4/7(火)物書きのひそむ場所

2020年4月 7日 Posted in 中野note
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↑横浜駅構内にあるドトールコーヒー。
いつもはごった返し、待ち合わせのランドマークともなるこの場所ですら、
このところ閑散としています。

先日、神奈川芸術劇場で働く先輩演劇人とお話ししていましたら、
如月小春さんの逸話を伺う機会がありました。

如月さんと言えば、唐ゼミ☆の舞台監督・齋藤亮介が、
演出助手としてお正月にお世話になった、
山田うんさん演出『NIPPON・CHA!CHA!CHA!』の作者。
美貌の女流作家として、2000年の早逝が惜しまれている方です。

聞けば、如月さんは大活躍されていた時分には、
都内の自宅からわざわざ京王プラザホテルに宿泊し、
カンヅメになって執筆に当たられていたそうです。

現在とは違ってたいへん景気の良い時代に手腕を発揮された方とはいえ、
そのようにしてご自身を鼓舞しながら劇作に向かう姿を想像すると、
いかにも時代の先端を走る作家という感じがします。

一方、我らが唐さんはと言えば、
過去に編集者の計らいで、文壇における御茶ノ水の名所、
山の上ホテルで執筆に当たられたと伺ったことがあります。

しかし、興が乗れば恐るべき速筆となる唐さんのことですから、
原稿はさっさと書き終えて時間を持て余し、
劇団員をホテルに呼び寄せては、レストランで出版社持ちの豪華料理を
召し上がっていたとのこと。いかにも唐さんらしい光景です。

私が知り合ってからの唐さんは、
基本的にご自身の書斎で執筆をされていました。
時間はもちろん早朝です。
朝5時には起きて書いているとよくおっしゃっていました。

ところがある時、作品が何だったか思い出せないのですが、
ご自宅の外にちょうど良い場所を発見されたと言うのです。
それは、ドトールコーヒー阿佐ヶ谷店。

あのドトールコーヒーで、
周囲の人たちの雑多な会話を盗み聞きしながら書くと、
アイディアも湧き、すごく筆が進むと嬉しそうに言うのです。
店にたむろする大半の青年たちが、懐にドスやジャックナイフを
忍ばせているような連中ばかりだともおっしゃっていました。

唐さんたくましい妄想にかかると、
そんな風景が広がっているそうなのです。

一杯につき200〜300円のコーヒーでかくも加速する創造力。
まさに錬金術です。

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