6/8(水)痛恨のスリースター

2022年6月 8日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
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↑この劇評にオレも撃沈。腹立つわ!

最近観た劇の中で一番おもしろかったのは
グローブ座の『ヘンリー8世』だ。
最近、というよりも英国で観たすべての劇の中で一番だった。

観劇前はくたびれていたのだけれど、
終わった後はあまりの面白さにすっかり元気になって、
すぐにまた来ようと思った。それくらいの興奮で帰ったのだ。

なのに、今朝、ダイアンが見せられた新聞評を観て驚いた。
三つ星。これがレストランなら最高位だが、劇評の場合は五つ星が最高。
二つ星以下を見たことがないから、要するに低評価。
文章を一生懸命に読んだが、あまり誉めていない。
これには落ち込んだ。

グローブ座はゆるい。
囲み形式の客席になっていて、天井は空いているし、観光地だし、
特に立ち見席は安くて日本円で800円くらい。座る席は高いけれど、
立ち見は極端に安い。だから、疲れて途中で帰ってしまう人もいる。

そういう環境に立ち向かっている俳優たちは、
みな、シェイクスピアのせりふを言いこなす技量があるとともに、
ゆるくて、どこか芸人的だ。観客とのコントタクト多めだし、
それでいて、いざという時には熱演して、聴かせる。

反面、ダレ場の抜き方も心得ている感じがする。
ムラもあるだろうし、あまり芸術家然としていないところが
むしろ自分は好きで、大らかな人間の自然を感じる。

その中でも、『ヘンリー8世』は出色の出来だと思った。
前に観た『ジュリアス・シーザー』チームには悪いけれど、
座組みも、予算投下も、何よりアイディアが格別だった。

下ネタのオンパレードだったから、それが文句言われている
ようだけれど、それらは山田風太郎的で、大笑いして見ながら、
大好きになったのだが。

やっぱり劇は、リビングルームで満たされぬ家族や性を
じくじくと悩んでいなければならないのか、と疑問に思う。
ロンドンではここに人種の問題が加わる。

当の『ヘンリー8世』は、最後に生まれるエリザベス1世を
黒人の女優が演じていて痛快だった。

巨大なキャラクターや大きな物語。
それでいてバカバカしい公演に触れたいと思っている自分には
あの三つ星が五つ星以上に見える。

もっと観に行きたくなった。
10月まで飛び飛びで、レパートリーシステムでやっているから。
新聞の低評価を受けて、むしろあれを応援したいと思う自分の心が
燃え上がっている。

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