10/24(月)『ベンガルの虎』本読みWS 第2回レポート(中野)
↑再び「アサヒグラフ」より。この唐さんの男ぶりを見よ!
昨日は『ベンガルの虎』本読みの2回目。
一幕半ばに差し掛かるところ。
初回から登場していたヒロイン・水嶋カンナに加え、
もうひとりの主人公である青年・銀次を登場させるのが
今回の主眼でした。
前回の終わり、中学の家庭科教師であったカンナの思い出を
横取りしたミシン売りの中年男は、謎めいたまま舞台を去ります。
取り残されたカンナは、次に町内のご意見番であるお市と対峙し、
見ない顔だと邪険にされます。
東京下町で繰り広げられる日本の村社会は、よそ者を許さない。
しょげかえったカンナに手を差し伸べたのは、
今は流しとなった元生徒の青年・水嶋でした。
冴えない生徒だった彼ですが、今や"銀次"を名乗り、
夜の街をギター担いで渡り歩く男に成長したのです。
(と、ここで、ドラマ『きついやつら』で"流し"を演じる
玉置浩二&小林薫コンビの動画を見たりして)
しかし、彼は精一杯突っ張っていても、元々は唐さんの描く
内気な主人公青年です。元先生のカンナに会うことで、
すっかりお里が知れてしまう。それどころか、キャバレーの
ホステスになってしまったカンナに大きなショックを受けます。
この辺が、彼の弱気で童貞気質なところ。
そして、ここハンコ屋の前に来た理由をカンナが銀次に説明する際、
"バッタンバンの象牙"という言葉に合わせて再びハンコ屋の扉が開く。
俗物隊長たちが扮するビルマ僧が登場し、
戦争未亡人であるお市たち町内の婆アたちと対峙します。
戦没者記念碑の建立のために寄付を募るビルマ僧たち。
が、たくましいお市は彼らを一蹴、すぐにニセモノだと喝破します。
お市らが去った後、サギ師としての正体をあかし、
ブラックジョークを言い合ってふざける馬の骨父子商会の面々・・・
というところまで進みました。
今回、特に良かったところは、銀次の登場シーンです。
格好つけ、背伸びしてワイルドに登場した彼が、
かつての先生との再会によってあっという間に素朴な青少年に
戻ってしまう。その一言一言の変化を、巧みに表現してくれました。
この短いシーンは、端的に主人公のキャラクターを表すツボであり、
一瞬一瞬が表情を変える工夫のしどころです。
それを上手くやってくれて、かなり嬉しくなりました。
それにしても、中年男のせりふ、お市婆さんのせりふ、
ビルマ僧に扮した俗物隊長のせりふと、この芝居のせりふには
たくさんの死の匂いが溢れています。
ミシンを踏みながら何気なくカンナが歌う歌もそう。
日本軍兵士が闘った戦地の過酷さを、まるで絵画のゲルニカのように
感じさせる。また、俗物隊長の部下でイジられ役の天地くんが
ふざけて歌う何気ない歌も、生まれてすぐの命が失われる歌です。
1幕冒頭のト書きによれば、この劇は「死者が見る夢」と宣言されています。
「死者」とは誰か? 基本的には『ビルマの竪琴』が下敷きですから、
亡くなった日本人兵士がそれに当たります。
が、それだけにとどまらないところにこの『ベンガルの虎』の真髄が
あると考えています。
もっとも根本的に"死んでいる死者"は誰なのか。
それを考えながら物語を追い、全編に散らばる言葉を読み解いています。
続きは来週日曜日!
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