11/2(水)明らかに助平な男たち
↑終演後のクリスティは喜色満面。足元に覗くソックスの赤が眩しい
唐組が終わった後も唐さん関連の公演が続く。
流山児事務所が『ベンガルの虎』の稽古に入っているとのこと。
自分が観られないのは無念だが、コロナに捕まることなく
最後まで駆け抜けて欲しい。
それから、状況劇場の終わりから唐組初期の唐さんを支えた
俳優・菅田俊さんが率いる東京倶楽部の『ジャガーの眼』公演もある。
菅田さんはずいぶん以前に『ふたりの女』も手掛けられていた。
今回は、宣伝のためかYouTubeで1980年代半ばの唐さんについて
菅田さんがエピソードを披露されている。これが面白い!
https://www.youtube.com/watch?v=QF9aL3X3GxM
この時代は唐さんにとって困難な時期であり、
表に出てくる情報は少なかった。だから菅田さんのお話は貴重だ。
皆さんもぜひ観てください。これまで知られていなかった当時の
様子だけでなく、強面に見える菅田さんの純真さにも打たれる。
こちらも観にいけないのが悔しい!
誰か観に行って、どんな風だったかを教えてください!
ところで、今日のゼミログのタイトルは、
別に流山児さんや菅田さんが助平だというのではない。
(二人とも色っぽいが)
目下、研究中の『下町ホフマン』に"平手"というキャラクターが
出てくる。三度笠をかぶり、侠客めいた格好だから、
おそらく講談の『天保水滸伝』に出てくる強者、
平手造酒(ひらて みき)からとられた名前だと思うが、
この男が自分は助平だと連呼するのだ。
強いと言われれば弱く、弱いと言われればあべこべに異常な強さを
発揮するところが面白い。そして、オレは助平だと訴える。
ああ、これは大久保さんに宛てて書かれたのだなと
当時の配役表を見なくてもすぐにわかる。
鷹さんも色っぽい人だが、あの雰囲気で「オレは助平だ!」と
叫んで回っていたら、舞台は湧いただろう。
英国で観た助平なパフォーマーとといえば、
第一に、フランスから来ていたウィリアム・クリスティという
指揮者&チェンバロ奏者が思い浮かぶ。
演奏もそうだし、全身黒ずくめにも関わらず
足元にチラチラと覗くソックスだけは真っ赤、
ああいうところが実に助平ったらしい。
あれは彼のトレードマークで、この間に聴きに行った
演奏会では、最前列のフリークらしき客も真似して
赤いソックスを履いていたのが目立った。
あんたも好きねえ、という感じ。
カーテンコールの時など、女性奏者の腰に手を回して
褒め称えるやり方など、露骨に助平があわられている。
堂に入ったものだ。
もう一人の助平は、ザ・シックスティーンという合唱団を
率いるハリー・クリストファーズ。
一昨日の夜も彼のライブを聴きに行ったのだが、
これは希代の助平野郎だと思わずにいられなかった。
彼がクリスティと異なるのは、
一間するとひどく真面目そうなところだ。
だが、聴くべきを聴き、見るべきを見れば
彼が心底ムッツリだということがすぐにわかってしまう。
だいたい、一昨日のプログラムは環境破壊を強く訴えたもの
だったが、実際のパフォーマンスを聴けば、
それが崩壊の美を謳っていることは明らかだ。
会場はロチェスターというロンドン近郊の古い街にある
大聖堂。そこで、ルネッサンスからバロックまでの曲を順に歌い、
また同じ曲をたどりながら元の時代に戻っていくという趣向。
いわば自然の円環を表現していたわけだが、
映像作家が作ったプロジェクションと合わせて考えるに、
人類など滅びてしまえば良いと言わんばかりの美感に
溢れていて、何度も聴いてきた彼らの演奏の中でもベストの
パフォーマンスだった。
終演後に話しかけて「あなたは実に危険な巨匠ですね」と
伝えたらニヤニヤ笑っていた。あれは、真剣に環境問題に
拳を振り上げる人の態度ではない。
誰も彼もが快楽主義者だと思わずにはいられない。
そういう助平な人たちを、私は好む。
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