8/23(火)病みついた人たち
2022年8月23日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
↑ほんとうに善い人たちばかりなのだ。決してスノッブでなく、
素朴で人情味のあるご近所さんといった雰囲気の集い
自分がクラシック音楽を好きになったのは明確なきっかけがあって、
唐さんと同時期に横浜国大で私たちの先生だった大里俊晴先生と
許光俊先生の影響である。
大里先生は現代音楽が専門で、許先生はドイツ文学の研究に加えて
クラシックの音楽批評もされている。自分が28歳の時に
大里先生が亡くなって、学生時代を思い出しているうちに
色々と聴くようになり、好きになった。
ロンドンはウエストエンドに象徴される演劇都市だが、
それ以上に音楽都市でもあって、次から次へと世界的音楽家たちの
出入りがある。自然と方々へ出かけることになった。
で、BBCプロムスである。
イギリスを代表するこのクラシック音楽の祭典のことを
自分は3ヶ月前まで知らなかった。
が、何人かの人に「もうすぐプロムスだね」と言われて
その存在に気づいた。7月中旬からの9月中旬は欧米の年度末
=シーズンオフだ。この期間に国営放送のBBCの主催で毎日
コンサートをやり、ライブで観にくるお客さんを集めつつ、
放送にかけるという趣旨なのだ。
すでに自分は何回か行っている。
はっきり言って、超絶的な感動体験はありそうにない催しである。
会場のロイヤル・アルバート・ホールは5000人以上入るデカすぎる
場所だし、どうも音楽的に散漫な感じがするのだ。
でも、シーズンオフだから他はやっていないし、
豪華出演陣だし、珍しい曲もたくさんやる。
何より当日の立ち見席が安いので行ってしまう。
そんな感じなのだ。
昨日も出かけて行った。
ケルン放送交響楽団が目当てだった。
この楽団の印象は、ギュンター・ヴァント、若杉弘、
ガリー・ベルティーニという指揮者たちとともに覚えている。
CDで聴いてきた親近感にかられたのだ。
早めに行って当日券を買い、
アリーナ席の床に座り込んでPCで書き物しながら開演を待った。
すると、自分の周りの人々がやたらとよく喋る。
先に来ている人が、後からやってくる人を迎えて盛り上がっている。
そうこうするうちに、自分を真ん中に置いて5人くらいでお喋りする
恰好になってしまった。たまらないな、と思った。
が、開演が迫ってきたので、トイレに行くために話しかけて
荷物を見ておいてもらうようお願いしたところから、一気にその
均衡は崩れ、用を足して戻ると自分も輪に加わってガンガン喋り始めた。
聞けば、彼らは毎日来ているそうである。
何人かは仕事の都合で飛び飛びのレギュラーだけど、
中には本当の皆勤賞もいる。どうも、そういう通しのチケットが
あるらしいのだ。2ヶ月弱の間に、全部で72のコンサートがある。
ある女性は「本当にくたびれている。あと3週間もある」と
こぼしていた。だったらやめればいいじゃん、というのは愚問である。
とにかく来る。とにかく聴く。聴きすぎて記憶が曖昧になり
何が楽しいのかさっぱりわからなくなった果ての境地があるのだ。
昨日は日曜だったから、朝11時と19時半からの二本立てだった。
その間に何をしていたのか。家は近いのか。色々と気になったが
そこまで話し込む余裕はなかったし、語学力も足りなかった。
中には夜の回に続く、レイトショー的な回もある。
こういう時は23:30頃に終演する。自分も目当てのものがあって
1回行ったが、帰宅はかなり遅くなった。
友情が芽生えているようである。
次を訊かれたので、水曜に来ますよ、と言って別れた。
水曜のレイトショーが、ザ・シックスティーンというすごく良い
合唱団なのだ。常連と知り合ったことによりインセンティブが付き、
これからは今までより愉しめそうだ。初心者の自分としては
興味深い人たちだ。
肝心のケルン放送響は期待外れだった。
ブラームスの3番はあんなに淡白なもんじゃないはずだ。
1曲目の『フィンガルの洞窟』は良いぞ!と思ったが、
だんだん心が離れていくという珍しいパターンの鑑賞体験だった。
ケルンで聴いたらもっと凄そう。
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