3/4(木)クリエイション!

2022年3月 4日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑ロゴをプロジェクションしたり、演奏中はちょっとしたライティングも
このへんはポップな感覚だ

今朝の語学学校で、例のお金持ちの青年と話した。
彼は高校での成績は常に一番、ハーバードの医学部に入ることが
すでに決まっているそう。どういうシステムなのかよく分からないが、
「オレはジーニアスだ」と言う。
「アツシはいつまで学校にいて、どうやって英国に来たのか?」
と訊かれたので国の派遣だと答えると「アツシもジーニアスだな」と。
彼はイギリスが好きになれないそうだ。
多くの人と話したいがどうもそういう風に接してくれない。
アメリカは違うだろう、と希望に思っているとも言う。

考えてみれば、学校にいる20歳前後の青年たちは皆
同じような気持ちでいる気がする。
他国で不安だし、時間があるもから連れだってはいるが、
入れ替わり立ち替わりだし目的も様々で、関係が深まるのが難しい。

今の自分には孤独でいられることがありがたいが、
それは一度多くの人間関係に揉まれる毎日を生きたからで、
彼らにとっては辛そうだ。皆の内面が少し見えた。

午後はzoomミーティング。オンラインとはいえ、ついにエマとも会えた。
実は昨日、唐突に送られてたショートメールに「ワッツアップやろう!」
というメッセージがあって、「エマ? エマですか?」と質問したら
それには答えず。今度会いましょうとだけ返ってきた。
怪しい!と思って警戒していたのだが、やっぱりエマからだったらしい。
ミミが私の電話番号を伝えてくれて、エマもメッセージをくれたというのが
経緯だったらしい。何かの営業かと恐れていたと伝えたら、皆に笑われた。
「This in Emma.」とひとこと言ってくれても良いのに。

肝心のミーティングだが、
先月に立ち上がり、年末に向けて進めている企画のあらましや
進行を知ることができた。さまざまな事情で上手く修学できない青年たちと
作品をつくるのがミッション。すでに彼らについてのリサーチを終えて、
適切なアーティストを選考する段階に入っている。

というような話が、ネイティブな英語で矢継ぎ早に繰り出される。
毎度のことながらヘトヘトになるが、末尾にベトナム・コミュニティへの
アプローチという項目があって自分を元気にさせた。
ベトナムなら行ったこともあるし、大和市のタンハーに入り浸ってもきた。
ベトナム・コーヒーをみんなで飲みたいぜ!という感想を述べたら、
またみなに笑われた。ラクなポジションでいさせてくれている。

夜はバービカン・センターへ。
開館40周年を記念してレジデント・オケのロンドン交響楽団が
ハイドンの『天地創造』を演奏するのを聴きに行ったのだ。

やっと着いたら、ロビーのそこここを駆使して演奏隊が爆音で
演奏をして、華やかな周年事業を思わせる趣き。子どもたちも混じって
演奏している。今晩は合唱こそ多いものの、ハイドンは小編成なので
降り番の一流奏者たちを一瞬とはいえ間近に見られて良かった。

この楽曲は3部から成り、下記の構成
第1部 混沌から世界ができるまで
第2部 世界に生命が生まれ生息する(鷲とか鯨とかから)
第3部 人間の誕生(アダムとイヴ)

ヘンデルの『メサイア』の向こうを張って、ハイドンは旧約聖書で
いこうと思ったのだろうか。3部はミルトンの『失楽園』から。
実際に聴いてみて、アダムとイヴも幸せいっぱいだし、
すごくポジティブな内容で楽想のオンパレードだと再認識した。

ロンドン響はもちろん達者で、超一流オケに特有の音の厚みと
弱音スタートでも全くブレぬ安定感と、アンサンブルの良さが凄い。
前に聴いたベルリン・フィルと同じように、ロールスロイスのような
高級車が静かにスーッと入ってくる感じだ。当然、合唱も上手い。
(指揮者より客席側にいた合掌の人々はどうやって指揮を見れたのか?)

と言っても、肝心の指揮者サイモン・ラトルは最近に受けた小さな
手術の回復に時間がかかっているということでキャンセル。
普通だったらメモリアルで勝負どころの演奏会だと思うが、
ベルリン・フィルをキャリアのゴールにせずにロンドン響の音楽監督に就任、
ホールの建て替えが進まぬとみるやそのロンドンも蹴ってバイエルンへ、
サーの称号を得ているにも関わらずドイツ国籍になっちゃった、
というラトルの凄みを痛感する。

演奏は、曲のせいだとも思うけれどかなり牧歌的で笑ってしまった。
「クリエイション!」だもの。日本語訳である「天地創造」という重みが
どうしてもねえ。この世界が生まれるにしてはライトだし、
今の世界を描写するにはあまりに楽天的だ。ラトルだったら、
もっと辛辣でエキセントリックなところもある演奏になったのだろうか。

ところで、今日は夜の演奏会の行き帰りにかなり消耗した。
というのも、私にとって都心に出るための要であるバンク駅が工事で
閉鎖されているために、ものすごい回り道を余儀なくされたのだ。
(横浜市民にとって渋谷を断たれるようなもの)

日本では夜中の工事を積み上げたりして、
こんなことはまず考えられないが、ロンドンは平気らしい。
しかも、私の使っているGoogleナビはそれをまったく感知せず、
「バンク駅まで〇〇分!」と元気が良い。余裕を追って出たはずの往路は
おかげでかなりせわしないものになり、消耗した。
ただし怪我の功名で、道すがら初めてロンドン塔を眺めることができた。
『リチャード三世』と夏目漱石の、あの恐るべきロンドン塔!
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