10/24(日)カーテンコール〜鷲見武・井手晋之介

2021年10月24日 Posted in 中野note
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渋谷でこんな看板を発見しました。「帝国興信所」。
「テイタン」を追いかけ続けた私には、いかにも気になる存在です。

今日のカーテンコールは4組目。
屈強な男子2人をご紹介。鷲見武くんと井手晋之介くんです。

☆鷲見武(すみ たけし)
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鷲見くんは唐ゼミ☆のカジュアルメンバーの一人です。
劇団員ではないものの、断続的にずっと参加してくれる気心の知れた存在。
ハンディラボと自宅が近く、普段の集合の折に訪ねてくれることもあります。

初めて参加してくれたのは、2010年秋『下谷万年町物語』の再演。
同じ浅草で仕込みをしながら、鷲見くんとあの頃を振り返りました。
舞台装置がヘビーな割に作業人数が少なく、ただでさえ大変なのに
大雨にたたられて地獄と化したバラシの思い出。

劇団ひまわり育ちの鷲見くんは、当時から発声がしっかりしており、
バレエの基礎まで身につけてクルクル回ることができました。
いまだに服装もオシャレだし、作業もできるし、
けっこう二枚目な男として私たちは知り合った。

それがいつの間にか、鷲見くんには笑いの神が降りるようになった。

一緒に東北をツアーした時には『青頭巾』の「和尚」役。
海辺での公演では出番直前まで海中に潜んだ結果、
警備員に心配された拍子に小道具の高級コンブが流れてしまい、
出番になってもなかなか現れない。
などなど。

今回は、1幕冒頭の小学生たち、葬列を率いる雨三郎、
航空兵や自衛官のリーダーを頼み、柔和なキャラクターで
皆をまとめてくれました。実に確実な仕事です。

が、やっぱり最終日に奇跡を起こしていまう。
劇がシリアスに盛り上がり切った場面で、
鷲見くんが掴んでヒロインに迫るはずのソーセージを
遥か彼方に飛ばしてしまい、爆笑をさらいました。

鷲見くん自身は、自分が大事な場面を壊してしまった。
そう反省していましたが、そんなことはない。
舞台も客席も、その場にいた全員が大笑いした後で、
即座に何人かのキャストが超集中してシリアスな劇に戻すよう
ドライブをかけた姿こそ、自分の考える芝居の理想です。

その場に起こることをすべて丸呑みに肯定する。
それでいて、劇・物語・せりふの力を貫く。
鷲見くんのおかげで、私たちは最終日にそういう体験ができた。

鷲見くんの出演中、私の気に入りの場面は3幕。
今日、後に紹介する井手くん扮する自衛官が主人公・織部を殴った時、
井手くんをたしなめる。
そのやり方は、役柄が課せられた世間体への配慮の上に、
鷲見くん独特の気遣いや優しさがあって、稽古からおもしろく観ました。

今回、足を怪我しているところを押して出演してくれた鷲見くん。
これまでと同じように粘り強く台本を読み込み、
舞台の内外で自分の役割を心得ている彼が
小隊のリーダーでいてくれたことは、ほんとうにありがたかった。

いつの間にか動画の編集などもこなすようになり、
最近は自らのユニットまで立ち上げた鷲見くん。
またいつでも、ハンディラボに来てください。


☆井手晋之介(いで しんのすけ)
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フィジカル強めのメンバーを切望した今回の配役にあって、
終盤に加わった最終兵器が井手くんでした。

荒牧くんと同じように、『シーボルト父子伝』の現場をともにし、
IKKANさん率いるオフィス怪人社の若手役者である彼は、
体格の良い三人衆の中でもとりわけガタイが良く、
しかも踊れる役者として、存分に活躍してくれました。

劇冒頭で小学生に扮し、やってきた又三郎に
狂喜してテーマソングを合唱するシーンでは、
井手くんの身体能力とリズム感が冴え渡りました。
とにかく自在に踊ってみせる。しかも動きが毎日変わる。

ただ劇中歌を歌いながらそのリズムにのっているわけでなく
例えば、「あのこの胸に このこの胸に」という歌詞の
「あのこ」や「このこ」が誰を指しているかをよく理解し、
お客さんに対して噛み砕きながら、日々の本番を楽しませてくれる。

てっきりダンスをやってきたのだと思って
最終日近くになって訊いたら、習ったことはなく、
我流でふさわしいと思う動きをしているとも言う。これには驚いた。

やはり荒牧くんと同じように殺陣もでき、
大きな身体であれだけ動くことのできる井手くんは恵まれていると思う。
専門的にダンスを学べば、かなり良いところにいくと期待してしまう。

持ち前のキレを生かし、
2幕で自衛官たちがヒロインを茶化して『エリカの花散るとき』を
大合唱するところ、3幕で織部が電話ボックスを占有しているために
苛立つシーンなども、楽しませてもらいました。

せりふとしては、高田三郎三曹を糾弾するときの舌鋒の鋭さ。
あれが良かった。人を責める時に最大級のパワーを発揮する奴。
割と身の回りにいる厄介な存在を、巧みに実践してくれました。

おまけに、舞台裏では道具の転換や仕掛けを担う戦力として、
大活躍してくれました。

『シーボルト父子伝』の時には、とにかく劇を仕上げるために
時間がなく、あまり個人的な話をする時間が無かったけれど、
唐ゼミ☆に参加してくれたことで個人的な話をすることも
できました。


昨日に紹介した荒牧くんと併せて、鷲見くん、井手くんの3人。
実に豪華なメンバーでした。ここに彼らがいてくれたおかげで、
芝居のレベルが決定づけられたと確信しています。

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