10/17(日)浅草入り14日目〜本番6日目 千秋楽

2021年10月18日 Posted in 中野note
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千秋楽が終わった。
今晩もテント番の自分は、曙湯に長いこと浸かり、
終演後に片づけをしていたメンバーと入れ替わりで、
客席部分で寝ることになった。

昨日まで寝ていた楽屋は衣裳のケアで扇風機がうなっており、
メインのテントにいる。一回寝てしまって、あまりの寒さに
起きて防寒具など着込み、寝袋にカイロも放り込んで
天井を眺めていると、2004年に私たちのもとにやってきた
この青テントの幕が、いまだによく保っているものだと思う。
半日後には解体されるこのテントを次にやるのは、いつだろう。

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さて、千秋楽の朝に時間が戻る。
あ、秋がきてしまった!と飛び起きた。
寒い。早朝の雨が冷たい。一通り見回りをして、
天井に水が溜まっているところを突き上げたけれど、
降りが強くて雨漏りや床の浸水はどうしようもない。

ありがたいことに今日も満員だけれど、お客さんが濡れずに
観られるか心配になる。予報では開場時間には雨がやむとある。
けれど、果たして上手くいくものか。

今日は9:30からオンラインでの英語のカウンセリング。
受付テントでテストなど受けていると、10:30集合を目指して皆が
集まってきた。朝礼・ラジオ体操。

雨が強い。数日前まで半袖Tシャツ1枚で暑がっていた私たちは
今やヒートテックを着て、ふるえながら掃除をし、舞台を復旧した。
ほとんどのセットは去年につくったから、
舞台装置たちも今日で一年ちょっとの役割を終える。

アイロンや扇風機を駆使し、乾きにくい衣裳を力技で乾かした。
皆の準備は素早く、12:00前に稽古を開始できる。

整えた方が良い点。丁寧に立てると効果的な言葉。
オープニングの走り込みの調整など、数点を伝えて役者に託した。
織部役の丸山雄也は、三幕で工夫しようと思っているところを
相談にくる。なるほどその工夫は有効だが、相手役の禿の出方を
変えるとより効果を発揮する。三人で話し合う。

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雨がひっきりなしな中、
浅草十和田のおかみさんから差し入れのお弁当を頂いた。
できたての天丼は温かで、雨に濡れないようビニールで
ひとつひとつ包まれている。
こんな風に丁寧にお客さんを迎えよう、と思う。

13:30に歌練習が始まる。もう禿は一曲しか歌わない。
それで勘を掴んだら、あとは全ての声帯を本番のみに使う。
一方、三腐人のリーダー・松本一歩は、喉の不調にも関わらず
全力すぎるほど全力でやって、客席で見守る他メンバーが
笑い転げている。皆それぞれに勝負をかけている。

そういえば、米澤が昨日の本番前にこんなことを言ってきた。
「身体に踏ん張りが効きません。
せりふにこれまでのスピードが出ないかも知れません」
普段、生真面目で控え目な米澤らしい。
「理想のスピードを自分でわかっているはずだから、
常に挑んでくれ。オレに何も言う必要はないよ」と伝える。

役者は一瞬々々を勝負してくれたらいい。
勝ったり負けたりしてくれていい。ただし何が勝ちか。
せりふや所作、道具の扱いを通じて何を伝え、どうウケるべきか。
はっきりとした基準を事前につくる。稽古はそういうものだと思う。

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14:30頃に雨がやんだ。天気予報すばらしい。
15:00になってたくさんのお客さんが集まってきた。
中には、高齢で杖をついている方、脚の悪い方がいたので、
スタッフたちがケアする。今回の観客導線は負担をかけがちなので、
マンパワーで最善を尽くす。

15:30ピッタリにスタート。
開演の拍手が冒頭3人の登場の拍手につながる。
すぐさま教室の場面に。役者たちは力を惜しまずに振り切っている。
台本も劇場もお客さんも、いまや完全に役者たちのもの。

1幕が終わり拍手。
休憩時間にトイレの誘導をしていると、「寒いですねえ」とお客さん。
2幕が始まってすぐ、スタッフがホッカイロを買いに走る。
制作陣が、お客さんと役者たちにできる最後のサポート。

2回目の休憩時、椎野と自分でお客さんにカイロを渡した。
ビニール手袋をして、一人一人に手渡し。
禿と椎野と三人で唐研究室に入って20年後。
禿はステージで死闘。椎野と自分は客席で楽しくカイロを撒いている。

3幕。
人により声は枯れているけれど、細かな勝負に正面からぶつかる。
禿の高音域も活きている。皆が舞台で熱演し、引っ込んでくると
確かな作業をする。次のシーンに向けて、道具をセットし、
配線して、仕掛けを動かす。エンディングまでいくために、
どれひとつ欠けてはならない全てを、皆が支えている。

終幕近く。
観客のご家族やご友人が道路で待っており、残り時間を尋ねられた。
お答えしながら、結果的に屋台崩しを後ろから観た。

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ステージ上にいる二人の物語を完成させるために、
20数人が連動して動き、拍手を浴びながらカーテンコールの舞台に
すっ飛んでいく。動きに無駄なく、冷静で、懸命で、嬉しくなった。

お客さんを送り出し終わり。
今日はそれぞれが気に入りの衣裳を着たままにして、写真を撮った。
それが冒頭の写真。

それから、洗濯や、片付けをして全員集合。
夜なので小さな声で話をし、解散した。

コアメンバーは近くの格安ホテルをとって、照明や音響のバラし。
皆でカップ麺を買ったので、近くのローソンのお湯を空にしてしまう。
フーフー言いながら、コロナ禍なので無言で食べて、作業。
夜バラし班も解散。

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