12/1(火)熊野の力
2020年12月 1日 Posted in 中野note
皆、それぞれにたて替えて買い物していたレシートを持ち寄って
精算を行いました。
いつの公演もそれぞれに力を入れてやってきたつもりでしたが、
それでもやっぱり、今回の公演は私たちにとって特別な大事業でした。
私としては、一年間もの時間をかけて準備した公演は、
2009年に上演した『下谷万年町物語』が思い出深い。
19歳の熊野が唐ゼミ☆に参加して、ほんの少しの出番にも関わらず
光るものを見せたのも、この公演でした。
熊野にはもちろん、個の演技者としての能力と野心がありますが、
同時に視野の広さという美点があります。
今回、織部という大役を担いながら私が不在の時の稽古場を
切り盛りしていたのは、紛れもなく彼でした。
自分とはまた違った統率力で皆を引っ張るのだけれど、
熊野の演じるべき織部はほとんどの登場人物より弱々しい。
そのアンバランスさには苦労していて、ようやく帳尻が合ったのは
本番直前だったように思います。
そもそも、今回の公演の演目に『唐版 風の又三郎』を構想したのは、
実は『ジョン・シルバー三部作』を終えた後に行った劇団集合での、
熊野の希望が強く影響していました。
彼は率直に、もっと打って出たいと言った。
そんな熊野の切実な意見に、私と劇団全体は大きく触発されました。
演目が、かくもストレートに唐さんの代表作かつ有名作になったのも、
なんとか新宿での公演を実現しようと、区や街の皆さん、
以前から公演場所捜しに力を貸してくれている友人・関口忠相君を
改めて「公演場所世話役」として頼って協力を仰いだのも、
もとは彼が発端でした。
そうだ!
このゼミログを毎日書くようになったのも、
ワークショップを始めて様々な人と出会うことができたのも、
去年の10月末に熊野が身をよじるようにして自身の渇望を
こちらにぶつけて来なければ、起こらなかったことでした。
Facebookを始めて、
唐ゼミ☆をやりながら、横浜国大で学び働きながら協力してきた人たちと、
ここ数年、KAATで働きながら知り合った多くの皆さんに
劇団と劇場、どの仕事も自分は本気でぶつかっていることを知ってもらおうと
思ったのも、彼がきっかけだったように思います。
自分より年少の劇団員とした約束には、抗い難いパワーがあります。
時には疲れて眠い日もあったけれど、
多くの文章を書きながら、その時々で多くの人たちとの切り結んできた作業を
振り返ることで、自分はかなり充実しました。
こう、『唐版 風の又三郎』上演に向かって、
唐ゼミ☆だからこそ可能な表現に向かって、
KAATで一つ一つ取り組んでいる仕事に対しても、
これまで以上に勇気が湧いてきました。
まだまだ振り返りたい人との出会い、
多くの人に伝えたい唐さんと唐十郎作品の面白さ、
追究を怠らない限り訪れるだろう発見や気づきが、
自分の日常には溢れています。
きっかけをくれた熊野に感謝しつつ、これからも更新も続けていこうと思います。
今更ですが、近々、Twitterも始めるつもりです。
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