12/1(木)私にとってサドラーズ・ウェルズは・・・

2022年12月 1日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

サドラーズ・ウェルズのロビーで.jpg


テムズ川の北は観光客用の繁華街や高級住宅地が多い。

Aegel駅の周辺もその一つだ。


お洒落な服屋やカバン屋、カフェが並び、

行くたびに青山・表参道を思い出す。

246のような大通りこそないけれど、

Aegel駅の周囲にあるお店の雰囲気はまさしくそんな感じだ。


文化的にも、

ここにはアルメイダという有名な中規模の劇場と

人形劇専門の小屋がある。そしてなんと言っても、

サドラーズ・ウェルズ劇場。


ダンスで有名な劇場だ。

クラシックからコンテンポラリーまで、

様々なダンスカンパニーがここにやってきて公演する。


日本で一緒に仕事をしてきた安藤洋子さんも、

フランクフルトバレエやザ・フォーサイス・カンパニーで

よくここに立ったらしい。


実際に私もここでフォーサイスやピナ・バウシェ作品を観た。

そしてまた、野田さんの『Q』英国公演もここで観た。


昨日はマシュー・ボーンの『Sleeping Beuty』を観た。

初日ということもあり、集まっているお客さんたちも

洗練されたファッションの人たちが多くて、

とりわけ華やかな感じがした。


この劇場は、今回の研修の候補地の一つだった。

2017年にさいたまゴールド祭で紹介された劇場が

自分の研修先選びに大きく影響している。


サドラーズ・ウェルズ劇場はシニアたちのダンス表現にも

熱心に取り組んでいるから、候補の一つにあがったのだ。


が、なんだか自分には不釣り合いな気がした。

青山・表参道的な洗練、

コンテンポラリーにアーティスティックな様子が柄じゃないように思い、

今のAlbanyにたどり着いた。ワイルドなDeptfordは上野・浅草的で

妙に馴染む。自分は唐十郎門下なのだ。


一方、この劇場には特別な思い入れがある。

サドラーズ・ウェルズは今でこそダンスの劇場だけれど、

300年以上の歴史を持ち、ダンスに特化し始めたのは20世紀に

入ってからのこと。


かつては演劇やオペラも盛んだったこの劇場で

1945年にはブリテン『ピーター・グライムズ』初演と

1968年には『ニュルンベルクのマイスタージンガー』公演が行われた。


指揮は敬愛するレジネルド・グッドオール。

彼にとってそれらは、キャリアを決定づけるエポックな公演だった。


晩年を除いていつも不遇が付きまとったグッドオールにとって

1945年は初めて脚光を浴びた公演。

それから数年で長い低迷に入った彼が復活したのが1968年の公演だった。

特に後者はライブの様子がCDになっている。


最初こそおぼつかないものの、幕が進むごとに威力を増して、

最後は宇宙的に異様な盛り上がりを見せる。

実にグッドオールらしい演奏。


大手書店フォイルズでディスクを買うことができたので、

会場前の早めの時間に行って、受付の人に写真を撮ってもらった。

この音楽は確かに、54年前にここで演奏されたのだ。


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