12/7(月)祠(ほこら)の時間③

2020年12月 7日 Posted in 中野note
一昨日は、唐十郎ゼミナールが上演した
『腰巻お仙〜義理人情いろはにほへと篇』が、
翌年に上演された唐組春公演『糸女郎』の着想に
活かされた話をしました。今日はその続きです。

2000年を過ぎて生まれた唐さんの代表作に『泥人魚』があります。
2003年春に初演され、好評を受けて11月には3日間の追加公演も
組まれました。追加は異例のことでしたから、このあたり、
機を見るに敏な唐さんの興行師的才覚を感じることができます。
その威力も相まって、年末には演劇賞受賞の打診が次々と
唐さんのもとに寄せられました。
年明けは、各演劇賞の授賞式を渡り歩いていた唐さん。

戯曲は初演前に早くも雑誌『新潮』に掲載され、
公演後、演劇賞の受賞ラッシュを経て単行本にもなりました。
現在でも、割りに手軽に中古本を読むことができます。

その『泥人魚』に出てくる「伊藤静雄」という役がある。
唐さんご自身が演じられた役柄です。
諫早出身の詩人「伊東静雄」の「東」の字を「藤」にしたのは
唐さんの作戦で、どこかニセモノの感じが漂う詩人です。
彼の特徴はずばり「まだらぼけ」。



ボケているかと思いきや、急にダンディを決め込む。
普段はドテラを来てオムツは汚物まみれ。
しかし、時計が20時の鐘を打つ時、突如として
タキシード姿の詩人として覚醒するという設定です。
ボケ時々ダンディ。まだらにボケているから「まだらぼけ」。
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この場面は唐さんの面目躍如であり、
いつも客席は大ウケでしたが、
ここにも私たちの上演した劇『ジョン・シルバー』が
一役買うことができました。

時は、一昨日に書いた『糸女郎』初演の頃に遡ります。
つまり2002年春。この頃に唐さんの目にとまった二つのモチーフが、
一年後の「伊藤静雄」に繋がることになる。

続きは、また明日!

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