11/30(月)過去の上演との比較について

2020年11月30日 Posted in 中野note
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今回、私たちが上演した『唐版 風の又三郎』は、
概ね好評を以って観客の皆さんに受け入れられました。
少しは厳しいご意見もありましたが、
『唐版 風の又三郎』という演目自体に大変な威力があること、
役者たちがよく台本を体現し、中にはこれを使いこなす者もいたこと、
コロナ禍での上演というリスクを孕んだ公演にいつも以上の緊張感や、
観客の皆さんとの連帯意識を共有できたことが大きかったと考えています。

目下、
今回観に来られなかった方にぜひこの劇を見届けて欲しい、
上演終了後にもう一回観たいという方のリクエストに応えたい、
という二つの思いが、私を再演へと駆り立てています。
近いうち、何とかならないものか!

ところで、私たちは今回、
同じ演目を上演した他のバージョンと見比べられるという経験を、
ほとんど初めて味わいました。
これまで、せっかく「唐ゼミ☆」なのだから私たちしか上演しないものをと、
どちらかといえばマイナーな作品を手掛けることが多かったので、
これは新鮮な体験です。

唐さんの作品の中では『少女仮面』の上演頻度がダントツに高く、
ずいぶん差が開きますが、『唐版 風の又三郎』もまた圧倒的人気作です。
かくいう私も、金守珍さんや松本修さんの演出する本作に触れて
ここまで来ました。当然、影響を受けます。

また、今回は、特に主演をした禿恵が、
状況劇場が初演した時の李礼仙さんを彷彿とさせると
何人もの方におっしゃって頂きましたが、
これは私たちには確認のしようがありません。

一方で、とかく存在感や個性の以って語られやすい状況劇場の
俳優陣ですが、特に李さんは、圧倒的な量のダンスレッスンや
稽古を自らに課し、しかもテキスト重視主義だと伺っています。
(数年前にスズナリで観た『少女仮面』の「春日野」は、
これまでになくト書きに忠実で驚きました)

生真面目に追いかけていると、何だか似てくるのか。

それに、何人かの関係者に云わせれば、
とにかく状況劇場のメンバーは日々、劇団集合を重ね、
稽古を行っていたと。それこそ、公演があろうがなかろうが、
年末年始以外はとにかく"集合!""稽古!"であったようです。

どうやって食べていたのかは謎ですが、
そこで培われた阿吽の呼吸、鋼鉄のアンサンブルを
残された映像や音声の資料から感じることができます。
異様に練習しないと、あんなことはできない!

いずれにせよ、時代が違う私たちは
ありがちなアングラ風やテント芝居の上演様式、
唐さんの劇はこのようなもの、と云う思い込みを超えて、
目を皿のようにして台本の細部まで検討し尽くすことで唐十郎に
肉薄したい。さらに今回の公演で、見較べてもらうことは
なかなか面白いと気づいたので以降はメジャー演目も取り上げたい。
そう思っています。

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