイ集の中に、
私の探す『化粧論』があるということがわかりました。
情報を寄せてくださったSさん、ありがとうございます!
これでまたひとつ、唐さんと劇を理解することができます!
残るは、『按配師に会うまで』です。
2024年5月 8日 Posted in
中野note
↑1970年3月に出版
唐さんが1970年頃に書いたエッセイ2編を探しています。
『按配士に会うまで』『化粧論』のふたつです。
どうやら『少女仮面』につながる内容が込めれれているらしい。
気になります。気になって1970年前後に出版された単行本を
引っ張り出して見てみましたが、どうにも見つからず。
心当たりのある方は、どこに掲載されているか教えてください。
かつて読んだような記憶があるのですが、判然とせず。
よろしくお願いします!
2024年5月 7日 Posted in
中野note
↑このレコードをヘビー・ローテーションしながら書かれたそうです
今日は『少女仮面』の美術打合せをすることができました。
それから、劇中歌の検討をし、伴奏をつくるための依頼を出しました。
公演当日に助っ人に来てもらう受付係をお願いし、
まだ埋まっていない役柄をイメージしながら出演交渉をしました。
こういう具合に、一歩、一歩です。
稽古に備えて、音響で使用する音楽の選定にも入り始めました。
稽古はじめを、チラシの完成とご案内の発送を、
公演初日を目指しながら、執筆当時28〜29歳だった作者を追います。
あ、タップダンスの練習の手配をしないと!
2024年5月 6日 Posted in
中野note
昨日は紅テントに行きました。
たどり着くと、同じような思いを抱えて、
遠く岡山からやってきた人もいて、信じられないという思いを
抱きながら、それぞれに耐えて初日を見守る公演でした。
禿さんや、唐十郎ゼミナール同級生で、今はテレビの世界で活躍する
石井永二くんと語り合いながら、去り難く、新宿を後にしました。
今日は、自分は子守りをして、椎野が紅テントに行きました。
きっと同じようなやり場のない思いで駆けつけた大勢の人たちとの
交流を持てたのだと思います。
家にいて、子どもたちに「何を食べたい?」と訊くと、
「唐揚げ!」とふたりそろって言います。
「唐揚げ」いいな、と思って、近所の中華料理屋で3人で頂きました。
2024年5月 5日 Posted in
中野note
自分が唐さんを大好きなのは、
暮らしとものづくりが一体になっているからです。
カッコつけて創作モードにならずとも、唐さんの往くところ
不思議が起きます。
今朝起きて、
掃除機のスイッチを入れれば、唐さんの掃除の得意なことを思います。
冷蔵庫からヨーグルトドリンクを取り出せば、「人間は腸である!」
と言ってタマネギとともに口にし、腸を健やかにしてやまないのを
思い出します。スーパーの新生姜やアシタバや豚肉にも
絶大に唐十郎がいます。もちろん本日5月5日という端午の節句にも。
銭湯の湯船に投げ込まれる菖蒲の葉にも。
本棚にある様々な本、写真、耳に焼きついたせりふと声。
これをあげる、と言われて受け取った100円均一のボールペンや時計。
唐さんはなんでもないものを黄金に変える錬金術師です。
毎週日曜は本読みワークショップですが、
今日はお休みにして、ただ目を凝らし、耳を傾け、
五感を研ぎ澄ませて唐十郎を感じることにします。
(ご参加予定だった皆さん、ほんとうにごめんさない)
来週以降、倍の力で唐十郎について語り合い、芝居づくりしましょう!
2024年5月 4日 Posted in
中野note
↑エントランスに飾られた巨大な倒木。巨木は倒れれば終わり、
小さな野草の生命力を標榜していこう、というメッセージを受け取る
トリエンナーレに行ってきました。
家から歩いて50分で横浜美術館に着きます。
こうして歩いて行かれるところは休日という感じで贅沢です。
到着しな、ビビりました。
美術館の前にそれはそれはたくさんの入場待ちができていたからです。
と思いきや、それは"スターウォーズの日"を記念して行うイベントへの
行列でした。今日はスターウォーズの日でもあったのです。
それよりは少ないながら、横浜美術館の前にもちゃんと入場待ちの
列が出来ていて、盛況でした。
エントランスののびのびとした展示に始まり、
富山妙子さん、丹羽良徳さんのコーナーなど見応えがありましたが、
全体を貫通する"野草"というテーマには、何かはかないものを
感じました。英語訳して "Wild Grass"というと文字通りワイルドな
感じがしますが、"やそう"という響きのか弱さが影響しているのかも
知れません。
↑無料で見られるゾーンの充実ぶりよ!
人間存在がいかに健気な抵抗を試みつつ、しかし、
大きな流れのなかに押しつぶされてしまうか弱き存在であるように
感じられました。テーマのもとになった魯迅の『野草』も
パラパラと読んでみましたが、なるほど同様の印象です。
そんななかにあって、先ほど挙げたお二人の作品は
生きているパワーが感じられました。
トリエンナーレといえば、自分が関わった巨大バッタは別にして、
2017年に赤レンガ倉庫でみたクリスチャン・ヤンコフスキーの
『重量級の歴史』が最高だったな、と。また思い出して笑ってしまい
ました。帰りも外は『スターウォーズ』で大賑わい。
↑"MAY THE 4TH"ということで5/4らしい
2024年5月 3日 Posted in
中野note
GWがやってくると、いよいよ唐組春公演の東京初日が
近づいてくるのを実感します。5月初めの土曜は連休に浮かれる
人たちを掻き分け花園神社に行く、これが長年の習慣でした。
ところが、今年は違うんですね・・・
すっかり土曜日だと思ってスケジュールしていましたが、
今年は日曜日が初日で、そうすると日曜夜は本読みWSが恒例、
だから私は二日目の5/6(祝月)に伺うことにしました。
これに気づいたのも、今朝早くに知り合いから紅テントの予約を
頼まれたからで、おかげで助かりました。
そういうボンヤリした連休の始まりです。
今朝は運動がてら久々に黄金町のシネマ・ジャック&ベティに行き
サイレント映画にピアノの即興伴奏を入れて上映するプログラムを
拝見しました。キッズプログラムと謳いながらかなり大人の笑いに
満ちたサイレント映画4本、音を鳴らす参加型企画あり、
映写室のバックステージ・ツアーあり、と、単に映画を観る体験
だけではなくて、映画館の楽しさがいっぱいでした。
学生時代にあれだけ行っていた映画館から、ここ数年は足が遠のく
ばかりなので、スクリーンで作品を観られたことに充実しました。
なかなか良い連休の滑り出しでした。
それからは、人に会いに行ったり、あとは原稿書き。
少し遊んで、静かに働く。そういう連休が始まりました。
明日の朝は、ようやく横浜トリエンナーレに行く予定です。
2024年5月 2日 Posted in
中野note
↑2016年10月の唐ゼミ☆公演@新宿中央公園
今度の日曜日から『腰巻お仙 振袖火事の巻』の本読みWSを始めます。
お申し込みはコチラ→
これで、2月半ばにスタートした『腰巻お仙』シリーズが完結。
『忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』そして『振袖火事の巻』
ということです。第三作の主題は、親を恨んで成長した少女・お仙が
いかに恋愛をするか、ということです。
恋愛の先には結婚があり、その先には出産がある。
とはいかにも古風な図式ですが、親を恨んだ少女自身がやがて親に
なる時が来る、そういう台本を最後にしてこのシリーズは幕を閉じます。
唐十郎29歳の戯曲です。唐さんも父親になりたてで、
期するものがあったに違いありません。
この作品はとにかく初演時のエピソードが絶大で、
新宿西口公園にて機動隊に囲まれて上演した、という演目こそが
この『振袖火事の巻』です。同時に、公演自体がスキャンダラスで
あればあるほど、作品の内実を味わうことが少なかった芝居で
あるともいえます。
私の本読みでは、せっかくなので往事を振り返りながらも、
ほんとうには何が書かれていたのかを追います
唐さんは何を書き込めたのか。
2016年に、私たち唐ゼミ☆は同じ新宿西口公園でこの演目を
上演してもいます。ここでやらねば、どこでやる!
というエンディングのひと言のために、新宿で上演した演目です。
エピソードをまじえて本を深く読み解きながら、
唐ゼミ☆公演の様子もまた、振り返ってみるWSにします。
2024年5月 1日 Posted in
中野note
Joseph Mallord William Turner《Vesuvius in Eruption(1817)》
現在23:00過ぎ。
家の近くの駐車場に辿り着きましたが、
ボタボタ降る雨のために車から出る気になれません。
そこで、これを書き始めました。
今は『少女仮面』の舞台美術について考えています。
舞台となる喫茶店には、唐さんのト書きによればベスビアス火山の
絵画が飾ってある、と指定があります。
ベスビアスとは、あのポンペイを一夜にして廃墟にした火山で
ヴェスヴィオと言ったりもします。
このインスピレーションのもとになったのはおそらく、
英国の画家ターナーの『噴火のヴェスヴィオ(Vesuvius in Eruption)』
1817年の絵画です。
英国滞在中に、ターナーの絵をたくさん見ました。
テイト・ブリテンというイギリスの作家の作品ばかりを集めた
美術館があって、そこにはターナー・コレクションという一角が
設られ、まとめて見ることができたのです。
残念ながら『噴火のヴェスヴィオ』はありませんでしたが
ネットで見ると、唐さんが魅了されたのがよくわかります。
他方、ローレンス・オリヴィエが主演した映画版の『嵐が丘』を
見ると、冒頭はヨークシャの荒野が雪で覆われ、やがて、
主人公の二人が逢い引きをするペニストン岩が切り立った岩山で
あることが明らかになります。
ヴェスヴィオ→ヨークシャの岩山→冬の満州
と、唐さんのインスピレーションがつながっていったのではないかと、
20代後半の作者の頭のなかを想像します。
あ、雨が止んできました。家に帰ります。
2024年4月30日 Posted in
中野note
→カーテンコール中、恒例の望月監督スピーチ
昨日は浅草に行きました。
劇団ドガドガプラスを観るためです。
ドガドガはずいぶんコロナに苦しみ、はたから見ていても
あの時の中止続きは辛く、身につまされるものがありました。
けれど、ここ数年に展開している「セクシー女優事変」シリーズは
絶好調で、ちょうど自分が海外研修を終えた頃に始まって、
ずっと逃さず追いかけられている幸せを感じます。
今回の第三弾「人妻死闘編」はセクシー女優の2世がテーマに
なっていて、2世問題は宗教だけではないという切り口が
さすがは望月さんと思わずにいられません。
セクシー女優の息子が中学生となり、
母親の出ているアダルト映像に興奮してしまうという彼の悩みに
ギリシャ悲劇の『オイディプス王』が重なり、可笑しくも切実な
物語が展開します。そしてまた、オイディプス王と言えば
劇の前段にあるスフィンクスの謎かけが有名ですが、
その謎の答えを通じて、母親出演のAVに反応してしまう自分こそが
「人間なんだ!」と少年が宣言するラストシーンは感動的でした。
ほんとうに、このシーンに自分は目からウロコが落ちました。
というのも、フロイトの「エディプス・コンプレックス」は
人間の罪深さを喝破したものと思ってきましたが、
これが望月さんの手にかかると、なんだかそういう衝動を抱えて
しまう人間への激烈な讃歌に思えるのです。
「コンプレックス」という言葉はネガティブな感じがしますが、
望月さんの繰り出す劇には、ひょっとしたらフロイトは、
ついつい母親とセックスしたくなるオレたちこそが人間なのだ!
それはちっともダメじゃないんだ!だから人間なのだ!
と言いたかったのではないかとすら、思わせる強烈なパンチが
ありました。なかなかのアクロバットにして、本家すらも揺り動かす
説得力に満ちていました。
フロイト=人間の豪の肯定=立川談志という構図すら浮かんでくるのは
東洋館という劇場のなせる技です。
ともかくも、望月さんだから描ける、真率なストレートパンチでした。
全編にわたって、大勢の出演者を望月さんが均等に愛しすぎたために
的が絞りきれないところもありましたが、やはり上演が2時間を
すぎてからの力わざ、ラストシーンには「いいぞ!いいぞ!」と
エールを送らずにいられません。無骨な望月監督の剥き出しの魂を
感じました。
2024年4月27日 Posted in
中野note
↑フォーを食べたのはロンドン滞在以来でした。The Albanyの
周辺にはベトナム料理屋が2軒あり、主要な麺類としてほんとうに
よく食べていました。向こうでは高かったな・・・
今日は久々に綾瀬市に行きました。
スマートインターができてすっかりアクセスの良くなった綾瀬ですが、
市の中央にあるタウンヒルズに行き、オーエンス文化会館に行くうちに
旧知の方々に多数お目にかかり、偶然の再会も重なってかなり
充実した1日になりました。
帰りは大和のタンハーというベトナム料理屋&食材店に寄り、
食事とコーヒーの買い物をしたりして。
合間に、樺山紘一さんという歴史学者の本を読んで興奮しています。
書かれている内容と文章が同時に自分の興味やセンスに押し寄せてくる。
久々にそういう著作者に出会い、これは連続的に読みまくるだろうと
予感しています。『少女仮面』の準備に支障が出ないように!
自分がもっとも好きな一冊を挙げろと言われたら、
それはヴェルギリウスの『アエネーアス』です。
今日はそれが、カエサルの『ガリア戦記』にどう影響されたか
という発想に、樺山さんの記述を通じて思い至りました。
ヴェルギリウスにとって、伝説上の戦争を描くに参考にしたのは
目前で起きていた同時代の戦争、すなわちカエサルと、
ケルト最後の英雄・ウィルキンゲトリクスによるアリシアの戦い
だったようです。そのことを通じて、ヴェルギリウスをまた一つ
人間として感じられたことは大きなよろこびです。
逃避にならない程度に、読書もします。
2024年4月26日 Posted in
中野note
↑終演後はちょっとだけお邪魔して失礼した
川口成彦くんのリサイタルを聴いてきた。
彼が3年間レジデント・アーティストを務めてきた紀尾井ホールとの
プログラムの集大成で、それはそれは欲張りなプログラムでした。
内容は、ショパンの一生を追ったもので、
ショパンの先生たち、ポーランドやフランスでの友人たち、弟子たち
という風に、ピアノの詩人を取り巻いた人々の作品を編年体で追いながら
もちろん、ショパン本人の作曲も入る。
傑出した人の一生分を生きて、川口くんが燃焼していった。
それが伝播して、序盤は日頃の雑事が聴く自分にも残っていて散漫だった
けれど、徐々に演奏の世界に導かれていって、最後にはピアノの
音だけになって、完全にショパンと川口くんだけの世界だった。
お世辞にもコンディションが良いとはいえない自分を
ここまで引きずり込むなんて、まったくすごい演奏家だと思う。
同時に、終演後は、3年間をやり遂げた万感がこちらにも
伝わってきて熱くなった。7月の相模湖にも行けたらと思う。
都心の華々しさとは違う世界があの会場にはあって、
川口くんの演奏にも違った趣きでステキに違いない。
2024年4月25日 Posted in
中野note
↑夜の公園にやってきた米澤と私
今日の夜は米澤と落ち合い、お互いにお腹を空かせていたので
ラーメンを食べた後、うちの近くの公園でミーティングを行いました。
昼間は子ども用のままごとテーブルですが、夜は私たちの会議机。
『少女仮面』をどうしていこうか。米澤の事情や希望も聴きながら、
こちらが最近ハマっている『嵐が丘』の話なんかもしました。
面白かったのが、米澤が、車の中で私がかけていたヴィソツキーの
歌声に鋭く反応したことです。
初め小さな音でかけていたのを気にしていたので、
もっとも私が好きな『狼狩り』を爆音でリピートしながら
横浜駅まで米澤を送りしました。同じ歌声に二人で痺れる。
良い時間でした。
もう一つ。今日は劇団として哀しい報せがあり、
それは、金沢在住でずっと唐ゼミ☆を応援してくださったKさんが
亡くなったということでした。
2002年夏に『動物園が消える日』を公演して以来、
ずっとファンでいてくれたKさん。唐十郎ファン同士としても
私たちは大いに盛り上がってきました。
Kさんが見せてくれた蔵書の『犬狼都市』に唐さんがこう署名されて
いたことが忘れられません。「金沢、この小さな中世」
聞けば、状況劇場が金沢で公演した『犬狼都市』を見て以来、
Kさんは唐さんの熱狂的なファンになったのだそうです。
いつも慎ましく、でも唐作品が大好きな気持ちが溢れ出しながら
応援してくださったKさん。ほんとうにありがとうございました。
また、客席のどこかに座られているのだと思って、公演していきます。
2024年4月24日 Posted in
中野note
↑ヴィソツキーとマリナ・ブラディ
『少女仮面』の公演準備をしています。
香盤表をつくり、役者に出演依頼をして、稽古スケジュールを組む。
どれも、手間がかかるけれど、ひとつひとつ、これからつくる劇の
輪郭が見えてくる作業です。
舞台美術について考え、劇中に指定されているベスビアス火山の
絵画の元ネタを探り、宣伝美術について考えます。
劇中歌についても、早々に詰めねばなりません。
やること満載だけれど、ひとつひとつゼロから積み上げて
わたしたちの公演は成り立っています。
そんな中で、ちょっと遊びもあります。
例えば、2場にマリナ・ブラディという女優の名前が出てきますが
実在の女優であり大スターだった彼女が選んだ夫こそ、
ソ連体制化で伝説的な抵抗詩人・歌手・俳優だった
ヴラジーミル・ヴィソツキー(Vladimir Vysotsky)でした。
あの独特のしわがれ声、
唐さんはああいう声を"いがらっぽい声"と呼んで
憧れの声のひとつの累計だと言っていたことがあります。
唐さんはつるりとした美声なので、ニュアンスに富んだ、
ある意味では悪声に憧憬を覚えたのだと思います。
反体制であるために1枚のレコード出版も許されず、
けれども、彼の歌をみんなが知っていたヴィソツキー。
代表曲の『オオカミ狩り(La Chasse Aux Loups)』を
ずっと聴いています。身を削って歌うような燃焼が何度聴いても
一回性で、みんなが彼に痺れた理由に共感します。
2024年4月23日 Posted in
中野note
↑すべてを終えて帰宅の途につくケッチさん@羽田空港
今回もありがとうございました!
昨日の本読みWSレポートによりご報告が遅れましたが、
4/18-21に公演した3回の『オオカミだ!』が終わりました。
今回もまた、多くの子どもたちにギャーギャー観劇してもらい、
子どもたちのリアクションを見た大人の方々にゲラゲラ笑ってもらう
ことができました。
一緒に公演した五十嵐あさかさんの『水曜日の夜』、
山﨑薫さんの『はまべのうた』とのショーケースにより、
返す返すもスタッフの皆さんは大変だったはずですが、
ロマンチスト・テツヤが悲願を達成してよろこぶ姿を見て
土曜の夜には賑やかな、すべての苦労を吹き飛ばしたであろう
打ち上げができました。
自分はいつもながら、テツヤさんに空間の使い方と
ケッチさんにはお客さんとの関係をどう上手く運んで
場を牛耳るかを教わって過ごしました。
終演後に食事に行けば感想戦の趣きがあり、
くだらない話の連続の隙間に、幾つもの創作に対するヒントを
発見しました。今はもう『少女仮面』に向けて走り出していますが、
『オオカミだ!』には、これからもまた上演できるだろうという
安心感と希望があります。現在13ステージを終えたところですが、
さらに回数を重ねる時にハッとしたアイディアを閃くところに
芸の面白さがあるのだと、それもまたケッチさんから教わりました。
テツヤからは「セクシー・キッズプログラム『メギツネだ!』
を作るべし」とも言われています。
「ヨルノハテの劇場」はこれからどうなるんだろう!?
観劇してくださった皆様に感謝します。
気にかけてくださった皆様は次の『オオカミだ!』公演で
お目にかかりましょう!
2024年4月20日 Posted in
中野note
今日は『オオカミだ!』2日目。14:00からの開演でした。
昨日の『はまべのうた』から一夜あけ、
一昨日からの改善点を活かして、照明エリアの調整が行われている
KAAT大スタジオに11:00に入りました。
それからそれぞれに準備をして、少しだけケッチさんの芸の流れにも
工夫を凝らして、開場、開演を迎えました。
たくさんのお子さんたちが集まってくれて、
彼らのおかげで活力のある劇空間が生まれました。
ケッチさんが即興で観客の反応に応えるところ、
それでいてショー全体がもたつかず次々にシーンを展開していく
スピード感。序盤に披露した基礎的なパントマイムやクラウニングが
『3びきのこぶた』本編に過不足なく結びついて、
これは、去年の2月から、
本多劇場→ザ・スズナリ→青梅第六中学校→母島小学校と
渡り歩いてきたこの演目がひとつの達成を見た手応えがありました。
もちろん、このショーはその場に集まった人たちによって
大きく影響されるように作っているし、KAATのような
ハイスペックな劇場設備があればそれを使うし、何もない
体育館があればそこに適応できるように作った演し物です。
その場その場の本番がありますが、その上で、
ひとつのレベルをクリアできたと思いました。
公演後には、昨日すばらしいパフォーマンスを見せてくれた
山﨑薫さんも加わって座組全体の打ち上げをしました。
五十嵐あさかさんがすでに静岡でふじのくに世界演劇祭出演の
ために不在なのは寂しいけれど、それでも、劇場を打ち出して
仕掛け人であるテツヤさんを囲み、関内バル333で
楽く飲みました
明日が最後のステージです。
9:00入りの11:00開演に備えて自分は帰宅してこれを書いています。
何人かは2次会に行って今も飲んでいるはずです。
当日券も出ますので、見逃さないようにしてください!
2024年4月19日 Posted in
中野note
↑終演後の薫さんはみんなに引っ張りだこで、ダンサーとしての役割を
終えたゆめさん、ご来場のよし乃さん(青梅と母島での『オオカミだ!』
アシスタント役)、ケッチさんで記念撮影しました。薫さんとの撮影は
次のチャンスを探ります!
今日は「ヨルノハテのショーケース」第3弾『はまべのうた』公演でした。
浦島太郎伝説をもとに岸田國士が映画のために描いたシナリオを
山﨑薫さんの個性を活かしリサイタル形式にして上演するものでした。
自分はこれまで、このような岸田作品があることを知りませんでしたが、
浦島太郎をモチーフにしながら、連綿とつづく人と人との別れを描いた
実に味のある原作だと思いました。
浦島太郎が竜宮城に行ったことで、もともと暮らしていた妻は夫との
別れを体験する。当の太郎もまた、乙姫との贅沢すぎる生活の後に、
残してきた妻を想う。それを察した乙姫は太郎との別れを決意。
地上に還ってきたきた太郎が経験するのは時間の経過による
元の妻との別れであり、新たに得た妻とも睦まじく暮らすが、
やがて自らの老い、相手の若さを悟って諦めたように妻を
手放すことになる。
これまでさんざん別れの原因をつくってきた自分には、
新たな妻を引き留める資格のないことを太郎は知っている。
それ以上に、太郎は、人と人とはいずれ別れてゆくものだ
ということを知り抜いてしまっている。
そういう、無常感のある、苦みばしった作品でした。
しかし、ショーとしてはあくまで甘く仕立てられていて、
人形もあるし、ピアノの豪勢な演奏もあるし、ダンスもあるし、
シンプルだけれどそれぞれの状況を換気する照明・音響・映像の
効果が感興を昂めます。
何より、センターにいる薫さんの歌唱力と演技、
東西から集まった名曲の数々があってバラエティに富み、
ところどころに笑いもあって、目先を変えながら、でもやっぱり
大人だから分かる「別れ」「岐れ」「訣れ」に収斂していくという
演し物でした。いかにも大人っぽい雰囲気だけでなく、
悲嘆の甘やかさ、という風情。
聴衆はみんな酒が飲みたくなったのではないかと思います。
自分は体質的に酒は飲めませんが、そういった意味で
次はノンアルコールドリンクを飲みながら見たい大人の味でした。
終演後は、テツヤ・ケッチ・アツシでビストロに行き、
演出作品を終えて放心するテツヤを激励し、また明日の
『オオカミだ!』の工夫を話し合いました。
ともあれ、すべての出し物が出揃うまでに3作品を支えてきた
スタッフの皆さんは大変だったと思います。お疲れさまでした!
2024年4月18日 Posted in
中野note
↑終演後に一息つきながら撮影しました
『オオカミだ!』1回目のステージが終わりました。
朝から灯り合わせをして、16:00からランスルー。
17:30にお弁当を食べて、18:15からお客さんをお迎えしました。
スタッフの皆さんは、午後早い時間には翌日の
『はまべのうた』の照明づくりもあるし、終演後はセットの
飾りかえもあります。それぞれにシンプルな仕込みですが
かなり大変な公演です。
そういう1日を過ごしながら、
2月に母島に行って以来の『オオカミだ!』が幕を明けました。
KAATの大スタジオは、これまででいちばんスペックの高い空間です。
だから、スクリーンや照明も使うし、割と勾配高めの階段席という
構造もあって子どもが騒ぐにはやや危険も伴います。
劇場の案内係さんがよくサポートしてくれました。
ケッチさんは持ち前の圧倒的な即興対応力をフルに発揮して、
お客さんからのリアクションを拾うこと多めのパフォーマンスでした。
ちょっと上演時間が予定より延びてしまいましたが、
今日には今日の本番があります。
ケッチさんという稀代のパフォーマーの体感のなかで、
あるお客さんに応じて彼らを味方に変えながら、
ほかのお客さんを間延びさせていないか、駆け引きしているのを
観ているのはいつもすごく面白い。そういうすべてを百戦錬磨の
経験と今の直感のなかで判断しながら渡り合っている姿を
自分はいつも感嘆しながら見ています。
ユメさんには持ち前の愛嬌を発揮しつつ(ほんとうに天分だと思う!)、
ケッチさんが考え、感じていることをプラスして大きな演者に
なってくれることを期待しています。みんなに愛されて、
いろいろとチャンスを得て大きくなっていって欲しい。
明日の『はまべのうた』を観客として味わいつつ、
土日の『オオカミだ!』を準備します。まだまだ空席があるので、
お客さん集めもします!もし良かったら来てください!
2024年4月17日 Posted in
中野note
↑テツヤさんの野望全開の連続公演がはじまりました!
今日から「ヨルノハテのショーケース」がはじまりました。
今夜はその第1弾、五十嵐あさかさんによる「水曜日の夜」です。
自分は18:00に家に帰って、椎野と子守りを交替しました。
一度、椎野にあさかさんを見せたかったからです。
去年にルーテル市ヶ谷で、あさかさんの自主公演「音みる夜」を
見た時から、これは体験してみなければわからない世界だと思って
きました。だから、せっかく横浜で公演があるこの時に、
椎野に体験しておいてもらいたかった。
米澤や鷲見くんも来ていたそうです。
彼らは普段、あまりクラシック系の演奏会には
行かないだろうけれど、あさかさんは普通のチェリストの枠には
収まらないパフォーマンスを見せる人なので、
きっと良い鑑賞になったに違いありません。
あさかさんのパフォーマンスには、
自分もやりたいことをやれば良いんだ!と強烈に思わせてくれる
ところがありつつ、けれども、決してやりたい放題やっている
わけではない品格があります。現在の表現を獲得するまでに、
これまでどれほどの試行錯誤があったのかも、感じ取れます。
今日も良い舞台だったに違いありません。
自分は子どもたちとワーワー言いながら家で過ごしたので、
今回を観られなかった分は、来月のルーテル市ヶ谷で
今年の「音みる夜」に立ち会うことで取り返したいと思います。
明日はいよいよ自分の番です。
ショーケース第2弾の『オオカミだ!』。
朝から照明合わせ。午後からゲネプロをして
夜19:00からの公演に臨みます。
本番になってしまえば、演出をしている自分でさえも
次に何を仕掛けてくるだろうと観客と一緒にこれから
起こることを楽しみにさせてくれるところがケッチさんの
凄みです。長く、盛りだくさんの一日になりそうです。
2024年4月16日 Posted in
中野note
↑終演直後の五大さんの隣にいるのは、中華街でよく行く「馬さんの店」
の馬さん。お二人とも、自分にとってヨコハマの顔です
今日は朝からKAATに集まり、4/17-21「ヨルノハテのショーケース」に
向けた大スタジオでの仕込みが始まりました。
劇場技術課の皆さんとの朝礼をして、テツヤさんが集めたスタッフさん
たちが動き始めます。テツヤさんは『鐵假面』公演を支えてくれたので、
劇団から齋藤と米澤が応援に駆けつけてくれました。
特に齋藤、2013年に『唐版 滝の白糸』を一緒にやって以来、
いまや多くの仕事を経てKAATの仕組みを知り尽くしており、
強い味方です。
自分は楽屋の制作まわりづくりをお手伝いして現場を抜けました。
それから県民ホールで打ち合わせです。
夕方には、津内口と協力して『少女仮面』の制作を進めました。
キャスティングや広報の準備。劇場入りした後のスケジュール想定、
各所への連絡などです。普段は、公私に渡るさまざま用事が押し寄せ
いつも劇団の進行が遅れがちなことが気がかりです。
津内口と頭を突き合わせて作業しているとそれらが次々にクリアされ、
不安が解消されて、7月のことを想像するのが愉しくなります。
そうそう。
午後には椎野も合流して、五大路子さんのライフワークである
『横浜ローザ』千秋楽を観に行きました。初めて観劇して以来、
これは年に一度観たい、立ち会うべきお芝居だと思ってきました。
五大さんの精力的なこと、劇とお客さんに対する突き抜けた誠実さ、
さすがの技術、いつも全力を尽くしきる姿を仰ぎ見ました。
近年は特にシンプルな演出になっていて、
それは究極的に、パイプ椅子2個に集約される世界です。
実際のメリーさんを写した写真のなかでも
特に印象深いものの中に、ビルの廊下にイス2台を並べて休む
メリーさんの姿があり、五大さんのお芝居もこれに始まり、
これに終わります。そのなかに、昭和21年から平成に至る
時代の変遷と横浜ローザの人生がめいっぱいに込められている。
ところどころ力の抜けた笑いもまじえながら、五大さんの
くっきりとしたせりふがこちらの胸に刺さってきます。
そして、最後に再び、ローザはパイプ椅子に還る。
あの、万感迫ってうつむいている姿に、ローザの上演75分と、
メリーさんの生きた何十年という時間が収斂されて、
物言わぬ姿、佇まいが、ことば以上の多くを語りかけてきます。
最後の瞬間、どうしてああいうことが達成できるのか、不思議です。
ライフワークだからこそ可能な、それこそ"境地"なのだと思います。
そして、お芝居の最後ではローザの姿に込み上げて仕方ないけれど、
アフタートークではいつも五大さん自身が元気な姿を見せて観客を
安心させてくれることも、このショーの素晴らしさです。
来年は30周年だそう。よし、来年も観よう!
自分も舞台やるぞ!と思いながら赤レンガ倉庫から強風のなかを
歩きました。明日から『オオカミだ!』を含む「ヨルノハテの
ショーケース」が始まり、その向こうに県民ホールの様々な企画が
あり、7月末に挑む『少女仮面』が見えてきます。
2024年4月15日 Posted in
中野note
『鐵假面』公演が終わってから、
『少女仮面』に備えて『嵐が丘』を読んでいます。
ヨークシャーの荒野を背景に繰り広げられる過剰な男女の恋愛は
否応なく周囲を不幸にするばかりで、まさに嵐が丘。
小説としても面白いし、何より『少女仮面』に引用された箇所を
特定するためにも、なかなか愉しい読書です。
『少女仮面』の劇中歌を歌うためには
『少女仮面』全体を学び直さなければならない。
『少女仮面』全体を学び直すためには
『少女仮面』の中に出てくる『嵐が丘』のせりふ引用が
どのシーンにあたるのかを突き止め、研究しなければならない。
そういう意味のことばを、状況劇場のプリマだった
李麗仙さんが言ったと、自分はある音楽プロデューサーに
伺ったことがあります。
果たして、『少女仮面』1場終盤で
春日野八千代が演じる『嵐が丘』の場面は、
原作小説では第15章にあたり、キャサリンとヒースクリフが
最後に愛憎をぶつけ合うシーンに由来します。
ただし、自分は2010年に出た新訳で読んでいますので、
当然、唐さんが1968年にこれを書いた時に引いた翻訳とは異なります。
そこで、当時に手に入った翻訳本3パターンをAmazonで注文しました。
かなり古い本なので、3冊求めても送料込みで約1,200円。
懐にやさしい資料集めで助かりました。
数日したら、一冊ずつ届くはずです。目指すは第15章!
どうか三つのうちのどれかに当たりますように。
その向こうに、『少女仮面』のワンシーンが視えてくるはずです。
2024年4月13日 Posted in
中野note
『オオカミだ!』の稽古はいつも短期決戦。
今回も4日間で仕上げるので、集中して稽古しています。
稽古2日目にあたる今日は、これまでにつくってきた段取りを
確認しつつ、今回の環境に合わせたやり方に変えていきました。
何しろ、初演からたった1年の間に4ヶ所で公演し、
その度にそれぞれの場所に合わせてバージョン・チェンジしてきた
演目です。アシスタントの黒子役も、SATOCOさん、
月岡ゆめさん、よし乃さんと、3人ものパフォーマーが
参加してくれました。今回は2代目のゆめさん。
必然、各バージョンの動きの違いは、
それぞれの黒子役の個性を活かすためのものでもあり、
だからこそ、今回の月岡ゆめさんには彼女ならではのやり方がある。
そういう稽古をしています。
KAAT公演にあわせ、
今回はテツヤさんがスクリーンを導入してくれました。
新たに加わった音響の大久保友紀さん、
舞台監督の吉成生子(よしなり たかこ)さんが、
こちらがお願いする変更にたちまちに応えてくれます。
そういうなかで、普遍的に『オオカミだ!』を良くする工夫を
盛り込んで、少しずつ少しずつ向上させていかれるところが
いつもの演劇とは違う幸せなところです。
ケッチさんをはじめとして、身ひとつで様々な環境で仕事を
続けながら芸を披露するパフォーマーの皆さんは、そうして
技や演目を磨いていくのだそうです。
何百回と本番を重ねるうちに
「なぜ、これを初めから思いつかなかったんだろう?」
というように、根本的パワーアップを果たすアイディアが
出ることさえあるそうです。
その時も待ちつつ、明日も稽古を続けます。
2024年4月12日 Posted in
中野note
↑手前味噌もありますが、すごく粒揃いの3本だてです!
今日から『オオカミだ!』の稽古が始まりました。
全体としてはプロデューサーのテツヤさんが組んだ
3本のショーケースの1本なので、山崎薫さんとの『はまべのうた』、
五十嵐あさかさんのリサイタル『水曜日の夜』もセットにした公演です。
試しに他の2本のリハーサルにも潜入しましたが、
特に、初めてみた山崎薫さんのショーには驚きました。
何か牧歌的な人形劇を想像していたのですが、
まるで高級ホテルのラウンジのような大人の雰囲気です。
思わず「これは看板に偽りありますよ!」と言ってしまいました。
女優である薫さんの歌唱力にすっかり舌を巻き、
良い気持ちになってスタジオを後にしました。
五十嵐あさかさんの実力とユニークさはもともと確信しています。
去年にルーテル市ヶ谷でのシリーズ「音みる夜」を
見に行ってから完全にファンになりました。
既存のチェリストのイメージを抱いていくと完全に裏切られます。
あさかさんはマラカスを振って歌も歌うし、
小さなギターをつま弾きながら日本の古典である『八百屋お七』を
見事に唸ったりします。こういう人は他に見たことありません。
見たことない表現だから宣伝が難しいのですが、
とにかく「自分のセンスにはビンビンくるから見てみてよ!」
といういう他ありません。
3本もやるなんてテツヤさんは欲張りだ!
と内心思ってきましたが、リハーサルを覗いていると、
せっかくKAATを使えるのだから欲張りたくなった訳がよくわかります。
スタッフの皆さんは大変そうですが、
あさかさんの会には薫さん・ケッチさんもゲスト出演で入り乱れるし、
『オオカミだ!』で黒子役の月岡ゆめさんは薫さんのショーでも
活躍するし、自分も企画全体でテツヤさんの野望を押し上げていきます。
長くなったので、『オオカミだ!』のことはまた明日!
2024年4月 9日 Posted in
中野note
↑ずいぶんお世話になりました。味といい値段といい、傑作です
今日は嵐でした。
こんな日は、公演の時にこんな風でなくてほんとうに良かったと
思います。一方で、このところの暖かさを感じるにつけ、
なぜ『鐵假面』の時に少しは春らしい天候になってくれなかったのかと、
恨みがましくなります。
明日、半月ぶりにメンバーで集まって打ち上げをやります。
その準備をしているせいか、まだまだあの公演が身体に残っていて
現在進行形の天気にも一喜一憂しています。
そんな中でイオンに出かけたところ、
レジの隣に上の写真にあげた黒糖かりんとうが大挙して売っていました。
これもまた、『鐵假面』公演準備の最中にどハマりし、さんざんに
食べ続けてしまった一品でした。
持ち込んだのは、現在も『オオカミだ!』を一緒に作っている
テツヤさんで、私がケータリングコーナーの周辺をゴリラのように
うろつきながら何度もつまんでいる姿を目にすると、
この、イオン-まいばすけっとで売っている128円の品物がいかに
他のかりんとうと比べて圧倒的な旨さを誇り、それでいて安価なのかを
力説してきました。実際にこれは感服せざるを得ない逸品であり、
私はあの寒さを、カロリーの塊であるこの黒糖かりんとうによって
凌いだと言っても過言ではありませんでした。
今日、久々につまんでみて、やはり美味いと思いますし、
やはり袋が尽きるまでやめられません。テツヤさんとイオングループに
恩義を感じざるを得ません。
2024年4月 6日 Posted in
中野note
神奈川県の仕事で県内各地を巡るなかで、
かなり面白い地域や地元の人たちに出会ってきました。
2017年にこういった活動を始めた当初は
スタンダップコメディアンの清水宏さんと真鶴に注力し、
去年2023年は湯河原町で、古参の舞踏集団とりふね舞踏舎さんによる
シニア向けダンスワークショップのお手伝いをしました。
そういった縁で、せっかく県西部に行くのだとしたら、
自分一人が車に乗って道中を過ごすのも寂しいし、
何人かで温泉にも入ってみたいので、
津内口、米澤、鷲見くん、うちの子どもら二人を連れ立って
二つの町を訪れました。
上の写真は、真鶴で魚を食べて買い物を済ませ、
その後に湯河原に移動して温泉に入った後、
去年、地元の方に勧められてとりわけ美味しく感じた
みかんジュースを飲んでいるところです。
場所は湯河原惣湯という、町営のカフェ&コワーキングスペース
の軒先のテラスです。
実は、昨日は先週に行った水戸のバッタ展示の予備日でした。
3/30(土)が雨だった場合に備えて4/6(土)をフリーにして
おかなければならない日だったのです。そういったわけで、
休日を持つことができました。道中いろいろな話をしたり、
子どもに振り回され続けたり、寝たりするのも良かった。
帰りに海老名SAに寄るところまで休日をやりきりました。
2024年4月 5日 Posted in
中野note
↑10か月ちょっとお世話になったグリニッジの丘の家
『オオカミだ!』の台本を書いていた時、
当時暮らしていたグリニッジの丘の上にあるダイアンという女性の家、
そのセキュリティの強さがすごく参考になりました。
そもそも、ロンドンの治安が悪いので仕方のないことですが、
特にダイアンは警戒心が旺盛で、扉には四つの鍵が付いている。
さらに家中の窓にも二つずつ鍵が付き、常に外敵の襲来に備えている
といった趣きがありました。
実際に、比較的安全なグリニッジでさえ、
1年前に女性が襲われたとか、高級腕時計を身につけていた老紳士が
手首ごと切り落とされて時計を奪われたとか、
物騒な話を聞かされました。
それに、あの壁の厚さ。
ダイアンの住んでいる家のレンガ壁の厚みはゆうに30センチはあり、
夏は涼しく、冬に暖かく、何より堅牢でした。
自分は、この辺りのことを体験しながら、
イギリス民話である『3びきのこぶた』の世界に入っていったのです。
それにひょっとしたら、イングランドという島国に押し寄せる
大陸からの外敵にも、大きくは影響されたかもしれません。
そのあたり、元寇を神風によって退けた日本とは違うかも!
などと思いながら過ごし、台本を書きました。
とはいえ、これは作品にとってすごく中核的な、精神的なことなので
実際の技術的なこと、パントマイムとは何か、その特性を活かす方法に
ついては、テツヤさん&ケッチさんにずいぶん鍛えてもらいました。
夏の昼間にロンドンの公園のベンチに座って、夜の日本とzoom会議
したことを、よく覚えています。
2024年4月 4日 Posted in
中野note
↑2022.5.27 英国のブライトンにて
昨日、『オオカミだ!』KAAT公演について書きました。
今回の演出をどうするか考えながら、そもそも、
この企画の始まりについて振り返ってみると、
テツヤさんの引き合いで元が〜まるちょばのケッチさんと出会った
ことからすべてが始まりました。
自分が2022年5月にロンドンに滞在していた時、
ケッチさんは仕事で、ロンドンの南にある観光地ブライトンの
フリンジ・フェスティバルに来ていました。
現在では、サッカー日本代表の三苫選手の活躍により、
ブライトンという名前は日本でも有名です。
自分は初めて噂に聞いていたブライトンを訪れ、
首都との位置関係からしてなんだか江ノ島みたいなところだなと
思いながらドキドキして歩き、待ち合わせ場所の特設テント前に
ケッチさんを探しました。
ケッチさんは質実で飾り気がなく、何よりクレバーな人でした。
芸と僅かな道具類、ご自身のアイディアで世間を渡ってきた凄みを
感じました。あの時、複数のパフォーマーが入り乱れるショーに
参加したケッチさんの芸も面白かったけれど、それ以上に、
ジュリアという女性芸人のショーをケッチさんが絶賛していたのが
印象的でした。
ケッチさんに勧められ、そのジュリアのショーを観て、
自分も、これはすごく面白いと思った。
そういうセンスの重なるところを確認しあって、
私たちはお互いに協力してやっていけそうだと思ったのです。
『オオカミだ!』の始まりはこんな感じでした。
2024年4月 3日 Posted in
中野note
↑日本大通り沿いに大きなポスター!
気づけば、『オオカミだ!』KAAT公演が2週間後に迫っています。
『鐵假面』の片付けがやっと終わり、
『少女仮面』を急いで仕込んでいるところですが、
これも私の勝負どころです!
思えば、2022にロンドンで構想を練り、
帰国後に横浜で創作して2023.2に本多劇場で初演、
その後、9月にザ・スズナリで再演のあと、
青梅の中学校や小笠原諸島のひとつである母島の小学校でも
公演を重ねてきた『オオカミだ!』です。
KAAT神奈川芸術劇場でも上演できるのがいかに幸せなことか!
下記の日時、料金、座組で挑みます。応援を宜しくお願いします。
『オオカミだ!』KAAT神奈川芸術劇場公演
4月18日(木) 19:00開演
4月20日(土) 14:00開演
4月21日(日) 11:00開演
料金(全席自由・税込):一般3,500円 小学生以下1,500円
*託児サービスは行っておりません。客席でご一緒にお楽しみください。
*乳幼児で席を使用しない場合は無料
出演:ケッチ(元が~まるちょば)
脚本・演出:中野敦之(劇団唐ゼミ☆)
アシスタント:月岡ゆめ
紙芝居原画:井上リエ
音響協力:平井隆史
企画:岡島哲也(ヨルノハテ)
提携:KAAT神奈川芸術劇場
主催:神奈川演劇連盟/ヨルノハテの劇場
2024年4月 2日 Posted in
中野note
↑実家の近くにある陣屋というお店には藤井聡太さんも来るらしい
水戸のバッタ展示を終えて、瞬間的に名古屋に帰りました。
目的は、先週から一人で私の実家に行っていた息子を回収するため。
横浜の家を出ようとしたところ、娘が羨ましがったので、
彼女も連れて行きました。未就学の彼女は、なんと電車代がタダ。
年度がわりで混み合う新幹線の中でも私の膝の上に乗り、
実家でやりたい放題して過ごしていた息子と合流しました。
24時間に満たない滞在の間に、息子とCDや本を買い、
同じラーメン屋に2度行きました。
名古屋には「好来系」という根菜類でとったダシを押し出した
独特の醤油ラーメンがあり、小学生の頃からこれを食べつけてきた
私にとって、これがノスタルジーな味なのです。
息子もよく食べ、帰りは3人で新幹線に乗って横浜に戻りました。
道中、3人で富士山を眺めました。今年はけっこう富士山を見ています。
↓5歳児にも富士山は有名だそうです
年度の移り変わりで、駅で見かけた人の中には、
これから大学に進学して一人暮らしを始めようという学生さんも
大勢いたように思います。自分が18歳だった頃を思い出しました。
唐十郎教授への弟子入り前夜です。
コンパクトで、良い帰省でした。
↓この数日で一気に雪解けした感あり。『鐵假面』公演中に高速道路から
見た時は真っ白だった
2024年3月31日 Posted in
中野note
↑椿昇さんと室井先生の写真
自分は昨晩のうちに横浜に戻り、
今日は朝から都内に行って二件、用事を捌いたあと、
娘を連れて名古屋に移動して、夜にはオンラインWSを行いました。
その間も、水戸では絶好調の晴天のもとでバッタが展示されており、
上手く膨らんでいる様子がLINEやメッセンジャーで送られてきます。
室井先生は生前、どうしても角(つの)をたてたくて仕方なく、
2009年の開国博Y150の時には躍起になってその方法を探っていました。
実際、あの時は頭の部分に特殊な扇風機を別で入れることで、
かなり自在にたてることができるようになりました。
↑磯崎新さん設計の塔ごしに
ですが、今度のは、角の部分を軽い素材に変えたことで、
それこそ正真正銘、自然なかたちで角がたったそうです。
こうしてたってみると、長い。もうちょっと短くても良かったんじゃ
ないだろうかと思わなくはないですが、せっかくたったんだから
おめでたいことです。
次の展示予定は定かではありませんが、
またきっと水戸芸術館の皆さんが動いてくださり、市民の皆様にも
展示のノウハウが伝えられていく機会が成ることを願っています。
↑正面。次は汚れをとりたいもの
2024年3月30日 Posted in
中野note
↑ボランティアスタッフの皆さんと記念撮影。去年、触覚も新たなものに
昨夜は23:30に水戸のホテル入りし、一夜明けました。
早朝から散歩に出かけ、千波湖に足を伸ばすと、大雨に洗われた後の
絶景でした。ジョギングしている人も多い。
それから豪華朝食を食べて9:00に水戸芸術館へ。
去年の3月、そして夏と2回に渡って展示や修復を行ったノウハウが
蓄積されて、水戸芸の皆さんがスムーズに動き、ボランティアが
たくさん集まりました。大人で、ずっとバッタを大切にしてくれている
方々に加え、高校2年生がたくさん。聞けば、ボランディアに
参加すると受験対策的に有利になるようで、4月からの3年生年次に
向けて準備しているということで、いかにもしっかりもの。
懸念されていた6本の足先のツメ部分の交換は、
ハニカムファクトリーの安元さんの職人的名人芸によって
かなりスムーズに行き、新しくなったブロアー(扇風機)5台の
パワーを結集して15:00頃から膨らませました。
結果、最近ではもっとも良い張りを見せましたが、
いかんせん、全体に生地が緩んでいることが明白で、
今後の修復プランは部分でなく全体に効果的な一手を
検討するところから始めなければならない感じがしました。
ともあれ、土曜日には無理かもと想定していた展示を1時間だけ
とはいえ行うことができました。自分はこの日しかいられなかった
ので、事後を託して横浜に戻りました。渋滞があり、ひとつ都内での
会議を経て24:00過ぎに帰宅。明日の展示も上手くいきますように。
2024年3月29日 Posted in
中野note
↑長かったけど、あっという間でした
今日は午前中、春の嵐の中を保育園に娘を送っていき、
それから県民ホールに短い時間出勤しました。
ここ2週間『鐵假面』に集中していたので、浦島太郎的な感じがあり、
それでいて、年度末であることを痛感しました。
保育園の先生には異動を告げられ、
県民ホールでは退職者の皆さんと一通りお話ししたためです。
例年に比べてかなり多くの人たちが職場を変える年になりました。
それから、午後は初台へ。
新国立劇場で、大野和士さんが指揮する『トリスタンとイゾルデ』を
観ました。言わずと知れたワーグナーの人気演目ですし、千秋楽でも
あったので海外からのお客さんも多く賑わっていました。
この上演は初演も観ており、あれは2011.1.4だったと
強烈に覚えています。結果的に波乱の2011年でしたが、
お正月あけて一つ目の鑑賞がこの楽劇で、燃焼し尽くしたのか、
大野さんがその後に体調を悪くされたことをよく憶えています。
そして、震災の年になってしまった。
以前より、多くのものが見えるようになりました。
『トリスタン〜』というと、主人公二人の盛り上がりに目がいって
いましたが、こうして実際の上演を久々に観ると、二幕で盛り上がる
二人を遠巻きに眺めるイゾルデの侍女はなんだかやり手ババアのような
おかしみもあるし、三幕冒頭、息も絶え絶えのトリスタンを励まそうと
する従僕は、なんだか太鼓持ちのようです。
そういった人間の可笑しみ、転じて哀しみが自分の中に入ってくるように
なりました。二幕終盤で、主人公二人のデート現場に踏み込んだ王が
若い嫁を満足させる肉体を失っていること、二人の密会を告げ口した
臣下がイゾルデに対して横恋慕していたことも気になりました。
当人たちにすれば地獄絵図ですが、側から見ていると面白い人間関係です。
それに、二幕終盤の地味な場面で、トリスタンがいかに愛情に欠落して
育ったのかが切々と語られると、彼がある時は異様に王に忠義立てし、
ある時はイゾルデにゾッコンのめり込んでしまう理由がわかる気がしました。
思わず、尊敬する小池一夫先生の『I・餓男(アイウエオボーイ)』を
思い出してしまいました。そういったことがわかるようになったのが
自分の13年間だと教えてくれた、貴重な公演でした。
さて、それから新宿で晩御飯を食べ、『少女仮面』に必要な
文房具を買い、水戸に殺到して今に至ります。
明日は朝からバッタ。土曜の夜には横浜に戻ります。
2024年3月28日 Posted in
中野note
ひたすら事務作業とお礼参りです。
公演が終わって1週間で年度末になってしまうので、
突貫で経理処理と報告書作成を行なっています。
本来だったらひと月の猶予があるのですが、
今回は一気に仕上げていきます。
大変ですが、各所への支払いや手続きなど迅速に行うとスッキリするし
4月になってみたらやって、あっという間に片付いて、良かったと
思えるはずです。今は眠いですが、もう一息。
それから、お世話になった各所に御礼を伝えてまわっています。
今回、横浜市の皆さんにはとりわけ多くのサポートを頂きました。
文化部門も建築部門も、消防も、
以前は役所と人というともっと怖い感じがしましたが、
時代が変わったのか、自分がおっさんになったからか、
対応が柔らかく親身になってくれる手厚い方々ばかりで
ほんとうに助けられました。時に荒れ放題になる公衆トイレに
かわって、ずっとお手洗いを貸して下さった技能文化会館の皆さんにも
救われました。温かい公園場所でした。
明日の夜は水戸に行き、
週末に室井さんと椿さんのバッタを修復するお手伝いをします。
去年、室井先生が亡くなる直前に水戸芸術館に行ってから、
あっという間に1年が経ってしまったことを実感します。
これからは来月に行う『オオカミだ!』について考え、
7月末の『少女仮面』の準備を急いで行います。
2024年3月27日 Posted in
中野note
今日は晴天のもと、ハンディラボで片付けをしました。
干せる限りのものを干し、できる限りきれいに畳んで収納。
太陽の力は偉大でみるみる乾いてゆく。
『鐵假面』のために製作したものは廃棄処分に。
ぜんぶで9m3の廃棄物を業者さんが持っていってくれました。
差し入れをみんなで分けて頂きました。
あの、齋藤が作って劇場入り口に掲げた巨大鉄仮面を気に入り、
ハンディラボの唐ゼミ☆コーナーに飾ることにしました。
それまで飾ってあったジョン・シルバー人形とはお別れし、
この鉄仮面が新たなモニュメントです。
事務処理はまだ終わっていません。
みんなから領収書をかき集め、支払いを行い、報告書を
躍起になって書いていきます。本当に公演のすべてが終わるまでは
まだもう少しかかります。
2024年3月 2日 Posted in
中野note
↑私では入ることができない
今日は稽古も作業も休みでした。そこで何をするかといえば、
トイレの数を数え、ポスティングをして回ることです。
あらゆる舞台公演の会場にはトイレが必要で、
その数もまた条例によって決められています。
客席〇〇平米につき1台という風に、観客席の大きさによって
その台数が定められているのです。
この所管は保健所で、このところずっと仮設建築に対する
申請作業を行なっていますが、その次は消防・そして保健所の許可を
得て初めて、公演ができるというわけです。
今回の『鐵假面』を行う関内駅近くの大通り公園には
立派な公衆トイレがあって、公演場所は目の前です。
というか、ここに公衆トイレがあるから、私たちは公演場所を
その前と決めたのです。そのくらいトイレは大事。
で、届け出を出すにあたって便器の数をカウントして提出するのですが、
これがなかなか難しい。というのは、自分は女性用トイレに入ることが
できないからです。かといって夜中に行ってこっそり数えるのも
ますます怪しい。
そこで、今日は椎野と大通り公園に行きました。
椎野ということは休みである子ども二人も連れて行かざるを得ず、
息子と娘を連れて4人で行きました。
そして、男性用トイレには小便器2台、大便器1台、
女性用トイレには大便器2台、プラスみんなのトイレ1台、
などと数えて保健所への書類に書き込むわけです。
せっかく来たので、4人で近隣の皆様へのポスティングも
しました。宣伝ではなく、挨拶回りです。
ガス・水道・電気・道路などの工事の際に、
それを告げる通達がポストに入っていることがありますね。
あれと同じです。3/14(木)から設営をして、3/20(祝水)から
本番、24(日)に公演を終えて片付けして26(火)には去ります、
というのを手紙にして、近隣のマンションなどに配って回りました。
焦点や病院や公共施設は、説明をして回ります。
子ども連れでこんなことをしていると、自分を取り巻く状況の変化に
気付かされますが、皆さんの反応も良く、面白い体験でした。
あと10日ちょっとで現場入りです。
2024年3月 1日 Posted in
中野note
私たちの美術製作にワダ タワーさんも助太刀に来てくれています。
今回のセットにはデザイナーの鎌田朋子さんが考えた抽象絵画的な
紋様があって、これは美術の領域です。
こういう時に強力なのが美大出身のワダさんです
ちょうど10年前に一緒に上演した『パノラマ』という芝居で
ワダさんは画工の役を演じましたが、それは実際に彼が美術の心得を
持っているからです。今回もその特技を活かしてパネルに画を描き、
さらに鎌田さんが仕上げにやってくるという手順で仕事を
進めてもらっています。心強く、頼りになる男よ!
他方、今日も米澤はやってきてせっせと働いています。
昨日は齋藤により、牛丼の名店すき家で2,000円の豪遊をしたそう。
どうやったらすき家でそんな金額にいくのか、ちょっと想像できません。
そのうち自分も資金援助して米澤の栄養状態を高めたいと思っています。
2024年3月 1日 Posted in
中野note
米澤は今回、役者として『鐵假面』に出演しませんが、
以前として劇団員であり、きちんと作業に来てセットを作っています。
私がロンドンに行っている頃から他の団体に出演したり、
ワークショップによく出ているようで、以前は寡黙一辺倒だったのが
最近はよく喋るようになってきました。
米澤はあんこが大好きなので、お世話になっている方から頂いた
もなかをプレゼントしたところ、今日は二つ食べて美味しかったと
言っていました。というくらい彼は元気です。
米澤は面白い役者なので、彼が出演しないことはファンの方には
申し訳ありませんが、私もまた早く復活して欲しいと思い続けています。
米澤の近況はXで見てください。時々、ポストしているようです。
間を置いて会うたびにちょっと痩せたなと心配していたら、
今日は齋藤がご馳走していたようです。
やっぱり後輩劇団員が食えていないと心配になります。
なんだか共産主義社会みたいですが、劇団には確かにそういう
相互補助の要素があり、慎ましくてお互いさまの、
なかなか良い関係だと思っています。
2024年2月28日 Posted in
中野note
三木さんや角田さんが衣裳をつくり
一歩くんや丸山くんや昼寝くんが鉄仮面の頭頂部を量産し
さらに昼寝くんが、スプレーで鉄の重厚感を出すのを見るにつけ、
みんなでものづくりをする劇団の良さを感じます。
彼らの姿を見ながら全員で叩き上げた衣裳・美術・小道具を
武器にして、どうやって劇を仕上げていこうかと考えています。
とても良い奴らです。最高のコンディション、役やせりふの体現にして
彼らを送り出そう!
2024年2月27日 Posted in
中野note
↑演技も著作も大好きな金田龍之介さん
昨日からハンディラボでの作業が始まりました。
大道具・小道具・衣裳・制作作業を一気に進めていきます。
こうなると、仕切りは舞台監督の齋藤です。
それぞれの適正に合った作業を割り振って全体を押し上げています。
私はといえば、みんなが作ったりデザインしてくるものを
ジャッジしながら、建築確認申請にいそしんでいます。
横浜市を相手にこれをするのは2019年以来で、
今回の行き来の中で、市庁舎が新しくなったのをまざまざと
感じています。キレイで良いけど、建物に着いてから
各部署に行くまでエレベーターが混んで10分くらいかかる時もある。
働く市役所員はさぞ大変だろうと思います。
また、今日は帰りにとても良いものを見ました。
横浜の若葉町には牛鍋の名店「太田なわのれん」があります。
さすが文明開化の地であるところの象徴の一つです。
自分はまだ行ったことはありませんが、興味は持っています。
若葉町ウォーフの近くでもあり、よく店の前を通りますが、
今日はこの店舗前に、宴会後のお坊さんたちが大挙して喋り合って
いるのを発見しました。ちゃんと坊主が金色の袈裟を着ている
スタイルで、嬉しそうに喋っていました。
なかなかの生臭感ですが、あまりにあっけらかんとして
かえって明るい気持ちになりました。俗っぽさが突き抜けて健康的です。
伊丹十三映画を思い出しました。『あげまん』の金田龍之介さんは
良かったなあ。素晴らしい俳優でした。
2024年2月24日 Posted in
中野note
↑これは自分が学生たちとやった『忘却篇』のチラシ
明日から『鐵假面』の座組がハンディラボに集まって作業をします。
舞台美術を作り、小道具を作り、衣裳を作る作業です。
自分はご案内上で至っていないところなどを送りきり、
3/14(木)より劇場を設営するための許可申請やポスティングの
準備などもしようと思っています。
要はやることがたくさんあります。
一方で明日、日曜日は恒例の本読みWSです。
『腰巻お仙』シリーズを『忘却篇』から読んでいくという企画です。
何せ3本もありますから、初期の台本で短いとはいえ、
週に一回やって4ヶ月くらいはかかります。
1作目『忘却篇』は戸山ハイツで公演して警察沙汰、
2作目『義理人情いろはにほへと篇』は初めて紅テントをたてた公演、
3作目『振袖火事の巻』は機動隊に囲まれた新宿西口中央公園事件
とエピソード満載の公演ですから、自然と心が浮き立ちます。
『鐵假面』公演の合間にやっても気分転換になるし、
何より参加者の皆さんの様子を見ていると、初参加の方が何人か
いるのも含めて、期待感が高いように思います。
アンダーグラウンド演劇、として唐さんを唐十郎にしていった演目
と捉えられているのかもしれません。
『鐵假面』の準備の合間に、良い気分転換になっています。
お申し込みはコチラ→
2024年2月23日 Posted in
中野note
↑津内口と麻子の声はよく出ており、安心。が、油断せずいく!
稽古がひと段落して、よく寝ました。
1月下旬に声が枯れ、騙し騙しやってきましたが、
ここらでピッカピカに治したいからです。声が出ないと力が出ない。
けれども、良かったこともあって、
それは、喉を痛めてしまった役者の情けなさがよくわかったことです。
本番の日の朝に不調を感じつつ公演に向かう時の悲壮感も想像が
できます。公演まで1ヶ月を切りました。コロナやインフルエンザは
もちろん、喉を無傷で初日に向かわせることが自分の務めです。
2/25(日)からは集合が再開して、
今度はハンディラボでの道具作りが始まります。
作業が苦手な自分にもできる仕事を齋藤がアレンジしてくれ、
大事な仮面づくりを行おうと思っています。
例え本番中に不具合があっても凌げるよう、予備だって作りたい。
タイトルロールですから。文字通り鉄仮面が主役の芝居です。
そのことを先日の全幕通し稽古でも痛感しました。
個性的な役柄が多いけれど、鉄仮面が主役!
ここから数日かけてやりたいことがあります。
『鐵假面』について、台本を新しくして音響用のものを仕立てる。
案内を送りきれていないお客様に封書をつくる。
仮面を作り、みんなの作業を見守りながら進めたい作業です。
大通り公園の近隣の皆さんへの手紙づくりとポスティングも
大事な作業です。最低でも迷惑をかけないように、できれば、
劇団の味方になってもらい、興味を持ってもらえるように。
それから、『少女仮面』の準備もしたいと考えています。
気づけば、『少女仮面』公演が5ヶ月後に迫っているのです。
せっかく劇場でやりますから、いろんなところに持ち運べる
私たちの財産を築きたい。こういうところにも、『オオカミだ!』
の経験が生きています。面白いのは最低限。フットワークの軽さも
心がけて、レパートリ化も狙っていきます。
そうそう。『オオカミだ!』の4月KAAT公演もある!
2024年2月22日 Posted in
中野note
↑前回と同じ63点をぎっちり詰め込みました!@ギャラリー写蔵
自分でもビビっています。
四谷で写真展をしてくださった伏見行介さんが
元キャパ編集長の石田立雄さんと急速に話をまとめ、
横浜 大桟橋の近くにあるシルクセンターのギャラリーに
呼び出されたのが先週のこと。
そこから数日で、唐ゼミ☆写真展を再びやることになったのです。
この写真展は、実はもう始まっています。
シルクセンターのギャラリー写蔵にて2/22(木)〜25(日)まで開催。
その後、『鐵假面』公演に合わせ3/18(月)〜24(日)にも実施します。
回廊時間は11:00-18:00です。
伏見さんの会社のブログ
思いつきから打合せ、新たにパネルなどの製作、
展示のための飾り付け作業までのスピード感について
伏見さんと石田さんのスピード感にはほんとうに驚きました。
自分もけっこうせっかちなのですが、
お二人の速さは只事でありませんでした。
しかも、その物腰にはぜんぜん力みが無いのです。
楽しい驚きです。
フッと思いついてパッとやってみせる。
用意周到な計画性も良いですが、まるで学生時代のような勢いに
最近の世の中に廃れがちな積極的ないい加減さを感じました。
まさしくインプロ。『鐵假面』もいや増しに盛り上がります。
2024年2月21日 Posted in
中野note
↑座組のマスコットとなっている鷲見武くんの熱演風景
10年以上の付き合いの中で、ほんとうに面白い役者になった
『鐵假面』なんとか全幕を通しました。
体調不良で一人欠席でしたが、他はフルメンバーです。
今週から加わった宇野雷蔵くん、昨日から加わった角田奈美さんも
加わり、初めて全体をつなげていきました。
今日のタイムでは、休憩込み118分です。
2時間以内に収めようという目標は達成されましたが、
質を高めて3分絞りたいところです。
全体を俯瞰して見ると、この『鐵假面』は実にメリハリの効いた
芝居です。真ん中にいる4〜5人の登場人物が、キャラ立ちの良い
他の人物をゲスト的に迎えては、個人技の応酬を受けていく。
そういうスタイルが実にハッキリしています。
ですから、やはりシーン毎に出てくるワンポイントの
人物たちをいかに面白く仕立てるかが勝負であり、
それを担う役者たちと一役一役、工夫を凝らすのはたのしい作業です。
もちろん、体調にも気を配ります。
ここ2週間はかなり根を詰めましたが、
明日から少し休み、日曜からハンディラボでの作業が始まります。
しばらくセットと衣裳、小道具づくりに邁進し、
再び稽古を立ち上げるのは3/4です。
本番約1ヶ月前に通し稽古が成立するのは私たち独特ですが、
作業をしていたらあっという間に時間は過ぎています。
最近は声が枯れ気味なので、ここで一気に治そうとも思います。
2024年2月 9日 Posted in
中野note
今日は〈オルガンavecバレエ〉公演のゲネプロでした。
順調に上手くいっています。何度観てもとても豪華な公演で
明日の一回で終わってしまうのがつくづくもったいない公演です。
演奏される曲はバロックからコンテンポラリーまで多彩で、
すごく愉しめます。しばらく耳に焼きついて離れないでしょう。
一方、行き帰りには日本のSF音楽CDを聴いています。
『ゴジラ』で有名な伊福部昭を筆頭に、昭和の時代には
さまざまな怪奇映画がつくられ、日本の現代音楽家たちが
この分野で腕を振るい、しのぎを削ったことが伺われます。
これらを聴くのは、単に愉しみのためでもあり、
『鐵假面』の劇中にかける音楽を探すためでもあります。
以前はメロディアスな曲が好きだったのですが、
ノイジーで、少し聴いただけではメロディのパターンが
読めない曲がだんだん好きになってきました。
こういった曲が劇にハマると、一段上の魅力を発揮することに
気づいたからです。そういうわけで、音楽漬けの日々です。
いつも各地を移動しながら細かな時間割りで生活しています。
家と劇場を行き来するだけだと負担が少ないし、物事をじっくり
考えられます。事務作業もずいぶん進みました。
明日でひと段落するまで、もう一息です。
2024年2月 8日 Posted in
中野note
↑県民ホールの同僚がよろこんでくれた舞台写真
一昨日で稽古を一旦切り上げ、昨日からはオルガンのことを考えています。
今週末2/10(土)に神奈川県民ホールの小ホールで行う
〈オルガン avec バレエ〉公演を担当しているので、仕込みをし、
リハーサルをし、本番へと向かっているというわけです。
https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/avec_2023
目の前でバッハやメンデルスゾーンの曲がパイプオルガンで
演奏され、ステージで研ぎ澄まされたバレエダンサーたちが舞っている
のを見ていると、前日まで乞食たちのファッションショーを
必死になってつくっていたのとギャップがありすぎて
笑ってしまいます。異世界に紛れ込んだような。
いや、どう考えても普段の唐ゼミ☆の方が異世界だよなあ。
そう思わずにはいられません。実際に、一緒に働いている
クラシック音楽畑の仲間に、来月にオレは12日間、公演のテントで
寝泊まりするんだよね、と言ったら、???マークがいっぱいでした。
仕方がないので、伏見さんの写真展で展示したフォトデータを
見せると、「なんか楽しそうですね」と言われたりして。
そんな具合に異文化交流を2/10までして、
2/11からはもとの世界にズブズブと帰っていきます。
そう。2/11は、唐さんの84回目のお誕生日です!
2024年2月 7日 Posted in
中野note
昨夜、『鐵假面』の1幕を初めて通しました。
皆が動き回り、キャラクターが立つようにつくってきましたが、
通して48分、上手くいったところもいかないところも孕みながら
新しい『鐵假面』をやりました。
みんなの運動量を増して攻め抜くやり方は成功していました。
なかなかの変人ショーで、気に入っています。
他方、リアリズム的な詰めがぜんぜん追いついていないので、
ひとりひとり、居残り稽古を重ねることで、全体に重厚な芝居に
なるよう底上げを図る必要を感じました。
早速、通し稽古の後は、昼寝くんが残って2時間ほど稽古しました。
しかし、あんまりせりふのやり取りを徹底しすぎると、
なんだかチマチマした会話劇になってしまうし、役柄は底抜けに
明るく、くだらなく、みんながみんな異様な偏執狂でもあるので、
稽古を始めて以来、一緒になって追求しているスケール感と
独自色を押し出し続けて行きたいと思っています。
基本的すぎることですが、断然みんなが個を持っているわけですから
それを押し出さないと。
そうこう思いながら次の稽古を思い描いて気分よく過ごしていたら、
ドアにぶつかった拍子にメガネが壊れました。
これはここ5年以上、レンズを一年に一度ずつ交換しながら気に入って
使ってきたフレームです。店員さんには3年ほど前から、
「そろそろ老朽化ですよ」と言われてきましたが、鼻あての金具が
ポキンと折れて、お別れすることになりました。
ずっと好きで使ってきたけれど、充分に頑張ってくれたので
惜しくはありません。また新しいフェーズに入るのだと、
そういう感じがします。
ロンドンで壊れた時用に用意してあったスペアが2本あって、
新たにそのうちの1本をかけ始めました。また新しい視点で、
いろんな角度から登場人物を解放していきたい。稽古の時間を
たっぷり確保して、徐々に徐々にやるつもりです。
2024年2月 5日 Posted in
中野note
↑ピアノの傍でベストを着て立っているのが山下洋輔さん。その演奏で
みんなが舞台に上がり、踊りました
昨夜は本読みワークショップでした。
それで、いつもなら今日はレポートの日なのですが、
昨日のお昼から夕方の体験が強烈だったので、
先にこちらを書きます。
横浜市磯子区の杉田劇場は私が特に親しくしているホールのひとつです。
ここには、中村牧さんという名物館長がいて、
地域貢献をよくし、シニアやお子さんや障がいを持つ人にも優しい
劇場とはどんなところかを常に実践しています。
自分が5年ほど前から関わっている
ドリームエナジープロジェクトの主な発表の場としても、
杉田劇場はいつも支えになってださっています。
昨日はこの杉田劇場で、「ニコニコ冬まつりライブ」という
イベントが行われました。平和なネーミングの催しですが、
なかなか侮れないどころか、異様な盛り上がりでした。
土日で2日連続で行われたライブ、日曜はダンス編ということで、
山海塾の一員でもある松岡大さんが小田原で展開してする
スクランブル・ダンスプロジェクト、肉態表現家の戸松美貴博さんと
ジャズ・ピアニストの山下洋輔さんによる肉態即興DUOが出演。
その間に、自分の参加するドリプロが出演し、
AYAKO先生の新作パフォーマンス『2月のおもい 2月のきおく』を
発表し、自分も出演してきました。
終盤の大団円は特にすさまじく、戸松さんの煽りで会場は総立ち、
誰も彼もがステージに上がりたい放題で、山下洋輔さんのピアノに
乗せられて全員が踊り狂うというカオスに突入しました。
最近の体調不良が嘘のように吹き飛んでしまう威力がありました。
久々に自由の風が会場内に充満するのを感じました。
胸のすくような思いをして、本読みWS目掛けて会場を後にしましたが、
かつて『ジョン・シルバー』や『腰巻お仙 義理人情』唐さんと共演した
山下洋輔さんに接することができたのは大きな収穫でした。
そして、やはりそれ以上に、最後にあらわれた狂騒の10分間は
今思い出しても稀有な体験でした。
2024年1月31日 Posted in
中野note
↑建物一階に設置したこの案内も、丸めて持って帰ってきました
今日は写真展の最終日でした。
朝からの登板は津内口にお願いして、自分は横浜での仕事を片付けてから
四谷に向かい、12:30に到着して訪ねてきてくださる方を待ちました。
最後に駆け込みで来るよ、と言っていた伏見さんの言葉通り、
多くの皆さんが訪れてくれました。熊野とちろさんが来てくれた。
一緒につくった舞台の記録がいくらもあります。
他にも、その時々で舞台を見てくださっていたお客さんを
お迎えできて、被写体になっている芝居や場面、キャラクターへの
愛着を伺うことができました。普段、公演で会う時には
こちらは緊張しています。今回は写真のパワーのおかげで、
安心して話を聞くことができました。
15:00になると片付けを始めて、
これが実にスピーディーに、30分ほどで終わってしまって、
当たり前ですが公演の片付けとはずいぶん違うものだと思いました。
伏見さんの発案もあり、今回せっかく作ってくださった
写真のパネルは大事に受け取って帰り、保管することにしました。
劇団の大きな財産です。全てが並ばないまでも、
またご披露する機会をつくりたいと思っています。
2024年1月30日 Posted in
中野note
↑松本くんは筋肉量が多く、すぐに大汗かいて半袖で動き回っていま
写真展、今日は米澤が登板の予定でしたが、
米澤が風邪をひいてしまって失礼をしました。
横浜で稽古があり、他の唐ゼミ☆メンバーはこちらに注力、
ギャラリー番は伏見さんに任せきりになってしまいました。
今日も新たな登場人物がやってきて、次々とシーンが展開していきます。
顔見世の1幕という効果が如実に出ているので、キャラクターを
立てることに試行錯誤しています。
登場してすぐに強く印象付けたいところ。
公園課職員役の松本一歩くんが登場し、
味の素の若手エリート社員役のヒガシナオキも立ち稽古の出番が
やってきました。
衣裳も考えています。ヒガシは味の素社員なので、
赤と白を基調につくろうかと思いますが、もちろんモデルはこれです。
今は可愛らしいパンダのデザインの容器に入っている味の素ですが、
昔のボトルは今や貴重品なんだそうです。
2024年1月29日 Posted in
中野note
↑初演時に流行っていた萬屋錦之介版のドラマ『子連れ狼』に唐さんが
インスパイアされて、現在は鷲見武くんが演じている「中年男」という
キャラクターが生まれました
今日は写真展5日目。
きっと何人かのお客様がお越しになってくださっていると思いますが、
私たちがギャラリーの番を伏見さんにお任せして、
『鐵假面』の立ち稽古を若葉町WHRAFでやっています。
昨日のギャラリートークをしたことで、
今度の公演に期待してくださっている方々の表情を実際に見ることが
できました。浅草で公演してからの2年はイギリス滞在期間も相まって
特別な時間だったことに違いありませんが、自分にとっては、
ずっと続けてきた劇団活動が分断されてしまった時間でも
ありました。勝手をやっているのは自分なのですが、
一つ一つ、糸を結び直している、そういう感じがします。
立ち稽古はまだまだ序盤です。
物語の基礎である稲妻姉妹とタタミ屋の関係ができ始め、
乞食の群れはにぎやかにやっています。
紙芝居屋と中年男は苦労をしていますが、
それも、日常とはかけ離れた、現在の私たちでは想像しにくい
キャラクターを手に入れるために手続きととらえています。
両役を任せた佐藤昼寝くんと鷲見武くんとは時間を尽くし、
一緒になって確信を得た役柄と所作とせりふを獲得していくつもりです。
かたやハンディラボでは、齋藤が一人で作業を続けています。
一回、座組のみんなでお食事会をして、温かいものを食べたい。
そんな気持ちがもたげています。1幕稽古中に。どこかで!
2024年1月28日 Posted in
中野note
今日は写真展が4日目で、ギャラリートークを2回行いました。
それに合わせて来てくださった、伏見さんの仲間の皆様、
劇団のファンの皆様、元唐ゼミ☆メンバーや座組のみんなと
同窓会のようになって、ありがたい時間でした。
14:00の回は伏見さん&椎野と2009-2017年までについて
演目を追いながら話し、16:00の回は伏見さん&津内口&麻子と
2018-2021年の話をしました。
前半は編年体で劇団の基礎情報や唐さんの話を交えてしましたが、
後半は、2018年頃から舞台写真だけでなく公演準備の撮影しに
来てくださるようになった伏見さんのスタイルの変化に合わせて、
ひとつの公演に関わるドキュメント的な話をしました。
津内口や麻子は、本番中もずっとそういう公演回りを整えながら
舞台に出入りして、唐ゼミ☆の舞台を担って来ました。
そういう彼女らが今度は『鐵假面』で主役をやろうとしている。
主役になれば舞台での居方が変わるので、その大きな第一歩に
なったのが昨日であったとも実感しました。
それから、カメラ技術や性能的に、
テント演劇の乏しい照明や、小さな空間ですばしこく動き回る
役者たちを捉えるのがいかに難しいか、という話もたくさん
伏見さんから伺いました。
写真に写る舞台は、実際の舞台を超えた写真の中の舞台だと
自分は思って、実際にその通りになっています。
伏見さんは広告写真家なので、作家としてのご自身を出さない
ところに凄みがありますが、私たちにとってはクリエーターであり、
私たちに自分自身が何をしているか見せてくださったのだと
改めて良くわかりました。感謝です。
残すところ3日間。
1/29(月)10:00-18:00
1/30(火)10:00-18:00
1/31(水)10:00-15:00 までやっています!
2024年1月25日 Posted in
中野note
↑セブンイレブンを目印に5階に上がるとポートレートギャラリーです
今日は写真展初日でした。
早く起きてしまったので8:00には家を出て、
横浜から新宿三丁目まで電車、そこから歩いて四ツ谷を目指しました。
朝の都内を歩くことがは滅多になく、そう遠くないことがわかりました。
到着して伏見さんと落ち合うと、
スライドショーを仕込んだモニターを付け、
カバンの中にあったフルートのCDをかけてBGMにしました。
目下、『鐵假面』に使っている曲が入っているもので、
ピッタリきました。格調高い感じです。
10:00を過ぎると、
本読みワークショップの常連メンバーや、
学生時代から劇団を応援してくださってきた方、
室井先生のお友だち、出演して写真の被写体になってくれた
パフォーマーのご親族が来てくれました。
伏見さんのお客様として、
カメラや写真の業界の方々とお話しできたのも愉しい経験です。
久しぶりに腰を据えて一つ所で一日を過ごしました。
最後には、Project Nyxの稽古を終えた禿恵が来てくれました。
久々に食事をし、横浜まで一緒に引き上げました。
これはもちろん、彼女の写真展でもあります。
2024年1月24日 Posted in
中野note
四谷ポートレートギャラリーにやってきました。
夕方から作業開始、伏見さんと進めてきた準備が目の前で次々に
結実し、ようやく実感が湧いてきました。
展示プロパーの皆さんがやってきて、
蛍光色の糸で水平を取り、巧みに釘を打ちつけて写真を壁にかけてゆく
作業はそれは美しいものでした。そこにキャプションが付く。
キャプションは、今週末の土曜日に小田原で安藤洋子さんと
神奈川県のシニアの皆さんによるダンス公演のプロデュースを
している津内口が、夜を徹して仕立ててくれたものでした。
これがピタリとハマる。ギャラリーの方に、ピンではなく、
マジックテープで壁に貼り付けるやり方を教わって、
いちいち感心。
そして、展示順の最終形に合わせて、
椎野が家で当日に配る刷りものを仕上げてくれました。
横浜に戻ってきて、現在は印刷を待ちながらこれを書いています。
現在の自分にとって、とてつもなく贅沢な時間です。
伏見さんが天使に見える。そして、一緒に舞台をつくってきた
メンバーに想いを馳せる時間でもあります。
当番の日は、お客さんとお話ししながら、
誰もいない時間に『鐵假面』の音響プランをつくろうと思います。
そういうもの全てをひっくるめて、これが伏見さんから授かった
足を止めて考える時間だと受け止めています。
特に年明けから、
これまで関わってくれたメンバーに椎野から許可どりの連絡をして、
その報告を聞くのは楽しい時間でした。唐ゼミ☆の舞台に立ってきた
みんながどんな風にしているか、久しぶりに聞くことができて、
それも大きな収穫です。
いよいよ明日からです。ふらりと来てください!
2024年1月23日 Posted in
中野note
私たちの新しい『鐵假面』のために、昨日から立ち稽古を始めています
会場は横浜、若葉町WHARF2階の稽古場。
唐さんの盟友である佐藤信さんがオーナーのアートセンターです。
管理人の須賀さんは自ら世人(せじん)というカンパニーを主催されて
いる方であり、だからこそ、この空間には絶大な安心感があります。
広い半野外ステージのスペースは取れませんが、
それでも、齋藤が工夫して間取りを考え、床にテープを貼りながら
役者たちに今回のセットプランを説明。稽古に入りました。
冒頭に音楽をかけます。
ロンドンでハマったジャズやレゲエが唐作品に合うかどうか、
実験しながら劇に入っていきます。サトウユウスケさんが新たに
作り直してくださった劇中歌の大合唱の伴奏も、みんなが歌いやすいか
初めの音を取りやすいか、検証しながら稽古をします。
何より、実際の野外空間を想定しながら、
どんな動きが想定されるのか、伝えながらのびのび動いて欲しいことを
伝えます。今までより格段に広い舞台を走り回っていこうぜ。
そう伝えています。今回の劇はアスレチック・プログラムだ。
そういう言い方もします。
冒頭から大汗かきながらみんなが演じて、大笑いしました。
さっきまで「寒いねえ」などと言っていたのに、すぐに暑がるように
なり、スタジオの窓は結露せんばかり。
コロナもあったし、海外にいて稽古をしていなかった期間も
たくさんありました。ホームに帰ってきた実感でいっぱいです。
幸先の良い稽古でした。
みんなの様子をよく観察しながら、全員で押し上げていきます。
2024年1月19日 Posted in
中野note
↑1台目はシルバーのラフェスタでしたが、フリードは白。
一番傷が目立ちにくいのが白だということで
今日は朝から横須賀に行き、午後に品川、夜に初台に行きました。
いつもは車で動きますが、駐車場代もかかるし、
何より車を休ませたいので電車で移動することにしました。
車を気遣うということを、私は初めて買った10年落ちの
日産ラフェスタから教わりました。中古であるとはいえ、
購入時に1万キロ強しか走っていなかった彼は、
それはそれは自分に献身してくれました。
4年間で13.5万キロを走り、修理に修理を重ねながらも
『唐版 風の又三郎』浅草公演の仕込み中にどうしようもなく止まって
しまい、廃車にするしかないとわかった時には、涙が出ました。
それほどに、苦楽をともにした仲だったのです。
それから自分を省みました。
自分はハードに車を動かすことで、悦に入っていたのではないか。
もっと優しく乗って、彼を長持ちさせることはできなかったのか。
いま乗っているホンダ フリードは、自分の車としては2台目です。
ロンドンから帰ってきた時に、奮発してハイブリットの新車を購入した
ものです。戦争は止む気配なく、これからガソリンが高騰すると
見込んでのことです。
1年経ってみて、やはり3万キロ弱走ってしまっています。
乗り始めて21.4km/1Lだった燃費が、徐々に落ちてきているような
気もする。そこで、人間にとっての休肝日のように、できるだけ
彼を休ませたいと思いが募っています。
幸い、1時は21.0km/1Lまで落ちた燃費も21.2km/1Lまで回復しました。
しかしこれは、高速道路に多く乗っているということでもあるので、
要注意ではありますが。
唐さんは昔、新品真っ白のズボンを大事にするあまり、
結局、一度もはかずに終わってしまったことがあったそうです。
自分と車の関係はさすがにそこまではいきませんが、
モノを偏愛し、モノが人格化してこそ、唐作品に取り組む資格が
あるということです。
初台でこれを書いています。
アイツが今ごろ、駐車場でよく休んでくれているといいなあ。
2024年1月16日 Posted in
中野note
↑こんな風に実際に試作品を被ってみながらフォルムや質感を調整
何より表情が重要です。装着する役者の身体のサイズによっても
適切な大きさが違う。そのへんを丁寧にやっています
今日は午前中からお昼過ぎにかけて県民ホールの仕事をして、
14:00にはハンディラボに到着、タイトルに掲げた作業に没頭しました。
写真家の伏見さんとzoom会議をしながら、
1/25(水)オープンの写真展に間に合うよう、
残りの作業を割り出しはコツコツと完成させていきます。
一方、工房スペースでは齋藤がオリジナル鉄仮面の
製作に当たっています。プロトタイプを作りながら、
意見を出し合いながらフィッティングをするのは楽しい。
けれども作業量は膨大です。
2007年に上演したときからずいぶん時間が経つ中で、
素材選びも工法も、だいぶ進化したことを思わずにはいられません。
何より、造形に託すコンセプトを確認しながら、それをより
叶える方法がないか、ビジュアル的にしっくりくるか、
検証しながら試行錯誤しています。
初号ができたら量産体制に入りますが、
鉄仮面はタイトルロールですから、まさに最重要アイテムです。
ズラリと並んだ時に思いを馳せながら作っています。
そして夕方からは稽古。
昼間の予定を終えたメンバーが集まってきて、
暖房を入れながら、それでいて乾燥しすぎないように本を読みます
あと一回、本読みを終えたら、キャスティングを全て決め、
1月下旬から立ち稽古に入ります。
↓本読みの様子に耳をそば立てながら作業する齋藤。工房は寒く、
足元にはヒーターを入れています
2024年1月12日 Posted in
中野note
↑キッチンや洗面所周りを入念に掃除、ブリーチとハイターの応酬で
消毒くさい。『吸血姫』の看護婦長のせりふを思い出しました
今日は朝からハンディラボの大掃除。
唐ゼミ☆からは、林麻子と椎野と私の3人で繰り出しました。
そのそも、私たちの拠点であるハンディラボとは、
横浜市鶴見区にある倉庫のことです。
この中には、事務・作業・資材置きができるスペースがあり、
この場をハンディ・ハウス・プロジェクトという建築家集団が
管理に当たっています。
彼らは実に気持ちの良い人たちで、すごくカッコいい集団です。
メンバーの皆さんはいずれも自立した建築家やデザイナーさんたち
ですが、ハンディ・ハウス・プロジェクトとして、
施主も一緒に手を動かして作る家づくり・お店づくりを中心に、
オフィスカーや海の家、廃材を活用したオブジェづくりまで、
その活動はユニークかつ多岐に渡ります。
今日は久々にハンディ・メンバーが揃っているのに接して
少しおしゃべりしたりしながら、一緒に大掃除をしました。
唐ゼミ☆メンバーは事務スペースやお勝手周りを掃除して
実にスッキリしました。
その後は横浜市役所に行き、公園利用の許可証をもらい、
それから建築指導課とのやりとりを開始しました。
仮設建築確認申請。消防署と保健所への届け出。
これらこそ、芝居の準備に並行して自分がこれから闘っていく
なかなかの難題です。しかし、口火は切られたので、
これからガシガシ進めいきます。人間必死になれば、
風が吹いた時の荷重計算や吸排気の計算までできるように
なるのです。
あとは、鎌田朋子さんとの美術打合せ。
公演準備のための環境づくり、各所との手続き、
内容にダイレクトに関わる演技とビジュアルづくり、
これらが勢いよく走り始めています。
2024年1月11日 Posted in
中野note
↑深夜、堺の食堂に行っていた頃。やなぎさんのおかげで新宮にも
よく行き、あの落合博満記念館も訪ねるという役得に預かりました
今日は日帰りで関西に出張しました。
唐ゼミ☆でなく神奈川県民ホールの仕事です。
堺市と京都市、弾丸で2か所を巡りましたが、
久々に見た街の景色に、過去に関わったプロジェクトの数々が
去来しました。
まず、堺市といえば、2016年に取り組んだやなぎみわさんの
トレーラー演劇。あの時は演出助手で参加しましたが、
名村造船所の倉庫の中で初夏にした格闘がまざまざと甦りました。
あの時は、とある美術教室のソファに寝起きして歩いて稽古場に通い、
よく住吉大社にも散歩に出かけました。深夜作業に煮詰まると、
スタッフの黒飛くんや井尻さんと連れ立って堺の市場まで足を伸ばし、
夜中に食堂であさり汁を食べたのを思い出します。
食べた後のあさり殻を床に捨てるという習慣のある店で、
帰りに貝殻をバキバキと踏みしだく楽しい想い出があります。
まだ長男が生まれる寸前の、おもしろい滞在でした。
京都はもう、圧倒的に唐ゼミ☆公演の思い出です。
立誠小学校のグラウンドや校舎で行った劇の数々、
皆で泊まった修学院の大学宿泊所や、四条と五条の中間にあった
ドミトリーを思い出しました。
移動の合間に、『鐵假面』の美術や衣裳について考え、音響を練り、
写真展に必要な文章を書いたりしています。
もう少しで新横浜。今日はこの辺にしておきます。
2024年1月10日 Posted in
中野note
↑1/28(日は)ライトに楽しめるコミック・ソングをフューチャーします
今日、県民ホールでは週末の公演のリハーサルがスタートしました。
作曲家の夏田昌和さんと生誕150周年のA.シェーンベルクを共演させて
それぞれの作品を演奏するC×Cという企画です。
早朝に、エレクトロニクスを担当する有馬純寿さんの機材搬入をお手伝い。
初めて有馬さんとお話できました。ちょうど2001年に私たちがバッタと
格闘していた頃、有馬さんも横浜トリエンナーレに参加して激しく
プロジェクトにぶつかっていたそうです。
椿昇さんとも多くの仕事をしてきたということで、
これまで遠巻きにスゴい方だ!と思っていた有馬さんが一気に身近に
感じられました。
また、現代音楽雑誌の編集者時代にパリから戻りたての大里先生に
取材されたそうで、苦労した話を聞かせてもらいました。
自分の車になんとか機材を押し込んで、かなり愉しい移動時間でした。
それが終わると、ハンディラボに移動し、
今度の写真展で行うギャラリートークの中の劇中歌の稽古。
椎野と麻子が行うセッションをブラッシュアップしました。
工房では齋藤が鉄仮面の試作品を着々と作っており、
それによって、目指すオリジナルの仮面のかたちが見えてきました。
拘束感があって、シャープで、無表情で、
その無表情の下に演者の表情が渦巻いている。
そういう仮面を目指しています。
麻子と衣裳デザインの構想を練ったり、
サトウユウスケさんから新たな劇中歌伴奏が届いたりすると、
そういう一つ一つを吟味し尽くす時間が、もっともっと欲しい!
2024年1月 9日 Posted in
中野note
稽古しています。
出演者が集まって、『鐵假面』の稽古が始動しています。
本読みをして、散りばめられたネタを一つ一つ伝えて、
さらにそれぞれの登場人物の変遷を探ってゆきます。
劇の中で一流企業「味の素」がクローズアップされますが、
横浜国大を卒業して食品業界でバリバリ働きながら劇を続け、
今回もこうして唐ゼミ☆に出ている東くんから、
味の素社のエピソードを皆で聞いて唸ったりしました。
うま味調味料だけでなく、アミノバイタルもあるし、
クノールカップスープもあるのです。
やはり業界の雄の座に君臨し続けている。
そういう話が参加者から聞けるのが、稽古の合間の面白い時間であり、
それで一つ稽古場と劇がハネるのです。
と、同時に。劇中歌の練習をしたり、
衣装についてのプランを出したり、肝心の鉄仮面について
今回の劇にふさわしいデザインを編み出しています。
ネットや一昨年にイギリスで買ったカタログを
眺めて鉄仮面を要素に分解し、劇に必要なパートを掛け合わせて
微妙にオリジナルな鉄仮面を作る作業です。
こういう作業をしていると、
『NINAGAWAマクベス』の仏壇を思い出します。
あれは美術家の妹野河童さんが数多の仏壇を見て回りながら
要素を結晶させた、ありそうでない仏壇デザインなんだと聞きました。
僕らがやっているのは、その鉄仮面版です。
これから本番にたどり着くまでに際限の無い作業の連続で
気が遠くなりますが、まずは一歩を踏み出し、踏みしめています。
2024年1月 4日 Posted in
中野note
↑今年に行う2回の唐ゼミ☆公演の間に、『オオカミだ!』もやります
プロデューサーのテツヤさんが運営するヨルノハテの劇場が
神奈川県演劇連盟に所属していることから、連盟が枠を持っている
KAATでの公演が実現します。
他にも人形と音楽が紡ぐ『はまべのうた』。
異色のチェリスト・五十嵐あさかさんが繰り広げるコンサート
『水曜日の夜』という3本立てのショーケースを行うなかで、
この『オオカミだ!』も3回公演します。
思えば、ロンドンでの滞在中。
異常気象の夏にウンウン言いながらこの台本を書きました。
ちょうどBBCプロムスの頃だったので、当日券でスタンディングの
席を買い、一度ホールの外に出て日陰の階段に腰掛けてZoomで
話したのをよく覚えています。
ロンドンのケータイ・キャリアは押し並べて日本のものより
電波が脆弱で、なかなか難儀した記憶がありますが、そのような
頃から準備して、去年の2月に初演し、9月にもやり、
先日の青梅の中学校や来月の離島の学校公演を経てKAATでも
公演できるというのは、ありがたいことです。
荷軽につくって何度も公演できるように仕立てる。
それは劇団の演目展開にとっても次々に公演の口がかかることは
大きな目標ですから、『少女仮面』こそは少人数、シンプルな
展開からして可能性があるかもしれない。
そういうこともプランを組む材料にしながら、今年の公演を
思い描いていきます。
2024年1月 3日 Posted in
中野note
↑初めてスイッチのコントローラーに触れました
新年3日目にして色々ありました。
絵に描いたようなベタな失敗なのですが、
息子の期待に応えて動物園の池でボートに乗ったところ、
渡英前より愛用していたiphone13を落としてしまったのです。
あ、と気づいた時にはすでにパーカーのポケットから
滑り落ちていたらしく。皮肉なことに椎野が撮影した映像には
「あ、ここで落としたな」というボチャンという音が入っていました。
が、水深3メートルの深みは如何ともしがたく、おさらばすることに
しました。ケータイショップをすぐに予約し、即座に復旧。
名古屋のヨドバシカメラに殺到して強化ガラスとカバーも新たなものに
しました。現在、iCloudにあるデータを移行中。
とまあ、なかなかの惨事ではありましたが、
朝から快調に写真展の準備を終えていたので、
名古屋の実家から東山動物園に至る途中にはあった城山八幡宮に
初詣に行くことができました。
かつて『木馬の鼻』の野外演劇版を上演した場所です。
あの公演を行ったのももう10年前、
高台にある城山八幡宮はなかなかの賑わいで、混みすぎることなく、
わずか20分の滞在で存分に楽しめました。
ちゃんと横浜へのお土産も買い、
あとはもうヤケクソで息子と一緒にポケモンをやりました。
人生で初めてのポケモンです。
こちらは物語進行がよくわからないので、ひたすらレベル上げ係。
これがけっこうハマって、昔、ドラクエなどでひたすらザコ敵を
倒していたのを思い出しました。
・・・というわけで、スマホが新品になって横浜に帰ります。
明日は肩慣らし程度に働いて、明後日5日から本格始動。
2024年1月 2日 Posted in
中野note
↑懐かしき2024年夏の野外劇。この状態から10分ちょっとで劇場が
組み上がり、芝居が始まるという趣向でした
↑10分後にはこんな感じ。音響には拡声器型スピーカーを選びました
作業しています。
1/25(木)からはじまる写真展では、約70点の写真を飾る予定です。
これの選定はあらかた終わって、伏見さんが画質をブラッシュアップ
してくださっています。
それとは別に、モニターを使ったスライドショーも用意しています。
せっかくだから、ダイジェストで公演を一本分観た気になって
もらえたらと思い、約5分ワンサイクルの素材を3本準備しています。
一つは最近作の『唐版 風の又三郎』。
もう一つは唐ゼミ☆唯一の唐十郎書き下ろし作品『木馬の鼻』。
そして、打ち合わせやテント設営の風景を収めたドキュメント。
この3本です。
1点を視認できる5秒×60点=300秒=5分を目安に選んでいます。
伏見さんは一回あたり400〜500カットを撮影して下さっているので、
85%を削る必要があり、この選定がなかなか難しいのですが、
吟醸酒を作る酒蔵の気持ちになって削り込んでいます。
それに、一枚一枚にレビューをつけて物語の進行を紹介します。
5分ワンサイクル。
これは自分の趣味の問題で、美術の展示などで映像作品に
付き合うのが苦手な私は、どうしてもサクッと観られるようにしたい
願望が強いのです。自分が落ち着きが無いので、他人様にも
じっとしている時間は短くあって欲しいという願いを込めています。
これが終わったら、冒頭の挨拶文を書き、
さらにギャラリートークの練習。これはいくつかの劇中歌を
歌うので、歌を練習しようというのです。歌唱自体と、きっかけから
歌への流れだけはあたっておきたい。
年始には『鐵假面』の稽古がスタートして本読みをしますが、
同時進行で写真展の準備も行います。なかなか贅沢な試みなので、
目の前の忙しさにかまけず、この機会を粘りきっていきます。
2024年1月 1日 Posted in
中野note
新幹線の中から撮影。車内は外国人観光客多めでした。
明けましておめでとうございます。
今年は劇団公演を2本やります。『鐡假面』と『少女仮面』。
奇しくも仮面ばっかりかぶる一年です。
年始は写真展からスタート。
1/25-31に四谷ポートレートギャラリーで展示を行い、
1/28にはギャラリートークをして劇中歌も少しやろうと考えています。
昨日から今日にかけていろいろありました。
仕事自体は12/30に納まったので、大晦日は身辺整理に。
このところ、初期の唐ゼミ☆に関わっていた山崎雄太君が
横浜市による新港地区でのイルミネーションやライトアップ、
プロジェクションマッピングを担当しており、それを見に行きました。
人手が必要ということで、劇団員の齋藤や米澤、
平泳ぎ本店の松本一歩君も関わっており、昨晩は米澤と一歩君に
会えました。冬場の野外プロジェクション運営は大変そうです。
暖冬とはいえ、雨の日もあるでしょう。風邪ひかないと良いけれど。
それから、北野武監督の『首』を観に行き、広い映画館を
他4名の観客と貸し切り状態で観ました。
かつてあれだけ通った映画館から最近は随分と遠のいていて、
2023年に観たのは『ドラえもん』『ハマのドン』『首』の3本のみ
という状態です。2024年はせめて2桁は観られないものか。
遅ればせながらジブリも観たいし。
22:30には倒れ込んで、久しぶりに長いこと寝ました。
朝は展覧会に備えて写真の選定などして、
それから、年始ということで白川静先生の『初期万葉論』より
『呪歌の伝統』を再読しました。柿本人麻呂の詠んだ安騎野冬猟の
情景に、現在の大晦日に野営して父霊と交流し、陽の出とともに
新たな力を得る軽皇子の姿を描いたものです。
3月のテント番は寒くなりそうですが、
よし、自分もそんなつもりでやろうと思いました。
現在にも古代人的なものは生きている。再び野外演劇をやるのだと
思うとそんな感覚が研ぎ澄まされます。気宇壮大です。
その後、ポストに届いていた年賀状をチェックしてから
返信用のハガキと台本をリュックに詰め込み、新幹線で移動。
富士山も見ました。
実家に着いてみたら、先に来ていた家族のうち息子は熱を出しており、
さらにこの地震です。このところ関わってきた北陸の人たちや施設の
ことが気掛かりです。
2023年12月29日 Posted in
中野note
↑4枚組を聴いています。至福!
一昨日に唐さんと音楽の話をしましたが、
最近、これが気に入り!という『田園幻想曲』の演奏家を見つけました。
マルセル・モイーズという人です。
きっかけは毎週日曜にやっている本読みWS。
ちょうど本読みをしながら『田園幻想曲』をかけようとiTuneを
立ち上げようとしたところ、何か不具合。
慌ててYouTubeを検索しました。
すると、マルセル・モイーズという人が引っかかりました。
正直、この曲なら誰でもいいやという気持ちで皆さんに紹介しましたが、
一聴して、これまでに聴いた中でも抜きん出た演奏だと思いました。
WS終了後はもうこれの虜で、何度も何度も聴き、
中古で売っていたCDも、ちょっと奮発して買いました。
1930年代の演奏で、時代相応にノイズが多いのですが、
それを貫いて表現が濃く、テクニックが凄まじいのです。
唐さんの好きなランパルはオーケストラによる伴奏ですが、
こちらはピアノ伴奏なのも良い。伴奏がスッキリしている分、
肝心のフルートがより引き立つように自分には感じられます。
県民ホールの同僚にフルートをやっている女性がいるので
このマルセル・モイーズという人がどういう人か訊いたところ、
フルート界において神様と称される存在だそうです。どうりで!
20世紀初めに近代のフルート演奏法を確立した彼は教則本を作り、
その影響力は現在にこれからフルートを習う人もテキストにするほど
現役バリバリだそうです。さすが!
とにかく気に入って聴いています。本番で使うかどうかわかりませんが、
良い音楽を聴いていると、目の前に鮮やかに『鐵假面』の世界が
拡がります。
2023年12月28日 Posted in
中野note
↑これで痛くてたまらないという情けなさよ・・・
先日、月イチで通っている整体に行ったところ、
ストレッチボードを勧められました。
試しに乗ってみたところ、まずは激しく痛い。
そして急角度で後ろに倒れてしまう。
あるいは、へっぴり腰になってしまう。
70歳の先生は笑いながら自分が乗ってみせて、
そこで見事な立位体前屈を見せました。
さらに笑いながら、「とりあえず三日も乗れば痛くなくなりますよ」
などと言います。
ちょっと心惹かれたけれど、お金もかかるし、
うちに物が増えるのが嫌なので躊躇していたら、
先生は、「こんなのは段差があれば簡単にできる」と
手軽な方法を教えてくれました。
以来、道にあるあらゆる段差が輝いて見えます。
自分の硬い体に優しい低めの段差。
挑戦すると思わずのけぞってしまうスパルタな段差。
いろいろですが、ゆっくり息を吐きながら身体の裏側を2分くらいかけて
伸ばすと、妙にスッキリすることに気づきました。
「とりあえず三日も乗れば痛くなくなる」という予言は叶えられて
いませんが、朝にウロウロするついでに続けてやってみるつもりです。
壁や自販機に向き合って、はたから見たら変な姿ではありますが。
2023年12月27日 Posted in
中野note
↑本に掲載された楽譜を見ると『あんたが死んだら』の作曲は李礼仙さんに
なっています。編曲は山下洋輔さん
昨日にも紹介したドップラーの『田園幻想曲』という曲は、
1960年代後半から70年代前半の唐さんの創作意欲を
大いに刺激したようです。
音楽に惹かれて劇作をするというのは、
唐さんの場合、他にも例があって、例えば有名な『少女仮面』は
メリー・ホプキンの『悲しき天使』をヘビーローテーションで流しながら
たった二日で書いたというのを聞いたことがあります。
当時はレコードですし、リピート機能も無いので、
劇団の若手であった十貫寺梅軒さんがレコードに張り付いて
リピート役として延々、針を落とし続けたとも聞きました。
あれなど、音楽の世界に耽溺しながら唐さんが書いた好例です。
他にも思い浮かぶのは、ギリシャの作曲家ミキス・テオドラキスが
映画『フェードラ(邦題:死んでもいい)』のために書いたテーマで、
それを唐さんは『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』から『吸血姫』
にかけて多用し、劇中歌のメロディにも応用しました。
そして『田園幻想曲』。
この曲が『鐵假面』に鳴り響くフリュートの音楽だと私に教えて
くれたのは亡き根津甚八さんのブログによってですが、
そのメロディを初めて聴いた時、私はそれが『鐵假面』だけでなく、
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』三幕で美少年の歌う
『あんたが死んだら』の原曲であることにも気がつきました。
『あんたが死んだら』は単行本に楽譜が付いています。
初めて『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』に取り組んだときには、
だから、この劇中歌は小室等さんの手によるものだと思っていました。
ところが、『鐵假面』をきっかけに『田園幻想曲』に辿り着いて
みると、それがこのフルートの名曲を応用した歌であったことにも
わかってきたのです。他にも、イタリア人歌手ミルバの『リコルダ』
から『ジョン・シルバーの唄』を作ったり。
芝居づくりを通じて、当時の唐さんの音楽的劇作術も見えてきます。
2023年12月22日 Posted in
中野note
↑本日のピンスポット。レトロな機材には「やってる感」が絶大にあり、
なかなかに達成感がありました
夏以来、準備を行ってきた「あっぱれフェスタ」が開催されました。
横浜市旭区にある福祉施設が集まり、展示やマルシェを複数日に渡って
展開するイベントです。コロナでのオンライン開催を挟みながら
今年で第10回を数えます。
自分は、その中で行われるD-1グランプリ。
つまり、演(だ)し物を競い合うステージもののコーナーで、
参加団体のひとつである「空とぶくじら社」のコンテンツづくりを
サポートするために参加してきました。
内容としては、
石川さゆりさんの『天城越え』を歌って演歌歌手デビューしたい女性、
同じ曲にのせて踊りを披露したい女性のショーをつくり、
その上で、坂本九さんの『幸せなら手をたたこう』の合唱を、
施設の皆さんと協力して仕立ててきました。
客席からあらかじめ工作した巨大な歌詞カードを出したり、
みんなで声援を送る練習もしてきました。後半の曲は、
客席通路にひしめき合って振り付けをしながら合唱するたのしさも
追究しました。両楽曲ともにヒットナンバーですから、
大いに支えられながら、人数の多い空とぶくじら社の面々が
協力して10分弱のショーを実現するようリハーサルを重ねました。
本番は、出演者全員がステージライトと多くの視線を浴びることで、
高揚しているのがわかりました。
自分はただ観ているよりも手伝ったほうが面白いので、
劇場機構に不慣れながらも協力して役割を果たしている
各施設選抜の実行委員会の皆さんの列に混ぜてもらい、
全編を通じたピンスポット係をやって充実しました。
北中スクール以来のご縁だった権藤由貴子さん、
現旭区長も自らフルートを手に舞台に立ち、誘わせたトリオで
演奏をしてくれました。賞をめぐる皆さんの闘いはかなりガチンコで、
噂に聞いていたD-1NO仁義なき戦いぶりを目の当たりにしました。
結果、空とぶくじら社は優勝を逃してしまい、
実際に体験するまでは「勝ち負けは関係ない」と言っていたものの、
「勝ちたかった」「勝たせたかった」という思いも芽生えて笑ってしまいました。
正直、勝ちたかった!
その中で、真に立派なのは、
やはりカプカプの鈴木励滋さんと真帆さんのコンビでした。
彼らは支えに徹し、励滋さんは裏を取り仕切り、真帆さんは審査中に行われた
審査対象外の合同演し物で、ひたすらみんなの心が解放されるよう
願いを込めて踊っていました。
この二人がいなければ、
こんな風に年末に集まって、大勢がしのぎを削り、
感情を揺さぶらせて自分を燃焼させることもなかったのです。
大変なことだと思わずにはいられません。
今年に亡くなった室井先生が言っていた通り、
すべての事業は、まずたった一人の頭の中から始まり、
たった一人の頭の中からしか始まらないのです。
二人に対して絶大に敬意を覚えました。
彼らのために何かできることがあったら、またやってみたい、
やらなければならない、そう思わせてくれる集まりでした。
あっぱれフェスタ、第11回に続きます。
2023年12月21日 Posted in
中野note
先日、打ち合わせに行った先で、お土産をもらいました。
行ったのは杉田劇場という磯子区の劇場です。
ちょくちょく教えに行っているNPO法人ドリームエナジープロジェクトの面々が
2024.2.4(日)にこの劇場で行われる「にこにこフェスティバル」に
出演できることになったので、舞台打ち合わせに行ったのです。
ここの館長さんは、伺うたびにおやつをくれたり、
お土産をくれたり、地域の敬愛を集める優しい方なのですが、
昨日は「鉄観音茶」の茶葉をもらいました。
ここで、グッときてしまう。
もはやこの、旧字の「鐵」という字を観るだけで、
自分はもう、今度の上演をどんな風にしよう?という考えに
囚われてしまう。そして同時に、このパッケージを宝物のように
感じてしまうのです。当然、実際にお茶を淹れて飲むなんてとんでもない。
また、北中スクール以来、
よく食事に行く馬車道にはその名も「鐵(くろがね)」という鉄板焼き屋が
あったことも思い出しますし、新横浜駅に行く時に車を停める篠原口の
近くには、同じ「鐵(くろがね)」という焼き肉もあります。
喜ばしいことに、2パターンある「鉄」の旧字のうち、
いずれもが唐さんが選択した、真ん中に「王」がある方です。
焼肉屋には、一回気合い入れに行った方が良いんじゃないかと思っています。
2023年12月15日 Posted in
中野note
↑迫力に満ちた全体チラシ
この秋から、複数回に渡って横浜市旭区の福祉施設
「空とぶくじら社」に通っています。この施設名、実に良い名前。
きっかけは、カプカプひかりが丘の鈴木励滋さん。
旭区内の福祉施設が集まって毎年開かれたきた「あっぱれフェスタ」
の名物コーナーD-1グランプリ(Dは演し物のD!)に挑む
空とぶくじら社のアドバイザーを引き受けることになったのです。
夏に顔合せを行って、
本格的に演し物を構想し始めてから、今日で4回通いました。
その間に、演歌歌手になるのが目標のHさんと踊りを踊りたいYさん
のデュオ・ショーを作り、それから皆さんの合唱、という
2つのコンテンツを軸に全体の流れを考え、整えてきました。
今日は施設での最終稽古。
あとは現場でのリハーサルと本番を残すのみでした。
朝に私が到着すると、皆さんはかなり緊張していて、
自分が観にくるのに備えて準備を進め、そうやってドキドキ
して待っていてくれたのをひしひしと感じました。
こちらは、皆さんにリラックスしてフルパワーが出せるように
なっていて欲しいのに、やっぱり緊張感を与えしまっているなとも
思ったし、それはそれで超えるべきハードルとしてこの場にいれば
良いのかな、とも思いました。
そして、なんだか、私たちの学生時代に
唐さんはこんな気持ちだったのだろうかとも考えました。
大学生時代、
ゼミナールのある木曜日に唐さんがやってくると、
通し稽古に何とか私たちはそうれはもう緊張していました。
今にして思えば、唐さん自身は活き活きと演じてくれよと
願っていたと思いますが、そんなことに気がまわる余裕もなく、
喉をカラカラにしながら通し稽古を見せていたはずです。
空とぶくじら社を通し稽古を通じて、そんな記憶まで蘇りました。
1度通してからはすぐに修正点を出して、それからもう2度、
10分のショーを繰り返しながらブラッシュアップしました。
こうなるとこっちも懸命で、他のことは何にも考えなくなり、
後して、けっこうスパルタだったなと思いました。
次の木曜夜に会場の旭公会堂でリハーサルをして、
12/22(金)に本番です。初参加なのも手伝いすごくたのしみです。
仕上げに客席から、みんなに掛け声をかけたいと思っています。
2023年12月14日 Posted in
中野note
以前、SDガンダムのプラモデルの進化に驚きました。
球体関節が至るところに取り入れられ、とにかく色んなところが
動くのです。プラスチックの質自体も明らかに向上し、
枠から必要パーツが外れやすいのにも驚かされした。
その後、お世話になっている人が息子に
リアルタイプのザクをプレゼントしてくださったので、
これも張り切って組み立てました。が、朝の6時台から二人で
取り組み、結局5時間ほどかかりました。
特に序盤は細かいパーツで溢れかえり、
一つ一つを見つけ出すのに異常に難儀し、目は疲れ、
肩が凝りました。明らかに小学校1年生の手に余るシロモノで
ここはオレがやるしかねえと思い定めて、何度も「明日に回そうかな」
と思いながらも、さらに追い込まれる恐怖が先に立ち、
完成にこぎ着けました。
確かにカッコいい。
しかし、何が驚いたといって、不要パーツが4割ほど
残ったことでした。それらは、初めから必要のないものとして
梱包され、最後まで使用されることのないままにしておかれる
パーツなのです。この方が大量生産上の効率が良いのでしょうが、
自分の小さい頃にはこんなことは無かったので、仰天しました。
それに、息子にザクを買い与えてくださった方には
一つの信念があるようなのです。世の中は、
誰もがガンダムになれるわけじゃない。多数のザクがほとんどなんだ。
だから、ザクを大切にしなくちゃいけないんだ。
そのかたはそのようなことを言いながら息子にザクをプレゼント
してくださいました。ガンダムよりザク、仮面ライダーよりショッカー。
カイジより黒服たち。
ここには、有名性より無名性の美学を押し出した寺山さん的なるものも
宿っているように思われます。
2023年12月13日 Posted in
中野note
↑Merry Christmas & A Happy New Year from Japan が伝わりやすい
カードを用意しました。セットの封筒に入れて、投函!
今日は劇団集合でした。
3月の公演に向けて準備をしています。
出演者やスタッフに対して、事務的な準備と、作品的な準備と
両方を進めていきます。
それから、来年初夏にも公演したいので、その準備も行っています。
私たちはいつも一つの公演をやっては、その次、その次、
とたいへんに分かりやすく活動してきましたので、
ここでちょっとした計画性を求められて、
二つの公演の準備を整理しながらやっています。
それから、年末の準備。
年明け、1月末には写真展もあるし、年始の挨拶もメールやハガキで
したいし、そのためのデザインや文案作りも躍起になってやっています。
公演準備→写真展→稽古→本番をしながら、同時にずっと本読みWSも
やりたいので、その予定や内容組みもしました。
・・・気が遠くなるような作業ではありますが、
それでも、何人かで頭を突き合わせてやっていると、
その中に楽しさもあるし、食事の時間をとって落ち着いたりもするし、
何より仕事が進みます。
それから、個人的にも、
ロンドンに向けてクリスマスカードを出しました。
向こうでは特に12/24-25がクリスマスというのでなく、
12月全体がクリスマスだと知ったのは去年のことです。
逆に言えば、カードは12/1から受け取りOKなので、
これも遅くなっているのが気にかかっていましたが、
やっと書いて送りました。切手代は一通あたり140円。
この安さは感動的です。数日後にはイギリスに届くのだと思うと
人類は大したものだと思う。
目まぐるしく動いています。
みんなで片っ端からやっつけて年末までには落ち着いていることが
目標です。12/18(月)にはハンディ・ラボの大掃除もします。
嗚呼、やること満載!
2023年12月12日 Posted in
中野note
↑フランチェスカ・レロイさんに一年ぶりに会いました
去年、ロンドンで出来た外国人の友人に、初めて日本で会いました。
彼女の名はフランチェスカ。研修先だったThe Albanyで行われていた
シニア向けワークショップ "Meet Me"にボランティア・スタッフとして
参加していた女性です。
※"Meet Me"とは、高齢者たちが集まって美術創作や合唱を練習をするもの
研修のかなり終盤に出会ったフランチェスカは、
自分は作曲家であり、2023年に日本で演奏会があることを
教えてくれました。それが12/10(日)に自由学園明日館で
行われたのです。せっかくロンドンから来て、しかも彼女は
演奏会全体の企画者でもある。これは大変なことだと感じましたし、
彼女が事前に丁寧なお誘いメールをくれたこともあり、
本読みWSの日にちを振り替えて出かけることにしました。
結果、その会はすごく良かった。
日本の女流作曲家に焦点をあて、トークを交えながら演奏を聴かせ、
最後にはフランチェスカの新作を初演するという趣向でした。
また、その新作の内容が振るっていて、
大逆事件で殺された伊藤野枝の詩を薩摩琵琶にのせて歌うという
ユニークなものでした。演奏を聴くと、フランチェスカの発想が
よくわかります。
つまり彼女は、平家物語などの軍記物を琵琶法師が語ったように、
伊藤野枝という女性の闘いを琵琶に乗せたかったのです。
社会的な戦争→個人の戦争を琵琶で語るというアイディアが面白い上、
野枝の日常のストレスを琵琶にのせる歌うと、
その大仰さが笑いにもなるのです。
あいつが許せない!キーッ!
みたいな部分をフツフツとした琵琶のノイズと弱音でやられると、
コミカルでもありました。
ああ、フランチェスカはホンモノなのだなと思いました。
当日に配られたパンフレットで経歴を見ると、日本で賞も獲っている。
さらに驚いたことに、谷崎潤一郎の『鍵』をもとに作品をつくっている。
・・・要するに、彼女は谷崎潤一郎や伊藤野枝を読みこなすくらい
日本語ができたのです。日本人でも彼らを読む人は少ないというのに。
必死に英語でやりとりしてたことがバカバカしくなりました。
先に言えよ、フランチェスカ!
次に来日したらまた会おうと伝えました。
文学、自分はけっこう詳しいよ!
少なくとも、葉山の日影茶屋に案内してご馳走するくらいはできるよ!
そう日本語で伝えました。
2023年12月 8日 Posted in
中野note
↑ブリュッセルに聴きに行ったコンサート。終演後の大野和士さん
今日は初めて、
指揮者の大野和士さんに会ってお話しすることができました。
お話しといっても、ほんのご挨拶程度でしたが。
所属されている事務所の方々や、以前からお世話になっている
神奈川県庁のOBの方、県民ホールの同僚など、
皆さんのおかげで、大野さんに会うことができました。
私が大野さんの仕事に注目するようになったのは
2011.7.24に京都でマーラーの3番を聴いたのがきっかけでした。
あの時、室井先生の主催する北仲スクールという大学の
サテライトで働いていた私は、クシシュトフ・ヴォディチコという
現代美術家の招聘に躍起になっていました。
それがあまりに煮詰まったので、なんだかピンときて、
ほとんどヤケクソで、京都まで行くことにしたのです。
当時、私はクラシック音楽を聴き始めたばかりで、
確か、自分でチケットを買っていくコンサートとしては
3回目だったと思います。
大野さんのマーラー3番は、
第一楽章が終わった瞬間から、今日はすごいことになったと
確信させられる体験でした。その後に第二〜第六楽章が続いて、
生き切った人生の後に、動物になり、植物になり、
この世界をわたり歩いて、天界に召されていく思いがしました。
最終の第六楽章に入ると涙が止まらなくなり、
でも、それは情緒的なものではなく、ひたすら巨大なものに触れている
感触によるものでした。柔よく剛を制す、上善如水、であるべしと
言われているようでした。あまりにすごかったので、
帰りに美味いもんでも食べようという考えすら放棄して、
さっさと京都駅まで行って帰りました。
自分には、あのコンサートだけで充分すぎるほど充分でした。
私がそれまで比べ、
格段に台本を読むようになったのは大野さんの影響です。
量ではなくて、一本の劇を細部に至るまで読み込むということについて。
以来、大野さんが手がけるオーケストラを、オペラを、
レクチャーコンサートを聴いて現在に至ります。
ありったけの御礼を言いたかったけれど、そんな時間はなく、
それはまた今度にしようと思います。
2023年12月 7日 Posted in
中野note
↑写真集「唐組」より『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』舞台写真
この場面で例の前奏曲がかかっていたと思われます
必要があって『ローエングリン』を聴いています。
ワーグナーの『ローエングリン』。
去年、生まれて初めて実演を観ましたが、それはイースター明けの
4月下旬。なぜ語学学校で出会ったロシア人の女の子と一緒でした。
彼女はオペラというものに一度来てみたかったらしいのです。
こっちは貧乏留学生気分で過ごしていましたが、彼女はエルメスの
バッグなんか持っていたりして、お金持ちそうでした。
『ローエングリン』の話。
自分が初めてあの印象的な前奏曲を聴いたのは、
蜷川さんが三島由紀夫作『弱法師』の最後の長せりふに
あの曲をあてていたからでした。主人公の語り始めに合わせて
あの曲がヒタヒタと流れ始め、最後は大きなうねりになって
空襲の業火を語る描写をいやましに高めました。
実にピタリとハマって感心させたれたものです。
ところが、よくよく様々なことを知るようになると、
蜷川さんが近代能楽集を演出する9年前に劇にこの曲を使って
いる人がいたのです。・・・唐さんです。
唐さんは、初めて紅テントを立てて芝居をした時の演目
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の二幕冒頭、
「ここは壮大なワーグナーのローエングリン響く床屋」
というト書きを書いています。あの壮大さをギャグにしているような
でも、床屋の趣味として本気だったような、面白いト書きです。
2023年12月 6日 Posted in
中野note
↑これは1998年の放送。58歳の唐さんです
初めて、ジャン・コクトーの『声』を読みました。
渡邊守章先生の翻訳。先生がご自身で主催されていた演劇プロジェクト
「空中庭園」での上演台本が光文社新訳文庫になり、
絶版ではあるものの古本屋で手に入れました。
懐かしいなあ。空中庭園。
大学生の時に青山に『悲劇 フェードル』を観に行き、
糸巻きを持ったタイトルロールのヒロインと、マオカラーで
キラキラした眼鏡をかけた渡邊先生のロビーでの立ち姿が印象的でした。
話を戻して。
『声』に興味を持ったのは、忙しくても短いから電車の中ですぐに
読めるし、最近、車の中で聴いている一人芸ものに、モノオペラとして
『声』をネタに作られたプーランク『人間の声』やメノッティ『電話』
があるからです。(メノッティは全然内容が違いますが)
で、ハタと思い出しました。
確か、コクトーの『声』が初めて自分にインプットされたのは、
唐さんの語りによるものだと。よくよく記憶を辿ってみると、
それは高校時代に観た深夜放送での、扇田昭彦さんによる
唐さんへのインタビューでした。
この放送の影響で自分は横浜国大を受験することになりましたが、
こうして、細かな場面でも、いまだに思い起こすことがあります。
唐さんが語っていた情報の数々、それ以上に、ものの考え方。
最近は便利なことに、YouTubeにこの動画が上がっています。
27:00過ぎに、唐さんが一人芝居について語るくだり、
ジャン・コクトー『電話』の話題が出てきます。
2023年12月 1日 Posted in
中野note
↑なんてことないベランダからの風景も、寒くて空気が澄んできれいに、
少し寂しくも感じられます
先ほど帰宅したら、住んでいるマンションがさっぱりとしていました。
うちの建物は結構古くて、そのために10月半ばから大規模な外装工事が
入っていました。
初め、みるみるうちに足場が組まれ、外観はネットで覆われました。
建物全体に徹底した養生がなされ、ビニールとテープが全体を包む。
ペンキ塗り直しが飛散しなよう、ほんとうに徹底して覆われたために
窓を開けてもビニールで塞がれて外の空気がいっさい入らない。
そもそも、ベランダ修繕中は窓が開けられない日も続きました。
今年は11月上旬まで暑かったので、この密閉感には難儀しましたが、
一方で、工事のする人たちに行き帰り挨拶するのは、なかなか
良いものでした。住民が窮屈な思いをしているのが分かりきって
いるので、皆さん、それはそれは丁寧に接してくれるのです。
やがて、人見知りの子どもたちも、働き者のおじさんたちに
挨拶できるようになりました。それが今朝、いよいよ終了予定日に
なって足場を解体していたのです。
当たり前ですが、先ほど帰宅した時には、
静かでさっぱりとした、それでいて以前より綺麗になったうちの
マンションに戻っていました。駐輪場から自転車を引き出すのに
一苦労させられていた鉄骨も取り除かれ、しんとして、
清潔な感じがします。
賑やかだった工事道具もなくなり、もうあのおじさんたちに
会うことがないのだと思うと感慨がありました。
そして、自分たちのテント劇場を見守ってくれていた周囲の方々も
いつもこんな感慨だったのかも知れないと思うようになりました。
うるさく、わずらわしく始まった工事が、
こんなふうに懐かしさと虚無感を生むのです。ああ、早く芝居小屋を
つくって、早くこういう感慨を届ける側になりたいと強く思います。
次回作『鐵假面(てっかめん)』は3月末に公演予定です。
詳細は近く発表。『オオカミだ!』こそ上演してきましたが、
やっと芝居屋に戻れるな、と。
準備を進めながら実感が強まってきています。
2023年11月30日 Posted in
中野note
↑初めて利用した羽沢横浜国大駅。新宿まで40分。付近に住んでいる
劇団員の米澤は、この駅が出来て良い思いをしているに違いありません
昨日はスコーンの話題に終始してしまったけれど、
浅草に観に行ったドガドガ+の『セクシー女優事変』は面白かった。
帰国して2月に観に行ったのがシリーズの第1弾で、今回は第2弾。
両方とも好きです。
アダルトビデオから出発した望月監督にしか書けない世界を、
座長の丸山正吾さんを中心に、若手からベテランまでのキャストが
素晴らしく支えています。過酷な性の世界を描くから様々に陰鬱
なのだけれど、最後には軽やかに、かつ不条理に暴走し、
それら過酷を突破していくのが痛快でした。
不幸や、一生消えない傷や、トラウマ、
世の中に溢れかえっているけれど、それで人が不幸せなまま
一生を終えて良いわけがないという、望月さんの信念がおふざけの
中に詰まっています。気分良く浅草から引き上げてきて、
昨晩はスコーンを食べました。
それで今日は、
朝から整体に行き、初めて羽沢横浜国大駅を使って新宿に出て、
阿佐ヶ谷スパイダースの『ジャイアンツ』の千秋楽を観て、
それから上野に移動して文化会館で青木涼子さんの能声楽を聴きました。
何かずっと遊んでいるみたいだけれど、合間にちょっとずつ
働いてもいます。しかし、やっぱりそれ以上に遊んでいて、
最近ハマっているのは一人芸の世界です。
落語とか講談の録音も聴きますが、
モノ・オペラというものがあるらしいと知って、
移動時にイヤホンを付けたり、カーステレオで聴いています。
だいたい、舞台ものは録音だと大勢の演者が入り乱れるので
訳が分かりません。しかもオペラは外国語なので、
一回上演を観たことがあるものでないと録音を聴いても
チンプンカンプン。ところが、登場人物が1人だとかなり
愉しめることが分かってきました。
そういえば、小学生の頃にマルセ太郎さんを観て感激したことも
思い出します。唐さんにも一人芝居が2本あって佐野史郎さんが
演じた『マラカス〜消尽』、金井良信さんが初演した『電子親友』
という台本です。録音が残っていたら愉しいだろうなあ。
それ以上に、いつか上演して旅ができたら、
どんなに素敵だろうと思わずにはいられません。
2023年11月29日 Posted in
中野note
ロンドンでできた日本人の友達が帰国しました。
彼女と知り合ったのは私の滞在が半ばを過ぎた頃でしたが、
それからは本当にたくさんのサポートとアドバイスをもらいました。
恩人の一人です。
彼女は旅行会社に勤務していましたのでこちらが旅の手続きに困ると
いろいろと教えてもらい、名士たちが集まるジェントルマンズクラブにも
連れて行ってもらいました。
その彼女は帰国にあたって、わざわざ私のために、
私がよく通っていたパン屋Gail'sのスコーンとブラウニーを
買ってきてくれたのです。生ものだから急がねばと思い、
都内で急遽落ち合うことにして、ありがたく品物を頂戴しました。
あまり時間がなかったので、
最近気に入りの醤油ラーメンを一緒に食べたりして。
食べものが美味しくないと言われがちなロンドンですが、
自分は、ベーコンをカラカラに焼く調理法は圧倒的にロンドンが
美味しいと思いました。そして、今回プレゼントしてもらったスコーン。
日本にいたときは、パンとクッキーのあいのこみたいで、
いかにも中途半端なシロモノだと思っていたスコーンが、
こんなに美味しいと初めて実感しました。
パンでもない、クッキーでもない、スコーンでしか得られない
満足感と美味しさがあると思うようになりました。
本式では、ナイフで上下に切り分けて、
生クリームやジャムをたっぷり塗って紅茶とともに頂くものです。
でも自分は、手でパカっと行儀悪く割って、そのまま食べても
充分に美味しいと思う。小麦の充実感。
日本のパン屋で買うスコーンは、たいがいこれには勝てないなと
ずっと思っています。
2023年11月28日 Posted in
中野note
↑「季刊同時代演劇」には『鼠小僧次郎吉』と『少女都市』が
収められています
唐十郎作品のうちで、
再演頻度と人気の高いものに『少女都市からの呼び声』があります。
ことこの演目に関して新宿梁山泊の金守珍さんの貢献は絶大で、
かつて状況劇場の若衆公演として新宿ゴールデン街の小さな劇場で
産声を上げたこの作品は、その時にフランケ醜態博士を演じた金さんに
よって何度も何度も上演され、時にはニューヨークでも上演されました。
まさに金さんのライフワーク。
今年だけでも3パターンの上演を金さんは行って、
その粘り強さには頭の下がる思いがします。そうした金さんの展開に
支えられて、ハヤカワの文庫には、『少女仮面』『唐版 風の又三郎』
という代表2作品と並んで、この『少女都市からの呼び声』が
収められたのだと思います。
自分が大学に入ったばかりの時、唐さんは一般教養の授業で
200人からの学部生を相手に、その公演映像を観せていた記憶が
あります。「満州」という要素こそあれ、生まれてこられなかった
妹と兄の織りなすこの物語は普遍的で、お話としての自立度も高く、
初心者にとっても入っていきやすい。
唐さんはきっとそう考えて、あまり自分の芝居に馴染みの無い
学生たちにこれを観せたのだと思います。
一方で、自分は最近、
この『少女都市からの呼び声』のもとになった『少女都市』が
気になるようになりました。唐さんが早稲田小劇場に託した
『少女仮面』の対になる作品として自身の劇団に書いた演目です。
春に比べれば短い秋の公演、
しかも、例の天井桟敷との大立ち回りから唐さんたちが警察に
引っ張られた結果、ただでさえ少ない公演回数をさらに縮小されて
しまったのがこの作品です。
気になるので、来月はこれを研究しようと思います。
せっかくであれば、初めてこの演目が掲載された「季刊同時代演劇」
をもとにやってみようと思います。
2023年11月24日 Posted in
中野note
↑野澤健さんと共演経験もある、新宿梁山泊の渡会久美子さんと一緒に
観ました!
今日は先ほどまでダンスを観ていました。
ちょうど10年前、KAATで上演した『唐版 滝の白糸』に出演してくれた
野澤健さんが、久々に舞台に立つと言って誘ってくれたのです。
去年に自分がロンドンで過ごしていた時、
健さんはfacebookで大病をしたことを投稿していました。
その時はなんと言って良いのか分からずにいましたが、
久々に客席から眺めることのできた健さんは、
以前と同じように自分の表現を果敢に探っていました。
健さんは、もともと横浜国大の学生だった三浦翔くんが紹介してくれた
パフォーマーでした。三浦くん自体もダンスをやっており、
自分が演出した『腰巻お仙 忘却篇』ではドクター袋小路を
演じて私を大笑いさせてくれた良い男でしたが、共演したことのある
健さんを紹介してくれたのでした。
『唐版 滝の白糸』に登場する、小人プロレスラー・アトムが
その時の健さんの役どころでした。世の中のあらゆる大勢に闘いを
挑もうとする闘争心、一転、夕陽に伸びた自分の巨大な影を眺めて
しんみりするリリシズムがアトムの持ち味で、これは健さんに
ピッタリでした。
当時は蜷川さんがシアター・コクーンで同じ演目を上演していて、
同じくアトムを演じていたマメ山田さんが僕らのバージョンを
観にきてくれたのも強烈な思い出です。
マメさんが客席最前列の中央に座ったことから、
健さんは自分のもっとも輝かしいシーンでマメさんとさし向かいに
なることになり、客席後方からその光景を眺めていた自分には、
二人が向き合っている姿に神々しさを感じたものです。
その後、健さんは多くの企画に見出され活躍をしていくことに。
あれだけの個性を持ち、クレバーさを持つ健さんは、
どこまで身体が保つかという闘いを常に生きているはずです。
よく動いていたし、終演後に話したら強気だったし、
また健さんを観られる機会がありそうだと、油断はできないけれど、
やっぱり安心しました。
観る機会だけではなくて、出演も探らないと。
健さん、復活おめでとうございます!
2023年11月23日 Posted in
中野note
↑子ども用の絵本を選んでいるうちに見つけました
ガタロー☆マン作の『おだんごとん』。
子ども用の絵本コーナーで娘に合う品物を探るうち、
これを発見して即座に買いました。当然、私用です。
あの『珍遊記』の漫☆画太郎先生がこんな風に絵本作家としても
活躍されていることを、私は初めて知りました。
いそいそと買って帰り愉しみに周囲を覆うセロファンを外すと
久しぶりの画太郎節が待っていました。
単純で呵責ないストーリー。
お馴染みの画風、お馴染みのキャラクターが行き交い、
得意のオナラやウンコが元気いっぱいに跳ね回っています。
そして何より、この圧倒的な無意味性。
子供達も大喜びで「ヤバイ、ヤバイ」と言いながら一緒に読みました。
見事に構築された作品が好きです。張り巡らされた伏線も好きです。
けれども、最終奥義は、脳髄を直接に鷲掴みにされるような
無意味性が上だと思うのです。なんでスゴいと感じるか
まったく説明できないけれど、やっぱりスゴく感じる。
これが最高です。無意味に勝るものなし!
読むと良い気分になります。オススメです!
2023年11月22日 Posted in
中野note
Nancy CinatraのSugar Town
動画でも簡単に観られます。
→
それにしても、劇中で何度も何度も歌われる
『Sugar Town(邦題:シュガータウンは恋の町)』は面白い。
もともとはナンシー・シナトラが歌った歌詞はこんな具合なのですが、
I got some trouble, but they won't last
I'm gonna lay right down here in the grass
And pretty soon all my troubles will pass
'Cause I'm in shoo-shoo-shoo, shoo-shoo-shoo,
shoo-shoo, shoo-shoo, shoo-shoo Sugar Town
唐さんはこんな風に替え歌しています。
〽誰か私に教えて
かわいいベビーのつくり方
やさしい母さんになりたいの
ここはシュシュシュ シュガータウン
現在は30代で結婚、40歳前後で初産も珍しくありませんが、
当時は20代で結婚し子どもを産む時代、今より早く大人になる
時代だったでしょうし、定年も55歳という世の中です。
(今では考えられん!)
それに、同棲ブームによって、妊娠→中絶が若者世代に
溢れた時代でもありました。それが唐さんとその周辺にとっても
生々しい話題であったことは、初期のアリババや『腰巻お仙』
シリーズを読めばすぐに察せられます。
『Sugar Town』はyoutubeでも簡単に聴けますから、
ウキウキと聴いてもらいたい唐さんオススメのポップスです。
同時に、このメロディに少女のアイロニーを混ぜ込んだ
唐さんのブラックユーモアも、歌詞をあてはめて
愉しんでもらいたいところです。
2023年11月21日 Posted in
中野note
↑唐さんにとっての初めての単行本だった『腰巻お仙(現代思潮社)』
あとがきは当時の唐さんのてらいの無い思いが溢れていて、胸を打ちます
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の台本打ちがやっと終わりました。
これは、かねてからの懸案事項で、ずっと気になっていたものでした。
というのは、唐十郎ゼミナールが最初期に上演した演目について、
私たちは上演台本を作らなかった。あるいは、作ってもデータ管理が
いい加減で、それを失くしてしまっているのです。
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』もそのうちの一つで、
かなり前から心に引っかかっているのですが、
近く『腰巻お仙』シリーズ、すなわち、
『忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』『振袖火事の巻』を
一気に本読みWSの題材にしようと思い立ったので、
これを機に研究し直してみようと考えました。
それで、ここ3週間ほど、
早朝は初掲載の雑誌、単行本、作品集を見比べて読んでいるわけですが、
『映画批評 1967年12月号』に取り組みながら、単行本に掲載するに
際して唐さんが最後の方のシーンを書き足していることに気づきました。
第四幕だけに登場する「看護婦」の出番が終盤に増えている。
これは、稽古の過程で、この役や役を演じた俳優の面白さにより
膨らんだとか、唐さんが役者を慮ったとか、最後の方で別の役の、
例えば「かおる」役にメイクや扮装替えの時間を稼ぐ必要があった、
などの理由が考えられ、いずれにせよ当時の現場感を想像するに
大きなヒントであると感じています。
また、後年は書き換えをほとんどしなくなる唐さんですが、
雑誌から単行本化にあたってずいぶんせりふを書き換えています。
それは、美学的な作業というより整理をした感じで、初々しかった
唐さんが殊勝な感じで初めての単行本に力を入れていた様子も
察せられて、愉しい作業です。単行本に際して唐さんが書かれた
あとがきはあまりにも素直で、ストレートで、胸を打ちます。
機会があったら、ぜひ読んでもらいたい唐さんの文章です。
2023年11月17日 Posted in
中野note
↑日付は2001.12.7でした
昨日、紹介した本の表紙をめくると、唐さんのこんな署名があります。
公演終了後に頂いたもの。開演前に浮き足立ちすぎて
舞台セットのプリセットを忘れたり、終演後に宴会に至る動きが
鈍すぎて唐組の皆さんの手を煩わせたり。
観劇してくださった大久保鷹さんに、
「1・2幕をわざとつまらなく作っておいて、
3幕から面白く見せる作戦だね」と言われたり、
帰り際に際にダメ押しで、
「もっと絶望した方がいいな」と笑いながら言われて
どう受け止めて良いのがその後もずっと考え続ける公演でしたが、
唐さんがいかに私たちに手加減し、気を遣ってくださっていたか、
分かるサインとコメントです。
今日は一日中、動き回ってヘトヘトなので短めです。
あの、初めての唐十郎ゼミナール公演のあとも、
緊張しすぎて同じような感じでした。
2023年11月16日 Posted in
中野note
↑この現代思潮社から出ていた再販版が、私たちの教科書でした
早朝に研究中の『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』が
第3幕に入りました。何とこの芝居は全4幕で構成されており、
そのようなわけで、半分を過ぎたことになります。
第1幕 その人の名は
第2幕 恋づくし
第3幕 喫茶ヴェロニカ
第4幕 月下
という構成です。これが、長いかと思いきや、
各幕がテンポ良く進んで全編で2時間以内に収まるようになっています。
とりわけ第3幕には思い入れがあって、
唐さんが得意とする長せりふの世界がいよいよ始まります。
ギャグとドタバタに溢れ、それまではずっと軽演劇風だったこの芝居が
一転、じっくりとして謎めいた会話劇となり、
主人公・忠太郎の前に立ちはだかる美少年(=腰巻お仙)による
母体論が滔々と展開します。
今から考えれば、内容をよく私たちは、
しかし、だからこそ、せりふを言ううちに身体が熱くなるのを
本能的に感じることができました。まるでブルース・リーのように、
Don't think, feel.を地でいっていたわけです。
それから20年以上経って、同じ言葉に向き合う時、
あの時より遥かに多くの意味が自然と自分に迫ってきます。
けれど、それによって失われたものがあることを、
慎重に思い返すべきだとも思うのです。
稽古中、私たちの下手くそな芝居を観ながら、
この劇が第3幕に差し掛かった時、唐さんが泣いていたのを思い出します。
そうして生まれたのが、ついこの前に唐組で観た『糸女郎』でした。
毎日、少しずつ読み進める台本の探求。
明日は、まさにその長せりふ部分を読み込みます。
2023年11月15日 Posted in
中野note
↑これがハガキの表と裏面です
このゼミログの冒頭で、いつも写真を紹介しています。
初め、文章だけを書いていたら、やっぱりビジュアルがあった方が
良いということになり、最低でも一枚は写真をあげるようにしました。
本読みWSのあと、それが唐ゼミ☆公演で上演した台本であれば
舞台写真をあげます。ここ12年は、広告写真家の伏見行介さんが
撮ってくださったもの。伏見さんと知り合って12年ちょっと経ち、
数万枚の写真が溜まったそうです。
そこで、写真展をやろうという話になりました。
2024年1月末に1週間、四谷のギャラリーで行います。
ハガキのフライヤーを作ったので、これから配っていきます。
期間:2024.1.25(木)〜31(水)
会場:ポートレートギャラリー(新宿区四谷1-7-12日本写真会館5階)
ロンドンにいた去年から準備をしてきました。
付き合い自体は10年以上になる伏見さんと時間をとって話し込んだのは、
実はロンドンと日本をつなげたzoomが初めてでした。
まず、伏見さんに追いかけてもらっているこの12年間、
自分が何を考えながら演目の選定や公演組みを行なってきたのかを
話しました。劇団の歴史は、やはり団員の〇〇が入り、〇〇が辞め、
というトピックが重要な位置を占めます。劇団の根本は人。
その時々にいた団員たちに注目したいという主題が立ち上がってきました。
写真の選定は大方済み、
これから元劇団員たちにも連絡をしていきます。
さらに、モニターで見せるスライドショーづくりをし、
1/28(日)にはちょっとしたイベントもやろうと内容を考えています。
まずは第一報でした。
2023年11月10日 Posted in
中野note
↑3月に初演して面白かったので4月にも上演しました
『腰巻お仙』シリーズについて想いを馳せていると、
これが台本としてはなかなか破天荒だけれど、
実際に上演してみると笑いが多く起こって、
稽古の現場までもがとにかく面白かったことが思い出されます。
正確にいうと、
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の頃は自分たちがまだ青くて、
余裕がなくて、しゃっちょこばってばかりいたので、どうにも
硬かったのですが、30歳に差し掛かる頃から徐々に余裕を覚え、
ふてぶてしさ、図々しさが身につくようになり、
お客さんもよく笑ってくれるようになりました。
なかでも思い出深いのは学生たちとつくった『腰巻お仙 忘却篇』で、
これはもう、稽古のさなかにも膝から崩れ落ちるほど笑いました。
あの時はなにしろ、集まった学生たちがすこぶる優秀だったと
思わずにはいられません。彼らは地面に埋められたり、
人形を使って屋上から飛び降りたフリをしたり、
チケットがわりの石を投げつけられたり、
照明が壊れたという設定で自転車を漕ぎ続けて
共演者に必死のライトを浴びせたり・・・。
とにかく真面目かつ余裕を持って演じてくれました。
ふざけているのではなく、杓子定規すぎもしない。
要するにそれはユーモアに満ちていたということです。
書いていてさらに思い出しましたが。
1メートル以上の高さのある帽子をかぶったり、
リアカーをくくりつけた自転車を転がして坂道を全力で駆け降りたり、
自分の転がすリアカーに轢かれたり、
バリカンで頭に星型のハゲをつくったり。といったこともしました。
自分が本読みWSで『ジョン・シルバー』シリーズを熱心に
取り上げつつも、『腰巻お仙』シリーズを避けていたのは、
これらの現場感がちゃんと伝えられるか心配していたからだと
思い至りました。でも、本読みだって、実際に声に出しさえすれば
あのウキウキ感がやってくるのではないかと思い、やってみたいと
考えるようになりました。おどろおどろしく受け取られがちな
演目ですが、あれこそ世の中を明るく照らす芝居です。
2023年11月 9日 Posted in
中野note
↑映画評論1967年12月号
最近、『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』をデータ化していない
ことに気づきました。あの作品に取り組んだのは大学3年生の時で、
当時はなんと、みんなで買った現代思潮社の単行本をそのまま
台本にして書き込みなどもしていたのです。
そういうわけで、Wordのデータになっていない。
これでは本読みワークショップができません。
何より、気分転換にああいう、リリカルにしてバカバカしい台本を
読めば元気も出ようというもの。そこで、少しずつ読み始めました。
で、ふと気づいたのです。
確かに現代思潮社の旧版は唐さんの初めての単行本ですが、
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』はその前に雑誌に
載っていたはず。そう思って本棚を探したところ、出てきたのが
上記の映画評論でした。
この雑誌では、唐さんが花園神社デビューに際して
「腰巻」という言葉が嫌がられるのではないかと配慮して命名した
別タイトル『月笛お仙』で掲載されています。
何か発見があるかも知れない。そう思いながら少しずつ、
この雑誌版と向き合っています。
2023年11月 8日 Posted in
中野note
降って湧いた仕事に揉まれてヘトヘトなので、今日は短め。
教会とかお寺とか、前を通りかかるとなかなか面白い言葉が書かれて
いることがあって、足を止めることがあります。
これは最近、ルーテル市ヶ谷という素敵な教会兼音楽ホールに
フォーレのレクイエムを聴きに行った時に思わず見入ってしまったもの。
これは書いた人が偉いと思います。
きっと聖書の一説なんでしょうが、その抜き出し方、字の雰囲気。
そういうものが相まって、
神サマがなんだか欲張りな感じがして好感が持てます。
スナック菓子を両手に持って頬張っているような感じ。
だいたい、冒頭の「す」という文字から、
ボケる気満々のコメディアンのような予感が漂っています。
そして「だから」という締め。特に「ら」の曲線の妙。
・・・今日は以上です。
2023年11月 7日 Posted in
中野note
↑現在はひたいの角のようなパーツ無しで頑張っています
先日の日曜、7歳の息子と良い時間を過ごしました。
最近、彼はプラモデルづくりに目覚めたのです。
ちょっと前、最初はファースト・ガンダムを組み立てました。
ガンダムといってもリアルタイプでなくSDの方です。
これは初回でしたからほとんど私が組み立てましたが、
息子はこれを大いに気に入りました。
続いて一昨日。
今度は手を貸さずに息子自身に組み立てさせようと
ニューガンダムのSDを買いにヨドバシに行きました。
今度は子ども用のニッパーも買って、
一人で組み立て始めました。そばにいると口を出したくなるので
こちらはなるべく見ないようにしました。
シールを逆さまに貼った挙句、貼り直そうと剥がしてダメにする。
ニッパーの使い方がまずくて、部品を傷つけてしまう。
左右反対にくっつけてしまう、など、
見ているとこちらもソワソワしてきて、
手を出さずにいることの難しさと闘いました。
結果、彼はなんとか組み立て終えて、
ファーストとニューを並べて眺め、やがてはそれらをぶつけ合い
始めました。脳内戦争です。
さらに、蕎麦屋に出かけようとしたところ二体を持ち出したのです。
蕎麦を食べ終え、ドラッグストアに寄り、スーパーにも寄りました。
その間、ガンダムたちは道路を飛行する。が、途中で気づいたのです。
気に入りのファースト・ガンダムの角がない・・・
それから90分くらい、もときた道や通り過ぎた店内を3往復しました。
が、結局出てきませんでした。そのトボトボとした歩みは
味わい深いものがあって、しょげかえる息子には悪いのですが、
自分には充実した時間のように思われました。
大げさにいうと映画『自転車泥棒』のような、こうして親子で
連れ立って挫折している体験は、変え難く大切だと思うのです。
これはちょっと唐さんの世界だな。そうも思い、
唐さんにこんな体験をしたと報告したくなりました。
新しいのを買ってやろうか?と訊いても、
あのもともとのパーツとは別モノだと言い張り、
購入を受け入れない息子は、なかなか良いセンスだと思います。
量産されている製品なのですが一点もの。これも唐さん的だな。
そう思います。
2023年11月 3日 Posted in
中野note
↑面白かったので、2冊並べて読みました
今日は椎野が唐組に出かけています。
長男が生まれてから、自分たちが揃って芝居を観にいくことは
無くなりました。どちらかが家にいて、子どもの面倒をみます。
大概出かけるのは自分ですが、唐組はやはり特別です。
娘がある大きさになった時から、椎野もひとつの公演につき
1回は立ち会う習慣を復活させました。
で、留守番の間、子どもが自分で遊んだり、
昼寝をしたり、夜になって就寝してしまうと、本を読みます。
今日読んだのはW.フォークナーの『エミリーに薔薇を』。
ここしばらくずっと新潮文庫でしか読めませんでしたが、
昔に福武文庫で出ていた翻訳が中公文庫で復刊されたので、
それも手伝って読みたくなりました。
次に上演する『鐵假面』には、この短編に触れるくだりがある。
『エミリーに薔薇を』、それからゾシマ長老に触れるシーン。
要するに『鐵假面』は、ホステス二人が殺してしまった男の首を
ボストンバッグに詰めて各地を逃げまわる話です。
ですから、彼女たちの荷物から溢れる死臭に引っ掛けて、
エミリーが殺した恋人とゾシマ長老という、死体の匂いが小説世界の
衆目を集める存在をこの芝居で唐さんは引っ張り出しました。
ほんのひと言だけのせりふですが、やっぱり発するからには
読んでおきたいと思って、これまで随分と豊かな世界に出会ってきました。
これも唐さんとずっと付き合ってきたことの効能のひとつです。
試しに唐さんのガイドによって読んだ短・中編をいくつか挙げると、
・モーパッサン『脂肪の塊』
・ホフマン『砂男』
・ゴーゴリ『外套』
・ドストエフスキー『地下生活者の手記』『白夜』
・アンドレ・ブルトン『ナジャ』
・泉鏡花『夜行巡査』
・夏目漱石『夢十夜』
・上田秋成『雨月物語』
なんかがパッと思い浮かびます。
ことに翻訳ものとなると唐さんは、登場人物の自意識が暴走するもの、
事件としては小規模でも個人の内面がひどく痛ましいものが好みです。
そしてそれは、唐さん自身の繊細さの証左でもあります。
『エミリーに薔薇を』、
初めて読んだ2007年より格段に面白く感じました。
自分を捨てた男を殺して、朽ちていく遺体と寝続けた女の話です。
たった20頁に、死んで肖像画になっても威圧的であり続けるエミリーの父、
自分より遥かに身分の低い男に捨てられ、誇りを踏みにじられつつも
同衾をやめられないエミリーの愛、物言わぬ黒人の召使の非人間性などが
いっぱいに詰め込まれています。
この短さ、凝縮度をして、唐さんはよく"珠玉"と言い表します。
自分もそれに倣って、これぞ珠玉と思います。
2023年11月 2日 Posted in
中野note
ここ一週間、さまざまな催しを行ったり観に行っていますので、
写真とともにダイジェストでお届けします。
トップはこの方!
10/28(土)のこと。
やっぱり唐さんに会うと自分の芯からエネルギーが湧き上がるのを
感じる。学生時代から疲れ果ててヨレヨレで会いに行っても、
帰りは余力に気付かされる。今もまったく変わらん!
同じ10/28(土)のお昼はJordi Savallの演奏会を最前列で聴きました。
特に後半は、82歳のマエストロが血管ブチ切れそうになりながら
マラン・マレその他のプログラムをガンガン弾いていて、
ぜんぜん枯れていないことにビビる。
写真は去年の8/17にエジンバラで撮ってもらったもの。
10/31(火)は茅ヶ崎の教会にお邪魔して、中田恵子さんのオルガン演奏を
聴きました。いつものホールとは違い教会だったので、中田さんから
キリスト教の風習や聖書についての説明を受けながら、バッハの小曲集を
聴くことができました。音楽から見える景色がぜんぜん違うし、
レジストレーションや演奏の根拠を識ることができた。特別な体験。
↑オランダ製のオルガンを横に撮影。タイムボカン的な写真で面白い。
アシスタントを務めた下田さんの連携も見事でした。
11/1(水)はカプカプ×新井一座WS。
受講生の皆さんが2チームに分かれ、オリジナルのアイディアを出し合い
WSをリード。夕方からは振り返りとともに改善点が挙げられました。
↑サツマイモを松ぼっくりを持ち込み、秋を全開にした着想が卓抜!
風呂敷を縫い合わせた大風呂敷を使って不思議な世界。
本日11/2(木)は米澤が出演するワンツーワークスを観に下北沢へ。
米澤は現在、リアリズムの演技を習得したいと考えて、自分なりに
学びの場を求め、努力を続けています。
自ら依って立つ姿を見て、もっとやれ!と願います。
↑終演後は会えなかったけれど、仕込みの時に現場が隣り合わせた
岡島哲也さんが記念撮影して送ってくれた。米澤の短髪と笑顔は珍しい。
新鮮だけれど、痩せていることは心配・・・
2023年11月 1日 Posted in
中野note
↑終演後、唐組の皆さんの撮影にちゃっかり混ぜてもらいました
(撮影:平早勉)
先週の土曜日は鬼子母神に唐組を観に行きました。
前の予定から会場時間を過ぎてやっと紅テントに到着し、
そこにいた美仁音さんに「今回の役は何?」と訊いたら、
「美女丸です」と応えました。
美女丸。乳母川美女丸といって『糸女郎』の敵役です。
もちろんこの役は男性の役なので、当意即妙に冗談を飛ばす
彼女をおもしろく思いながらテントに入りました。
劇が始まると、トイレの中でお腹を露わにする美仁音がいて、
やっぱり美女丸ではなくヒロインなのだと理解しました。
この日のヒロイン・湖村蚕(こむら かいこ)は、
天竜川の崩壊により破壊された養蚕・製糸業の悲劇を
丁寧に、丁寧に伝えていました。
特異なキャラクターが多く登場し、
登場人物たちの魅力で笑っているうちに撹乱されてしまいそうに
なるところを、あの部分が、この『糸女郎』とはどんな物語で
あるのかを伝えてくれます。
主人公の大切な役割を果たしている。
この日は唐さんが来ていたので力が入り過ぎているところも
あったけれど、それも含めて、"背負っている者"の演技だと
受け取りました。
一方、初演でヒロイン・デビューした藤井由紀さんは、
久保井さんが演じたチャン(レディ・チャンドラーのこと)の
元愛人を演じて、笑わせてくれました。
特に、悪役アザミノが藤井さんの右脇にはえた剛毛を
掻き分けてサメの刺青を求めるくだりは、エロス過ぎて
エロス以上の何ものかに到達してしまっており、
唐さんくらいに妄想大爆発でエロいと、
もはや世間でいうセクハラを乗り越えてしまうのだなあ
と感心しました。電車のレールを見ても欲情するのですから。
言いたいことは尽きませんが、とにかく、
自分が大学4年の時に唐さんが初演した芝居がどんなだったか、
その物語も、その面白さも、改めて教えてくれた上演でした。
今週末までやっています!
2023年10月28日 Posted in
中野note
開場直前に撮った写真です。右の女性は、オルガン・アドバイザーの
中田恵子さん。
今日はハロウィンにちなんだオルガン・コンサートだったので、
週明けから数日かけてかぶりものを作りました。
シルクハットに鉢植えみたいに作った木をはめて、
カボチャでなく柿の実にハロウィンの顔を描いて被りました。
仕上げを津内口が手伝ってくれた。
上がいい加減な分、胴体には久々にネクタイを絞めまして、
考えてみればこれは、去年にロンドンでジェントルマンズ・クラブに
行って以来です。
とまあ、自分はロビーで来場者プレゼントのチョコレートを
配ったりして賑やかしていましたが、県民ホールの同僚・山下さん
という女性は、メインでこの公演をプロデュースし、
さらに仮装しながら演奏の際の譜めくりやアシスタントをして
獅子奮迅の活躍を見せており、実に大したものだと思いました。
明日は、以前から大好きなヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の
ジョルディ・サヴァールを音楽堂に何人かで聴きに行き、
夜には鬼子母神の紅テントに駆け付けます。
肝心の唐ゼミ☆公演のことをまとめにかかってもいます。
さらに来年のことも考え始めており、さまざまな台本を読み直しても
います。気候がよく、疲れにくいので朝から深夜まで
稼働が楽です。『鐵假面』だけでなく、来年の劇は何が良いか・・・
2023年10月26日 Posted in
中野note
↑少年が鏡を見つめる有名なシーン。パーセルの音楽がかかります
最近、タルコフスキーの本を読みました。
ちくま学芸文庫から復刊された『映像のポエジア』という本です。
読むうちに、久しぶりに映画そのものも観たくなって、
久々に『鏡』を観ました。
ロンドンで叩き売っていたDVDを買っておいたのです。
初めてこの映画を観たのは大学1年生の時、
それから大好きな作品になりましたが、
久々に観直してみて、その良さがますます深まりました。
タルコフスキーの生きた20世紀のソ連について
時間がたった分だけ詳しくなったこともあります。
そこここに挿入されているドキュメント部分の意味が
判るようになった。
そしてそれ以上に、タルコフスキーの幼少期への想いや、
彼のお母さんに女性としての人生があったという当たり前の事柄に、
自分もまた想像が至るようになったことが大きい。
冒頭、吃音の少年を医者が治します。
模糊としていた彼の語りが治療とともに噴き出す。
タルコフスキーは自らの追憶を、
こうして現在形にしてフィルムに定着させたのだということも、
今では判りやすく感じるようになりました。
逆に時間の経過とともに、
カメラワークや演者の動かし方についてこちらの想像が
及ぶようになり、作為が視え過ぎるようになったきらいもありますが、
やはり『鏡』は素晴らしい。
そして何より、劇中に流れる音楽の選曲センスが拓跋です。
ペルゴレージの『スターバト・マーテル』
バッハの『ヨハネ受難曲』
パーセルの『インディアン・クイーン』
どれもこれしかないという曲が、これしかないタイミングで流れます。
特にヘンリー・パーセルの『インディアン・クイーン』は
もともとが歌入りの曲を楽器演奏のみに編曲して流しています。
この音源、手に入れたいと思わずにはいられません。
2023年10月23日 Posted in
中野note
↑よく見てください。昭和59年製の銀色500円硬貨
昨日、湯河原町に行きました。
そこで行われた野外ダンスイベントを観に行くためでしたが、
せっかく海辺の街に来たのだからと、そこでお土産に干物を買いました。
何度か訪れたことのある馴染みの干物屋。
その際に面白かったのは、
会計のお釣りに500円銀貨を渡されたことです。
昭和59年につくられたと刻印してある。珍しい!
500円玉はあれから金貨になり、
最近はそれがさらに二重に色付けされた金貨になって、
街中の自動販売機の中には、新しい500円は使えません、
というものがあって、これに結構イライラさせられます。
そういう時に、先代どころか2代前の銀貨に久々に再会したのです。
この銀貨には思い出があって、
あれは2002年に初めて『ジョン・シルバー』を公演した時のことです。
ぼくらはまだ大学4年生の春、
ようやく唐十郎ゼミナールで芝居を作るペースが定まった頃。
めくら滅法、とりとめもない稽古を延々としては本番に臨んでいました。
その中で、学生演劇といえど料金を取りたい私たちは
500円という入場料を設定しました。それを聞いた唐さんは即座に
「500円銀貨にしよう!」と言ったのです。
当時は、先々代500円玉から先代500円玉への過渡期で、
感覚的にはやや500円銀貨が押されていた時期でした。
そこへ来て、唐さんは観客に「旧の硬貨である銀貨を持ってこい!」
という指令を下したのです。
これはけっこうウケて、受付はちょっとした盛り上がりを見せました。
『ジョン・シルバー』には銀貨1枚!
ぼくらはそうして唐さんの遊び心に触れていたのです。
2023年10月20日 Posted in
中野note
↑1989年に再演された『盲導犬』の当日パンフレット
最近、『盲導犬』を読み直していたところに財津一郎さんが
亡くなった報に接しました。
財津さんといえば、
タケモトピアノの話題がネットニュースに溢れているし、
やはり圧倒的に『てなもんや三度笠』なのだろうけれど、
唐ゼミ☆的には、財津一郎さんは石橋蓮司さんの次に『盲導犬』の
影破里夫を演じた名優として記憶されています。
上演は1989年12月のこと。会場は日生劇場。
ヒロインの銀杏は桃井かおりさん、フーテンは17歳の木村拓哉さん。
なかでも財津さんは、喜劇人の好きな唐さんにとって敬愛の対象
だったのでしょう。上の写真のパンフレットに唐さんが寄せた文章の
大半が、影破里夫と財津一郎さんに割かれていることに
改めて気づきました。
プロデューサーの中根さんからは、
当日は蜷川さんの停滞期だったこともあり、
この『盲導犬』は上手くいかなかった公演だと伺ったことがあります。
それでもやはり、財津さんによる劇中歌や「ファキイル!」という
叫びを聴いてみたかった。そう思わずにはいられません。
2023年10月19日 Posted in
中野note
↑青梅第六中学校正門前。5:55にテツヤPと横浜を車で出発し、
8:00前には到着しました。大自然!
2月に初演した『オオカミだ!』が順調に育っています。
もともと、軽量級で上演できる痛快な作品を作って各地に、
それこそ世界に飛び出していけるように組んだプログラムでしたが、
縁あって、青梅第六中学校が招聘してくださいました。
大きな体育館での公演です。
公演には近隣の保育園生も参加して、
5歳前後と13歳前後という組み合わせの観客を前に
ケッチさんがいつもの笑いを巻き起こしました。
保育園生が起爆剤となって、照れ屋な中学生たちの心を開いていく。
そういう状況が後ろから見ていておもしろく、
来て良かったと心から思いました。
一方で、ものすごく巨大な中学校に
全校生徒が30名弱という光景は、いろいろなことを考えさせるものでした。
少子化に過疎化・・・
ところで、今回の公演は自分の人生で初の学校公演と
意気込んでいたのですが、よくよく思い出してみたら、
私たち唐ゼミ☆には学校公演の経験があったのです。
あれは2004年秋のこと。
大学院の先輩が戸塚高校定時制で先生をされていたことから、
私たちは芸能鑑賞会のネタに呼んでいただき、
いつもの青テントを校庭に立てたのです。
演目は『黒いチューリップ』。3幕3時間の大作です。
よくもまあ辛抱強く付き合ってくれたものだと思いますが、
あの時、客席にいた生徒たちもすでに30代半ば。
引きこもりを題材にした台本ですので思春期のみんなに
シンパシーがあるはずだと上演していましたが、
騒がしく盛り上がったテント内の空気と、
上演後に先生方が作ってくださった炊き出しを思い出しました。
というわけで、今日は2度目の学校公演でした。愉しかった!
2023年10月18日 Posted in
中野note
↑写真の選定中。15年以上で3万点をこえる写真を撮ってもらいました
今日は唐ゼミ☆の拠点Handi Laboに伏見行介さんが来てくれました。
伏見さんは写真家。ご専門は広告写真なのですが、
2010年頃、カメラ専門誌であるCAPAという雑誌に劇団員だった
禿恵を取り上げてくださったところから縁を得て、
以来、ずっと公演のたびに撮影に訪れて下さっている方です。
そのために、このゼミログに登場する舞台写真のほとんどは
伏見さんの手によるもの。私たちの関係も10年を超えたので、
これまで撮り溜めた写真を整理する作業をしました。
いつも奥ゆかしい伏見さんとは食事を一緒にするのも初めてで、
これもなかなか面白いの体験でした。これまでは大人の距離感を
とりながら撮影にあたってくださってきた伏見さんと、
これからは色々と相談しながら公演を迎えさせて頂きたいと
お願いしました。
2023年10月13日 Posted in
中野note
今日は午前の仕事を終えて一度、家に戻りました。
途中、近所で買い物ができるのが嬉しく魚屋に寄ります。
いくつかある魚のうち、ワラサを買いました。
1パックで250円。魚屋さんが立派な包丁で良く切り付けて
柵を刺身にしてくれました。見事な切り口です。
ワラサにはつい反応してしまう。
ワラサはブリの一歩手前の状態です。
関東ではワカシ(ワササゴ)→イナダ→ワラサ→ブリ
関西ではモジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ(ハマチ)
呼び方が違いますが名前が成長度合いによって変化する
いわゆる出世魚です。
このワラサが重要な役割を果たす唐十郎作品があります。
新宿梁山泊の金守珍さんがライフワークにしている
『少女都市からの呼び声』です。
あの話のなかで、現世に一歩を踏み出そうとする雪子
=本来は生まれてくることができなかった少女は、
世間に出たら美味しいものを食べたいと言います。
それに応えて、兄である田口は「今は、ワラサかな?」と言う。
雪子「そのワラサ、食べたいよお」と続きます。
私はこの選択は実に見事だと思います。
これがブリではいけません。
雪子は現世の荒波を恐れる繊細な少女なので、
ブリでは脂がキツすぎる。それに語感も良くありません。
イナダは野暮ったいし、ワカシでは若すぎる。
やはりここは、程よく成長しつつもサッパリとしたワラサです。
最後は「サ」で終わる音も爽やかな少女の感じを出します。
こういう選択はそれこそセンスです。
そして自分は、唐さんの才気をこういうところに見ています。
「今は、ワラサかな?」
兄・田口のせりふを聴くとき、冬に閉ざされた雪子の世界に
ドウッと暖かな風が吹き込んでくる感覚がします。
2023年10月12日 Posted in
中野note
いつものケッチさん、テツヤさん、私に加えて
今回は「黒子」役として新たに よし乃さんが参加してくれました。
右から2番目の女性。
CHAiroiPLINに所属している身体能力抜群の若手俳優です。
今日から『オオカミだ!』3回目の上演に向けて動き出しました。
ありがたいことに、上演して欲しいというオーダーを受けることが
できたのです。前回から1ヶ月ちょっとでの上演ですが、
新しい黒子さんを迎えながら、前回からまた少し工夫。
文筆家でサーカス研究者、プロモーターの大島幹雄さんに
頂いた意見を参考に、ずっと考えてきた改善点を試しながら序盤を
組み立て直します。あとは、会場の特性に合わせた設えを想定。
前回の月岡ゆめさんからよし乃さんに替わったことにより、
黒子さんの造形も変えていきます。これはもう単純に、
それぞれのパフォーマーの特設をいかに演目のなかに
生かせるかという創作のおもしろさです。
稽古場は流山寺事務所の本拠地、space早稲田をお借りしています。
都心での稽古。これもまた気分が一新されてなかなかの贅沢です。
明日も同じ場所で夕方からやります。
2023年10月11日 Posted in
中野note
↑『愛の床屋』のレコードをいつか買わなければならないと思っているの
ですが、高価で手が出ません。でも、いつかは!
1ヶ月に1回、床屋に行きます。
私の髪型は坊主に見えて、坊主ではありません。
坊主は社会性がない、と20代終わりに言われたので、
それからは頭頂部だけやや長めにするようにしました。
そういうわけで床屋が必要なのです。
今行っている床屋にはずっと通っています。
現在の家に引っ越してきてからなので、
すでに9年近く浮気せずに同じところにお世話になっています。
先日に行った時、その床屋の店主がいつもよりサッパリした
髪型をしているので、ふと気になりました。
床屋は自分の頭をどうやって散髪するのか。
こんなことが気になるのは初めてのことでした。
思い切って訊いたところ、なんと自分でカットしていると言います。
後頭部まで器用にやるのですから、改めてプロの技術に唸りました。
以前は床屋の友人同士で火曜日にやっていたそうですが、
お互いにスケジュールを合わせるのが面倒になり
いつしかセルフカットになったそうです。
他人様の髪型を撮影できなかったので写真はないのですが、
"ホリエモンの後頭部"のような感じです。
あれをどうやってセルフでやるのか、ちょっと想像つきません。
ついでに、有名人の髪型について喋りました。
プロの目から見てアッパレなのは河合俊一さん。
現在、ブームになっている男子バレーボール。
いつの間にか協会の会長になっている河合俊一さんの
髪型が数十年に渡り維持されていることは、プロの目から見ても
すごいのだそうです。あの横分け前髪アリの髪型です。
それから、北朝鮮の金正恩さん。
あれは床屋技術的にはかなり至難の技の賜物で、
特にサイドの部分を剃り上げている精度がすごいそうです。
しかも、相手は一国の最高権力者ですから、
チクリなどと刺激を与えてはいけないでしょうし、
まして流血などもっての他に違いありません。
同じ床屋として、会ったことのない金正恩さんの担当には
頭が下がると言っていました。
唐さんの『愛の床屋』はスウィーニー・トッドの日本版で、
床屋の中には一抹の狂気や恐ろしさが含まれているという歌です。
が、お隣の国ではそれとは逆に、今日も命懸けで
カットにあたっている人がいるかもしれないということでした。
床屋、マンセイ。
2023年10月 6日 Posted in
中野note
↑昔の箱入りのではなく、新装版で読んでいます
明日はドリームエナジープロジェクトの発表会です。
略してドリプロ。藤沢を拠点にさまざまな障害を持つ青少年たちに
多様な学びを提供しているNPO法人です。
藤沢の新堀ライブ館という会場で
いつも行ってきたレッスンの発表会をやります。
絵画や書道の展示、音楽やダンス、英会話などの発表。
自分は一緒に演劇づくりをしていたのですが、コロナでは難しい。
そこで最近はスピーチの練習していて、みんなが好きなものを
写真で紹介しながらアピールするというコーナーをつくりました。
みんな喋るのがメキメキ上手くなるし、お互いに日常的に
何にハマっているかわかって面白い。
怪我の功名的なたのしさがあります。
他にも音響係とリハーサルの進行を担当します。
これと緩やかに関係があるんですが、
最近はコツコツとミシェル・フーコーを読んでいます。
時間はかかるし、分厚い本は重いし、翻訳も難しい。
でも、まるで学生のように少しずつノートを取りながら読んでいます。
きっかけは打合せで、寿町のコミュニティセンターを訪ねたときです。
多くの本が収められた本棚にフーコーの代表作『狂気の歴史』と
『言葉と物』があったのです。ピンときました。
かつては日雇い労働者たちの街、
いまは高齢化と福祉の街になった寿町のスタッフが
フーコーと自分たちの日常をつなげて捉えているのを知り、
感心しました。
自分も、今の方が切実に読めるはずだと思いました。
最近は本当に多様な人たちと付き合うようになったからです。
自分の中に自然にある、
普通の人とそうでない人の線引き。自分はまともだという実感。
特に集団行動をするときなど、遅れをとる人に対する苛立ち。
といった、自分の中にある権力的なものと向き合う必要を
私自身は感じます。
『狂気の歴史』を理解できたら、次は『監獄の誕生』を読みます。
ロンドン以来、久々に硬派な読書に取り組んでいます。
2023年10月 3日 Posted in
中野note
↑祝詞を入れた箱の傍らに肉(にくづき)を捧げる様子を示す「名」
「名」とは祈りであると見抜いた白川静先生の言う通り、
名前とは重く、思いのこもったものなのです
今日は一昨日に行った『青頭巾』WSの内容をレポートする予定でしたが、
緊急で別の内容にします。というのも、日ごろ親しくしているある女性の
言動に衝撃を受けたからです。
彼女の名を、Oさんとしておきましょう。
Oさんはジャニーズのファンであり、特に関ジャニを応援しています。
それが、例の記者会見による社名変更、グループ名の消滅に
大きなショックを受けたのです。
昨日の午後に一緒にいたので、それは目の前で起こりました。
私にはどうにも想像できない境地なので、
それがどんなに大事なのか、思い切って彼女に訊いてきました。
すると彼女はこう言うのです。
「中野さんには息子さんがいますね。
これまでずっと呼んできた息子さんの名前を、
今日から変えなさいと決められたようなもんです」
これには驚きました。
只事ではない感じがひしひしと伝わってきます。
そんなバカな!と言いたい気にもなりますが、
それそこ、完璧に主観の世界なのです。
それに、普段は穏やかで大人しい彼女が
こんなに鋭く激しい例えをすること自体、初めてのことでした。
翌日。つまり今日。
Oさんは体調を崩しています。
〇〇〇〇ロスという現象の実例をまざまざと見せつけられるのも
自分には初めての経験です。
アイドルが人々に与える影響力を痛感させられています。
2023年9月29日 Posted in
中野note
↑朝8:00前後にこんな感じで交差点に立ちました
ついにこの日がやってきました。
息子が小学校に入学した4月以来、
いつか来ると思って期待してきた児童通学時の横断歩道警備、
要するに「みどりのおばさん」の担当日がやってきたのです。
「みどりのおばさん」は、初期唐作品にとって重要な登場人物です。
唐さんが幼少期に体験したみどりのおばさんの不気味さ。
おばさんなのに男か女か分からない、という感慨に端を発し、
さまざまな作品にこの役は登場します。
例えば『続ジョン・シルバー』に。(演じたのは大久保鷹さん)
例えば『愛の乞食』に。(演じたのは麿赤児さん)
例えばドラマ『追跡・汚れた天使』に。(演じたのは不破万作さん)
いずれも、幼少期の唐さんの印象により男性が演じています。
その実、戦後のみどりのおばさんには、
戦争で夫や息子を亡くした未亡人や母が積極的に登用されたという
歴史があります。子供時代の唐さんは、みどりのおばさんの中に
見た目に面白さだけでなく、そういったシリアスな悲哀を感じて
魅了されていたともいえます。
ともあれ、今朝の私はよろこんで集合場所に行き、旗を振りました。
次に我が家が担当になる時も、仕事がない限り私がやります。
2023年9月28日 Posted in
中野note
↑横浜に戻り、テツヤさんとの作戦会議
今週はたくさん劇を観ています。
KAATの『アメリカの時計』。
イエローヘルメッツの『夏の夜の夢』。
流山児事務所の『戦場のピクニック』。
アーサー・ミラー、シェイクスピア、F.アラバールと
なかなかの正統派&ハード路線です。
最近は音楽や、ジャンルにとらわれないイベントにも
アンテナを張っているので、こんな風にストレート・プレイばかり
観るのは久しぶりで、また、そのペースからいっても
ロンドンでの生活を思い出しました。
『アメリカの時計』は、恐慌によって共産主義運動に目覚めていく
青年という設定を面白く観ました、アメリカで共産主義といえば
ずいぶん肩身の狭い思いを余儀なくされるわけですが、
映画監督のエリア・カザンや作曲家のハンス・アイスラーに
ついて書かれたものを読んだ記憶が、劇を観ながら甦ってきました。
アーサー・ミラーが1980年代に追憶を込めて書いているところが
他の代表作と一風ちがうユニークさを生んでいました。
『夏の夜の夢』は、シェイクスピア上演を自家薬籠中のものに
している座組の上演、という説得力がありました。
8人のキャスト、テーブルとイスのみのシンプルな道具立てで
2時間に凝縮して魅せるものです。洗練されてステキでしたが、
一方でブラックボックスでなく、もっと明るく開放的な空間での
同じ上演を観てみたいと思いました。暗い空間だと神秘的で
良いのですが、この上演の大らかな笑いが増幅されるように
思います。
『戦場のピクニック』は、『ゲルニカ』や宮澤賢治『飢餓陣営』との
合作になっていました。そのぶん複雑ですし、複雑さを押し切る
強引さが魅力でした。ところどころ、ユルさもまじえて笑いを
呼びます。が、基本的には流山児さんが三作を通じて強烈に
戦争反対を叫んでいました。シンプルです。
もうとにかく反対なんだ!というストレートさがこの上演の
何よりの力です。超真剣です。
観劇後はテツヤと横浜に引き上げながら、
今後の作戦を練ったりしました。
2023年9月27日 Posted in
中野note
↑つい1ヶ月前に発売になったCDです
ついに聴きました!
モーツァルトのオペラ『バスティアンとバスティエンヌ』。
『秘密の花園』唐組改訂版に新たに登場する野口医師。
彼が語る長ぜりふのなかに、このオペラについて語る箇所があります。
うりふたつの女、いちよともろはに引っ掛けて、
このそっくりな名前の男女の恋愛を題材にしたオペラについて
語るのです。
どマイナーな作品です。
いかに天才モーツァルトとはいえ、
なにしろ彼はこれを12歳の時に作曲したのだそうです。
12歳じゃねえ。
メロディラインはともかく、
オーケストレーションの乏しさは否めません。
しかし、まあ、そのぶん単純で聴きやすくもある。
録音自体が珍しく、いつか聴いてみたいと思い続けてきたので
最近に出たのをすかさず買いました。
唐さんはおそらく聴いていないような気もしますが、
そんなことは関係ありません。
おかげで、なにか『秘密の花園』の新機軸を閃きそうです。
2023年9月26日 Posted in
中野note
↑そういえば、タイトルのもとになったバーネットのこの本を
私は読んだことがありません!読まなければ!
もしも『秘密の花園』を上演するとしたら・・・
ここ二日、そういうことを考えています。
今年のお正月、ロンドンから帰ってきて以来、
何本もの唐十郎作品を本読みWSの題材に取り上げました。
『秘密の花園』もそのうちの一本。
台本には1982年の初演版と1998年の唐組改訂版があり、
WSでは初演版をベースに、最後の回では改訂版との比較を行いました。
台本に向き合うとき、私は次の二つの考え方をします。
(1)なにを物語るか
(2)どう物語るか
唐十郎作品上演にとって重要なのは、圧倒的に(1)です。
上演頻度が少ないからです。
唐作品は凄いけれど、まだまだ一部の人のみが知るもの。
これはシェイクスピアやチェーホフや近松と比べての話です。
だから、 (1) なにを物語るか、が圧倒的に重要です。
要するに、みんなが話を知らないから、お話を伝えなければ!
他方、中には、わずかに上演頻度の高い作品があります。
『少女仮面』『唐版 風の又三郎』『ジャガーの眼』などがそれ。
こうなるとやはり、(2)どう物語るか、という勝負になってくる。
まるで『ハムレット』や『桜の園』、『冥土の飛脚』をやるように。
モーツァルトの『フィガロの結婚』やベートーヴェンの5番をやるように。
自分にとって『秘密の花園』はその部類なのです。
どんな作品だって(1)なにを物語るか、がベースになります。
そのことを忘れちゃいけない。
けれど、現在までに多くのパターンがある『秘密の花園』には
(2)どう物語るか、も必要です!
そう思って、ウンウン言いながら考えています。
上演するなら、どんな上演にしようか。
唐十郎の専門家のはしくれとして、他の上演に遅れをとることは
できないな、なんて俗っぽいことも考えながら、ウンウン言っています。
何か、考えつきそうです。
2023年9月23日 Posted in
中野note
9月21日からホームページの不具合で
ゼミログの更新ができなくなっていました。
お陰様で、9月23日に無事復旧しました。
本日は、9月20日に書いた記事を掲載します。
↑2011.11.3に行った唐十郎21世紀リサイタルでの安保さん
今年も安保由夫さんの御命日がやってきました。
安保さんが亡くなったのは2015年のことですから、
あれからもう8年が経ちます。
安保さんは状況劇場出身の俳優で歌手で、
私たち唐ゼミ☆劇団員にとっては、1970年代以降の唐十郎作品に
多大な劇中歌を生みだした作曲家としてとりわけ大きな存在でした。
同時に、安保さんはご自身の店、
新宿のナジャに行けばいつでも往時の唐さんの創作エピソードや
劇の成り立ちを聴くことのできる生き字引であり、
私はしばしば話を聴き、また気骨ある安保さんに
励まされもしてきたのです。
8年前に安保さんが亡くなってからも企画が立つたびにナジャに行き、
安保さんの奥さんのクロさん(みんなそう呼びます)とやり取りして
きました。
今度はこの芝居を上演するので安保さんの歌を歌わせてください。
そうお願いして、薄い水割りを飲ませてもらうのが、私が稽古に入って
いく時のセレモニーでした。
が、今年の9/20が例年の違うのは、さらにそのクロさんが
体調を悪くされ、今月上旬を以ってナジャが閉店することになって
しまったことによります。
恒例だった、安保さんにお花を届ける先さえ無くなってしまいました。
これは、かなりやり場のない思いです。
先日の劇団集合では、最近の中心である津内口と麻子に加えて
椎野も入り、過去の劇中歌から気に入りのもの、可笑しかったものを
思い出してみました。
来月から本読みWSを『青頭巾』で行う予定ですが、
『青頭巾』に出てくる『オイチョカブの歌』は面白さにおいて
傑出しています。『ユニコン物語 台東区篇』の『八房の歌』もまた
イントロで「♪ブンガチャカ ♪ブンガチャカ〜」とやっていると
明るい気持ちになります。
あの、生真面目さと悪ふざけが入り混じっていた安保さんの役者姿も
思い出しつつ、今日はコミックソングを歌って自分の中の安保さんと
自分自身を浮上させようと思います。
↓先月末にみんなでナジャに行きました
2023年9月19日 Posted in
中野note
↑お土産はナショナル・シアターの『フェードラ』
ウィーンのレゾナンツェン音楽祭、BBCプロムス
スリークワイヤーズフェスティバル in グロウスター
の当日プログラムたち!
先日、ロンドンでできた友人に会いました。
彼女、Mさんは日本人で、もう5年以上もロンドンに住んでいる人です。
知り合ったのはまことに単純な理由で、彼女こそ、
私が去年に厄介になっていたダイアンの家に部屋を借りていた、
前の住人だったのです。
ダイアンの家を出た後もMさんは近所に住んでおり、
時どきダイアンの家に遊びにきていました。
それで紹介されて知り合うことができたのです。
長期に渡ってロンドンに住んでいる彼女の英語は素晴らしく、
旅行代理店勤務という職業人としての優秀さも抜きん出ていました。
いつも私が七転八倒しながら旅行の準備をしていると
荷物の大きさに規約があるからこのスーツケースにまとめた方が良い、
などとアドバイスをくれました。
実際のケースまで貸してくれるのです。
飛行機のチェックインをオンラインで済ませる手続きなど、
一緒にやってもらったこともあります。
自分にできたお返しは食事や遊びに案内することくらいでした。
たまたまコンサートや芝居にも興味を持つ人だったので、
私からは、これは凄いぞ!というものを案内して、
多少は役に立つことができたように思います。
しかし、それすらも、
観たものについて語り合う相手ができた私の嬉しさの方が大きく、
まことに大きな恩人でした。
その後、Mさんは弟さんの結婚式があるというので一時帰国し、
なんと羽田に着いた朝に『オオカミだ!』を観に来てくれました。
それから改めて、先日の夜に9ヶ月ぶりに会うことができました。
ロンドンでできた知り合いに日本で会うのは不思議な感じが
しました。今もグリニッジに住む彼女から、あの街が今も
正常機能して変わらずにあるのを聞きました。
(当たり前といえば当たり前ですが)
この9ヶ月間、Mさんは私の勧めた催しを観に各地に行き、
その当日パンフレットを集めてくれていました。
それが冒頭の写真です。観られなかった芝居、行けなかった
音楽祭、それら資料が入っています。
それぞれのページをめくりながらか彼女の冒険譚を聞くのは
愉しく、自分が行かれなかったウィーンやダブリンの話に、
またヨーロッパに行ってみたいと思うようになりました。
次は『オオカミだ!』を持って行きたい!
そういう話もしました。今度は研修生としてではなく、
演じ物を持って英国に行けたらどんなに良いだろうと
思わずにはいられません。ありがとう、Mさん!
2023年9月17日 Posted in
中野note
↑はじめて奮戦中
息子があと1週間で7歳になります。
7年前、私は横浜国大の丘の上にテントをたて、
『腰巻お仙 振袖火事の巻』の通し稽古に臨んでいました。
朝5時頃に産気づいたと連絡があり、昼に息子は生まれました。
あれから7年。
彼が誕生日プレゼントに望んだものは、
「メザスタ」というポケモン系ゲームのタグでした。
それ自体は600円ほどで、さして高額とはいえない品物です。
誕生日当日に私がフリーである保障がない以上、
与えられるうちにセレモニーは済まさねばなりません。
安いな、と内心思いながら買ってあげると、彼はタグを買った
イオンに入っているゲームセンターへと歩を進めました。
そうです。
このタグはゲームを進めるためのとっかかりに過ぎず、
ほんとうの勝負と予算投下はここから始まったのです。
彼はタグに込められたモンスターを駆って勝負し、
新たなタグを手に入れて嬉々としています。
まるでパチンコ玉や麻雀の点棒が自分の手元に集まって
くるのにホクホクするオッサンのようです。
500円、1,000円、1,500円・・・が
あっという間に吸い込まれ、タグに変わりました。
長い闘いになりそうです。
彼はこれから、手元のタグが誘いかける禁断症状との格闘、
我慢を始めなければなりません。酒であれ、色欲であれ、
ギャンブルであれ、時にはチョコレートやアイスクリームにさえ。
人は必ず何かに依存します。要は程度問題です。
彼はあるところで折り合いをつけられるようになるのか、
自分はあまり偉そうなことは言えないな、と思いながら
これからを見守ることにします。
2023年9月15日 Posted in
中野note
左足の踵が痛んでから、もう1ヶ月が経とうとしています。
最初は構わずに走り続けていたら痛みは強くなるばかり。
それで朝は、走るのをやめて歩くことにしました。
時間はかかるけれど仕方ありません。
そうするうちに治らないだろうか、そう思ったのです。
時間が経つうち、痛みは徐々に緩んできました。
しかし、ちょっとした時にやっぱり痛む。
そこで月に一度お世話になっている整体の先生に相談したところ、
靴の中にソールを入れてみては、というアドバイスを受けました。
早速、今日は仕事の合間を縫ってスポーツオーソリティに
行くことにしました。オススメのソールを聞いたところ
勧められたのが上の写真です。
履いて行った一足に入れてもらったところ、良い感触です。
特にクッション性も抜群で、少し背が高くなったようで気持ち良い。
家にあるもう一足にも同じものを入れようと二つ目も買いました。
気に入りのスニーカーは捨てがたいものです。
中敷きや底がすり減っても、これだ!というフィット感が
次に買うものによって得られるとは限らないのです。
だから、ひとつ気に入ればできるだけ同じものを買ってきました。
が、やがて型はチェンジしていくもの。泣く泣く次のバージョンに
乗り換える。そういうことを繰り返してきました。
このソールを変える、というのは案外良い方法かもしれません。
全体を使い続け、中身を入れ替えていけば長持ちして安上がりでもある。
同じことはメガネにも言えて、昨日はレンズも交換しに行きました。
キズがついたレンズを交換しながら、同じフレームをずっと使って
います。イギリスに行く前にスペアをひとつ買ったのですが、
そちらの方はいまだに馴染めず、結局は古い方に手が伸びます。
こういう風にリニューアルしながら使い続ける最高峰は
自分にとって畳の張り替えです。あれは一日仕事であるために手間が
かかりますが、張り替えられたばかりの畳は素晴らしい。
『鐵假面』の主人公はタタミ屋なので、実際の仕事を見るためにも
張り替えを行おうかと思います。今はまだ暑いので、涼しくなったら。
外側からは見えずらくとも、見えない部分に気を配ることは
なかなかどうして、贅沢さに溢れています。
2023年9月14日 Posted in
中野note
↑マンガもさることながら、新潮文庫のこの本が自分のガイドになって
くれました。オススメです!
少女マンガを読んでいます。
萩尾望都作品を文庫で買ってきては、代表作から読んでいます。
別に『オオカミだ!』公演を終えてリラックスしているわけではなく、
来週末に担当している公演に萩尾先生をゲストにお招きしているので
せっかくだからこれを機会にその世界に浸ってみようと思ったのです。
☆神奈川県民ホール主催
青島広志&萩尾望都の「少女マンガ音楽史!」
・・・なるほど、これは自分にとって新しい世界です。
『ポーの一族』も『トーマの心臓』も、
これまでタイトルを知りこそすれ触れてきましたでした。
初心者の私なりに萩尾先生をすごいと思うのは
『半神』と『イグアナの娘』を同じ方が描いている点です。
前者はあまりにも無駄なく研ぎ澄まされています。
後者は、一見すると突飛な設定の中に、
やはり母娘関係が研ぎ澄まされて凝縮しています。
同じ肉親の愛憎を描きながら、
これだけの表れ方のバリエーションがあることに、
萩尾先生の凄みを感じます。
が、正直に告白すると、萩尾作品を読みながらちょっと疲れています。
『ポーの一族』を一気に読んでいるせいかも知れませんが、
劇場で机を並べている女性スタッフが「あ、萩尾先生のマンガだ」
と言って嬉々としてページをめくり始め、しばらく後に
「止まらなくなっちゃう」と言って無理やりに手を仕事に戻す光景を
見たとき、ああ、オレは頑張って読んでいるんだな、
自然に萩尾先生の世界に夢中になってはいないんだな、
という疎外感を覚えざるを得ませんでした。
口惜しかったので、帰りに『ポー詩集』を買いました。
これは対訳が載っているもので、おお、さすがに去年の英国生活を
経た後だと、英語でも多少は読めるようになっている!とやや自信を
回復しました。平易な英語で書かれている。これはポーの才能です。
そんな風に脱線しながらも、『ポーの一族』に帰ります。
主人公たち、エドガーとアランを自然体で自分のものとすることが
できるのか、そういう挑戦を続けています。
2023年9月13日 Posted in
中野note
大島幹雄さんをご存知でしょうか?
私はここ7年、大島さんのファンです。
大島さんはサーカスや大道芸の研究者であり、
また実際のイベントを取り仕切るプロデューサーでもあります。
その探究の深さ、著書のおもしろさ、それでいて現場を切り分ける
処し方の温かさは、あんな風でありたい、と思わせる大人ものに
して本格派の方、という印象です。
この7年と、まことにはっきりした期間であるのには理由があって、
神奈川の財団からの仕事を受けるようになってすぐにお目に
かかった方のひとりが、大島さんだったからです。
少し話を聞いてすぐに興味を持った私は、
伝説の道化師ラザレンコの著した『サーカスと革命』や
康芳夫さんと並んで私が仰ぎ見る「呼び屋」のひとりである神彰さんを
描いた『虚業成れり』を皮切りにして、大島さんの世界に入門して
いきました。
大島さんの本の中で読んだ「サーカスの熊の仕込み方」
についての一節は、現在社会では許されない残酷さに満ちていますが、
人類が行き着いた芸能のあり方として、自分の好きなエピソードです。
いったいどれだけの人に、私は大島さんから学んだ挿話をしたことか。
大島さんの本を読むと、人に喋りたくなる。
そういう魅力に満ちた本を書き、同時にプロモーターとして、
あの伝説の「段ボール箱に一万円札を蹴り込む」を経験されている
ところが大島さんの凄みです。チケット発券システムが行き届き、
果てはQRコードチケットの導入によって忘れ去られた世界の
たのしさが、大島さんのキャリアにはあります。
前段が長くなりましたが、そのように敬愛する大島幹雄さんが
『オオカミだ!』を観にきてくださり、文章を書いてくださいました。
所帯の大きな演劇公演とは違い、ケッチさんのような
フィジカル・コメディやソロパフォーマンスには、演し物を育てていく
という文化があることに改めて気付かされます。
ほんとうは演劇公演だって育てたいけど、どんなに面白くとも
100回、1,000回と公演できる作品はごく一部です。
そういう意味でも、自分は留学をしているのだなと思います。
そして留学をしたからには、その力を自分のメインの演劇づくりに
活かしてもうひとつ上の芝居づくりをしようと考えています。
2023年9月12日 Posted in
中野note
↑さよなら、ナジャ!
最近は『オオカミだ!』の現場レポートをしてきましたが、
同時進行で行っていたことがありました。それをいくつか。
上の写真は、安保由夫さん・クロさんのお店
新宿二丁目のナジャが閉店すると聞いて駆けつけたものです。
よく一緒に来ていた禿恵もいます。
安保さんが亡くなってからもクロさんお一人で続けて来られましたが、
クロさんが体調を悪くされたということで、クローズすることになった
そうです。寂しいです。
沢山のことを聞き、劇中歌を教わり、励まされてきました。
改めて、お二人に感謝します。
9/6(水)のカプカプWSです。
これから月に一回ペースで行っていきます。
この日が初回だったので受講生の皆さんも緊張していましたが、
それぞれに専門領域を持った面白いメンバーが集まり、
私は主催者としてうれしいです。
9/9(土)に水戸で行われた室井先生を偲ぶ会です。
基本的には、中学・高校時代を水戸で過ごした室井先生の同窓会的
意味合いの強い会でした。
が、横浜都市文化ラボの受講生だった戸田真くんが、
横浜の会に参加できなかったからと駆けつけてくれました。
戸田くんは大学生になってすぐ、2012年度に受講した熊倉聡敬先生の
講座に衝撃を受けたという話をしてくれました。
「いちごメディテーション」というお題の一回でした。
私や椎野も運営スタッフとして面白く参加した講座でしたが、
大学一年生だった戸田くんにはとりわけ忘れられない講座だったそうです。
時に若者は、運営が思うよりもずっと大きく影響を受けます。
教えてくれた戸田くんに感謝しました。室井先生はいつもそういう
機会をつくろうとしてきたのです。喜んでいるはずです。
それから、翌9/10(日)の巨大バッタ修復&展示に備えて
ミーティングもしました。自分が『オオカミだ!』千秋楽につき
安達俊信くん・小松重之くんのコンビが名代をしてくれました。
結果、水戸の皆さんを二人がサポートするかたちで良い1日を過ごした
そうです。触覚は立ち上がりきらなかったので、次回に繰り越し!
こんなこともやりながら、『オオカミだ!』を終えることが
できました。欲張りな10日間でしたが、精一杯やりました。
それぞれに場所で一緒に走ってくれたみなさんに感謝!
2023年9月 8日 Posted in
中野note
↑ロビーのバナーの前で!
自分が横浜に戻る前に皆さんに希望して記念撮影してもらいました
『オオカミだ!』2日目。
今日はザ・スズナリ公演を組む前から決まっていた
県民ホールの催しがあって、『オオカミだ!』の本番には立ち会えません。
けれど、1日目から少しだけ改良したいところがあったし、
できるだけ座組のメンバーと一緒にいたいこともあり、
集合の16:00から17:30までは下北沢にいました。
着いてみると、今朝からの大雨の影響で、
大事な紙芝居の経師(パネルに印刷物を貼ったもの)が浮いていて、
ザ・スズナリの洗礼を浴びました。
数少ない道具はどれひとつとっても欠けてはならず、
その中でも井上リエさんによる紙芝居は私たちの生命線です。
それだけに皆でヤキモキしましたが、
楽屋の小部屋で除湿をガンガンにかけて許容範囲まで
立ち直らせました。というトラブルに見舞われながらも、
稽古をして、それから皆さんに本番を託して横浜に戻りました。
ずいぶん寂しいものだな、と思いましたが、
これから『オオカミだ!』がうまく育って方々に出かけるように
なれば、経費節約のために自分不在の方が良い局面が必ず来ます。
だから自分がいない状況もまた、『オオカミだ!』の特性と
思うようにしました。
中心にテツヤさんとケッチさんとユメさんと私の4人。
それに、受付のエミさんと鈴木さんがいて、スズナリの
野田支配人とチカさんが手厚く後方支援してくれます。
加えて、照明はチエさんとツバサさんのサポート、
井上リエさんの描いたビジュアル、平井隆史さんの音響協力。
チラシのデザインと写真撮影をしてくれる金子さん。
そんな風に広げて考えても、やっと10名強の座組です。
ですから、助け合って舞台を支えています。
開演時間の19:00になればウクレレを弾くケッチさんを想像し、
19:45を回れば三男ブタのレンガの家との対決に入った頃だと思いました。
県民ホールで立ち会っていた公演を終えてケータイに電源を入れると、
観てくれた人たちからのメッセージが入っていました。
子どもたちがたくさん入り、客席はかなり盛り上がったそうです。
ありがたいこと!
明日は朝9:00に集合して11:00から3回目の本番。
それを終えたら自分は水戸に向かいますが、
『オオカミだ!』は14:00からも本番があります。
ああ、どこでもドアがあれば!
2023年9月 7日 Posted in
中野note
今日は『オオカミだ!』初日でした。
本番に集中するために朝から別件を捌き、13:00に劇場入り。
最終リハーサルをして、演技について最後の改善点を詰め、
小道具の細部もさらにブラッシュアップ。
その後、下北沢の街に出てチラシ撒きもしました。
今回は5回公演ですが、集客に関して
空いている日と混んでいるに恐るべきムラがあり、