9/14(水)用意していた!

2022年9月14日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
IMG_4213.jpg
↑テイト・モダンの前に掲げられたバナー

「用意していた!」
これは、唐さんの作品の中でも80年代の傑作『ビニールの城』二幕に
出てくるせりふだ。相棒である人形「夕顔」を探し続けていた
腹話術師「朝顔」の前に、水槽に封じられた夕顔が現れる。
水に潜って助けなければ!

すると朝顔はポケットから水中眼鏡と水泳キャップを取り出す。
こういう事態を予測し、彼はあらかじめ完璧な用意をしていたのだ。
先のせりふはここで出てくる。なぜこんな周到な準備ができるのか。

もちろん、芝居だからだ。すべて唐さんの思うまま。

しかし、このせりふを言うことで、劇の進行とともに緊迫感に
包まれていた客席に笑いが起きる。
唐さんの、実にズルい手である。


目下、ロンドンはエリザベス女王に染まっている。
至るところに彼女の写真を見る。
娘時代、王位を継いだ頃、貫禄に満ちてきた頃、皆が見慣れた晩年。

それにしても、本当に、驚くべきスピードで、
これらの遺影はあっという間にロンドン中に溢れた。
店先で、バスの停留所で、地下鉄の駅で・・・。

もっとも良いなと思ったのは、テムズ川沿いのテイト・モダンだ。
現代美術を専門に扱うこのギャラリーのバナーも、
いつの間にか、あっという間に女王になっていた。

亡くなってからデザインし、確認し、印刷したのでは
絶対に間に合わない速さで流布したのを見るだに、この国がいかに
女王の死に備えていたのか体感することになった。

不謹慎だから誰も表立っては言わないけれど、
ちゃんと用意してきたのだ。いつの頃からかは分からない。
けれど、実に鮮やかな手口だと思った。

葬儀が9月19日(月)に決まり、その日に予約していたライブは
キャンセルになった。

トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)