5/15(月)『二都物語』本読みWS 第2回レポート
2023年5月15日 Posted in 中野note
↑パーカーの万年筆。元日本人たちはこの偽物を路上販売することで
生活しているという設定です。万年筆への憧れ。一定世代以上、年齢が上の
人たちは持っていると聞きます
昨晩は特殊な予定アリだったために振り替えて本日に行いました。
月曜にも関わらず多くの方が参加してくださり、ありがたい。
今回、『二都物語』2回目はついにヒロインのリーランが登場しました。
彼女は働き先のレストランでお客に100円をせびり、クビになったのです。
それで職安に返されてきた。ところが課長が率いる職安の部下たちには
彼女に仕事を紹介した記憶がありません。
強かな彼女は嘘を言ってこの職安に連行されたのです。
それからは100円を巡る問答。彼女がなぜ100円をもらうことに固執するのか。
それは次に起こることへの伏線です。
リーランはお母さんのお腹にいる時に朝鮮海峡をわたり、
日本にやってきました。そういう出自もせりふから明らかになります。
一方、課長率いる噂の職安連中もまた、朝鮮半島から日本に渡ってきた。
ただし、ここが重要なのですが、彼らはあくまで日本人です。
正確に言うと元日本人。
戦前戦中に日本から大陸にわたり、戦後も内地に帰らなかった人々。
それが彼らの正体です。あるいは、帰れなかったのかも知れません。
いずれにせよ、今では自分たちの戸籍が日本にあるのかわからない。
しかし、彼らは日本に帰ってきた。
そして、日本で働いて生きようにも戸籍がないので仕事が見つからない。
だから噂の職安を開いたり、夜はつぶれた工場からかっぱらってきた
万年筆を行商します。同情を引いて粗悪品をお客に捕ませる商売です。
(ここの描写がおもしろい)
昨日やったシーンの終わりでは、本物の職業安定所の役人が
刑事を連れて課長たちのニセ職安を摘発しにやってきますが、
実はその刑事もまたニセモノであり、ニセモノ勢が勝ってしまいます。
大切なのは、ニセモノ勢=元日本人だということです。
同じ「海峡を渡ってきた者」にしても、リーランは朝鮮にルーツを持つ者。
課長たちは日本で生まれ育ちながら大陸に渡り、戦後もそこで暮らした者。
同じ戸籍が無いにしても、この部分が違うことは先ほども書いた通りです。
『二都物語』というと、どうしても「朝鮮半島から日本に渡ってきた人たち」
の迫力で押されてしまって、彼らの差異は二の次な印象を受けます。
私たちのWSでは、両者の違いに丁寧に注目しながらこの先を読み進めます。
次回はリーランの過去が語られます。悲劇的な記憶に触れつつ、
その分、美しい主題歌も立ち上がる。愉しみに参加してください。
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