7/4(月)『蛇姫様 わが心の奈蛇』本読みWS10回レポート(中野)
↑かつて、小学校にはバケツを持って廊下に立つという罰があった。
そういう話をして盛り上がったのも、時間が押した原因かも。
劇団の稽古もそんな感じです。脱線なくして良い本番なし。
(写真:伏見行介)
昨日は難所につき、いつも20ページを目安にしている
進行ペースを大幅に下回り、約10ページを進めるのがやっとでした。
それほどまでに昨日のシーンは難しかった。
場面は3幕中盤の、小林とあけびが再開するところ。
主人公二人の会話だけで15ページほど続く箇所です。
ここは要するに、2幕で仲違いし夢破れた二人が、
もう一度お互いの目標を設定し直し、協力し合うまでを描く場面です。
この会話を成立させる、駆け引きがとにかく難しい。
初め、挨拶だけして小倉に去ろうとしたあけびを
気のふれた振りをした小林が引き止めます。
そして、1幕で約束した探偵事務所の話題を持ち出し、
あけびの出自がわかり、「蛇姫様」などと浮かれるにはあまりにも
過酷な出生を引き受けた上で、二人の夢をやり直したいと希望する。
それを受けたあけびは、探偵事務所のパトロンになると宣言する。
当然ながら、小林はよろこびます。探偵事務所を開いて、
二人の目標である白菊谷、そこに咲く黒あけびを探そう。
そうやって、再び意気投合する。
ところが、今度はその方法が問題となる。
あけびが目当てにしている資金調達の方法から、
彼女が身支度をして小倉に帰ろうとしていた理由が明らかになります。
それは、朝鮮戦争の終結に伴うキャンプ・ジョーノの解体による
最後の死体処理業務に従事するという仕事でした。
しかも、処理する死体とは、朝鮮半島から誤って運ばれた現地の人々の
それということも分かる。つまり、
①朝鮮半島→②北九州→③アメリカ→④北九州→⑤朝鮮半島
という長時間を経ながらあっちこっちを行き来した死体について、
④⑤の過程のエンバーミング・輸送という仕事だったのです。
従来のアメリカ兵に関する仕事よりさらに過酷。
それゆえに小林の探偵事務所を支え得る高ギャランティが期待されるも、
それを聞いた小林が、今度は止めにかかる。
という具合に、それぞれが相手を思いやりながらも、
犠牲や力の無さゆえに起こるチグハグ、足並みの揃わなさを
ほんとうに丁寧に追いました。
こういう場面をなんとなくでやってしまうと、
お客さんが主人公とヒロインの関係を形式的にだけ追うことに
なってしまいます。これから迎えるエンディングを心から
感情移入してもらうために、まるで公演を想定した稽古のように
丁寧にやりました。
思えば、2010年に唐ゼミ☆で上演した時も、
ここの場面の稽古には時間がかなり時間がかかり、
けれども、その分だけ身入りが大きかった。
終わった後に充実感がある、良いWSができました。
オンラインWSとしてはやりすぎたかも知れないけれど、
参加者の皆さんに感謝です。会話に終始した今回でしたが、
次週はタチションが加わって賑やかになります。
トラックバック (0)
- トラックバックURL:
コメントする
(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)