7/5(火)ダイアンの誕生日
2022年7月 5日 Posted in 2022イギリス戦記 Posted in 中野note
↑背中に貫禄がある。いかにも目利きという迫力だ。
日本人ならば、自分のバースデーについては殊更に知らせることなく、
慎ましくするものと思うが、彼女はそうではなかった。
もともと、私は4月の時点で彼女の年齢と誕生日に気づいた。
自分のイギリスでの健康保険証取得のために試行錯誤した時に、
ダイアンが実物を見せてくれたためだ。
あ、7月3日生まれなんだ。
そう理解したことを、私は悟られまいとした。
それで、当日になってワッとお祝いしてやろうと思っていた。
しかし、彼女は遥かその上をいった。
5月下旬には自分の誕生日を私に伝え、その日の予定を開けて
おくよう厳命。それからは、週に一度のペースで予定を確認され
何度も「大丈夫だ!」と答え続けた。
その時点で、エリザベス2世のプラチナム・ジュビリーなど
ダイアンのバースデーの露払い程度のイベントに思えた。
それからある日、リビングにはムンク展のチラシが堂々と
張り出され、「ここに行くのだ」と言い渡される。
彼女が傾倒する国はインド。大好きなインド料理を食べるために
飛び切りの店が予約されたらしかった。
何しろ、あらゆる予約情報が、メールをしない彼女の代理で、
私のアドレスに届く。レストランが3人予約になっているので、
「他に誰か来るの?」と訊くと、「来ない。こうすれば大きな
テーブルが押さえられる」と自分の流儀を示して自信満々。
当日の朝、日本との深夜のミーティング続きでヘトヘトになりながら
起き出し、ガラガラ声でGood Morningと伝えると、
「アツシよ、あたしにハッピーバースデーはないのか?」と迫ってくる。
そこで、部屋から急いで隠しておいたプレゼントを取り出しながら
Happy Birthday to Youの歌ってやると嬉しくて泣きだす始末・・・
ダイアンとした初めての都心への外出は面白かった。
電車待ちの間、近くのベンチで大声を出して喋る女性を見咎めると、
ここでは書けない言葉で罵り倒す。
乗り換え時に不案内だった駅員に対しても容赦ない辛辣さ。
がカバンの中に見当たらないと、すぐに泥棒に違いない!と訴える。
常に本気か冗談かわからない物腰なので、こちらはずっと爆笑。
ムンクを見にThe Coutauldというギャラリーに初めて行きましたが、
素晴らしかった。ルネサンスや印象派の有名絵画が溢れんばかり。
そして、それらの常設展示物を経てムンクの遍歴を辿る展示を見れば、
彼がいかに多くの先行様式に学びながら、『叫び』で有名な
あの独特の画風にたどり着いたのかを知ることができました。
展覧会の作り方が、とにかく上手かった。
ちなみに、今回の展示に有名な『叫び』は無く、
『メランコリー』などがメインディッシュでしたが、満足しました。
それから、ダイアンの40年来の友人が営む有名パブに顔を出し、
インド料理屋でたらふく食べて、電車とタクシーを乗り継いで帰宅。
その間、普段は節約を旨とする彼女が、店員や運転手に惜しげもなく
チップを弾むことに驚きました。ハレとケが、マジ徹底している。
「夕食は私が払う!」と言って聞かなかったので、
クリスマスはこちらで持とうと誓いつつ、お祝いの一日が過ぎた。
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