4/30(火)どうしようもない人間への讃歌

2024年4月30日 Posted in 中野note
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→カーテンコール中、恒例の望月監督スピーチ

昨日は浅草に行きました。
劇団ドガドガプラスを観るためです。
ドガドガはずいぶんコロナに苦しみ、はたから見ていても
あの時の中止続きは辛く、身につまされるものがありました。

けれど、ここ数年に展開している「セクシー女優事変」シリーズは
絶好調で、ちょうど自分が海外研修を終えた頃に始まって、
ずっと逃さず追いかけられている幸せを感じます。

今回の第三弾「人妻死闘編」はセクシー女優の2世がテーマに
なっていて、2世問題は宗教だけではないという切り口が
さすがは望月さんと思わずにいられません。

セクシー女優の息子が中学生となり、
母親の出ているアダルト映像に興奮してしまうという彼の悩みに
ギリシャ悲劇の『オイディプス王』が重なり、可笑しくも切実な
物語が展開します。そしてまた、オイディプス王と言えば
劇の前段にあるスフィンクスの謎かけが有名ですが、
その謎の答えを通じて、母親出演のAVに反応してしまう自分こそが
「人間なんだ!」と少年が宣言するラストシーンは感動的でした。

ほんとうに、このシーンに自分は目からウロコが落ちました。

というのも、フロイトの「エディプス・コンプレックス」は
人間の罪深さを喝破したものと思ってきましたが、
これが望月さんの手にかかると、なんだかそういう衝動を抱えて
しまう人間への激烈な讃歌に思えるのです。

「コンプレックス」という言葉はネガティブな感じがしますが、
望月さんの繰り出す劇には、ひょっとしたらフロイトは、
ついつい母親とセックスしたくなるオレたちこそが人間なのだ!
それはちっともダメじゃないんだ!だから人間なのだ!
と言いたかったのではないかとすら、思わせる強烈なパンチが
ありました。なかなかのアクロバットにして、本家すらも揺り動かす
説得力に満ちていました。

フロイト=人間の豪の肯定=立川談志という構図すら浮かんでくるのは
東洋館という劇場のなせる技です。

ともかくも、望月さんだから描ける、真率なストレートパンチでした。
全編にわたって、大勢の出演者を望月さんが均等に愛しすぎたために
的が絞りきれないところもありましたが、やはり上演が2時間を
すぎてからの力わざ、ラストシーンには「いいぞ!いいぞ!」と
エールを送らずにいられません。無骨な望月監督の剥き出しの魂を
感じました。

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