10/16(土)浅草入り13日目〜本番5日目

2021年10月16日 Posted in 中野note
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↑開演40分前。ハヤカワ文庫の『唐版 風の又三郎』を熟読する米澤。
出番前、最後のランスルー。

昨晩からテント番だったが、
天気予報がはずれ、早朝から小雨が降りはじめた。
そこで、こちらはテントの周囲をグルグル。
大道具なんかがとび出して濡れていないか、
雨漏りしていないか、チェックする。

テントの中に入って明かりをつけると、
大きめの扇風機3台がフル稼働して洗濯物を煽っている。
湿度が高くなると乾きが悪くなって困るな、
そんなことを考えていたら日が照ってきた。

その後、今日は一日、晴れと曇りがいったりきたりしながら、
最終的には最終幕の途中から雨が降った。
これは結果的にエンディングへの彩りになって、恵みの雨だった。

一日の動きはこんな感じだった。
10:00 集合、朝礼、ラジオ体操
10:10 舞台復旧・客席拡張によるディスタンス確保
12:00 稽古
13:30 劇中歌練習
15:10 開場
15:30 開演
19:00 終演
20:00 片づけを終えて解散

5日目ともなれば一連の流れはスムーズ。
自分を含めた受付や誘導スタッフも、お客さんが間延びしないよう
開演前や休憩中、終演後の進行を少しずつ工夫してきたのが、
今日で完成したと実感した。(明日には終わってしまうけれど・・・)

それにしても、ここ浅草花やしき裏に久々に来てみて、
自分の意識が以前と変わったように思った。
それは周囲のノイズに関わること。

以前の唐ゼミ☆は花やしき終園の18:00以降に公演していた。
長編なら18:00。短い内容であれば、18:30や19:00に開演する。
けれど、花やしきには夜間貸切営業というシステムがあって、
イベントや企業の納涼会なんかで特別に園内が動く時がある。
そんな時には21:00まで稼働しているために、アトラクションの音がする。
私たちはそれを気にして本番をやっていた。

しかし、今は違う。
コロナの影響でたまたま今回は15:30に開演になり、
劇の大半が、花やしき絶賛稼働中になった。
けれど、私たちはあまり外のノイズを気にしない。
だってテント演劇なんだもん。
そんな風に大らかに捉えられるようになった。

いくつか原因が考えられる。

(1)
自分がKAATで働いていることは影響しているように思う。
あんな風に立派な劇場で働いていると、劇場空間があまりに
整然としていて、ノイズまじりの空間を改めて見直している。

(2)
せりふや物語の吸引力を、すごく信じられるようになった。
稽古や本番を通じて、私たちは何度もこの劇を体験しているけれど
お客さんは初めて。だから、役者やストーリーを追いかける
エネルギーは半端ない。
一方、こちらはストーリーテリングにひたすら磨きをかけ続けた
数年間だったし、役者たちがよく全体を理解して発語し、
人間関係を体現できるようになったから、自信あり。

(3)
『唐版 風の又三郎』だから。
登場人物も仕掛けもスペクタクルもセンチメンタルもたっぷり、
かつ、目まぐるしいので、テントの中は大騒ぎ。
周囲が多少うるさくても、ぜんぜん対抗できてしまう。

・・・というわけで、
ああ、オレたち変わったなあ、
ちょっとは上手くなっているなあ、
そんな話を劇団員と先ほどしながら解散した。

本番を思い起こすと、2幕中盤から劇は特に求心力を増す。
と同時に、午後5時半を過ぎると花やしきは急激に静かになっていき、
終幕には静けさに包まれて、主人公たちを支えてくれる。

この時間の経過を自分はとても気に入っている。
白状すると、決してここまでは計算していなかった。
けれど、浅草と花やしきがくれた最大のプレゼントだと思う。
人間にできる工夫を積み重ねて、最後に偶然の贈り物があると
その公演は上手くいく。それが20年近く唐ゼミ☆をやってきた実感。

明日、残り1回の公演。今夜もテント番。

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↑本番前、道具が並ぶ

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↑風を送る仕掛けも動かす、小川哲也と丸山正吾

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↑棺桶を担ぐ直前。佐藤昼寝と松本一歩。

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↑1幕終盤のふたり。鳳恵弥と林麻子。
彼らの乱入により、主人公たちは現実を突きつけられる。

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↑今回、受付係の椎野。舞台と外まわりを同時に見るのは愉しい。

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