12/9(金)マチルダとアンクル・ジョージ
いつ日本に帰るのか?
そう訊かれることが増えてきたので、12月31日と答えている。
すると一様に、それじゃどこでハッピー・ニューイヤーか
分からないね、と言って笑う。
12月20日(火)と21日(水)に大きなパーティーがあるから、
大半の人たちとはそこでお別れになる。
と、思っていたら、一昨日は先制パンチを喰らった。
ずっとAlbanyのチケット売り場や入場管理係として
お世話になってきたマチルダが、任期満了で退職することになった。
たった11ヶ月の滞在でさえ、これまでに何人も同じような人たちを
送り出してきた。これがイギリス流の働き方で、だいたいが一年契約。
契約者と息が合えばそれを更新するし、他に行ってもみければ
新たにチャレンジする。そうやって次々と職場を移っていくのだ。
だからこそ、今接している人たちへの敬意と
何もかも自分の腕次第という緊張感を持って働いている
感じがする。一方で、体を壊したらどうするんだろう?とか。
産休とか育休は?とか。なかなか厳しい社会でもある。
終身雇用の方が安心して安定した力を発揮できる。
人間にはそういう側面もあると思う。
イギリスで住んでいるダイアンの家にはプリンターが無いから、
自分はいつもマチルダに添付ファイルを送って印刷してもらった。
明らかに仕事に関係ない、旅行の予約や公演チケットなどを
オーダーすると、かえって丁寧に封筒に包んでプレゼントしてくれた。
イギリス人としては異例に細やかなマチルダ。
またしても突然に切り出されて面食らったメレど、
何度も御礼を言ってマチルダとお別れすることができた。
それから、夜は都心でのコンサートを聴いた後、
強行軍でAlbany近くのライブハウスにも行った。
渡英直後、衝撃を受けた音楽表現の一つが、
このMatchStick PieHouseで聴いたSteamdownというバンドだった。
ジャンルはFolkとJazzのフュージョン。
当時は特に日本でのコロナ対策感覚が残っていたから特にたまげた。
超過密なスタンディングで皆が上着を脱ぎ捨て、
熱気でサウナ状態になりながら、毎週水曜日の定例ライブで
深夜まで盛り上がってきたのだが、いきなり年内最後だと
言われたので、行かないわけにいかなかった。
24時近くになってやっとライブが終わると、
一気に解放された出入り口から強烈な冷気が入り込んで
気持ち良かったが、片付けをしているジョージに話しかけた。
みんな、アンクル・ジョージと呼んで慕っている彼は、
ライブハウスでのギグを斡旋するプロデューサーだ。
明らかにあまり儲かりそうにない業態なのだが、
それだけにいつもミュージシャンとへの愛情と熱意に溢れていて、
ある時などは、二つの会場で別々のライブを同時進行させて
本人は自転車で30分ほどの距離を行き来していた。
Folkに関心があると伝えると、いま期待できるのは彼ら!
とすぐにオススメを教えてくれて、見知らぬ土地にある会場で
ジョージと待ち合わせたのも面白かった。
別日にこのライブハウスで行われているFolk Sessionにも彼は参加し、
自らギターを片手に即興で風刺的な歌を歌って全員を爆笑させる。
この会はアマチュアの会だから、中にはそれほど上手くない人もいる。
そういう時にみんなの私語がいきすぎると、
「音楽家と歌にリスペクトを持とう」と言ってみんなを嗜め、
歌い手を励ますのも彼だった。
「アツシはファミリーはいるか?」と訊かれて家族構成を伝えると、
「オレは奥さんに離婚されちゃったよ」と言っていた。
イギリスで出会ってきた中で、最も温かみを感じる人の一人。
忘れえぬ人だ。
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