10/6(木)古楽器集団のゆくえ

2022年10月 6日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note

IMG_5601.jpg

一昨夜の帰り、ロンドン・ブリッジから不思議なものを見た。

テムズ川に浮かぶ船はどちらも背が高い。

前後を挟む二本の橋より明らかに背の高い船が、

どうしてあそこにいられるのだろう?



一昨日はエイシェント室内管弦楽団を聴き、

昨日はエイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団を聴いた。


エイシェントは古楽、

エイジ・オブ・エンライトメントは啓蒙時代

という意味。両方、ロンドンで古参の古楽器演奏集団だ。


古楽器集団は20世紀半ばに次々と現れた。

初め、カリスマ的なリーダーが中心となって発足し、

アンティークの楽器やその演奏方法を探究して、

古い道具や奏法の中から新しい響きやスタイルを生み出した。


彼らは既存の大オーケストラとは別の道を行った。

そして、当初は違和感だった演奏が、その後のスタンダードに

汲み入れられていった。

大オーケストラの地位は揺らがないけれど、

彼らの演奏の中には、古楽器集団の奏法や感覚が息づくようになった。


日本の60年代演劇もこれに似ている。

既存の団体に受け入れられない、あるいは背を向けた人たちが

小さな集団をつくって台頭した。もちろん、唐さんもその中の一人。


今や、大きな劇場で上演される劇にも、

唐さんや寺山さんや鈴木さんや信さんや串田さんのセンスが

生きている。運営そのものを直にする人たちもいる。

そういうことだ。


エイシェント室内管弦楽団の創立者、

クリストファー・ホグウッドはすでに鬼籍に入った。

お客さんの少なさが気になったけれど、後継者たちの演奏は

実にハツラツとしていて、初めて聴くハイドンのオラトリオ

『四季』の面白さを教えてくれた。


日本では滅多に聴けない、

けれどもCDではスタンダードナンバーのひとつである。

今年は一通りの楽曲を聴くというのも目標にしている。


それに自分の周囲に置きかえて、色々なことを考える。

もう10月なので、年明けから始まる日本の生活に片足は戻っている

ような感じだ。体はロンドンだけれど、頭の中で来年の帰国後を

思い描くことが多くなってきている。


トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)