6/13(月)『蛇姫様 わが心の奈蛇』本読みWS7回レポート(中野)

2022年6月13日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 唐十郎戯曲を読む『蛇姫様 わが心の奈蛇』
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↑角隠しをまとい亡き母が現れる(写真:伏見行介)

唐さんの3幕物はいつも2幕がすごい。
2幕の中盤から終盤に差し掛かるところをやったので自然と盛り上がる。
バカバカしさと悲劇性が矢継ぎ早に入り混じる場面を追いかけました。

あけびは伝治のもとでエンバーミング修行し、
晴れて一人前になることを目指しています。
そのための教則本は、伝治が書いた『日本人の恥骨』。
変なタイトル。

伝治はあけびを調子付かせるため、
一人前になったらあけびにテレビ取材が殺到すると予言します。
今風に言えば「美人すぎるエンバーマー」として世間にデビューする。
そういう感じです。

そして、予行演習をする。
権八一家の部下たちが鏡をカメラに見立て、あけびにインタビューする。
頭にわらじを乗せたまま取材を受けるあけび。

この際、徹底してNHKを持ち上げ、
その他の民間放送を邪険にあしらうところが面白い。
この芝居の初演は1977年春。一方、当時の唐さんたちは翌年の
お正月から始まる大河ドラマ『黄金の日々』を控えていました。
撮影がすでに始まっていたか、そうでなくても、キャスティングや
打ち合わせは確実に進行していたはずです。

舞台の上で、徹底してNHKをヨイショする唐さん。
こういうところが洒落っ気というか、興行師としての才覚というか
唐さんの面白いところです。せっかくなので「NHK」を
キーワードに、後に唐さんが三枝健起監督とつくることになる
テレビドラマについても紹介しました。
骨のある仕事です。NHKならでは。私たちはドラマでも唐さんの
世界に触れることができます。

転じて、一人の女性の登場により、舞台の空気は一変します。
角隠しをした、あけびの母シノが亡霊のように現れる。
これは、薮野一家の妹・知恵が霊媒としての才能を発揮したもので、
当時のスピリチュアル系番組が隣のスタジオで収録中という設定で
取材を受けるあけびの前にシノを降臨させたのです。
(唐さんなりの、強引なリアリズム!)

シノの口から語られるあけびの出生はおぞましいものでした。
朝鮮戦争のさなか、北九州に向けて出港する屍体輸送船「白菊丸」には
何人かの密航者が紛れ込んでいました。シノもその一人。
アメリカ兵たちの死体に紛れて同じく船に乗り込んだ男たちに
輪姦されて生まれた子どもこそ、あけびだとシノは語ります。
あまりのショックに、持病の癲癇の兆候が徐々に現れるあけび。

と、ここで重要なのは、ふと冷静になることです。
かなり勢いと迫力があるシーンですから、私たちはすぐに飲まれて
しまいますが、なぜ伝治がこんな道具立て(テレビ取材や知恵の霊媒)を
駆使してあけびに迫るのか、それを忘れてはなりません。

3幕終盤で、伝治の意図が明らかになります。
唐さんの仕掛けに思い切り飲まれながら、どこかで冷静さを忘れない。
しかし、やはり大いに飲み込まれてしまう。

矛盾する二つのベクトルを同時に兼ね備えることが、唐さんと渡り合う
方法論だと思います。昨日やったところは、好例のなかの好例。
来週は2幕が終わります。

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