9/22(木)鷹野さんに会う

2022年9月22日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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昨日は日本からやってきた鷹野梨恵子さんにグローブ座で会った。

優れた女優である鷹野さんは、
今やGMBH(ゲーエムベーハー)https://www.gmbh0802.com/という集団を
立ち上げ、運営もしている。

ちょっと前にプロデュースしたイエローヘルメッツの『ヴェニスの商人』
を終えたばかりだが、疲労も感じさせずイギリスにやってきて、
シェイクスピア関係の場所を巡り歩いたらしい。

グローブ座のガイドツアーと『ヘンリー8世』を一緒に観た。

鷹野さんを初めて認識したのは彼女がまだ無名塾に在籍していた頃、
当時、よく唐ゼミ☆に出演してくれていた虎玉大介くんが
他の芝居に出るというので観に行ったら、そこに鷹野さんも出演していた。

物語の設定は昭和初期。戦争に向かっていく日本を生きた
若い芸術家たちを描いた話だったと思う。
あだっぽい踊り子役を彼女は演じていた。

持ち前の身体能力を活かしてピョンピョンと跳ねるように
舞台に現れたのが、とても目を惹いた。

それから、他の男の役者たちとせりふを応酬した後、
「あたし、ヌードはしないわよ」と言ったのをよく憶えている。
言葉のインパクトもさることながら、その見栄の切り方、
表情はせりふを凌ぐ押し出しの強さだった。

いかにも勝ち気そうな感じがしたけれど、
3年程前に再会した普段の鷹野さんはおっとりした感じで、
そのギャップに驚いた。しかし、やはり強い。

無名塾に入る前、ドイツでコンテンポラリーダンスを学ぶために
一年間留学した経験もあるという。
そんな風に国際経験もあり、踊り込んでいるから体力も違う。

渡英の翌日にはストラトフォード・アポン・エイボンに行き、
さらに翌日にはロンドン塔を巡りグローブ座に来て、二本の劇の合間に
ガイドツアーにも参加していた。

自分はといえば、渡英翌日はビザのカードを郵便局に取りに行った後は
頭痛がひどい上に買い物の仕方もよくわからなくて、ビクビクしながら
ホテルで寝ていた。実感として三日間は動けなかった。

それに比べると、イギリスでスイスイとでフル稼働し、
1週間くらいで日本に戻っていく鷹野さんは強靭だ。
研修を終えて日本に帰り、再訪したとしても自分には真似できないと思う。

シェイクスピアについての全てにキラキラした視線を送っていて、
この歴史上もっとも有名なイギリス人に、どれだけ彼女が
突き動かされているかが分かった。

それにしても、『ヘンリー8世』こそは渡英以来観てきた
シェイクスピアの中で、一番の自分のお気に入りである。

エリザベス1世の誕生シーンで締め括られるあの劇を、
プラチナムジュビリーの時に観、お葬式の周辺で観たことになる。
出生の場面では場内から大きな拍手が送られた。

幕開け直後だった6月よりも出演者が好き放題に演じていた。
細部に遊びがあって、熱演する場面の燃焼も激しく、両者のメリハリが
効いていた。バカな下ネタの数々を大胆に繰り出す中に、
それぞれの役柄の悲哀を滲ませていた。

2回目だし、作品をよく知っている鷹野さんにも教わり、
どこをカットし、何を足しているのかもよく分かる。
自立した台本としては、他に優れたものはいくつもある。
ここまで押し上げたのは現場の力だとつくづく思う。
やっぱり昨日も面白かった。

↓エリザベス1世(左)を黒人の女優が演じる。技ありのアイディア
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