10/13(金)唐十郎流、魚のチョイス

2023年10月13日 Posted in 中野note
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今日は午前の仕事を終えて一度、家に戻りました。

途中、近所で買い物ができるのが嬉しく魚屋に寄ります。
いくつかある魚のうち、ワラサを買いました。
1パックで250円。魚屋さんが立派な包丁で良く切り付けて
柵を刺身にしてくれました。見事な切り口です。

ワラサにはつい反応してしまう。

ワラサはブリの一歩手前の状態です。
関東ではワカシ(ワササゴ)→イナダ→ワラサ→ブリ
関西ではモジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ(ハマチ)
呼び方が違いますが名前が成長度合いによって変化する
いわゆる出世魚です。

このワラサが重要な役割を果たす唐十郎作品があります。
新宿梁山泊の金守珍さんがライフワークにしている
『少女都市からの呼び声』です。

あの話のなかで、現世に一歩を踏み出そうとする雪子
=本来は生まれてくることができなかった少女は、
世間に出たら美味しいものを食べたいと言います。

それに応えて、兄である田口は「今は、ワラサかな?」と言う。
雪子「そのワラサ、食べたいよお」と続きます。

私はこの選択は実に見事だと思います。

これがブリではいけません。
雪子は現世の荒波を恐れる繊細な少女なので、
ブリでは脂がキツすぎる。それに語感も良くありません。
イナダは野暮ったいし、ワカシでは若すぎる。
やはりここは、程よく成長しつつもサッパリとしたワラサです。
最後は「サ」で終わる音も爽やかな少女の感じを出します。

こういう選択はそれこそセンスです。
そして自分は、唐さんの才気をこういうところに見ています。

「今は、ワラサかな?」
兄・田口のせりふを聴くとき、冬に閉ざされた雪子の世界に
ドウッと暖かな風が吹き込んでくる感覚がします。

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