8/8(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第1回レポート(中野)

2022年8月 8日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野WS『黒いチューリップ』
DSC03829.JPG
↑暴れるラムネ。懐かしい学生時代の上演です。

昨日は『黒いチューリップ』第1回WSの初回でした。

いつも初回は特に準備をして臨みます。
内容以前に、唐さんがどうやってこの台本を書いたか、
経緯や、当時の唐さんを囲む面々について話す必要があるからです。

が、昨日は出鼻をくじかれました。
恐ろしいZoomトラブル。ついさっきまで正常に稼働していたzoomが
いざ時間になって正式に入ろうとしたところ、インストールが必要だ
といきなり言い出し、慌てました。

皆さんに待って頂いて応急処置をし、
ブラウザから入る方法で何とか成立させることが出来ましたが、
冒頭がかなり滞ってしまいました。申し訳ないです。

終了後に最新版をインストールして正常起動を確認しましたが、
便利と思っていたテクノロジーの落とし穴です。怖い。怖い。

さて、肝心のWS内容です。
経緯については、こんな感じの話をしました。

・これまで蜷川さんと作ってきた作品のモチーフが生きている
 →「六本指」「大人数の出演」「池」
・根津甚八さんと小林薫さんという看板を失った唐さんの試行錯誤
 →李さんの相手役探しでもある
・前年に本多劇場柿落とし『秘密の花園』で活躍した柄本明さんの抜擢
・蜷川さんの商業演劇デビュー作『ロミオとジュリエット』がベース
・1980年に状況劇場が行ったサンパウロ公演から、南米の鳥
 グアーチャロ(アブラヨタカ、Oilbird)のアイディアを得たはず

そこから冒頭シーンへ。

100人のお客がひしめくパチンコ屋から劇はスタートし、
主人公エコーのモノローグが始まるのが見事です。

エコーは売れない声帯模写で、パフォーマーとしての腕は
イマイチだが、声無き者の声を代弁するのに長けている。
だから「エコー」という名だとアピールします。
洞窟の奥に棲み、視覚は弱いけれど聴覚でコミュニケーションする
グアーチャロとの共通点にもここにあり、この劇のテーマを強く
打ち出すシーンでもあります。

それから、景品交換所の婆さんとぶつかります。
※後に「サキ」という名だとわかる彼女、「咲き」からきています。
そこから水が異常に噴き出すラムネ瓶と取っ組み合ったり、
エコーがもともと持っていたセブンスターのタバコを巡って、
婆さんに難クセをつけられたりします。

パチンコの玉とお金をいきなり交換することはできないので、
パチンコ店ではキーアイテムと玉を交換、それを少し離れた場所に
ある景品買いに買い取ってもらうことで現金化するシステムについて
話しました。このパチンコ店では「セブンスター」が交換のアイテム。

婆さんの意に従って100人の客がエコーのセブンスターを奪い、
人々の手から手へ渡ります。そして、必死でそれを追いかけるエコーは
一台のパチンコ台を壊してしまう。それこそ、黒いチューリップ
(※「チューリップ」とはパチンコ玉が入る当たり穴のこと)を持つ
壊れた台でした。物言わぬ黒いチューリップに、否応なく惚れ込むエコー。

と、ここに、エコーの同居人である少年サワヤカ君がやってきます。
彼の爽やかさはパチンコ店にたむろする客たちを慄かせ、エコーを守る。
けれど、二人が暮らすアパートの家賃とサワヤカの通う塾の月謝の滞納が
明らかになります。特に塾で学ぶ数学については熱心なエコーは危機感を
募らせ、懐に忍ばせた訳ありの封筒から、一万円を取り出してサワヤカに
渡します。去っていく少年。

すると、一人になったエコーの前に新たな不思議が起こります。
壊れたパチンコ台、黒いチューリップの口からジャラジャラと玉が出てくる。
しかも、まるで生きているように戸惑うエコーとやりとりしながら。

明らかに誰かが隠れている。そう思わせながら冒頭シーンはおしまいです。

ひしめくパチンコ台と大人数の喧騒。
ビンから噴き出るラムネを使ったギャグ。
というスペクタクルから、一気にパチンコ台の当たり口にフォーカスという
極小の対象にフォーカスする唐さんの着想が冴えています。

グアーチャロというモチーフは難しいけれど、それもおいおい明らかに。
次回、第2回のzoomは特に念入りにバッチリにして臨みます!

トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)