10/10(月)『黒いチューリップ』本読みWS 最終回レポート(中野)

2022年10月10日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』

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↑エンディング。目を凝らして、二人の間をつなげるチューインガムを

見てください。



『黒いチューリップ』本読みWSの最終回。

最後まで通して読んでみて、改めて良い台本です。

池があり、100人の役者がいて上演するのはたいへんだけれど、

情緒が泣かせます。血みどろの残酷劇でなく、

唐さんが描く世話物の魅力に溢れています。


ノブコが登場し、彼女の危うさが光ります。

引っ込み思案のキャラクターをベースに、

怒る、嘆く、かと思えば嬉々とする。

自分でも制御できない感情の波が彼女を駆り立てていく。


春太に抱きつかれていたケイコを疑いつつ、

結婚式を台無しにして自分を迎えに来ようとした春太に希望をつなぐ。


とにかく彼女は落ち着かない。周囲を安心させない。

これがノブコの魅力です。壊れそうな心を持って、

ギリギリのところを生きている彼女。


エコーが持ってきた黒いチューリップの鉢には、

当然ながら見事な花など無く、誤魔化しに造ったショボい

造花があるのみ。ケイコをなじり、春太に土下座して謝るノブコ。

激しいシーンが続きます。


そんなノブコを受け入れてくれるよう頼み込むケイコに

春太は進み出ます。そして、ノブコではなくケイコを抱きしめる。

さらにノブコを容赦なく罵る。ノブコの心は完全に崩壊。


この時の春太の心情は謎です。

どうしてここまでする必要があるのか。

多くの手間をかけ、ノブコを陥れる必要があるのか。


私の考えでは、春太は黒いチューリップにのめり込むあまり、

先のその完成に辿り着こうとしたノブコに嫉妬したのではないかと思う。

自分以外に、その花にたどり着く者がいることが許せない。

そういう心情がノブコを破壊しにかかる。

彼もまた、取り憑かれています。


春太にここまでされて、ケイコは復讐に出る。

春太の持っていた結婚式用のケーキナイフを構え、彼を刺そうと迫る。

そして、姉ノブコとは違い、心を病むことなくこの復讐を達成し、

服役を終えて世間に出る!と啖呵を切る。


が、今度はノブコがケイコを止めにかかる。

皮肉ですが、ケイコの暴走がノブコの理性を目覚めさせる。

やりきれなくも見事なシーンです。

これでケイコは膝から崩れ落ち、殺人未遂半年て泡小路ひきいる

刑事たちに連行される。


去り際にケイコが放つ「アイ・アム・リターン!」という英語・・・

文法的には完全に間違っていますが、この劇ののどかさと真剣さ、

可笑しみを謳いあげる名ぜりふです。


全てが片付き、ケイコが歌った歌声はパチンコ店の喧騒に飲まれます。

エコーの聴覚を持ってしても、もうステキな花の声が聞き取れない。


数日後、関西風の女がうなだれるエコーの前に立ちます。

その女こそ出所したケイコ。自分を慕い続けるエコーに、

恋が何かわからず、いつも「取るか/取られるか」だと言っていた

ケイコは、「今度はエコーを取る」と宣言します。


そして、黒いチューリップのキッス。

1幕では正露丸。2幕では氷砂糖。ケイコが最後に仕掛けたキスは

チューインガムでした。二人の口もとからガムは伸び、パチンコ屋に象徴される

世間の喧騒に揉まれても、二人の絆が決して途切れないことを魅せます。


正露丸、氷砂糖、ガム。

いずれも子どもの世界を代表するアイテムを並べて、

唐さんが繰り広げた可愛らしい世界が完結しました。


初演は1983年。

1982年に初演した『秘密の花園』の影響も大きい作品ですから、

目下公演中の唐組を観に行くと、さらに深く味わえます。



来週からは『ベンガルの虎』。

唐ゼミ☆では未上演の演目ですが、この唐さんの代表作の一つに取り組みます。

11月には、前にコロナで延期になっていた流山寺さんの上演もあるようです。

観劇の予習や復讐にもオススメ。劇が100倍愉しめます。

10/3(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第9回レポート(中野)

2022年10月 3日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑2004年、唐十郎ゼミナールでの上演。初期の活動を支えた屋台骨
新堀航君が"泡小路"を好演しました。二枚目と三枚目を行き来し、
観る人に愛される役者、人格的にも大きな男です


一昨日、10/1(土)に本読みWSをやりました。
私の都合で、日曜開催をずらしてもらったのです。
中には、同じ土曜の午前中に林麻子が行っている劇中歌のWSと
渡り歩いてくださった方もいます。ありがたい!

全10回の構想で始めた『黒いチューリップ』本読みもいよいよ終盤。
物語の"ラスボス"的存在である姉ノブコが登場するところまでをやり、
来週の終幕に備えたのが第9回目でした。

当然、物語が煮詰まっていくわけですが、
常に軽快な笑いやおかしみに溢れているのがこの台本の特徴です。

そのような中でも特に面白い刑事・泡小路の場面からスタート。

必死になってケイコの解毒にいそしむエコーに後ろから声を
かけたのが泡小路です。彼は徹底して、エコーを伝説のパチプロ
"一本指の田山"と思い込み、刑事の怖さと田山に恋する乙女心の
両方を使ってエコーに迫ります。

そして、その迫力にエコーがたじろぎ、二人でふざけ始める。
エコーと泡小路が『マッチ売りの少女』ごっこにのめり込み、
それが極に達するとき、ケイコが起き出します。

効いたのは解毒の水か、くだらないシーンへの憤りかわからない。
面白いシーンです。

ケイコが起き出すと、エコーは泡小路を捨てます。
すると、嫉妬に狂った泡小路は刑事の強権を発揮する。

今日は春太とナルヒサの姉・弥生の結婚式、仲人の泡小路も
もちろんこれに立ち会っていたわけですが、会場のカーテンに
チューリップの影がよぎるや、春太はケーキ入刀のためのナイフを
取りに行くと言って姿を消してしまったのです。

泡小路は、そのチューリップの影こそケイコの仕業ではないかと迫る。
エコーはケイコのアリバイを盾にその説を否定しますが、
そもそも春太に毒を飲ませようとしたのが犯罪であると、泡小路は迫る。

こうなるとケイコとエコーは下手に出るしかなく、
泡小路は居丈高に、エコーがケイコを捨て、自分と一緒に関西に来るよう
迫ります。(この辺は、前年に初演した『秘密の花園』の影響!)

が、泡小路の増長ぶりに怒ったケイコは、
「オマエにも毒を飲ませるぞ!」と言って泡小路を撃退する。
このあたり刑事の腕力を持つ泡小路がケイコを恐れたのは、
自らの性癖に起因した女性にキスされることに対する恐怖かもしれません。

ともかく、あっさり泡小路は去り、
ケイコは姉ノブコが菊地の助力で出所し、こちらに向かっていることを
知ります。ならば、ノブコから送られてきた鉢、球根を用意しなければ!

実際、この球根は二幕ラストの春太によって殺されたわけですが、
その事実を告げられないエコーは、これをなんとか誤魔化そうと
奔走します。そこに多くの人たちがなだれ込む。

少年サワヤカ、釘打ちの天魔と孫グリコ、サキが率いる景品買いの
婆アたち。そして結婚式場からやってきた春太と、彼を追う
ナルヒサや姉・弥生。

ここで、ナルヒサとサキの罵り合い、少ししか喋らない弥生の、
必死だけれど間の抜けたせりふも味わい深い。

そして、春太は心変わりを訴えます。
結婚寸前で思いとどまり、ケイコに「姉さんを迎えに行こう」と迫る。
ケイコにとっては願ってもない最上の結果です。
春太に抱きつかれるケイコ。

・・・と、春太の肩越し、ケイコの視界に飛び込んだのは姉ノブコ。

ついに帰ってきたノブコを前に波乱の予感を孕ませながら、
来週、この劇はエンディングを迎えます。

次回も土曜日!

9/26(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第8回レポート(中野)

2022年9月26日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑三幕で再登場した菊地を演じる安達くん。
『ジョン・シルバー』に思い入れのある私たちは、オウムものせました

昨日は『黒いチューリップ』本読みWSでした。
三幕半ば、ケイコが復活するまでの過程に取り組みました。

ここは歌舞伎でいうとダレ場です。
物語の本筋に戻るまで、お客さんがリラックスして楽しめる
にぎやかしの場面。惹き込まれるような展開、ではなく
バラエティに溢れる賑やかなシーンの連続。

毒を飲んで意識を失っているケイコ。
その解毒に協力した景品買いの婆あ・サキは、
見返りにエコーの体を求める。結果、エコーは襲われることに。

初演のサキを大門伍朗さんが演じたことからも分かるように
かなり笑いの要素が強いシーン。強いていえば、老いて尚
盛んなおばあちゃんの力強さ描く場面でもあります。

残されたサワヤカがケイコの解毒にあたっていると、
菊地が登場する。そして、毒を飲んで意識を失ったケイコの
代わりに姉ノブコに会って来たと告げます。

菊地に対する10万円の返却も済んだノブコは、
陽の光を恐れながらも出所し、鉢がどうなったかを気にして
こちらに向かっている。これが菊地による最も重要な情報でした。

さらに面白いのは、菊地がコンドルタクシーを退めたこと。
今や彼は、陥没した車両を救うために負った怪我が原因で松葉杖を
必要とする体となり、「シルバー」という会社で働いていると言う。

松葉杖とシルバーといえばご存じ「ジョン・シルバー」。
つまり、ノブコという奇矯な乗客に感化され、思い入れすぎた菊地は
今はタクシー業界のアウトローとなって彷徨っているというわけです。
シルバーという会社は、彼が妄想しているだけの架空の会社なのでは
ないか。そういう読み方もできる。
菊地こそ、俳優なら誰もが演じてみたいオイシイ役です。

彼が去ると、エコーが再登場。
彼は、少しだけサキに襲われたものの、神聖なるパチンコ屋の正義を
司るクギ師・天魔によって救われました。
エコーを襲ったサキや婆あたちは叱られ、大人しくなります。

エコーは元の目的であるケイコのもとへ駆けつけ、解毒を続ける。

と、そこへ今度は刑事の泡小路が乗り込んでくる。
これまで強面だった彼の様子は一変し、オカマとして本性もあらわに、
一本指のパチプロ・田山への想いを打ち明けます。
エコーも仕方なく相手をするうち、エスカレートする二人の悪ふざけ。

・・・という場面までやりました。

面白いのは、他の作品に比べればかなり平和に感じるこの物語の中でも、
脇を固める登場人物たちがそれぞれに異様なこだわりを持ち、
それが魅力になっていることです。

菊地・・・車両とタクシー業、お客
天魔とグリコ・・・パチンコ店と釘打ち
サワヤカ・・・数学塾
泡小路・・・パチプロ・田山

という具合に、彼らの一途さはそれぞれの対象に向かって暴走します。
そして、その王者たる存在が最後に登場する姉ノブコなのです。

次回はケイコの復活から。あと2回で大団円です!

9/19(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第7回レポート(中野)

2022年9月19日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑鉢にはノブコ(Nobuko)の頭文字であるNの文字!
咲いてすぐ散る花の仕掛けは、当時劇団にいた安達くんが開発し、
仕掛けを実験しては盛り上がった記憶があります。


昨日は『黒いチューリップ』本読みの第7回。
2幕の終わりから、3幕冒頭をやりました。

前回に引き続き問題になっているのは、
姉ノブコが獄中からケイコに送ってきた球根入りの鉢です。
エコーがこれに触れたところ、成長は加速し、
もう少しで花開きそうなつぼみまで急激に変化していたことが判明。
これを、花にとって心地よくもとあった鉢に戻し、
いま少し見守れば見事開花、という寸前まで来ます。

途中、エコーを伝説のパチプロと思い込む泡小路の邪魔も入りますが、
彼のエコーへの一途な想いは簡単に黙殺されるギャグも挿入される。

球根が鉢に還ると俄然、身を乗り出してくるのが春太です。
彼は花屋のプロとして、黒いチューリップの生育に
病みついた者として、花弁の色が黒へと向かっていることを確認。
さらに、それが暗闇の中だけでなく、立派に世間(陽の当たる世界)
でも生きていかれるかどうかをテストします。

それこそ、この芝居の全ての場面に底流として流れる善福寺川の
川の水を注射器で含ませることで、黒い花を試そうとする。

このシーンの春太とケイコの問答は、
黒いチューリップと姉ノブコの存在と特質を重ねて見事に展開します。
同じ花を相手にしてそれぞれのせりふを言いながら、
ノブコを想うケイコ、ノブコそっちのけで花に執着する春太を
鮮やかに描き出す。

結局、ノブコの花はシャバの水には耐えられず、
その花びらを散らします。そして、花を試す春太の強行な姿勢を
恨んだケイコは、かねて練習していた毒入りキッスを
春太に食らわせようとする。

が、その時、練習中に誤って虫歯の穴に入ってしまっていた
毒薬が口の中に踊り出し、ケイコはこれを飲んでしまう。
春太は口から吐き出された一粒、自分を襲おうとした丸薬を
すぐにの農薬と見抜きます。

ケイコの遺した書き置きにより、
エコーはケイコの解毒のための景品買いの婆あサキを
訪ねる運命に直面します。これが2幕の終わり。

ここまで、ずっとタクシー運転手の菊地も刑事の泡小路も
舞台におり、しかも、80〜100人からなる警察学校の生徒たちが
それぞれに抱えたチューリップの鉢、すべての花弁が散る
というト書きは、唐さんが現場に託した挑戦状といえる
ト書きが炸裂します。

変わって3幕。
おっかなびっくりパチンコ店「黒いチューリップ」の裏手を
訪ねたエコーとサワヤカ(エコーが加勢として呼んだ)は、
サキをボスに頂く婆あの群れと対決します。

『ロミオとジュリエット(小田島訳)』をパロディしながら
このシーンは展開し、エコーはサキに課されたロミオの
せりふを見事に言ってのけ、解毒の薬の調達まで、一歩前進。

・・・というところまでやって昨日は終わりました。
いつも3幕ものでは、2幕の終わりが緊迫し、時に血を見るなど
苛烈なシーンが唐作品の持ち味ですが、この芝居は特別です。

基本的には非常にシリアスなのですが、
設定の中にはかなり間抜けというか、バカバカしく、
どこまでいってものどかななのです。

心に波風を立てず、ショッキングな要素を控え目にして、
安心して見られるのがこの演目の魅力。それを象徴するシーンの
連続です。その中に、球根の仕込まれた鉢をテストする場面では
唐さんらしく「引きこもり」の心情を描写しています。

次週は、サキがエコーの体を狙って襲い掛かるところから。
ケイコが復活するまで、物語の本質からは脱線し、
縦横に展開する唐さんのお笑い路線を楽しめる場面が連続します。

9/12(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第6回レポート(中野)

2022年9月12日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑たくさんの現役学生たちが出演してくれた2004年の唐ゼミ☆公演

昨日は『黒いチューリップ』WSでした。
ノブコを迎えに行こうと意気込むケイコとエコー(春太に化けている)
の前に、春太本人が現れ、ノブコと実験していた黒いチューリップ開発
について明かされるシーンから。

まずは、本物の春太が登場して気まずいエコー。

ケイコと春太の会話の中から、
春太とノブコは二つの同種の球根を分け合い、
黒いチューリップをそれぞれの方法で育て上げようとしていたことが
明かされました。

1幕のケイコのせりふでは、
ノブコは春太に内緒で花の育成に取り組んでいたと語られますから、
つまり、それは春太とノブコの秘密の競争だったということです。

春太は日向で、ノブコは日陰で育てようとした。
春太の球根は、ナルヒサの通う警察学校の園芸クラブの生徒たちも
巻き込み、大々的に展開していたそうです。

100人の学生たちがそれぞれのチューリップの鉢も持って
水底から合唱しながら現れるシーンは、読むに楽しく、実現するには
至難です。何しろ、100人が衣裳を濡らすのです。
その後、2幕が終わるまで彼らは出ずっぱり、初演は冬だし、
寒かったと思います。衣裳や小道具の管理はもちろん大変。
唐さんも罪な設定を用意したものです。
しかし、読んでイメージするのは抜群に面白い。

このシーン、一瞬、泡小路が登場して消えるというギャグまで入っていて、
一つの笑いのために泡小路も濡れる。クリエーターの執念を求められます。

結果的に、派手に登場した彼らの鉢は月並みなカラーのチューリップ
に育ってしまい、春太の実験は失敗したわけです。

そこで春太は、ノブコに持たせたもう一株の行方を追うようになった。
実は、春太はチューリップに執着しているに過ぎないのですが、
ともかくもノブコに会いに行きたいという春太に絆されたケイコは、
ノブコが送ってきたという鉢を披露します。
それは、1幕の最後にケイコが持って現れた鉢。

ノブコが施したさまざまな工夫をケイコは明かします。
土や、栄養に加えて、春太との様々な思い出の品まで入れていたノブコ。
ケイコはその結果に自信を見せ、春太と生徒たちの期待は高まります。

が、皆の注目を浴びる鉢の中をよく見れば、肝心の球根が無い。
これはパチンコ屋から第三コンドルタクシーに移動する過程で、
ケイコから鉢を託されたエコーが、その燕尾服の内ポケットに
球根を移していたためでした。

そして、その球根が現れたみれば、
結果的にはエコーが触れたことで球根が急成長していたことも分かった。
パチンコ屋で威力を持ったエコーの一本指は、ここでも絶大な効力を
発揮します。

順調に育った球根を巧みに元の鉢に戻すところで、昨日は終了。
来週は、見事これを開花させられるかどうかという2幕ラストに
取り組みます。

ちなみに、善福寺川が、
警察学校の庭、第三コンドルタクシーの地盤陥没、パチンコ屋の井戸
に、それぞれつながっているという発想はかなり強引ですが、
唐さんならではの剛腕です。

すべての水脈・水道はつながっているという『唐版 滝の白糸』の
仕掛け、唐さんの信条が、ここでも大活躍しています。

9/5(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第5回レポート(中野)

2022年9月 5日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』

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↑タクシー運転手・菊池との会話。沈んだタクシーが後ろに見えます


9月に入り、参加者の皆さんと一緒に二幕の中盤に挑んでいます。
昨日、とっても大切だったのは、タクシー運転手「菊地」が登場した
ことです。

唐さんの芝居では二幕中盤に味のあるキャラクターが登場して
観る人を魅了するケースがたくさんあります。

『吸血姫』・・・ヒロイン・さと子のお父さん
『唐版 風の又三郎』・・・樫村三空曹に化けた宮沢先生

彼らは男性ですね。女性だと、

『ベンガルの虎』・・・ヒロイン・水嶋カンナの母マサノ
『蛇姫様 わが心の奈蛇』・・・ヒロイン・あけびの母シノ

といったところです。
彼らは煮詰まってきた物語に新たな局面を与えます。
舞台にサッと新鮮な風が吹く。
出番はさほど多くはありませんが、観客の印象にすごく残る。
いわゆる、演じる側にとってオイシイ役というやつです。

菊地、唐ゼミ☆でやった時には安達俊信が演じて、
大変に良い味を出していました。
もっとも、これらの役柄には出ずっぱりとはまた別の、
ピンポイントリリーフ的な集中力と大変さが求められるとは思いますが。


物語は、ケイコと、春太に化けたエコーが菊地を訪ねる場面。
タクシー運転手たちお仮眠室に忍び込んだ二人はそっと菊地を
探そうとします。が、突如、始業の目覚ましが鳴り、
運転手たちは飛び起きて身支度を開始。
それぞれのタクシーに殺到する狂騒が展開します。
その中で菊地を探す二人。

ケイコがしがみついた一人が菊地の居場所を示します。
彼は、地面の陥没とともに染み出した水に半ば沈んだタクシーの中で
休憩をとっていたのです。タクシーの扉がゆっくりと開いて出てくる。
その登場の仕方が、魅せ場になっています。

ついで、春太のふりしたエコーが交渉にあたる。
しかし、菊地は愛車の救出にかまけて、こちらを振り向こうとさえしない。
そこでケイコの乗り出す。

すると菊地がようやく語り始める。
彼によれば、自分はノブコを警察に突き出したわけではないといいます。
それどころか、ノブコが再び刑務所に入った後も春太の家に通い、
春太との交渉役を買って出ようとした末に、タクシー会社への
10万円を立て替えたとも言う。かなり優しい男です。
だから、菊地はかえって春太(に化けたエコー)に辛く当たる。

そのあたりの事情を察したケイコは、
感謝とともに10万円を返します。
その内訳は、現金9万円+パチンコ玉(1個5円分)×1,999個。
5円足りない分、ケイコは自分のブラジャーを外して
「5円借りた」と書き、借用書がわりにします。
姉への厚遇に対する感謝というか、色仕掛けというか、
この辺は唐さん流の切実さとおふざけが混ざったやり方です。

ともかくも、これでノブコへの処し方が分かりました。
お金の問題が解決しているならば、あとは春太(に化けたエコー)が
警察を訪ね、ノブコは悪くないと訴えれば良い。
勢いに乗るケイコとエコー。

ところが、ここに本物の春太が登場します。
そして本物とニセモノの春太が差し向かいになりながら、
これまでケイコが知らなかったエピソード語り始める。

それは、二つのチューリップの球根を春太とノブコが分け合い、
どちらが先に黒いチューリップを開発するか競い合っていたという
事実でした。

続きは来週。
次回は、黒いチューリップの開発に取り憑かれた春太のキャラクターが
徐々に明らかになるシーンに取り組みます。

ワークショップをやっていたら、目の前の鉢から3つある花のうち
2つが落ちた。そういうシーンが近く、二幕の終わりに到来します↓
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8/29(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第4回レポート(中野)

2022年8月29日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑一幕の終わり、ケイコが鏡に映る自分に話しかけるとき、
一瞬、姉ノブコの気配がよぎる


昨日も『黒いチューリップ』を皆さんと読みました。
一幕の終わりから二幕の頭にかけて。

先週の続き、ケイコの願い虚しく、
姉ノブコの元恋人である春太が去ってしまうところから再開です。

ケイコは自身の希望から、
春太の想いがすでに自分たち姉妹にはないことを受け入れられません。
そこで、エコーが得意の声帯模写を使って春太の気持ちを代弁する
シーンが展開します。

エコーは、今ここにいない人の思いを汲み取り、
その人の声で話すことができる。だから「エコー」なのです。

もともと、「エコー」という名はギリシャ神話に由来します。
ナルキッソスに恋をしすぎて姿形を失い、
声(音の響き)だけになってしまった「エコー」。
これを唐さんは上手く使っています。

エコーの代弁によりケイコは春太の気持ちをしぶしぶ悟り、
二つのことを決意します。

一つ目。エコーを春太に化けさせ、
ノブコが迷惑をかけた第三コンドルタクシーの菊地を訪ねさせた上で
10万円を払い、ノブコが釈放されるようにすること。

二つ目。春太に復讐すること。
復讐に際しては毒薬を使おうと決意もします。
毒入りの瓶が重要な役割を果たす『ロミオとジュリエット』の影響と
花屋さんは農薬を使うのが得意、というところから唐さんは
この復讐方法を展開していきます。

エコーを相手に一服もる練習をするケイコ。
毒を口に含んで相手にキスし、口移しに毒を飲ませようという作戦。
なぜなら、黒い・チュー(キス)・リップ(唇)だから。
・・・ダジャレです。

テストで毒を飲まされペッペッとこれを吐くエコーは
甘いキスを求めて思わずパチンコ台の黒いチューリップに口づけします。
と、たまたま、ここに戻ってきた刑事・泡小路と百人の客たちは
やはりエコーこそが伝説のパチプロ「一本指」と確信します。
逃げるエコーに追う全員。

誰もいなくなった舞台で、外出の支度をして現れたケイコは
造花の黒いチューリップを持って鏡に語りかけます。
いよいよ、復讐の冒険に出かけよう、そういうシーンです。
鉢を持って鏡の前に立つケイコの姿は、一瞬、ノブコがこの舞台に
現れる瞬間でもあります。

唐さんにとって「姉妹」といえば『ジョン・シルバー』の
「双子の姉妹」。ノブコとケイコの同一性を匂わせるシーンです。
これで一幕はおしまい。

二幕は、ケイコと、春太に化ける予定のエコーが
第三コンドルタクシーを訪ねる場面から始まります。
夜、夜中の営業に向けて大勢の運転手たちが眠っている仮眠室が
舞台です。

ケイコとエコーはパチンコ屋の井戸の水をくぐり、
この仮眠場の端にある陥没して水の漏れ出す穴からやってきた
という風変わりな設定です。要は『下谷万年町物語』に引き続き、
池と水を使う気マンマンなのです。

そこで二人は、眠っている運転手たちに気づかれないよう
気遣いながら、どうやって菊地を説得するか練習します。

この場面は、静にしていなくてはいけないにも関わらず、
ケイコが歌ったり踊ったり、暴れたりするのがコミカルです。

特に猪俣公章さんが作曲した『毀(こわ)れた橋』という歌は
唐さんの大のお気に入りですから、椎野をインストラクターにして
参加者の皆さんにも練習してもらいました。
ちょっとしたミュージカルみたいな感じです。


ロンドンに来て以来、どこもかしこもwi-fiが不安なので、
私がいきなり消えた場合に備えて椎野がアシスタントをしています。
せっかく椎野がいるので、これからは歌ってきた劇中歌を歌いながら
ワークショップしていこうと思いました。

次週は二幕半ばに差し掛かります。
物語のキーパーソンであるコンドルタクシーの菊地運転手が
登場するのが見どころです。

8/22(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第3回レポート(中野)

2022年8月22日 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑春太とケイコの会話から姉ノブコのキャラクターが見えてくる。

昨日は『黒いチューリップ』WS 第3回でした。

エコーが拾ったケイコの封筒(10万円入り)がどんな事情で
用意されたものだったのか、いよいよ明らかになりました。

そのために、次の3人に関するエピソードが次々に出てくる。
パチンコ屋の玉だし係=ケイコ
先週から登場した謎めいた男=春太
ずっと刑務所に入っているケイコの姉=ノブコ

1.ノブコとケイコ姉妹は、パチンコ屋が立つ前に同じあった
アパートに住んでいた。井戸のあるアパート。
2.ノブコはリボン屋(造花もつくるらしい)に勤めていた。
3.ノブコは取引先の花屋の従業員・春太と知り合い、恋人になった。
4.ケイコも春太のことが気になっていた
5.春太は、人類未到の「黒いチューリップ」を開発していた
6.ノブコも、春太を驚かせようと、彼に内緒で「黒いチューリップ」
づくりに挑戦した。
7.二人が初島に旅行に行った時、ケイコは留守番と球根の世話を
させられた。
8.ある日、ノブコは試作品を春太の部屋に持っていき、春太が
留守中に並んだ鉢の中に忍ばせて驚かせようとした
9.その時、春太は浮気相手を自室に連れ込んだ
10.ノブコがたまたま戻ったところ、相手の女と、打ち捨てられた
自作の黒いチューリップを発見
11.ノブコは春太に刃傷沙汰を起こし、警察に捕まる。
12.春太は引っ越した
13.仮釈放で出てきたノブコはタクシーに乗って初島を眺めに行き、
春太の部屋に行ってタクシー代10万円を払ってもらおうとした。
が、春太は引っ越した後で支払いが不能に
14.被害者は第三コンドルタクシーの運転手・菊地
15.ノブコは再び刑務所に戻り、それが周囲にはわざという印象を与えた
16.ノブコは牢屋の中で「黒いチューリップ」開発を継続しているらしい
17.稽古は10万円と春太を揃えて、ノブコが望んだタクシー代の支払いを
成立させ、姉を釈放させようとしている
18.そのさなかに10万円の封筒を落とし、それをエコーが拾った
19.エコーは落とし主を探しながら、さわやか君の塾代に1万円使った
20.パチンコで差額の1万円をつくろうとするエコーとケイコ
21.ケイコの頼みを聞くかと思いきや、新たな恋人〜結婚相手の弟である
ナルヒサに促され、春太はケイコの願いを叶えずに去ってしまう。

・・・という具合でした。
膨大な情報量を、ケイコ+春太+(少し)エコーの3人で
伝え切らなければならない場面です。演者にも観客にも難所。
お客さんにとって、ケイコの姉ノブコの存在が気になり始めたら
成功です。

夜行性の鳥グアーチャロにも重ねられるノブコの思惑は何なのか。
春太は単なる被害者なのか、いよいよ謎めいてきます。
今回で一気に物語の基盤となる情報が揃いました。

次回、一幕の終わりから二幕に進みます。

8/17(水)『黒チューリップ』WS オマケ〜さらに情報求む!

2022年8月17日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』

ワークショップ参加者や劇団ファンの人から

『黒いチューリップ』を読む上で重要でおもしろい情報が寄せられた。

ありがたいことだ。


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この写真のように、

かつてはこんな様子で人力で玉を出していたらしい。


今の複雑な構造を持つパチンコ台からは想像しがたいが、

このように隙間を行き来してスタッフが当たりを出していた。

(電話交換手みたいなもの)


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↑座ってやるものという印象が強いが、かつては立って打つスタイルも


しかも、人力であるがゆえにこの玉出し係(正式名称は何だろう?)

の気まぐれで、気に入りの客にはちょっと多めに出すとか、

当たり前に行われていたらしい。


そういうわけで、

唐さんが『黒いチューリップ』で描いた描写はかなり

リアリズムであるということがいよいよ分かってきた。


ヒロインのケイコのように、

さすがにその場所に部屋をつくって棲みついている

というのは芝居がかった飛躍に違いないけれど、

エコーをからかってパチンコ玉が飛んでくる場面は

あながち嘘ではないということだ。


それに、天魔が鴉天狗のようにこの台の上の細い面を

駆け抜けてくる場面も、想像できる。


地方ならば1970年代くらいまでこんな感じの店舗が

見受けられたとも教わった。(Hさんに感謝!)

これからも情報があったら教えてください。


昔からパチンコ大好きでやり込んできた唐十郎ファンが

いたら、ぜひ話を聞いてみたい。

8/15(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第2回レポート(中野)

2022年8月15日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑パチンコ台の奥から部屋が現れた瞬間です。妙に安アパート風。
ひどくだらしなく寝ているようト書きの指示を守っています。
(2004年秋の唐ゼミ公演より)

昨日は『黒いチューリップ』本読みWSの2回目でした。

『蛇姫様 わが心の奈蛇』を経て『黒いチューリップ』に入った
タイミングでお久しぶりでご参加の皆さんが帰ってきてくれました。
別に演目のせいではないと思いますが、これはやっぱり嬉しい。

長編をやっていると、どうしても途中から入って来られる方には
敷居が高くなるとも思います。ロンドンにいる間は長いものを
予定していますが、今後、作品を選ぶ際の参考に思います。

あるいは、
以前に単発で『特権的肉体論』に取り組んだ回があったのですが、
一回こっきりで参加できる回を良いなと思います。お試しになる。
例えば、唐ゼミ☆だけでなく、近く上演が予定されている台本に
取り組めば、もっともっと上演が愉しめるようになるはずだ、
とも考えています。


さて、肝心の『黒いチューリップ』2回目。
今日は物語が徐々に動き始める場面をやりました。

前回はトップシーンですから、インパクトが大事だった。
100台が唸るパチンコ屋に100人の客がいる。
その喧騒の中を、声帯模写芸人のエコーがやってきて、
お客や景品ショップの婆さんに絡まれる、という趣向でした。

今回は、エコーがこのパチンコ屋にやってきた理由が徐々に明らかに
なります。

まずは、前回の最後のシーン。
勝手に玉が出てくる不思議な黒いチューリップ(当たり穴)の台の正体を
エコーは見極めようとします。思わず台を掴み、揺さぶる。
すると、この姿がインチキをしていると誤解を生んで、
釘師の「天魔(てんま)」と孫娘の「グリコ」が駆け込んでくる。

この天魔はカイマキ(着物型布団)を着ています。
グリコも薄汚い少女だという設定ですから、このパチンコ屋に
棲みついて働いているらしいことが想像されます。
そんな彼らからすれば、エコーの行為は許せない。

そして、誤解が解ききれず揉めているうちに次の登場人物が現れる。

パチンコについて一家言持ち、あっという間に100人の客を煽動してしまう
男の正体を、天魔は見抜きます。この男は刑事だったのです。

この刑事は伝説のパチプロ「一本指」を追っており、
一本指が自らの目印とした池袋の喫茶店ネスパのマッチを振りかざし、
一本指に憧れる他の客たちをますます煽ります。

実は当の天魔も、同じく一本指に身構えていたのでした。
近所のパチンコ店「アイウエオ会館」「アトム」「三角ホール」を
次々に閉店に追い込んだ凄腕・一本指に備え、ひどく厳しい釘設定を
仕掛け、強敵の襲来に備えていたことが明らかになる。

と、偶然その場にいたエコーを、この刑事は一本指だと思い込みます。
エコーが違うと言ってもそれを信じず、先ほどまで黒いチューリップ台と
親密に語らっていたエコーこそ、パチプロの中のパチプロと決めつけます。

皆の言いがかり、熱狂を恐れたエコーはその場を逃げ出し、
ほとんどの人間が彼を追います。
先ほどまでの喧騒が去り、静寂のパチンコ店内。

そこへ、エコーが忍び足で帰ってきました。
彼は黒いチューリップに再び語りかける。恋をささやくように。
(このあたり『ロミオとジュリエット』的です)

すると、パチンコ台が外れ、中から不思議な部屋が現れます。
ここには女が住んでおり、この黒いチューリップ台の玉は、
この女の人力で供給されていたらしいのです。
(唐さん得意の可笑しな設定!)

ここから、いよいよエコーの主目的が明らかになる。

初めは寝起きだったこの女「ケイコ」が身支度を整えると、
エコーは彼女に封筒を取り出します。営業で呼ばれた結婚式場の
女性用トイレで拾った封筒、その中に入る10万円が入っていました。
封筒に書かれたパチンコ店を頼りに、をエコーはお金を返しに来たのです。
大喜びするケイコ。

しかし、エコーは10万円のうち1万円を使い込んでいました。
前回に読んだシーンで、エコーは同居するサワヤカ少年の数学塾の月謝を
この封筒から失敬していたのです。

お礼の1割だと主張するエコーの理屈は彼女には通じません。
が、使い途が塾代と知った彼女は同情し、エコーにパチンコで1万円稼がせる
ことで穴埋めをしようとします。(ひどい癒着!)

というところまで、昨日はやりました。
蜷川さんと唐さんが気に入って展開してきた「六本指」というモチーフが
ここではパチンコにちなみ「一本指」に変化しているのも面白いところです。
あと、この芝居には「キス」という行為が象徴的な役割を果たします。
蜷川さんの商業演劇デビューだった『ロミオとジュリエット』は
キスばかり登場する芝居であり、「チュウ・リップ」という語呂合わせ
でもあるわけです。

次回は3回目。
血みどろの決闘も、強姦や近親相姦のような悲惨も、この台本にはありません。
この圧倒的なのどかさも、紛れもなく唐さんの面白さのひとつです。
読んでいて朗らかにたのしい。そういう特性を味わってもらえたらと思います。

8/8(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第1回レポート(中野)

2022年8月 8日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 唐十郎戯曲を読む『黒いチューリップ』
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↑暴れるラムネ。懐かしい学生時代の上演です。

昨日は『黒いチューリップ』第1回WSの初回でした。

いつも初回は特に準備をして臨みます。
内容以前に、唐さんがどうやってこの台本を書いたか、
経緯や、当時の唐さんを囲む面々について話す必要があるからです。

が、昨日は出鼻をくじかれました。
恐ろしいZoomトラブル。ついさっきまで正常に稼働していたzoomが
いざ時間になって正式に入ろうとしたところ、インストールが必要だ
といきなり言い出し、慌てました。

皆さんに待って頂いて応急処置をし、
ブラウザから入る方法で何とか成立させることが出来ましたが、
冒頭がかなり滞ってしまいました。申し訳ないです。

終了後に最新版をインストールして正常起動を確認しましたが、
便利と思っていたテクノロジーの落とし穴です。怖い。怖い。

さて、肝心のWS内容です。
経緯については、こんな感じの話をしました。

・これまで蜷川さんと作ってきた作品のモチーフが生きている
 →「六本指」「大人数の出演」「池」
・根津甚八さんと小林薫さんという看板を失った唐さんの試行錯誤
 →李さんの相手役探しでもある
・前年に本多劇場柿落とし『秘密の花園』で活躍した柄本明さんの抜擢
・蜷川さんの商業演劇デビュー作『ロミオとジュリエット』がベース
・1980年に状況劇場が行ったサンパウロ公演から、南米の鳥
 グアーチャロ(アブラヨタカ、Oilbird)のアイディアを得たはず

そこから冒頭シーンへ。

100人のお客がひしめくパチンコ屋から劇はスタートし、
主人公エコーのモノローグが始まるのが見事です。

エコーは売れない声帯模写で、パフォーマーとしての腕は
イマイチだが、声無き者の声を代弁するのに長けている。
だから「エコー」という名だとアピールします。
洞窟の奥に棲み、視覚は弱いけれど聴覚でコミュニケーションする
グアーチャロとの共通点にもここにあり、この劇のテーマを強く
打ち出すシーンでもあります。

それから、景品交換所の婆さんとぶつかります。
※後に「サキ」という名だとわかる彼女、「咲き」からきています。
そこから水が異常に噴き出すラムネ瓶と取っ組み合ったり、
エコーがもともと持っていたセブンスターのタバコを巡って、
婆さんに難クセをつけられたりします。

パチンコの玉とお金をいきなり交換することはできないので、
パチンコ店ではキーアイテムと玉を交換、それを少し離れた場所に
ある景品買いに買い取ってもらうことで現金化するシステムについて
話しました。このパチンコ店では「セブンスター」が交換のアイテム。

婆さんの意に従って100人の客がエコーのセブンスターを奪い、
人々の手から手へ渡ります。そして、必死でそれを追いかけるエコーは
一台のパチンコ台を壊してしまう。それこそ、黒いチューリップ
(※「チューリップ」とはパチンコ玉が入る当たり穴のこと)を持つ
壊れた台でした。物言わぬ黒いチューリップに、否応なく惚れ込むエコー。

と、ここに、エコーの同居人である少年サワヤカ君がやってきます。
彼の爽やかさはパチンコ店にたむろする客たちを慄かせ、エコーを守る。
けれど、二人が暮らすアパートの家賃とサワヤカの通う塾の月謝の滞納が
明らかになります。特に塾で学ぶ数学については熱心なエコーは危機感を
募らせ、懐に忍ばせた訳ありの封筒から、一万円を取り出してサワヤカに
渡します。去っていく少年。

すると、一人になったエコーの前に新たな不思議が起こります。
壊れたパチンコ台、黒いチューリップの口からジャラジャラと玉が出てくる。
しかも、まるで生きているように戸惑うエコーとやりとりしながら。

明らかに誰かが隠れている。そう思わせながら冒頭シーンはおしまいです。

ひしめくパチンコ台と大人数の喧騒。
ビンから噴き出るラムネを使ったギャグ。
というスペクタクルから、一気にパチンコ台の当たり口にフォーカスという
極小の対象にフォーカスする唐さんの着想が冴えています。

グアーチャロというモチーフは難しいけれど、それもおいおい明らかに。
次回、第2回のzoomは特に念入りにバッチリにして臨みます!