9/19(月)『黒いチューリップ』本読みWS 第7回レポート(中野)
2022年9月19日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野WS『黒いチューリップ』
↑鉢にはノブコ(Nobuko)の頭文字であるNの文字!
咲いてすぐ散る花の仕掛けは、当時劇団にいた安達くんが開発し、
仕掛けを実験しては盛り上がった記憶があります。
昨日は『黒いチューリップ』本読みの第7回。
2幕の終わりから、3幕冒頭をやりました。
前回に引き続き問題になっているのは、
姉ノブコが獄中からケイコに送ってきた球根入りの鉢です。
エコーがこれに触れたところ、成長は加速し、
もう少しで花開きそうなつぼみまで急激に変化していたことが判明。
これを、花にとって心地よくもとあった鉢に戻し、
いま少し見守れば見事開花、という寸前まで来ます。
途中、エコーを伝説のパチプロと思い込む泡小路の邪魔も入りますが、
彼のエコーへの一途な想いは簡単に黙殺されるギャグも挿入される。
球根が鉢に還ると俄然、身を乗り出してくるのが春太です。
彼は花屋のプロとして、黒いチューリップの生育に
病みついた者として、花弁の色が黒へと向かっていることを確認。
さらに、それが暗闇の中だけでなく、立派に世間(陽の当たる世界)
でも生きていかれるかどうかをテストします。
それこそ、この芝居の全ての場面に底流として流れる善福寺川の
川の水を注射器で含ませることで、黒い花を試そうとする。
このシーンの春太とケイコの問答は、
黒いチューリップと姉ノブコの存在と特質を重ねて見事に展開します。
同じ花を相手にしてそれぞれのせりふを言いながら、
ノブコを想うケイコ、ノブコそっちのけで花に執着する春太を
鮮やかに描き出す。
結局、ノブコの花はシャバの水には耐えられず、
その花びらを散らします。そして、花を試す春太の強行な姿勢を
恨んだケイコは、かねて練習していた毒入りキッスを
春太に食らわせようとする。
が、その時、練習中に誤って虫歯の穴に入ってしまっていた
毒薬が口の中に踊り出し、ケイコはこれを飲んでしまう。
春太は口から吐き出された一粒、自分を襲おうとした丸薬を
すぐにの農薬と見抜きます。
ケイコの遺した書き置きにより、
エコーはケイコの解毒のための景品買いの婆あサキを
訪ねる運命に直面します。これが2幕の終わり。
ここまで、ずっとタクシー運転手の菊地も刑事の泡小路も
舞台におり、しかも、80〜100人からなる警察学校の生徒たちが
それぞれに抱えたチューリップの鉢、すべての花弁が散る
というト書きは、唐さんが現場に託した挑戦状といえる
ト書きが炸裂します。
変わって3幕。
おっかなびっくりパチンコ店「黒いチューリップ」の裏手を
訪ねたエコーとサワヤカ(エコーが加勢として呼んだ)は、
サキをボスに頂く婆あの群れと対決します。
『ロミオとジュリエット(小田島訳)』をパロディしながら
このシーンは展開し、エコーはサキに課されたロミオの
せりふを見事に言ってのけ、解毒の薬の調達まで、一歩前進。
・・・というところまでやって昨日は終わりました。
いつも3幕ものでは、2幕の終わりが緊迫し、時に血を見るなど
苛烈なシーンが唐作品の持ち味ですが、この芝居は特別です。
基本的には非常にシリアスなのですが、
設定の中にはかなり間抜けというか、バカバカしく、
どこまでいってものどかななのです。
心に波風を立てず、ショッキングな要素を控え目にして、
安心して見られるのがこの演目の魅力。それを象徴するシーンの
連続です。その中に、球根の仕込まれた鉢をテストする場面では
唐さんらしく「引きこもり」の心情を描写しています。
次週は、サキがエコーの体を狙って襲い掛かるところから。
ケイコが復活するまで、物語の本質からは脱線し、
縦横に展開する唐さんのお笑い路線を楽しめる場面が連続します。
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