10/26(火)唐さんが文化功労者に!&『少女仮面』WSレポート

2021年10月26日 Posted in ワークショップ Posted in 中野WS『少女仮面』 Posted in 中野note
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↑2003年末の唐さんと私。当時は『鉛の心臓』に取り組んでいました

今日のゼミログ、カーテンコールは一旦お休み、
一昨日から始まった『少女仮面』ワークショップをレポートをします。

が、その前におめでたいことが!
師である唐さんが文化功労者になりました!!!
シャイな唐さんはきっと照れていると想像しますが、
私はすごく嬉しい。おめでとうございます!!!

唐さんと賞といえば、2003年の演劇賞ラッシュが印象深いです。
今度、シアターコクーンで金守珍さんが演出する『泥人魚』は
その年の演劇賞を総ナメにしました。

2003年末から2004年のお正月にかけ、
続々と受賞の報が届くたび、唐さんを囲んでお祝いしたものですが、
皆の真ん中でご機嫌な唐さんはビールの王冠を集めて喜ぶ子どものよう。
持ち前のチャームを全開にされて、とても幸せな時間でした。

そういえば、一昨日からWSで取り組んでいる『少女仮面』こそ、
唐さんに岸田國士戯曲賞をもたらした作品です。
いまや半世紀を超える唐十郎のキャリアの中で、それが賞のはじまり。


ワークショップではまず、執筆や初演の時の様子から話を始めました。
新たな戯曲に向き合う時はいつもこうです。

さまざまな資料や証言を読み解いて総合すると、

・1969年4月-6月にかけて鈴木忠志さんから執筆依頼があった
・同年7月中旬までには書き上げている
・執筆にかかった時間はなんと二日間!
・執筆の最中は、劇中にかかるメリー・ホプキンの『悲しき天使』
 レコードを、劇団員である十貫寺梅軒さんが延々リピートし続けた
・早稲田小劇場の中心俳優として台頭していた白石加代子さんへの
 宛て書きにより、唐十郎流の「春日野八千代」が誕生した
・舞台は地下喫茶店〈肉体〉。早稲田小劇場は喫茶店〈モンシュリ〉の2階
・内容的には、前年に唐さんが上演した『続ジョン・シルバー』に酷似
・1969年10月14日には初日を迎えている

と、こんな具合です。
『少女仮面』初回なのでだいぶ私の説明が長く続きましたが、
それから、冒頭シーンの読みに入りました。
「すてたパンツに聞いてごらん」というパンチの効いた
せりふで有名な、少女と老婆の場面です。

あの場面は、端的に言って、これから芸能界に羽ばたくための
オーディションを受けようという少女と、少女に自らの願望を託す
PTAとのやり取りなんですね。

少女「貝」が持ち前の純粋さで、
例え宝塚スターといえども、実は恋愛願望もあれば肉欲もある
人間であることを見破ると、老婆はそれをはぐらかす。
しかし、現実をはぐらかしたまま、生き馬の目を抜く芸能界で
少女に間違いがあってはいけないから、スターの裏側を
忠告しようともする。貝をスターにしたいと願う一方で、
なんとも切実な老婆の親心。

で、有名な劇中歌『時はゆくゆく』に入ります。
まったく『少女仮面』の劇中歌はいずれも小室等さんの才能全開で、
すべてが愉しい傑作ぞろい。
しかし、歌い飛ばすことなかれ。
『時はゆくゆく』には、本当は自分が若返ってスターになりたいという
老婆の乙女チックな願望や、老婆と貝の間の世代に位置する、
老婆の息子=貝のお父さんが描かれてる。そういう話をしました。

ニーチェを茶化した「ツァラツストラ」とは、
傷痍軍人となって帰ってきた貝の父親ではないのか。
そこには、ジョン・シルバーの影響があるのではないか。
若さを失った老婆と、片足を失った息子は、
だから「何よりも肉体を」求めるのではないか。
一方で少女の貝は、若かりし「肉体」を謳歌している真っ最中。
「何よりも肉体を!」という叫ぶ老婆と少女のニュアンスの違いこそ、
役者と演出家の勝負のかけどころです。

続いて、場面は喫茶〈肉体〉の内部へ。
この店に君臨するボーイ主任を中心に登場人物が入り乱れます。
腹話術師と人形、そして、ボーイたち。
彼らに対するボーイ主任の態度には、一貫した共通点がある。
生身よりもモノ優先。生理的なものを嫌悪する潔癖症と、
「宝塚スター」の非人間性のつながりについて話をしました。

2番目の劇中歌『あの人に会ったら』にも触れて、一昨日は終了。
あの歌も一聴するとコミカルですが、初老の女性の哀しみを
切実に描写しきっている。執筆時の唐さんが29歳であることを
想像すると、よくあんな心情を思い描けたものだと思います。

あと、ありがたいことに増えてきた受講の皆さんの多さに
こちらの進行が追いつかず、終わったあとはかなり反省しました。
皆さんに唐さんの言葉を声に出す面白さを少しでも味わってもらうべく、
来週からやり方を工夫します。

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