5/14(金)恐怖!手の甲を迷いなく刺す!

2021年5月14日 Posted in 中野note
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↑きっとこんな感じ

『海の牙-黒髪海峡篇』ワークショップ。
一昨日にやった場面の中に、あるエピソードから思い出す話があります。
唐さんに教わった恐ろしい話です。

まず、芝居の場面とはこれ。

一幕中盤。
主人公の青年・呉一郎(くれ いちろう)は
パンパンアンマの瀬良皿子(せら さらこ)が好き。
一方、按摩学校の先生は、呉一郎がホモちっくに好き。
こういう三角関係が展開します。

手に大きな怪我をした呉一郎を思いやる按摩は、
自らの盲目にもめげず、薬を買いに走ります。
ところが、彼が赤チンを持って帰ってきてみると、
なんだか瀬良皿子と呉がいい感じの雰囲気になっている。

こうなると、嫉妬の炎に焼かれた按摩は可愛さあまって憎さ百倍、
呉の手の傷口にさらにハサミを突っ込んで、グリグリやります。
おー、痛そう。


ところで、手の甲に似たような攻撃を仕掛けた人の話を、
私は唐さんから聴いたことがあります。

唐さんがまだ駆け出しの頃、金粉ショーダンサーとして
アルバイトをしていると、その元締めである土方巽先生に
お呼ばれし、よく御馳走になっていたそうです。

当時、状況劇場にいた麿赤兒(その頃は「児」)さんは舞踏家として、
土方門下でもありますから、時には3人で朝食をとる。

すると、土方先生は唐さんと麿さんにこんな質問をしたそうです。
「おい。味噌汁の中に何が見える?」

どんな時にも詩的なイマジネーションとともにあろうとする
土方先生に対し、麿さんが「豆腐が見えますね」と答えたところ、
すぐさま土方さんの箸が麿さんの手の甲に突き刺さったそうです。

それはもう、恐るべき早技であったらしい。

それは見た唐さんは、内心ドキドキしながら持ち前の機転を効かせ、
「虎が見えます」と応じたそうです。土方先生に「よし!」と認められ、
胸を撫で下ろして食事にありついたと言います。

唐さんは事無きを得ましたが、麿さんはかなり痛そうです。
これは私の想像ですが、そういう時の土方先生は全力で、
迷いなく刺す方だったのではないかと思えてなりません。

唐さんとの会話は、緊張感を伴います。
どんなに親しくなったとしてで、そこは真剣勝負。
やはり神経を研ぎ澄ませて言葉の一つ一つをくりださなければ
唐さんの前にいられないようなところがあります。

だから、土方先生と唐さん、麿さんの間にあっただろう緊張感を
私は切実に想像します。唐さんに接するたびに私が感じてきた
スリルと愉しさは、実は唐さんご自身がくぐり抜けてこられた
ものだと思えてなりません。

手の甲に箸、返す返すも痛そうです。

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