4/25(火)他人のせいにして悪さをする男

2023年4月25日 Posted in 中野note
images.jpg
↑あなたはジャギさんです!

『愛の乞食』に登場するミドリのおばさんこと元海賊の尼蔵(あまぞう)。
芝居に登場する3人組海賊の兄貴分である彼はなかなか魅力的な悪党です。

彼の名前、尼蔵は明らかに尼港事件の「尼」から取られたネーミングです。
初演時には麿赤兒(当時:赤児)さんが演じて、冒頭に公衆便所で、
小便器に向かって吐いている後ろ姿だけで、それはもう相当な
気持ち悪さだったと聞きます。これは実際に舞台を見たという人の証言。

当時の状況劇場は評判の劇団とはいえ、本格的に観客が押し寄せた
1972年『二都物語』からだそうなので、なかなかレアな体験といえます。

劇の中で、尼蔵とシルバーは敵対する存在です。
不良兵士たちのリーダーである尼蔵と、
兵士たちの不品行を取り締まる立場の憲兵シルバー。
同じ日本軍兵士でありながら、その中に悪人と善人がいる。

この構図を踏まえないと、この芝居はよく分かりません。
なんだか誰も彼もが悪党に見えてしまうと、話についていけなくなる。
ここを押さえれば、実はシルバーは海賊ではないことがわかります。
彼は、尼蔵たちによって濡れ衣を着せられ、海賊であるとの
風評をたてられた被害者なのです。

他人のせいにして悪さをする男といえば、
私の世代の男性にとっては、冒頭に挙げた彼のことを思い出します。

『北斗の拳』に登場する北斗四兄弟の中で、
ラオウ、トキに次ぐ3番目の男としてジャギは登場します。
主人公ケンシロウは末弟。末弟が後継者となったことで起こる
兄弟間の闘争が、第一部後半の主題でした。

3人の兄たちの中で最初に登場するジャギは
兄弟の中で抜きん出て弱く、また卑劣な男です。
かつてケンシロウに試合で敗れたことを恨みに持った彼は、
ケンシロウのトレードマークである7つの傷をわざと胸につくり、
各地で悪行三昧をします。

そして決め台詞「おれの名をいってみろ」と被害者たちに迫り、
「ケンシロウ=悪」というレッテルを各地で拡めるのです。

まさに尼蔵のようではありませんか。
原作者の武論尊先生が唐さんの『愛の乞食』を観ていたかどうかは
わかりません。が、私は『愛の乞食』を読みながら、
「ア、アニメで見たジャギみたい」といつもこの愛すべき悪党を
思い出すのです。

トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)