10/31(日)カーテンコール〜禿恵

2021年10月31日 Posted in 30_延長戦 唐版 風の又三郎 Posted in 中野note Posted in 公演記録
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先ほどまで『少女仮面』WSをしていました。
レポートは明日、アシスタントの佐々木がしてくれます。
皆さんと台本を読んだ興奮もあり、気持ちを切り替えてこれを書いています。

10/17(日)の千秋楽を終えてから今日で2週間が経ちます。
ハンディラボでの片付けを終えてホッとしながらも、
私たちは緊張感を持って過ごしてきました。
日付が変わったところで、コロナ的にも一区切り。
そのような感慨で今を迎えています。

最後のカーテンコール。「エリカ」を演じた禿恵です。

☆禿恵(とく めぐみ)
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禿とは大学入学と同時に会いました。同じ学課の同級生。
彼女の姓の頭文字は「と」、私は中野だから「な」。
隣り合わせの学籍番号を持つ私たちは同じクラスに配属されました。

初対面の時、彼女の髪の毛はオレンジ色。
興味の対象が違うことは明らか、ひと目で話の通じない相手だと判りました。
こちらは名古屋から来た演劇青年、唐さんに教わることだけを目標に
入学したのです。これからたくさんの舞台を観る、戯曲を読む、
何とかして芝居づくりにたどりつく。そのことだけを考えていました。

私たちが関わったのはそれから約一年後。
こちらが先行して入っていた演劇サークルに、なぜか禿と椎野が入ってきた。
彼女たちはそこでは裏方をしていましたが、そのあと数ヶ月後、
いくつかの理由があって私たち三人揃ってサークルをやめることになった。

そして唐さんに鍵を借り、木曜日の他は教授のいない唐十郎研究室に
入り浸るようになった。何をすれば良いか分からなかったけれど、
集まって話をするようになりました。

大学3年生になった時、私たちは正式な唐十郎ゼミナール生となり、
お題を課せられます。唐さんの選ぶ『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』
を上演するべし。当時はちんぷんかんぷんでしたが、私も役をやるように
言われ、禿と椎野はダブルキャストで「お仙」を演じました。

先陣を切ったのは禿。
第三幕を稽古していた時に、禿が異様な集中を見せ始めた。
唐さん得意の長ぜりふを最初にものにしたのは彼女でした。
大学3年といえば、人並みに将来に迷う時期です。
劇全体は滅茶苦茶だったけど、あの長ぜりふからエンディングに至る
感触が、私をほんとうの意味で劇の道に、唐作品へと惹きつけました。

以来、禿には回り道をさせてしまいました。
当時の禿には美容師になりたい夢もあり、椎野が主役になっていく。
『盲導犬』で再び主演もしたけれど、対抗馬のクセの強い役ばかりをやって、
禿はともすれば、面白い人になり過ぎてしまった。

『黒いチューリップ』の「ノブコ」、『鐵假面』の「暁テル子」
『木馬の鼻』の「群馬(ぐんま)」はストレートに似合いで、
変わったところでは、『下谷万年町物語』の「軽喜座の座長」や
野外劇版の『青頭巾』で演じた「カラス」が印象深い。
それから、これは実際に演じたわけではないのだけれど、
『お化け煙突物語』の稽古中にやってみせた「蜂丸」のせりふ
「夏が来れば、思い出すだろ?」には抱腹絶倒しました。

別に何ということはないせりふにも関わらず、
出身である福井県と禿独特のイントネーションのブレンド、声色が
ひねこびて恨みがましい役柄と相まって、今も耳にこびりついて離れません。

禿は、平地と見える場所にお宝を掘りだし、
何でも無さそうなせりふを、独自の感性でコミカルにする名人になった。
それが、椎野の妊娠とともに『腰巻お仙 振袖火事の巻』から真ん中に戻ってくる。
禿が一番に覚醒した『腰巻お仙』シリーズでのヒロイン復帰。
年齢的にはかなり強引なセーラー服姿は計算通り面白く、
禿がトップに出るおかげで、唐ゼミ☆公演に笑いの要素が増えていく。

『ジョン・シルバー三部作』の「小春」も、禿が演じると妙な面白さにつながる。
失踪した夫を追いかけ回す姿は椎野がやれば剛速球の狂気になり、
禿がやれば可笑しさと哀しみが共存して、その粘着性が際立つ。
この『三部作』は思い出深い。我ながら、さらに派手な構えでやれば、
もっと禿が評価されるはずだと思う。それだけの仕事を彼女はしました。

『唐版 風の又三郎』初演を終えた時、自分は禿に不満でした。
千秋楽を終えた帰りの車を運転しながら「お前はもっとできるだろう」
そう言って、後部座席でくたびれていた禿とケンカしました。

今回の延長戦は褒めてやりたい。
どこか苦手としてきたヒロイック・パートと充分に渡り合いつつ、
自分が大好きなシーンを生み出してくれた。それは二幕。
フンドシ姿の帝國探偵社チームと罵り合う場面、禿が完全に遊んでいるように見えた。
「感じろ、感じろと言ったって〜」のくだりで、緩急自在、
書かれたせりふであることを感じさせない喋り方をした。
雄也くんの肩にもたれかかりながら、脚をヒラヒラさせる動きも良かった。

自分はああいう瞬間をつくりたかったんだと思います。

実は二枚目なシーンは、学生時代からそう変わりません。
当時から役者を追い込んでいけば、これぞ唐十郎という名ぜりふに導かれて
天を突き刺すような叫びが生まれました。
他方、観客と劇をもてあそぶような瞬間は、経験を経てしか手に入らない。

真剣さと余裕と遊び心と。絶妙なバランスが愉しさを導き出す。
清潔な愉しさ。ことばがや仕草がその場で生まれているような即興性。
毎回が違って、演者みんなが本当の意味で適当。それでいて、
数分後にはドライブがかかり、物語の求心力が確実に発揮される。
テント幕の隙間から観ていて、掛け値なしに面白かった。

ああいう瞬間を宝物にして欲しいと思う。
不器用な性格から回り道も多いけれど、自分の備えている地力を信じ、
周囲の期待を力に変えて欲しい。私は同級生に恵まれたと、心から思います。

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