8/15(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第2回レポート(中野)

2022年8月15日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野WS『黒いチューリップ』
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↑パチンコ台の奥から部屋が現れた瞬間です。妙に安アパート風。
ひどくだらしなく寝ているようト書きの指示を守っています。
(2004年秋の唐ゼミ公演より)

昨日は『黒いチューリップ』本読みWSの2回目でした。

『蛇姫様 わが心の奈蛇』を経て『黒いチューリップ』に入った
タイミングでお久しぶりでご参加の皆さんが帰ってきてくれました。
別に演目のせいではないと思いますが、これはやっぱり嬉しい。

長編をやっていると、どうしても途中から入って来られる方には
敷居が高くなるとも思います。ロンドンにいる間は長いものを
予定していますが、今後、作品を選ぶ際の参考に思います。

あるいは、
以前に単発で『特権的肉体論』に取り組んだ回があったのですが、
一回こっきりで参加できる回を良いなと思います。お試しになる。
例えば、唐ゼミ☆だけでなく、近く上演が予定されている台本に
取り組めば、もっともっと上演が愉しめるようになるはずだ、
とも考えています。


さて、肝心の『黒いチューリップ』2回目。
今日は物語が徐々に動き始める場面をやりました。

前回はトップシーンですから、インパクトが大事だった。
100台が唸るパチンコ屋に100人の客がいる。
その喧騒の中を、声帯模写芸人のエコーがやってきて、
お客や景品ショップの婆さんに絡まれる、という趣向でした。

今回は、エコーがこのパチンコ屋にやってきた理由が徐々に明らかに
なります。

まずは、前回の最後のシーン。
勝手に玉が出てくる不思議な黒いチューリップ(当たり穴)の台の正体を
エコーは見極めようとします。思わず台を掴み、揺さぶる。
すると、この姿がインチキをしていると誤解を生んで、
釘師の「天魔(てんま)」と孫娘の「グリコ」が駆け込んでくる。

この天魔はカイマキ(着物型布団)を着ています。
グリコも薄汚い少女だという設定ですから、このパチンコ屋に
棲みついて働いているらしいことが想像されます。
そんな彼らからすれば、エコーの行為は許せない。

そして、誤解が解ききれず揉めているうちに次の登場人物が現れる。

パチンコについて一家言持ち、あっという間に100人の客を煽動してしまう
男の正体を、天魔は見抜きます。この男は刑事だったのです。

この刑事は伝説のパチプロ「一本指」を追っており、
一本指が自らの目印とした池袋の喫茶店ネスパのマッチを振りかざし、
一本指に憧れる他の客たちをますます煽ります。

実は当の天魔も、同じく一本指に身構えていたのでした。
近所のパチンコ店「アイウエオ会館」「アトム」「三角ホール」を
次々に閉店に追い込んだ凄腕・一本指に備え、ひどく厳しい釘設定を
仕掛け、強敵の襲来に備えていたことが明らかになる。

と、偶然その場にいたエコーを、この刑事は一本指だと思い込みます。
エコーが違うと言ってもそれを信じず、先ほどまで黒いチューリップ台と
親密に語らっていたエコーこそ、パチプロの中のパチプロと決めつけます。

皆の言いがかり、熱狂を恐れたエコーはその場を逃げ出し、
ほとんどの人間が彼を追います。
先ほどまでの喧騒が去り、静寂のパチンコ店内。

そこへ、エコーが忍び足で帰ってきました。
彼は黒いチューリップに再び語りかける。恋をささやくように。
(このあたり『ロミオとジュリエット』的です)

すると、パチンコ台が外れ、中から不思議な部屋が現れます。
ここには女が住んでおり、この黒いチューリップ台の玉は、
この女の人力で供給されていたらしいのです。
(唐さん得意の可笑しな設定!)

ここから、いよいよエコーの主目的が明らかになる。

初めは寝起きだったこの女「ケイコ」が身支度を整えると、
エコーは彼女に封筒を取り出します。営業で呼ばれた結婚式場の
女性用トイレで拾った封筒、その中に入る10万円が入っていました。
封筒に書かれたパチンコ店を頼りに、をエコーはお金を返しに来たのです。
大喜びするケイコ。

しかし、エコーは10万円のうち1万円を使い込んでいました。
前回に読んだシーンで、エコーは同居するサワヤカ少年の数学塾の月謝を
この封筒から失敬していたのです。

お礼の1割だと主張するエコーの理屈は彼女には通じません。
が、使い途が塾代と知った彼女は同情し、エコーにパチンコで1万円稼がせる
ことで穴埋めをしようとします。(ひどい癒着!)

というところまで、昨日はやりました。
蜷川さんと唐さんが気に入って展開してきた「六本指」というモチーフが
ここではパチンコにちなみ「一本指」に変化しているのも面白いところです。
あと、この芝居には「キス」という行為が象徴的な役割を果たします。
蜷川さんの商業演劇デビューだった『ロミオとジュリエット』は
キスばかり登場する芝居であり、「チュウ・リップ」という語呂合わせ
でもあるわけです。

次回は3回目。
血みどろの決闘も、強姦や近親相姦のような悲惨も、この台本にはありません。
この圧倒的なのどかさも、紛れもなく唐さんの面白さのひとつです。
読んでいて朗らかにたのしい。そういう特性を味わってもらえたらと思います。

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