5/25(火)『ビニールの城』観ました!

2021年5月26日 Posted in 中野note
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やっと新宿花園神社に行ってきました。

ずいぶん前に観た印象でしたが、
たった唐組での上演は一年半前だったと聞き、驚きました。
コロナ以前の遠く感じることよ。隔世の感とはまさにこのこと。

『ビニールの城』を観て、
自分は多少なりともマシな人間になったなと思いました。
なんというか、人の痛みがわかるようになった。
そういうことを、この芝居から教わりました。

いつだったか、さほど多くはない石橋蓮司さんとの会話の中で、
"孤独"を描くことの重要性を伺ったことがあります。
それが蓮司さんの大テーマだと、その時教わりました。

なるほど、この『ビニールの城』は徹底して孤独の人たちの
ドラマであり、今回の上演からは特にそれが切実に伝わってきました。

特に突出して胸に迫ったのは、稲荷さんが二幕で語る、
八王子で自ら命を絶った中学生の遺書のくだり。

彼は、ガリガリに削った鉛筆で駅の白線に遺書を書いた。
一番辛かったのは、友が来なかったことだ、と。
このエピソードが、全体に他人を渇望する登場人物たちの入り乱れる
『ビニールの城』原動力になっていると思いました。

キチガイ朝顔と呼ばれ、人形とも距離を置く主人公・朝顔。
朝顔に迫りながら、ついに拒絶されてしまうモモ。
モモが求める全てを受け容れて尚、結局はフラれてしまう夕顔。
この3人を中心に、人々はお互いを求め合いながらも
決して噛み合わず、思いは明後日の方向に向かうばかりです。

そんな中でも、朝顔による人形・夕顔へのあまりの献身ぶりに、
世界中の人形たちが朝顔を支持しはじめる水槽の場面や、
「君は霧の晴れた方へ行け」と言って自らは霧の中に消える人間・夕顔。
リカがモモにヌードモデルの仕事を全うするよう諭しておきながら、
結局はたまりかねてカメラマンたちを蹴散らしてしまう場面など、
ステキなシーンが満載でした。

そうそう。『少女都市からの呼び声』で見事なヒロインをつくり上げた
美仁音が、今回は基本的には裏方に接して、ほんの少しだけコミカルな
役回りを演じています。こういうのが"劇団"の厚みだと痛感。

献身や自己犠牲の痛ましさ、美しさに溢れた公演です。

コロナの影響で満席ではなかったけれど、
身を切るような公演に反応した拍手が、テント幕の内側を充します。
もちろん自分も、熱心に拍手して。

観終わって新宿の街を歩くと、21時を少し過ぎたばかりになのに
店はおろか人通りもまばらでした。
横浜と東京でこれだけ違う。
緊急事態宣言の不思議も大いに体感して帰ってきました。

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