11/21(月)『ベンガルの虎』本読みWS 第6回レポート(中野)
2022年11月21日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野WS『ベンガルの虎』
↑秋元松代さんの劇『村岡伊平治伝』だけでなく、
伊平治本人が書いた『村岡伊平治自伝』を押さえておきたいところ
昨日は日曜恒例の台本読みWS。
2幕のなかばにさしかかり、いよいよ面白い場面に。
先週に引き続き、お市とカンナの掛け合い。
ここは全体からすれば息抜きにあたるかなりコミカルな場面ですが
その中で、見逃してはならない細部が二つ。
一つは、ミシン売りの中年男=競輪の予想屋「将軍」というキャラクター。
競輪における究極の予想は勝者が確定した後でその車券を買うことだと
力説する彼は、1幕に引き続き空回っています。
初演時に唐さんが演じたことを思えば笑いの連続だったと理解できますが、
それにしても、引っ掻き回すだけ引っ掻き回す無意味なキャラクターです。
一体それは何故なのか。今後のカンナの出自をめぐるやり取りに、
このミシン売り=予想屋を読み解くヒントもあると思います。
二つ目に銀次の弱腰。
カンナは何度も銀次に「お尻をさわっちゃダメ」と注意します。
しかしこれは、銀次がお尻を触っているわけではないのです。
よく読めば、何か事が起こるたび、例えば怖そうな人が登場したり、
事件が起こるたびごとにこの問答が繰り返されているのがわかります。
つまり、銀次はお尻を触っているのではなく、ビビってカンナの後ろに隠れて
いるのです。これは、男としてデビューしたいと願う彼のキャラクターづくりに
とても重要な要素です。それだけ弱気であるという基本設定を理解する
必要があります。
ストーリーは進み、競輪選手としての水島があらわれます。
カンナを袖にした一幕とは打って変わり、
彼は強烈にカンナを自分の奥さん扱いし、銀次の名を呼ぶことに嫉妬さえ
します。いつの間にかお市は水島の母になっており、カンナはお嫁さんで、
お市がお姑さんという関係になっている。この関係をカンナに迫る唐さんの
強引さが見事なところです。
そして、水島からカンナに、改めて行李が贈られる。
しかし、バッタンバンの象牙と思われた中身は、実は人骨でした。
驚くカンナと人骨を残して、日蝕による闇が訪れます。
そこに、村岡伊平治や井上馨らしき銀行員など、明治の人物たちが
なだれ込んできます。多くの日本人女性がいわゆる「からゆきさん」
「ラシャメン」として東南アジアに渡った明治と昭和の戦後が同時に
語られ、劇が加速度的に勢いを増します。
そして、カンナの出自が語られる。
ラシャメンの一人にマサノという女がいたこと。
マサノが現地のカンナ族の青年と駆け落ちし、心中を図ったこと。
その表紙に生まれ落ちたのがカンナであること。
カンナはマサノの遺体とともに行李に詰められ、長崎へ船で、
そこからは列車で東京入谷のマサノの実家に送られたこと。
さらに、マサノの母は赤ん坊のカンナだけを引き取り、
マサノの死体を長崎から東南アジアに送り返した・・・・
この出自の部分はかなり駆け足になってしまったのと、
全編にとってあまりにも重要なので、来週は復習するところから再開します。
村岡伊平治が実際に活躍したのはマニラやシンガポールですが、
それをバングラデシュと結びつけるために、唐さんがわざと東南アジア一帯を
あいまいに、混同して書いているのも面白いところです。
ハリウッド映画で、中国・朝鮮・日本の人々が混同して描かれるように
それぞれの国の人たちは違和感を感じるでしょうが、ここは思い切って
押し切ります。それが面白さを生む!
次回は11/27(日)。
二幕後半に差し掛かり、唐さんの筆はますます調子を上げます!
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