8/29(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第4回レポート(中野)

2022年8月29日 Posted in 中野WS『黒いチューリップ』
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↑一幕の終わり、ケイコが鏡に映る自分に話しかけるとき、
一瞬、姉ノブコの気配がよぎる


昨日も『黒いチューリップ』を皆さんと読みました。
一幕の終わりから二幕の頭にかけて。

先週の続き、ケイコの願い虚しく、
姉ノブコの元恋人である春太が去ってしまうところから再開です。

ケイコは自身の希望から、
春太の想いがすでに自分たち姉妹にはないことを受け入れられません。
そこで、エコーが得意の声帯模写を使って春太の気持ちを代弁する
シーンが展開します。

エコーは、今ここにいない人の思いを汲み取り、
その人の声で話すことができる。だから「エコー」なのです。

もともと、「エコー」という名はギリシャ神話に由来します。
ナルキッソスに恋をしすぎて姿形を失い、
声(音の響き)だけになってしまった「エコー」。
これを唐さんは上手く使っています。

エコーの代弁によりケイコは春太の気持ちをしぶしぶ悟り、
二つのことを決意します。

一つ目。エコーを春太に化けさせ、
ノブコが迷惑をかけた第三コンドルタクシーの菊地を訪ねさせた上で
10万円を払い、ノブコが釈放されるようにすること。

二つ目。春太に復讐すること。
復讐に際しては毒薬を使おうと決意もします。
毒入りの瓶が重要な役割を果たす『ロミオとジュリエット』の影響と
花屋さんは農薬を使うのが得意、というところから唐さんは
この復讐方法を展開していきます。

エコーを相手に一服もる練習をするケイコ。
毒を口に含んで相手にキスし、口移しに毒を飲ませようという作戦。
なぜなら、黒い・チュー(キス)・リップ(唇)だから。
・・・ダジャレです。

テストで毒を飲まされペッペッとこれを吐くエコーは
甘いキスを求めて思わずパチンコ台の黒いチューリップに口づけします。
と、たまたま、ここに戻ってきた刑事・泡小路と百人の客たちは
やはりエコーこそが伝説のパチプロ「一本指」と確信します。
逃げるエコーに追う全員。

誰もいなくなった舞台で、外出の支度をして現れたケイコは
造花の黒いチューリップを持って鏡に語りかけます。
いよいよ、復讐の冒険に出かけよう、そういうシーンです。
鉢を持って鏡の前に立つケイコの姿は、一瞬、ノブコがこの舞台に
現れる瞬間でもあります。

唐さんにとって「姉妹」といえば『ジョン・シルバー』の
「双子の姉妹」。ノブコとケイコの同一性を匂わせるシーンです。
これで一幕はおしまい。

二幕は、ケイコと、春太に化ける予定のエコーが
第三コンドルタクシーを訪ねる場面から始まります。
夜、夜中の営業に向けて大勢の運転手たちが眠っている仮眠室が
舞台です。

ケイコとエコーはパチンコ屋の井戸の水をくぐり、
この仮眠場の端にある陥没して水の漏れ出す穴からやってきた
という風変わりな設定です。要は『下谷万年町物語』に引き続き、
池と水を使う気マンマンなのです。

そこで二人は、眠っている運転手たちに気づかれないよう
気遣いながら、どうやって菊地を説得するか練習します。

この場面は、静にしていなくてはいけないにも関わらず、
ケイコが歌ったり踊ったり、暴れたりするのがコミカルです。

特に猪俣公章さんが作曲した『毀(こわ)れた橋』という歌は
唐さんの大のお気に入りですから、椎野をインストラクターにして
参加者の皆さんにも練習してもらいました。
ちょっとしたミュージカルみたいな感じです。


ロンドンに来て以来、どこもかしこもwi-fiが不安なので、
私がいきなり消えた場合に備えて椎野がアシスタントをしています。
せっかく椎野がいるので、これからは歌ってきた劇中歌を歌いながら
ワークショップしていこうと思いました。

次週は二幕半ばに差し掛かります。
物語のキーパーソンであるコンドルタクシーの菊地運転手が
登場するのが見どころです。

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