6/24(金)タッチか、挿入か

2022年6月24日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑Albanyのチケット売り場も、当然カード決済。これが読み取り機。

ロンドンではほとんど現金を使わない。多くの場合、カード決済なのだ。
私にとってこれは喜ばしい。記録が残りやすいし、スリを恐れてポケットに
ねじ込む財布も厚くならず、かなり薄くて済む。
エスニック料理店のうちのわずか何軒かが、
うちは現金のみでと言うが、紙幣もコインも、だからあまり持たない。

カード決済には2種類の方法がある。
読み取り機会にカードを差し込んで支払う方法と、
ピッとカードをタッチするやり方だ。

渡英当初から、私はもっぱら前者を選んできた。
タッチでの支払いをしたことが無かったし
私の持っているクレジットカードには、もともとその機能が無いのだ。

が、しばらく生活するうち、皆が皆、タッチ支払いしているのに気づいた。
速いし、手軽なのだ。が、危険も感じる。挿入支払いにはパスワード入力が
必要だが、タッチにはその必要さえない。つまり、カードを落としたら
使われ放題になる。恐ろしい。

そんなある日、現金の引き出しのため、
渡英直前につくった手持ちのデヴィットカードが、
タッチ対応していることがわかった。
便利に違いないし、大概の人がタッチ支払いだから、
会計のたびに店員と問答し、彼らが機械を翻すのにもくたびれてきた。
だから試してみようと思ったのだ。

なるほど、確かにこれは便利だ。レジでの流れも極めて良い。
郷に入っては郷に従うのも悪くはないか。そう思った矢先、
しくじりがあった。その日、私はケータイ・ホルダーに
英国のSuicaであるオイスターカードと、デヴィットカードを
一緒に入れてしまったのだ。

結果、地下鉄の支払い機は同時に2枚を読み取り、
ネットでキャンセルせよと駅員に告げられた挙げ句、
厄介な手続き方法に四苦八苦するうちに時間が過ぎて
約260円を失う羽目になってしまった。

あんなことは二度とゴメンだ。
そう誓った私は、すぐにまた元の挿入支払いスタイルに戻った。
いちいち暗証番号を打ち込むから間違いもないのだ。

今日も私は、タッチを求める店員にCan I insert?と切り出す。
すると店員は、OK!と言って機械をクルリと反転させる。
やはり安全が一番だ。お金は安全第一!

6/23(木)永い出稼ぎ

2022年6月23日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑今日からAlbanyでは、特に注力して準備してきた"Sun and Sea"が始まる。
レセプション会場の飾り付け、DJブースの準備もバッチリ。

今日は知り合いから聞いた話をしたい。本当に驚いた。
彼女の家には週に一度ハウスキーパーさんが来る。
その人は、フィリピンから来た男性だそうだ。渡英して40年になる。

週に一度やってきて、家中を掃除し、庭やゴミ捨て場を整え、
買い物のサポートもしてくれるそうだ。始業時間は朝8:00。
買い物も含めると午後まで働くらしい。

ところが、彼はいつも朝7:00にやってくる。
ロンドンでは電車よりバスの方が安い。けれど時間がかかるので、
5:30には家を出てやってくるらしい。
そして早めに到着し、電話をかける。フィリピンに向かって。

家族との会話の時間だ。
奥さんと喋り、お子さんと喋り、お孫さんと喋る。
ただし、彼はそのお孫さんに会ったことがない。
40年間、国に帰っていないからだ。

国に帰るのにはお金がかかる。
そしてそれ以上に、彼は観光ビザでイギリスに入ったので、
一度帰ったらロンドンに戻ることができなくなる。
彼にはロンドンのパートナーがいて、おそらくフィリピンの奥さんにも
別の相手がいるのだろうということだ。

今のようにWhatsAppやLINE、Facebookメッセンジャーなど、
無料で国際電話できるようになる前はどうしていたのだろうとも思うが、
ともかくも今の彼は家族で電話している。

不思議な関係だ。
40年会っていないという状況を私は想像することができない。
おそらく、彼が話しているお孫さんに彼が会うことは、この先もないだろう。
そんな風に思いを巡らせてしまう。

そして、それが当たり前の彼にはまったく悲壮感がないらしい。
極めて明るい人だそうだ。そりゃ、人間はいつも悲しんではいられないもの。
だけれど、やはり不思議だ。
こういう生き方を知ると、優れた劇場プログラムと同じくらい、
いや、それ以上に、ロンドンにきて良かったと何故か思う。

6/22(水)ストのはじまり

2022年6月22日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑5種類ある魚のうちHaddockを選んだ。タラ系の魚だ。

今週は鉄道のストライキ週間。
火曜、木曜、土曜とそれは行われるらしい。
過去30年間で最大級規模という

たまたま昨日は電車を使う予定がなかった。
朝からAlbanyに行き、午後は劇団のオンライン会議や事務をして
夜は近所で行われるフォークソングの集まりに行く。
すべてが徒歩だから問題はない。そう思っていた。

が、生活に影響がある。
周辺の店がけっこう休んでいるのだ。
確かに、電車が停まるということで、職場や学校をオンラインに
しているところが多数あると聞いた。
ということは、飲食店にとってお客さんが減るわけだし、
従業員が店にやってくるのも大変だ。ええい、休んでしまえ!
と休みことに対して常に前向きなイギリス人が判断するのは当然だ。

そういうわけで、Albany周辺のカフェもインド料理屋も、
ベトナム料理屋も休業しているためにランチ難民になり、
結局はゴールデンチッピーに行くことになった。

私はこの店が休んでいるのを一日しか見たことがない。
バンクホリデーのその日にだけ開いていなかった以外、
ずっと11-23時で営業している。

おかげで午後5時にやっと昼食を食べることができた。
面倒なことが目に見えているので、珍しく昨日は出かけるのをやめ、
日用品の買い出しに精を出した。

戦争の影響により、何もかもが値上がりしている。
貧しい人たちが住むゾーンまで歩いていって、
トイレットペーパーを買いだめした。
高いものは十分に在庫があるが、
4ロールで1ポンドというのは稀になってしまった。
6セット買い、まるでオイルショックのようだと思いながら、
大荷物を抱えて家に帰る。久々によく寝た。

6/21(火)オールドバラ音楽祭に行ってきた

2022年6月21日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑すごく良い人だった。彼への感謝は尽きない

先週末もいつくかの場所に出かけたが、やはり遠出は印象深い。
DVDで予習済みのオールドバラ音楽祭に行ったのが面白い体験だった。

まず、ロンドンを出る際のやり方は相変わらず難解だ。
リバプールストリート駅から北東に進む電車に乗れとナビが入っているが
駅に着いたところで自動券売機が壊れまくっている。
仕方なく窓口に並ぶと、スムーズに券は買えた。
次は正確な電車が停まっているレーンを探さなければならないが、
これがよく分からない。だらしなく立つ駅員に訊いたら、
その人にも分からないという。

イギリスでは、どの電車がどのレーンに入るか、
場合によっては直前になるまで分からないのだ。
出発10分前になり、不安になりかけたところでようやく
電光掲示板に13番と出た。急いでそこに入ってみると、
今度は改札が開かない。なぜだ? さっき買ったばかりの切符を
通しているのに。駅員に訊きたくとも、改札の中、
10mくらいのところに立っている二人はおしゃべりに夢中だ。
役に立たない奴らよ。

かなり遠いところにいた駅員のところまで走ると、
彼がチケットを確認して入れてくれた。他にも同じ事情で
困る人たちがいて、私の後に続いた。

電車の中は空いていて、快適だった。
1時間ほど行ったところで乗り換え、そこから3駅の単線無人駅に
降り立つ。そこから8キロのところに会場はある。

送迎車があると聞いたが、ぜんぜん来ない。
不安にかられて事務所に電話すると
「あなただけ? すぐ迎えにやるから!」と電話が切れた。
そして、電話を切った瞬間に向こうの駐車場から一台の車が動し
こちらに向かってきた。待機はしていたが、誰も来ないので
運転手がぐうたらしていたのだ。ロンドンの駅員とは違い、
彼の高木ブー的な感じに好感を持った。

距離は遠いが田舎道なのであっという間に着く。
この時点で、帰りはタクシーを予約しなければならないことが
分かった。コンサートが終わる時間に送迎サービスはないらしい(何故?)
なんとか歩けないことはない距離だが、狭い道に歩道は無く、
車がかっ飛ばすので危ない。それに、動物に襲われる可能性もある。
親切なブーちゃんがタクシー予約を手伝ってくれた。

会場に着く。そこは、ブリテンがウィスキー工場を改造してつくった
施設群だ。ひなびていて、アートセンターという言葉は似つかわしくない。
工芸品を売る店があり、楽器を売る店があり、ギャラリーがいくつもある。
もちろん、食事や酒を売る売店やパブもあり、川下りも楽しめる。
それに、美術の野外展示が多くて、どれも変テコで面白かった。

例によってCDやパンフレットを買ってしまいながら、開演を待つ。
バームンガム市交響楽団によるブリテンの曲がメインのプログラムだが、
私の目当てはパトリシア・コパチンスカヤのショスタコーヴィチ
ヴァイオリン協奏曲1番一択だ。恐るべき弱音を聴きたいし、
一番安かったので、最前列、ソリストの目の前の席を買った。
アンサンブルは捨てる。

当たりだった。聴いているとこっちまで身体が熱くなる演奏だった。
昔、巨人時代の清原が大嫌いな阪神・薮を相手にホームランを打った瞬間
「ボケェ!」と叫んでしまった。あんな感じなのだ。
ソリスティックな部分をガンガンに弾きまくり、オケにつなぐ時など、
彼女は「オラァ!」という感じで後ろを向く。最高だった。

終演後、例のタクシーが来るまで時間があった。
聴衆もスタッフも引き上げてしまって、自分ひとり、時間を潰すために
もう一度オブジェを見て回った。すると、向こうから演奏を終えたばかりの
パトリシアが一人でやってきた。思わずデカい声でリアリィ!?と言ったら
笑っていた。彼女は、ずっと誰かとビデオ電話していた。

帰り道はあっという間で、ナビよりも常に早めの電車に乗り継ぎながら、
2時間ちょっとで帰ってくることができた。
地元のシニア・ボランティアが大活躍して支えている
実に人間味のある音楽祭だった。

6/17(金)それは彼の王国だった

2022年6月17日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑わざわざスコアを持たされて撮影したのだろう。

後ろに見えるホールに行く予定。



今週末、再び遠出するつもりだ。

前回に行ったブライトンとグラインドボーン音楽祭から3週間。

次なる目的地はオールドバラ音楽祭である。


これは『戦争レクイエム』で有名なベンジャミン・ブリテンが

1948年に創立した音楽祭だ。彼は20世紀イギリスが生んだ最大の

作曲家だが、その最晩年期に自分の故郷オールドバラでの音楽祭を

立ち上げるに至った。ロンドンから電車で2時間半の土地。


その後、彼自身は1976年に亡くなってしまったが、

半世紀を越えた今も、音楽祭は健在、今年も6月に行われている。


音楽もさることながら、ホール自体も愉しみだ。

もともとウィスキー工場だったところを改装してできたというのだ。

音楽祭が開始されて程なく火事になったが、また復元されたらしい。

趣きもあって音響も良いと聞くから、期待が高まる。


ところで、先日、いつも都心に出た時に立ち寄る大型書店で、

この音楽祭に関するDVDを発見した。これは行く前に見ておきたい。

けれど15ポンド=2,500円する。一回見てしまえばおしまいなのに

高いと思い、Amazon UKを調べたら2ポンド送料無しの出物を発見、

注文した。


たった三日で届き、蓋を開けると監督のサインまで付いていた。

サインしてもらったのにとも思うが、ふとどき者のせいで恩恵に

あずかることができた。早速に本編を見たら、創立時の様子、

ブリテンの奮闘、若かりし日のエリザベス女王が祝辞を述べるところまで、

経緯が良くまとめられていた。


ホールの様子も 予習することができたが、

そのうち、気になることが出てきた。妙に少年たちがものを

食べるカットのインサートが多いのだ。

それに、ボーイソプラノのコーラスの稽古を熱心にやるブリテンにも

しつこいくらいにフォーカスしていた。


・・・要するに、そういうことなのだ。

ブリテンの盟友といえばピーター・ピアーズという男性歌手であり、

その関係が公私にわたるものであることは有名だ。

加えて、この監督は、ブリテンが音楽祭を立ち上げるに至った

モチベーションを潜ませたのではないかと思う。


少年たちを故郷の田舎に集め、熱心に指導をし鍛え上げる。

当然、都会からは遠いので合宿状態。

これは、ブリテンのモチベーションを大いに高めたに違いない。


私は、こういう仕事の仕方が心から好きだ。

個人的な動機があってこそ、仕事はただの仕事以上の迫力を帯びる。

そう考えてみると、『春の交響曲』『シンプル・シンフォニー』

『青少年のための管弦楽入門』など、ブリテンの仕事はまた違った

角度からも強く輝き始める。明日の昼過ぎ、オンラインの本読みを

終えたら出発だ。

6/16(木)神より仏

2022年6月16日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑目を凝らすと台座に落書きが見える。罰当たりな奴らよ。

学校が終わったところで、今日が自由であることに気づいた。
皆さん、昨日のTea Danceで燃え尽きているので、Albanyに行っても
会える人が少ない。特筆すべき会議も無い。
そこで、繰り出すことにした。

前から行きたかった聖マリー教会バタシーに向かう。
ここは極めてマイナーな場所だが、ウィリアム・ブレイクが
結婚式を挙げた場所だ。アクセスが極めて悪いから、
こうして大きな時間がとれないと訪ねることができない。
チャンスだと思ったのだ。

徒歩→バス→電車→徒歩という工程は面白かった。
東京都心から芝浦の方に向かう感じなのだ。
工場や倉庫が増え、テムズ川を挟んで対岸はお金持ちゾーンを
思わせるが、やはり南側はハングリーだ。

駅を降り、小ぶりかつワイルドな商店街を抜けた川沿いに
目的の教会はあった。結婚式の前後に、ブレイクもこの川面を
眺めたのだと思うと良い気持ちだ。言い忘れたが、今日から
気温は急上昇に、ロンドンにも夏が来た。

すっかり良い気持ちになって教会に入ろうとしたところ、
扉が閉まっている。側面に入り口があるのだろうと回り込んだが
そんなものはどこにもない。ネットで見たら18:00まで開いている
と書いてあったのに。教会の半地下にある幼稚園を覗いたら、
保母さんが出てきて優しく教えてくれた。
最近は昼で閉めるようになっていて、今日の営業はおしまい・・・。
別組織なので、私はカギを持っていなくてごめんなさい。

せっかく来たのに中に入れなかった。
でもまあ、道を付けたので次は早い。
自分なりに安く、早く来られる方法も発見できた。
ナビもまた当てにならないのがイギリスだ。

そう思って歩き出した。次の予定はウィグモアホールで、
かなり離れている。夏到来で汗だくになるので、途中からバスを
利用することにした。バタシー公園の反対側に、都合の良い
バス停がある。スタスタと公演を抜けるべく歩いていると、
八角堂を発見した。生まれたばかりの釈尊が天を指差し、
「天王天下・・・」とやっている黄金の像も見えた。

曹洞宗系の高校を卒業しているので、親しみを感じる。
かつて我が演劇部は、いつも仏像のある講堂で稽古していたのだ。
テムズ川沿いにあるこのお堂は日本人の手によるものらしく、
なんちゃって、でなく本モノだった。材料の調達から、
こちらの大工さんとの共同作業まで、さぞ苦労したろうと思う。

そしてよく見ると、神をも恐れぬ落書きがあった。
まことに罰当たりな話だが、台座にアルファベットが書かれていた。
新鮮で、ちょっと面白いと思ってしまった。
神様は見られなかったが、立派な仏様を見ることができた。

ウィグモアでは、今日からイザベル・ファウストによる
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集が始まった。
3日通って全部聴くつもりだ。日本にいたらこんなスケジュールは
絶対無理なので、これも海外研修の贅沢だ。
人が燃焼し尽くすのにドキュメント的に立ち会う苦労が良いのだ。

『ジョン・シルバー』シリーズを連続でやった時に立ち会ってくれた
唐ゼミ☆のお客さんへの感謝も思い出す。

それにしても、先週のサー・シフの協奏曲全集といい、
本当はベートーヴェン生誕250周年だった2020年に公演される
予定だったのではないかと思う。ほとんどの人がマスクをしない
ロンドンにも、パンデミックの残滓がある。

6/15(水)すべてティー・ダンスに通じる

2022年6月15日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑15台以上のポットが使われて壮観だった。

昨日は、「ティー・ダンス」という催しが行われた。
会場は、ゴールドスミス・コミュニティ・センター。
キャットフォードという街にある地区センターだ。

会場に着くと、すでに昨日からエンテレキー・アーツのメンバーを中心に
仕込みが行われていて、パーティーの様相が整えられていた。
「Rooted 21 Century Tea Dance」というのが会の正式名称で
イス・机の他に「Rood」→植物にまつわる飾り付けがなされている。
もちろん、音楽演奏や合唱、朗読をするための設え、
お茶やケーキを食べるための準備もなされていた。

いつもWS「Meet Me」「Moving Day」に参加している
シニアたちがお洒落して集まり、会の中で発表する合唱の仕上げをした。
その中の何人は、一人で詩の朗読に挑戦し、別の男性は得意の
『ダニー・ボーイ』を独唱するようだ。

そして、別の曜日にやっていて、私がまだ加わったことのない
障害者向けWSのメンバーも集まってきた。

クリスという、歌も演奏も司会もできる万能パーソナリティの
仕切りで会が始まった。恰好は女性用のワンピースで、
「彼」と「彼女」、どっちで呼べば良いか訊いたら、
どっちでも良いということだった。
前回はWS中に会って、その時は男性の恰好をしていたけど、
今日が本領発揮だそうである。英語も性別も難しいね、
と笑いながら話した。

参加者とスタッフ、併せて100人くらいの大パーティーだった。
前後に、お迎えや、タクシーでの送りの管理もあるから、
エンテレキーの中心スタッフ、ジャスミンやロクサーヌは
大変そうだった。こちらは、英語と会への不慣れの二重苦を乗り越え、
ちょっとずつ手伝うことができた。イベントのアテンドは、
どこの地域に行っても似たようなものだから、勘は働く。

ああ、このために日ごろのWSがあったのだなと合点がいった。
飾り付けに使われたバナーなんかも、美術の時間に創作されたものだし、
歌も、この時のために練習されたものだった。

美術には植物を使ったり、楽しい歌、悲しい歌、思い出の歌を
取り混ぜたり、会の趣旨に合うよう、日常的に行われてきたWSが緻密に
計算されていたことが分かった。会場デザイン、進行台本づくり、
すべてアーティストの仕事だ。こちらの芸術家は、自分たちの職能が
社会に向けて広範に役立つことを知っていると思った。

美術館やオペラハウスを頂点とするような、
芸術分野の中のヒエラルキーからも自由な感じがした。
人間や社会のためのものなので、どっちでもいいじゃん、
という物腰だった。これは強い。

恐るべき量のチョコレートケーキ、レモンのパウンドケーキ、
生クリームとジャムを塗ったスコーンが供され、皆が一斉に食べてゆく
様子は壮観だった。日本だと、餅つき大会みたいな盛り上がりだった。

半年に一度行われるわけだから、次の会は12月だろう。
その時はAlbanyでやるようだ。今回のことで全体像を理解できたので、
これからの日々行われるWSの意味を噛み締めながら参加してゆける。
長期スパンで研修できるありがたさを実感した。

それにしても、クリスの仕切りはすばらしかった。
そして、もっともすべての人を狂騒に巻き込んだ最強コンテンツは
シヴァ先生による「ジャマイカ・スカ」だった。カリブ海の文化は強い。
Linton Kwesi Johnsonがレゲエを武器とした理由を実感した。

6/14(火)苦みばしったフォー

2022年6月14日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑単にタダ飯を食べたのではないが、それにしても美味かった。


ロンドンにもようやく夏の気配が感じられる。

日差しも強いし、昼間にひなたを歩いていると汗ばむ。

日本と違ってじめじめしていないので、夜になると冷え込む。

いつも朝8:30過ぎに家を出、方々巡り歩いて帰るのは23:00頃だから

どうしても寒い状態に衣類を合わせる。昼間は余計に暑い。


先週の土曜はかなりユニークなイベントに参加した。


Albanyの一角に事務所を構えるレジデントカンパニーのひとつ

New Earth Theatreによるイベント"Sonic Pho"だ。

Pho=フォーとは、あのベトナム料理屋で出てくる麺類のこと。

ルイシャム地区にはベトナム人コミュニティがあり、

食を絡めた面白い劇場プログラムをつくり、

同時に相互交流を図ろうという狙いだ。


受付を済ませると、スタジオに行き、

そこで、フォーづくり、主にスープづくりのデモンストレーションを見る。

ハーブや香味野菜について説明を受けながら匂いを嗅ぎ、

出汁の取り方も目の前で料理してもらいながら、見る。

普通はチキンだが、ベジタリアン用には昆布を使う。

昆布だしなんて、4ヶ月半ぶりだった。

試飲させてもらったが、さすがにしみる。

アジア人が大好きな、これがグルタミン酸ナトリウム。


昔、唐さんが飲み会で上等の生ハムを食べながら

「これはアジアじゃ無理だ!」と絶賛していたのを思い出した。

ああ、オレも慎ましきアジア人の一人。


同時に、ベトナム人女優さんが、簡単にベトナムの現代史、

特にベトナム戦争の影響で世界中にベトナム人コミュニティができた

エピソードを紹介してくれた。


そして、移動。


近所のベトナム料理に皆で移動して、席についた。

そこでは、配られたヘッドホンをして、供されるフォーに向かう。

メインの具は好みによって指定でき、私はビーフにした。


本格的なフォーだ。

別皿にミント、もやし、コリヤンダー、唐辛子の輪切りが大量に盛られ

レモンも付いている。明らかに移民の人による店。


英国人は麺をすする音を嫌うから気を付けて食べ始めると、

すぐにヘッドホンから音楽が、続いて、ベトナム戦争を含めた現代史を

誦じる詩。要するに『ミス・サイゴン』的に国を追われた人たちが

この本格的なフォーをロンドンに持ち込んだのだ。


私はヒヤリング能力の貧弱さゆえにけっこう美味しく一杯を食べたが、

周囲の参加者にとって、けっこう苦い味だったのではないかと思う。

戦争の話題とフォーの味・・・。


はっきり言って今はあまり上手くいっているとは言えない

実験段階の企画だったけれど、その心意気が素晴らしい。

味覚をきっかけに地域のコミュニティにアプローチしたいという

着想が面白い。こちらも一所懸命アンケートを書き、連絡先を交換した。

近く、事務所に行くつもりだ。


劇団スペヤタイヤ、エンテレキー・アーツに続いて、

知り合った三つ目の団体ニュー・アース・シアター。


今回行ったベトナム料理屋にも、

これからアジアの味を求めて通うことになるだろう。

6/13(月)『蛇姫様 わが心の奈蛇』本読みWS7回レポート(中野)

2022年6月13日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 唐十郎戯曲を読む『蛇姫様 わが心の奈蛇』
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↑角隠しをまとい亡き母が現れる(写真:伏見行介)

唐さんの3幕物はいつも2幕がすごい。
2幕の中盤から終盤に差し掛かるところをやったので自然と盛り上がる。
バカバカしさと悲劇性が矢継ぎ早に入り混じる場面を追いかけました。

あけびは伝治のもとでエンバーミング修行し、
晴れて一人前になることを目指しています。
そのための教則本は、伝治が書いた『日本人の恥骨』。
変なタイトル。

伝治はあけびを調子付かせるため、
一人前になったらあけびにテレビ取材が殺到すると予言します。
今風に言えば「美人すぎるエンバーマー」として世間にデビューする。
そういう感じです。

そして、予行演習をする。
権八一家の部下たちが鏡をカメラに見立て、あけびにインタビューする。
頭にわらじを乗せたまま取材を受けるあけび。

この際、徹底してNHKを持ち上げ、
その他の民間放送を邪険にあしらうところが面白い。
この芝居の初演は1977年春。一方、当時の唐さんたちは翌年の
お正月から始まる大河ドラマ『黄金の日々』を控えていました。
撮影がすでに始まっていたか、そうでなくても、キャスティングや
打ち合わせは確実に進行していたはずです。

舞台の上で、徹底してNHKをヨイショする唐さん。
こういうところが洒落っ気というか、興行師としての才覚というか
唐さんの面白いところです。せっかくなので「NHK」を
キーワードに、後に唐さんが三枝健起監督とつくることになる
テレビドラマについても紹介しました。
骨のある仕事です。NHKならでは。私たちはドラマでも唐さんの
世界に触れることができます。

転じて、一人の女性の登場により、舞台の空気は一変します。
角隠しをした、あけびの母シノが亡霊のように現れる。
これは、薮野一家の妹・知恵が霊媒としての才能を発揮したもので、
当時のスピリチュアル系番組が隣のスタジオで収録中という設定で
取材を受けるあけびの前にシノを降臨させたのです。
(唐さんなりの、強引なリアリズム!)

シノの口から語られるあけびの出生はおぞましいものでした。
朝鮮戦争のさなか、北九州に向けて出港する屍体輸送船「白菊丸」には
何人かの密航者が紛れ込んでいました。シノもその一人。
アメリカ兵たちの死体に紛れて同じく船に乗り込んだ男たちに
輪姦されて生まれた子どもこそ、あけびだとシノは語ります。
あまりのショックに、持病の癲癇の兆候が徐々に現れるあけび。

と、ここで重要なのは、ふと冷静になることです。
かなり勢いと迫力があるシーンですから、私たちはすぐに飲まれて
しまいますが、なぜ伝治がこんな道具立て(テレビ取材や知恵の霊媒)を
駆使してあけびに迫るのか、それを忘れてはなりません。

3幕終盤で、伝治の意図が明らかになります。
唐さんの仕掛けに思い切り飲まれながら、どこかで冷静さを忘れない。
しかし、やはり大いに飲み込まれてしまう。

矛盾する二つのベクトルを同時に兼ね備えることが、唐さんと渡り合う
方法論だと思います。昨日やったところは、好例のなかの好例。
来週は2幕が終わります。

6/10(金)久しぶりに学校で震撼

2022年6月10日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑画像はネット上から引っ張ったイメージです。左側の感じ。

すっかりルーティン化していた語学学校で久々に震撼した。
授業中にブルガリアから来ている女の子と喋っていたら、
彼女が面白い話をしてくれたのだ。

まず、彼女は常にビジャブをしている。
ムスリムの女性が頭に巻く布だ。英語が上手く、
たちどころに発表のための文章を書く。なぜ、このクラスに?
聡明、という言葉がぴったりだ。単に賢いのではない。聡明なのだ。

年齢は19歳だそうだ。そして既婚者。
早い!と驚いたが、彼女の国では常識の範囲内なのだそうだ。
それだけで凄いと思ったが、いつも熱心に授業を聴く彼女が
今日だけはチラチラと窓の外を気にしている。

どうしたの? と訊いたら、旦那さんが外にいるのだそうだ。
歩いて30分ほどのところに住んでいるらしいのだが、
30分の休憩時間を狙って会いに来たらしい。青春である。

結婚したのは2月で、それから彼女はロンドンで暮らし始め、
これから就職するために英語を学んでいるそうだ。
てっきり彼と一緒にブルガリアから引っ越してきたのだと思った。
どうやって出会ったの?と訊いたら、こともなげに
「アツシはインスタを知ってるか?」と言う。

なんと、彼女はインスタ上で彼に出会い、
同じブルガリア出身で7年前からロンドンに住んでいる彼と
結婚するために、英国にやってきたのだという。
出会ったのは去年の秋。

驚いた。結婚適齢期はそれぞれのお国柄があるだろうが、
この果断さ、行動力については国境を超えたパッションを絶大に感じる。
物腰は大人しめなのに、ふつふつと燃えたぎっている。
家では、ブルガリア語、トルコ語、英語が飛び交うという。

クラスの中でもっとも控えめに見えた彼女は
実はもっともアグレッシブな女性だったのだ。

放課中に旦那さんと少し話したが、「結婚の時は大変だったよ」と言う。
てっきり家族の反対とか、そういうことかと思ったら、
「彼女が乗った飛行機がなかなか着かなくて」と言っていた。
唖然とした。「おめでとう!」と言うのが精いっぱいだった。

6/9(木)橋の上の天国と地獄

2022年6月 9日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑足元に転がるチープなカップにより、ポンドが動くのだ

昨日は会議が無くなったので、午後に時間ができた。
そこで、Albanyには行かずに美術館に行く。テート・ブリテン。
ダイアンが一番好きだというターナーを観に行った。

ロンドンの美術館は巨大で、しかもここは無料だから、
こうして何度でも来ることができる。自分はじっくりと
絵を観て回るのが苦手だから、散歩がてら来て、
興味が湧いたコーナーだけを観、また別に関心が湧けば、
何度も来たらいいと思っている。

先週末の連休で力尽きたとみえ、ロンドンの都心は静かだ。
実に歩きやすい。こういう時は逆にベタなルートで
歩いてみようと思い。ウェストミンスターからロンドン・アイという
巨大観覧車に向かう橋を渡ってみた。
そこに面白いものが。

橋の中腹で、数人を相手におじさんが張り切っていた。
三つのカップに球を入れ。カップの並び位置をサッサッと変える。
さて、球を入れたカップはどれでしょう?
というお馴染みのマジックをやっていた。

面白いのは、ここにお金がかけられることだ。
当たると賭け金が倍になって戻り、外れると賭け金を没収される。
恐ろしく分かりやすいシステムだ。

興味本位の人が参加して、おじさんはけっこう負けていた。
球のありかがさほど難しくなく分かるのだ。
しかし、少し離れた位置から眺めていると、
そのうち、勝っている何人かがおじさんの仲間だとわかる。
そして、通行人を誘って、その人が大きく賭けた時に初めて本気を出す。

この単純さに、ハマる人はハマってしまうだろうけれど、
なんだか、この分かりやすさといかがわしさ、簡単さとスピード感に
好感を持った。晴れ渡る青空のもと、観光地のど真ん中で
こんなことも行われている。きっと警察が来たら雲の子散らすのだろう。

ロンドンに溢れる人間味を、またひとつ発見できた。

6/8(水)痛恨のスリースター

2022年6月 8日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑この劇評にオレも撃沈。腹立つわ!

最近観た劇の中で一番おもしろかったのは
グローブ座の『ヘンリー8世』だ。
最近、というよりも英国で観たすべての劇の中で一番だった。

観劇前はくたびれていたのだけれど、
終わった後はあまりの面白さにすっかり元気になって、
すぐにまた来ようと思った。それくらいの興奮で帰ったのだ。

なのに、今朝、ダイアンが見せられた新聞評を観て驚いた。
三つ星。これがレストランなら最高位だが、劇評の場合は五つ星が最高。
二つ星以下を見たことがないから、要するに低評価。
文章を一生懸命に読んだが、あまり誉めていない。
これには落ち込んだ。

グローブ座はゆるい。
囲み形式の客席になっていて、天井は空いているし、観光地だし、
特に立ち見席は安くて日本円で800円くらい。座る席は高いけれど、
立ち見は極端に安い。だから、疲れて途中で帰ってしまう人もいる。

そういう環境に立ち向かっている俳優たちは、
みな、シェイクスピアのせりふを言いこなす技量があるとともに、
ゆるくて、どこか芸人的だ。観客とのコントタクト多めだし、
それでいて、いざという時には熱演して、聴かせる。

反面、ダレ場の抜き方も心得ている感じがする。
ムラもあるだろうし、あまり芸術家然としていないところが
むしろ自分は好きで、大らかな人間の自然を感じる。

その中でも、『ヘンリー8世』は出色の出来だと思った。
前に観た『ジュリアス・シーザー』チームには悪いけれど、
座組みも、予算投下も、何よりアイディアが格別だった。

下ネタのオンパレードだったから、それが文句言われている
ようだけれど、それらは山田風太郎的で、大笑いして見ながら、
大好きになったのだが。

やっぱり劇は、リビングルームで満たされぬ家族や性を
じくじくと悩んでいなければならないのか、と疑問に思う。
ロンドンではここに人種の問題が加わる。

当の『ヘンリー8世』は、最後に生まれるエリザベス1世を
黒人の女優が演じていて痛快だった。

巨大なキャラクターや大きな物語。
それでいてバカバカしい公演に触れたいと思っている自分には
あの三つ星が五つ星以上に見える。

もっと観に行きたくなった。
10月まで飛び飛びで、レパートリーシステムでやっているから。
新聞の低評価を受けて、むしろあれを応援したいと思う自分の心が
燃え上がっている。

6/7(火)立体駐車場にて

2022年6月 7日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑向こうの方にグランドピアノが見える。天井が低い!


先日、ピーター・フィッシャーに誘われて面白い催しを見た。

会場はペッカム。なかなかガラの悪い場所で、語学学校の同級生は

この街でケータイを擦られた。駅前の歩道はゴミの散乱がすごい。


それで、迷いながらフラフラとナビを頼りに進んだら、

ゲームセンターみたいな建物の裏手にたどり着いた。

名門フィルハーモニア管がこんなところでやるか!

っていう場所で、立体駐車場の上の方でたった1時間の

コンサートをやるという。


どうせ客は少ないだろうと舐めきって受付に行ったら

完売だと言われて返り討ちに遭い。しょげていたところを

ピーターのショートメールが助けてくれた。


これを見せろ!と。


で、スマホのモニター見せたら、

仕方ないなあと正価で入れてくれた。ああ、友よ!


入っていってのけぞった。

こんなんで満席って頭おかしいんじゃないか、と。

どんどん入れりゃ、いくらでも入るような隙間がいっぱいあって

演奏が始まってからも壁が吹き抜けてるから、ノイズだらけ。

近所を通る国鉄の軋みはすごいし、周囲のゲームセンターの放送も

元気よくなだれ込んでくる。


一方、肝心のフィルハーモニア管は、

大男だったら頭擦っちゃうんじゃないかという低い天井の空間で

ノイジーなスクリャービンを2曲弾いた。


『法悦の詩』『プロメテウス』という、

どっちも官能性充分、ノイズも充分という曲なので、

周囲の雑音と妙にマッチしちゃって、後ろの方の聴衆はみんな

ケータイかざして聴いてるし。心から堪能した。


まざまざ思い出したのは、

自分の青テントの舞台を後ろの方から眺めているあの感覚。

同時に、オレたちはいつも周囲のノイズにハラハラしてたけど、

案外と観客は平気なもんだって気づいて、開き直りも含めた

無頼な気持ちになった。


こんな感じでここれまでやって来たし、

我ながらやっぱり好きだなあという確認。

他方、こういうのは忘れ難くて最高だけど、

一回性のイベントで処理されちゃうから、

本心からやりたいこっちと、作品を評価するラインに乗せた公演、

両方やらなきゃならんのだあということをこのオケから教わりました。


周囲のノイズに負けないために音圧を強くして、

反響しすぎる空間に対処するため、アーティキュレーションを

クッキリ。彼らの腕前もいつもより分かった公演だった。


音楽について、これは2度と無い経験だろうなと思う。

またテントを自分でやって味わおう。

6/6(月)『蛇姫様 わが心の奈蛇』本読みWS第6回レポート(中野)

2022年6月 7日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 唐十郎戯曲を読む『蛇姫様 わが心の奈蛇』

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↑わらじを頭に載せる。汗の量がすごい初夏の芝居(写真:伏見行介)


昨日は本読みワークショップでした。

二幕も半ばに差し掛かり、再び再開したヒロイン・あけびと小林が

"蛇姫様""白菊谷""黒あけび"にまつわる妄想を育むシーンです。


冷静に考えると、二人は二十歳を過ぎているわけですし、

かなりイタい大人の男女だとも言えます。


が、

一人は小倉から出て来たばかり、床屋見習いのてんかん持ち、

しかも自分の父親や亡くなった母の出自もよく分からない。

一人は、グレてスリに手を染めたところ、指を詰めさせられた

パチンコ屋の新人店員ということで、なかなかに過酷な現実を

生きています。


こうして二人で蛇姫様ごっこしていないとやっていられないよ!

という彼らの切実な願いは、唐十郎ファンなら誰しも共感できるはずです。


それに、このシーンは全体のキモです。

小林が妄想する白菊谷の描写、暗いところに沢山のヘビがウネウネしている。

直視できないほどの不気味さゆえに、Barハコシ開店お祝いの鏡を使って

間接的に見なければならないほどの光景のおぞましさ、

という伏線が、劇の終盤で明かされるあけびの出自に繋がっていきます。


現実には、Barのセットの中で二人が探検ごっこしているだけなのですが、

この妄想をお客さんに共有してもらうことはかなり大事で、上演する側と

しては難所でもあります。てんかん予防にワラジを頭に載せて冒険する

あけびは可愛らしく、これも楽しんで欲しい。


さらにその後、伝治が登場してエンバーミング=死体化粧の

何たるかを語り始めると、舞台は一転、闇の雰囲気に包まれます。

朝鮮戦争時代の小倉に現れた凄惨な死体処理現場が

唐さん一流の長ぜりふによって想像力の中に現れる。


この陰と陽の目まぐるしい切り替え。

参加者の皆さんも心得たもので、コミカルの中にあるシリアスと

シリアスの中にあるシリアスを縦横に操ってもらいました。


ことばの力を借りて観客を弄ぶ快感。役者に弄ばれる観客の快感。

それらを同時に味わえる名シーンです。

あけびの床屋修行が、実はエンバーミング修行であったことも分かる。


次週は、そんなあけびが一人前の死体化粧師になり、

テレビ各社の取材が殺到するという奇想天外な場面からいきます。

大河ドラマ『黄金の日々』を翌年に控えた唐さんの露骨なまでのHNKびいき。

これが炸裂する洒落っ気に満ちたシーンです。


途中参加でもかなり楽しめます。ご興味ある方はぜひ!

6/3(金)今日はトリプル・ヘッダー

2022年6月 3日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑ヘンリー8世の巨大な黄金マラに場内は大喜び

昨日は良い休日だった。
ウィリアム・ブレイクに関するいくつかの土地をめぐることが出来た。

生まれた家→洗礼をした教会→彫刻師としての作品が飾られた美術館
→創作が最高潮に達した時の家を渡り歩き、土地柄を把握できた。

地震のないロンドンでは、日本よりかなり多くの建物が保存されている。
100年前のビルは新しい、などというのは言い過ぎだと思うけれど。
ブレイクが暮らしたのは、いずれも都心の貧しい地域であることが
如実に実感できた。

自分には、彼のこじれっぷりが面白い。
現世的にはまったく成功できなかった人だから、
打ちのめされた彼は鋭くて巨大な内面世界を築いた。

普通、現代人は「経験」という言葉を肯定的な意味で使う。
「良い経験をさせてもらいました」10代の若者までもがこんな常套句を
使いこなす。

けれど、ブレイクは「経験」を悪しきものと断じた。
生まれた時が最高潮で、経験も人を汚すものだ、
そう考えて自分に閉じ籠り、そして死後に評価される結果を残した。

・・・と云うことが分かった時、
『無垢と経験の詩』というタイトルと、それぞれの詩の真意が理解できた。
唐さんが『吸血姫のテーマ』のベースにした『愛の園』もこの中にある。
ブレイクがこれを著したのは30代後半。当時、暮らしたランベスという土地は、
ロンドンの中心地であるウェストミンスターのテムズ川対岸にある。
ガラの悪い土地で、彼がここの自らの無垢を鍛えたことがわかった。

今後は、晩年を暮らした土地やお墓、たった3年だけ地方に暮らした
家も訪ねてみよう。

↓今の建物にもちゃんと印がある。
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そして、夜にはグローブ座で『ヘンリー8世』を観た。
彼はエリザベス1世の父親だから、最後は女王が生まれるシーンで終わる。
世間とはまた違ったエリザベス2世へのお祝いを体感できると予想して
行ったのだけれど、果たしてその通りだった。

8人もの奥さんを渡り歩いたこの劇の一部がマラ祭り化していて
マジで面白かった。もう一度観たい下品さ、生演奏もあって豪華だし、
アイディア豊富な絶好調の公演だった。

観光地だと思ってナメてはいけない。
というか、お前らが観光でくるならオレたちはこんな風にやるぜ!
という風に舞台が観客をナメていて、それが良かった。

今日はこれから、黄金のカエル劇場の子ども劇→フィルハーモニア管の
『2001年宇宙の旅』コンサート→アンネ・ソフィー・オン・オッターの
ナイトコンサート。初めての3本立てだ。

6/2(木)今日から連休

2022年6月 2日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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現在、朝9:30。さいわい天気が良い。

今日から週末までイギリスは連休になった。
本日木曜はもともとの祝日で、明日金曜も休みにして4連休とし、
在位70周年を迎えるエリザベス女王のお祝いをする週末にしたようだ。

私がこれを把握したのは最近だったため、
何か拍子抜けしたような感じで今日の朝を迎えた。

ポカンと予定が空いたので、身辺を整理することに使おうと思う。
こういう時に気を抜くと、あっという間に夕方になり、
ああ、1日を無駄にしてしまったと後悔に苛まれることになる。

まず、部屋の掃除をしよう。
最近はよくチーズを買って食べるようになった。
物価の高いロンドンで安いのがチーズやアイスクリームだが、
後者は恐れをなして食べていない。あの味を思い出して
際限がなくなってしまうことが目に見えているので、
4ヶ月間食べずにきている。

チーズはカバンの中に忍ばせておいて、お腹が空いたらかじる。
これは便利なことに気づいたが、パルミジャーノがボロボロと
こぼれることがあり、部屋の掃除は必須である。

次に英語の練習をする。
これは日本にいた頃から続けているもので、
ネイティブの人が喋っているのを追いかけてこちらも発語し、
完コピを目指すというもの。そうすることで、しゃべり言葉が
何を示しているのか、そのパターンを自分に叩き込む。

「洗濯機」という言葉を知っていても、日本人は口語で
「せんたっき」と発話する。「せんたっき=洗濯機」と体感したり
「それで、その時は」→「んでそんときは」となることを自分の中に
蓄積しないと、人の会話についていけない。

その次は傘を買いに行こう。
これはすでに4代目だ。イギリス人は傘をささない。
強風ですぐに壊れるからというのが理由のようだが、
私は日本人だし、アウェイで風邪をひきたくないから、
この予算投下を惜しめない。だいたいが粗悪品だが、
代替わりするごとに、あるホームセンターで売っている品が
強度と値段に満足できるものだと気づいた。あれを買いに行こう。

その次は都心に出る。
美術館は昼間にしか開いていないので、そのどれかに行けたら
しめたものだ。あるいは、最近ハマっているウィリアム・ブレイクの
生家や過ごした家を訪ねてみたい。ふと、気づいたのだが、
彼はロンドン指折りの繁華街であるソーホー出身で、
4月に帰国したサウジアラビア人のヤジードは
タイガー・タイガーというソーホーのナイトクラブが好きだった。

Tyger Tyger・・・、ブレイクのもっとも有名な詩の書き出しである。
ナイトクラブの創業者のセンスはたと気づき、興味を持った。
イギリスの建物には、そこここに青いマーク(プラーク)がついていて
過去の偉人との関係を教えてくれる。

夜はグローブ座に行けたら良いと思う。
『ヘンリー8世』がやっていて、歴代国王の中で抜群のキャラ立ちを
誇る彼について、シェイクスピアが書いたものだ。日本にいたら、
演目的にはマイナーでなかなか観ることができない。
今週、王室について体感するに、良い選択であるようにも思う。

さあ、ここに書いた。これから上記の予定をこなしていこう。

6/1(水)友人ピーター・フィッシャー

2022年6月 1日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑この喫茶店で過ごしていると、次から次へとピーターの友だちが
やってくる。昨日はソファの特等席に座れて特に根が張ってしまった。

昨日は朝と夕方にAlbnayで予定があり、途中が膨大に空いたので、
フィルハーモニア管の海外ツアーを終えて帰ってきた
ヴァイオリニストのペーター・フィッシャーと喫茶店で落ち合った。

主目的は、彼の新譜をもらったり、前回聴いた彼のコンサートについて
話すことだったのだけれど、自分の好きな音楽とか、今後に構想している
お互いの仕事の話になって、完全にとりとめも無くなってしまった。

私のパソコンからピーターを始めとした様々な音楽を再生して
遊んだりした。当然、お互いが生きてきた過去についても話は及ぶ。

ピーター・フィッシャーのヴァイオリン演奏は凄いと思う。
けれど、ロンドンで彼がメジャーかといったらそうでもない。
でもやはり、ひと目見た時から彼は凄いと私は思う。

ソロで活動し、室内楽団を率い、名門フィルハーモニア管に
エキストラで呼ばれながら、彼は生活している。

話の流れで、自分の子ども話をして、あなたはどうなのか?
と訊いたら、独り身だそうだ。子どもをつくるには歳を取りすぎたよ、
それに家族と子どもにはお金がかかる、もう60歳だ。
いつも陽気でパワフルな彼はそう言って、少し寂しそうだったけれど、
あとは、ひたすら楽しく、時にダラダラと話した。

途中には、お互いがケータイの向こうの知り合いにメッセージを
打っているだけの時間もあった。それでも許される感じが
とても居心地が良い。

彼の友人ダニエルのお店の雰囲気も相まって、
午後の4時間をここで過ごした。この居心地の良さときたら。
ロンドンで一番なのではないか。

ミミ、エリザベス先生、ダイアン、ピーター。この4人は格別だと思う。

正直、自分は外国への憧れが強くないし、
家族と劇団員、親しい人たちがいる日本での生活の方が好きだ。
何かあればいつ帰っても構わないくらいなのだけれど、
この4人と別れるのは相当に堪えるだろうと、既に今から思う。

だからこそ、一緒にいられるうちに存分に過ごしたいと思う。
ピーターは私が通っているフォークソングの集まりに興味を持った。
まさか、バリバリのプロである彼を、連れて行くことになるのだろうか。

5/31(火)渡英からちょうど4ヶ月目

2022年5月31日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑グラインドボーン音楽祭の庭


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↑我がThe Albany Theatreの庭


『腰巻おぼろ 妖鯨篇』研究を終えてから1週間が経つ。

台本に取り組んでいないと予定に余裕が生まれる。心にも余裕がある。

先週末はブライトンのフリンジ・フェスティバルに行ってショーを見、

ケッチさんに会えた。ケッチさんの出番は短かったけれど、

そのかわりケッチさんの勧める若手女性クラウンの素晴らしい出し物を

見ることができた。このショーの感想を間に置きながら、

私たちは来年2月に創る舞台について話し合った。


その後に泊まった海辺のドミトリーは8人相部屋で面白い経験だった。

帰るのは夜中だし、朝早く起きてエントランスの広々としたカフェで

仕事をした私は、むしろ彼らに迷惑をかけた側だったと思う。


朝になっていそいそとタキシードを取り出し、

四苦八苦しながら慣れない身支度をする私を笑いながら見守ってくれた。

案の定、芸人か、友人の結婚式に備えているだと誤解された。


ちなみに、ミス・ダイアンには帰ってからこの宿泊体験を報告した。

ブライトンはゲイの街だ。そう断言する彼女に事前に宿泊先を告げたら

猛反対されたに違いない。私としては、グラインドボーンという

貴族的な土地へ赴くことへの禊としてここに泊まったのだ。


シャンパン片手にドレスアップしてピクニックを楽しむだなんて、

名古屋の地方公務員家庭に育ち、テント演劇に明け暮れてきた

自分には耐えられない。


そしてグラインドボーン音楽祭。

タキシードその他、ドレスコードを満たす準備や、

生き帰りの方法について調べるのは大変だったけれど行った甲斐があった。


この小旅行にはやたらと膨大な待ち時間がつきまとうから、

林あまりさんが教えてくれたチャペックの『園芸家12ヶ月』と、

ウィリアム・ブレイクの本を読んだ。数年ぶりにのんびりできた。

以前にのんびりしたのは、親知らずを抜くために入院した時だ。


グラインドボーンは想像していたよりもずっと人間味があって、

嫌な感じはせず居心地が良かった。演奏はいつも聴いている

ロンドン・フィルで、相変わらずわんぱくな弾き方だ。


何より、イギリスの女流作曲家エセル・スマイスの

The Wreckers』という演目と、新たな演出が良かった。

レッカーズ、つまり"レッカー車"の"レッカー"には

"故意に物事をダメにする"という意味がある。


20世紀の貧しい漁村の共同体の中で、不倫関係を貫く男女が描かれる。

僧侶の言葉も村人の忠告も彼らは振り切り、やがて心中を選ぶ。

こんなオペラだから、衣装はジーンズやオーバーオールが目白押しで

ひどく簡素だけれど、これはブリテンの『ピーター・クライムズ』と

ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』を掛け合わせた作品なのだ。


民主主義下の大衆の圧力にも、宗教的な抑圧にもヒロインは屈しない。

イギリス人にも関わらず、イギリスの地方都市を舞台にしたオペラを

フランス語の作品にしたスマイスの反骨心が溢れていた。

彼女はレズビアンだったらしい。女性の闘争心が全開のオペラ。

演出もそういう要素をさらに先鋭化させていて痛快だった。


休憩時間には、ウィンザーからきたという常連さんのおじさんに

話しかけられて、楽しく過ごすことができた。

ビルギット・ニルソンを生で聴き、マリア・カラスに会ったことが

あるという彼は、大の音楽ファンで、一年で何回か、ここに来るそうだ。

最近の歌手には不足を感じるとこぼしていた。


彼は手荷物を庭に置きっぱなしにして客席に戻る。

ロンドンの喫茶店では、トイレに立つ時には全ての荷物を

持っていかなければならない。それと、ここでの人々の振る舞いが

好対照を成していた。誰も盗みなんかしない。なんと贅沢な。

してみると日本は豊かだ。落とした財布が返ってくる世界。


私はと言えば、売店でこの音楽祭の過去公演CDが1枚5ポンドで

叩き打っているのを発見し(定価30ポンド)、狂喜して大量買いした。

まるでディスクユニオン。この買い物には本当に満足した。


無事に深夜に帰って翌日。朝の本読みWSを終えた後、

今度はオールバニーの庭でのアフリカ音楽フェスだ。

巨大スピーカーを持ち込み、街中に響き渡る音量でガンガンにレゲエを

かけていると、オシャレした若者たちが集まり、踊り始める。

参加無料のイベントだが、酒やスナックが飛ぶように売れる。


面白かったのは、トイレの数が全然足りず、若い女子たちが茂みに

飛び込み、ギャハハと笑い合いながら用を足していたことだ。

そしてまた踊りに戻る。若さと健康を撒き散らしていた。


グラインドボーンとオールバニー。

表面的にはぜんぜん違う両者は、しかし、

劇場、庭、オシャレ、飲み食い、音楽という衝動において

まったく同じ欲求に根ざしている。どちらかを侮るなかれ。

オールバニーを回りくどくするとグラインドボーンになる。

この回りくどさが文化だと、栗本慎一郎先生なら言うだろう。


日曜の夜は夜で、バービカンに行き、

ロンドン響とゴスペルのジョイントコンサートを聴いた。

いつもより格段に観客に黒人や子どもが多く、活き活きしたライブだった。

途中から立って踊り出す人さえいた。


昨日で、渡英してから鑑賞したものが100本に達した。

5/27(金)ドイツのタケシ・キャッスル

2022年5月27日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑なぜか道端にナイフが落ちていた。日本ではあまり見ない。

今日はAlbanyで予定されている会議が直前でキャンセルになった。
これまでもこういうことはあったのでさして驚かないが、
何か発言を求められるかも知れないと身構えているこちらとしては、
多少は拍子抜けした。

AlbanyやWe Are Lewisham絡みで見聞きしたものを中核にしつつ、
不慣れな異邦人として、この界隈での生活全般についてお届けする。
私に与えられる時間というのは、みんなにとってはリラックスタイム
だろうから、せめてここだけは面白くありたい。

シニアたちとの交流においては、あそこに行け、ここに行けと
指示を受けるので追っかけて回って、翌週に再開して話すのを
楽しんでいることや、ドキュメンタリー演劇づくりでは、
いきなり人生のヘビーな話題が目の前で展開したので
面食らった話をしようと思っていた。

来年に日本でつくるキッズプログラムに、
Albanyでの観劇体験が生きるだろうことや、
週末のグラインドボーン音楽祭に向けて七転八倒したことも
伝えたかった。側から見たらずいぶん間抜けだろうが、
こっちは必死だ。唐ゼミ☆の運営や大学〜劇場の仕事の中で何度も
壁を感じたことがあったが、今回のは種類が違った。

荷造りから各種の予約から、すでに準備はあらかた終えたけれど、
決して油断はできない。現地で、どれだけ所在ないだろうかとか、
終演後のバスにきちんと乗れるかどうか、電車の駅から間違えずに
ロンドンまで戻って来られるかどうか。とにかくトラップだらけだ。

ところで、久々に語学学校が面白い。
さほど英語が進歩しているとも思われないが、
新入生としてやってきたドイツの青年たちが楽しませてくれる。

彼らの英語はスピーディで、発音も綺麗に感じる。
それでいて、休憩時間に一緒にコーヒーを買いに行きながら話した
エリザベス先生に言わせると、文法はメチャクチャなのだそうだ。
それを計るだけの技量は、自分にはまだない。

授業中に日本の話になり、節分の可笑しさについて説明した。
鬼の格好をする。豆を投げる。年の数だけ豆を食べる。
このくらいまでは良かったが、恵方巻きの説明はひどく難しかった。
ノンカット・スシロールのサイズ感は、彼らに分かりにくい。

一通り話すと、今度はドイツ人青年アレックスが、
タケシ・キャッスルが好きだと言い出した。要は「風雲!たけし城」だ。
あれ、ヨーロッパでも放送されていたんだ、と驚いたが、

トラックにパンツを引っ張られながら走るゲームの、
たけし軍団が力尽き、スピードに負けて皆が全裸になってしまう面白さ。
あれを伝えきれず悔しかった。英語は難しい。

5/26(木)ロンドン、その園芸の世界

2022年5月26日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑曇天だったし、花も盛りを過ぎていた。左下の紫の花はイチハツ。

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↑こういうのを見ると、造園家は、自分にできるはずだと思うらしい。


イギリス人の園芸にかける情熱、あれは一体なんなのだろう。
彼らは本当に熱心に造園する。古い建物を大事にするから
自ずとリフォームも多く、出来るだけ自分の手でやろうとする。
楽しみなようだが、週末は庭づくりで大変だった、などとミミは話す。
何か、マゾヒスティックな快楽が潜んでいる感じだ。

Albanyでは、新たに参加するべきプログラムが一つ増え、
これで、月・火・木にルーティンを持つことになった。
英語にも慣れ、しゃべっている雰囲気は醸し出せるようになった。
土地勘も備わり、楽である。

シニアの中には毎回熱心に話しかけてくれる人も現れ、
こちらはもっぱら聞きやくだ。あまり複雑な話はできないから、
そのほうが私も助かる。

WSに参加する中で一人、ボランティアスタッフの女性が
自作の絵画をプリントしたオリジナル葉書にメッセージをくれた。
そこにはチャールトン・ハウスを訪ねるべし、とある。

チャールトンと言えば、同名のフットボール・クラブを頂く土地だ。
今まで訪ねたことはなかったけど、語学学校から歩いて30分強。
次に彼女に会う来週火曜までに行きたいと思い、授業後に向かった。

郊外型の巨大商用施設を横目にスタスタと歩き、
チャールトン・ハウスにやってきた。建物を囲む公園がデカい。
ベストコンディションでは無いものの庭があり、
なかなか大きな建物があって、サンドイッチを食べたり、
資料展示室で説明を聴いたりした。

カントリーハウス。そう呼ぶらしい。
この地域にはカントリーハウスがたくさんあるらしいのだ。

ここから先は私の推測だが、グリニッジ公園にある
エリザベス1世の別荘クイーンズハウスといい、
ロンドンのセントラルからテムズ川沿い南西のこの地域は、
幾多の来客に備えた屋敷を必要としたのではないか。

飛行機もユーロスターもない時代。
ヨーロッパの大陸からロンドンを目指したかつての人々は皆、
このルートを通ったはずである。かなりゆっくりとしたペースで
人々は行き交っただろう。
式典へのご招待ともなれば要人もいたはずだ。

自分はこれまで、花鳥風月への興味に乏しかった。
が、ロンドンに住み、ダイアンの渡仏の間に庭に水をやったりして、
興味が湧いてきた。ロンドンには巨大な公園がたくさんあるので、
ここを通り過ぎる時間を楽しくしてくれるとも思い、
花の名前を調べるアプリをダウンロードした。

これからは、いろいろな花の名前を調べて回りながら、
匂いも嗅いでみるつもりだ。ジャスミンの香りは確かに良い。

明日〜明後日のブライトン行きに備えて、グリニッジ駅で電車の切符を
買うなどして準備している。きっと様々な植物にも会うだろう。

5/25(水)『腰巻おぼろ-妖鯨篇』ひと区切り

2022年5月25日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑2016年に補陀落寺を訪ねて撮った写真。この小さな船に和尚さんを
乗せて、太平洋に送り出すらしい。

ものすごい時間がかかった。
さすが最長作品。こんなにもかかったのは初めてだったが、
2回り読みこんでかなり把握することができた。

執筆当時、よくこれだけの内容が頭に入っていたものだと眩暈がした。
唐さんは頭パンパンで、はち切れそうだったんじゃないか。
追いかけるだけの私も、最後の方は冒頭からの情報と緊張を維持しながら
読むのに苦労した。気をつけないと、すぐにその場で起こることだけに
飲まれ過ぎてしまう。

誰も彼もが死んでいるような世界で、文字通り死中に活を見出そうと
するのがこの台本だ。『唐版 風の又三郎』を書いてしまってから、
『唐版 滝の白糸』『夜叉綺想』そして『腰巻おぼろ-妖鯨篇』と、
まるで魅入られているかのように死の影が濃い。根っこが暗い。
本読みワークショップでこれを展開したならば、5ヶ月かかる量だ。

大物が終わって、少し解放されている。
もう6月が近いというのに、イギリスは暖かくならない。
今日など雨が数回にわたってドカ降りし、冬に戻ったかのような冷え込みだ。
暑さが苦手な自分には過ごしやすいが、この気候にはさすがに驚いている。
自分は1月末に来たものだから、英国の本当の冬を知らないように感じる。

1月や2月はどんなものだろうか。サマータイムの終わりが10月末だから
急激に日没が早くなり、きっと昼間がすごく短い体感になるだろう。
研修を2月スタート、12月終了にして良かったと思う。
同じ11ヶ月でロンドンの気候なら、冬場をカットできた方が良い。

台本を読みながら、何度も新宮を思い出した。
あそこには石川淳の『補陀落渡海記』のもとになった補陀落寺があって、
一定年齢に達した和尚さんを流すという船を見に行ったこともある。

それにしても、ある年齢になった住職は
補陀落(仏教における伝説の山)に向けて旅立たなければならない。
ひとり船に乗って太平洋に漕ぎ出し、信仰に範を示すため、
拒むことや止めることは許されない。・・・恐ろしい習慣だ。

『普賢』の好きな唐さんのことだから、影響があるかも知れない。
『補陀落渡海記』の主人公は、先ほどの習慣に抗う。
補陀落に行けるなどというのは迷信、自分は生きたい、
追い込まれた主人公はジタバタして渡海の途中で逃げ出すが、
結局は村の人々に見つかって殺されてしまう。

おぼろはかなりジタバタして、生き延びる。
最後のシーンは生きるということへの執着を見せつける大仕掛けの
場面だが、これはどうしたものか・・・。唐さんのイメージはわかる。
けれど、『盲導犬』で犬が飛ぶようなもので、難儀しそうだ。
上演を目指すとしたら、一番にクリアしなければならない問題だ。

5/24(火)まずは週末に備えて

2022年5月24日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑一昨日に行ったジャマイカ音楽のライブを以って、
渡英以来、鑑賞してきたステージ数は92になった。92/112日。


イギリスに来る前、同じ文化庁の制度を使ってフランスで研修した
先輩演劇人に「自分は200本観た。その全てに鑑賞の記録を取ってあり
今も時々見返すことがある」と聞いた。それに感化されて、
数も、記録も素直に真似することにした。

しかし、今後は少し本数を絞ったり、工夫しようと考えている。
週末にロンドン近郊のブライトンに向かうのを皮切りに、
いよいよ遠出しようと計画しているからである。

遠出すれば、交通や宿泊代がかかる。
食事だって近所では安く済むけれど、かさむに違いない。
きっかけは週末に予約したグラインドボーン音楽祭だ。
金曜にブライトンに行き、フリンジに参加しているケッチさんの
参加するショーを観て一泊する。

先にFacebookで発表したが、プロデューサー・テツヤの剛腕により、
帰国後、2023年2月に『3びきのこぶた』を原作にキッズプログラムを
演出する。ケッチさんこそ、その出演者なのだ。

こちらは一方的に存じ上げてきたけれど、初対面だ。
そして、翌日はブライトンから電車で20分のルイスに移動し、
そこから送迎バスに乗ってグラインドボーンに行こうと計画した。

ところが、新作オペラに惹かれて予約した後、
この音楽祭には、今まで自分の人生には経験の無かった
「ドレスコード」があることが分かったのだ。かなり狼狽えた。

男は絶対にタキシードが必要なのだそうである。
これに対し、自分は「スーツ タキシード 違い」とググるところ
から出発しなければならなかった。襟が違うらしい。

すでに予約してしまったので、諦めたらチケット代が無駄になる。
そんなことは許されないし、何より自分が情けない。
日本にいたら唐ゼミ☆の衣裳を動員するのに・・・

何とか希望を繋いで、庶民の味方、
ルイシャム・ショッピングセンターのTK-Maxに行った。
ここは結構なハイブランドの売れ残りを結集させた店だ
ひょっとしてタキシードが無いか探したが、もちろん無かった。
それによく考えたら、ズボンの裾上げが間に合わない。

悲嘆に暮れてダイアンに打ち明けたところ、
「Boss Brosでhireすべし!」と言われた。レンタルがあるらしい。

昨日、朝の語学学校を終え、午後にエンテレキー・アーツのすごく
高度なシニアのドキュメンタリー演劇創作に立ち会った後、
夕方にBoss Brosに殺到し、対応してくれた女性のベテラン店員に
「オレ、グラインドボーン、分からず、予約した」と伝えたら
すべてを察して、一発でジャストサイズを見繕ってくれた。

金曜の昼過ぎに受け取りに行った時、蝶ネクタイのつけ方も教わる。
果たして帳尻は合うのだろうか。

こういうこともあって、今後はできるだけ、
無料で入れるミュージアム、教会でのイベント、読書に精を出そう。
タダだけど、ロンドンではすごく良質なものに触れることができる。
そして、ストラトフォード=アポン=エイボン、コーンウォール、
バーミンガム、エディンバラ、ウェールズなどを目指すのだ。

5/20(金)ヨルノハテより第二指令!〜帰国後の舞台

2022年5月20日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑テツヤとの対話。ここで話しながら企画が生まれた。


劇団をやり、劇場で働く。

主宰と演出をし、コミュニティワークと劇場運営を身につける。

目下わたしが行っている取り組みだ。

 

今日は演出家としての話題。

 

コロナ以降、配信番組をつくってたびたび対話し、

去年のお盆には太田省吾さんの『棲家』リーディング公演を

一緒に行ったプロデューサー・テツヤから、

新たなお題が来た。キッズプログラムをつくろう!

 

今日が情報解禁日で、詳細はコチラ

http://yorunohate.net/

オオカミだ!- 『3びきのこぶた』に出てくるオレの話 -

日にち:2023.2.18.sat,19.sun

会 場:本多劇場

「第33回下北沢演劇祭参加作品」

出演:ケッチ

演出:中野敦之

企画製作:ヨルノハテの劇場

主催:合同会社ヨルノハテ

 

原型は『3びきのこぶた』。

去年の終わり頃、テツヤはこの童話とロシア文学を並べて

「どっちがいい?」と訊いてきた。

 

ロシア文学は好きだけど『3びきのこぶた』と即答した。

ロシアの方だとつい難しぶったり、カッコつけそうで良くない。

『3びきのこぶた』の方が逃げも隠れもできない感じがしたのだ。

 

ひたすら子どもたちのための劇をつくる。

そう思ってより平明な方を選んだつもりだったが、

なかなかどうして、このイギリス産の童話には、英国の人たちの

生活に根ざしたメッセージがあることがロンドン暮らしの中で

わかってきた。

 

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ただ一人の出演はケッチさん。

これはすごい。テツヤの剛腕だ。

すっかり張り切って、今から構成台本製作や演出プランを

つくっている。年末には、帰国後すぐに稼働できるよう体調を整える。

 

初めてキッズプログラムを演出する。

初演以降の展開もすでにテツヤは狙っている。すごいぞ、テツヤ!

5/19(木)ロンドン。パリに屈する。

2022年5月19日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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イギリスの食事は不味いと言われるが、自分はそうじゃないと思ってきた。

前にも書いたが、フィッシュ&チップスは美味いところは美味い。
パイ&マッシュに付いてくる鰻の煮凝りも、ほとんどの英国人は
気味悪がるが、自分は大好きだ。野菜中心のインド料理も良いし、
かのイングリッシュ・ブレックファーストは豪勢だ。
イタリアンとかハンガリーとかアラブの料理もある。
ともかくも自分は満足してきた。しかし・・・

最近、パリに住む日本人の知り合いと会う機会があった。
そこで自分は、グリニッジで気に入っているパン屋の
チョコレートケーキとハニーケーキを差し上げることにした。
これらは間違いない。そう自信満々に思っていた。

が、彼女が勧めるパリのクロワッサンをひとかじりして、
これは勝負にならないと思った。ダイアンが好きなので、
毎週日曜の朝はクロワッサンを食べているが、格が違った。
時間も経っているのに、驚異の美味しさである。
それに、このレベルの店はざらにあり、値段はロンドンの半額だという。

この衝撃は、例えばこんな感覚。

小さい頃から大好きな『北斗の拳2』には、
中国大陸に渡ったケンシロウをたちを待ち受ける敵がいる。
そのちょっと前にケンシロウと互角に渡り合った元斗皇拳の
ファルコがその敵と闘ったわけだが、死力を尽くして相打ちがやっと。

問題はその敵が、中国大陸に無数にいるザコの一人に過ぎないことだ。
そのことを死にゆく彼が告げた時の絶望感といったら無かった。
子ども心に戦慄し、ケンシロウの今後を思って天をあおいだ。

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・・・という時のことを思い出した。恐るべしパリのクロワッサン。
さらに、今となっては私が差し上げたふた品が心許ない。
彼女は美味しいと言ってくれたけれど、別のものにすりゃ良かったかな。


5/18(水)同じくマージナルなもの

2022年5月18日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑みなさんよく体を鍛え、ビジュアルのセンスを磨いている人たちだった

日本でいうところの知的障害、英国では学習障害者のための企画。
高齢者のための創作企画。こういったものにレギュラーで参加できる
ようになってきた。彼らの英語は容赦ないわけだが、
話しかけられたら何とか返事できるようにもなってきた。
わからなくても、今こんなこと言いそうだな、と推測して返事する。
トンチンカンな受け答えかもしれないが、こちらにそれは分からない。
分からない側の強みってあるよな、と自分を励ましている。
開き直るところまではさすがに行かないけれど。

そんな流れの中で、LGBTの人たちが大集合する
ファッション&ダンスのイベントに行ってきた。
これもルイシャム区とAlbanyの企画なのだ。

コロナによる行動規制が多い日本からすれば
考えられないほどの密着と熱狂だった。
みんな、ここぞとばかりに思い思いの、
大概は露出度の高い格好をしてランウェイを歩き、踊り、歓声を上げる。

初めは目を丸くしたが、しばらくいると、警備員の多さに気がついた。
そういえば、入口のチェックもかなり厳しかった。
チケットはもちろん、荷物も。サイトを見れば、
犯罪行為する人はつまみ出しますよ、と強調してある。
これを見てわかってきた。

彼らは強面に見られがちだ。
旧世代からすると鼻じらむようなイベントかもしれない。
けれど、よく考えてみると、彼らはなかなか苦労多き人生を歩んで
きたのかも知れない。自分の好みをに気づくのに時間がかかったり、
思いを打ち明けるのにハードルがあったかも知れない。

そして、それを素直に発露できる場所に行こうとすると、
どうしてもそこは都心であり、ドラッグや犯罪に近づいていくことに
なりかねない。誰だってそんなのは怖い。
そんな危険に自ら近づきたい人はいない。

だから、公共の仕事で安全性を確保することが大事なのだ。
格好は奇抜に見えたとしても、それは趣味の問題だから、
内面が暴力的だということには全くならない。

ところで、公共の仕事というものは、どこかソフトに
行儀よくなってしまいがちだが、このイベントにはそんな要素は
微塵もなかった。一見するといかがわしい。それが彼らを存分に
燃焼させる。けれど、安全である。健全である。
良いイベントだと感心した。

5/17(火)おそるべき伴奏

2022年5月17日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑大好きな真横の席から

『唐版 風の又三郎』浅草公演が終わった後、
私と林麻子はサントリーホールに行った。
林は音大のピアノ科を出ていて、その能力を活かして
劇中歌ワークショップを行っている。彼女は内田光子さんが
好きだそうなので、それで初めて生を聴きに行ったのだ。

私が内田さんのCDを初めて聴いたのは大学1年生の時で、
当時、横浜国大の先生だった許光俊さんの本『クラシックを聴け』
の中で、内田さんのモーツァルトのピアノソナタへの解説があった。

あの本はいまもしばしば読み返す。
自分にとっては、時間芸術とは何かを教えてくれた本。

渡英後に気づいたのはロンドンでの内田さんのリサイタルの多さ。
彼女にとってここは地元だ。だからけっこう頻繁に、
それもあまり高くない値段で聴くことができる。

オーケストラとの共演も、ソロでの演奏も、すでに何度も聴いた。
最も印象に残っていうのは渡英直後に行ったモーツァルトの協奏曲の
演奏会で、アンコールに呆然とした。モーツァルトK.545ソナタの
第2楽章のみ。人の人生を数分間に叩き込んだような演奏に、
打ちのめされた。

そして昨日も、それとは別の素晴らしい経験をした。
室内楽やバロック音楽用のウィグモアホールで、
内田さんはテノール歌手のマーク・パドモアの伴奏をしたのだ。

パドモアは当代随一のテノール、
彼の声の爽やかなこと理知的なことは見事なもので、
昨日、彼はこれまで見たどの時より格段に燃焼していた。
それは、内田さんの伴奏があったからだ。

とにかく煽る、煽る。
いま、パドモア相手にあんなに攻めの伴奏が
できるのは内田さんだけだろう。
それでいて、歌詞が終わって伴奏だけになると、
今度は内田さんがあっという間に主役になって、
アップダウンの強い、ロマンティックな演奏を繰り広げる。
達人同士が燃え盛っていた。

伴奏は大事。
神奈川には竹本駒之助師匠という娘義太夫の人間国宝がいて、
師匠の人間描写の徹底した味付けの濃さと燃焼にはいつも唸らされる。
そしてここでも、重要なのは三味線による伴奏。

伴奏はボクシングのスパーリング・トレーナーのようなもので、
ミットの差し出し方や位置で、次に打ち込むべき場所をリードする。
打ち手の力を何倍にも引き出すことができる。

僕らの芝居の音響や、集団シーンも同じだ。
せりふと音響、話し手と周囲が見事にキャッチボールする時、
人の力は何倍にも増幅される。昨日観たものは一生忘れないと思う。

5/13(金)恐怖との遭遇

2022年5月13日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑人種が入り乱れて、日本の会議より華やかに感じる。
ちなみにこれは自分の報告があると知る前で、人の多さに浮かれて
撮影した。直後に追い詰められるのをまだ知らない。

昨日は木曜。
学校を終えて電話や買い物をしながらAlbanyまで歩く。
劇場直前の十字路、先週に刃傷沙汰があった場所でまたケンカだ。
ただし今回は口論のみ。捨ててある段ボールをめぐって、
商店主とホームレスが激しく言い争っていた。

捨てられたばかりの段ボールを持って行きたいホームレスを
きちんと業者に持って行かせたい商店主が咎める。
「捨てたんだろう。なぜこの段ボールがお前に必要なんだ!?」
とホームレスの男は怒鳴り散らしていた。

周囲もやきもき見ていたが、暴力沙汰にならずに済んだ。

その後オフィスに行き、Albanyでの定例会議である。
いつものように末席に座り、フンフンと半分くらいしかわからない
彼らの話を聞いていた。15:00から1時間ほどこれは行われ
(英国の会議は短い)、わからないところは後でミミに聞く、
というのがいつものやり方である。

それにしても、対面とリモートが並行して行われてきた会議への
出席者が、今日は妙に多い。4月に加わった新人スタッフが
二人いるし、繁忙期が迫っているということだろう。

あとで自己紹介しようかな、と思っていたら、
一個めのトピックが終わった後で、いきなり全員がこちらを向いた。
聞けば、自分の番だったのだ。開始時間10分前に送られた会議進行の
メールをまじまじ見ると、確かにAtsushiとある。

「We Will Be Happy Hereについて報告してみて」と言われた。
確かに、皆は忙しいので自分が一番張り付いている。
それで、渡英以来もっとも大人数の前で喋ることになった。
これが恐怖との遭遇である。ビビったが、すぐに頭を切り替えて。

We Will Be Happy Hereがどんなだったか。
学習障害を持つ参加者それぞれによって、リハーサルの内容が
どう変わったか。かなり念入りに伝え、1980年台のファミコン的
世界であったこと、その時分に小学生だった自分にはそれがよく
わかるという話をした。

演出家のレベッカの一人一人に対する真剣さには驚かされる。
真のアーティストの迫力。アーティストであるが故に狂気も感じる。
プロジェクトに厳しく、参加者に優しい。
皆さんもぜひ土曜に見て、参加者それぞれによって生まれる
世界の違いを見てください。この企画の一人への向き合い方に、
全ての人たちに開かれたメッセージがある、と伝えた。

ついでに、最近参加しているMeet Meについても話し、
初めはミミと「ミート・ミー」の区別がつかなかったことや、
参加者のシニアをお世話するどころか、むしろ英語の歌を教わり、
全員が英語の先生状態になっていることを告げた。

・・・ということで、10分以上しゃべったが、
皆は声を上げて笑ったり、ニヤニヤしながら聞いていて
それがまた自分を調子づかせた。いけなくはない。

終わった後は飲み会に誘われたので、当日券でどこかに行こうと
していたのをやめてこれに加わった。
ロミカと英国内で訪ねるべき場所について喋り、
文学少女だと分かったリヴと、イギリスの詩人や小説について話す。

それも20:00過ぎに散開となり(英国の飲み会はサクッと終わる)、
早めに家に帰って、頭が疲れたので22:00に寝た。
そして今日は、苦もなく5:00に起きることができた。

明日からダイアンが遠出するので、先日の庭の水やりに続き、
トイレ掃除の仕方をこれから教わる。

ちなみに、『腰巻おぼろ-妖鯨篇』2周目は絶好調だ。
一度目はとりとめもなく感じたせりふの中に、二度目は多くの伏線や
つながりを感じて、遥かに緊密に感じる。やってみたくなってきた。

5/12(木)今日は雑感

2022年5月12日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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少し雨が降っただけでカタツムリ大量発生。1m四方に30匹以上いて爆笑

今日は雑感でいく。いくらか気になったことを。

(1)金芝河さんが亡くなった。
私は唐さんを通してこの方を知っているのみだが、
やはり1972年に始まった友情は熱い。
言葉の違う二人がどうやってコミュニケーションしていたのか
想像もできないが、きっと通じ合うものがあったのだと思う。
日韓反骨同盟。
この二人は揃って叛逆児だけれど、叛逆の種類が違うとも思う。
文化とは何か、という問答になった時、
金芝河さんは「闘争の結果である」と答えた。
対して唐さんは「瓦礫の前を横切る少女のくるぶしのようなもの」
と応じたそうだ。
・・・なんだか大上段な金時河さんを向こうに回し、
唐さんがとりとめもない感じもする。が、実際この通りと自分も思う。
背負っているものがあるから金時河さんは偉い。
けれど、唐さんにとって文化とは、人を驚かせる大いなるいたずらであり
チャームを持つものなのではないかしら。そんなことを思った。

(2)学校の友人がケータイを盗まれた
トルコ人の彼は、ここ二日無断欠席をしていた。
それが、今日は遅刻して悲壮な感じでやってきたのだった。
開口一番「先生、ごめんなさい。ケータイを盗まれてしまい」と。
続けて、ペッカムというまあまあ治安の悪い場所でバス停で
ケータイをいじっていたところ、黒人男性がそれをヒョイと
つまみあげ、走り去ったという。驚くべきは、彼がなかなかの
偉丈夫だということだ。背も高いし筋肉も多そう。
普通はもっとか弱い人を狙うと思うが、容赦なし。
自分にも緊張が走った。

(3)コインを拾いすぎ
いつかまとめて書くが、最近はもう確実に1日1枚+αのペースで
拾ってしまう。最も多くて1日に15枚拾ったことがあり、
先週の土曜は8枚、今日は13枚拾った。
特筆すべきは、あ、ここにホームレスの人が座っていた感じ、
というスーパーの前に、まとめて5枚が転がっていたことだ。
これはどうなのだろう? せっかく人がプレゼントしてくれたのに。
流石に「もっと必死になれ!」と怒っても良いのではないだろうか。

(4)アルメイダ劇場で新作劇『THE HOUSE OF SHADES』を観る
3時間の芝居を観ました。女流作家の新作書き下ろし。
20世紀後半のイギリス中流家庭が、共産主義にかぶれた息子を
力づくで更生させて無気力人間にしたり、娘が秘密裏に妊娠した
赤ちゃんをゴミ捨て場に捨ててでも表向き幸せを保つ。
当然ながら、対面を保っているものの、家族の誰もがいつも表面下に
ストレスを抱えている、という物語。
俳優は上手かったしスタイルも洗練されて、何よりアルメイダ劇場の
舞台後方のレンガの壁がカッコ良かったけど、はっきり言って趣味じゃ
なかった。ロンドンの人は実感を持って観ているのかなとも思ったが、
案外これは日本で数年後に翻訳されて上演していそうな気がする。

5/11(水)研修らしくなってきた

2022年5月11日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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昨日は二つの事業に参加して、劇的に理解を深まった。
3週前から通い始めたシニア企画「Meet Me」と、
学習障害をもつ人たちのための「We Will Be Happy Here」。

まず「Meet Me」だが、やっと事業の枠組みがわかった。

The Albanyには小ぶりな事務所がたくさんあって、
劇場本体の事務局や企画、技術などの部屋の他に、
レジデントしているアーティストや企画団体がたくさんある。

「Meet Me」はエンテレキー・アーツとこの劇場の共同企画なのだ。
なぜ今までそれがハッキリしなかったのかというと、エンテレキーの
スタッフが休暇中だったからなのだ。このへんが英国っぽい。

ちなみに私は、この劇場のどこかにエンテレキー・アーツという
団体があって、福祉的な文化事業をここが主導して行っていることは
日本にいた時から知っていた。しかし、今日に至るまで、ミミなどに
紹介を頼むのを避けていたのだ。

なぜかというと、ただ会っても話が続かなくてしんどいのが
予想できたからである。現場に潜入していけば会うだろうと
思っていたが、果たして今日がその日となった。

ロクサーヌとジャスミンという女性スタッフとシニアを迎えたり、
作業したりしながら喋るのは愉しい。親しくなったので、
これからは事務所にガンガン遊びに行くことにする。

今日はもっぱら合唱の部屋でローズマリーさんという名前のお婆ちゃんと
一緒に歌い続けた。彼女の楽譜を見せてもらい、時には英語の歌詞の
読み方を教わりながら参加した。

"見学です"などと硬い姿勢は現場にとって迷惑でしかない。
新人で、英語ができなくて、そういう自分なりに現場を活気づかせる
ことができると思っている。

私はすでに地元に詳しいので、彼女が住んでいる場所も検討がつく。
オススメの店を教わったり、ローズマリーさんのお孫さんの話を聞いて、
こちらの子どもの話をして、終了後も盛り上がった。

参加者の一人一人が、エンテレキー・アーツが提携している
病院=お医者さんの勧めて参加したそうだ。医療行為の延長として
ドクターは劇場プログラムへの参加を進める。
そういう信頼関係とシステムができているらしい。

午後は「We Will Be Happy Here」。
今週はその企画に注力すると聴いていたが、会議に出席しても
ウェブサイトを見ても、正直その内容がよくわからなかったものが、
今日のリハーサルを見て氷解した。

てっきりWSをすると思って劇場に入ると、すでにセットが組まれていた。
ホール1階には三つの部屋が作られていて、明らかに仕掛けがたくさん。
そこに3人のパフォーマーがいた。彼らが何かやるんだと思っていたら、
お母さんとお兄さんに連れられた青年がやってきた。
その物腰から、彼に学習障害があるのだと分かった。

それから、彼は3人の女性パフォーマーと体をほぐして、
マントのような衣装を羽織って、各部屋を巡り始めた、
モンスターと闘ったり、踊ったり、キーボードを演奏したり、
光るボールで遊んだり、絵を描いた紙を吊るしたり、
最後は真ん中の部屋で大きなロール紙が引き出されて、
そこに、「We Will Be Happy Here」という言葉が書かれていた。
この間、ずっとファミコンめいた音楽が鳴ったり、シーンに合わせて
照明が変化していた。

・・・つまり、こういうことなのだ。
このインスタレーションは、学習障害者ひとりひとりから
内面世界を引き出してホール全体に立体化したものなのだ。
河合隼雄さんの箱庭をスタジオ規模に大きくした。
そんな感じだ。物語の作り手である彼は主人公として冒険する。

明日には他の3人のリハーサルが行われ、明後日はまた別の人の
リハをして、そうして週末の発表に向かっていくことだ。

完全にピンときた。見終わって演出家のレベッカに会い、
「彼はTVゲーム好きなのでしょう?
 ひとりひとりに合わせてカスタマイズするのでしょう?」
と訊いたら、そうだと返事が返ってきた。恐るべき労力だ。

だからこれは、個々のパフォーマンスもさることながら、
「わたしはあなたと徹底的に向き合いますよ」というメッセージを
発信するためのプロジェクトなのだ。

「この人と向き合ったやり方と深さで他の全ての人と向き合う」
というメッセージを贈る。執念と狂気を感じる企画だ。
レベッカから信念が噴き出している。そういう雰囲気の糸田。

お金がどうやって回っているか、とか謎は多いけれど、
上記のことが完全に理解できた。
この企画を主導しているのは劇団スペアタイヤ。
良い劇団名だ。スペアタイヤの事務所もAlbanyにあるので、
これからは遠慮なく訪ねさせてもらう。

もともと3ヶ月くらいかかると思っていたが、機が熟したを感じる。
この研修は第二段階に入った。
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5/10(火)実にハードルだらけ

2022年5月10日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑人は優しい。先週末、前から気になっていたハンガリー料理を初めて

食べた。腕利きの店員さんに説明されながらオススメを頂いた。


英国での生活はドラブルに満ちている。

例えば、最近はワクチンパスを手に入れたいと思い、かなり苦労した。

ワクチンを打つにもかなり手間がかかったが、事後だけでもこんな具合。


まず、接種後2週間が経ったのを確認して、119に電話。

そうすると高速の英語と闘うことになる。当然、相手の顔は見えない。

外国人用の対応窓口につないでもらっているにも関わらず

「ゆっくり喋ってくれ」と何度言ってもスピードが落ちない。

ネイティブの人にとって、ゆっくり話すのは難しい。


自分も可哀想だが、相手も可哀想だ。こちらが電話を置くまで

相手をしてくれるものだから、最後は申し訳なさでいっぱいになる。


埒があかないので、今度は登録の病院に直接に行く。

ここ数週間、保険証登録などでもすっかりお世話になってきたので、

こちらのことを覚えてくれている。受付の人は優しい。


スマホにこのアプリをダウンロードしてみて、

というアドバイスをもらい、GoogleからのDLに挑戦する。

すると今度は、ダウンロードのためのパスワードを、

Gmailアドレスに紐づいた私の日本のケータイ番号に送るという。

当然それは凍結してあるわけだから、キャッチできない。


そこで、現在持っているイギリスのケータイ番号に紐づいた

アドレスを新たに作ることにした。これ、病院の受付の前の

イスで焦りながらやったものだから、自分の名前なのに

アカウントがAtusshi Nakanoで登録されてしまった。

「アトゥッシ ナカノ」。でも、まあいいやと気を取り直す。

名前がどうでも今回は関係ない。


今度こそDLを試みると「あなたのデバイスではキャッチできない」

という。日本で買ったスマホだからなのか。ここで、方針転換。

同じアプリをパソコンに落とそうとしたが、これもダメ。


さらに別の方法を入れ知恵してもらって、

健康保険のウェブサイトから取り寄せることにした。

ここにもハードルがあって、フォーマットに入力するうち、

自分の写真を添付で送ったまでは良かったが、

「Movieも送れ。その際にこの4ケタの数字を言え」と続く。

この時、なぜか自分のPCのカメラが作動してくれない。

いつもZoomもLINE電話もこのMACでしているのに、

どうやってもカメラが動かない。


仕方ないから、Albanyの金庫番であるセリに頼むことにする。

ミミやロミカは親しいが、リモートワークが基本だ。

チケット売り場のリヴやアレックスやイオシフィナも優しいが、

彼らのパソコンは共用のものだし、いつ掛かってくるかわからない

チケット予約に備えている彼らを巻き込むことはできない。


そこでセリだ。若手スタッフと会議をしていたセリに

「後で時間をください」とお願いし、わざわざ自分のデスクまで

来てくれたセリに「あなたの部屋で話したい」と切り出す。


何事かと、彼女は神妙に私を招いてくれたが、結果こんな要件である。

果たして、セリのデスクトップのカメラで映像を撮影するわけだが、

悪いことに、自分のパスポート写真はメガネを外しているから、

裸眼で挑まねばならない。


そこで、指定4ケタの数字を記憶して臨んだのだが、

初回はテンパって「よんなな・・」とやってしまいセリに爆笑された。

再トライして、ようやく24時間以内にメールを送るという通知を得た。


果たして、明日にこれは届くのか。

最後まで気が抜けないのが外国での生活だ。


5/6(金)

学校→VACCURSE会議→買い物→Albany→ナンヘッド霊園

→『腰巻おぼろー妖鯨篇』打ち終わり→BBC交響楽団


5/7(土)

Zoom会議→洗濯→『鐡假面』本読み→ハンガリー料理

→チャールズ・ヘイワードLive


5/8(日)

掃除→本読みWS→買い物→ロンドン響


5/9(月)

学校でテスト→ワクチンパス取得のため病院→Albany

→ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団



5/6(金)その② ついに事件に遭遇

2022年5月 7日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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Linton Kwesi Johnsonさんと。気さくであった。

先のブログを書いて買い物をしに劇場を出たところ、
ついに目の前で事件に遭遇してしまった。そこで今日は連投する。

Albanyを出て100mほどのところに、馴染みのカレー屋がある。
よく昼飯を食べるし、入らない日も挨拶する。
今日もそうして通り過ぎようとしたところ、
私の後方5mほどの所でガラスの割れる音がした。

さっきからワーワーやっている黒人たちのうち3人がケンカを始め、
一人はナイフを取り出す。「ナイフはやめろ!」と周囲から
怒号が飛ぶなか、敵対する男2人は周辺の店の看板を武器にして
殴りかかった。結果、ナイフが地面に転がり、味方のいない彼は
何度か殴られ、それでも素手でやり返した。

少し距離をとって睨み合うと、
看板を破壊された中華料理屋の女性店員が猛り狂って突進した。
負傷した男の肩をつかみ、大声で「ヤーメーロー!」と怒鳴り続けた。
男は怒りのやり場がなさそうだったが、本能的に女性に危害を加える
わけにもいかず、事態は沈静化した。

改めて周囲は彼の流血に気づき、彼もようやく痛みを感じたのか
上着を脱いでTシャツになった。簡単な手当をするうち、
警察が来て、救急車が来て、あっという間にバリケードが張られ、
インド料理屋は店じまいを余儀なくされた。

自分は予定通りスーパーに行ってオレンジジュースを買い、
そこから2時間、劇場での催しを観たが、終わって外に出ると
まだ警察はそのままで、サイレンの音こそないものの
パトカーの明かりが強烈に周りを照らし続けていた。

驚いたのは、警官の視界の届く範囲内で、
ベンチにたむろしていた別の黒人の青年たちがまたぞろ口ゲンカを
始めたことだ。さすがに今度は暴力に至らなかったが、
けっこうな大声だった。

今日のAlbanyで催しは、Linton Kwesi Johnsonという当地の
伝説的な黒人抵抗詩人のレクチャーで、満席の場内に集まった
聴衆の中にはたくさんの若者もいて、熱心に彼の話と朗読を聴いた。

劇場の内外で観た出来事を自分はどう理解したら良いのだろう。

5/6(金)死闘『腰巻おぼろ 妖鯨篇』

2022年5月 6日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑Deptfordは造船業が盛んだったらしく、商店街の端に錨が飾られている。

イースター明けの4/18(月)以来取り組んできた『腰巻おぼろ 妖鯨篇』。
二日ほど前に峠を越えた感じがあったが、いよいよ踏破が見えてきた。
130ページの台本に毎日6ページずつ向き合って、残りあと8ページ。

今回はさすがに堪えた。肩も背中も痛いし何より目が霞む。
イギリスの照明は暗く、室内灯を煌々とつけることは、
倹約家のダイアンの手前、憚られる。

だから早朝や昼間に時間を見つけて取り組んできたが、
用事たくさんで夜にもつれこむ日もある。そうなるともう泥試合。
暗い中とり組むことになるから、負荷が高い。
蛍雪時代という言葉を思い出した。

例えば、ドストエフスキーやトルストイを今の生活の中で読むことは
難しい。あれは20代の暇な時だったから何度も何度も読めたのだ。
ラブレーやセルバンテスは大学1年の時に読んでおいて良かった。
プルーストは来世に託すしかない。
『チボー家の人々』やムージルの『特性のない男』も同じ。

今年は降ってわいた学生時代なのだ。
とにかく、『腰巻おぼろ 妖鯨篇』と『下町ホフマン』を仕留めること。
そうすれば70年代まではほぼ頭に入る。
80年代唐作品にも『あるタップダンサーの物語』とか『住み込みの女』
『ねじの回転』などがあり、先は長いけれど、とにかくこの2作が
ずっと引っかかってきたのだ。

手もとの様式で現在290ページ。
渡英後初めて打ち込んだ『秘密の花園』のざっと倍だ。
その実、プロットが非常に単純なのだが、唐さんは赴くままに
せりふを書いてここまできてしまったのだ。

34〜35歳の唐さん。まず体力がすごい。
『白鯨』の主人公エイハブ船長の気迫を感じる。
巨大なクジラに銛を撃ち込まんという勢いだ。

あとはひと息に。今日と明日は1日6ページのルールを完全無視。
空いた時間の全てを唐さんに捧げて畳みかける!
こんな事をしながら気づいたが、今年は全体が合宿なのだ。
中年以降をよく働くための強化合宿。

5/5(木)グローブ座へ

2022年5月 5日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑カーテンコール。8人で上演できちゃうのだ。

5月なのにロンドンは寒いままだ。
ジャケットこそお気に入りのTK-MAXで買った薄手のものに変えたが、
インナーはまだヒートテックのまま。なのに、そう汗をかくわけでもない。

気になってダイアンに訊いてみたら、これは異常なのだそうだ。
例年の5月の気持ちよさといったら。それなのに今年は・・・
そう愚痴こぼしていた。

暖かくなるのを心待ちにしてきたのには理由がある。
グローブ座に行ってみたい。が、あそこは吹き抜けの青天井。
しかもシェイクスピアだから3時間弱を覚悟しなければならない。
こんなアウェイで体調崩したら面倒だ。そう思ってきたが、
今日は他に鑑賞の予定もないし、『ジュリアス・シーザー』は
超メジャー演目でもないから£5の立ち見席が空いていた。

語学学校を終え、Albanyで事務をして18:30。
Deptfordからグローブ座まで30分ほど。行くべし。

初めてグローブ座で劇を観ることができた。
たった8人の役者で全編を演じ切り、最後に素朴な踊りまであった。
衝撃的な大感動を呼ぶわけではないけれど、町中華で食べるラーメンの
ような安心の美味しさがあった。

今日は観客がまばらだったし徐々に寒さが増していく。
観光客が多いからか、休憩時間に帰ったお客もたくさんいた。
けれど、役者たちは熱演して、演出により、時には観客と絡んだりした。

『ジュリアス・シーザー』は革命青年たちがクーデターを起こす話だ。
そして大義を持ったはずの殺人のあと、彼らは追い込まれ、滅ぶ。
後方のベンチシートで観ていた中年男性が嗚咽するように泣いていた。
学生運動に挫折した経験でもあるのだろうか。

主役のブルータスは黒人の若い女性が演じていて眉毛が繋がっていた
このメイクに、役柄の一徹さが表れていた。相棒のキャシアスは白人女性。
衣裳はスーツやミリタリーを使った現代服でシンプル、そこに少しずつ
古風に見えるように工夫されていた。

太鼓やタンバリンなど打楽器を使った原始的な演奏が随所に見られ、
最後にはダンスがあって、盛り上がって終わった。

地面はコンクリートで、照明も電気だけれど、
吹き抜けによって見える空だけは400年前と変わらない。
テントや野外劇をやってきたから、雨の日の様子も含めて気になる。

それに、さまざまな演目を立て続けにやっているから、
『ジョン王』とか『ヘンリー8世』とか、珍しい演目を観られる。
オーセンティックな衣裳による上演も見てみたいし、また来よう。

全体に誠実な感じがした。観光客が観にくるわけだし、
グローブ座の様子を再現するというミッションもある。
しかしその枠組みの中で、純粋に芝居としても面白い上演のために
最善を尽くしている感じがしたのだ。ダレる日もあるだろう。
でも、空だけでなく、人間も大して変わっていない。
そういうことを実感させる良さがあった。

↓お土産物売り場で異彩を放つマンガ版『リア王』。まるで漫画ゴラク
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5/4(水)アヴェ・マリア大集結

2022年5月 4日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑都心でテント小屋を発見。なかなかの安定感とエントランスだ。

グリニッジ駅前の殺人事件から二日が経った。
事件そのものにも驚いたが、輪をかけて驚異を感じるのは、
翌日も平然と事件現場となったパブが開店していることだ。
今日は都心から帰ってくる際に横を通ったが、
警官が三人いて聞き取りを行っているところだった。
お客は少ないが、三組ほどいるのが外から見て分った。

衝動に駆られて惨事を起こしてしまうのは辛うじて理解できなくはない。
しかし、淡々と開店していることは冷静な行動だ。
確かに、では何日閉めるべきかと問われたら答えに窮するが、
それにしても・・・・。献花が増えていた。

帰宅して、英国人としてどう思うかダイアンに訊いたら
普通は閉めるものだとの答えが返ってきて、少し安心した。

時間を戻すと、連休明けの今日は火曜日なので、
ソフィーの仕切るシニア向けWS「Meet Me」に参加した。
合唱と美術創作の2種目で好きな方に参加しているメンバーが
早くも自分のことを憶えていてくれて、やりやすかった。

「グリーンティーをちょうだい!」などと頼まれる。
よし来た!と思ってお茶を淹れて持っていくと「ミルクを入れて」と。

日本人としてはかなり違和感を感じたが、
怯まず「スタンダードミルクかソイミルクか?」とすかさず
訊いて、「ソイ!」とのリクエストを受けた。

日本人は緑茶にミルクを入れることに抵抗があるが、
紅茶にミルクを入れるわけだからこちらの人は緑茶も同じように
するのかと思ったが、これもダイアンに普通ではないと言われた。
簡単に国民性の違いにしてはいけないらしい。

シニアたちの英語は容赦ないが、まあ何とかやっている。
合唱に加わって英語の歌を覚えられるのは良いことで、
これは自分にとって英語学習プログラムだと皆さんに伝えたら、
ヘンリー8世をからかった俗謡を歌ってくれた。

その後は文化庁に提出する3ヶ月に一度の報告書を書いて、
都心に出かける。ウィグモアホールで初めて聞く合唱団が
色んな作曲家のアヴェ・マリアばかり歌う、という過剰な企画を
やったので当日券で入ったが、思った通りかなり面白かった。

アヴェ・マリアは唐さんも好きで、『腰巻お仙 忘却篇』や
いま本読みWSをしている『蛇姫様 わが心の奈蛇』でも使うよう
ト書きに指示がある。いつもギャグ的な使用なので、
今日のコンサートは大変に美しかったが、やっぱりバカバカしい
シーンが思い出されてニヤニヤしてしまった。

ちなみに、なぜか入場料はたった£5で最上等の席に座れた。
当日券だと安いのだろうか。よくわからないが幸運だった。

5/3(火)先週末から週明けのロンドン

2022年5月 3日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑終了後の稽古場。チェンバロが見える。


これをロンドンの都心で書いている。

飲食店はどこも高いこの街では、屋内にフリーで座れる場所は貴重だ。

ナショナルギャラリーの横にある教会セント・マーティン・イン・ザ・

フィールズの地下は落ち着いてデスクワークができる場所だ。


それにこの教会はイベントに大変熱心で、

3月にはここでBBCシンガーズの『ディドーとエネアス』を聴いた。


今日は地下1階のテーブルに陣取ったところ、地下2階に稽古場が

あるのを発見した。このゼミログを書いているすぐ横では、

ガラス1枚を隔てて木曜に上演予定のヘンデルのオペラ

『セルセ』の稽古が行われている。


主役級の歌手が、出番の合間にコーヒー片手に目の前のテーブルで

休憩し、電話をし、くつろいだ後、また稽古に戻っていく。

稽古場の中はは紀元前5世紀頃のペルシャ。

さすがヘンデルの地元。これがロンドンだ。


4/29(金)夜は内田光子さんのリサイタルに行ったが、苦しかった。

弱音と不協和音が連続する現代作曲家の曲に対し、周囲に沢山いた

中国人旅行者たちが騒々し過ぎたのだ。


まず、私の席に言ったところ、先に座っている人がいて閉口。

チケットを示してどいてもらった。

隣の中年夫婦はひっきりなしにお互いの体をまさぐり合うか、

姿勢悪く寝ているかだった。一方、当日パンフがオンライン配布なので、

ケータイの明るさを最弱にして読みながら聴いていたら、

二席隣のおじさんが「目に入るから電話を閉じろ」という・・・

苦いコンサートだった。


4/30(土)はサウジアラビア人の友人アジードと最後の晩餐。

その前にロンドン・セントラル・モスクに一緒に行こうと約束したが、

こちらが着いたところで電話があり「間に合わない!」と。

後でレストランに着いて分ったが、この日、彼は半年間お世話になった

ホストマザーを連れてハロッズに行き、お礼に高級なアラビアの香水を

買っていたのだ。彼が案内してくれた店でした三人での食事は面白かった。


予定の組み方も、案内の仕方も、メニューの頼み方も、

18歳の彼のアテンドはものすごく未熟だ。

でも懸命で、こちらに自国の食べ物や感謝を伝えたい気持ちが伝わってきた。

同じアラビア圏のトルコ人留学生たちと、友達になってはケンカ別れを

繰り返していた彼。彼の目標である良い医者になって欲しいし、

彼とは再会の可能性があると思う。何年後かに日本を案内できたら嬉しい。


一人で満喫したモスクでは、イスラム教の合理性がよくわかって

楽しかったし、食事も美味しかった。久々に沢山お米を食べた。

アジードに幸多からんことを!


5/1(日)は唐ゼミ☆本読みWSをしてキングスプレイスに出かけた。

ピーター・フィッシャー率いるチェンバー・アンサンブル・オブ・

ロンドンを聴くためだが、キングス・クロス周辺の文化施設は

綺麗すぎて自分はどうも馴染めない。演奏会は会心の面白さだった。

ピーターはフィルハーモニア管のツアーに同行するため、

夜中にヘルシンキに向かった。激務だ。


5/2(月)。銀行が閉まるバンクホリデー。メーデーだ。

朝から『腰巻おぼろ 妖鯨篇』と格闘して、へばり気味だが、

昼過ぎにはウィグモアでガーシュインを特集するコンサートを聴いた。


その後、今後の遠出に備えて電車に切符を買いに行った。

オンラインでの申し込みが基本だが、なぜかクレジットカードが

はじかれる。そこで現地購入。


時間の無駄とも思うが自分はこういうのが好きだ。

劇や音楽の公演も、できればボックスオフィスで買って

紙チケットが欲しい。スタッフに質問したりすることも含めて、

時間に余裕があるからできる贅沢だと思う。


そして都心を歩き回り、今、冒頭の教会にいる。


今日、ダイアンは大金持ちの友人に誘われて、

ロイヤル・オペラ・ハウスでディナー付きボックスシートだそうだ。

出がけにストールの色やバッグの色について意見を求められたが

明らかに派手な方を選んで欲しそうだったので、そちらを指さしたら

喜んでいた。


他方、土曜未明にグリニッジ駅前のバーで殺人があったそうだ。

酔っ払った30歳前後の友人二人がケンカをして、一人が刺されて

亡くなり、一人は警察に捕まった。あまりにあっけない。

これがロンドンだ。

4/29(金)必ずしも英国が良いわけではない

2022年4月29日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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猫の捜索願いを目にするのは二度目。が、これはインパクトある。

片目の黒猫を捜している!


Albanyにいて感じるのは、ここで行われる劇場運営が

日本のそれよりはるかに多く地域の人たちに関わっていることだ。

もともとそう思ってこの劇場を研修先に選んだわけだが、

実際に一緒に過ごしてみて、強く実感する。

 

そのため、この劇場が行う催しは圧倒的に音楽イベントが多い。

子ども向けのプログラムを除けば、これまでにストレートプレイは

3つしか観なかった。つまり、それだけせりふ劇の間口が狭い

ということなのだ。

 

また、辣腕のソフィーが仕切るシニア向けの定例WSに立ち会った。

皆で染め物によるバナーづくりをしたり、サイモン&ガーファンクルの

曲を合唱するのに参加した。作業や練習そのものは90分程度の

長さだが、皆さん早めに集まってくるし、休憩時間もたっぷりとる。

劇場から供されたお茶とお菓子で団欒して過ごし、

終わった後もみんなで残って茶話会のような感じになる。

 

とてもステキな光景で、それら一連が終わると、

ある人は自身で帰途につき、別の人は家族が迎えにきた車に乗って

帰って行く。ソフィーはそのひとりひとりと話をしながら見送っていた。

ソフィーはオーガナイザーであり、参加者の娘や看護師のような

存在でもある。「ソフィーはどこ?」と誰もがすぐ彼女に助けを求める。

その度にソフィーは二つの会場を駈けまわっていた。

 

まるでデイケアサービスのようだと思った。

内容的にもアートの度合いは薄めにしてあり、そのかわり間口が広い。

そして、Albanyがこうなったのには明確な理由がある。

地域経済が逼迫したからだ。

 

21世紀に入った頃、この地域は困窮した。

Lewishamはシニアにかかる医療費を支えきれなくなり、

Albanyは文化予算の削減に喘いだ。そこで両者は手を取り合ったのだ。

追い詰められたもの同士が結びついて、劇場の新たな事業展開に活路を

見出した。言わば、窮余の一策ともいえる。

 

必ずしも英国が良いわけではないと書いたのはそういうわけだ。

医療と文化、その両方がいまだ一定水準の予算規模を保っている日本は

幸せである。しかし、若者が減り、高齢者が増える国家経済の行き先を

誰しも明るいとは思わない。だから、来るべき時のためにと思って来た、

ともいえる。

 

いずれにせよ、そういう苦さも含めて自分は学びの日々を送っている。

音楽イベントに集まる若者たちにとって、Albanyは劇場でなく、

DJのいるクラブとしか記憶されていなのかも知れない。

そういうことも思う。


それが良い。それで良い。やっぱり劇場だと思われたい。

こんな風に3段階の感情が湧き、正解は見えない。

やはり、劇場は最高水準の芸術性を追究するべきでしょう。

という思いもある。最高水準の芸術性・・・。

 

しかし、しかしである。

これらは、やりようによって共存するのではないか。

それどころか、人々の事情や暮らし向きに接していることは、

むしろ劇をつくる作業にとって必須なのではないか。

実は、そういう思いもあってここにいる。

 

人間を描く、人間の営みだから、と言える。

そういったことを唐さんは『下谷万年町物語』でこう書いている。

これから劇作家になろうとする少年・文ちゃんに、

ヒロイン・お瓢が覚悟を問いかける場面だ。

 

お瓢 転がってくるもの。

文ちゃん   え?

お瓢 果てしなく、いつも、こうして、転がってくる......

文ちゃん   はい。

お瓢 なりゆきとか、ゆきずりとか、手垢にまみれた、下々の、

   様々なこれらを、おまえは、これからもずっとつかんで行けんのか?

 

自分のいる地区には、ものづくりにとって一番大切な魂がある。

そう信じている。


他方、作品をつくるということは当然ながら技術であり、

技術は都心で学ぼうと夜はセントラルに通う。

そんなイメージで過ごしている。


技術や形式だけの学んで帰りたくないと思って行動している。

けれど、もちろん、帰国後の仕事によってのみ正解・不正解は証明される。

だから必死だ。

4/28(木)夫婦の仕事

2022年4月28日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑普通、終演後に指揮者とソリストは抱き合ったりするが、今日は
それはなかった。慎みということだろうか。
ラトルはずっと、男性歌手とお喋りしながら拍手を受けていた。


消耗が激しい。完全にワクチンのせいである。
夜中にやや発熱したようであるが(体温計がないのでわからない)、
普通に早朝に起きて、パンを買いに行った。

体のふしぶしが痛くて、丘をおりて買い物し、
また登ってくるときにいつもダッシュが効かない。

風邪をひいて熱を出した時にいつも不思議に思うのだが、
どうしてあんなにパフォーマンスが落ちるのか。
近所のコンビニに行ってポカリスエットを買うだけでヘトヘト。

今日はそこまでではないが、学校でも授業中ずっとウトウトした。

それから、自分を苦しめているのは『腰巻おぼろ 妖鯨篇』である。
せっせと台本をつくりながら読んでいるが、とにかく長い。
一日の分量をいつもより多めにとり、打ち込み始めて10日になる。
半分まできたところでいつもの台本様式で150ページになってしまった。
つまりこれは300ページいくということだ。恐ろしい。

『ジョン・シルバー』は80ページ。『盲導犬』は100ページ強。
『唐版 風の又三郎』をして224ページである。

その上、登場人物が多く、
正直いって今の自分には物語の進行がよく分らない。

基本的には捕鯨船の元乗組員たちの話。
海で亡くなった破里夫、彼を慕うヒロインおぼろ、
おぼろに横恋慕する千里眼、という3人の物語。
それを、それらが済んだ後でおぼろに出会った主人公ガマの視点から
過去を解き明かし、決着を目指す物語だ。

『あれからのジョン・シルバー』に似ている。
恐れずに言えば、唐さんがせりふを書けすぎて、
溢れることばの洪水の中に物語が埋もれてしまっている印象だ。

自分が今、お話しのどこにいるのか、迷子になってしまっている。
とりあえず最後までいって、もう一度頭から読んで、
あと3週間くらい振り回されるだろう。
日本にいたらとても太刀打ちできない量感。

そんな中でも、夜はバービカンに出かけてロンドン響を聴いた。

演目はクルト・ヴァイルの『七つの大罪』。
怠け者の父や兄弟がいる一家の家計を背負った少女アンナが
アメリカの各都市を巡り、七つの大罪のエピソードになぞらえながら
時に身を持ち崩し、金を稼ぐアイロニカルな話だ。

ブレヒトが筋を書き、ヴァイルが曲をつける。
『三文オペラ』を当てた二人は、女優ロッテ・レーニャに充てて
これをつくった。彼女はヴァイルの奥さんである。
CDでも聴くことができる。

今日の上演も夫婦の仕事だった。
サイモン・ラトルが指揮して、奥さんのマグダレーナ・コジュナーが
アンナ役を歌った。初めにラトルが楽曲の説明をして、
「家族です」と言ってマグダレーナを紹介した。場内から笑い。

『腰巻おぼろ 妖鯨篇』の台本が書き上がった時、
李さんはどう思ったのだろうか。何でもない会話、
そこでやりとりされるせりふ一つ一つが過剰に長いこの台本、
読むだけでも大変、憶えるのはもっと大変だったと思うが、
強靭な李さんのことだから臆することなく立ち向かったのだろうか。

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4/27(水)3回目のワクチンを打つ

2022年4月27日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑軽く一発打っていかない?というくらいのニュアンスが感じられる。

今日は色々なことがありすぎた。
よって、ざっと記録を並べる。

朝起きてオリーブパンを食べ、7:30過ぎには出かける。
デプトフォードブリッジ近くのコミュニティハウスに行き、
早く仕事に行く親が学校が始まる前の小学生達を預ける施設とわかる。

ジェニーズカフェで朝食。
イングリッシュ・ブレックファーストがBill'sの半額。
メニュー構成は一緒だが、それなりの味だ。

アルバニーでソフィーのワークショップ。
ボランディアスタッフを一人で仕切り、約25人の高齢者を相手にする
ソフィーの凄みに触れる。まるでデイケアとアートの融合。

Deli-Xに行って昼食。ダニエルはいなかった。
パウンドランドでスラッグキラーを買い、
商店街で驚くほどの量の小銭を拾う。15枚で合計17ペンス。

ルイシャムでブースターを打つ。
あまりにいい加減なのでビビる。ウォーク・イン・ヴァクチネーション。
過去に何本、何を打ったかは自己申告。消毒ガーゼでの消毒なし。
パッケージに包まれているが、床に落ちた注射器もある。
打ったあとの絆創膏なし。15分待機なし。
記録のカードを後から見たら、名前のスペルが間違っていた。
これがルイシャム・クオリティ。

その後、ダイアンに頼まれた洗濯石鹸と、自分用のTシャツを買う。
さらに小銭を拾いながら家に接近、月に一度、家に納めるのが習慣と
なっているトイレットペーパーとキッチンペーパー、食器用洗剤を買い、
ATMで来月分の家賃をおろす。この作業は、毎度ドキドキする。
悪い輩がウロウロしているゾーンだからだ。

帰宅し、『腰巻おぼろ 妖鯨篇』の台本づくりをしていると、
帰ってきたダイアンから近所で火事があったと聞かされる。

19時過ぎに再び出かけ、ゴールデンチッピーでフライドチキンを買って
これを食べながら、マッチスティックパイハウスを目指す。

アダムや音楽プロデューサーのジョージと再会しつつ、
フォークソング同好会に参加する。いつもより求心力に欠ける。
お互いの演奏や歌をあまり聞かない感じだ。いつもより感心しなかった。
ただし、リーダーの歌は相変わらず凄い。あと、今までに見たことのない
ヴァイオリンの弾き方2種類に接した。

帰りに火事場を通りかかる。
10時間経った今もマンションの最上階の部屋が燃え続けていた。
鍵を家に置きっぱなししたことからドアをノックして帰宅。
今さっき、寝る前のダイアンから明日の朝も焼きたてクロワッサンを
買ってきて欲しいと頼まれる。倹約家の彼女が、自分によって
徐々に贅沢の味を覚えてきているような気がする。

左腕、少し痛い。

4/26(火)ロンドンに潜む危険の数々

2022年4月26日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑川口成彦くんが勧めてくれたジャン・ロンドーを聴いた。
チェンバロによる、瞑想的な『ゴルドベルク変奏曲』。
しかし、浮かれていられないのがロンドンの帰り途なのだ。


今日はガチの話題である。
最近、ロンドンに潜む危険についてダイアンが熱弁を振るってくる。

きっかけは、最近知り合ったペーター・フィッシャー。
日曜に行ったフィルハーモニア管の演奏会に彼はエキストラで
参加していたが(様々なオケによく呼ばれるようだ)、
特にショスタコーヴィチ7番『レニングラード』は珍奇なものだった。

というのも、大編成かつ長大さがウリのこの曲において、
ほぼ9割方埋まった客席によって場内の気温はどんどん上がり、
全員で朦朧とするような演奏会だったからだ。

おまけに、曲の静かな部分で客席のケータイ電話が鳴り響き、
しばらく止むことがなかった。こうなるともう全員ヤケクソになって、
アンサンブルは乱れるがとにかく爆音で盛り上がるというエンディングに。
客席は変に興奮していた。

終演後、ホールのバーで待ち合わせて、ペーターと一緒に帰ったが、
彼は新任の主席指揮者サントゥ・マティウス・ロロヴリが好きだという。
こっちは前任サロネンのファンだから、ストラヴィンスキーや
バルトーク、ショスタコーヴィチはエサ=ペッカの方が
向いているんじゃないかと伝えたが、ペーターはそうは思わないらしい。

まあ、サロネンの指揮振りを見る限り、彼の関心は大方
パーカッションと管楽器に向けられているから、
弦のペーターとしては不満に思うんでしょう?と訊いたら、
当たりのようだった。

サントゥは優雅な感じがしたので、『シェエラザード』とか
チャイコフスキーのバレエとかが聴きたいと言ったら、同意してくれた。
それに、あなたのアンサンブルの方が遥かに面白いと伝えたら喜んでいた。
実際にそうなのだ。

で、話題を戻すと、昨日ペーターがくたびれた様子だったのは、
ある事件が起きて、前日の眠れなかったからだ。

彼はニュー・クロス・ゲイトというAlbanyの近所に住んでいるが
彼の家の目の前で、夜中に銃撃戦が起きたのだ。
16歳の女の子が5発も撃たれて、それは大きなニュースになっている。

ペーターは「テリブル!インクレディブ!」と連呼していたが、
今日は今日で、カナダ・ウォーターで同じ家に住む女性3人と男性1人が
殺されたりもしている。

さらにダイアンによれば、一昨年にグリニッジ公園脇のジャズクラブ前で
高級時計をしていた男性が殺されたり、去年も20代半ばで小学校の先生を
している女性が殺されたというのだ。

他にも、80代女性が25歳の男性にラブレターを送りまくった末、
彼の奥さんを殺してしまうという怪事件まで、去年は近所で起きたらしい。
どうりで、ダイアンの警戒心が半端ないわけだ。

とりあえず、夜道で音楽を聴きながら歩くのをやめることにした。
誰かが接近していることに気づかないと危険だからだ。
なかなかの土地だが、来てしまったものは仕方がない。やれやれ。

4/23(土)わが友・ヤジード

2022年4月24日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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真ん中が彼である。いつも親切にしてくれるレストランのスタッフと。

今日は家にずっといた1日だった。
早朝にパン屋にクロワッサンを買いに行き、
それからはZoom会議が二つ。
朝に写真家の伏見さん、昼過ぎに津内口。
合い間にFacebookを投稿する。

最近は土曜日午前中の日課になっている。
この研修はさまざまな人の応援により成り立っているので、
少しでも日々の成果を伝えたいし、自分が立ち会った物事を
忘れないようにするためでもある。

洗濯などもするうちに3時になってしまう。
本当は散歩がしたい。このところ、ナンヘッド・セメタリーに
もう一度行きたいとずっと思っているが今日もそれはできなかった。
『腰巻おぼろ 妖鯨篇』一幕、佳境の長ぜりふの応酬にかなり時間と力を
持っていかれてしまった。結局、終わったのが6:30。

今日は8:00にAlbany近くのレストランを予約してあるので、
身支度してぼちぼち出かけた。語学学校入学時からの友だちヤジードが
来週末に国に帰ってしまうので、彼と食事することにしたのだ。

彼は一旦帰国し、秋からはアメリカの大学に入る。
お父さんは会社の経営者で、運転手付きのロールスロイスに
乗っているらしい。彼は12人兄弟の末っ子。
年上の兄弟たちはみんなお父さんの会社で働いているが、
ヤジードだけは医者になる道を選んだのだそうだ。

今はラマダンでもあるから、少し遅めの時間にして、
牛タンを焼いたのやパスタを食べた。
お腹が空いている彼は勢い込んで食べ始めたが限界は早かった。
このラマダンですっかり胃が小さくなってしまったと嘆いていた。

たくさんいる兄弟や、馬や車を買ってもらった誕生日の話、
お父さんの会社にいる7人の優秀な日本人の話を面白く聴いた。
日本に来たことがあり、道の綺麗さや和牛の旨さに感動したという。
厳格なムスリムの生活についてもいろいろ教えてくれた。

彼にとって英国での最後の1週間が始まるが、
お世話になったホストファミリーの家を出て、
明日からハイドパーク近くのホテルで過ごすらしい。
さすがセレブリティ。

帰り道、Albany周辺の街並みや行き来する人々にビビる彼と歩いた。
お金持ちの自信と、少年らしさが入り混じる。素直で面白い奴だ。
どうか良い医者になって欲しい。

4/22(金)悪魔の棲み家

2022年4月22日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑開演3分前。40人も入ればいっぱいの劇場。全部セットみたい。

今日は変な空間を訪ねた。
これまでも、地元民も立ち寄らないようなスペースを見つけては
突撃を繰り返してきたが、今日のは飛び切りだった。

きっかけはソプラノデュオのFair Oriana。
近所の教会で知り合った彼らが
先週のセント・バーソロミュー・ザ・グレイトに続き、
別の場所で同じプログラムをやると誘われたので、
カナダ・ウォーター近くの会場まで歩いて行ったのだ。
Albanyから歩いて30分強。

これが変な建物で、開館から50年近く経つフィルムセンターらしいのだが、
全ての空間が芝居がかっていることこの上ない。
小さな映画館あり、劇場あり、ライブラリーやカフェあり、
廊下もトイレも、時代劇に出てくるような衣装や仮面、
小道具の数々が溢れ、さらに映画のポスターが数限りなく飾ってある。
内装が内装が凝りに凝っていて少しの隙もない。

今日は空間の力に完全に圧倒された。
小さな劇場での配信主体のコンサートだったのでお客は少なく、
二人も歌い方をガラリと変えて贅沢な時間だったが、
この建物にはどうしてももう一度来たいと思った。
毎週火曜に古い映画を観るクラブをやっているらしい。

Albanyの人も知らないだろうから、誰か連れて行きたい。
それだけの魅力を持つ場所だ⑤。

しかし、興奮しながら約1時間の道を歩き、
ゴールデンチッピーでの買い食いもしながら帰宅すると、
ダイアンの意見はまるで違った。

私が見せる写真をしげしげと眺めながら、
「私はロンドンのあらゆる場所を知っているがこの場所は全く知らない。
それにこの内観の天井の低さは怪しい。きっと悪魔が棲んでいるから
気をつけろ」と、本気が冗談がよくわからない表情で言う。

彼女はかなり気になったらしくずっと写真を見ていたので、
それなら、毎週火曜に行われるフィルムクラブに行ってみようぜと
誘ったところ、「アツシはスウィーニィー・トッドを知っているか、
私はパイになるのはごめんだ」とも言っていた。

自分は必ずもうまた行くだろう。
どうやって経営が成り立っているのかよくわからないが、
とにかくすごい場所なのだ。

↓すべての廊下がこんな感じ
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4/21(木)靴を買い替える

2022年4月21日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑メールするのでDeptfordのカフェで会おうぜ、と言いながら写真を撮った
ヴァイオリニストのPeter Fisherさん。

渡英から3ヶ月を目前に、最近は疲れやすい。
歩いている時はどうということもないが、
授業中とか会議中とか、じっとしていなければならない時に
足の裏がむくんでいる感じがするようになった。

こうなることは予想していた。

英国には風呂がない。湯船に浸かることなど考えられない。
これは、外国で暮らす日本人がいだく定番の不満だ。
それから、私は2014年以降、劇団員だった禿の勧めで、
とある整体に月に一回お世話になってきたのだ。

それまでは、公演が終わるごとにくたびれていたのだが、
その先生に出会ってからは、調子が良くても悪くても月に一回は通い
コンディションが上向きになって平均化した。
ちょうど同じ時期に散歩したり走ったりする習慣を得たので、
それも良かったと思う。けれど今はその両方がない。

それに歩いていると、妙に石畳のゴツゴツを感じることに気がついた。
スニーカーを裏っ返してみると、すっかりゴムが削れて、裏面が直に
地面に接するようになっている。日本にいた時からややくたびれていた
ものをずっと履き続けてきたのだが、ロンドンの舗装は良くないし、
平均すると1日あたり13kmくらい歩いているので、
この2ヶ月半のあいだにかなりダメージを受けたのだ。

それに気がついてからここ1週間というもの、各地の靴屋を見て回った。
円安だし物価は高いしで節約したいのだが、どの店も底が厚くて
蒸れにくく、要するに歩きやすそうなものは高いのだ。

ところが、今日の午後、大英博物館を初めて訪ねたついでに
コヴェント・ガーデンに行ったら、良い靴屋があった。
すでに割引している上に、学割まで効くというお店。

踵の部分にエアーが入ったナイキのを選んだ。
博物館で古代ギリシャ文明に触れて唸ったばかりだったので、
NIKEにしようと思ったのだ。

センチとインチの換算もよく分っていないので、店員さんにそれを
話して何パターンか履かせてもらい、適切なサイズを決めた。
これまで履いていた古いのと別れを惜しみつつ、お店で処分して
もらうことにしたら次回使える割引券ももらえた。

その後てきめんに調子がいい。この靴でまた色々なとこに行ける。
何とか年末まで保ってくれると良いけれど、ダメだったらまたここで
割引券も含めたトリプルコンボで買おう。

その後、Conway Hallという伝統あるホールに行って室内楽を聴いたが、
これが良いものだった。雰囲気がとてもくだけていて、古今の作曲家が
つくったトルコをモチーフにした曲を次々に紹介するユニークなプログラム。
ある曲などは、演奏を始めてから少し経った時に、リーダーがストップを
かけ、初めからやり直した。「変なマスク(曲のタイトル)だったから」
というのが理由らしい。率直で人間的で、演奏一生懸命な人で、
これでいいのだ!という音楽と演奏への愛着が伝わってきた。

アンサンブルの中に日本人の方がいて休憩時間に話したら、
終演後にリーダーのピーターさんを紹介してくれた。

ピーターさんはAlbanyのあるDeptfordに住んでいるということだ。
Deptfordで会おうぜ! そんな話をしつつ撮ったのが、冒頭の写真。

4/20(水)ローエングリンとロシア人の友だち

2022年4月20日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑初日なので、演奏に緊張感があった。

昨日は渡英以来、2回目のロイヤル・オペラ・ハウスだった。
思えば、ロンドンに来て初めての観劇は『Theodora』というヘンデルの
どマイナーオペラで、街を歩くにも建物に入るのも緊張していたが、
たった3ヶ月足らずで慣れるものだ。
当日券を買うのも観劇前にコーヒーを飲むのも、パンだけは安くて
美味いグリニッジの店であらかじめ買って持ち込むのも板についてきた。

はっきり言ってロイヤル・オペラは高いし、
慣れたところでやっぱり場違いだし、身を切るような表現からは
程遠い場所だから、普段の演目を観たいとは思わない。
けれど、やっぱりイースターだったから、『ローエングリン』を
観たいと思ったのだ。

と、学校で言ったら、やはり先日から興味を持っていた
ロシア人のAさんが一緒にくることになった。
彼女は大変に個性的な人で、22歳でモデルの仕事をしているそうなのだ。
先日、突然にタイのバンコクに行って周囲を驚かせたが、
それも仕事での渡航だったらしい。

今日わかったことだが、学校を終えた後はいつもジムに行くそうだ。
さすがモデル。学校の中ではいつもピンクのスニーカーを履いていて
外に出るときは黒の革靴にかわる。教室の隅にある先生用の荷物置きに
勝手にそのスニーカーを置いていて、彼女が数日休む時には、
それを観てみんなが笑っていた。

そういうわけで、授業後に一旦別れ、それぞれの予定をこなして再集合、
セントラルを目指した。聞けば、彼女は毎晩セントラルで食事をしている
そうだ。グリニッジの辺は好きではないと言う。
こちらはホストマザーに教わったグリニッジの店の方が好きだと伝えたが、
セントラルのレストランが良いのだそうだ。

どうも、お金に余裕がある人のように思える。
劇場に着いて当日券を買い、自分は寝ないようにコーヒーを、
彼女は白ワインを飲んで一幕が始まった。酒強い。さすがロシア。
有名な前奏曲から始まる一幕をかなりの集中力で聴いていたが、
面白かったのはそれからで、休憩時間の終わりがけに電話がかかって
きたのでそちらを優先させ、結局は三幕まで戻ってこなかった。

驚くべきはそれからで、気まぐれに帰ったのだろうと思って、
優れた二幕、三幕終盤に集中していき、カーテンコールで拍手していたら、
電話が鳴った。なんと、劇場のバーにいるという。
しかも、行ってみたら英語の勉強をしていた。

・・・謎すぎる。
最安に近い席だったとはいえ、あれだけ熱心に観ていたのに3分の2を
不意にし、帰ったと思いきや、ずっと待っている。しかも英語の勉強をして。
深淵なるロシア。帰り道は、マリインスキー劇場に行った話を聴いた。

4/19(火)『腰巻おぼろ-妖鯨篇』〜超大作に挑む

2022年4月20日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑自分がクジラに最も接近したのはこの時。2016年8月。

イースターを利用してのんびりした。
語学学校もAlbanyもお休みなので、買い物しながら近所を巡ったり、
床屋に行ったり、教会を訪ねたりした。

日曜に行った教会がまた面白くて、見た目は古風なのだけれど、
新進の宗派によるもので、ずいぶん砕けたセレモニーだった。

スタッフも若いし、アコースティックコンサートのような集会。
親しみやすい楽曲を皆で合唱したり、踊ったり、
ずっと旗を振っている人もいた。

近所にある教会では、スタンダードなカトリックの素朴な儀式にも
参加できたし、セントラルにあるセント・バーソロミューでは、
ひときわ壮麗で厳粛な内観も体験できた。

そこに、昨日の経験も加わった。
一口に教会行事といっても多くのバリエーションがあるようだ。
考えてみれば、日本の仏教にもさまざまな宗派があり、
二十世紀以降に新たに誕生した分派もある。それらと同じだと感じた。

と、このようにのんびりして英気を養い、
昨日から『腰巻おぼろ-妖鯨篇』に着手することにした。
渡英前に作品集をコピーして持ってきたのだけれど、130ページもある。

あの『唐版 風の又三郎』でさえ100ページほどなのだから、相当に長さだ。
ノーカットだと4時間30分くらいかかるのではないだろうか。

作者である唐さん自身、『腰巻おぼろ-妖鯨篇』が一番長いと言っていた。
初演の稽古の時、劇団員たちは台本を「電話帳」とあだ名したそうな。
悪役に扮した唐さんが「油揚げ」300枚をつなぎ合わせた背広?を
着て登場したことでも知られる。クジラを扱う台本だから鯨油に
引っ掛けての「油揚げ」だと聴いた。
これが登場すると、紅テントの中にすえた油揚げの匂いが立ち込め、
雰囲気があったという。

こういう大作に落ち着いて挑めるのも、英国研修の効能だ。
日本にいると日々の仕事に追われて、一つの作品への集中を
維持し続けるのが難しくなる。だから、まとまった仕事の合間に
台本づくりを押し込む。一度、ちゃんと読んで、頭に入れてしまえば、
それについて考え続けることは難しくなくなる。

昨日から、1日あたり6ペーずつダイピングしながら読むのを始めた。
初めは全然進まない感があるのだけれど、日々の目標のことだけを考えて
とにかくクリアしていくと、気づけば中程になり、終盤になり、
幕を閉じる段になっている。いつもそういう感覚だ。
終盤は睡眠不足で目が霞んだり背中が痛む。
けれど、一本を踏破する快感がある。

こうしてゼミログに書くと、途中でやめられなくなる。
明日もその次の日も、自分に課したノルマを確実にクリアするようになる。
これもゼミログの効能。皆さん、いつも読んでくれてありがとうございます。

4/15(金)ミミのちから

2022年4月15日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑開演直前

昨日、いつもの通り語学学校に遅刻していき、授業を受けたところ、
放課に呼び出された。何か注意でも受けるのかと思ったら、
月曜に受けたテストの点がよく、昇級すべしと言われた。

冗談じゃない。この問題はマークシートのテストみたいなもので、
実は英語がわからなくても他所の問題を見れば解く方法があり、
それで正解を出してしまったのだと先生と事務スタッフに白状した。

そういうわけで内容をいかに理解していないかも伝えたら
大笑いされた。数週間で卒業していく周囲とは違い、
僕はゆっくりやらせてもらいます。
あと、遅刻をするのはホスト・マザーが素晴らしい人で〜
などと話して、これまでよりさらに深い理解をいただくことに成功した。
まことに良い学校、良いスタッフの皆さんである。

さて、Albanyではミミが忙しい。
イースターの連休を目前に、これからますます佳境に入っていく
各プロジェクトのために新人スタッフを迎えている。
彼らに働き方を教えるのもミミの仕事だ。
さらに、ヴィッキーやエマの家族や友人に不幸があったらしく、
彼らは劇場に出てくることができない。ために、ミミはますます
追い込まれた。そばでデスクワークしていたが、切迫感が半端なく
話しかけるもの憚られた。

しかし、昨晩は観劇の約束をしていて、
午後5時半には連れ立ってロイヤル・コート・シアターに出かけた。
それもあって彼女は、鬼の形相で仕事を片付けていたのだ。

ロンドンが地元のミミとの移動は楽だ。
おしゃべりしながらスイスイと劇場入り口に着くと、
観劇予定の何人かがミミに話しかけてくる。

この人は、いま売り出し中の劇作家でヒット映画のシナリオも書いた。
この人は、この劇場のスタッフで2カ月前に出産したばかり。
この人は業界のベテランで、制作も創作も何でもやるマルチプレイヤーだ。
この人は・・・

すでに地下にあるカフェのテーブルがミミによって予約されており、
夕食を食べた。そして客席に進みながら入場料はタダで済んだという。
席は2階席真ん中1番前の、要するに最VIP席。

素晴らしい友だちがいっぱいいるから、とミミ。さすがだ。
自分にとって2度目の観劇となるこの演目は大評判だ。
新しく登用された演出家がロイヤル・コートで成功を収めた、
そうミミが教えてくれた。

帰りにミス・ダイアンに教わった隣の高級カフェに飲み物だけ
飲みに行った。なるほど、ノエル・カワード、ベケット、
ジョン・オズボーン・ウェスカー・・・、様々な人たちがこの店を
訪れた写真、舞台のポスターや写真が飾られていた。
この店は初めてだったらしく、ミミも驚いていた。

良い指南役に恵まれたものだ。

他方、現実の世界に比べれば劇場や演劇の世界は小さい。
24時近くの帰りの電車の中で、ミミに、今日もAlbanyの近くで
キリスト像の前に立ち尽くして15分も動かない女性を見たと伝えた。

それから、お互いの国の政治や経済や風習の話になった。
別れ際、家に着いたら必ずメッセージをちょうだいと、ミミ。
ロンドンで危険な目に遭いやしないかと、こちらを心配している。
小柄なミミは、実に力強い。

↓COLBERIというカフェに終演後に行った。高いので一杯だけ。
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4/14(木)戦争の影響と買い物について

2022年4月14日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑T•K•MAXXボンドストリート店。日本にも支店が欲しいくらいだ。

冬物の衣類はかさばる。そこで、当初は冬物のみを持って渡英した。
ロンドンに着いたら数週はホテル暮らし、そのうちに住む家も決まる。
新しい家に定住したら、あらかじめ選んでおいた春・夏ものを
椎野が送ってくれる。そう思っていた。

ところが、ロシアとウクライナの戦争がこの計画を狂わせた。
現在、飛行機による国際便はすべて停止。船便ならOKだが
これには3ヶ月もかかるので、春が終わってしまう。

仕方なく、買い物に出かけることにした。
初め、ダイアンにはプライマークという店を勧められた。
ロンドンの物価は高い。例えば、春もののジャケットを買おうとすれば
100ポンド(16,000円)を超える金額がかかる。

自分はそんなお金を文化庁からもらっていない。
プライマークなら35ポンドで買うことができる。
が、しかし、お店に行って眺めたり触ったりしてみたが、
これがどうにも心許ない。何かペラペラのフワフワなのだ。

知り合いはみんな知っていることだが、私の身体は柔らかい。
柔軟性のことでなく、表面が妙にムチムチ、フワフワしているのだ。
これは遺伝の影響と、小さい頃から水泳を一生懸命やったからだと
思う。とにかく大人の男なのに幼児みたいな質感なのだ。
それで、いつも硬めの服を選ぶ。

ちなみに、室井先生が巨大バッタをやっていた時に昆虫=外骨格の
素晴らしさを盛んに訴えていたが、私は学生の頃からその意見に
個人的な意味で賛同していた。外側が硬めでありたい。

硬くて、作業しやすくて、底々フォーマル。
あと、ロンドンでのセキュリティー的に内ポケットがあることも重要だ。
そんな服がないかなと、スポーツ用品や登山用の服屋も巡った。

日々ダイアンには、なぜプライマークで買わないのか?
と訊かれるのだが、拙い英語ではうまく説明できないし、
プライマークを嫌がる気位の高い人間だと思われたくないので、
口籠るしかなかった。フワフワにフワフワが合わないんですよ。
とどう言えば良いのか・・・

が、ついに素晴らしい店を発見した。その名をT•K•MAXX。
ここは各種ブランドから売れ残りを引き取って扱う店なのだ。
10年前の新品。そんなものもある。
ブランドに興味はないが、多様な選択肢があることが私を魅了した。

初め、馴染みのルイシャム・ショッピング・センターでこれを発見し、
元々120ポンド(20,000円)する好みのものを12ポンドで買った。
だだし、この時のものは完全に夏物だったので、
系列の店舗がセントラルに2軒あったのを思い出し、さっそく回ってみた。
すると、1,500〜4,000円くらいのもので全て揃えることができたのだ。

家に帰ると、ダイアンにこの買い物を絶賛された。
プライマークより安く、良質だったからだ。
彼女はスタイリストだったから、ブランドや素材感にも詳しく、
洗濯しやすさにも敏感なのだ。

日本の業者からの買い物は航空便を使うことができる。
Amazon Japanで買った新書は5日で届いたが、
家から同期間で本を送ってもらうことはできない。
商用でない輸送が停止しているのだ。

結果的に輸送費より安くあがった。昨日から春服である。

4/13(水)死から復活までのあいだ

2022年4月13日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑セントラル。車いすで横断歩道無視する人がいて痛快だった。

これに書き忘れていたが、先週の土曜日のこと。
ナショナルのビッグレースがあるとダイアンに馬券を買いに行かされた。
自分も付き合い、Each Way(おそらく三単連)で買い、楽しんだ。
店員に「日本の学生です。ホストマザーのお遣いで初めて来ました」
と伝えたら、大笑いしながら代わりに記入してくれた。

ただし、これには問題があり、
結果的にダイアンのオーダーとは別の馬に賭けていたのだ。
彼女の馬が勝たなかったから良かったものの、
これで一着だったら大問題になったところだ。ヒヤヒヤした。

ところで。
語学学校の同級生、ロシア人モデルのアナスタシアはニーチェを
読んでいるらしい。『ツァラストゥラ』だそうだ。
話してみたら、ブルガーコフやトルストイ、ドストエフスキーも
読んできたそうだ。今度『ローエングリン』を観に行くと伝えたら、
一緒に行きたいと希望された。

イースターが迫り、毎晩イエスが死んでいる。
『スターバト・マーテル』はヴィヴァルディ、ドメニコ・スカルラッティ、
ペルゴレージ×3で聴き 、『ヨハネ受難曲』と『マタイ受難曲』は
2種類ずつ、ヘンデルの『メサイア』は苦手なのでパスしても、
毎晩のようにキリストの死に触れている。

さらに、カトリック系の教会で、
キリスト像に布がかけられているのを見ながらセレモニーに参加し、
帰りには松で作られた十字架をもらった。
家では朝食にホット・クロス・ブレッドを食べたり。
スパイスとドライフルーツを入れて、表面に十字の模様をつけたパン。

このパンは本当にどこでも売っていて、
格安スーパーでも気軽に並んでおり、端午の節句が迫ると
コンビニのレジ近くで柏餅を売っているのと似ている。

プロテスタントのダイアンが「最近のコンサートはどうだ?」
と訊くので「毎晩、ジーザス・クラウストが私の前で処刑されます」、
そう答えたら、大笑いしながら「来週の月曜には復活するから大丈夫だ」
と言っていた。

これが「神は死んだ」ということなのだ。
それでも人間は、繰り返しの毎日を新鮮に生きることができる。

↓教会でもらった十字架をダイアンはたいそうよろこんだ。
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4/12(火)最後の砦

2022年4月12日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑Lewishamショッピングセンターに行ったら、こんなものが。
ベルリンの壁だそうである。さすがヨーロッパ。しかしこの絵は・・・

渡英から2ヶ月以上経ち、思い立つことがあった。
ワクチンの3本目を打とう。

日本にいる皆さんのFacebookを見ていると、
何人かが熱心に副反応についてレポートしているのを見かける。
英国ではなんとなしに次のワクチンを打つ話を聞かながいが、
今後のことを考え、実行に移そうと考えた。

ワクチンを打つためにには、まず病院の登録をしなければならない。
イギリスの医療システムは、家の近所の病院に自分を登録するところから
始まる。自分の場合は、すでに日本にいた時に7〜8万円払ってあって、
これが健康保険料のような役割を果たす。
このお金を払ってあることも、英国ビザ発行の条件なのだ。
それだけの強制力がある。
あとは現地に来て病院に行き登録を済ますだけ。・・・だった。

初めはホテル暮らしだったので、そのうちに家を探し当てて、
そうしたら病院登録をすれば良いと思っていた。
ところが、こうしてミス・ダイアンのもとでお世話になること
1ヶ月以上が経過してしまった。その間、病院には行っていない。

やはり、人は病気にならなければ病院に行く気にはなれない。
だいたい、イギリスの人は病気になっても、大概は市販の薬で済ませn
治るのを待つのだそうだ。

おまけに、歯医者には気をつけろとも言われる。
日本にいた時、私がもっとも頻繁に行く病院は歯医者だったが、
今回登録するような国立の病院で歯科治療を受けた場合、
お医者さんによっては噛み合わせが悪くなったりするとも聞いた。

こうなると、モチベーションが全く湧かない。
入国するためにお金は払ったけれど実質が無いようなもので、
それで今日までサボってきたのだ。だいたい、渡英の直前直後にかけて
自分はどれだけのアカウントを作り、登録手続きを行なってきただろう。

その一々に疲れ果て、イラついていた私は病院のことを後回しにしてきた。
が、ブースターのためである。それはもちろんコロナに掛からぬように
するためだし、かかっても軽症にしたいと思う。そして、何かの拍子に
3回目の接種証明を求められることもあるかも知れないので、
余裕のあるうちにやりたいと考えたのだ。

果たして、グリニッジ公園近くの病院の受付に行って事情を話すと、
記入用紙とネットのアドレスを教えてくれた。
これを持って、近くの国立海洋博物館のカフェに移動し、
記入を始める。紙はいけたものの、ネットがよくない。
受付の女性が書いたアドレスが解読できないのである。

ロンドンではこういうことがよくある。
人の書いたアルファベットが読みづらい。内容以前に、
これはeかなrかなとやり始め、結局ヒットしないので病院に行って
また訊き、面倒なので病院の受付前のイスに陣取って、
そこで登録をさせてもらった。これにも時間がかかる。

〇〇という病気がありますか? 薬物や飲酒、喫煙習慣は?
という質問が延々続く。翻訳ソフトを使わないと、
そんなマイナーな単語にはついていけない。

と、ここまで来て、身分証と住宅の証明書が必要だというので、
家に相応しいものをとりに帰って、またすぐ戻った。
すぐに戻ります。私の家は近いのです!と言って。
戻ってきたら、受付の人たちは笑っていた。

こうして、力技で登録は成った。
1週間後には完了の通志が来て、ナンバーが授けられるそうだ。
1ヶ月遅れで、残った宿題を済ますことができた。

次は本題のワクチンに進む!

/8(金)

学校→Kings Crossで打合せ

→South Bank CenterでCarmina Burana


4/9(土)

Zoom打ち→洗濯→『鐡假面』本読み→馬券を購入

→Lewishamで服を買う→Albanyでライブ


4/10(日)

ジャムの交換→掃除→唐ゼミ☆WS

→Murcellaで食事→→Lewishamで服のタグを外す

→近所の教会のイベントに参加


4/11(月)

学校でテスト病院の登録→Eustonで情報交換

4/8(金)マルクスの墓参り

2022年4月 8日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑さすがのド迫力。頭のお鉢がデカい。人類を代表する頭脳といえよう

ここ1週間、語学学校ではディベートが盛んだ。
元ドラマーで、日本の大学に通った経験もある新米のビリー先生は
なかなかのアイディアマンで、生徒たちが楽しく授業に臨めるよう
準備に余念がない。

「幸せはお金で買えるのか?」という問いを立てて、
賛成派と反対派に分かれて議論を行う。
「世の中は金だ!」と言い切る外科医志望の青年がいて面白い。
決して迷わず、譲らず、臆面がないところが良い。教室が湧く。

ところで、自分が好んで霊園を訪ねていることを伝えると、
決まって勧められる場所がある。Highgate Cemetery。
ロンドンのトリップアドバイザーでも高位を獲得している霊園。
ここは何といってもカール・マルクスの墓所として有名だ。
自分にとってマルクスはコミュニズムの泰斗である以上に、
「お金」について考えた人という印象が強い。

「お金とは?」「価値とは?」
ディベートしながら大学時代に読んだ本を思い出していたところ、
ミミからメッセージが入り、午後の会議が中止になったと告げられた。

自分のいるGreenwichやDeptfordからHighgateまでは少し離れている。
電車で70分ほどかかる上に、午後5時には閉園する。
今日は晴れているし、もってこいのタイミングだった。

3時に目的地に着く。
途中、手前の公園でトイレを探していたら、小さなギャラリーを発見。
受付にいたスタッフと話しこんで思ったより時間が経ってしまった。
現代美術の作品や創作ドキュメントを記録したDVDや冊子が
たくさん置いてあって、規模は小さいけれどもBANKARTを思い出した。
・・・池田さん。

話をもとに戻すと、
Highgateの入口で受付のおじさんに入園料を求められた。£4.5。
学生割引なし。説明書きをもらって進んでいくとマルクスの墓があった。
巨大な頭がついていてわかりやすい。正直言って深刻味に欠けるが。
おじさんによると、像のついたこのお墓は移転した後のもので、
霊園の真ん中あたりに元々のオリジナルがあるとのこと。
これも一応、確認した。

途中ベンチに座り、30分ほどミミとZoomしたりもして、
1時間以上のんびりした。その間、30人くらいはマルクスのお墓参りを
していた。御供物のお花がいくらもある。

しかし、マルクスのお墓が名所になって入園料をとっているとは、
本人が知ったらどう思うだろう。思わずそんなことを考えてしまう。
観光地化されすぎている感もある。
自分としては、LewishamのNunheadの方が神秘的で軍配が上がる。

最後にもう一度、受付に寄っておじさんと話した。
日本人だと言ったら「中国人はけっこう来るけど・・」と珍しがられた。
どうしてロンドンにいるのか訊かれたので、政府の派遣で約1年滞在して、
Albanyで作品づくりとコミュニティワークを学んでいると伝えた。

それから、記念にポストカードを2枚選んで買おうとしたら、
有料のパンフレットと併せて「私からプレゼントしたい」言われた。
「君のコミュニティワークのために!」とも。

・・・さすがマルクスの墓所だけある。
キャピタリズムとコミュニズムが良い具合いにブレンドされて
帰り道は得した値段以上に清々しい気持ちになった。

Gustav Mahlerの娘さん、Anna Mahlerのお墓もたまたま発見できた。
自分のスマホにはお父さんが作った曲がいくつも入っている。不思議な感慨。

↓このおじさんに会えて良かった。
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4/7(木)YAHOO JAPAN! ニュース停止の衝撃!

2022年4月 7日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑バロックから後期ロマン派まで、ガッチガチのクラシックを一人で
歌い切った後、なぜか子どもたちをステージに上げてポップスの合唱を
したジョイス・ディドナート。ヤンキー・ディーバの異名は伊達ではない


昨日、4/6(水)を以って、YAHOO JAPAN! ニュースの
イギリスへの配信が停止してしまった。

人間とは愚かなもので、自分に不利な状況には目を背け
何故か楽観的に考えてしまう。2月に告知がなされて以来、
なんとなく危機を察してはきたが、そんなこと言っても、
なんだかんだ見られるんでしょう?と心に甘えを持ってきたのだ。

かくして4/6(水)当日。
朝は、普通に見られた。それから、見出しだけ見られるんだけど、
ニュースの中身は見られない。そんな状況になった。
この時点で、見出し見られるんだ!充分!充分!
などと、ちょっとラッキーに感じていた。

ところが午後になり、予告通り、完全に見られなくなった。
仕方がないので、ケータイにはNHKのニュースアプリをダウンロード。

こうなると、下らないなあ、などと半ばバカにしながら眺めていた
芸能ニュースを、自分がどれだけ楽しんできたか痛感している。
最近とみに激しくなった連ドラや大河ドラマのヨイショ記事。
「この図形は何のカタチに見える?」の心理テスト。
プロ野球ニュース結果、ひろゆきの本から抜粋した自己啓発系の記事。
桜情報に小林麻耶の暴走、小室圭の試験結果に至るまで、
なんだかんだ言いながら楽しみにしてきたのだ。

わざわざ自分から検索しにいく程ではないこれらニュースが無くなり、
これからのイギリス生活に、潤いが少し減るように思う。


今週に入ってから、午後はAlbany &地域調査、
夕方から観劇というルーティンが戻ってきた。

昨日はバービカンでジョイス・ディドナートの演歌歌手風コンサート、
今日はAlbanyで子ども用プログラム『SLIME』を観た。
オフィスでは、前より日常会話に入っていけるようになった。

フィッシュ&チップスはSKATEという魚が好きと伝えたら
大いに共感を得たが、パイ&マッシュの店でキドニーパイと
ジェリード・イール、それにチリ・ヴィネガーを鬼ほどかけて
常食していると言ったらドン引きされた。

この組み合わせはごく一部のコアな英国人のみが好むもので、
苦手な人が多いらしい。外国からやってきてふた月の人間に
「オレはクサヤと鮒ずし、豆腐窯が大好きなんだよね」と言われた
ようなものだろうか。美味いと思うけどな。

『黒いチューリップ』の台本打ちが約2週間で完了。
明日から誤字脱字チェックしながらまた読む。英国の室内灯は暗い。
目が疲れているので、ブルーベリーを買いにいかなければ。

4/6(水)I am a black woman.

2022年4月 6日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑近所のFordham Parkに石碑があって、お供え物が動物たちに食べられて
いた。リスやキツネを毎日見かける。

今日は"黒人"について書く。
昨日"宗教"について触れたので、今日は"人種"だ。
日本にいた時、こういう話題をどうして良いのか分からなかった。

一昨日、ロイヤル・コート・シアターで渡英後50本目の劇を観たが、
これが"黒人"についての芝居だった。1ヶ月くらい前、
ブッシュ・シアターで観た劇も黒人のサッカー少年3人のみの劇だった。

それに、最近はAlbanyとの関わりの中で調べ物をしている。
1981年1月に起きた「New Cross House Fire」という事件についてだ。
これにも人種の問題が深く絡んでいる。
Albanyから歩いて10-15分ほどのところで起きた出来事。

10代後半の黒人青年たち13人がホームパーティー中の火事で亡くなり、
これがきっかけで、大規模な人種差別撤廃運動が起こった。
警察当局の事件の処理の仕方に疑義が寄せられたためだ。

異人種が起こした放火や事故だったのではないか。
その上で、黒人の青年たちが自らの過失にされてしまったのではないか。
そういった疑問に対して、公式な見解は現在に至るまで、
当事者たちの過失で済まされている。真偽はわからない。
が、これが運動につながり、現在の社会を生みだす
大きなきっかけとなったのは確かだ。

この国が多様性を重視するきっかけとなった事件がここLeshamの
一画で起こった。それで、モニュメントや事件現場だった場所を
見て回っている。

日本にいる時、黒人の人を見ると正直ギョッとした。
慣れないし、たまにしか見ないから怖いし、驚いた。
知人が一人もいないので、距離感がわからなかった。

ところが、こちらに来て激変した。
まず、ミミのおかげ。それからチーフプロデューサのヴィッキーや、
技術スタッフの頼れる男ケイトリンもいる。
黒人の人といることがすっかり当たり前になった。

全体的な感想としては、体のバネやリズム感がすごい。
クラブイベントでちょっと体をゆすっているだけの姿を見て
「ほお〜」と見惚れてしまう。サマになっているし、
それくらい違いを感じる。

ただしミミは例外で、彼女は身体能力!というより知的で
いかにも育ちが良さそう。当たり前だけれど、人によって違う。

先日、シンポジウムで登壇したミミは、自己紹介で「I am a black woman.」と
言っていた。あ、こんな風に挨拶の中に人種の説明が自然に混ざるんだ!と、
ひとつ心がほどけた。ロイヤル・コートの劇の2回目はミミと行く予定。
黒人としての彼女がどう思うか、教えてもらいたい。

こうやって、信頼関係をもとにした一つ一つのやりとりの中で、
適切な距離感やエチケットを覚えている。

4/5(火)友のラマダン

2022年4月 5日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑気の良い二人!初めてできたイスラム教徒の友人。モスクに行きたい!

昨日は学校に行くと、アラビア語圏の友だちがグッタリしていた。
聞けば、ラマダンに入ったからだという。
「朝ごはん食べられないから、チカラでないよ」
と英語で泣きごとを言っていた。

完全に断食ではなく、夜中のうちは飲み食いできるというシステムだ。
これがきっかけになり宗教について話し込んだ。

自分は物見遊山的な興味でもって、聖書やコーランを読んだことがある。
高校が曹洞宗系の学校だったので、仏教、禅宗の本も少々。
ゾロアスターとかグノーシスの本も暇だった学生時代にパラパラやった。

特にグノーシスの、ニセモノの神様が自分をホンモノと思い込んでいる、
というくだりは深い。世界の真実の一端がここにある。

話を戻すと、一神教の中で、イスラムは後発の宗教だ。
ユダヤ教があってキリスト教があってイスラム教がある。神様は皆同じ。
そのために、コーランには特に聖書の反省が生かされているように思う。

というのも、聖書(特に旧約!)は物語から教訓を読み取るために
異常に多くの解釈を生んでしまうのだ。それが面白いのだけれど、
同時に多くの論争を生んだ。そこへいくとコーランは実践的だ。

日に5回お祈りするべしとか、より貧しい人に財を分けなさいとか、
利子は悪しきもの、とか。具体的。目の前で友だちが苦しんでいる
ラマダンにしたって、これはみんなのために健康法なのだと思う。
年に一回デトックスしましょう。ということではないか。

僕は演劇をやっていて、高校時代からギリシャの古典劇が好きに
なったんだけど、現在にこれらが伝わったのはアラビアの人たちの
おかげなんだ、と、そんな話もする。

ローマ帝国でキリスト教が国教化されたときに、
ギリシャの神々は数も多いし怪しすぎて排除したらしいのよ。
それで、一端アラビアで保管されて、十字軍との聖戦の中で
西ヨーロッパに古代ギリシャ文化がカムバック。ルネッサンスに至る。
君たちの断食のおかげだ!とか言って。

「オレたちがブタを食べないのは、ブタは不衛生だから食べると
病気になると考えているだ」とも教わった。
「現代のブタは衛生面で大丈夫だと思うよ」とこちらは答える。
それくらいにフランクに話せるところに、この学校の良さがある。
せめて君らの前では食べないようにするよ、と約束した。

同じムスリムでもラマダンの捉え方は人さまざまで、
「オレは働いているので週末だけで良い」というナイスガイもいるし、
「ラマダンなので1ヶ月間学校を休みます」という女子もいる。
この大らかさがギリシャの文化を延命させたのではないかと思う。

唐さんとアラビアといえば、どんな関わりがあるだろう?

(1)アリババ・・・アラビアン・ナイトの外伝より
(2)盲導犬・・・・ファキイルという名前
(3)海の牙・・・・シェエラザード
※(3)はバングラディシュ公演の影響と思われる
(4)鉛の兵隊・・・小泉政権下のイラク派兵がモチーフ
「ラマダンの三日月が夜空をしゃくる!」という名ぜりふ!

と、すぐに思いつくだけでこれだけある。

4/1(金)
学校→久々のAlbany出勤→WIGMOREでヨハネ受難曲

4/2(土)
掃除・洗濯→『鐵仮面』本読み
→『WOLF!』@Canada Water Theatre→買い物@Canary Wharf

4/3(日)
『下谷万年町物語』WS※電波とぎれがちで迷惑をかけ、凹む
→『WOLF!』2回目@Albany→Roth +London Sym@Barbican

4/4(月)
学校→Albany→New Cross House Fireの調査@New Cross
→For Black Boys......@Royal Court ※渡英後50本達成!

4/1(金)チョコレートこわい

2022年4月 1日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑この犬の絵がもっとも面白かった。

今日も方々に出かけた。

学校が終わってケータイショップに行き、これをひと月更新。

それから一度帰宅してZoom会議に臨んだが30分足らずで終わる。

拍子抜けしたところに机を見ると、ミス・ダイアンが残していった

フランシス・ベーコン展のパンフレットがある。

そこで突撃することにした。

とにかく5:00pmまでに入れば良いのだ。もちろん学生料金で。

 

このあたりの反射的移動が速やかになってきた。

頭の中に地図と路線図を思い描いて、最短距離を出す。

交通費が安くなることも考える。2ヶ月の成果だ。

 

まじまじ観たが、犬の絵がもっとも気に入った。

フランシスは、欲動が強くて、神経剥き出しで、

自分に振り回されっぱなしで生きづらい人生だったと思った。

が、ミス・ダイアンに言わせると、それ以上に周りを不幸にしたそうだ。

なんとも返答に困るやりとりを帰宅してから受けた。


『ベルセルク』『鋼の錬金術師』『ハンター×ハンター』など

多くのマンガがインスパイアされているのも感じた。

 

今日はもう一つ。

Sadler's Wells Theatreに行き

William Forsythe振付のEnglish National Balletを観た。

実に1990年年代的なトレンディなノリで、

まるでティーンたちの文化祭かダンスパーティのようだった。

もちろん、惜しげもなく披露されるテクニックの数々。

ガチガチの古典をやっているダンサーがたまにこういうのを

やると嬉しい、そういう喜びが溢れて、客席を巻き込んでいた。

大変な盛り上がりで幕を閉じた。


ところで、帰宅するとダイアンは盛んにチョコレートを勧めてくる。

ロンドンではキットカットなど安く大量に買えるので、

自分はつい手が伸びて、ズブズブになることを恐れている。


アイスクリームとチョコレートは大敵なのです。

と言い続けているのに、母の日のプレゼントにと息子が贈ってきたから

と勧めてくる。こう言われては断れない。


彼女は私が食べるのを見ながら嬉しそうだ。

こちらはフリで言っているのではない。

歯止めが効かなくなることを心の底から恐れているのだ。

人は、人が怖がることを仕向けてみたくたる。

そういう落語=古いコメディのお話が日本にあることを彼女に伝えたら、

笑っていた。


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3/31(木)Lewishamを歩く④ Deptford〜Brockley〜Forest Hill〜Honor Oak

2022年3月31日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑古き佳きダンスホール。現役だ。

4日目に歩いた場所の記録を残したい。
この日はAlbany周辺まで行き、皆は元気かな?と思いつつもちろん建物には
入らず、まっすぐに南下するコースをとった。

Lewishamエリア中央部分の南端Honor Oak、ここを目標にした。
かなり単純な道なのだが、延々と登りなのだと実感しつつ歩く。

このゾーンは国鉄の駅がいくつもあって、
面白いのは同じ路線の駅ではないことだ。
つまり、北西のロンドン・ブリッジ駅から放射状に線路が伸びているため、
自然と何本もの線路を渡る仕組みなのだ。

つまり、地元の人たちにとって、都心に出るには簡単だが、
東西の移動にはバスを利用することになる。

自分は物見遊山なので、ゆっくり歩きながら写真を撮る。
結論から言うと、この日に歩いた地域は完全に戦後の新興住宅地らしく
いずれも同じ規格の家がズラリと並んで、それが英国の人の気質により、
大事に大事に修繕されながら使われてきた印象だった。

日本人も物を大切にして始末が良いと思うが、
イギリスの人たちの物持ちの良さはかなり突出していると思う。

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↑この中が体育館化しているなんて、想像できなかった。

Brockleyで面白かったのは、覗いた教会だ。
先日、教会でStabat Materに感激してから、教会への垣根も取れ
むしろ、またあんな良いことないかなと積極的に除くように
なったのだが、ここでも意外な光景を目にした

覗いてみると、イスが取り払われて、
マットが敷かれた体育館状態の教会内で、
子どもたちが跳び箱や体操、ダンスの練習などをしていたのだ。

変なおじさんが覗いているわけだから、
レオタード姿の先生が走ってきて「何ですか?」と質問された。
「私は劇場で勉強している日本人だ」と答えたところ、チラシをくれた。
見れば、イースターに向けて出し物の練習中なのだ。
面白そうだから、これは見に行く。

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↑イースター、キリスト教社会では重要な祭典だ。

さらに南下するとForest Hillに出て、大きな霊園がふたつあった。
先日の墓地が良かったので覗いたが、こちらはかなり整然としたもので、
初回以上の驚きはなかった。が、より現役感がある分、バルーンや花文字で
「DAD」とあるなど、当地の人たちが亡くなった肉親に込める
想いの表し方を知れて良かった。

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↑霊園入口、ひっきりなしに車が出入りしている。墓参が盛んだ。

一帯の丘の頂上として、One Tree Hillという場所に出た。
東京でいうと戸山ハイツの箱根山的な雰囲気だが、
歴史的には古代ローマのブーティカ女王がここで現地人に敗戦したり、
エリザベス1世がここを訪れたり、第二次世界大戦中は、敵の飛行機を
撃ち落とす砲台ともなったらしい。

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↑これで撃ち落としていたのだろうか。

そしてHonor Oak。
ちなみに、語学学校の同級生である超お金持ちアラビア人青年は
この地に下宿しており、翌日「なぜ来ることを教えてくれなかった?」
と責められた。語学学校の生徒たちは、みな自分より郊外に暮らしている。
うちはアクセスも良いし、街場も近い上に自然にも恵まれている。

何より、生粋のロンドン人かつ芸術に精通したミス・ダイアンがいる。
友人たちはみな愛情を以ってホストファミリーに迎えられているようだが、
自分は相性の面で恵まれたと思う。

帰りは、スタスタと下るだけだった。
巡っていた中でぶっちぎりで変な町がCatfordであることは揺るがない。
あとは、南西にあるCrystal Palaceを訪ねればLewishamひと通りだ。

3/30(水)ウナギがなんとかしてくれる

2022年3月30日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑右がジュエリー・イール(ウナギの煮こごり)
紅茶の付けて1,400円くらい。豚骨ラーメン1,800円がいよいよ変だ。

今日は疲れている。
連日の遠足で疲労が蓄積してきている。
さすがに一日20キロを連日はやりすぎだったか。
そこで今日はライトに、元気になる話題を。

日本人が死ぬ前に食べたいものは鰻丼だそうだ。
ほんとか!?と怪しんできたが、最近その気持ちが分かる。
だからと言うわけではないけれど、渡英前、浦和まで行って鰻を食べた。

最近、ウナギに対する思いはイギリス人も同じだと知った。
体調を崩したミス・ダイアンに、ウナギ買ってきて!と頼まれたのだ。

ロンドンではより身近にウナギがある。
フィッシュ&チップスと並んで庶民的な料理にパイ&マッシュがあるが、
その付け合わせで、ぶつ切りのウナギを酸っぱく煮たものが
トッピングできるのだ。そして、ここが肝心なのだが、
通常は温かで食べるこの煮ウナギを、
冷たい状態で食べるのがネイティブなのだ。

ウナギは英語でEelなので、「ジュエリー・イール・プリーズ!」
と言えと教わった。周囲にまといつく煮こごりが宝石のようだと
いうことらしい。

これは美味い。チリヴィネガーをたくさんかけて食べると尚うまい。
酸味もあるし、疲れたらこれだと思うようになった。

ついでながら、英国の人は揚げ物によく塩と酢をふりかける。
酸の取り方が上手いようだ。風呂で身体を温められないので、
疲れの抜きかたを確保し、長期滞在に向き合っている。

他に、
ミキス・テオドラキス作曲のギリシャ音楽を聴いたり、
フォークソング同好会に顔を出したりしている。
遠足の成果はまた明日!

3/29(火)タルコフスキーが教えてくれた

2022年3月29日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑休憩時間に話を聞いた。こんなに達者な人たちが身近にいるなんて。

3/27(日)からイギリスはサマータイムに入った。
この日だけ1日23時間にして、今後の日照時間を有効に使う工夫と
理解している。当日はすっかり忘れていて、朝起きた時はいつもより
長く寝ることができたと思った。そこから身支度をして
ワークショップのためのZoomを立ち上げると、誰もいない。

おかしいと思ってしばらく待機していると、
ミス・ダイアンが時計を1時間繰り上げてくれと頼んできた。
一気に事情が分かった。これからの日本との時差は8時間。

3/28(月)は面白いことがあった。
学校を終えた帰り、たまたま一緒になったエリザベス先生と歩きながら、
先週に彼女の住まい周辺を歩いたことを伝え、セメタリーの面白さを
話し合った。彼女も好きらしい。次はHighgateに行くべきねと教わる。
カール・マルクスのお墓で有名な墓地だ。

それから床屋に行った。英国で2回目。前回とは違うところ。
寝落ちしたら"Don't sleep!"と言われた。日本ではこちらの状態に
床屋さんが寄り添ってくれるが、ロンドンでは彼が髪を切りやすいよう
こちらが合わせるのだ。まことに厳しいが郷に従う。

さっぱりして家に向かった。
昨夜・早朝と書類を作ったので少しのんびりしようと思ったのだ。
それで坂を登って行ったが、気になって、家の直前にある教会を
初めて覗いてみた。教会は開門していればウェルカムだと聞いたけれど、
慣れないのでなかなか緊張する。

けれど、すぐに入って良かったと思った。
オルガンとヴィオラ・ダ・ガンバを弾く男性が合わせて二人、
歌手の女性が二人の合計4人で演奏会の練習をしていたのだ。

お客さんは自分だけ。
アルトの女性が歌っていたので、手の空いていたソプラノの人が
相手をしてくれた。フランスの古い歌を歌っているらしいが、
かなりレベルが高い。教会の反響によるハーモニーが抜群。

席について聞き惚れていると、アルトの人が寒さを気にし始めた。
ソプラノの人が「温かいお茶を淹れてくるね」と。
すっかり魅了されたので、思い立って坂のふもとに走り
いつものパン屋でマドレーヌを買ってプレゼントした。
今日のチケット代ということで。そこで5人で少し話ができて、
今度の演奏会の情報をメールしてくれることになった。

オルガンの人は東日本大震災前の日本に来たことがあるらしく、
当時、心を痛めたそうだ。写真を撮らせてもらって、練習再開。
イントロを聴いて驚く。
ジョバンニ・バティスト・ペルゴレージの『スターバト・マーテル』
いつか生で聴いてみたいと20年来おもい続けて来た曲だ。

アンドレイ・タルコフスキー監督作品の中でも特に好きな『鏡』の
中で使われた音楽だ。この監督は曲使いの名人で、
ヘンリー・パーセルの『インドの女王』、
バッハの『ヨハネ受難曲』や『オルガン曲BWV639』など、
大好きになった曲をいくつも教わった。

特にペルゴレージはいくつもの録音を聴いてきた。
それが突然に始まったのだ。呆然としながら練習の区切りで、
感激したこととその理由を伝えずにはいられなかった。
「excellent!」と言って向こうもよろこんでくれた。

本番は4/10(日)18時からだそうだ。必ず行く。
コンサートホールとはまた違った格別の体験だった。
たまたま入った教会で、ずっと聴きたかった曲を聴けるなんて。
音楽を進行させながら、失敗を笑って乗り越えながら工夫を重ねて
掛け合っていく姿が、本番では体験できないステキさだった。


先週末から週明けまでの動きは下記の通り。

3/25(金)
学校→本読みやWSの準備→Brackheathでギャビンやミミ、
ミミのパートナーとピザを食べ→ホールでポップスコンサート

3/26(土)
テツヤとの配信→『鐵假面』本読み→Lewisham Art Houseで
インスタレーションを観る→Southbankで『ヨハネ受難曲』

3/27(日)サマータイム始まる
『下谷万年町物語』WS→掃除・洗濯→Notting Hill GateでCD買う
→Oxford Sircusで半袖シャツ買う→WigmoreでSixteen→
帰宅後、母の日のプレゼントをミス・ダイアンに渡す

3/28(月)
学校→床屋→近所の教会でPergolesiの練習を聴く
BarbicanでMikis Theodorakisのギリシャ音楽を聴く


毎日『黒いチューリップ』に取り組んでいる。現在、二幕序盤。
まだまだこれから先が長い!

3/25(金)Lewishamを歩く③ Deptford〜New Cross Gate〜Peckham

2022年3月25日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑グリニッジで馬に乗る警察を見かけた。

今日も歩きに歩いた。

語学学校を終えて、一度帰宅した。
ミス・ダイアンにお使いを頼まれたのだ。
彼女は体調が良くないので、代わりに郵便局、スーパー、薬屋を
巡ることになった。紙に書かれた指示に従うだけだが、
おかげで、こんな近くに郵便局があることを知ったり、
便利なドラッグストアの存在に気づいた。

イギリスのスーパーで野菜を買うのも初めてで、
彼女のメモを頼りに店員に訊きながら買い物をした。
Rochetというのはルッコラのことだと分かったし、
人参は本数ではなく、重さでの買い物なのだと学んだ。
大きい方が得だろうと買った人参は、ダイアンには大きすぎた。

薬屋では、すでに電話でのオーダーもなされていて、手紙を渡せば
一式揃えてくれたが、店員が入れたティッシュペーパーがダイアンの
想定と違い、あとで返品した。返品する時に一旦断られたので、
店でダイアンに電話して、スピーカーフォンで直接会談してもらい
ことは成った。平日の午後に家の近所にいるのが初めてなので、
また違った風景が見える。聖アーシュラ女学院の女子高生たちが
紙切れ片手に大声で電話している。「国語9!数学9!・・・」
成績が出たのだろう。色気が全くないワイルドな女学生たちには
元気いっぱい。未来を切り開く元気が備わっている。

ここから散歩。
The AlbanyのあるDeptfordを少し南下すると、東西に走る道路がある。
交通量が極めて多く、国道246に似ている。多くの種類のバスが走る
ことからも、かなり重要な道路であることがわかる。
この道を主流に各地に枝分かれしていくことのだ。
今日はここを西進する。

「一品行YIP」という店があって、小さいが、ここはアジア-日本の食材が
たくさんあった。考えてみたら、横浜でもっとも韓国の食べ物が
揃うのは福富町の小さな店だ。将来、困ったらここに来よう。

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↑醤油、味噌、酢、みりん、海苔...etc。日本食を振る舞うときはここ!

国鉄New Cross駅を越えると、Deptford Hallというのがあった。
残念ながら扉が閉まってて入れない。

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さらに歩くとGoldsmiths University
という大学があった。かなり変な建物。中の様子が丸見えなガラス多用の
デザイン、きしめんが舞うようなオブジェ。後でダイアンに訊いて分かったが
芸大だそうで、かのダミアン・ハートの母校らしい。

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New Cross Gateが栄えているのに驚いた。通り沿いの商店、
大型スーパー、ここが特に交通の要所であることがわかる。

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↑近くに美味そうなハンガリー料理屋を発見

New Cross Bus Garageまできたところで、進路を南に切り替える。
Nunhead Cemeteryという墓地が見たい。イギリスの一般的な霊園が
どうなっているのか知りたかったのだ。坂を登って峠を越えながら、
途中、Telegraph Hillという公園を通った。斜面にある芝生や遊具で、
子どもも大人もよく遊んでいる。日光浴の数の多さ。
ジャグリングの練習に励む青年もいた。

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Nunhead Cemeteryは今日の一番の収穫だった。
地下で眠っている人には申し訳ないけれど、お邪魔させてもらった。
ランダムに点々とする墓跡の様子、水平すらとっていない英国のお墓の
様子に文化の違いを感じた。

朽ちた煉瓦造りの礼拝施設が立ち入り禁止になっていて、
タルコフスキーの映画のようだった。日没も迫り、園内はひんやり
していたが、ジョギングする若い女性が猛スピードで駆けていった。

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↑Nunhead Cemeteryの入口。正面にメインの建物。両側にお墓が点在。

住宅もお墓も、日本と英国では発想が違う。
塀を信じる日本。壁しか信じない英国。
このところ体験している、ミス・ダイアンが自宅に施すセキリュティの強さ。
閃くものがあった。

進路を戻して国鉄沿いに歩き、Nunhead駅を経てPeckhamに着く。
途中、集合住宅の共有施設では、空手の稽古帰りの少年たちや、
小さな体育館でエアリアルの練習をする女性を見た。

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Peckhamは都心に近く交通の要所でもある。
Deptfordをさらに大規模にした雑然さに充ちている。
エリザベス先生の家はこの辺と聞いたが、彼女の通勤経路が想像できた。
時おり遅刻をするわけだ。帰路はバスで。ダイアンの望むティッシュは
明日に持ち越しだが、駅のフリーペーパーは手に入れた。

一旦、家に帰り、改めて9:00pmに出かけた。
ORIVER'S JAZZ CLUBが家から5分のところにあり、
有名な老舗なのだとエリザベス先生が教えてくれたのだ。

ダイアンにこれを伝えたら、あそこのオーナーはミスター・セックスだ。
同性愛の人がいっぱいいるから気を付けなさいと笑いながら言われた。

が、店に入ると客は10人ほどで、演奏もまあまあ、
夜中まで付き合うわけにもいかないので、ある程度で引き上げた。
週末にまた行って、この店の真価を知りたい。

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連日20㎞以上歩く。なんだかお遍路さんみたいだ。

1月末に渡英して以来服装が冬のままだが、昼間に歩くと汗ばむ。
が、飛行機を使った国際郵便が戦争の影響で停止中らしい。
春や夏のものを買うしかないか。と悩んでいる。

3/24(木)Lewishamを歩く② Lewisham〜Catford〜Bellingham

2022年3月24日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑初めて、Lewishamより南に行く。あのトンガリつくるのは大変そう。


今日もよく歩いた。


早朝にBanKARTの池田修さんの訃報が届いて混乱する。

年末に会ったのが最後だった。KAIKOがオープンしたばかりなのに・・。


池田さんは常にいろんな企画を進行させていたけれど、

年に一度ほどご自身の好みを全開にした催しをやっていたと思う。

その仕事が好きだった。原口典之さんの展示の時は何度も通った。

「やっぱりファインアートすごいよね」

と言う池田さんが可笑しくて、でも本気で同感した。

劇団もしんどい時期に助けてくださった。


結婚する前、元旦に帰省するため新幹線に乗ったら、

同じ自由席に手ぶらの池田さんがいた。自分は名古屋で池田さんは大阪。

大晦日にBanKARTで宴会をやって、翌朝に帰省するところという。

現場が好きで、スタッフやお客さんといるのが好きだと言外に伝わった。

ちょっと寂しがり屋な感じを受けて、また別の意味で池田さんを信頼した。

・・・・・。


日本に電話したら止まらなくなってしまった。

室井先生の研究室が閉じられる日でもあったのだ。

もうとっくに卒業したはずの学生時代がもう一度終わってしまった

という実感に驚く。いまだに先生に依存する心があるのだと実感。

もう40歳過ぎているのに。18-34歳までのあまりに長期間、

一緒にいたから言い尽くせない。


椎野やKAATの眞野さんにも電話した。

色んな人に世話になりまくっている・・・


遅刻して語学学校に行く。

新米先生が日本に留学して名古屋に滞在していたと分かり、

授業後にいろいろと話した。その後、ミス・ダイアンに頼まれた

買い物をして一度帰宅し、すぐ散歩に出かけた。



ここからが本題。今日はLewisham駅から初めて南下する。

すぐに新興の住宅地になって、生活に余裕アリというゾーンが広がる。

Lewisam Hospitalの裏に広がるLadywell Fieldsという公園。

子育てしやすそう。こちらの人は日光を大事にする。ピクニックが上手い。


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↑遊具コーナーには柵がある。親は楽だろう。


さらに南下して30〜40年前の新興住宅地を抜けると

面白い街に出た。Catford。初めCatfoodにしか見えなかった。

巨大なペット用品店でもあるのかと思った。

かに道楽のカニくらいのサイズで巨大な猫もいたし。

懐かしい雰囲気の活気ある商店街。


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↑絶対にFOODだと思っちゃう。


築90年のBroadway Theatreも発見したが、

改装中のようだった。後でミミから、設備にいろいろ問題があって

改修がうまくいっていないと聞いた。


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↑改修中のBroadway Theatre

交通もメディアも未発達の時代に地元に貢献してきたであろう威容。


さらに南下し、巨大なカー用品店や洗車場がいっぱいある地区に出た。

店も国道沿いの感が強い。16:00前にBellinghamに着き、

国鉄で移動しようかとも思ったけど、やはりバスでLewishamに戻った。

今日行った地域はおしなべて横浜の本牧的だ。後からできた街の雰囲気があり

整然とした住宅地や巨大なお店がある。



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↑Bellinghamの国鉄。都心まで30〜40分ほど。


ショッピングセンターのカフェで16:30からミミとzoomで話す。

「まだ西に行ってないんだけど、貧しくて治安が悪いのって

LewisamとDeptfordだけ?」と周囲に慮って小声で聞いたら、

ミミに爆笑された。ほぼYesという返事だ。


最近、ミミの話をしてよ、とお願いしたら、

彼女は大学時代に舞踏に興味を持ち、ダンサーの先生に教わったことを

教えてくれた。土方巽も大野一雄ももちろん知っていると言われて、

唐十郎門下、元上星川住民の血が騒ぐ。自分はミミの役に立てる!


オレが気に入りの蕎麦屋で食べていると、大野先生の家から

出前の電話がかかってきたものだ。そう伝えてまた笑われた。

将来、ミミを日本に呼びたい。ここでしてもらっていることの

お返しを少しでもできたら、どんなに良いだろうと思う。


ところで、Zoomのためにカフェのテーブルにパソコンやケータイを

出すことには緊張感がある。警備員さんのいるセンターの中だから

大丈夫だろうか? 一店舗ずつのカフェの軒先だと場所によっては危険?

そんな風にビクビクしながら、初めて家と劇場ではない場所でZoomした。

カバンは常に視界のうちに入れる。


もう一つ、忘れないように書いておきたい。

ショッピングセンターを出たところで、電動車イスのダウン症の女性と

すれ違った。男性二人がお世話していた彼女は30歳過ぎくらいだろうか。

ふと見ると、車イス付属の荷物入れにビニール製の赤ちゃんの人形が

覗いていた。一瞬で打ちのめされた。


夕方からはセントラルに行き、書店FOYLES本店→Charing Cross

→Southbank Centreに行って帰宅。

3/23(水)Lewishamを歩く① Brackheath〜Lee 〜Lewisham

2022年3月23日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑グリニッジ公演の南端に戦没碑があった


今日から午前中は学校に行き、午後は散歩することにした。


そもそもロンドンは32地区に別れており、Lewishamはその一つ。

研修先のThe Albanyはロンドン市が行ったコンペに勝って、

劇場が地域を盛り上げるためのフェスティバルを2022年を通じて

行なっている。それが「WE ARE LEWISHAM」だ。


自分としては、一度、区内をくまなく歩いてみたい思った。

月曜の朝シンポジウムで、久しぶりに多くの劇場スタッフに

まとめて会ったが、何人ものスタッフに「アツシはいつも劇場にいる」

と言われた。一通り顔見せは済んで馴染んだようだし、

今度は、この劇場が盛り上げようとしている地区を肌で感じてみたい。


どんな地形で、どんな歴史を持ち、どのような人たちが住んで、

地区の雰囲気がつくられているのか。歩いて把握する。

大通りだけでなく、住宅街にも分け入って、民家や学校を眺める。

家や庭の様子や子どもたちを見れば、そこに住む人が想像できる。

商店にも入って、美味い店も見つけたい。


考えてみれば、KAATでも初めにこんな動きをした。

神奈川県は広いから、車を調達して走りに走った。

イギリスでは車がないがその分狭い。徒歩で十分だ。


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↑庭が広い。高級車がたくさん。


Greenwich Westにある語学学校を出て南に進む、

登りを経てBrackheathへ。ここは有名な観光地だが、

行ったことのある中心をわざと避けて、区の境界ギリギリを歩く、

高級住宅地だ。庭は広く、高級車がいたるところにある。

学校の広々としており、いかにもお金持ちの子弟がバスケットボールを

していた。


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↑新築のマンション群


高級マンションが次々と新築されている様子で、

公園にはユニークな遊具があった。

さらに南進してLeeを目指すと、もう少し落ち着いた

昔から裕福な人たちが住み続けている雰囲気に切り替わる。

新築エリアには生活感がないが、住み慣れた居住まいの良さを感じだ。


国鉄Lee駅は周辺にだけお店があり、広大な公園と住宅街だった。


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↑Lee駅前。「WE ARE LEWISHAM」のフラッグがあった。


この場所が自分にとって重要なのは、

好きな詩人で小説家のErnest Dowson(1867-1900)の出身地

だからだ。唐さんも好きな「酒とバラの日々」という言葉は

彼の詩による。同名の映画が作られたのを唐さんは観て

『二都物語』二幕にこのタイトルをつけた。


自分は20代の頃に岩波文庫から出た短編を読んで気に入り、

翻訳で読めるものは読んだが、土地柄を見て彼の原点を実感した。

彼が生まれる前年に国鉄開通。地方の商人がロンドンで商売を

するために屋敷を構えたこの場所には豊かな邸宅が多い。

けれど、すぐ近くにLewishamというワイルドな一帯を見下ろす。


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↑Bwlmont Groveという地域。この丘のあたりでダウスンは生まれた


金持ちしか知らない金持ちと、貧しい人々を知っている金持ちは違う。

ダウスンは後者ゆえにあのような作風になったし、身を持ち崩して

破滅していくやり方を、小さい頃から体感していたのだと思う。


それにしても、何人かのイギリス人にダウスンの話題をふったが、

誰も彼を知らない。ミミも知らいという。

今度セントラルに行ったら、本屋で本を探したい。

小説には英語力が追いつかないが、詩なら辞書を引き引き味わえるかも。


Lee一帯は今日の気候の良さも手伝って、別荘地のような優雅さだった。

そこから北上しLewisamを経て帰ってきた。

途中、ダイアンに頼まれた買い物をしたりして。

合計10マイルちょっと歩いた。

3/22(火)まちなかで祈る人々

2022年3月22日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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ロンドンの町で目につくものがいくつかある。
まず、ゴミ箱。やたらたくさんあって、でも道路はゴミだらけ。
一体誰がどうやってあのゴミ袋を一つ一つ取り替えているのか、
よほど早朝の仕事なのだと思う。

あと、床屋。
床屋、美容院、こういったものは本当によく見る。
自分は床屋にすでに一度行ったが、耳のうぶ毛を除くため
お線香の炎のようなもので耳を炙られてびっくりした。
確かにキレイになったが、それにしても熱い。
ネイルサロンもよく見るし、お客が常に入っている。

緑も多い。ここは確かに都会なのだが自然が大切にされている。
住宅街の中によく芝生や花壇を見かけるし、広くて美しい公園が多い。
こういうところでお金をかけずにリラックスして休日を楽しむ方法に
英国の人は長けている。

そしてやはり、教会。
これは、かなり立派なものが数多くある。
一軒一軒見応えのある建築物で、基本的に日中は解放されており、
土曜日には無料のコンサートが行われる。
こういう体験を通してバッハやヘンデルが身近なのだろう。

街中にトイレは少ない(駅にもない!)。教会はお手洗いを
借りられる数少ない場所でもある。

自分のいるAlbanyの近くには、ワイルドな商店街沿いに
小さな教会があり、軒先に十字架にかけられたキリスト像がある。
この像、誠に申し訳ないが少しチープで、とても神々しく見えない。

けれど、劇場の行き帰りに、熱心に祈る人をよく見かける。
夕方など、みじろぎもせず、ほんとうに一心に祈っている。

像がおもちゃみたいだからこそ、この光景はかえって尊く感じる。
この地域が、決して裕福な人たちのためのエリアでないこと、
周囲が雑然としていることが、祈る姿をいっそう峻厳にしている。

ひょっとしたらそれはこちらの思い込みに過ぎず、
「息子の受験をよろしく」「トトカルチョが当たりますように」などと、
私たちが神社でするのと同じようなお願いをしているかも知れない。

貧富の激しいロンドン、多国籍が入り混じるこの地域だからこそ、
お祈りがそんな風に、例えば生存ギリギリのものでなければ良いと思う。

先週末から週明けの動きは下記の通り。

3/18(金)
学校(エリザベス先生最終回)→AlbanyでRomicaと話す
→St Martin Churchで"Dido and Aeneas"を初鑑賞、外はデモの騒音

3/19(土)
写真家・伏見さんとzoom打合せ→洗濯→劇団本読み『鐡假面』
→KAATの同僚たちが仕事で成果を出していて嬉しい
→Dolden Chippyでエビフライ→Albanyで05FEST最終日"Rap Party"

3/20(日)
本読みWS『下谷万年町物語』第7回→掃除→Murchellaが満席
→Dolden ChippyでSkate→AlbanyでJazz Live"Love is Attention"

3/21(月)
午前中、Albanyでフェスティバルのためのシンポジウムに出席。
そのために語学学校を休む。ダイアンの体調が悪そうなので、
午後は帰宅して買い物などする。方々にまとめてメールを送った。

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3/18(金)ジェットコースターな1日

2022年3月18日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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みな楽しく喋っている。ついていけない自分はこのレモネードと対話。
飲み干すとすることが無くなってしまう。時間をかけてチビチビやる。


昨日はアップダウンの激しい一日だった。

まず、日本の地震が心配だった。
その上、KAATの仕事のうち渡英後も継続しているものに問題があった。
相手のあることでもあるから、連絡をしてはウトウトして返信を待つ。
そんな風に前夜から明け方までを過ごした。

いつもなら直接押しかけて解決してきたのに、今回はそうはいかない。
横浜国大の後輩でもアシスタントの小野寺さんが助けてくれた。
大人になった彼女を頼もしく感じた。

そういう滑り出しなので、予定の捌きが後手に回る。
すでに打ち終えた『唐版 俳優修行』の2周目熟読がままならない。
この作業が十全でないと不完全燃焼になり、一日が重く始まる。

学校への道も電話が続くのでやや遅刻気味。
冒頭30分は、先生や級友の話が入ってこない。
頑張ってスイッチをオンにしなければ、まだまだ英語は厳しいのだ。
1時間ほど過ぎたところから、なんとか持ち直した。
放課の間、いつもなら台本に向かうが、この時間も日本との電話。

授業の後半パートは音楽に関するプロジェクト。
失恋した時、元気な時、ホームシックな時、何かに挑戦する時、
さまざまな状況に応じてどんな曲が聴きたいか、というお題なので、
パソコンを出して即席DJをして遊んだ。

唐さん直伝の『悲しき天使』とかシャンソンやカンツォーネを
混ぜたりして。ポール・アンカやヴィソーツキーも紹介した。

ちょっと癒されたところで、良いことがあった。
授業後にエリザベス先生に声をかけられて少し話ができた。
来週から次のクラスへの進級を告げられたのだけれど、
それは大した問題でなく、お互いに人間的な話ができたのだ。

それから劇場に行って、ミミに会えた。
会議もしたけれど、ちょっと疲れているせいもあって、
なかなか話に入っていけない。終わった後に気になったことを
質問したら、自分の理解にトンチンカンな部分があることがわかって
内心落ち込んだ。加えて、目の前のミミはとても忙しい。

親切な彼女はカフェに誘ってくれて、目の前にいるのだけれど、
次から次へとやってくるメールにも対応しなければならず、
時間のかかる自分との会話に縛り付けるわけにもいかない。

流れで、今日はAlbanyで二日連続で同じ芝居を観ることにした。
セントラルに行くにはコンディションが悪すぎるし、
昨日はギャビンと観たこの芝居が自分には難しかったので、
もう一度トライしたら理解がマシになるかも知れないと思ったのだ。
それに、ミミも今日観るつもりだという。

ところが、今度はそこへAlbanyの他のスタッフがやってきて、
ミミも含めた彼らは高速イングリッシュトークへと突入したのだ。
こちらは自分に鞭をくれて残るすべての力を聴力に託したけれど、
典型的な外交人の疎外感を味わった。
自分がいるために皆がやりづらくならないよう、
取り繕うので精一杯だった。この瞬間が今日の最底辺。

それから眠さを殺して観劇をしたら、良いことがあった。
昨日は歯が立たなかったこの目の前の芝居が何を言いたいのか、
完全にわかってしまったのだ。

だいたい、これが日本語だったら、自分には人のやっていることを
理解するに誰にも引けを取らない自信がある。
こちとら難解で鳴らす唐さんの頭の中をずっと解き続けてきたのだ。
芝居に限らず、音楽だろうが美術だろうがダンスだろうが、
相手がどんな風に来ようと、その意思を汲み取らずには済まさない!

少しメモを取りながら観たが、今日のは完全にいけた。
それで、終わった後にミミとかなり話し込んだ。

舞台に仕掛けられた道具や演出の数々、せりふの示すところなど、
メモも頼りに膨大に指摘して、私もそう思う、と言ってもらえた。

性暴力にあった女性のモノローグだったから非常に重かったけれど、
巷のミュージカルとは違った意味で、自分は劇にもっと希望が欲しい、
そして希望とはある種の人間の愚かさではないかと伝えた。

愚かさとは、親しい人が亡くなった時にもお腹が空いてしまうとか、
そういうことだ。愚かであることや無駄なことの素敵さを、
唐さんを通じて自分はずっと考えてきた。

それにミミは、かつて英国公演を観て感激した蜷川さんの
ファンなのだそうだ。それなら、次は中根公夫さんのことも話そうと
約束した。一緒に渡英した自分のハードディスクには、
中根さんと蜷川さん、唐さんと蜷川さんの資料が膨大にあるのだ。

また来週の月曜に会おうと約束して別れた。
朝食は無し、お昼に焼きそばを軽く食べたきりの一日だったので、
帰りにゴールデン・チッピーに寄り、フライドチキンを食べながら
家への道を歩いた。肉を齧りながら坂をのぼると力が湧く。

けれどここはロンドン。元気のない時にフライドチキンが買えない
人も多い。そういう人はどうすればいいのか? そんなことも考えた。
今日はすぐ寝よう。

3/17(木)ロンドン塔に行ってきた

2022年3月17日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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朝起きてブラインドを開けると曇天。しめた!

今夜はAlbanyでイベントのみ。昼間に特筆すべき打合せもない。

ということは、昼間の自由行動が許される。

これが夜に他所の劇場へ行くようなら、

必ず昼にAlbanyを訪ねなければならない。


誰に強要される訳ではないが、そうでなければ新参者の、

言葉の苦手な自分がこの劇場の一員たることはできない。

大学に入った時、唐さんに接する時、KAATに入った時も

自分はそうしてきた。こういうところには室井先生の教えを感じる。

人は自分を見ている。一番大切なものから目を切ってはいけない。


Albanyに夕方遅くに行けば良いし、典型的なロンドンの曇り空。

となれば行くべき場所は一つ。ロンドン塔。


学校では絶対に今日出掛ける場所を言わない。

一緒に行こうよ!などと周囲に言われては台無しだ。

こちらは漱石の小説も日記も読んで盛り上がっているのだ。

必ずやひとりでなければ。


授業を終えるとすぐにカティサークに行き、

初めてテムズ川のボートに乗った。横浜のシーバスより揺れる。

うねうねと上流に進みタワー・ブリッジに接岸。

途中、高級住宅らしき建物をたくさん見た。


ボックスオフィスでMature studentと主張し切符を買う。

ロンドンはメリハリが効いている。あらゆる美術・博物館の

常設をタダにしておいて、ここは約4,000円とる。


中に入ると落胆の連続だった。

当然ながらすっかり観光地化されている。

小学生たちの遠足も元気に行進。さらにやたらと写真撮影を頼まれる。

カップルに、おじさんの二人連れに、言葉が不得意なオレに

頼むなよと思うが、声をかけられるとつい全力で応えてしまう。


さすが高額をとるだけあって場内は清潔。ロンドンでは珍しい。

庭も建物内もトイレも。スタッフにも緊張感があった。


が、展示のショーケースやモニターの数々が邪魔すぎる。

ついラーメン博物館を思い出してしまう。

歩き回っていると小雨が強めの雨に変わって子どもたちが去り、

夕暮れが近づいたので少し雰囲気が出てきた。


正直に言って、夏目漱石の『倫敦塔』は最初と最後だけ面白くて、

塔内の描写は自己陶酔が鼻につく。それにジェーン・グレイの

くだりなど、あまりに絵画のパクリなので興醒めだと思ってきた。

が、実際のロンドン塔に行ってみてその中間部を見直した。


漱石が訪れたのはすでにヴィクトリア朝末期だ。

ここはもうとっくに観光地化されていたはず。

だから、彼は十二分に現実を受け止めながら、

こうであって欲しいという姿を書いたのではないかと思った。


実際を体験して小説の価値が増した。

この小編の最後、漱石は宿屋のおやじに塔の感想を述べて冷や水を

浴びせられ、もう二度とロンドン塔の話をすまいと決心する。

当然、二度と足を運ぶこともない。


一方、自分は一度も行かず小説だけ読んでいれば良かったと思う。

最後はヤケクソで売店のキーホルダーを買ってしまった。

唐さんの『鐵假面』という戯曲が好きだ。だから鉄仮面を見ると弱い。


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せめて、倍の値段をとっても良いから、

全消灯のうえ蝋燭でいくナイトツアーを組んでくれないだろうか。

それなら、自分はもう一度たずねてしまうかも知れない。


ところで、最もプロフェッショナルなのはカラスたちだった。

こちらの手の届く範囲に近づいても彼らは一向に物怖じしない。

目の前1メートルのところで糞をするカラスを初めて見た。

これには感心させられた。


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3/16(水)アイリッシュの夕べ

2022年3月16日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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皆でくつろいで過ごす。どこからともなく演奏と歌が起こる。

自然に合いの手が入る。コンサートには無い滋味がある。

みな凄く達者だ。気分は宮本常一。誘ってくれたアダムさんに感謝。


『唐版 俳優修行』の打ち込みが間もなく終わる。

残すところあと1ページもない。というところで寸止めする

心地よさよ。これが終わったら誤字脱字チェックがてら

もう一度読み込んで、頭を整理するのだ。

 

学校に行ったところ、敬愛するエリザベス先生は休みだった。

昨日から病気らしい。コロナでなければ良いが。


Albanyへの道すがら、マッシュ&パイの店に寄った。

ミス・ダイアンが、あの店にいくべきだ、

そこでチリ・ヴィネガーをかけるべきだ、と強弁するのだ。

彼女の言うことは必ず聞く。なるほど、紅茶をつけても

£5のランチはリーズナブルだし、店でゆっくりできるのも良い。

食べながら、近くロンドン塔に行こうと決める。

 

Albanyではセリとロンドンの人件費や物価について話した。

劇場運営に関する予算について訊き、話が派生したのだ。

アツシの好きなパン屋は高い。そう言われた。

 

で、夜はライブハウス「マッチスティック・パイハウス」へ。

このまえ知り合ったアダムさんに誘われて、フォーク音楽の集い

に参加しのだ。これが実に不思議なイベント。

 

ロビーに着くと10数人が腰かけているのみ。

アダムさんに喋りかけるとあと10分で始まるという。

実際、8:15pm頃にオーガナイザーの女性が喋って、

男性が歌い始めた。会場はロビーのまま。


これが今夜の趣向なのだそうだ。一人目だけゲストシンガーで、

あとは思い思いに歌うのだとアダムさんに教わった。

信じがたい。しかし、実際に事は起こった。

オーガナイザーが緩やかに仕切ると、

誰かがギターを取り出して歌うのだ。

 

おじさんたちはみな達者だった。

他にアカペラ男子もいたし、ヴァイオリン弾きの女の子もいた。

二人でハモりながら弾き語る女子は抜群のコンビネーション。

ハモり、即興でギターやリコーダーも加わる

そこへヴァイオリンまで入ってくる。間が開くと司会の女性が歌うが、

これがまたやたらうまい。アイリッシュが中心の夜。

 

とりわけ面白かったのが、ずっと酒をチビチビやっているおじさんで、

彼らは歌わない。聴きながら、涙目になっているように見えた。


不思議なことにこのイベント、集まった者は皆知り合いでなく、

最大でも3人連れか4人連れのペアがちらほらあるのみ。

要するに、知り合いでもない人たちが集まって、思い思いに歌う。

楽いそうにはとても若い男の子も寝そべるようにして参加している。

最終的には、大合奏になっていった。重ねて不思議な夜だ。

歌はどれも良かった。郷愁に充ち手いた。

 

自分はこれがひどく気に入り、次回3/26にも参加することにした。

振られた時のために、一曲くらい仕込んでおく必要がある。


マッチ棒パイハウスの黒板。どうやら定期開催らしい。

他イベントも覗いてみると面白そうだ。セントラルにない魅力がある↓

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3/15(火)ミス・ダイアンとの対話

2022年3月15日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑実物を見た。オフィーリアの衣装は生地がかなり厚めだとわかった。

だから水吸って沈む。しかも清流でなく澱んだ水。絶対飲んじゃダメ。


3月13日、日曜日。この日は早く帰った。

引っ越してから1週間、初日こそ家にいたものの

以降は毎夜出かけてばかりきたが、昨日はAlbanyで行われた

子ども向けプログラムのみだったので20:00前に帰宅したのだ。


すると、話をしましょうとミス・ダイアンから声をかけられた。

彼女はこちらの行動を見てひどく心配してきたらしいのだ。

曰く、初めて会った下見の時からするとアツシはどんどん痩せていく。

ちゃんと食べているのか?と。


食べていますよ、と答えると、

このままではイギリス生活中にあなたは別人になってしまい、

日本に帰って奥さんに驚かれてしまう。それが心配だ、と引かない。


そこで、ここ数年の日本での不摂生について語ることになった。

日本では車で動いている。朝早くから夜遅くまで働いている。

夕食を家で摂るかどうかその日の流れ次第なので、

優しいワイフはちゃんと作っておいてくれる。

例え外食したとしても、そういうわけで、夜中にもう一食たべてきた。


しかも、うちには子どもがいるので、

ついつい息子の好きなお煎餅の良いやつを買ってしまう。

福祉施設への出入りも多いからクッキーも買ってしまう。

アイスクリームやケーキも買ってしまう。

それを子どもよりも自分がたくさん夜中に食べてしまう。


さらに、地元では夜中までやっている美味い店を知り尽くしている。

そもそも、日本は24時間営業の店が山ほどある。

うちの家は徒歩5分以内のところにそういう店が3軒ある。


しかも、渡英前はこれが食べ納めと言ってやりたい放題した。

結果的にかなり動きが鈍くなった。疲れやすい。

走るのが好きだが、忙しくて1日に30分弱しか走れない日も続いた。


その点、今は幸せだ。

時間に余裕があるし、ロンドンの景色が愉しいので1日12キロくらい歩く。

回数こそ減らしているが、食べるとなれば美味いものを食べる。

夜に食べないので調子が良い。店が開いていないので誘惑が少ない。

浮いたお金で劇や音楽や旅行に使うこともできる。


だいたい、自分がもっとも恐れているのは、

近所のスーパーにあるハーゲンダッツのパイント(480円相当)を

買ってしまうことだ。しかも悪いことに、置いてあるのは、

日本では見たことのないチーズケーキ味(一番好き)のパイントなのだ。

あの味を覚えてしまったら、この研修は失敗すると思う。

自分はあればあるだけ食べる人間だ。

アイスクリームのパイントを一回で食べたことも、

ケーキをホールでやってしまったこともある。


実は今日はAlbany近くの気に入りのイタリアンで奮発し、

日曜限定の軽いコースを食べた。スターターで出てきた

仔牛のカルパッチョが脳天をぶち抜かれるほどの旨さで

厨房を覗いてシェフ二人を絶賛し、記念にメニューの紙をもらってきた。

ほら、これがそれです。このデザートがまた美味いんですよ。


と、伝えたら、さすがのミス・ダイアンもI see.と言った。

そして、このエリアNo.1のピザ屋を教えてくれた。


明らかに日本より健康的だと思う。

気に入りのインド料理屋のおかげでベジタリアンぽくもなってきている。


ここ二日間の動きは下記の通り。

3/13(日)唐ゼミ☆WS→部屋の掃除→Deptford Lounge→Albany

3/14(月)学校→Albany→テイト・ブリテンバービカンセンター


↓記念にもらったメニュー。毎週内容が変わるのでプレゼントしてくれた。

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3/11(金)激しく打ちのめされる

2022年3月11日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑カーテンコールから。一日の終わりにめった打ちにされてトボトボ帰宅。

今日は調子が良かったのである。
新居に越して間も無く1週間が過ぎる。
一日のルーティンも定まってきた。
ミス・ダイアンの主導によって生活の中にコーヒーやティータイムが
自然に入り、日常はやや優雅になった。
就寝は早まる。彼女が寝たら自分も寝よう。
体力はより回復するだろうから、欲張りたい作業は明日の早朝に見送る。
そういう諦めも自然とつくし、結果的には身体に良いはずだ。

朝、学校に行くと、不思議と会話が入ってくる。
エリザベス先生の言うことも、課してくる課題もよくわかる。
英語に慣れてきたのだなと思った。いいぞ。いいぞ。オレ。

午後はオンラインミーティングが日本あった。
Albanyの周囲でコロナがくすぶっているらしく、
本当はLewishamの新拠点に集結して対面の会議をするはずだったのを、
急遽Zoomに切り替えたのだ。劇場では催しがひっきりなしだ。
これらを生かすために、少しでもリスクを刈り取らなければならない。
コロナに対するロンドン全体の雰囲気は極めて緩いが、
ミミの連絡から切迫感が伝わってきた。

そして、このミーティングが楽しいのである。
明らかに先月や先週よりもわかるようになっている。
今、資金調達の話をしている。今、先々のスケジュールを組んでいる。
最後に振られた時も、テキパキと質問や確認ができるようになった。
聴くことが大幅に楽になり、喋りはややマシになってきた。

それでも、みんながダーッとまくしたててくると
頭が彼らの喋りをブロックしてフリーズに向かい、やたらあくびが出る。
わかりやすく負荷がかかっているのがわかる。
そういう時はモニターをオフにしてゴロゴロしながら聴く。
治ったら画面をオン。そうすると何とかついていけるのだ。

会議後のみんなにも励まされ、やれそうだな、などと悦に入った。
が、今日の夜にAlbanyで観た催し。これは相手が悪すぎたのである。

今回のフェスティバルに合わせて書き下ろされた新作戯曲の
サンプル・リーディング公演だ。これには参った。
7人の男女が出てきて、台本を手にしゃべる。
かなり緊密に演出・稽古されていて、道具立てこそ少ないものの、
今回自体を作品として見せよう、という意志を感じる。
完成度は明らかに高い。

しかし、内容は心底よくわからなかった。
考えてみれば、学校も会議も、文脈があるのである。
先週がこうだったから、昨日がこうだったから、そういう前段がある。
ところが、新作戯曲のリーディング公演は街場の殴り合いみたいなもんで
どう言う世界か設定を理解することが極めて難しい。

開演前、たまたま隣に座ったジャーナリストの女性と楽しく談笑した
までは良かったが(彼女もBush Theatreに入ったばかりだった)、
始まってすぐ迷子になり、90分間眠くて仕方なかった。

よくよく考えてみれば、午前や午後の予定は英語力でなく
洞察力と慣れて凌いでしまっている疑いがある。
もう今日は挫折とともに寝る。ああ、古典劇とかやっていないだろうか。

3/10(木)変なおじさん

2022年3月10日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑すれ違ってアッと思った。中央の後ろ姿。その道の達人の雰囲気がある。

居候を初めて数日、ミス・ダイアンの威力は絶大だ。

まず、彼女は私に英語で喋りかけてくる。
当然といえば当然だが、これがためになる。
出かける時はどう言うか、帰宅時にはどう言うか、
スラングも含めて生活に密着した生きた英語を教えてくれる。

それに買い物や交通手段を指南をしてくれる。
あのドラッグストアに行くべし、同じ店でもこう買うべし、
ここからここは電車でなくバスを使うべし。
などとアドバイスをくれるから、少しずつ経費の節約になる。

朝にコーヒーを飲むかと訊かれ、YESと答えると上機嫌になることも
わかった。飲食は別々が原則だが、こちらがあまり食べないのを
心配している。単に日本で一日四食くらい食べまくってきたので、
ちょっとスリムにして動きにキレを出したいと思っているのだが、
心配らしい。だから、今日はカレーをたくさん食べました、
などと報告する。

そんな彼女のアドバイスの一つに、
劇場に行ったら常に「Mature Student」と言うべし、というのがある。
ロンドンは学生に手厚い。自分はAlbanyでの研修生でもあるが、
語学学校の生徒でもある。だから純然たる学生扱いで、
特に劇を見に行く時などに学割を受けられるのだ。
なるほど、先日行ったBush Theatreは5ポンド引きになったし、
今日行ったナショナル・ギャラリーでも、図録が値引きされた。

今日は〇〇を観てきます、帰りは〇〇時頃、と出がけに伝えると
「Don't forget "Mature Student" !」と念押しを忘れない。
ユーモアのある人でもある。

あと、非常に実践的な知恵もくれる。
これは臆してまだ実行できていないのだが、コンサートに行った際、
会場がガラガラであれば、より良い席に移ってしまえば良い。
と言われた。それで怒られないのがロンドンスタイルであるし、
良い席が埋まっていた方がプレイヤーも喜ぶ、と言う。

昨日、いつものサウス・バンク・センターに行った時、
注意して見ていたら、なるほど、その道の達人がいた。
演奏開始間際、指揮者が登壇する頃になり、
あるおじさんがそのタイミングでサッと位置を変えたのだ。
それまではフワフワ動いていたが、一瞬で機敏になるその動きは、
往年のサッカー選手・ロナウドを彷彿とさせた。

実は今、これを書いているのはバービカン・センターなのだが、
そのおじさんが近くにいる!
自分と同じように、毎日、劇場通いしているのだ!!

今日も彼の動きから目が離せない。
これから注意して彼を追いかけよう。
オレンジのビニール袋を持っている長身の男性。よく目立つのだ。

↓おじさんだけだと味気ないので、ナショナル・ギャラリーで
気に入った絵画も添える。楽しそうだ。
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3/9(水)ここは危険なまち

2022年3月 9日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑冬枯れで寂しげだけど、オフィスから見えるAlbanyの中庭はのどか。
土地柄を考えたら、ここには"ホッとできる場所"という意味合いもある。

『唐版 俳優修行』が愉しい。
初演は1977年の秋。同じ年の春にあの小林薫さんが大活躍した
『蛇姫様 わが心の奈蛇』が上演された後に書かれた作品だ。
唐さんによれば、あのロマンはどこへいったと、お客や批評家に
嘆かれたらしい。

けれど、今の自分にはこの悩みの薄さ、軽快さが愉しい。
まだまだ序盤だけれど、コントのような小気味の良さは、
自分が愛してやまない『恋と蒲団』に通じる。
二作品が書かれた時期は近い。それに同じ単行本に収録されている。
読んでいると明るい気持ちになる。3月は首っぴきで取り組もう。

語学学校に特筆すべきことなし。
トルコとサウジアラビアの連合軍団がうるさくて、先生が困っている。
先生は別の生徒に質問を振っているのに、彼らは横からすぐに答えて
しまうのだ。さすが10人を超える兄弟がいる家庭で育った彼らは闘いを
心得ている。より声の大きい方が勝つのだ。面白い。

美味いものが好きな日本人青年のS君をいつもの
インド料理屋 Hullabaloo に案内して二人でガッツいていたら、
長身の黒人男性が店に入ってきた。目はまどろみ、ズボンのウエスト部分
も危うげで、誰彼かまわず絡んではカウンターにもたれかかり、
「お茶をくれよ」と言っている。明らかにドラッグだ。

店の人は慣れた手つきで紙コップのお茶を外のテーブルに置き、
彼を店外に連れ出した。大家のダイアンさんは、DeptfordとLewishamには
気をつけろと言う。そう言われても毎日通うAlbanyだから避けようが
ないし、最近は慣れきってしまって当初の警戒が和らいでいたことに
気がついた。ここは危険なまちなのだ。

今日もロミカは来ない。メールにも返信なし。仕方ない。
セリに少し話を聞いてもらって、セントラルに繰り出すことにする。
我慢と粘りが肝心。焦りは禁物だ。

3/8(火)引っ越しを終えて

2022年3月 9日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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↑いろいろ面倒を見てくれたホテルスタッフのサキブさん


先週末から週明けにかけての記録を。


4(金)

イギリスの人々の週末にかける意気込みは強い。

語学学校のエリザベス先生も、今日は金曜日だと嬉しそうだ。

と同時に、クラスメイトの中には遅刻が目立つ。

初めて文法のテストで一番になることができた。

これまで周りに遅れをとってきた分、嬉しい。


この日のalbanyにはミミやセリ、エマがいない。

そこで引っ越し準備に注力するため、午後をホテルで過ごす。

物を増やさないようにしてきたが、書類や石鹸類、

買ってしまったCDなどが確実に増加している。

到着時、すでにトランクがパンパンだったので、

スーパーの買い物袋を足して対処する。


困ったのはお金の用意。大家さんに敷金と初月の家賃を現金で

渡さなければならないが、ATMで四苦八苦する。

ここにきて、近所のスーパー前にあるものでは一度に£200までしか

おろせないことが判明。後ろに人を待たせながらの繰り返し作業に

怖気付き、一回やったら次の人、その人が終わるのを待ってまた自分、

を繰り返す。が、いよいよフィニッシュと思ったら、デビットカードの

1日上限に道を阻まれた。仕方ない。

残りは明朝おろそうと先送りにして、荷造りを終える。


長い逗留だったし、初めてのUK滞在場所につき思い入れがある。

ホテルスタッフにお礼状を書いた。カードキーと一緒に封筒に入れる。


夜はアンドラーシュ・シフのハイドン・フェスティバルに向かう。

初日を聴いてもう一度行きたいと思った。当日券でステージ近くの席を買う。

フォルテピアノの音は繊細だ。聴き逃してはならないと奮発したが、

響きと演奏に陶然として悔いなし。


帰り道、オフィスビルの路地裏を通ったら、閑散とした通りに

四人の男が毛布にくるまって車座になり、サイコロを振っていた。

英国式チンチロリンだ! 彼らから10メートルほど離れたところには

明らかな人糞があり、「ペストのロンドン」という言葉を思い出した。


5(土)

引っ越しの朝。早朝に日本とzoomを行った。

ずっと唐ゼミ☆の写真を撮り続けてくださっている伏見行介さんとだ。

これまで、あまりお話もせずに10年以上も撮影してくださっているが、

初めて話し込んだ。日本に帰ったら、伏見さんに会いたい。


それからfacebookを更新し、引っ越しの仕上げにかかる。

トラブルが二つ。まず、一日経ってもお金がおろせない。

次に、出発時にお礼状を置こうとしたらサキブさんに声をかけられ、

お別れがセレモニー化してしまう。彼はチェックアウト客の捌きも

あるから、少し話しては接客に戻る、を何度も繰り返さざるを得ない。

ありがたいのだが、大家さんに10:00に行くと約束しているので、

ちょっと焦れてしまった。でも、やっぱり別れを惜しんで記念撮影。


スニーカーの袋を括り付けたトランクをゴロゴロやりながら

新居のある丘の上を目指す。息せききって辿り着くと、

これからお世話になるミス・ダイアンが温かく迎えてくれた。


まずは、部屋に荷物を運び込み、それからお金について

お詫びと説明をして、残りを待ってもらえることになった。

それから、カギの開け閉めや部屋の窓の開け方や収納の仕方を教わる。


共同生活のスタートを良好に切るためにも、この日は他に予定なし。

バスタオル、追加で必要なハンガー、昨晩壊れた傘の替え.....。

そんなものを買うために出かけようとしたところ、

どこに行けば安いか、どのように移動するべきか、丁寧に教えてくれる。

行き先は、何度か行ったことのあるLewishamショッピング・センター。

あそこは治安が悪いので気をつけるよう、何度も釘を刺される

母親のようだ。


のどかな丘を下って行くと、20分で目的地に着いた。

それから英国で、初めて生活感のある買い物をした。

何軒も店を回りバスタオルの価格を比べた。

£20の店もあれば、£5のところもある。もちろん自分は底値のを買う。

触れたところ品質に問題ないし、自分は年末までの期間限定だ。


水なども買って家に戻ると、ダイアンさんはご自身の買い物に

出かけている。そこで、Canary Wharfへ。

いつも乗り換えにだけ使ってきたが、ここにはスーパー付属のものより

精度の高そうなATMがあり、案の定、無事に引き出すことができた。


初めて Canary Wharf の商用施設も渡り歩き、

どんなお店が入っているかを確認した。ここにも一風堂がある。

6:00pm頃に家に戻って荷を解いているとダイアンさんも帰ってきた。


シャワーの使い方も聞いたが、使用後は水を拭き取ってねと言われ、

Yesと答えながら内心おどろいた。そんなことができるのか。

これはやってみると、そんなに難しくなかった。

英国は乾燥していて洗濯物などすぐ乾くが、ここのバスルームは換気が弱い。

ダイアンさんの入浴後も、なるほど、キレイに拭き取られている。


これを食べるしと様々なものを供される。

それでいて寝る前には、飲食は自分でね、と念を押される。


6(日)

翌朝起きしな、コーヒーどう?と言われて笑ってしまった。

原則があり、グレーゾーンがある。これが共同生活だ。


聞けば、これまでダイアンさんは何人もの日本人女子を受け入れて

きたらしく、最長の人は8年もいたらしい。向こうの方がプロだから

こちらは従って行けば良い。それに、下手に友だち世代とシェアを

するより、向こうにイニシアチブがあってそれに合わせていく方が、

曖昧さが無くて楽だ。ここの掃除はどっちなの? という状態で

不衛生になっていくより、規律があった方が健康に良い。

今年は体調を崩せない。


こちらの時間で9-11時まで唐ゼミ☆WSをして、

自分の声がデカすぎないか訊いたら、ダイアンさんは笑って

OKと言ってくれた。


昼過ぎに、ぜひ行くよう勧められたブラックヒースに散歩して

昼食のパンを買った。いつもグリニッジのGAIL'sという店で

買ってきたが、同地にも店舗があるらしい。


歩いて15ちょっとのブラックヒースに向かうと、

丘を下ったところに大きな教会があり、さらにその下に商店街が広がる。

自然が多く、コンパクトにお店が集まるのが魅力的な村だ。人が多い。

頼まれたダイアンさん用の水も買い込み、少し教会に寄って家に戻る。

今度は洗濯の仕方を教わった。洗濯は週に一度だそうで、

とりあえず土曜日を選択した。汗をたくさんかく夏は大丈夫か?


洗い終わりを待ちながら、さらに買い物へ。

共有物として、食器洗い洗剤、トイレットペーパー、

キッチンペーパーを月に一回収めなければならない。

また、今回は使わせてもらったが、洗濯用石鹸も別々。


そこで、これらが安く手に入るお店とグリニッジ駅への近道を

教わり、今度は今までとは別のルート、階段を使って丘をくだる。

以前は前を通り過ぎながらも決して入らなかった店がオススメの買い物先。

こうして、徐々に自分も地元の仲間入りする。


品物を揃えてレジの青年のところに持っていくと

Do you live in Dian's house?と訊かれてビビる。

Why do you know that? と訊き返すと、

歴代の住人が皆同じものを買いにくるから、と笑っていた。

あの小さな女の子はどうした?とも訊かれたけれど、

1週間前に入れ替わりで引っ越した彼女を自分は知らない、と答えた。


家に戻ってダイアンさんに報告すると、笑いながら

店員の彼は前に住んでいた女の子のことが好きだったのよ、

と教えてくれた。これまでのホテル暮らしに比べて

人間関係の入り組んでいることよ。


5:00pmに家を出て、Deptfordへ向かう。

インド料理Hullabalooで食事を摂り、その後Albanyのカフェで事務。

そして、7:00pm開場のライブを観るのだ。


7:30pm頃からお客の集まりが本格化すると、

着席で150キャパのAlbanyに倍以上押し寄せている。

今夜はオールスタンディングゆえにそれが可能なのだ。が、凄い数だ。

バーも激混みだが、リヴやケイトが生き生きとお客を捌いている。


7:45pmからDJのあおりが始まり、8:00pmからライブ本編。

3人の歌手が場を盛り上げたが、自分にはイマイチだった。

ヘイワードさんやMatchstick Piehouse でのライブの方が

断然すごかった。今日の3人は有名人なのだろうか。終演11:00pm。


遅いので急ぎ足に帰宅したが、あらかじめ帰り時間を伝えてあった

ダイアンさんはにこやか。シャワーを浴びて拭き掃除し、就寝。


↓自分の部屋。ここで色んなことがあるだろう。

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7(日)

次なる研究対象を『唐版 俳優修行』と定め、台本づくりと読みに入る。

シェイクスピアの国にいるから、というのが選定の根拠。

かつてMORDの松本修さんが演出した舞台を思い出す。


その後、新居から初めての出勤。

目と鼻の先にSt Ursula's Covent School(聖ウルスラ学園?)という

女子校があり続々と生徒が登校してきていたが、校門が開いていない。

生徒たちが開門を待つ。日本とは違う景色だ。


語学学校にはヨルダンとフランスから新たなクラスメイトが加わった。

ロンドンで発見した自分のオススメスポットについて話し合う。

先生や他の生徒の話が、以前より聞き取りやすくなった気がする。


Golden Chippyで特大Skateを食べ、Albanyに移動。

先週の会議の議事録を送ってくれたロミカにいろいろ質問したいが、

いないようだ。シフト表では出勤になっているが、オフィスに荷物を

置いて何処かに行っているようだ。また明日チャンスを探ろう。


夜はBush Theatreへ。

少し遠いところにある劇場だが、演目が気になった。

フットサルと会話劇を融合させた作品だった。

16歳を演じた3人の黒人青年が優れている。

お客は半分も入っていなくて100人に満たなかったけど、

彼らの達者さといかにも青春の残酷と甘さを描いたストーリーに

終演の瞬間から総立ちで拍手していた。一体になってグータッチもする。

コロナはどこへいったのだろう。


↓村はずれの教会。日曜朝の礼拝の後で、中は良い香りがした。

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3/4(木)クリエイション!

2022年3月 4日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑ロゴをプロジェクションしたり、演奏中はちょっとしたライティングも
このへんはポップな感覚だ

今朝の語学学校で、例のお金持ちの青年と話した。
彼は高校での成績は常に一番、ハーバードの医学部に入ることが
すでに決まっているそう。どういうシステムなのかよく分からないが、
「オレはジーニアスだ」と言う。
「アツシはいつまで学校にいて、どうやって英国に来たのか?」
と訊かれたので国の派遣だと答えると「アツシもジーニアスだな」と。
彼はイギリスが好きになれないそうだ。
多くの人と話したいがどうもそういう風に接してくれない。
アメリカは違うだろう、と希望に思っているとも言う。

考えてみれば、学校にいる20歳前後の青年たちは皆
同じような気持ちでいる気がする。
他国で不安だし、時間があるもから連れだってはいるが、
入れ替わり立ち替わりだし目的も様々で、関係が深まるのが難しい。

今の自分には孤独でいられることがありがたいが、
それは一度多くの人間関係に揉まれる毎日を生きたからで、
彼らにとっては辛そうだ。皆の内面が少し見えた。

午後はzoomミーティング。オンラインとはいえ、ついにエマとも会えた。
実は昨日、唐突に送られてたショートメールに「ワッツアップやろう!」
というメッセージがあって、「エマ? エマですか?」と質問したら
それには答えず。今度会いましょうとだけ返ってきた。
怪しい!と思って警戒していたのだが、やっぱりエマからだったらしい。
ミミが私の電話番号を伝えてくれて、エマもメッセージをくれたというのが
経緯だったらしい。何かの営業かと恐れていたと伝えたら、皆に笑われた。
「This in Emma.」とひとこと言ってくれても良いのに。

肝心のミーティングだが、
先月に立ち上がり、年末に向けて進めている企画のあらましや
進行を知ることができた。さまざまな事情で上手く修学できない青年たちと
作品をつくるのがミッション。すでに彼らについてのリサーチを終えて、
適切なアーティストを選考する段階に入っている。

というような話が、ネイティブな英語で矢継ぎ早に繰り出される。
毎度のことながらヘトヘトになるが、末尾にベトナム・コミュニティへの
アプローチという項目があって自分を元気にさせた。
ベトナムなら行ったこともあるし、大和市のタンハーに入り浸ってもきた。
ベトナム・コーヒーをみんなで飲みたいぜ!という感想を述べたら、
またみなに笑われた。ラクなポジションでいさせてくれている。

夜はバービカン・センターへ。
開館40周年を記念してレジデント・オケのロンドン交響楽団が
ハイドンの『天地創造』を演奏するのを聴きに行ったのだ。

やっと着いたら、ロビーのそこここを駆使して演奏隊が爆音で
演奏をして、華やかな周年事業を思わせる趣き。子どもたちも混じって
演奏している。今晩は合唱こそ多いものの、ハイドンは小編成なので
降り番の一流奏者たちを一瞬とはいえ間近に見られて良かった。

この楽曲は3部から成り、下記の構成
第1部 混沌から世界ができるまで
第2部 世界に生命が生まれ生息する(鷲とか鯨とかから)
第3部 人間の誕生(アダムとイヴ)

ヘンデルの『メサイア』の向こうを張って、ハイドンは旧約聖書で
いこうと思ったのだろうか。3部はミルトンの『失楽園』から。
実際に聴いてみて、アダムとイヴも幸せいっぱいだし、
すごくポジティブな内容で楽想のオンパレードだと再認識した。

ロンドン響はもちろん達者で、超一流オケに特有の音の厚みと
弱音スタートでも全くブレぬ安定感と、アンサンブルの良さが凄い。
前に聴いたベルリン・フィルと同じように、ロールスロイスのような
高級車が静かにスーッと入ってくる感じだ。当然、合唱も上手い。
(指揮者より客席側にいた合掌の人々はどうやって指揮を見れたのか?)

と言っても、肝心の指揮者サイモン・ラトルは最近に受けた小さな
手術の回復に時間がかかっているということでキャンセル。
普通だったらメモリアルで勝負どころの演奏会だと思うが、
ベルリン・フィルをキャリアのゴールにせずにロンドン響の音楽監督に就任、
ホールの建て替えが進まぬとみるやそのロンドンも蹴ってバイエルンへ、
サーの称号を得ているにも関わらずドイツ国籍になっちゃった、
というラトルの凄みを痛感する。

演奏は、曲のせいだとも思うけれどかなり牧歌的で笑ってしまった。
「クリエイション!」だもの。日本語訳である「天地創造」という重みが
どうしてもねえ。この世界が生まれるにしてはライトだし、
今の世界を描写するにはあまりに楽天的だ。ラトルだったら、
もっと辛辣でエキセントリックなところもある演奏になったのだろうか。

ところで、今日は夜の演奏会の行き帰りにかなり消耗した。
というのも、私にとって都心に出るための要であるバンク駅が工事で
閉鎖されているために、ものすごい回り道を余儀なくされたのだ。
(横浜市民にとって渋谷を断たれるようなもの)

日本では夜中の工事を積み上げたりして、
こんなことはまず考えられないが、ロンドンは平気らしい。
しかも、私の使っているGoogleナビはそれをまったく感知せず、
「バンク駅まで〇〇分!」と元気が良い。余裕を追って出たはずの往路は
おかげでかなりせわしないものになり、消耗した。
ただし怪我の功名で、道すがら初めてロンドン塔を眺めることができた。
『リチャード三世』と夏目漱石の、あの恐るべきロンドン塔!
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3/3(木)今日もギグだぜ

2022年3月 3日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑アダムさん

昨晩は面白いことがあった。夜にイベントがあったのだ。
今年オールバニーが中心となって進めているフェスティバルのイベントの
一つなのだが、会場はいつものAlbanyやCanada Water Theatreではない。
どうやら、近隣のライブハウスで行われるらしい。

チケットは売り切れのようだが、ミミがねじ込んでくれた。
それで夜に現地に向かったのだ。サイトには7:00pmスタートとある。
時間に余裕を持って出かけたがかなり迷ってしまった。
住所を打ち込んだナビは、着いてみればマンションの一室を示すのみ。
小雨のなかをウロウロして、やっと国鉄の高架下にある
Matchstick Piehouseを発見できた。

すでに7:20pm
お世辞にも入りやすいとは言えぬ扉の前に立つと中から音楽が聴こえる。
もう始まっているのかと思いきや、中に入るとまだ閑散としていた。
出た!ロンドンのライブ特有の、この開演時間のあいまいさ。
待ち合いに受付らしきものはなくバーのカウンターがあるのみなので、
飲み物を買う列に並んで、質問してみた。

アルバニーのミミに予約してもらったアツシである。
チケットはどこで手に入るのか?

すると、スタッフの中でひときわイカつい男性がこう言うのだ。
「ニホンカラデスカ?」
聞けば、彼はアダムさんと言って、
このパンデミックの2年間に独学で日本語を学んできたそうなのだ。

あと30分くらいでライブが始まる(結局8:15pmスタートだった!)ので
待つと良いと言って、コーラを注文したらプレゼントしてくれた。

さらに彼としゃべったら、15日(火)に面白いイベントがあるという。
聞けば滋賀県から来た日本人もプレイヤーの一人なのだそうだ。
自分のカレンダーを見れば、この日はバービカンでチェコ・フィルの
予約をしているけれど、即決で、行く!とアダムさんに伝えた。

すでに買ってしまった2,500円のチケットはもったいないけど、
人との出会いには断然変えがたい。
それに、語学学校に来ている若者にクラシックにチケットを
プレゼントしたら、彼らにとって良い経験になるかも知れない。

そう思ってこれを書きながら待っていたら、始まった。
内容は凄かった。ここルイシャム地区の多文化主義が生んだ
ミュージシャンたちのレベルの高さに唸る。

彼らはこともなげに役割を変える。しかも一曲の間に。
ボーカルがサックスを弾き始めたと思ったら、ジャンベを叩いていた
プレイヤーが歌い始める。コントラバスの女性がハモり始める。
ロックと聞いてきたが、フォークやカントリーが明らかに混ざっている。
即興もある。始まって3時間を過ぎたが、まだ終わらない・・・

3/2(水)ロンドンで気づいたこと

2022年3月 2日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑このアイス販売マシンはかなり神出鬼没である。

さすがにひと月経つと落ち着いてくる。
学校→Albany→観劇、といつもの動き。食事に行ったカレー屋も3回目。
そこで、最近はなんとも思わなくなったロンドンへの違和感について
まとめてみたい。


【全体的に】
・道にゴミ捨てすぎ
・それでいてゴミ箱の数多すぎ
・Are you fine? Are you OK?と訊いてきすぎ
・地上1階を0階と数えすぎ
・生まれた瞬間から1歳と数えすぎ
・小雨多すぎ
・買った時点で傘ボロすぎ
・風が強すぎ
・建物、ムダに意匠こらしすぎ
・ホームセンターに置きもの充実しすぎ

【スーパーにて】
・入口に警備員が立ちすぎ
・生鮮食品がワイルドで不気味すぎ
・菓子パン雑に積み上げすぎ
・冷凍食品多すぎ
・ゆっくりレジ打ちすぎ
・店員、閉店作業を早めに始めすぎ
・野ざらしのATM多すぎ
・ATM付近に物乞い多すぎ
・買った時点で爪きり切れなさすぎ

【音楽会に行くと】
・事前にロビーで飲み食いしすぎ
・客席に開演間際に殺到しすぎ
・客が鎮まるの待たずに演奏に入りすぎ
・楽章間で拍手しすぎ
・余韻なく拍手しすぎ
・休憩時間にアイスクリーム食べすぎ
・トイレの小便器の位置が高すぎ
・演奏がちょっと良いだけで盛り上がりすぎ
・終演後のサイン会無さすぎ

【移動時の電車の中】
・電気が点滅しすぎ
・電車のレーンと時間テキトーすぎ
・身体デカいのに天井低すぎ
・電車の中で愛し合いすぎ
・動画の音デカすぎ
・電話の声さらにデカすぎ
・鼻歌、大声でうたいすぎ
・犬と自転車を持ち込みすぎ

【PUBなど飲食店で】
・寒いのにテラスでビール飲み過ぎ
・酒のアテ無しで飲みすぎ
・寒いのに半袖とノースリーブ多すぎ
・フライドポテトの量多すぎ
・水とサービス料の会計システム分かりにくすぎ


・・・と、これらに慣れて現在に至ります。

3/1(火)ミミとの邂逅

2022年2月28日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑帰りに気づいたのだが、劇場の壁面の絵柄が変わっている。
明日、質問しなければ。

渡英以来、すでにひと月経ってしまった。
日々あちこちを歩き回っているが、本当にあっという間だ。

2/25(金)
朝は語学学校に行かず、zoomでバッカーズの会議に出席する。
VACCURS=電撃障害者商品企画会議。
これは月に一度行われている寄り合いで、可能であれば必ず参加している。
会の幹事の方が施設運営についての変革時期だと伺った。
ご本人はかなりしんどそうで心配だが、身につまされる。
いつも参加している別の人も、それに呼応して自分語りを始めた。
一人ひとりに背負っているものがあって、励まされた。
学校は出席率8割をキープすれば良い。月一の会議には今後も必ず参加する。

午後はAlbanyの近くのイタリアンでギャビンと食事しながら話した。
彼は忙しい時間を縫って来てくれている。他の2施設に行ったことや
子ども向けのプログラムに関心を持っていることを伝えた。
素晴らしかった『Underwater』の演出家さんから、
来月末にマンチェスターでキッズ向け公演のフェスティバルがあると
聞いたと伝えたら、把握していないなあ、と言われる。
ひょっとしたら自分が言葉を聞き間違えたのかも。
帰って調べ直さねば。

夜はセントラルに行く。
ピカデリーサーカス近くの文房具屋でペンを買ったり
ウィグモアホールのボックスオフィスで4-7月のチケットを購入。
時間に余裕があったので前から見たかったウェストミンスター寺院まで
歩いたところ、デモに遭遇。彼らの歌声と、ウクライナ・カラーを
手に手に四方八方から続々と集結する人々。

クロムウェルの像も印象に残った。
生前は英雄だったクロムウェルは、王政復古とともに墓を暴かれ、
遺体の首を刎ねられた末、四半世紀に及び骸をさらされた。
そして、今は銅像が建っている。

複雑な気持ちになったので、帰りにゴールデン・チッピーに寄り、
スケイクという魚を食べた。ここのおじさんは痛快だ。
お前はもっと食べるだろうと言って、A few chips!と店員に大声で
指示を出す。これがa few!?という量が盛られてくる。
人間の地力に打たれる。

2/26(土)
朝からFacebookを投稿。週末恒例の作業だ。
他にも、原稿を書いたり、『秘密の花園』の初演台本と睨めっこ
しているうちに時間が過ぎる。

3:00pm頃になって出かけ、バンク駅から歩いてバービカンに行き、
そこからさらに歩いてウィグモアホールに行った。

途中、喫茶店でチョコレートケーキを食べた。
海外旅行のお土産にもらうチョコの味だ。キャラメルや他の甘味が
入り混じっていて、甘過ぎる。

ヘンデルの合奏協奏曲やカンタータ、スカルラッティ父の歌曲を聴く。
こんなプログラムは日本では滅多に聴けない。
専らCDで聴いていたけれど、指揮者が立ったままチェンバロ片手に
弾き振りするのを初めて体感。こうなっていたのだ!

バロックなので、もとは王侯貴族の音楽だ。
美しいし楽しい。雅やかさに浮世がどうでも良くなる快感があるが、
何か後ろめたい。昨日のデモとクロムウェルが頭をよぎる。

帰りはすべて電車にせずに、歩きを混ぜながら帰った。
週末だから大勢の人が出ている。寒いのに露出度が高い。
大道芸に合わせて合唱している酔っぱらいの若者チームなど、
ノースリーブのワンピースだ。彼らは寒さを感じないのか?

2/27(日)
朝から唐ゼミ☆ワークショップ。
『下谷万年町物語』第2幕に入る。
第2幕こそ、大勢のオカマが長屋のセットにはびこって、
これぞ万年町!という光景が現れる。
その一角で、主人公3人がサフラン座創立のための作戦を練る。

1日に進む分量を抑えてやっているので、たくさん修正をして
稽古っぽい稽古。こちらも腕がなまらないように。

飛び入りで博物館に行こうと思ったが、無料だけれど予約が必要で
どこも埋まっている。メジャーなミュージカルも検討したが、
週末は値段が高い。そこで腹をくくり、完全デスクワークの日にした。

おかげで『秘密の花園』の初演版と改訂版のどこがどう違うのか、
最後まで、そして細部まで把握することができた。

夕方に食事に出かけて散歩もした。
前々から、テムズ川を徒歩で渡る方法はないものか疑問に思ってきたが、
よく見ればカティサーク号のわきに地下道に通じる階段がある。
大きな川を下から渡るだけあり、螺旋階段を長く降りる。
そして階下のトンネルは意外に狭い。
船の横の出入り口、トンネル、向こう岸...まるでドラクエ。


2/28(月)
先週の木曜日以来、三日ぶりの学校。
旅行について話したが、隣の中国人女性がバックパックで30カ国も
巡った経験があり驚いた。他の皆も国際経験豊かだ。
自分は数カ国。旅行で行った国は一つもない。

仕事で行ったベトナムのホーチミン市でけっこう高級なホテルに
泊まったけれど、早朝のジョギングを終えて朝一番でマッサージに行ったら、
女性の整体師にゴリゴリやってもらっている途中、いきなり小声で
「Special service?」と囁かれてビビった話をしたら盛り上がった。

その後、バスでルイシャム駅に行く。
渡英時にヒースロー空港で買ったSIMカードをひと月更新するためだ。
あの時、ボーッとした頭でテキトーに「3」という会社を選んだ。
後に「O2」か「Vodafone」の方が優れていると知ったけど、
今ではこの電話番号に愛着もあるし、ふた月目からは同じ条件で
3,000円程度になる。だから更新しに行ったのだ。

お金は先週に問い合わせに来た時に払ってあり、
店員さんが操作してくれて「これで良いですよ、また来月」と言われ
安心してAlbanyに向かった。しかし、道すがら全然ネットに繋がらない。
もうナビ無しでも迷わないが、到着時間を知りたくても無反応。

劇場に着いて久々に再会したミミが色々と試してくれたけど、
どうしようもない。お店に電話しても、混んでいると繋がらない。

だんだん腹が立ってきて、いっそVodafoneに乗り換えることにした。
Vodafoneならば、週末に引っ越す家の最寄り駅カティサークの前にある。
行ってみたらさほど高くなかったし、むしろ条件が良い。
「3」に払った分を無駄にしても今後の利便性を考えてこちらの方が
良いと思った。新たなSIMカード=電話番号がやってきて、
ネットも絶好調になった。大学2年時、懐かしきJ-PHONEから始まった
自分のケータイ遍歴はVodafoneを経てSoftbankに至った。
久々のVodafoneだ。

順番が前後してしまったが、もちろん今日の最重要トピックはミミとの
邂逅で、前回会った時に疲れ果てていたミミはすっかり元気になっていた。
ここぞとばかりに、今後プロジェクトに同行するためのスケジュールを
ガンガン組み、エマとも会えるように手配してもらった。

聞けば、エマは二つの職場を掛け持ちしていて、週に二日をAlbanyに割き、
しかも殆ど在宅勤務のプロデューサーなのだ。道理で会えないわけだ。
家は近くらしく、こっちから近所のカフェに行っても良いよ、と伝える。
また面白い展開になるだろう。

今日の食事はAlbany近くのインド料理屋でしたが、
(先週、地元の青年たちと写真撮影を巡って睨み合ったところ)
すでに二度目の訪問で店員さんがデザートをサービスしてくれた。
ココナッツ入りのナン。美味い。先日のチョコケーキとは雲泥の差。

この店は肉は出さない。ベジタリアン&ビーガン対応だが、米も含め、
日本で知っているカレー屋より香り豊かで旨いカレーが食べられる。

夜はウィグモアに行き、サー・アンドラーシュ・シフによる
ハイドンフェスティバルの初日を聴く。本来はソプラノ付きの室内楽を
予定していたが、コロナの影響で器楽曲のみに変更したらしい。
よって紙で配るプログラムは無し。

それを補うためにか、彼はマイクを使ってよく喋ったが、
小さな、けれど確信的な声で話す。自然と、こちらが彼の発言を
受け取りにいくよう導かれる。彼の演奏にも共通する特徴だ。
大きな音を出さないところが、かえって強く印象に残る。

弦がピチカートするところのアンサンブルが良かった。
フォルテピアノは撥弦楽器。だからモダンピアノより相性が良いのだろう。
ストリングス三重奏の趣きだ。

ともあれ、今週は何としてもエマに会う。
先週は一通りAlbanyを巡る状況を把握できたので、今度は企画に潜入する。
エマに、ノーアポで自然に会える関係性をつくりたい。

あと、渡英してふた月目なので、暖かくなればロンドンの外にも出てみたい。

2/25(金)広場とポエト

2022年2月25日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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Deptford Lounge 館長のアネッテさんは、まるで地域のお母さん。

ヨークシャー出身の彼女と『嵐が丘』についても話した。


昨日もいろいろなことがあったので、特筆すべきことを三つほど。


一つ目。

語学学校の同級生、ヤジーズ君がサウジアラビアの大金持ちと知る。

お父さんは企業の社長(何の仕事かは不明)。

運転手付きのロールスロイスに乗っており。兄弟は12人。

前回の誕生日に彼がもらったプレゼントは良質の馬だという。

「Very Cheap!」が口グセ。

週末ごとにセントラルにあるタイガー・タイガーというクラブに

通っているが、行くと意外と奥手で、何人かの女の子とやっと

インスタアカウントを交換してもらい喜んでいるとは、同行した人の談。


二つ目。

初めて、Tha Albanyが運営する別棟施設 Deptford Lounge に行く。

というか、いつも横を通っていた図書館の建物がそれと知って驚く。

ここは日本でいえば生涯学習施設で、地域の人に集会や練習の場を

提供しているが、特筆すべきは学童を含んでいることだ。

屋上にグラウンドまである。

劇場とは直接関係ない施設を運営することで、縁遠い人たちを

公演やワークショップに招き入れるシステムの窓口になっている。

感心した。


三つ目。

Canada Water Theatreでポエトリー・リーディング公演に参加。

『OFF THE CHEST』というタイトル。

プロのMC、プロの詩人、アマチュアの中からオープンマイクに

手を上げて選ばれた10人が出演者だ。

特に面白かったのはもちろんオープンマイクで、腕に覚えのある

人たちが詩やラップを繰り広げる。少女の告白といった向きの

朗読もありました。中でも胸を打ったのは、20代半ばと思しき

大柄の黒人青年の訴えです。彼は非常にたどたどしく、けれども

他の人とは違ってノートやスマホは一切見ず、コロナにより仕事を

奪われ、孤独であることを語った。


それは、自分の語学力の低さを貫通して、たちどころに理解できる

ものだった。彼が終わった後は、皆が立って彼に拍手。全体の終演後は、

ロビーや劇場内で延々語らいが止まらず、時間が過ぎていく。


当然といえば当然だが、普通に会ったら

絶対に近寄りがたい風貌の青年が、同じ人間なのだと切実に実感した。


劇場スタッフのリヴやジェニーは、早く帰りたいなあ、とは冗談で

言いけれど、片付けられるところを片付けながら、彼らを見守って

いた。毎日、少しずつ粘ることこそ難しい。なかなか出来ないことだ。

内容や関わる人たちを尊重する姿勢が、この劇場のスタッフには

浸透している。彼らを見ているとたのしい。


働き過ぎではないかと思ってリヴにそう伝えたら、彼女は週末から

週明けまで休みをとって、イタリアに行くそうだ。片道5,000円も

せずに行く方法があると教えてくれた。写真をたくさん撮るのだと

行っていた。サッとイタリアに行く。カッコいいなあ。


お代は見てのお帰りなので、専用の回収バケツがある。

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2/24(木)英語で怒られたことなど

2022年2月24日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑この直後に怒られる。

一昨日から昨日にかけて起こったことを書こう。

2/22(火)
台本読みにさらに注力し始める。
『秘密の花園』は1982年に初演された戯曲だ。本多劇場にて。
それが1998年に唐組によって再演され、評判を呼んで99年にも上演された。
後者に大学入学が間に合い、自分はこれを観ることができた。

唐さんは唐組での再演にあたり、台本に手を入れた。
当時の唐組のチラシを見ると、ちゃんと改訂と書いてある。
初演版と改訂版、どこがどう違うのか調べつつ読んでいる。
ああ、日本語なら人並み以上に理解できるのに、とも思う。

慣れてきたので、学校にはギリギリ滑り込む。
エリザベス先生は授業巧者だ。それぞれの人間に興味を持っていて、
そういう彼女のスタンスが生徒の発言を活性化させる。
伝えたい内容がある時、人はその手段を必死に磨く気になる。

この日から加わった中国人の女の子も含めて、
色々な世界をそれぞれが生きてきたことを実感する。
最も饒舌なのは、サウジアラビアの青年たち。

彼らには兄弟が12人とか、20人とかいる。
お父さんには4人(許される最大数)の妻がいて、
最近、妹が生まれたばかりという20歳の青年がいる。
別の青年は、ハーバード大学に入り医者になると言う。
他にはいかにもお坊ちゃん風の質問魔の青年。
システムエンジニアとしてのキャリアアップを目指し、
英語の予習復習を欠かさない大柄の青年、などなど。
多くの兄弟に揉まれてきたのだろう。自己主張がシンプルだ。
家にラクダがいる人もいる。

片や、中国人の女の子は一人っ子。
重慶に生まれ育った後、シンガポールでアパレルの仕事をして、
ロンドンに来たのだという。今は日本料理店で働いているけれど、
イギリスで服飾の仕事がしたい一念で苦学しているようだ。

午後はAlbanyへ。

最近、劇場そばにあるインド料理屋が気になっていて、
この店が良いかどうか同僚に訊くために写真を撮った。
店や人の名前を一瞥して覚えるだけの頭が自分にはまだない。
そうしたら、店の前にいた青年3人が怒って叫んできた。
I don't allow you to take picture!

15mくらい離れていただろうか。
こちらは彼らを撮ってはいないのだが、確かに嫌な気がするだろう。
初めて英語で怒られたのでかなりビビり、かえってI'm sorry!
と異常にデカい声で返してしまった。

それがまたちょっと変な雰囲気を呼んだので、サッと劇場に入った。
Deptfordはなかなか荒くれた街だから用心しろと言われてきたが、
それにしても、昼飯を食べ損ねた。

が、これが功を奏する。
劇場に入ったところ、ちょうど催し物が始まるところ。
訊けば、0-2歳用のダンスプログラムに親御さんも含めて40人くらい
集まっている。飛び入りで観させてもらったら、これがすばらしく
感心しっぱなしだった。

が、ここにも間違いがあり、2階席で資料用にと撮影していたら、
舞台監督らしき青年に注意されてしまった。本番風景の撮影が厳禁な
ことはもちろん分かっているが、しかし、渡英してからこのかた、
その感覚がひどく麻痺していたのだ。内容も素晴らしかったし、
申し訳なく思ったので、終演後に改めて謝りに行き感謝を伝えたら、
かえって歓待してくれた。

ここにいる事情を話すと、彼はディレクターやプロデューサーに
繋いでくれた。結果的にたくさん話すことになった。
ちゃんとした映像や資料も送ってくれることになった。

その後はオフィスに戻り、方々にメールを打つ。
もちろん英語だし、システムに慣れていないので操作ミスが続き、
ひどく疲れる。一方で、リヴという女の子に系列劇場の見学を
お願いしていることをレミーというスタッフに話したら、
彼女がその場で先方にアポと取ってくれた。
大変ありがたいのだが、これはリヴと手配が重なる可能性がある。
レミーにはそのことを話して、さっそくリヴを探し回った。

果たして、やっとリヴを見つけて事情を話したら、
彼女は昨日に送った依頼メール自体をまだ読んではいなかった。
レミーにもリヴにも生真面目だと笑われたけど、こちらは新米だし、
慎重にならざるを得ない。お腹も空いているし、ヘトヘトになった。

気を取り直して、ルイシャム駅に向かう。
渡英後ひと月が経つので、ケータイ電話の更新方法について
訊きに行ったのだ。電話だと不安なので、直接が手っ取り早い。
自然と歩行距離が伸びる。店員さんがサクサク処理してくれたが、
2/28-3/1じゃないと手続きできないと言う。また来週と言って別れる。

ルイシャム駅に来るのは渡英直後に郵便局を訪ねて以来だが、
帰り途、イギリスでの初めての食事(ケバブ)を買ったあの店が
見えてきた。あの時は嬉しくて「また必ず来るよ」と言ってしまったが、
正直ケバブの肉はイマイチだった。目が合うと気まずいので、
あのナイスガイがポテトを揚げている隙にサッと通り過ぎた。
今日は色々なことがあってくたびれたので、絶対に近所の名店
ゴールデン・チッピーと決めていたのだ。

前回のcod(タラ)に引き続きrockというフィッシュ &チップスを
食べたが、やっぱりこの店は美味い。エリアNo.1と何人かが
絶賛するだけある。良いカサゴの唐揚げを食べている感じ。

食べたらすっかり元気になり、もう一つ何かしたい。
そこで、カティサーク近くのコメディ・クラブへ。

↓開演30分前。この後に全ての席が埋まっていった
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火曜なのでお客は少なめ、それでも恋人同士や家族づれが
合計50人くらい入っていて、一人なのは自分だけ。
と思ったら、開演間際に入ってきた一人のおじさんがいた。
よほど通な感じがする。8:00pmに開演して、清水宏さんの
やり方の原型を見ることができた。メインのコメディアンが
場内を煽り、熱を帯びてきたところで別の二人を紹介する。
ロシア情勢やジョンソン首相のことを話しているのは分かった。

あと、ロンドンの地下鉄のうち、どの路線沿線に住んでいるかを
お客に訊いていき、その回答に反応しながら、ドッカンドッカン
ウケていた。とにかく「ファック」「ファッキン」「イディオット」
のオンパレード。これまで一生かけて聴いてきた「ファック」の数を、
今晩だけで完全に凌ぐ量だった。

面白かったけど、英語を聴くのに消耗して前半で失礼した。
これはまた行きたい。長い1日だった。


2/23(水)
早朝から作業してお腹が空いたので、初めてカフェで朝食を食べた。
口開けらしく景色の良い席に通されたが、いつもより30分早く
動いたことで出勤・通学の風景を見ることができた。
皆、険しい顔でそれぞれの目的に急行していく。どこの国も一緒だ。

語学学校は遅刻が目立つ。週半ばになるとすぐにこうだ。
11:00にやっと来た青年は、昨晩遅くまで遊んで帰宅が深夜だったらしい。

オリジナルのコンテストを考える、
自分が英語を学んできたプロセスを説明する、
という課題にチームで取り組んだ。
今日が初めての42歳トルコ人男性がいて、彼は奥さん一人と言っていた。
大量に買ったからと言って、皆にスニッカーズの小さいのを配ってくれた。

授業後は、カナダ・ウォーターに向かう。
50分ほど歩いた。初めていく場所には出来るだけ徒歩で行きたい。
土地の様子を見るためだ。水辺にある劇場に着くと、
ジェニーというスタッフが丁寧に案内してくれた。

地下鉄の真上にあって、図書館も併設しているから若者たちで
賑わっている。130席ほどの劇場が一つきりだけと、
ここにも、会議・稽古のためのスペースは6つもあった。

ジェニーは自分のために予め全ての空間の電気をつけておいてくれた。
丁寧な歓待に感謝して、明日また来ると言って別れた。
リヴが23日にこの劇場で行われるポエトリー・リーディングの
チケットを予約してくれているのだ。何度も来られて嬉しい。

↓水辺のCanada Water Theatre
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30分ほど戻るかたちで歩きながらAlbanyを目指す。
途中、ホームセンターを発見して、じっくり文房具を買った。
このところずっとダブルクリップとクリアファイルを探してきたが、
英国の百均にあたるパウンドラウンドやスーパーには皆無なのだ。
ここでやっと見つけて嬉しい。他の売り物を見て周り、妙に置物が
充実しているのが可笑しかった。

↓偶像が好きすぎるのではないか
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Albanyに短時間行き、セリにここ数日の体験を話しつつ、
夜の予定の確認をする。オンライン会議があると聞いていたのだが
ミーティングアドレスがどこにあるかを訊いたのだ。

全体メールで回ったカーソルをクリックするべしとの返答。
参加してみて分かったのだが、これは法人全体の年次総会だった。
2020-2021年のお金の収支、各企画の進捗、これからの展望について
それぞれの担当が話すのだが、驚くべきはそのスタイルで。

なんだかテレビやラジオの番組風に総会が展開するのだ。
全体を進行するのは若い男女で、彼らがパーソナリティーとして喋り
ギャビンの代表挨拶や担当の発表を促していく。

合間には音楽も鳴るし、企画説明の時にはそれぞれの進捗を
極めてわかりやすく、魅力的にまとめた映像が流れるのだ。
ニュース番組みたい。対外的でなく、組織内の44人のメンバーが
視聴するものなのだが、約2時間の番組風で愉しんだ。

内容にも増して、この形式を生み出すのにどれほどの労力を
かけたのか訊いてみたい。社内報や忘年会の充実に全てを賭ける
班があるのだろうか。皆が全体を把握することをいかに重視しているか
実感した。

そうだ。今日はセリにあってから年次総会までの間に時間があり、
初めて英国の床屋に行った。床屋は街中に溢れて迷ったが、
語学学校のそばの店に飛び込むことにした。
朝に通りかかった時に、スタッフの男性がシャッターを開けているのを
目撃したが、彼の耳の上の刈り上げ部分には小さなハサミのタトゥーが
あり、よほどこの仕事が好きなのだと興味を惹かれたのだ。

果たして、その男性は他にお客さんがいたので、
店主らしいおじさんが相手をしてくれた。横浜の床屋で、
髪を切り立ての自分を撮影しておいたので、それを見せながら説明したら、
任せておけと言って散髪が始まった。かなり剛腕な散髪で、
自分の場合、一才をバリカンで行ってくれた。ソケットを念入りに
取り替えて矢継ぎ早だが、終わってみて側頭部と後頭部の刈り上げ具合が
すごい。我ながらビロードのような触感なのだ。こんなのは初めてだ。

結果的に、シャンプーや顔剃りは無かった。
初めてなのでなるに任せたが、驚いたのは、両耳を炎で炙られたことだ。
高級な葉巻に火を付ける時に使う、あんなようなもので、
かなり熱い思いをした。訊けば、これで耳周辺の産毛が処理できるらしい。
しかし、驚いた。

帰りには、通り掛かりのタイ式マッサージが気になった。
横浜では定期的に整体に通ってきたので、ぜひイギリスでも行きたいが
ここは自分が入って良い店だろうか。
帰って調べようと店の写真を撮る。

今日は徒歩移動のみに終始し17km。よく歩いた。

2/22(火)先週末〜週明けにかけて

2022年2月22日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑通りがかりのおじさんは、木に足をのせろ!と言った。

ずっと雨。ザーザー降りではないが、1日に一度は小雨が降る。
そして強風。先週の木曜、学校でもAlbanyでも
「明日からの嵐に気をつけて」と言われた。

なんぼのものかと思って金曜(18日)の朝に起き出すと、
確かに吹いている。そしてそれは週明けの月曜まで続いた。
これがロンドン名物らしい。雨でも、よほどでなければ人々は
傘をささない。よくこのような強風が伴うために、傘が壊れてしまう
のが原因のひとつだと言っていた。

学生時代にやった巨大バッタ時の強風、
テント公演で揉まれてきたいつくかの強風を思い出す。
という経験を持っているので、恐るるに足らず。
野外劇の『青頭巾』を石巻の中瀬公園でやった時、強かったな。

金曜に起こったことは、Facebookに書いた。
お世話になっている人が多く見ているFacebookは週一ペースでの
更新と決めた。ダナという女の子のフェアウェルランチに連れ立ったが
これがなかなかの激闘で愉しませてくれた。

2/19(土)
学校で知り合ったブラジル人の青年ギリアミ君と前日に約束し、
朝から国立自然史博物館を目指す。ただし現地に行ってみて、
無料ではあるが予約が必要であり、それはもういっぱいだと二人で
知ることになった。残念。と、向かいに別の博物館がある。
V&Aミュージアム。これ行こうと言って入ったが、当たりだった。

ヴィクトリア&アルバート。英国が帝国として最も輝いていた時代、
それが19世紀に長期君臨した女王に由来するヴィクトリア朝時代だが、
旦那との名を連ねたこの建物は、ものすごく広く、世界各地から
当時のイギリスが調達した品物で溢れている。当時の栄華が伝わる。
仏像も、ギリシャ神話の英雄たちの像もある。

門などに使われる金物のレリーフをギリアミ君が熱心に記録している。
彼の父は、金物を扱う職人だという。彼自身は建築家。企画や設計、
ペーパーワークが仕事だと言っていた。28歳。

ファイブガイズというハンバーガー屋で食事して別れ。
午後は雨量が増してきたので、一旦ホテルに戻り、『秘密の花園』を
読んで、少し昼寝した。夜はAlbanyでギグなのだ。

Albanyでの催しは全て出席しようと決めているから、
7:30pm開始というふれ込みに従って劇場に行く。ただし、どうも
この時間は開場時間のようで、実際にスタートしたのは8:20pm過ぎ。

これが、望外の面白さだった。
Charles Haywardというドラマーが中心となり、集めたメンバーで
繰り広げたライブだったが、Albanyはステキなライブハウスと化し、
179名(後で技術スタッフのケイトリンに聞いた)が寝そべったり、
座り込んだりしながら酒を手に手に聴いている。イスは少量。
かつてプログレと云われ、今はエレクトリカル・ロックとされている
音楽演奏。

音楽に呼応して絡みついているカップルは、セックスし始めるのでは
ないかという程に盛り上がっている。演奏は素晴らしかった。
20分ほどの曲を2曲やって、休憩。後半は別の人のドラムと
サックスの巨匠の即興。これも2曲やった。

打ちのめされた。終演後、チャールズ・ヘイワードに寄っていき、
最高だったのであなたを追う、と伝えた。11:00pm過ぎに興奮しながら
帰って、渡邊未帆ちゃんに報告すると、彼が組んでいた「ディスヒート」
というバンドが有名だという。大里先生に報告したかった。

↓ヘイワードさんと
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↓ライブの様子
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2/20(日)
朝から唐ゼミ☆ワークショップ。佐々木あかりが公演を終えて
帰ってきた。アシスタントを得て楽になった。
一回に約20ページずつ進む。一幕おわりまでいき、
文ちゃん、洋一、キティ瓢田というサフラン座のトライアングル完成。

急いで11:30amまでに入店した者が食べられる
イングリッシュブレックファーストにありつき、帰りに駅前にきたところ
強風で木が根こそぎ倒れている。眺めていたら、近所のおじさんが
写真を撮ってやろうと言い出した。面白い人だ。

午後はヘイワードさんのCDを手に入れようと街を徘徊するが
なかなか取り扱いがない。どうしたものか。
そして、夜にウィグモアに行き、初めてギトン・クレーメルを聴いた。
シューマン、ヴァインベルク、ラフマニノフというプログラム。
初めて生で聴くトリオの曲だが、量感がある。クレーメルは
じくじくとした弱音の手つきがエロくてあやしい。
往々にしてピアノがデカすぎると思った。アンサンブルそっちのけで
グイグイくる。

2/21(月)
今日から学校の先生がエリザベスさんという女性に変わった。
彼女とすごく打ち解ける。理由は簡単で、趣味と行動半径が激しく
一致したからだ。彼女はウェールズ出身の母と、母の故郷が嫌いな
イングランド人の父の間に生まれ、二人の娘さんがいる。

ピアノとヴァイオリンをやり、夜と週末はタンゴの教師をしている。
ロンドン・シンフォニエッタの事務局で働いた経験があり、
なんと、5年前までAlbanyに勤めていたらしい。

好きな小説は『マエストロ&マルガリータ』。
こちらも5回くらい読んでいると言って、1時間ほど話し込んだ。
日本語訳されたブルガーコフはほとんど読んでいる。

ヴェルギリウスとダンテ、ペンリー・パーセルが好きだとも
訴えて、プロ・アマ問わず『Dido & Aeneas』生演奏を逃さない
つもりだと伝えた。今後、色々と指南を与えてくれそうだ。

午後はAlbanyで事務。
方々にメールを打ち、入口管理のトムにプリントアウトを
手伝ってもらった。ここはそういう役割分担らしいのだ。

いよいよ家が決まったので、大家さんに渡す資料や、
劇場の資料も印刷。唐さんの台本も印刷してもらう。
印刷待ちの間、トムに21世紀リサイタルの動画を少し観せたら、
唐さんのボクサー姿に爆笑していた。
唐ゼミ☆のみならず、巨大バッタ、唐さん、RSCと蜷川さんが
『リア王』を作った時の眞野さんの映像が自己紹介に役立っている。
(室井先生は"哲学者"だと分かりにくいので、バッタをやった人を強調)

ミミ、エマ、アネッタ、リヴにメールを打って、
打ち合わせや施設往訪の申し入れをする。動かなければ!

夜はまたウィグモアに行って、韓国気鋭のカルテットを聴く。
ショスタコーヴィチを聴いてブルガーコフを思い出した。
グロテスクな笑い、時々メロディアス。

客席はやっと半分埋まっている程度だが、これからの人たちだと思う。
トップからアンサンブルがとても良くて、熱演も激しい。
理想的だ。と、1ヶ月前なら思うところだけれど、迷いが生じている。

イギリスに来て、全体なんかそっちのけでグイグイいく
プレイヤーに魅了されている。痛快で、潔い感じがする。

国鉄に慣れ、地下鉄の乗り換えもより便利な方を選択できるようになった。
スーパーでは、チーズの他にハムも安く、美味しい。
レストランでは、安いピザ屋を見つけた。
生活しやすくなっているが、課題はAlbany内での喰い込みと、
英語の成長実感が乏しいこと。そのうち何とかなるのだろうか。

↓エリザベス先生。今度ギャビンに会ったらこの写真を見せよう
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2/19(土)ひとあし先に飲み会

2022年2月19日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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昨日、芸術文化財団の上司の一人とLINEする機会があった。
やりとりのついでに語学学校での授業中の写真を送ったら、
誰もマスクをしていない、と驚かれた。

そうだ!
マスクするのを、こちらの人たちの雰囲気に押されて忘れかけている。
と言うくらいに、英国ではコロナのことを皆が気にしていないように
感じる。すでに国民の4分の1以上が感染しているイギリス。
無自覚無症状の数を合わせれば、さらに多くの人が罹患している
だろうから、集団免疫をすでに獲得しているのかも知れないけれど。

Albanyでは金曜に夜に、皆で連れ立ってパブに行った。
写真の様子は、広い広いパブの中で自分たちの陣地を確保するやり方。
劇場のロゴの入った風船を膨らませて、各テーブルに置き、
確保完了です。これはなかなか洒落ていて良い方法だと感心した。

劇場から近く、広くて安いこのお店が皆の溜まり場。
ボックスオフィスとエントランス管理のスタッフも、
総務担当も、各プロデューサーも、テクニカルスタッフも、
時間に余裕のある人がそれぞれに集まっていて、盛り上がる。
劇場が一つのチームであることを感じさせる数時間。

そしてまた、家庭や用事や疲労のある人から、
気づけば五月雨に抜けていく。これも自由な雰囲気で、良い光景。
自分は£2のジンジャーエールをカッコ良いグラスに入れてもらい
ずっと飲んでいる。英語はよく分からないけれど、こういう場だと
相手の言うことが理解できるから不思議だ。
各人の名前は、自分のノートにスペルを教えてもらい、覚えている。

あと、この二日間は、ロンドン名物の嵐だった。
とにかく風が強い。学校でも劇場でも、明日は気をつけてと言われ
何のことかと思っていたが、こういうことか。
実際に強風がやまない。

小雨もパラついているが、これがイギリス人が傘をささない
大きな理由なのだそう。この点に関しては、自分は断固スーパーで買った
折り畳み傘をさして、濡れないようにしている。

風邪ひいてなるものか。せっかくイギリスでの貴重な時間が
部屋で伏せっていたら台無しだ。マスクも、都心に出る時はしないと。
そう思って強力なやつをカバンに忍ばせている。

2/18(金)よく話しかけられる

2022年2月18日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑テムズ川も砂浜みたいに遊べるようだ。相変わらず、1日に1度は小雨。

昨日は語学学校で、ディスカッションを行った。
パーティーの開き方について議論したところ、
サウジアラビア人の青年二人に強硬にやり込められた。

30人のパーティーをある店に予約したが、
2日前、参加者の中にベジタリアンが5名いることがわかった。
お店はそもそもベジタリアン対応はしないレストラン。
幹事の自分はどうするべきか。

パーティーを取りやめる
②別の店に切り替える
③現在の店に交渉する

自分は③を選んだけれど、彼らは②だという。
30人分の予約はお店の準備や収益にとっても大ごとなので、
③をして対応してくれたら良し、断られて初めて②に行けば良い
と伝えたが、絶対に②だという。彼らお国柄か、若さか、面白かった。

午後、Albanyには行かなかった。
昨日は皆が自分の関係者がオフィスに来ない日なので、
(ネットで出勤状況を調べられるようになった)昼から出かけて
Facebookで椿昇さんに勧められたテート・モダンに行った。
元工場だという建物に圧倒される。

無料と有料のコーナーに別れており、まずは無料から。
初回ゆえに作品より、展示スペースの方が印象に残ってしまう。
ミュージアムショップだけで何軒もある。しかも50%オフ中。

草間彌生の有料展示は、3月末まで予約でいっぱいだ。
パンデミックでなければ、もっとすごいのだろう。
また平日のフリータイムに来るべきだと思った。
フラッシュ無しなら写真撮影OKという習慣にも驚く。

夜はコンサートに行き、ストラヴィンスキー・プログラム。
イヴァン・フィッシャーとブタペスト祝祭管のリズム感の悪さ、
もつれっぷりにイライラしたが、中盤のヴァイオリン協奏曲に登場した
パトリシア・コパンチンスカヤが状況を一変させた。

カラフルな衣装で、よく見えないがおそらく裸足、
ヘッドバンキングしながら周りの演奏を聴き、自分の演奏に
挑みかかっていく彼女により、空気が格段にハネる。

たった一人がこんなに全体を支配してしまうことがあるのだ。
素晴らしい俳優もこうだなと思いつつ、彼女が去った後半の
『ペトルーシュカ』はまたキレ無し。

終演後の拍手をそこそこにボックスオフィスに向かい、
6月にコパチンスカヤが出るプログラムのチケットを買った。
チーペストじゃなく、できるだけパトリシアに近いところで!
と伝えたら、馴染みになった髭のおじさんが笑っていた。

ところで、これまで書きそびれてきたが、
一日に一度は必ず誰かに道を訊かれる。
また、ホールのロビーにあるテーブルに陣取って仕事していたら
中年女性2人に相席を申し込まれ、子どもの教育問題について
熱心にやり取りする様子に思わず笑ってしまい、彼女たちと少し話す。
コンサート中、隣の家族連れに当日パンフレットを貸して欲しいと言われ、
快諾したら、かなりの時間熟読してなかなか返ってこなかった。

何か、人間同士のやり取りが率直で、自分は居心地が良い。
一方、ホール最上階には会員限定のレストランやカフェがあり、
そこには入ることができない。

移動中、どこにどんなホームレスがいるかも頭に入ってきた。
グリニッジの隣、カティサーク駅を出ると、
足の皮が松の幹の表面のようになっているおじさんがタンバリンを
叩いて集金している。ロンドンだ。

2/17(木)足を止めてみる

2022年2月17日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑2週連続、曇天のバザー。管理人に出店者の若者が注意を受けている
ように見えた。ああいうのを聴き取れるようになりたいものだ。

現在、2/17(木)7:00am。
昨日も夕方に Albany から国鉄に乗って街に出ようとしたけれど、
電車が遅れていたようで、それで思い立って、やめてしまった。

7:00pmにはホテルに帰ってきて、
いろいろと状況を整理してみようと思ったのだ。
だいたい、ここ数日は小雨続きだ。
朝は晴れているのだけれど、昼過ぎからは曇り始め、夜は雨。
ロンドンらしいロンドンかも知れない。

8:25amに学校に向かい、
途中では日本にいた時から続けている英語学習をしている。
30分弱で学校につく。
一限目を受け、30分の放課ではだいたい日本に連絡をとっている。
ちょうど日本の夕方にあたり、仕事にせよ家族にせよ、
お互いの活動時間が重なる時間帯だからだ。

12:30に学校が終わると1時間ほどかけてAlbanyに向かう。
ここで食事。昨日は辛いものが食べたくなってタイ料理に行ったが、
これは失敗だった。価格はロンドン値段。それでいて量が少ない。

ロンドンでは量が多いので、一日一食のペースが身についたのだ。
その習慣を崩された。横浜にあるアジアンダイニングキッチンの
ランチの量と値段を見習え!と言いたい。
観光地だからか、価格に12.5%のサービス料ものる。

この頃から雨が降り始め、Albanyにたどり着いた。
周囲とコミュニケーションしながら、先日セリからもらった資料に
目を通している。この劇場の運営システムや組織図、進行中の企画に
ついて書かれた資料だ。合間で、一人一人知り合いが増えていく。
昨日はファイナンス担当のマークと知り合った。マークは二人いる。
今回はシニアのマークだが、彼はカティサークのそばにある
"ザイバツ"という面白い名の日本料理屋が気に入りだと教えてくれた。
ロンドンでのアジア系飲食は失敗続きだが、教わった以上は近々
行ってみよう。どんなものか。

昨日は途中、事務室を出て劇を観た。
『ONE MEAL』という子ども用の劇を上演していたからだ。
ここ2日間、45分ほどのステージを1日3回ずつ公演している。
客席の子どもたちを見ていると面白い。多文化主義の街にある
劇場なので、多様で、でも子どもの動きは万国共通だ。
あれは10歳くらいだと思うけれど、少年の俳優が、
お母さん役の女優と、狂言回し役の男性の真ん中で活躍していた。

終演後は、客席とのレクリエーションの時間で、
子どもたちはキャストと話し、写真を撮り、セットの中を冒険して
いた。運営にとってはハードな3回公演だが、とても良い雰囲気だ。
ちなみに、大人も子どももワンシート一律 £7。

と、ここで色々と頭に思い浮かぶのだが、まだ自分に話し合うだけの
語学力がない。今回の公演も各地を巡回しているプログラムの
買い取りのようだが、どんなエリアをどの程度の頻度で回っているのか。
少年の俳優がいるのがまるで大衆演劇の一座のようだが、
彼の通学はどうなっているのか。

どだい、通い慣れてくると、色々な疑問が頭に浮かぶ。
Albanyの劇場の周りでは定期的にバザーが開かれているのだが、
これが週末というわけでもなく、どういったものなのかよく分からん。
こんなことも訊いてみたい。??が頭にいっぱいある。

なんとなく習慣的に暮らせるようになってきているけれど、
まだまだだなと思う。それもあって早めに帰り、駅で配っている
フリーペーパーを読んだり、日本で買ったイギリス史の新書を読んだりした。
そういえば、ヒースローで買ったSIMカードは1ヶ月単位のものだけれど、
次回更新のやり方を知る必要もある。

というように、足回りを固める時間として昨晩を過ごした。

日本から連絡が来て、取り壊しの迫る入谷の坂本小学校(唐さんの母校)
を保存するための運動を続けている小林さんとやり取りをした。
小林さんのコツコツとした粘り強さに頭が下がるし、
いつものように駆けつけられないことが歯がゆい。

一方、ほんの近所だって、少し違う方角、違う路地に進めば、
まだまだ知らないお店や風景があることに昨日は気づいた。
慣れてきたつもりだけれど、自分はまだまだロンドンを知らない。

↓終演後の舞台。イギリスにも桟敷席はある。自分は最前列端で観た。
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2/16(水)ついにギャビンに会う

2022年2月16日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑英国でのビッグボス ギャビン・バロウさん。まさに大物アクティビスト。
「ビッグボス」という言葉に新庄監督により馴染んでおいて良かった。

現在、2/16(水)朝7:00。
今日は昨日のことだけ。コンパクトに書こう。

出会いと別れがひっきりなしの語学学校だが、
クラスの主要メンバーがインスタのネットワークをつくっている。
ロシア人のダナという17歳の女の子、トルコ人のセナ(年齢わからず)
という女子が声も大きくムードメーカーだが、グループを活用した
彼らの応酬が授業中に飛び交う。

明日の夜に「『シンデレラ』か『美女と野獣』を観に行かない?』と
ダナ。みんなが反応しないでいると「私だけ? 返事してよ」と言う。
自分はお誘い対象外だと思うが、夕方になって寂しそうなコメントが
続いたので、お礼とお断りのコメントをしたが、特に返事なし。
やはり、対象外だ。

今週入学した国も名前もわからないおじさんが「オレだけオールド」
と言ったので、「41歳の自分もですよ」と告げたら、デザイナーの
ロシア人・スヴェタが「私も47歳」と言った。
彼女の名前は......、『ジョン・シルバー』の「ドクリンコの唄」を
思い出して呼びかけにくい。「♪あたいたちゃスベタ・・・」

授業中、KAATの案件で津内口に取り次ぎを頼んだが、
まだやったことのない国際電話を急遽しなければならなくなりそうに
なり、焦る。「3」のSIMカードでは無理そうだ。

通い慣れたbill'sで昼食。今日は20歳のSho君と一緒に食べて、
久々に手ぶらでトイレに行けた。彼のホームステイや日本の家族、
これから2年を英国で過ごす展望を聴く、ヒースロー到着時の戸惑いは
みな一緒だと思う。

この日は雨で、自分はチープな折り畳み傘をさし、
Sho君は英国流にささない。後で劇場のソフィーやセリに傘を持たない
理由を訊いたら、風が強くてすぐに壊れるからだそうだ。
日本製をプレゼントしたいものだ。

午後は劇場に行って、やっと、ついに、やっと、
大ボスのギャビンに会うことができた。3つの施設を同時に運営し
多忙なギャビンと30分ほど話すことができた。

まずは今回の誘致に改めて大きな感謝を伝えて、
ここ2週間のこと。エマに伴走しようとしていること。
ミミの体調が心配なこと。ロンドン市内を歩き回っていること。
を伝えた。次は他の2施設を案内して、食事をする約束をする。
忙しそうだ。

そこからはセリと一緒に、オフィスの予約の仕方や、
劇場のメンバーとのスケジュールの押さえ方、運営組織を示す図を
見ながら、それぞれの立場と役割について説明を聴いた。

CEOのギャビンがとても偉そうに見えるので、
この樹形図から、ここの上下関係がどれくらい厳格なものであるか
訊いた。質問の動機を伝える中で、思いかけずKAATの眞野館長のこと、
唐さんや唐ゼミ☆のこと、室井先生と行ってきたことまで
説明することになった。

それらすべてを生かすヒントが、この劇場にはあるのではないか。
オペラやクラシック音楽や文学、古典劇などのハイカルチャーも
好きだけれど、最終的にはヒューマニティー("動物としての力"でもある)
を自分が発動させたり、人がそれを爆発させている瞬間を最重視している
ことを伝えた。

ペーパーワークに忙しいはずの彼女は、
およそ2時間以上も自分に割いてくれたと思う。
アツシに向いたギャビンの活動がある、と言っていくつかのコミュニティや
それに付随するウェブサイトを紹介してくれて(それらの拠点は、
ロンドンの外や、英国外にも及ぶ)、金曜の夜に開催される集まりにも
誘ってくれた。「でも、チケットいっぱい買ったアツシには予定が
あるかもね」と言うから、ここにいることの重要性と、優先順位が
高い予定を常に選ぶための最安席であることも念を押した。

もし「こちらにいるべきだ」という予定が飛び込んだら、チケットは
学校の同級生にプレゼントしても良いし、学校の出席日数については
規定数をクリアするよう通うし、すでに先生方や事務局にも渡英の
主目的を伝えて理解を得てあると伝えた。

セリの理解がありがたかった。

このあたり、大学一年の頃を思い出す。
6月頃、まだ親しいとはいえない唐さんが花園神社や鬼子母神での
紅テント解体に誘ってくださった時、自分は迷わず月曜の授業をサボった。
どちらのために生きているか、という優先順位の問題。
もちろん、予定なしにサボることはしない。

ここの職場は原則6:00pmまで、というセリに従って作業を終え、
今日もサウス・バンク・センターに向かう。当日券で£10。
7:00pmから「啓蒙時代の楽団」というオケを聴く。

秋にオペラシティで聴いたイザベル・ファウストがソリスト。
シューマンのヴァイオリン協奏曲は、かつて横浜国大の茂木先生に
勧められた曲だ。特に第2楽章の美しさは、気のふれた晩年の状態が
よく出ていて、不思議に魅力的だと。初めて生で聴いてそれが伝わった
けれど、いかんせんオケの規模や古楽器スタイルにはホールがデカすぎる。

アンコールを告げるために喋ったイザベルの声の柔らかさが印象的。
名前も風貌もいかつい感じがする彼女の演奏は繊細さ、玄妙さに魅力が
ある。細やかな人なのだろうと思う。

2/15(火)魚ごころあれば水ごころ

2022年2月15日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑昨日は誕生日だったので、皆がお祝いしてくれました。

現在、2/15(火)朝7:00。
前回は金曜の朝に書いたので、金・土・日・月にあったことを書こう。

2/11(金)
この日は、唐さんと娘のお誕生日だった。建国記念日に生まれた二人。
学校に行き、昼食(近所のbill'sのウェイターさんと親しくなった)
をはさんで劇場オフィスに行き、リヴ(Liv)という女性から
パソコンのログインや様々なセキュリティについて、
解除の仕方を教わった。

こちらは、バックヤードのトイレにもテンキーが付いている。
館内を自由に動けるようになり、スタッフの一員として一歩前進した。
18:00頃には劇場を出て、国鉄に乗ってロンドンブリッジ駅で降り
30分ほどテムズ川沿いを歩いてサウス・バンク・センターに到着。
今日も当日券を買おうとしたところ「今日はイベント無いよ」と受付の人。

どうやら、カレンダーを見間違えていたので、
ならば!と近くのテーブルに陣取り、夏までのプログラムや
自分のスケジュールと睨めっこし(競馬の予想みたい)、
先々のチケットを最も安い席で買う。
"チーペスト チケット"がスタッフとの合い言葉。
その中でオススメの席を!と相手にお任せした。

本来はミシン目で切れるはずのチケットが蛇腹になって出てくるのが
面白く、ボックスオフィスのスタッフと爆笑しながら買った。
10数回分買ったら割引も適応され、2万円いかないくらい。安い。

帰り途、電車の乗り換え中に電話がかかる。エージェントさんから。
下見に行った大家さんが、OKしてくれたらしい。
ついては、翌朝エージェントさんとの面談を決める。

グリニッジから30分ほどのニューエルタム駅で待合せ。
前金が必要なので、帰りにATMに寄ったが£20紙幣がたくさんになって
しまった。あと、包む封筒がない。

2/12(土)
ホテルに戻り、本を読んだりしながら過ごして、夜中(日本は朝)に
唐ゼミ☆オンライン会議。その後、早朝(日本のお昼過ぎ)にも
一本zoomで写真家の方と打合せして、先々の企画について話し合う。

こちらが寝ている間には、林麻子のWSが進行中。
彼女は、教え方やタイムコントロールなど、巧者のようだ。
いつも劇中歌の振り付けをしたり、衣裳を考えたりしている時にも
視野の広さがあると思ってきたが、当たりだった。
彼女は音大出でピアノと声楽をやってきた。
劇中歌ワークショップ、ぜひ参加してください。
『唐十郎劇中歌ワークショップ』
http://karazemi.com/perform/cat67/ws-2.html

ここから、7:00に回転するセインズベリーに行って封筒を探す。
尋ねてみると、売り切れ。困っていると、店員の女の子は
別棚の便箋とセットになっている封筒を一枚引き抜いて
プレゼントしてくれた。本来、便箋とセットの売り物ではないのか?
幸せな気持ちになるが、買う人には一枚足りないことになる。

その後、エージェントさんと会い、
20年イギリスで暮らしているという日本人のその方に、
色々と面白い話を伺った。息子さんがサッカーに夢中だそうだ。
こちらにいるうちにサッカーの試合も観たい。
超一流リーグはレアチケットだけれど、地元のチャールトンという
チームなら手に入りやすいらしい。下部リーグの厚みこそ本場を
感じる。劇でも、音楽でも、スポーツでも、決して来日公演のない
ローカルなものを目にしたい。良いアドバイスをもらった。

午後になり、ミミとWhatsAppというアプリで連絡を取りあったら、
彼女の体調が優れないことがわかった。彼女は明らかに忙しい。
その上で、自分の家や生活の心配をしている。

なるべくオフィスに顔を出して馴染みたいが、
ミミが不在の間に劇場に行くと結局は彼女に連絡がいくことに
なりそうなので、朝は原稿書きをして午後からは出かけることにする。

金曜にサウス・バンク・センターでのチケット注文が面白かったので、
同じことをバービカン・センターでもやった。ここは、蜷川さんが
公演していた場所だ。ボックス・オフィスの青年ジャックさんと
蜷川さんの話をしながら、席をアレンジしてもらった。

その後、ピカデリーサーカスの辺りまで歩き、
聖ジェームズ教会のバレンタイン・コンサートに行ってみた。
ヴィヴァルディを立て続けに演奏するプログラムで、
協奏曲など初めて生で聴くものばかりだ。

開場時間と同時に入って、自由席だというので前から2列目
真ん中通路沿い(テント芝居みたい!)を押さえた。
トイレに行く際、荷物を置くのは危ないので、当日プログラムと
ペットボトルを置いていき、戻ってみたら、中年女性と青年の
親子連れにズラされていた。どうやら悪びれた様子もないので
こちらが良くなかったようだ。今後は、周りに人が座るまでは
その場にいて、コミュニケーションしてから動くべきと悟る。

演奏は一流ではないけれど、1600年代からあるという教会内部は
趣きがあり、とにかく周囲のカップルがイチャイチャしながら
聴いているのが面白い。ちゃんと入場料を取るライブだが、
平気で写真や動画を撮りながら聴いている。おおらかだ。

教会の人からは、平日のお昼は無料の演奏をしているから
またおいで!と言われた。ヴィヴァルディは喘息持ちで赤毛の司祭
だったというから、合っていたように思う。
催し物会場としての教会という選択肢があるのだとインプット。


2/13(日)
朝起きて、唐ゼミ☆ワークショップ。
昨日のレポートを読まれたし)
午後はKAATの仕事で発行している「共生共創通信」の原稿書きをし、
メーテルリンクの『青い鳥』を読んだ。堀口大学の翻訳だけれど、
唐さんが『秘密の花園』に使った言葉ではない。誰の訳文か、
今後に調べる必要がある。

イタリアンレストランで昼食。ここは先週も来てかなり気に入った。
イギリスに美味いものがないというのは違うと思う。
中華料理屋に行くと違和感を感じるが、西洋のものは美味しいと思う。

雨の中、夜はAlbanyのライブに行った。
(先日スーパーで折り畳み傘を発見。チープなものだけれど)
「TOMORROW'S Warriors(明日の戦士?)」というバンドのライブだ。
劇場に行ってみると、ホールが完全にライブハウス化していて面白かった。
いつもとまるで雰囲気が違う。案内係のケイトがお客さんをリードする
様子も、明らかに先週のキッズプログラムとは違う、
2階客席の奥にあるバーカウンターでは、システム担当のリヴが
ビールを注いでいる。多芸だなと思った。

演奏と歌のレベルが高い。このバンドがどれほどメジャーか
わからないが、キーボード、ベース、ドラム、ギター、ヴォーカル、
フルートの6人組のレベルの高さはすぐに分かる。

でも、何よりも、片付けまで疲れも見せず、テキパキと働く
ケイトとリヴが素敵だった。彼女たちのお客さん対応には
人間的な温かみがあって、催しをかなり底上げしてくれている感じがした。

2/14(月)
語学学校に行き、同級生のトルコ人・セナに年齢を訊かれた。
40歳....あ、今日で41だ!と言ったら教室内が盛り上がった。
日本人は幼く見えるので、オレには妻も子もいると伝えて、笑われた。
一方、週末を経て、若者たちによる教室内のラブワゴン感が加速している。

帰り際、放課中に即席で作られていたバースデーカードをもらって、
写真を撮る。ありがたいことだ。同時に、隣の青年・マリオは卒業。
2週目に入り実感したことだが、ここは毎週、新人が来て卒業生が出ていく。
1ヶ月程度の学習の人もいる。自分のように11ヶ月コースは長い方のようだ。

午後は、各種手続きに動き回った後、夕方から初めてウィグモアホール
に行った。当日券で、CDで聴いていたマーク・パドモアのリートの
チケットを買う。開演まで時間があったので、高級感のある周辺を
ウロウロしていたら、丸亀製麺とCoCo壱番屋があった。

と、ふと気づけば、どこからかコーラスが聴こえる。しかもかなり上手い。
気になって近くの教会を覗くと、ロンドン・フィルハーモニックの合唱団が
練習中だった。女性合唱指揮者がテキパキと稽古をつけていてカッコ良い。


2/11(金)家が見つかりそう

2022年2月11日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑ジャック・ザ・チッパーのおじさんにまた来ると伝えたが、再訪なしかも。

今日を以って『秘密の花園』を一通り打ちこみ終わった。
かなり読めたつもりだが、前半部分の「夕泣き丸」「夜泣き丸」部分の
描写が浅い。今後は睨めっこして、考え抜きたい。
それに、自分が参考にしてきた単行本は、あくまで改訂版だ。

1998年に行われた唐組秋公演の素晴らしさを受けて出版されたから、
首藤幹夫さんによる舞台写真がいっぱい。
最近はお目にかかっていない堀切直人さんと、亡くなった立花義遼先生、
そして、室井先生による解説が載った沖積舎版。
1982年に初演されたものから、唐さんによって少し書き換えられている。
その差も検証したい。

後半二幕のアキヨシといちよの会話には随所に赤ちゃん言葉があって、
これは初演バージョンの名残りなのだと、大学一年生の時に受けた講座の
なかで唐さんはおっしゃっていた。劇中歌をいちよ役の緑魔子さんが
歌ったはずでもある。これを遡ることで、執筆時はどうで、
唐さんが何を考えて書き換えたのか、これから考えてみたい。

さて、前日(2/9)に『芝居の大学』のためにお休みした語学学校に行く。
すると、受付で総務の女性に話しかけられた。
実は火曜目を終えたところで詳細なアンケートがメールで送られてきた。
自分はそれに、ちょっと講座のレベルが高く感じたことを伝えたのだ。

事務局は柔軟に対応してくれたらしく、今日、試しにもうひとつ初級を
受講できるよう手配してくれたらしい。それを受けてみて、
アツシに判断して欲しい、と。

新たな教室に行ってみて、即座にこっちだと思った。
この学校のなかで最も初級にあたるこのクラスは、明らかなタレント揃い。
アルジェリアやロシアやブラジル、そういった国々の青年たちが、
とにかく騒がしく、人間としてのパワーに溢れている。

先生もまた、お腹痛いと言いながら少し遅刻したのにも好感が持った。
さらに遅刻した生徒が後から後から入ってくる。
こう書くと怠惰なだけのようだが、授業中は質問が飛び交う。
私語も飛び交う。その度に先生は笑いながら、静かに、と嗜める。

すっかり気に入ったし、自分の英語力に合っていると思ったので即決。
デイビット先生に謝りに行ったら、気持ち良く送り出してくれた。
初日と二日目のクラスの生徒たちの何人かも「なぜいないんだ?」と
声をかけてくれ、後ろ髪も引かれたけれど、基礎クラスに編入した。

総務の女性には、アツシはいつから英語の勉強を?と改めて訊かれた。
日本では中学生からやるけれど、自分は去年から取り組んだと伝えた。
「なぜ、10代の頃からできなかったのか?」とも言われたので
「日本語を勉強するのに40年かかった」と答えた。

事務室の人たちは爆笑していたけれど、
早朝、こちらは必死に唐さんの日本語と向き合っている。

一方、体調的にはあまりに眠いし、頭も痛いので、
コスタコーヒーのメニューにチョコレートのお菓子を加えた。
ロンドンに来て以来、あまり食事をする気になれないし、
体がスッキリしていくようで悪くないので、あまり食べてこなかった。
しかし、加糖したら、頭がスッキリして2時限目はあっという間だった。

ディスカッションでは、どこでフィッシュ&チップスを食べたら良いか
を話題にした。10日ロンドンにいて、自分はまだ食べていない。
グリニッジ大学近くに数軒ある店の中から一つを勧められた。
明日においしかったか教えてくれ、と言われとなると、
こうなると今日は昼飯を食べる気になる。

JACK THE CHIPPERというお店。
タラを揚げるのに7分かかるというから、お店のおじさんと話し続けた。
パンデミックでぜんぜん観光客が来ないとぼやいていたが、
あなたは良い店を選んだ、推薦した先生の目は確かだと言って、
グリーンピースのペーストを付けてくれた。これが古典的スタイルだ、と。

ホテルに足早に戻って急いで箱を開け、食べる。
噂に聞いていたよりよほど美味しい。タラに鮮度がある。
しかし、味は薄い。日本ほど塩分が濃くないせいもあるけれど、
魚の甘味に乏しい。チップスも美味しいけれど、量が多すぎる。
グリーンピースのペーストは、砂糖と水分を加えればお汁粉のような味。

と、ここからが劇場研修。
Zoomで「HERE NOW US」というプロジェクトの進行確認会議に加わる。
もちろん途中参加だし、英語が厳しいのだけれど、まだらに理解したところに
よると、劇団スペアタイヤの代表レベッカさんを中心に進むこの企画では、
地域の学習障害がある青年たちと美術やインスタレーションを作って
彼らの活性化を図っているそうである。去年から各地でWSを進めてきたけれど、
ずっとコロナとの闘いで、中断やオンラインの活用に苦労しながらやってきた。
そういう内容だった。ディスカッションが始まると、翻訳ソフトも使いながら
ギリギリとそれにしがみつく。映像紹介があるとホッとする。
90分でどっと疲れた。

今日とったメモをもとに、次にエマに会う時、質問攻めにしなければ。
他方、電話で話したミミは体調が悪いらしい。忙しい彼女が心配だ。

さらに、今日はここからが勝負の時。
3月から入居できるかも知れないお宅の内見に行った。
そこは、今いるホテルから歩いて10分ちょっとのところで、
グリニッジ公園の通用門が目と鼻の先にあるお家。
ひとり暮らしのシニア女性が、部屋を貸しているらしい。
近々、現在の借り手が出ていくので、申し込みをすることができた。

早めに行き、教わったアドレス直前で少し迷っていたら、
知り合いだという近所の女性が案内してくれた。
出てきたのは、教養があって、少し厳格そうな女性。
部屋を見せてくれたり、コーヒーをご馳走してくれた。

何か望みは、と言われたので、少しお話ししたいと伝えて、
自分がロンドンに来た目的や、これまでの10日間のこと、
思い描く生活スタイル、家族や唐さん、唐ゼミ☆やKAATでの
仕事について話した。

彼女も、自分の家族や、便利なお店、行くべき文化施設、
大好きだというフットボールチーム、トットナムについて話してくれた。
さっきあなたが行ったフィッシュ&チップスは間違いだ、
この地域でベストなのは THE GOLDEN CHIPPY だ、とも。 

あとはエージェントを通してやりとりしましょう、と言い合って失礼した。
ここで暮らせたら願ってもないけれど、どうなるか。

今日は都心に出るには充実し過ぎたので、教わった商店を確認するために
カティサーク〜グリニッジの辺りを歩いて、ホテルに戻った。
先日見つけたジブリ上映中の映画館の他に、この街にはもう一軒、
スクリーンがあることもわかった。

夜はホテルのロビーでメールを打ちまくったり、台本を読んだり、
2/14までの予約を延長した。ずっといるから、受付の人と打ち解けてきた。
もっといろというけれど、さすがに財布がもたない。
就寝は24:00。

翌2/11は唐さん82歳の誕生日、うちの娘も3歳になる。

2/10(木)傘がない

2022年2月10日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑終演後、こうして場内で写真を撮って良い雰囲気がロンドン流らしい

昨日は『芝居の大学』の最終回だった。
日本の19時スタートは、こちらの10時開始。
だから前日の段階で語学学校には欠席することを伝えて、
早朝からzoomのリハーサルに臨んだ。

3名のゲスト、
桐山知也さん、浅井信好さん、鈴木励滋さんのお話はどれも面白く、
作品表現を追究すること、創作プロセスを全て表現と考えること、
さらに拡げて、日々の暮らしの中に表現を意識し、日常を緩やかに
変えていくことの面白さと可能性について語り合った。

後半には、前回のゲストだった横山義志さん、鈴木伸幸さんも
加わって、それぞれの思うところを述べてくださった。

"表現"を取り巻く何重ものレイヤーと、
それぞれの段階が持つ可能性と課題に触れることができた。
そして、目の前にはロンドンの下町とThe Albany があって
昨日は情報量の多さに圧倒されたけれど、午後から今朝までの
時間を使い、少し頭を整理することができた。
課題は、一直線につながっている。

そのようなわけで、午前は日本とのやり取りでホテルにおり、
午後は午後で、ミミやエマや、Albanyのスタッフが多忙だったので
これまたzoomで話し、ホテルにいた。

これから自分は、エマの担当する
"Here Now Us"というプロジェクトに伴走する。
その土台となる情報共有を、慣れない英語でやっている。
直接会うより、Zoomやメールでの内容理解は格段にくたびれる。

家探しは続いているが、良い物件が候補に上がり、希望を持つ。
2/10(木)の夕方に下見に行けるようエージェントが手配してくれた。
安価だし、すでに住み慣れ、移動に便利なグリニッジ周辺だし、
なんとかこの機会をものにしなければ。

夜は、どうしようか迷ったけれど、
ホテルばかりにいると気がふさぐので、街に出かけた。
小雨の中を電車に乗ってセントラルに出ると、
金田家というラーメン屋を見かけたので、入って食べてみた。
日本で食べるより美味く感じたけれど、会計は2,500円くらい。
外国のものは高級品だ。

それから、ウロウロした後にサウス・バンク・センターに行き、
当日券を買って、ロンドン・フィルハーモニックを聴いた。
指揮者クラウス・テンシュテットのCDの演奏を務めていた楽団だ。

ちょっと疲れていて、ウトウトしながらの鑑賞になってしまったが、
真ん中に演奏された現代曲のヴィオラ協奏曲が面白かった。
2004年に作られた曲らしいけれど、演奏後は作曲家も舞台に上がった。

メインのマーラー1番は、これまで何度も聴いてきたが、
スイングが多く、指揮者の力かオケの特徴か、
それとも今の自分の状態が影響しているのか、
分からないけれど、日本で聴いてきたのとは別モノに感じた。

ノリに乗って、ところどころ雑で、突っ込みが激しい。だから盛り上がる。
楽章間では、第2ヴァイオリン奏者が楽器の不具合で袖に引っ込んでしまい、
なかなか再開できないでいると、お客が笑いだし、ついにはリントゥさんが
「スコアに書いてあるんだよ」と大声でジョークを飛ばして場内が爆笑した。

それもあって終盤はさらに特攻的演奏。
お客さんの入りは6割程度だったが、みんな立ち上がって
掛け声を飛ばしながら盛り上がった。掛け声だ。もうコロナは関係なし。
それにしても、今日は最安席£14=2,500円で聴いたけれど、
とても良い環境に感じた。ラーメンより若干安いって・・・
これからはこういう感じで数を鑑賞していこう。

帰りに、雨が強くなっていて、
そういえばまだ傘を買っていないことを思い出す。
いくつかのスーパーを見て回ったが、日本のように雨だと軒先に
設置して売る様子もなく、どこで買ったら良いか、今だに分からない。
語学学校で訊いてみよう。

それにしても、ロンドンの街にはたくさんのホームレスがいて、
コスタコーヒーの紙コップなどを置いて、寄付を求めている。
何人か、傘をさしながら地べたに座り込んでいる人を見かけたが、
彼らはなぜ屋根のあるところに移動しないのか。

追い出されてしまうからか。あの状態の方がお金が集まるからか。
よく分からない。彼らが傘をどこで手に入れたかも、よく分からない。

帰ってから24:00に寝て、6:00に起きる。
久々に理想的な就寝・起床タイムだ。

2/9(水)まるでお遍路のように

2022年2月 9日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑サドラーズ・ウェルズ・シアター。安藤洋子さんが活躍してきた場所。

学校や劇場が二日目の昨日も、面白い一日を過ごした。

午前中の講座は二部制。9:00-11:00まで発音、文法、単語を学ぶ。
30分の休憩をはさんで、11:30-12:30がディスカッションの時間。
完了のニュアンスの違いや、接続詞を学び、すぐに使い始める。
会話の時間には、学校で初めて、少し打ち解けて話す人を得た。
彼女はスペインの方で、大学で数学を教えているのだそう。

担当教官デイビットさんや、総務のマホメットさんと個別に話しができた。

デイビットさんは、かつて船橋で一年を過ごしたらしい。
自分は一度しか行ったことがないので、彼の方が断然詳しいわけだが、
当然、『続ジョン・シルバー』に出てくる船橋ヘルスセンターの話をする。

歴史・哲学・神学を学ぶことを趣味とするマホメットさんは、
自分が舞台の仕事について名刺を渡しながら説明すると、興味を持って
くれた。ロンドンで見るべきものを、どんどん教えてくれるよう依頼。

午後は劇場に行き、昨日よりさらにスタッフの名前と顔を覚えつつ、
ミミが自分の滞在先探しを手伝ってくれた。
彼女が見つけておいてくれたサイトはMixBより良くて、
すぐに入居できる情報をたくさん得ることができたが、いかんせん高価。
月初めには情報が増える傾向にあるので、サイトに網をかけつつ、
2月半ばからは、今より安価で朝食付きのホテルに移動するのが吉、
という判断に至りました。このホテルへの以降手続きを明日に行おう、
そう言ってミミと別れた。

何しろ、彼女は忙しそう。
今年、The Albanyはずっと特別なフェスティバル期間中なので、
いくつもの企画とトラブルを抱えている様子。彼女が同僚とする会話から
"angry"という言葉が何度も聞こえ、家が遠いらしいこともわかったので、
俺は大丈夫だと言って、こちらは次の行動にうつることにした。

ちなみに、今日はAlbanyにあるいくつもの集会室の中で、
一階にある大きめの部屋に地域のシニアの皆さんが集っていた。
KAATでは演劇やダンスを志す人を集め、創作する仕事をしてきたが、
こちらは劇場の規模からしてもより地域密着型で、車椅子の方、
杖をついた方が散見される。当然、人種も入り乱れている。

という様子を見ながら、今日もセントラルに行くことにした。
公演やステージを見る前に、まずは各地に道をつける。
そして、パンフレットやフライヤーをもらうというのが目標だ。
ホテルに帰ると疲れが出てすぐに寝てしまい、夜中に起きる生活が
連続しているので、きっと英語のストレートプレイには耐えられない。
まずは顔見せ、観劇は後日にする。動いていれば、起きていられるし。
少し遅めに帰って23:00-5:00くらいに睡眠時間をもっていきたい。

Albany最寄りのデトフォード駅から国鉄に乗ってロンドンブリッジに着く、
出発時にオイスターカードをタッチし忘れて、駅員さんに補い方を
訊いたら、初めて切符を買って駅を出ることになった。
案内も親切で、ありがたい経験。

そこから地下鉄に乗り換えて、ロイヤル・コート・シアターを目指す。
去年KAATで上演され、今月末に米澤が出演する『ポルノグラフィ』が
初演された劇場だ。若手の育成と発掘に力を入れ、登竜門の一つらしい。
地下にはパブと演劇関係書を扱うさほど大きくない本屋
「サミュエル・フレンチ」がある。現在公演中の演目のチラシをもらい、
受付の女性や書店のおじさんと喋って、次の目的地へ歩く。

明らかな高級住宅、ブランド店が集まるカドガンを抜けて、
立派なケンジントン駅の裏手からハイドパークに入った。
1999年に、さいたま劇術劇場でロイヤル・シェイクスピア・カンパニー
との共同制作『リア王』が上演された時、そのロンドン公演の様子も
撮影されたドキュメンタリーの中で、真田広之さんがランニングして
いたのはこの公園ではなかったか。日本のスターは当然ながら、
良い待遇を受けていたんだなと、土地柄を把握して実感。

公園を抜けてノッティングヒルに至る。
ここには、京都のレコード店「ラ・ヴォーチェ京都」の御店主に
教えてもらった「Classical Music Exchange」がある。
(ロンドンのディスクユニオンみたいな感じ)

御店主に挨拶して、日本から来た、この店を教わって来たと
伝えると、地下のクラシックコーナーは改装中だと言われた。
仕方ない。一階の商品の中から気になるジャンルを物色していると、
特別に地下を開けてくれて、さっそくレアものを発見。
日本だと滅多になく、ネットでは5,000〜10,000円するCDを2枚
それぞれ3ポンドずつで譲ってくれた。
また来ます、と伝えて地下鉄へ。

ノッティングヒル駅からセントポール・カテドラル駅に行き、
そこからの乗り換えがよく分からない。何故か訊けそうな人もいない。
そこで次なる目的地であるアルメイダ劇場まで歩き出した。
夜のオフィス街と静かな住宅街を抜けて、エンジェル地区に到着。
アルメイダでもフライヤーをもらった。この道すがら2ペニーを拾う。
お金を使うばかりの英国で得た初収入だ。

同時に、看板で名前を発見したので、さいたまゴールド祭のために来日し、
安藤洋子さんもイギリス公演の党打ち会場にしていたという
サドラーズ・ウェルズ・シアターにも行った。

途中、とんこつラーメンの金田屋、ユニクロ、無印良品を発見した。
帰りは、どうもバスの方が良いようなので、ここで渡英初めてバスに乗車。
ロンドンブリッジ駅から、直通でグリニッジ駅に行く電車を見定めて、
今日はストレートに帰ってくることができた。

電車を待つ時間が25分近くまったので、駅構内のお店でサンドイッチを
買ったが、レジに並んでいるお客を目掛けて、一人一人に懇願している
中年男性がいる。どうからお金が無くて一番安いピザのピースを
リクエストしているようだ。私は英語が分かりません、と伝えたら
次の人に行ってしまったが。彼はどうやって改札を通ったのだろうか?
電車賃はあるけど、食べるものを買うお金はないのだろうか?

不思議に思いながら、21:30頃にホテルに帰り。
歩き続けて20㎞以上、疲れて22:00には寝る。
3:00に起きて、これを書いています。

今日はこれから、講座『芝居の大学』の最終回!


↓英語の担当教員・デイビット先生
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2/8(火)研修がはじまる

2022年2月 8日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑帰り際のミミ。彼女は7分後に出発する電車に乗らなければならない。

昨日から全てが始まった。
1/31にロンドンに来てからはあくまで肩慣らし、
時差を克服して生活リズムを整え、周辺の環境を知ることに注力してきた。

そして、いよいよ第二週から劇場研修と語学学校と、
自分がロンドンに来た主目的がスタートした。

正確に言うと、研修先のThe Albanyには前日2/6(日)に初めて入った。
『The Dark』という子ども向けのプログラムを上演するとHPで見たので
ミミさんにリクエストすると、招待してくれたのだ。

が、昨日はミミさんも、劇場のトップであるギャビン・バロウさんも
いないとのこと。日本だと「今日はアツシが初めて来るから」と
特別に出張ることもありそうだが、きっと休日に対する意識や就業体制が
しっかりしているんだな、と推察しながら劇場を訪ねた。

演目は巡回しているものをThe Albanyが受け入れたもので(買い取り?)、
この劇場のオリジナルではなかったけれど、演者は流れるように喋り、
歌い、踊り、パントマイムし、客席の子どもたちと即興で対話していた。

暗闇を怖がるというのが万国共通の子どもの習性だが、
少年に扮した俳優を、"闇"を演じる女優さんが脅かしながら劇が始まり、
やがて最後には友情を結ぶ。女優さんは電子ピアノやエレキギターも
演奏したりして、とにかく万能。
スタッフ(おそらく2名ほど)や美術も含めて、
ハイエース1台に乗る量の、とにかく洗練された1時間弱の劇だった。

実は、面白かった一方で、不安にもかられた。
それは、劇場空間そのものがとても小ぶりで、はっきり言えば
チープな感じがしたからだ。例えば、KAATの大スタジオや
世田谷のトラムなどの方が大きいくらいのサイズ。
設備は比べるまでもない。まあ、自分はテント演劇の徒なのだから、
これが向いていると自分を鼓舞する一方で、11ヶ月間研修する場所として
不安を覚えなかったと言ったら嘘になる。

と、ここまで読んで気づかれたと思うが、
さらに正直に言うならば、自分がここに実際に来るのは初めてなのだ。
我ながら、これはあまり良いことではない。研修先というものは、
やはり実地に目で見て選ぶのが本道だと思う。けれども、
自分は、いつかさいたま芸術劇場で聴いた劇場主ギャビンさんの講演と
伝え知る情報によってこの場所を選んだし、研修への応募を本格的に
思案した2020年の初頭は、パンデミックの始まりでもあったから、
渡英など考えられない状況だった。だから賭けをした。
賭けをして自信がずっとあったけれど、それは訪問初日で少し揺らいで
ホテルに戻った自分を少しナーバスにしたというのが、偽らざるところ。

果たして、初日。
すべてが始まったと冒頭に書いたのは、今日が語学学校の初日でも
あったからだ。すでに週末に確認済みなので、自信満々に学校までの
道を往き、建物の2階に入った。

事務局のあいさつしたら、9:00まで待っていてと言われる。
その間に、PCとケータイのWi-Fiを登録し、朝だけでは足りなかった
『秘密の花園』の研究時間を補った。

9:00になると、今日が初日の生徒を集めてイントロダクションがあり、
学校について、ロンドンでの生活について、細かな説明があった。
説明してくれた男性はマホメッドさんといって、
僕の趣味は、哲学・歴史・神学を学ぶことだと言っていた。
さすが、ムスリムの預言者の名を冠する男だと思った。

初めの2時間は各種登録作業や英語力を測るためのテストで
瞬く間に過ぎ、英語を学ぶ簡単な個別面談を経て、授業へと案内された。
と言っても、この時間は座学ではなく、いきなり各チームに別れて
先生が課したお題で話すというもの。自分が参加を命じられた
女子3人チームの関係性や話題はすでに流れに乗っており、
しかも彼らがイタリアやドイツから来たティーンだったので、難儀した。
「ア・ツシ?」「ジャパン?」「スシを思い出すわ」
「もうお昼だからお腹すいた」そんな感じだった。
こわばった1時間は異様に長く感じた。

事務局に、初日は難しかった、また明日!と大声で伝えて学校を後に。

ホテルに一旦戻り、荷物や身支度をし直して、劇場に向う。
ちなみに、ホテル〜学校は徒歩25分、ホテル〜劇場は15分。

15時少し前にThe Albanyに着くと、
受付の男性(トム)がセキュリティを解除してくれて、案内された。
カフェに、ミミとヴィッキーが打ち合わせしながら待ってくれていた。

Zoomで会ってきた彼らと、やっと初対面。
皆、自分にも分かりやすく話してくれた。
日本茶と両口屋是清の二人静というお菓子をプレゼントした。
足柄(神奈川)と名古屋である。特にミミには、1/3に広隆寺で入手した
弥勒菩薩のポストカードを渡して、自分の変な英語と付き合い続けて
くれているお礼をした。

そのうち、エマというスタッフの女の子も加わって、重鎮ヴィッキーの
長広舌が始まった。このあと年末まで、この劇場を拠点に周辺一帯の
ルイシャム地区を巻き込んで行う様々なプロジェクトについて
説明してくれた。これは聴き取るのにさすがに苦労したが、

①地域の人々から集めたエピソードを音楽化する企画
②伝統から最新流行までを網羅したダンス企画
③LGBT問題に取り組む企画
④貧困の問題に取り組む企画

があると理解できた。全体のアテンドをミミが行ってくれ、
まずはエマの担当する企画にくっついて動くべしと言われた。
説明の全ては理解できないけれど、一緒に動きながら理解していくだろう
と伝えて、ヴィッキーにお礼を行った。

それから、オフィスに案内された。
スタッフの誰も彼もが女性。ハーレムのようだと伝えると、
ミミは笑いながら、うちは女性23人、男性は4人、アツシで5人目と言う。
KAATも女性が支えている。世界的な傾向なのだろうか。
ちなみに、デスクは全てシェアするシステムで、日ごとに予約して
押さえるのだそうだ。だから全てのデスクはキレイで、
1日の終わりにはそれぞれが自分の痕跡を消して帰る。
役割によってだいたいの定位置が決まっている感じもしたが、
原則はシェア&予約制で、代表のギャビンはだいたい家で仕事しているそう。

ここにきて、ギャビンは腹痛により今日は来られないことも分かった。

それから、新しいメールアドレスをもらった。
これで劇場のメーリングリストに加わるということだ。
ただし、ログインの仕方が分からず四苦八苦していると、
明後日にセリという総務担当の女性が詳しく指南してくれると教わる。
いずれにせよ、生まれて初めて末尾が「.UK」のアドレスを入手。

さらに施設案内を受けたが、これが良かった。
この劇場には昨日見た小さなホールの他に、三つの会議・稽古スペースと
数多くのオフィスがあり、さらに広い庭もあった。
「うちには今、26のレジデントカンパニーがある」とミミが言った。
しかも、たまたま今日はカフェミーティングの日で、フェスティバルに備えて
創作中のアーティストたちがカフェに大勢集まってきて、賑やかになった。

ここにきて、昨日の印象は完全にくつがえった。
The Albanyを日本と同じ感覚で単なる劇場と捉えてはいけないのだ。
ここは"拠点"であって、多くの人が出入りしているその規模は、
KAATなどを遥かに凌ぐ。この劇場の小さなホールも公演会場だが、
発表の場はそれだけではない、劇場前の広場も、街のそこここも、
巨大な会場なのだ。このことを実感して、完全に安心した。
自分の選択は間違っていなかったと思った。
創作の基地だとすると、とてもデカい基地なのだ。

安心して、改めて年末までを過ごすことができる。
昨日の感慨を、皆さんに謝りたいような気持ちになった。

夕方を過ぎると、近所のパブに連れていってもらい、
気の向いた何人かがアフター5を過ごす輪に加えてもらった。
「アツシは初日だから」と、ミミとキャロリンという女性音楽家が
一杯ずつジンジャーエールをおごってくれた。
皆、食べずに飲んでいる。飲んで、たくさん話している。

キャロリンの相棒らしきアナという女の子、ロミカという女性とも
たくさん喋った。ここ1週間、自分がロンドンに着いて経験した
トラブルの数々は、皆を愉しませることができたようだ。

喋るのは簡単だ、ブロークンでもなんでも、自分が何を言っているかは
当然ながらよくわかる。問題は聴く力。早く、皆の話を詳しく正確に
聴き分けられる英語力を身につけたいと思った。

19:30過ぎにミミが帰るというので、自分も店を後にした。
彼女の家は遠いらしい。それを知って、なおさら頭が下がった。
明日は13:30に合流して、ランチをともにし、家探しを手伝ってくれる
という。ミミが菩薩に見える。

20:00頃にホテルに戻ったが、当然ながら英語ばっかりの初日に
疲れて、すぐ寝てしまう。夜中に起きて、これを書きました。

↓デスクをシェアするシステムなので、いきなり自分もデスクで仕事できる
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2/4(金)徐々に慣れつつある

2022年2月 4日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑グリニッジの王立天文台

睡眠時間が夜にまとまらないために、常に軽い頭痛。
しかし、早朝に起きて『秘密の花園』にあたり、英語の勉強もする。
『秘密の花園』は1幕の終わりに差し掛かり、大学一年の秋に観た
紅テントでの上演から、堀本さんや飯塚さんの声が聴こえてくる。

堀本能礼さんは唐組を辞めた後、
オルガンヴィトーの『黄金バット』に出演されているのを拝見した。
飛んだり跳ねたり、体当たりの演技で、あの美声が健在だったし、
あの公演には飯塚燈子さんも出ていた。
自然と色々な記憶が蘇るペアだった。

その後、堀本さんは2017年に46歳で亡くなってしまった。
自分が唐さんに親しく教わるようになっていったのが2001年頃、
丁度その頃に退団された堀本さんとのやりとりは殆ど無かったけれど、
唐十郎ゼミナール一期生の先輩たちは、音響操作の助っ人として
関わったはずだ。

『24時53分「塔の下」行きは竹早町の駄菓子屋の前で待っている』の
上演に、おそらく唐さんに請われてやってきていた。
音の強弱によって身をくねらせながらオペレーションする堀本さん。
演じるような、ダイナミックな仕草が狭い客席の隅で光っていた。

それらを終えたら、近所の中華街で坦々麺(想像と別モノだったけど)を
食べて、週明けから通う語学学校の場所を確認しに行った。
道すがら、国立海事博物館やクイーンズハウスを見かけたので、
帰りに寄ってみた。皆、無料で入れる。満喫した後、天文台にも行く。

帰りには、スーパーでオレンジジュースや水(最重要!)、
寒いのでカップスープの素を探して買った。
これで部屋で温かいものを体に入れることができる。
辛ラーメンのカップ版も見つけたが、お箸がないので見送った。

さらに、スーパーの外のATMに、利用者も物乞いもいない場所を発見。
これはと思い、何度かのトライの後についにお金をおろすことに
成功した。やれやれ。徐々に生活に慣れてきた。

と、思った矢先、
送られてきたエージェントによる生活の手引きには、
野外のATMは危険だから使うなと書いてある。

背中にリュックを背負って歩くのも、
音楽を聴きながら移動するもの避けるべし、とある。
どれくらい真剣に受け止めれば良いのだろうか悩みつつ、
バスの乗り方などは参考になった。

週明けには、ミミさんはじめThe Albanyの人たちに会える。
今は何を危険に思い、何に安心したら良いか掴めず疑心暗鬼だが、
彼らに会えば、ある程度ここでの常識や習慣がわかる。
オススメの店や買い物先も教えてくれるという。
歓迎会的にレストランに連れて行ってもくれるそうだ。

今日は身辺整理に終始したので、そろそろ初めて観劇に行きたい。

↓まいばすけっと的スーパー「セインズベリー」左端にATMがある
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2/3(木)受けと攻め

2022年2月 3日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑ピカデリー・シアターにて。偉大なり、中根公夫!

一晩が経ち、さまざまなメールやZoomのやりとりを経て、
どうやら昨日に椎野に来たメールは、一度目の間違ったフォーム入力が
原因だったことがわかってきた。ということで、割と自由らしい。

一方で、相変わらず生活基盤が整ったとは言い難いので、
自分が何を不安に思っているか、書き出して整理してみた。

①2/14(月)以降の住居が決まっていない
②デビットカードでお金をおろせることを確認していない
③語学学校のオリエンテーションの日時変更が必要(2/7実施の予定)
④語学学校への道を確認しておかなければならない
⑤コインランドリーの位置を含む、洗濯の仕方がわからない
⑥グリニッジにいるのに以外と忙しく、天文台に行っていない

以上である。

①については、ネットで物色しつつ、2/7のミミさんとの接触を待った方が
良さそうだ。交通や治安についての助言がいる。だから一旦放っておく。

②昨夜、スーパーの前にATMらしきものがあったが、英語に自信がないので
ぜひ他に利用者がいない時にトライしたい。しかも、そのATMの前には、
物乞いの女性が陣取っていて、話しかけてきたり、お祈りの言葉を始終
ブツブツやっているのだ。あれは怖い。

③これはメールを打ち、返事待ち。

④散歩がてら解決しよう。

⑤友人のYさんにLINE電話したら、風呂で石鹸で洗えとアドバイスを受けた。
合理的だ。とりあえずホテルのシャワーとボティソープでゴシゴシやる。
イギリスは乾燥しており、乾くのが早そう。

⑥ ④とともに早々に行くべし。

・・・というように、まだまだ生活基盤が整っているとは言い難いが、
こんな「受け」にばかり終始していると気がふさぐので、ここは一度
セントラルを攻めてみることにした。

初日は何しろ余裕が無かったし、日没しかけのロンドンを移動した。
が、今日は荷物も軽いし、余裕がある。外の景色を見ながら、目に入る
文字を片っぱしから電子辞書に入力しながら都心部を目指す。

果たして、Forylesという本屋に行って品揃えを見る。
舞台については照明やメイクの本まで充実しており、
DVDやCDのコーナーもあった。Jordi SavallのCDが潤沢で安い。
日本語の本のコーナーもあったが、520円の新潮文庫に13ポンドの
シールが貼ってあった。暴利を感じる。

『ハリー・ポッター』のパレス・シアターを通り、
ラーメン一風堂を発見しながら、ロイヤル・オペラ・ハウスを確認。
ラインナップを観て、今日がヘンデルの『Theodora』初日だと知る。
日本では希少かつ来日公演も乏しいバロック・オペラを観るのも
今回の目標の一つ。今日は夕方にZoom会議なので出直そうと誓う。

ピカデリー・サーカスにも行ってみた。
中根公夫さんが1990年代に格闘したピカデリー・シアターを見る。
中根さんはここで清水邦夫さんの『Tango at the end of Winter』
ロングランを行い、チケット会社の倒産という憂き目と闘ったのだ。
中根さんの挑戦の大きさを、改めて実感する。

他にも目に飛び込んでくるものはいくつもあったが、
会議に備えて余裕を持って引き上げる。Greenwich st.直前の車中で
電車の不具合があり、途中の駅で降ろされたりした。
日本では人身事故だが、こちらでは車両の不具合・・・。

いずれにせよ、慣れないうちは関わる人たちの信頼を得るために
余裕を持って行動しよう。ホテルに戻ってミミさんとZoomで話したら、
安心して急激に眠くなった。

時差ボケと食糧難、初めての街や英語での会話......
どれが決定打なのか自分でも分からないけれど、無意識な消耗を感じる。
一方、ロイヤル・オペラをきっかけに観劇の計画を練り始めたが、
豪華プログラムが、しかも安い。
チケットの予約入力に不安があるし突発的な予定が入る可能性があるので、
しばらく当日券で飛び込んでみよう。Covid-19の影響で空席は多そうだ。

攻防一体の一日。

↓高額の値がついた日本書籍
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2/2(火)水を求めて

2022年2月 2日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

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ロンドンに着いたばかりの昨日は、夕方に一度寝てしまった。

で、夜中に起きた。
起きて、水が尽きようとしているのに気づいた。
思えばこれは飛行機内でもらったペットボトル。
いまやコップ一杯分もない。これはまずい。
そう思ってホテルの外に出た。
ところが、駅前にも関わらず店がない。自販機もない。

仕方ないので、戻って昨日のゼミログを書く。
Facebookに記事を上げたらエールがたくさん来て嬉しい。
が、水を手に入れるのに四苦八苦しているこの研修が、
果たしてどこまで行き着けるのか、不安。

本格的に寝たのは深夜で、しかし、早朝に目覚めた。
やっぱり喉が渇くので、ホテルの受付にいた女性に質問した。
すると彼女はカウンターの裏に自動販売機があるのを
教えてくれた。ところが、である。

ホテルの自販機の水は500mlで2ポンド(約320円)もする上に、
硬貨でしか買い物ができない。
イギリスはカードで何でも買える。そう言われていたが.....。

手もとのコインを結集させてもに2ポンド分に及ばず。
見かねた女性は、でかい紙コップに食堂のウォーターサーバーから
並々と水をくれた。これで当座が凌げる。

それから、抗原検査をして陰性の結果を四苦八苦しながら入力。
英国政府のフォームは優しくない。最近に様々つくった登録情報を
次々に入れる必要があるが、どれがどれやら混乱。

何とか送信して、いつものルーティンに入る。
台本を読み、英語を勉強し、メールをチェックする。
そうこうするうちに政府から返信が来た。
どうやら、これで動いて良いらしい。

2kmほど歩いてルイシャムという地区の郵便局を目指した。
ここに自分のビザのカードがあるのだ。
道すがら、ケバブと水を手に入れることができた。
安い買い物なので、やはりカードは使えない。
道の渡り方、横断歩道の位置がわかりくいので、
周囲を見回して人々のを真似した。

郵便局は混んでおり対応もゆっくりだ。
ようやく自分の番がきてパスポートを見せ、ビザを取りにきたと
伝える。受付の人は初めピンとこなかったが、自分のカードが
あるはずだと伝えると裏に入っていった。
果たして、BRPカード(生体認証付滞在許可カード)が手に入った。
ちゃんと年末までいて良いとの記載に胸を撫で下ろす。

気分を良くして、今度はThe Albany Theatreに向けて歩き出す。
実は出発前の自分は、数日間はホテルにいなければならないと
思っていたが、直前にそうではないと知った。
アテンドしてくれているミミさんにはそれを伝えられずに
来てしまったので、いっそ直接に訪ねてみようと思ったのだ。

劇場に近づくについて、商店街が広がる。
アジア系やアフリカ系のお店と人々が入り乱れて、
なかなかにハードな場所を研修先に選んだものだと改めて思った。

ところが、Albanyのそばにやってきたところで引き返すことになった。
日本の椎野のもとに、英国政府からのショートメールが入り、
アツシは8日間の隔離と2度目の検査が必要だ、というのだ。
しかも、ちゃんとホテルにいるか場合により連絡する、とも。

ひょっとして劇場に迷惑をかけてはいけないので、
急いでホテルに帰る。この時、歩いて15分の距離だと知った。近い。
部屋に帰って冷静に考えてみると、羽田で入国のためのフォームに
誤りを指摘され、やり直したのを思い出した、椎野への連絡は、
一度目の間違った申請に対するものではないか。

そんな風に考えながら、とりあえず現状をミミさんにメール。
明日の午後にzoomで話そうということになった。
そして、疲れたので少し寝た。19:00くらいに起き出して、
スーパーを探し始める。今朝、自分は駅の南側を歩いて
何もないと思ったが、どうやら北に行けば繁華街があるらしい。

行ってみると、確かに繁華街があった。
スーパーもカフェもレストランも、たくさんあった。
紅茶輸送船として活躍したカティサークや本屋、映画館もあった。
昨日は湘南モノレール沿いと書いたが、やはりここはロンドンだった。

水不足の恐怖から逃れるため、合計3リットル買ってしまう。
2リットル0.5ポンドのスコットランドの軟水が美味しい。
映画館では来週からジブリ特集が始まる。第一弾は『PONYO』。

今日動いたゾーンでは、マスクの人は半分以下。
殆どがはずして動いている。ダースベーダーみたいな男女が一組だけいた。
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2/1(火)ロンドンに着いた

2022年2月 1日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑部屋は簡素かつ広め。合理的で悪くない。
ちゃんと熱いシャワーが出る!

現在、イギリスの時間で2/1(火)の0:24。
こちらの夜中に起きてしまったので、これを書き始めた。

昨日の午後にロンドンに着いた。

飛行機内での12時間は充実して過ぎた。
本をいくつも読み、映画も観た。
途中ウトウトしたけれど、本格的には眠れない。
興奮しているし、外の景色も面白くて目を丸くし続けた。
ロシアの大地だ。

200人以上を収容する飛行機の中で乗客は30人ほど。VIP待遇。
CAさんとお話ししたら、新国立演劇研修所にいたことがあるらしい。
自己紹介をしたら、帰りにプレゼントを頂いた。

ヒースローにつくと、まずSIMカードを買った。
どれも日本のケータイ会社より安い。
ネットがたくさん使えて、電話とメールは無制限。
そういうものが安く手に入った。大事なのは英国での電話番号を
取得できること、イギリスの人はLINEをしない。
WhatsAppというアプリを使って、これがLINE的機能を果たす。
違いは、これが電話番号に紐付いていることで、だから番号も必要なのだ。

次いで、オイスターカードに課金した。
これはSuicaやPASMOみたいなもので、渡英する知り合いが
花向けにプレゼントしてくれた。ここにクレジットカードでチャージする。

チャージの仕方も、電車の乗り方も、
ぜんぶ分からないので、いちいち聞きながらひとつひとつ行った。
対応は丁寧で、何より、まだ陽が高いので希望が持てる。

地下鉄は狭く、ボロっちく感じた。
身体の大きな人が多い割に、日本より窮屈で室内灯が点滅する。

日本にいるときに、
リュックを背中に背負ったり、イヤホンを付けて歩くのは
防犯上よくないと言われてきた。
けれど、地元の人は平気でこの二つをこなしている。
早くこんな風になりたい。

自分の宿は時計台で有名なグリニッジにあり、
郊外にある空港から都心を経て、また郊外に来たという感じ。
着く頃に日没したせいもあり、駅前は殺伐として寂しい。
それにパッと眺めてお店が見当たらない。
大船駅から湘南モノレールに乗って数駅いったところ。
そんな風景を思い出した。

ホテルの受付ではハードルが3つあり、
支払いのこと、注文しておいた抗原検査キットのこと、
Wi-Fiのこと、これらを質問してクリアしなければならないが、
混み合う時間だったせいもあり、フロントの女性はイラついていた。

とりあえず一つ目だけ手続きして部屋に入ったあと、
着替えを済ませ、頃合いをみてもう一度行った。
こちらは自然と大袈裟にお願いしたり、解決すると大感謝してしまう。
すると、相手も笑いはじめて人間的な対応になった。

と、ここまできて猛烈な睡魔に襲われて寝た。

明日の第一目標は、コンビニかスーパーを見つけて買い物をすることだ。
飛行機の中で食べまくったせいでお腹は空かず、今のところは
機内でもらったペットボトルの水で充分だ。

日の出とともにウロウロしてみよう。
そしたら、街が少しは自分のものになるはず。

↓飛行機内で頂いたプレゼント。ありがたい。
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1/31(月)今日から渡英します

2022年1月31日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
今日から渡英します。
今これを書いているのは、出発前の5:04。
このあと、8:00には家を出て、津内口や椎野が送ってくれる車で
羽田空港に行き、11:30の便でイギリスに向かいます。

初めて一人で、国際便に乗ります。
初めてヨーロッパに行きます。当然、イギリスも初めて。
空港に着いたら保険に入ろう、とか、円をポンドに換えようとか、
やるべきことがいっぱいあって、ひとつひとつクリアしなければ
ならないことを数えています。実に不慣れ。

自分は、一度行った場所にはフットワーク軽く何度も通うのですが、
行ったことのない場所に対してはかなり出不精です。
何か、大学受験の時にたいそう緊張して新幹線に乗った時のことを
思い出します。一年経ったら、すべてが何でもなくなって
ホイホイとヨーロッパに行くようになる。
そのための研修でもあります。

しかし、このところはやはりドキドキしてきました。
牛乳を買うときなど「あ、賞味期限が2月に入っている」
タワーレコードの新譜情報を観て「発売は2月か・・・」
Amazonを見ていても「オレがいるうちに届かない・・・」
とこんな具合に、迫り来る今日を実感して来ました。

一方、なるべくいつものペースを崩したくないので、
今朝は4:00には起きて、台本を読み、これから走ってから行きます。
読んでいる台本は『秘密の花園』。唐さんがニューヨークに滞在中、
ホテルにカンヅメになって書いたそうですから、今の自分に
向いているように思いました。

私が大学に入った年の秋に、
唐組が素晴らしい上演をした演目でもあります。
曙橋のフジテレビ跡地で観ました。霧雨の降る高台で見た
新宿や池袋を臨む夜景は今も忘れません。
まだ唐さんを身近に感じる以前のことです。
今年の秋に唐組が上演するそうですが、これも観られない・・・

というわけで、長い長い今日が始まります。
時差がありますので、自分の1月31日は24+9=33時間ある。
ヘトヘトになるのではないかと思い、先にこれを書いておきました。
昨日の米澤の投稿を読んでもらいたいので、アップは夜にします。

それでは、「イギリス戦記」始まります。
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