7/26(火)幾多の空間を巡る二つのフェスティバル
2022年7月26日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
↑少年少女のためのプレイグラウンド。日本だったら"危険"とみなされる
に違いない。
長らく愛用してきたリュックサックのジッパーが壊れたのだ。
これは、椎野が彼女の父からプレゼントされたもので、
それを借り続けているうちに自分のものになった。
5年以上は世話になってきたと思う。それが、ついに壊れた。
英国に来て以来、特に荷物を満載にする機会が多かったのが
負担だったのだと思う。ダイアンに訊いて、修理してくれそうな店を
何軒か訪ねたが、いずれも無理だと言われた。残念だが仕方がない。
週半ばから遠出するし、アウトドア系の店で大きくて丈夫なやつを
買いたい。都心のあたりでセールとかやっていれば良いが。
ところで、先週末のAlbanyは壮絶だった。
二つのフェスティバルに同時開催するというスタッフ泣かせの
スケジュールが強行されたのだ。
一つは、"Liberty Festival"。
ロンドン市長の肝入りで予算がついた障害者のための祭典だ。
パフォーマーたちは皆どこかに障害がある。彼らによる表現を
立て続けに観せようという企画だ。
どのプログラムも周到に組まれたスタッフワークがあって見事だった。
自分の観たものを挙げると、
①2038年時点の地球の環境破壊をSFテイストで物語る、知的障害者たちに
よる自由奔放な野外劇。その完璧なコスプレの絶叫の破壊力。
②芝居がかったガードマンの案内で、音楽学校の教室を巡りながら
聾者、聴覚障害者、少年たちのダンスを見て回る移動型上演。
③車イスの男性ダンサーと、その上に乗った女性ダンサーの
アクロバティックなダンス。また、雲梯を駆使して足の不自由なダンサーの
上半身のパワーを最大限に活かした振り付け。
④義足の女性ダンサーが複数の義足や車イスを操りながら見せる
脅威のスローモーションを展開。
⑤トランスジェンダーかつダウン症のコスプレ5人チーム
その名も「ドラッグ・シンドローム」による歌とダンス。
⑥車イスと聾者の女優二人が、映画俳優としてデビューする過程を描く
ストレートプレイ。
⑦劇場周辺の高架下などで、瞑想やフォークソングをくり広げる
視覚障害者のためのお散歩企画
⑧稽古場に完全なリラクゼーション空間が出現し、そこで全ての人々を
リラックスさせる瞑想企画
など。全ての企画に立ち会えた訳ではないが、粒ぞろいだった。
そして、二つ目はルイシャム地区が主導する"Climate Home"。
これは、温暖化をはじめとする異常気象を強く訴える
青少年たちのプログラムで、この夏いっぱいをかけて開催される。
そのフェスティバルのオープニングが、金曜に行われた。
会場が実にユニークで、学童のプレイグラウンドなのだと説明された。
木で造られた要塞のようなアスレチック群の真ん中に、そこだけ屋根の
ついた野外ステージがあり、観客は好きな場所に腰掛けたり、
スタンディングで見る。
ダンスや歌などもあったが、一番見事だったのは
10歳くらいの少年少女がひとりずつ披露するポエトリーだった。
自身の主張を詩に変え、これを謳いあげることに
日本人は馴染みがない。しかし、こちらの人々は実にこれを巧みに
実践し、また聴き手としても喝采を送る。さすがシェイクスピアの国だ。
少年たちはまったく臆することなく、自作の詩を韻律に乗せて披露していく。
そして高らかに歌い切った後は、拍手を浴びて興奮のあまり
アスレチックを駆け回っていた。
チームに分かれて運営に奔走しているAlbanyスタッフが心配になる
企画数だが、内容だけでなく、さまざまな空間を新たに発見できた
という意味でも、面白い体験だった。
これらは公金を投下し、入場料無料でやっている。
だから、思い切った実験的企画が多かった。
お金を稼ぐための企画、地域貢献のための企画、
CEOギャビンによる切り分け、メリハリの付け方が見事だと思う。
唐ゼミ☆で野外劇をやったりした際、いつも空間を探してきた。
日常の中にハッとさせられるような場所はあるものだ。
そういうことを知っているから、よりAlbanyの面白さが分かる。
けれど、同じように問題があって、
こういうもので収益を上げたり、芸術として評価したり、
批評を得るのは難しい。そういう話を、チーフプロデューサーの
ヴィッキーとした。面白いけれど、ロイヤル・オペラ・ハウスや
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーと同列に語られない。
あるいは、同列に語る必要がない、という違う評価軸が整っていない。
これからの仕事である。
↓野外でリサイクルの重要性を訴える、その迷いない力強さ。突破力。
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