2/15(土)電車の話

2020年2月15日 Posted in 中野note
IMG_7143.png
↑薄暗くてちょっと判りにくいですが、
唐ゼミ☆青テントが最も線路に近づいた『お化け煙突物語(06)』の終幕

あと3秒で屋台くずしというところです。
パネルの隙間から見えている光が、東武東上線。
現在、スカイツリー駅が建っているあの場所で、私たちは公演しました。
初めて東京に進出しようと思った時、
玉ノ井の鉄道ぎわを舞台にした演目でしたから、
ウロウロ彷徨い歩いてここに辿り着きました。

墨田区と東武鉄道の皆さん、
唐さんのご友人である画家の宇野マサシさんのおかげでした。


唐さんと電車と言えば、
大学教授時代。学課の忘年会帰りの唐さんが、
東横線でお弁当箱を巾着袋ごと置き忘れてしまったことがありました。
曲げわっぱの、唐さんが気に入っていたものでしたが、
残念ながらこれは出てこず。

以来、私は酔っぱらった唐さんが電車に乗る時には、
渋谷駅まで付いていくようになりました。
そこから唐さんは山手線と中央線に乗り換える訳で、
忘れ物をする可能性が残っていたのですが、
「ここでいいよ」と言われて、もと来た道を引き返しました。

車を運転を覚えてからは、
室井先生の車で送ることができるようになり、全て解決しました。


ところで、電車内での唐さんは度はずれに正義感が強く、
お年寄りに率先して席を譲るのを専らとしていました。
目ざとくシニアを見つけるやいなや、素早い身ごなしと、
なんとも言えず大仰な、ずいぶん芝居がかった低音で声をかけるのです。

ある時など、車両の端っこに座っていた唐さんは、
ほとんど反対側の端に立っていた高齢者に猛スピードでアプローチし、
電車一両分を丸ごと引っ張ってきて座らせたのです。

生真面目さもここまで突き抜けると、異様な迫力を帯びてきます。
両側の長イスに座っていた乗客たちは瞠目していました。
まるで、花道で歌舞伎役者が見せる道行のようでした。

近頃の自分は車での移動が増えて、電車に乗る機会が激減しています。
わざと各停に乗りながら文庫本を読んだ日々は遠いものになりました。
ああ、ひとりの時間が欲しい。

湘南新宿ライナーも副都心線への接続も無かった頃、
唐さんと過ごした電車での光景を、たまに乗る東横線の中で思い出します。

トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)