11/3(木)台本、教会、旅の支度
↑The London Oratory
昨日はいつもと曜日をずらして劇団や座友メンバーとの
『ベンガルの虎』本読みをやった。2幕の終わり。
いつもながら唐さんが書く3幕ものの2幕終盤は素晴らしい。
こちらがいちいち考え、理解するのを寄せ付けない勢いに満ちていた。
気持ちよく、せりふのやり取りや物語の進行に振り切られた感じだ。
直に体がうずく。
ブルース・リーの名ぜりふに"Don't think, feel."というのがある。
"考えるな、感じろ"。昔からの唐さんやアングラ・ファンの中には
こういう味わい方をしている人がたくさんいる。
けれども、遅れてきた世代である私にとって、
唐さんの作品はやっぱり考えながら読むものだと思う。
荒唐無稽に見える設定やせりふの中に唐さん流のリアリズムがある。
そうでなくては、どうやってせりふを言い、セットをつくり、
物語をつむぐのか。やる側はThinkせよ、と思ってやっている。
けれども、やっぱり唐さんの魅力の究極は、
理性ではなくて、感覚による納得でねじ伏せていく
いわく言い難い、けれども誰もが体感的に納得してしまう
吸引力や腕力だと思う。
それを存分に味わうために、私たちは分かるところは分かっておこう。
そういう考えでやっている。
そういえば、前に『トリック』という大ヒットドラマがあって、
あれも似た話だった。主人公はマジシャン、
次々と登場する霊能力者のトリックを暴きながら物語は進行する。
けれど、それは霊能力者がニセモノと言いたいために
やっているわけではない。むしろ逆。
本物の霊能力者に出会うためにこそ、
トリックを見破ること=理屈でニセモノを選り分けているのだ。
すべては、ホンモノの不思議に出会うために。
真の摩訶不思議に圧倒され、打ちのめされたい。
そういう思いで台本を読んでいる。
私たち作り手にはお客さんという存在がいるが、
まず自分たちが圧倒されて、今度はそれをお客さんにおすそ分けする。
そういう相手であると思っている。
昨日、『ベンガルの虎』二幕には気持ち良くやられた!清々しい。
イギリスでは、ここ数日は教会の催しばかりに行っている。
土曜日はオックスフォードにある大学の中のチャペルと
福音史家ヨハネ教会。
月曜にはロチェスターの大聖堂。
火曜には都心のテンプル教会。
昨日はサウスケンジントンにあるロンドン・オラトリーという
カトリックの教会、という具合。
どこも特別な内装と音響だったが、
とりわけロチェスターとオラトリーは素晴らしかった。
今日、木曜の深夜から旅に出る。
風光明媚だけれど交通の便はすこぶる悪いコーンウォールを攻める。
伝説ではアーサー王が住み、
トリスタントイゾルデの舞台ともなったティンタジェル城、
岬の野外劇場ミナックシアター。そしてプリマスの教会にも行く。
この教会ではピーターのアンサンブルによる演奏会が行われるのだ。
合い間に『下町ホフマン』研究と来年度公演の企画書づくり、
『オオカミだ!』とカプカプ×新井一座WSの準備もする。
体はイギリスの僻地、頭は日本のことを考えて過ごす週末になる。
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