3/18(金)ジェットコースターな1日

2022年3月18日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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みな楽しく喋っている。ついていけない自分はこのレモネードと対話。
飲み干すとすることが無くなってしまう。時間をかけてチビチビやる。


昨日はアップダウンの激しい一日だった。

まず、日本の地震が心配だった。
その上、KAATの仕事のうち渡英後も継続しているものに問題があった。
相手のあることでもあるから、連絡をしてはウトウトして返信を待つ。
そんな風に前夜から明け方までを過ごした。

いつもなら直接押しかけて解決してきたのに、今回はそうはいかない。
横浜国大の後輩でもアシスタントの小野寺さんが助けてくれた。
大人になった彼女を頼もしく感じた。

そういう滑り出しなので、予定の捌きが後手に回る。
すでに打ち終えた『唐版 俳優修行』の2周目熟読がままならない。
この作業が十全でないと不完全燃焼になり、一日が重く始まる。

学校への道も電話が続くのでやや遅刻気味。
冒頭30分は、先生や級友の話が入ってこない。
頑張ってスイッチをオンにしなければ、まだまだ英語は厳しいのだ。
1時間ほど過ぎたところから、なんとか持ち直した。
放課の間、いつもなら台本に向かうが、この時間も日本との電話。

授業の後半パートは音楽に関するプロジェクト。
失恋した時、元気な時、ホームシックな時、何かに挑戦する時、
さまざまな状況に応じてどんな曲が聴きたいか、というお題なので、
パソコンを出して即席DJをして遊んだ。

唐さん直伝の『悲しき天使』とかシャンソンやカンツォーネを
混ぜたりして。ポール・アンカやヴィソーツキーも紹介した。

ちょっと癒されたところで、良いことがあった。
授業後にエリザベス先生に声をかけられて少し話ができた。
来週から次のクラスへの進級を告げられたのだけれど、
それは大した問題でなく、お互いに人間的な話ができたのだ。

それから劇場に行って、ミミに会えた。
会議もしたけれど、ちょっと疲れているせいもあって、
なかなか話に入っていけない。終わった後に気になったことを
質問したら、自分の理解にトンチンカンな部分があることがわかって
内心落ち込んだ。加えて、目の前のミミはとても忙しい。

親切な彼女はカフェに誘ってくれて、目の前にいるのだけれど、
次から次へとやってくるメールにも対応しなければならず、
時間のかかる自分との会話に縛り付けるわけにもいかない。

流れで、今日はAlbanyで二日連続で同じ芝居を観ることにした。
セントラルに行くにはコンディションが悪すぎるし、
昨日はギャビンと観たこの芝居が自分には難しかったので、
もう一度トライしたら理解がマシになるかも知れないと思ったのだ。
それに、ミミも今日観るつもりだという。

ところが、今度はそこへAlbanyの他のスタッフがやってきて、
ミミも含めた彼らは高速イングリッシュトークへと突入したのだ。
こちらは自分に鞭をくれて残るすべての力を聴力に託したけれど、
典型的な外交人の疎外感を味わった。
自分がいるために皆がやりづらくならないよう、
取り繕うので精一杯だった。この瞬間が今日の最底辺。

それから眠さを殺して観劇をしたら、良いことがあった。
昨日は歯が立たなかったこの目の前の芝居が何を言いたいのか、
完全にわかってしまったのだ。

だいたい、これが日本語だったら、自分には人のやっていることを
理解するに誰にも引けを取らない自信がある。
こちとら難解で鳴らす唐さんの頭の中をずっと解き続けてきたのだ。
芝居に限らず、音楽だろうが美術だろうがダンスだろうが、
相手がどんな風に来ようと、その意思を汲み取らずには済まさない!

少しメモを取りながら観たが、今日のは完全にいけた。
それで、終わった後にミミとかなり話し込んだ。

舞台に仕掛けられた道具や演出の数々、せりふの示すところなど、
メモも頼りに膨大に指摘して、私もそう思う、と言ってもらえた。

性暴力にあった女性のモノローグだったから非常に重かったけれど、
巷のミュージカルとは違った意味で、自分は劇にもっと希望が欲しい、
そして希望とはある種の人間の愚かさではないかと伝えた。

愚かさとは、親しい人が亡くなった時にもお腹が空いてしまうとか、
そういうことだ。愚かであることや無駄なことの素敵さを、
唐さんを通じて自分はずっと考えてきた。

それにミミは、かつて英国公演を観て感激した蜷川さんの
ファンなのだそうだ。それなら、次は中根公夫さんのことも話そうと
約束した。一緒に渡英した自分のハードディスクには、
中根さんと蜷川さん、唐さんと蜷川さんの資料が膨大にあるのだ。

また来週の月曜に会おうと約束して別れた。
朝食は無し、お昼に焼きそばを軽く食べたきりの一日だったので、
帰りにゴールデン・チッピーに寄り、フライドチキンを食べながら
家への道を歩いた。肉を齧りながら坂をのぼると力が湧く。

けれどここはロンドン。元気のない時にフライドチキンが買えない
人も多い。そういう人はどうすればいいのか? そんなことも考えた。
今日はすぐ寝よう。

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