7/1(金)おそるべき義手の女

2022年7月 1日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑ホルボーンの教会で通行人のおじさんに撮ってもらった。
たいてい一人で行動するので、自撮りでなくするのに骨が折れる。
スマホを渡したら、そのまま逃げられるリスクがあるのがロンドンだ。
この場合は親切な人だった。一回一回が賭けである。


"義手"についての興味とおそれは唐さん譲りのものだ。
『宝島』に出てくるジョン・シルバーからその興味は始まる。
その『ジョン・シルバー』シリーズを、これまでに自分は
何度上演してきただろう。

また、『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』のドクター袋小路や
『少女仮面』に登場する腹話術人形も「♪俺の体は義手義足〜」と
歌い上げる。この歌はもともと、麿さんが得意だったらしい。

そんな唐さんの義手に対する好みが最高潮に高まったのは、
2000年春に初演された『夜壺』だと思う。
もともとのタイトルは『人形の都』だったとも聞いている。
ズラリと並んだ義手と義足がいっせいに動き出す脅威の舞台は、
いまも記憶に鮮やか。

ある日の朝食時、ロンドンの危険についてミス・ダイアンが語り始めた。
ロンドンにいる数多くのスリのなかで、最も巧妙だった女の手口について。

その女は路上に立ち、
赤ん坊を抱えながらスペイン語で困窮を訴えてきたという。
泣き止まない赤ん坊をこちらに傾けられれば、人はそれを支えざると
得ない。生粋のブリティッシュで、常に警戒を怠らないダイアンも、
この時ばかりは赤ん坊を半分、抱かずにはいられなかったという。

しかし、そこに罠があったのだ。
後から考えれば、その女の右腕はぎこちなかったという。
つまり義手だ。そして、大きなワンピースに隠した、本物の右手を使い、
赤ん坊でできた死角からダイアンのバッグの財布を抜き取ったという。
財布は、彼女の本物の手に握られ、そのままワンピースの中に収まる。

・・・・・。
果たして、そんなことが可能なのだろうか。
ロンドンは都会中の都会だが、かなり魔術的な雰囲気のする話でもある。
ここまでやられたら、悪くはないような気さえする。

唐さんに伝えたら、きっと喜ばれるだろう。

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