5/12(金)盛れば盛るほど

2023年5月12日 Posted in 中野note
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↑高校1年生(手前)と3年生の大豪院邪鬼(奥)では、こんなに
身体のデカさが違う(『魁!男塾』より)


話を盛りすぎること、大歓迎です。
自分だって同じ話をするたびに自然と話を盛ってしまう。
そういう性質の強い方だと自覚しています。

GWこの方、さまざまな本を読みましたが、
シュリーマンの超有名著作『古代への情熱』を初めて読み、
これを大いに愉しみました。

シュリーマンが自ら築き上げたストーリーをざっくり振り返ると、
次のようなあらましです。

幼い頃に読んだホメロスを人生の聖典とし、
商才、語学の天才を生かして一代で財を成す。
しかし、それは彼自身にとって副次的なもの、
築き上げた富を投じて遺跡調査に乗り出し、
傍の良妻に支えられて見事に伝説の宮殿を発見する。

事実は小説より奇なり、と言いたいところですが、
彼のレポート自体が書かれたものであって、必然、自らの人生が
より劇的に、自説が有利になるよう、それは盛りに盛られて
ここまでに膨れ上がった。
そういう感じがすることに好感を持ちました。

事実より、自分がこうであったらと願う誇大妄想、
こんな風にしちゃえという改ざんにこそ、より人間味があるからです。

唐さんで言えば、同じバングラデシュ行を唐さん自身が書いたものと、
状況劇場の劇団員だった山口猛さんの書いた記録との隔たりにこそ、
この二人の真骨頂があります。

『ギルガメシュ叙事詩』なんかを読むと、
古代の王は800年くらい平気で生きています。
しかし、それが一概に嘘かというとそうでもない気がします。
往時の時間感覚からすれば、1週間は悠久の時かもしれないからです。

同じ伝でいけば、ガルシア=マルケスの『族長の秋』など、
現代においてもそういう時間感覚を活かすことに成功していて
喝采します。この物語の中で独裁者は数百年を生きており
だからこそその独裁の強烈さが読者に伝わってくるのです。

そういえば、ずいぶん以前に見た深夜番組の中で
伝説の400勝投手、金田正一は「ワシの球は180キロは出ていた」
と豪語していました。「ありえない数字だ!」と芸人が詰めよると
金田さんは平然と「心の180キロだ!」と言ってのけました。
さすが金田さんは冷静さも持ち合わせている。
ホンモノを感じさせます。

子どもの頃に読んだ『魁!男塾』の大豪院邪鬼もそう。
登場した時に身長3メートルを超えて描かれた彼は、
後に、ひ弱な一年生たちの畏れによって実物より遥かに巨大に
見えていたのだと語られます。これもまた一つのリアリズム。

絵画に印象派があることからも分かるように、
人間を信ずる限りこれらはすべて真実に他なりません。

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