6/6(月)『蛇姫様 わが心の奈蛇』本読みWS第6回レポート(中野)
↑わらじを頭に載せる。汗の量がすごい初夏の芝居(写真:伏見行介)
昨日は本読みワークショップでした。
二幕も半ばに差し掛かり、再び再開したヒロイン・あけびと小林が
"蛇姫様""白菊谷""黒あけび"にまつわる妄想を育むシーンです。
冷静に考えると、二人は二十歳を過ぎているわけですし、
かなりイタい大人の男女だとも言えます。
が、
一人は小倉から出て来たばかり、床屋見習いのてんかん持ち、
しかも自分の父親や亡くなった母の出自もよく分からない。
一人は、グレてスリに手を染めたところ、指を詰めさせられた
パチンコ屋の新人店員ということで、なかなかに過酷な現実を
生きています。
こうして二人で蛇姫様ごっこしていないとやっていられないよ!
という彼らの切実な願いは、唐十郎ファンなら誰しも共感できるはずです。
それに、このシーンは全体のキモです。
小林が妄想する白菊谷の描写、暗いところに沢山のヘビがウネウネしている。
直視できないほどの不気味さゆえに、Barハコシ開店お祝いの鏡を使って
間接的に見なければならないほどの光景のおぞましさ、
という伏線が、劇の終盤で明かされるあけびの出自に繋がっていきます。
現実には、Barのセットの中で二人が探検ごっこしているだけなのですが、
この妄想をお客さんに共有してもらうことはかなり大事で、上演する側と
しては難所でもあります。てんかん予防にワラジを頭に載せて冒険する
あけびは可愛らしく、これも楽しんで欲しい。
さらにその後、伝治が登場してエンバーミング=死体化粧の
何たるかを語り始めると、舞台は一転、闇の雰囲気に包まれます。
朝鮮戦争時代の小倉に現れた凄惨な死体処理現場が
唐さん一流の長ぜりふによって想像力の中に現れる。
この陰と陽の目まぐるしい切り替え。
参加者の皆さんも心得たもので、コミカルの中にあるシリアスと
シリアスの中にあるシリアスを縦横に操ってもらいました。
ことばの力を借りて観客を弄ぶ快感。役者に弄ばれる観客の快感。
それらを同時に味わえる名シーンです。
あけびの床屋修行が、実はエンバーミング修行であったことも分かる。
次週は、そんなあけびが一人前の死体化粧師になり、
テレビ各社の取材が殺到するという奇想天外な場面からいきます。
大河ドラマ『黄金の日々』を翌年に控えた唐さんの露骨なまでのHNKびいき。
これが炸裂する洒落っ気に満ちたシーンです。
途中参加でもかなり楽しめます。ご興味ある方はぜひ!
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