9/24(木)台風の記憶①〜2004年11月 唐組『眠りオルゴール』

2020年9月24日 Posted in 中野note
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↑「暗雲よ来い! 唐十郎」
21歳の私に唐さんが下さったメッセージは効果覿面!
今までに多くの「暗雲」が私のもとにやって来ました。


今回は関東を逸れて私の周囲に被害のなかった台風ですが、
そも台風そのもののパワーや被害は年々強くなっていますね。
思えば、ゲリラ豪雨のようなスコール性の雨も激しさも増していますし、
どうも日本が東南アジア化しているような気がする。

台風とテント演劇といえば様々な思い出がありますが、
初めての邂逅は実に2004年10月に遡ります。

あの年の秋、唐さんがまだ横浜国大教授だった頃の唐ゼミは、
ご本家・唐組紅テントの秋公演に4人のメンバーを送りました。
いまだ在団しているのは禿恵だけになってしまいましたが、
古川望、前田裕己、小川尊(現在が「緒川尊」)が、
唐さんの誘いで唐組に出演できることになりました。

私たちは翌月に『黒いチューリップ』初日を控えていましたが、
稽古日程をやり繰りし、喜んで彼らを送り出しました。
演目は『眠りオルゴール』。もともとは1975年秋に
状況劇場で上演された『糸姫』を唐組のために改訂した作品でした。

台風が襲い掛かったのはその初日。2004.10.9のこと。

出演中の劇団員はもちろん、
予定が空いていた唐ゼミメンバーは総出で加勢に行きました。

早朝から、紅テントの中の照明機材は必要最小限に取り外され、
客席中央には屋根幕が落ちぬよう、
大きく「×」の字に補強資材が組まれます。
藤井(由紀)さんの手配で4トントラック箱付きがレンタルされ、
水に弱い機材や、繊細な道具が中に収納されました。

この時は本当に直撃でしたから、
中止と決行、両方に備える必要がありました。
皆、総出でずぶ濡れにながら動き回っていました。

唐さんはいつものディレクターズチェアに腰掛け、じっと空を睨んでいます。
私はケータイで天気予報を調べては、唐さんに伝えました。

午後になり、関西では「維新派」が公演を中止した
というニュースが飛び込んできました。
この時点で、唐さんはすでにやる気マンマンに。
紅テントにはこういう時ほど喜んでやってくるお客さんがいるのです。
一人でも客が来る限り強行するという意志が、唐さんに漲っていました。

夕方になると、唐さんは劇団幹部を集めてお話をされました。
細部は思い出せませんが、「今夜がオレたち唐組の戸山ハイツだ!」
とおっしゃったのを覚えています。

「戸山ハイツ」とは、紅テントを発明する前の状況劇場が
1966年に新宿区の公団住宅の真ん中の空き地で『腰巻お仙 忘却篇』を上演し、
警察沙汰になったメモリアルな場所を指します。

こういう初日を凌ぎきってでこそ芝居者である、
そう唐さんは言いたかったのでしょう
すると、合羽を着たお客さんも徐々に集まり始めました。


・・・長くなってきたので、続きはまた明日!

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